説明

3次元形状測定装置

【課題】 被測定物による影を安価に低減させることができるとともに、測定の精度の向上を可能にした格子パターン投影法による3次元形状測定装置を提供する。
【解決手段】 光源装置8からの光が照射される格子パターン604を有する光学変調素子605により形成される格子パターン像を標本3に対し所定角度傾けて投影するとともに、投影角度切換え部615により格子パターン像の傾き角度を変更可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の高さ情報など物体表面の3次元形状を測定する格子パターン投影法を用いた3次元形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元形状をなす測定対象物の表面形状を非接触で高速に測定する3次元形状測定装置として、格子パターン投影法を用いたものが知られている。ここでの格子パターン投影法は、測定対象物の表面に対して斜め上方向に投影系を配置し、この投影系からの格子パターンの像を測定対象物表面に所定角度傾けて投影し、測定対象物表面からの散乱光を変形パターン像として、測定対象物表面の真上に配置された撮像系により撮像し、その撮像画像を演算処理することにより測定対象物の3次元の表面形状を求めるようにしたものである。つまり、このような格子パターン投影法は、格子パターンを物体表面上に投影し、三角測量の原理を利用して格子パターンの変形具合から高さ情報を算出するようにしている。実際には、位相シフト法と呼ばれ、明度が正弦波状に変化する格子パターンを位相ずらしながら複数回投影してその位相情報を求め、それを高さに換算する手法がよく用いられている。
【0003】
ところで、前述のように格子パターン投影法は、三角測量の原理を利用しているため、格子パターンの投影光軸とその撮像光軸は同軸上になく、角度付けされている。この場合、投影光軸と撮像光軸のなす角度を大きくすると計測精度は向上するが、逆に物体自身の影(死角)も多<なり計測不能な範囲を広めてしまうことになる。また、格子パターンの投影されない範囲においては、格子パターンの情報が得られないために正しく高さを算出することができない。
【0004】
そこで、従来、検査物体に発生する影を低減させる方法として、特許文献1に開示されるように、撮像光学系の光軸に対して異なる方向からパターンを投影可能にした投影光学ユニットを複数配置させて、被検査物体に発生する影の発生を抑えるようにしたものが考えられている。また、この特許文献1には、各投影光学ユニットをそれぞれ独立して動かし投影角度を可変するようなことも記載されている。
【特許文献1】特開2004-191240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものは、投影光学ユニットが複数設けられているため、実際に製作すると構成要素が多くなり、装置が大型化するとともに、価格的にも高価になってしまう。つまり、特許文献1のものは、同文献中の実施例1において、独立した投影光学ユニットを2つV字型に配置し、照明光学系及び格子パターンを有する光学変調素子もそれぞれ2つ備える構成になっているため、価格的に高価になる。仮に、投影光学ユニットのV字構成のままで照明光学系及び光学変調素子を1つにまとめるようにしても、価格的に多少安価にできるものの、構成上大きなスペースが必要となり、コンパクト化は難しい。また、実施例2のように撮像光学系の対物レンズを使って2方向投影する場合、照明光学系及び光学変調素子を1つにまとめることで、比較的コンパクトに構成することができるが、2つの投影光路が1つの対物レンズの光軸外を通ることによって2つの投影方向に角度を生じさせるようになっているため、2つの投影方向のなす角度は対物レンズの有効径によって制限されてしまう。このため、これら2つの投影方向のなす角度を大きくするためには対物レンズの有効径を大きくしなければならず、高価になってしまう。さらに、対物レンズの中心部に撮像光路が配置され、その周辺部に2つの投影光路が配置されていることから、投影光学系の光の一部が撮像光学系内に浸入してフレアーを発生させる恐れがある。
【0006】
また、特許文献1は、2つの投影光軸を対物レンズの有効径の範囲内で移動させて投影方向の可変ができるようになっているが、それには2つの投影光学ユニットと照明光学ユニット、光学変調素子をそれぞれ移動させなければならず、移動による精度誤差が生じ易い。さらに機構的にも複雑になるため、安価に対応するのが難しい。さらに投影方向の可変量は、対物レンズの有効半径以下であることから投影方向を大きく可変するのには不向きである。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被測定物による影を安価に低減させることができるとともに、測定の精度の向上を可能にした格子パターン投影法による3次元形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、光源と、格子パターンを有する光学変調手段と、前記光源からの光が前記光学変調手段を介することで形成される格子パターン像を被測定物に投影する投影手段と、前記被測定物に対して投影される格子パターン像の投影角度を可変する投影角可変手段とを有する格子パターン投影部と、前記被測定物及び前記格子バターン像を観察するための観察光学系を有した観察部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記投影手段は、前記光学変調手段により形成された格子パターン像の光束をアフォーカル状態にするアフォーカル光学素子と、前記アフォーカル光束を結像させ、前記被測定物上に格子パターン像を形成する集光光学素子とを備えることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記観察部は、前記被測定物上で所定の内向角度をもって交差する二つの観察光路を有し、前記被測定物及び前記被測定物に投影された格子パターン像を観察する実体顕微鏡であることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記投影手段は、前記アフォーカル光束を前記集光光学素子の光軸方向に沿って前記集光光学素子に導く光学部材を有することを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記投影角可変手段は、前記集光光学系に導かれる前記アフォーカル光束が、前記集光光学素子の光軸に垂直な方向に沿って平行移動するように前記光学部材を移動させる移動機溝を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記投影手段は、前記光学変調手段を介した光束を、前記実体顕微鏡の一方の観察光路に導いて前記被測定物上に投影する第1の投影光学系と、前記光学変調手段により形成された格子パターン像を前記実体顕微鏡の外部から前記被測定物上に投影する第2の投影光学系を有し、前記投影角可変手段は、前記光学変調手段を介した光束を前記第1の投影光学系又は前記第2の投影光学系のいずれか一方に導く光路切換え手段を有することを特徴としている。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記第1の投影光学系は、前記格子パターン像の光束をアフォーカル状態にするアフォーカル光学素子と、前記アフォーカル光束を前記実体顕徴鏡の一方の観察光路に入射させる反射部材を有することを特徴としている。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記第2の投影光学系は、前記光学変調手段により形成された格子パターン像の光束をアフォーカル状態にするアフォーカル光学素子と、前記アフォーカル光束を結像させて前記被測定物上に格子パターン像を形成する集光光学素子と、前記アフォーカル光束を前記集光光学素子の光軸方向に沿って導くように設けられた光学部材とを有し、前記投影角度可変手段は、前記アフォーカル光束を前記集光光挙素子の光軸に垂直な方向に沿って平行移動するように前記光学部材を移動させる移動機構とを有することを特徴としている。
【0016】
請求項9記載の発明は、直立して設けられる支柱に沿って移動可能に設けられる焦準装置と、前記焦準装置とともに移動可能に設けられ、光源からの光路上に配置されたスリット状の格子パターンを有する光学変調手段と、前記光学変調手段より形成される格子パターン像を標本に対し所定角度傾けて投影する投影光学系とを有するユニット化された格子パターン投影装置と、前記格子パターン投影装置を介して前記焦準装置に設けられ、前記標本に投影された格子パターン像を対物レンズを介して観察する観察手段を有する顕微鏡と、前記観察手段で観察される前記格子パターン像を撮像する撮像手段と、を有し、前記標本に対する前記格子パターン像の投影角度を調整可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被測定物による影を安価に低減させることができるとともに、測定の精度の向上を可能にした格子パターン投影法による3次元形状測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1〜図9は、本発明の第1の実施の形態に係わる格子パターン投影法を採用した3次元形状測定装置を示すもので、図1は右側面図(全体図)、図2は正面図(全体図)、図3は格子パターン投影装置の右側面図、図4は格子パターン投影装置の右側面一部断面図、図5は図4のAA’断面図、図6は図4のBB'断面図、図7は図4のAA'断面図、図8は図4のAA'断面図、図9は標本に投影された格子パターンの状態例をそれぞれ示している。
【0020】
図1及び図2において、1は基台で、この基台1上には、ステージ2が設けられている。このステージ2には、被測定物としての標本3が載置されている。この場合、標本3は、図9に示すように中央部に突出部3aを有する断面凸形の形状をしている。
【0021】
基台1には、支柱4が直立して設けられている。この支柱4には、焦準装置5が設けられている。この焦準装置5には、格子パターン投影手段としての格子パターン投影装置6と、この格子パターン投影装置6を介して実体顕微鏡7が設けられている。
【0022】
焦準装置5は、支柱4が挿通される不図示の孔部を有する装置本体501を有している。この装置本体501には、固定ハンドル502が設けられ、この固定ハンドル502を締付け方向に回転することで、支柱4に固定できるようになっている。
【0023】
装置本体501には、ガイド部504を介して移動部材503が設けられている。ガイド部504は、装置本体501に対し移動部材503を移動可能にしている。また、装置本体501と移動部材503の間には、焦準ハンドル505が連結された不図示のピニオンとラックからなる昇降機構が設けられており、この焦準ハンドル505の操作により移動部材503を支柱4に沿った方向に上下動可能にしている。
【0024】
焦準装置5の移動部材503には、格子パターン投影装置6が設けられている。この格子パターン投影装置6は、図3に示すように装置本体601の背面部にスライドオスアリ602が設けられ、焦準装置5の不図示のメスアリに着脱可能に組み付けられビス506で固定されている(図1参照)。
【0025】
格子パターン投影装置6は、装置本体601と光源装置8からの光束を取り込む導入部603と光学変調部606が設けられている。
【0026】
光源装置8には、不図示の光源からの光束を導出するライトガイド901が接続されている。このライトガイド901の先端には、出射端902が設けられている。また、光源装置8には、不図示の光源から発せられる光束の光量を調整する光量調整ツマミ81が設けられている。
【0027】
導入部603は、ライトガイド901の出射端902が所定位置に嵌め込まれる挿入穴607と、この挿入穴607に嵌め込まれた出射端902を固定するための固定ネジ608が設けられている。また、導入部603は、ライトガイド901の出射端902から発せられる光束の光路上に、格子パターン604全体を均一に照明するための照明光学系を構成するレンズ群609が設けられている。
【0028】
レンズ群609を透過した光束の光路上には、光学変調部606が設けられている。この光学変調部606には、光学変調手段として格子パターン604を有する光学変調素子605が設けられている。格子パターン604は、光学変調素子605内に設けられるもので、例えぱ、図9に示すような格子パターン像10を標本3上に形成するための不図示のスリット開口部又は光透過部と、光遮光部とが1次元方向に交互に配置され、これらスリット開口部又は光透過部と光遮光部とによって正弦波形状の濃淡パターンが得られるようになっている。また、光学変調部606には、駆動源610が設けられ、この駆動源610により格子パターン604を図示矢印方向に移動可能とし、図9に示す標本3上の格子パターン像10全体を図示矢印方向に移動させて正弦波形の位相をずらすことができるようになっている。また、変調光挙素子605として、例えぱ液晶椿子を用いる場合、駆動源610に相当する格子パターン604を移動させる手段として、不図示の制御ドライバーにより液晶格子の格子パターンを変化させるように駆動しても構わない。
【0029】
装置本体601には、格子パターン604を透過した光束(格子パターン像)を標本3上に投影して、格子パターン像10を形成するための投影光学系611が設けられている。この投影光学系611は、格子パターン604を通過した光束をアフォーカル状態にするためのアフォーカル光学素子としての対物レンズ612、この対物レンズ612を透過した光束の進行方向を変える反射ミラー613、614、標本3に対する格子パターン像10の投影角度を可変可能にした投影角度切換え部615及び標本3上に格子パターン像10を形成するための集光光学素子としての結像レンズ616を有している。
【0030】
この場合、反射ミラー613、614は、対物レンズ612からの光束Lの方向を結像レンズ616の光軸Lbに対して垂直な方向に導くように設けられている。また、投影角度切換え部615は、図3乃至図8に示すように光学部材としてのミラー617と、このミラー617を保持して直線的に移動可能にした移動部材623とガイド枠624を有するガイド部618と、角度切換え操作を行なう操作部619を有している。この場合、ミラー617は、ガイド部618の移動によって反射ミラー613、614を介して入射されるアフォーカル光束の光路に沿って移動可能になっており、また、反射ミラー613、614により導かれた光束の方向を結像レンズ616の中心軸すなわち光軸Lbの方向に偏向させるような角度で配置されている。ミラー617は、保持枠620に保持されている。保持枠620は、ミラー617への光の入射側と、ミラー617からの光の出射側にそれぞれ絞り621、622が設けられている。これら絞り621、622は、結像レンズ616に入射する光束Lを制限するためのものである。
【0031】
保持枠620は、ガイド部618の移動部材623に設けられている。この移動部材623は、ガイド枠624に支持され、反射ミラー613、614により導かれる光束の光路に沿って結像レンズ616の光軸Lbに垂直な方向に平行移動可能になっている。この場合、図6に示すように移動部材623は、移動方向の両側面にそれぞれガイド溝625が形成され、また、ガイド枠624は、移動部材623のガイド溝625に対応する側面にそれぞれガイド溝626が形成されている。これらガイド溝625、626の間には、ボール627が介挿され、このボール627によって移動部材623がスムーズに直線移動できるようになっている。
【0032】
移動部材623には、ボールプランジャー628が埋め込まれている。また、ガイド枠624には、ボールプランジャー628に対応して溝部629が形成されている。これにより、ボールプランジャー628が溝部629に嵌め込まれた状態で移動部材623が位置決め可能になっている。この場合、溝部629は、図5に示すように移動部材623の移動方向(図示h〜i方向)に沿って複数個所(図示例では3個所)形成されている。なお、630は、ガイド枠624から移動部材623の脱落を防止するための規制ピンである。
【0033】
操作部619は、図5に示すように先端部を移動部材623に固定された連結棒631を有している。この連結棒631は、移動部材623から装置本体601に形成された開口穴601a近傍にかけて延出して設けられている。連結棒631の基端部には、操作ツマミ632が開口穴601aを介して装置本体601の外部まで突出して設けられている。
【0034】
この操作ツマミ632は、装置本体601外部から移動部材623(保持枠620)の移動を操作するものである。連結棒631には、遮光板633が設けられている。この遮光板633は、開口穴601aを覆い隠すような大きさのもので、操作ツマミ632の操作により連結棒631が開口穴601a中を移動する際に装置本体601外部から開口穴601aを介して光が侵入するのを防止するためのものである。
【0035】
装置本体601側面には、図3に示すように開口穴601aに近接して指標634が設けられている。この指標634は、操作ツマミ632の移動に応じた投影角度を示すもので、ここでは、上述した移動部材623が複数(3個所)の溝部629にそれぞれ位置決めされる位置a,b,cを表示するようにしている。
【0036】
一方、上述した結像レンズ616は、図4に示すようにレンズ枠635に固定されている。このレンズ枠635は、投影光学系611からの光束Lを通過させるための開口穴635aが形成されたもので、装置本体601に固定されている。
【0037】
なお、図中636は、装置本体601背面に設けられた開口部を覆い隠すための蓋部で、装置本体601内部の各種光学素子の調整や保守点検の際に取外し可能である。
【0038】
図1に戻って、格子パターン投影装置6の装置本体601には、実体顕微鏡7が設けられている。この実体顕微鏡7は、背面部に不図示のスライドオスアリが設けられ、装置本体601側の不図示のメスアリに着脱可能に組み付けられビス637で固定されている。
【0039】
実体顕微鏡7は、図1及び図2に示すようにズーム鏡筒本体701が設けられている。このズーム鏡筒本体701には、図2に示すように平行な左右2つの観察用の光路LR、LLを構成する観察光学系715が設けられている。この場合、これら光路LR、LLは、後述する対物レンズ703の光軸外を通って標本3上で交差するようになっている。また、ズーム鏡筒本体701には、ズームハンドル702が設けられている。このズームハンドル702は、ハンドル操作によりズーム鏡筒本体701での倍率を可変できるようになっている。
【0040】
ズーム鏡筒本体701は、下部に対物レンズ703が設けられ、上部に3眼鏡筒704が設けられている。3眼鏡筒704は、不図示の丸アリを介してズーム鏡筒本体701に着脱可能に組み付けられ、ビス705で固定されている。また、3眼鏡筒704は、結像レンズ713及び光路切換え用ミラー711、712を収容したもので、正面に2つの接眼レンズ706が取付けられ、さらに上面に撮像手段としてのTVカメラ707が組み付けられている。TVカメラ707は、ケーブル708を介して画像処理装置709に接続されている。画像処理装置709は、TVカメラ707の撮像画像を処理して標本3の3次元の表面形状を求めるようにしている。また、画像処理装置709には、モニタ710が接続されている。モニタ710は、画像処理装置709での撮像画像の演算処理の結果などを表示するものである。
【0041】
3眼鏡筒704の側面には、切換え用ツマミ714が設けられている。この切換え用ツマミ714は、3眼鏡筒704内の光路切換え用ミラー711,712を移動させて光路を切替えるためのもので、ここでは、左側の光路LLを接眼レンズ706又はTVカメラ707のどちらか一方に切替え、接眼レンズ706による目視観察又はTVカメラ707による撮像の切替ができるようになつている。
【0042】
次に、このように構成された3次元形状測定装置の作用について説明する。
【0043】
まず、図1に示す焦準装置5の焦準ハンドル505を操作して移動部材503をガイド部504に沿って上下動させ、標本3に対するピント合わせを行なう。また、光源装置8の光量調整ツマミ81を操作して、不図示の光源からの光束の光量を最適に調整する。
【0044】
この状態で、光源装置8から発せられた光束は、ライトガイド901の出射端902から導入部603に導かれ、照明光学系のレンズ群609を通して光学変調部606に入射し、光学変調素子605の格子パターン604前面に均一に照射される。格子パターン604を通過した光束Lは、投影光学系611の対物レンズ612によつてアフォーカルな状態になり、反射ミラー613、614で反射して結像レンズ616の光軸に対して垂直な方向に導かれる。
【0045】
さらに、光束は、投影角度切換え部615のミラー617により反射し、結像レンズ616の光軸方向に偏向されて、結像レンズ616を通過する。この際、結像レンズ616に入射する光以外の外乱光は、保持枠620の絞り621,622によってカットされる。結像レンズ616を通過した光束は集光され、図9に示すように標本3上に格子パターン像10として形成される。
【0046】
標本3上の格子パターン像10は、実体顕微鏡7の対物レンズ703を通り左側光路LLを通過して3眼鏡筒704の結像レンズ713によつて集光される。この場合、3眼鏡筒704の切換え用ツマミ714を操作し光路切換え用ミラー711、712を移動させて光路LLをTVカメラ707側に切替えれば、結像レンズ713で集光される格子パターン像10は、TVカメラ707の不図示の撮像素子で結像し、ケーブル708を通して画像処理装置709に取り込まれ、モニタ710上に測定結果として表示される。
【0047】
この状態で、光学変調素子605を駆動源610により駆動し、格子パターン604を図1に示す矢印方向に移動させると、格子パターン604の位相が変えられ、図9に示す標本3上の格子パターン像10全体が図示矢印方向に移動し、この格子パターン像10が同様に画像処理装置709に取り込まれる。このようにして格子パターン604の位相を複数回ずらして、それぞれの格子パターン像10を画像処理装置709に取り込む。同時に、それぞれの格子パターン像10の投影角度の情報を入力し、公知の位相シフト法によって、それを高さに換算して標本3の3次元形状を得ることができる。
【0048】
この場合、位相シフト法で高さ換算するためには、図9に示すように格子パターン604の投影光軸Aが実体顕微鏡7の撮像光軸B(左側光路LL)に対してθだけ傾いた状態で、この投影光軸Aの傾き方向に濃淡パターンが変化するように投影される。
【0049】
次に、格子パターン604の投影角度の可変について説明する。
【0050】
この場合、図1,図4に示すように、格子パターン投影装置6の結像レンズ616の光軸Lb上に投影角度切換え部615のミラー617が位置されていれば、標本3への投影角度は、実体顕微鏡7側の撮像光軸、つまり左側光路LLに対してθbとなる。
【0051】
この状態から、図5に示すように操作部619の操作ツマミ632を開口穴601aに沿って図示h方向に移動させると、移動部材623はガイド枠624に沿って移動し、ボールプランジャー628が図示左側の溝部629に嵌め込まれた状態で位置決めされる(図7参照)。このとき、移動部材623側面が規制ピン630に当接することにより、移動部材623がガイド枠624から脱落するのを防止している。
【0052】
このようにボールプランジャー628が図7に示す左側の溝部629に嵌め込まれた状態、つまり、ミラー617が図1のa位置の状態である場合は、結像レンズ616の中心軸、つまり光軸Lbに対して光束Lが平行に変位して入射するため、投影光軸はLaになり標本3への投影角度は、実体顕微鏡7側の撮像光軸、つまり左側光路LLに対してθaとなる。
【0053】
この場合、操作部619の操作ツマミ632を移動操作しても、開口穴601aは、遮光板633により覆い隠されているので、外部からの光が格子パターン投影装置6内部に侵入するのを防止できる。
【0054】
一方、操作ツマミ632を開口穴601aに沿って図示i方向に移動させると、移動部材623はガイド枠624に沿って移動し、今度は、ボールプランジャー628が図示右側の溝部629に嵌め込まれた状態で位置決めされる(図8参照)。この場合も移動部材623側面が規制ピン630に当接することで、移動部材623がガイド枠624から脱落するのを防止し、また、開口穴601aは、遮光板633により覆い隠され、外部からの光の侵入が防止されている。
【0055】
このようにボールプランジャー628が図8に示す右側の溝部629に嵌め込まれた状態、つまり、ミラー617が図1のc位置の状態である場合は、結像レンズ616の中心軸、つまり光軸Lbに対して光束Lが平行に変位して入射するため、投影光軸はLcになり標本3への投影角度は、実体顕微鏡7側の撮像光軸、つまり左側光路LLに対してθcとなる。
【0056】
このようにして操作部619の操作ツマミ632を操作して投影角度切換え部615のミラー617の位置を切替えることにより、標本3への投影角度をθa〜θcの範囲で選択的に変化させることができる。この場合、投影角度をθa〜θcの範囲で変化させても、光学的な関係から結像レンズ616の光軸Lb上で格子パターン像10の結像位置がずれることがない。
【0057】
なお、上述では、投影角度切換え部615を操作するための操作部619の操作ツマミ632は手動式になっているが電動式のものであってもよい。また、ミラー617を移動させるための移動部材623及びガイド部618は、上述した構成や機構に限定されるものではない。さらに、レンズ群609で構成される照明光学系や投影光学系611の配置なども上述した配置に限定されるものでない。
【0058】
したがって、このようにすれば、格子パターン投影装置6は、投影角度切換え部615の操作部619の操作により選択的に投影角度を切換えることができるので、投影装置を複数設けることなく標本3に発生する影を低減させることができる。また、形状的に影の影響を受けない標本3の場合、撮像光軸に対して投影角度を大きく設定することができるので、高精度な測定が可能になる。さらに、格子パターン投影装置6での投影角度の切換えは、対物レンズ612を有するアフォーカル光学系内に配置されたミラー617を投影角度切換え部615の操作で移動させるようにしているため、投影角度を変化させても結像レンズ616による集光光学系の光軸上で格子パターン像10の位置がずれないようにできる。また、このような動作をアフォーカル光学系内に配置されたミラー617を移動させる構成で実現できるので、シンプルな機構で、価格的にも安価に対応できる。さらに、格子パターン投影装置6での投影角度は、結像レンズ616の有効径範囲内で変えることができるため、特許文献1で開示された投影光学ユニットを複数設け、これら投影光学ユニットを独立して動かし投影角度を可変するものと比べて、コンパクトな構成で大きな角度可変に対応することができる。さらに、投影角度切換え部615は、操作部619の操作ツマミ632を操作することで、簡単に投影角度を切換えることができるので、操作性にも優れた特徴を有している。さらに、格子パターン投影装置6もコンパクトに構成可能で、且つ単一のユニットとして構成可能であるため、実体顕微鏡7に限らず、1つの観察光軸からなる顕微鏡やビデオマイクロスコープなどにも容易に装着することができるなど、システム性にも優れている。
【0059】
なお、上述の実施の形態では、格子パターン投影装置6の装置本体601に対して実体顕微鏡7をビス637で固定しているが、スライドアリを利用し装置本体601に対する実体頭徴鏡7を任意の位置に移動可能かつ固定可能にしてもよい。この時、装置本体601に対する実体顕徴鏡7の移動が焦準としての機能を果たし、焦準機構5により格子パターン投影装置6の高さ位置を変えることで、格子パターンの標本3に対する投影角θの調整幅を大きくとることができる。例えば、格子パターン投影装置6の位置をより低くし、ミラー617を位置c方向に移動させれば、より大きな角度θで試料3に格子パターン像を投影することができ、標本3に対する測定精度を高めることが可能である。
【0060】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図10〜図15は、本発明の第2の実施形態に係わる格子パターン投影法を採用した3次元形状測定装置を示すもので、図10は右側面図(全体図)、図11は正面図(全体図)、図12は格子パターン投影装置の右側一部断面図、図13は格子パターン投影装置の上面図、図14は格子パターン投影装置の正面断面図、図15は図12のE矢視図をそれぞれ示している。
【0061】
この場合、第2の実施の形態では、格子パターン投影装置6以外の構成は、第1の実施の形態と同様であり、これらは第1の実施の形態と同一部分には、同符号を付して説明を省略する。また、格子パターン投影装置6についても、光源装置8からの光束を取り込む導入部603、格子パターン604を有する光学変調素子605を備えた光学変調部606及びライトガイド901の出射端902から発せられる光束を格子パターン604全体に均一に照射させるための照明光学系を構成したレンズ群609は、第1の実施の形態と同様の構成であり、これらについても第1の実施の形態と同一部分には、同符号を付して説明を省略する。
【0062】
格子パターン投影装置6には、装置本体601上部に水平方向に延びる膨出部601bが形成されている。この膨出部601bは、実体顕微鏡7のズーム鏡筒本体701と3眼鏡筒704との間に配置されている。この場合、図12に示すように装置本体601の膨出部601bの下面には、丸オスアリ601cが設けられ、この丸オスアリ601cに対してズーム鏡筒本体701が着脱可能に組み付けられ、ビス705aで固定されている。また、膨出部601bの上面には、丸メスアリ601dが設けられ、この丸メスアリ601dに対して3眼鏡筒704が着脱可能に組み付けられ、ビス705bで固定されている。また、丸オスアリ601cと丸メスアリ601dには、それぞれ実体顕微鏡7の2つの光路LL、LRが通る開口穴601c1、601d1が形成されている(図13、図14参照)。また、装置本体601は、図14に示すように実体顕微鏡7のズーム鏡筒本体701の背面に設けられる不図示のスライドオスアリとの干渉を避けるための凹部601eが形成され、さらに後述する第2の投影光学系642からの光束Lを通過させるための開口穴601fが形成されている。さらに、図12に示すように装置本体601の背面部には、スライドオスアリ602が設けられ、焦準装置5の不図示のメスアリに着脱可能に組み付けられるようになっている。
【0063】
装置本体601は、水平方向に沿って導入部603が設けられている。そして、ライトガイド901の出射端902から導入部603を介して導入される光束の光路に沿って格子パターン604を有する光学変調素子605、投影光学系切換え部640が配置されている。投影光学系切換え部640は、光学変調素子605を通過した光束Lの光路を第1の投影光学系641又は第2の投影光学系642のどちらか一方に導くように切換えるものである。第1の投影光学系641は、実体顕微鏡7の右側光路LRを通して格子パターン像を標本3に投影するもので、投影光学系切換え部640を介して入射される光束をアフォーカル状態にするためのアフォーカル光学素子としての対物レンズ643、対物レンズ643を透過した光束の進行方向を変える光学部材644、光学部材644を通過したアフォーカル状態の光束を実体顕微鏡7の右側光路LRに導くように光路を切換える投影光路切換え手段としての投影光路切換え部645から構成されている。また、第2の投影光学系642は、実体顕微鏡7の外部から格子パターン像を標本3に投影するもので、集光光学系646、647及び集光光学系646を通過した光束の進行方向を変える光学部材648から構成され、実体顕微鏡7の撮像光軸である左側光路LLに対してθ2の角度で格子パターン像を標本3に投影するようにしている。
【0064】
投影光学系切換え部640は、図12、図13に示すようにミラー649と、ミラー649を保持し直線的に移動可能にしたガイド部650と、投影光学系切換え操作を行なう操作部652を有している。ガイド部650は、ミラー649を保持し移動可能に支持する移動部材653と、移動部材653を直線的に移動させるガイド枠654とを有している。移動部材653は、光学変調素子605を通過した光束Lが第2の投影光学系642の方向に向きを変えるような角度でミラー649を保持している。また、ガイド枠654は、装置本体601に固定されている。
【0065】
ガイド枠654の側壁には、ガイド溝655が形成され、このガイド溝655に対応する移動部材653両端にはガイド溝656が形成されている。これらガイド溝655、656との間にボール657が介挿され、このボール657によって移動部材653がスムーズに直線移動できるようになっている(図13に示すd、e方向)。移動部材653には、ボールプランジャー658が埋め込まれている。また、ガイド枠654には、ボールプランジャー658に対応して溝部659が形成されている。これにより、ボールプランジャー658が溝部659に嵌め込まれた状態で移動部材653が位置決め可能になっている。この場合、溝部659は、図15に示すように移動部材653の移動方向に沿って複数個所(図示例では2個所)形成されている。なお、660は、ガイド枠654から移動部材653の脱落を防止するための規制ピンである。
【0066】
操作部652は、図15に示すように先端部を移動部材653に固定された連結棒661を有している。この連結棒661は、装置本体601に形成された開口穴601gを貫通して装置本体601外部まで突出して設けられている。また、連結棒661は、基端部に操作ツマミ662が設けられている。この操作ツマミ662は、装置本体601外部から移動部材653の移動を操作するものである。
【0067】
このような投影光学系切換え部640は、図15に示すように操作ツマミ662をd方向に押し込みボールプランジャー658が図示d位置の溝部659に嵌め込まれた状態で、ミラー649を光路中に挿入し、光学変調素子605を通過した光束Lの方向を第2の投影光学系642側に切換え、また、操作ツマミ662をe方向に引き出し、ボールプランジャー658が図示e位置の溝部659に嵌め込まれた状態で、ミラー649を光路から外し、光学変調素子605を通過した光束Lの方向を第1の投影光学系641側に切換えるようになっている。
【0068】
一方、投影光路切換え部645は、装置本体601の膨出部601b内に配置されており、図14に示すように偏向手段としてのミラー664と、ミラー664を保持し直線的に移動可能にしたガイド部665と、投影光路切換え操作を行なう操作部666を有している。ミラー664は、光学部材644を通過したアフォーカル状態の光束を実体顕微鏡7の右側光路LRの方向に偏向させるように設けられている。ガイド部665は、ミラー664を保持し移動可能に支持する移動部材667と、移動部材667を直線的に移動させるガイド枠668とを有している。移動部材667は、第1の投影光学系641を通過した光束Lが実体顕微鏡7の右側光路LRの方向に向きを変えるような角度でミラー664を保持している。また、ガイド枠668は、装置本体601に固定されている。ガイド枠668の側壁と移動部材667の両端には、それぞれガイド溝669,670が形成され、これらガイド溝669、670との間にボール671が介挿され、このボール671によって移動部材667がスムーズに直線移動できるようになっている。移動部材667には、ボールプランジャー672が埋め込まれている。また、ガイド枠668には、ボールプランジャー672に対応して溝部673が形成されている。これにより、ボールプランジャー672が溝部673に嵌め込まれた状態で移動部材667が位置決め可能になっている。この場合、溝部673は、図15で述べたと同様に移動部材667の移動方向に沿って複数箇所、例えば2個所形成されている。また、図示しないがガイド枠668から移動部材667の脱落を防止するための規制ピンも設けられている。操作部666は、図13に示すように先端部を移動部材667に固定された連結棒674を有している。この連結棒674は、装置本体601を貫通して外部まで突出して設けられている。また、連結棒674は、基端部に操作ツマミ675が設けられている。この操作ツマミ675は、装置本体601外部から移動部材667の移動を操作するものである。
【0069】
このような投影光路切換え部645は、図13に示すように操作ツマミ675がf方向に押し込まれ、ボールプランジャー672が図示f点の溝部673に嵌め込まれた状態で、ミラー664を第1の投影光学系641の光路に挿入しアフォーカル状態の光束を実体顕微鏡7の右側光路LRに導くように切換え、また、操作ツマミ675がg方向に引き出され、ボールプランジャー672が図示g点の溝部659に嵌め込まれた状態で、ミラー664を光路から外すように切換えるようにしている。
【0070】
次に、このように構成された3次元形状測定装置の作用について説明する。
【0071】
この場合も、まず、図10に示す焦準装置5の焦準ハンドル505を操作して移動部材503をガイド部504に沿って上下動させ、標本3に対するピント合わせを行なう。また、光源装置8の光量調整ツマミ81を操作して、不図示の光源からの光束の光量を最適に調整する。
【0072】
この状態で、光源装置8から発せられた光束は、ライトガイド901の出射端902から導入部603に導かれ、照明光学系のレンズ群609を通して光学変調部606に入射し、光学変調素子605の格子パターン604に照明される。格子パターン604を通過した光束Lは、投影光学系切換え部640に入射する。
【0073】
この状態で、図15に示すように操作ツマミ662をd方向に押し込むと、移動部材653(ミラー664)はガイド枠654に沿って移動し、ボールプランジャー658が図示d点の溝部659に嵌め込まれた状態で位置決めされる。このとき、規制ピン660と移動部材653側面との接触により、溝部659を乗り越えてさらに移動することができないようになっている。また、操作ツマミ662をe方向に引き出すと、移動部材653(ミラー664)はガイド枠654に沿って移動し、ボールプランジャー658が図示e点の溝部659に嵌め込まれた状態で位置決めされる。このときも、規制ピン660と移動部材653側面との接触により、溝部659を乗り越えてさらに移動することができないようになっている。
【0074】
いま、投影光学系切換え部640の操作ツマミ662をe方向に引き出し、ミラー664をe点に移動すると、格子パターン604を通過した光束Lは、第1の投影光学系641側に入射し、対物レンズ643でアフォーカル状態になるとともに、光学部材644によって光束の進行方向を変えられて投影光路切換え部645に入射する。投影光路切換え部645は、投影光学系切換え部640と同様に作用し、図13に示すように操作ツマミ675をf方向に押し込むと、ミラー664が第1の投影光学系641の光路に挿入され、アフォーカル状態の光束を実体顕微鏡7の右側光路LRに導くように切換え(図示f位置)、また、操作ツマミ675をg方向に引き出すと、ミラー664が第1の投影光学系641の光路から外れ、実体顕微鏡7の右側光路LRからも外れる(図示g位置)。
【0075】
これにより、投影光路切換え部645の操作ツマミ675をf方向に押し込み、ミラー664をf位置に移動すると、対物レンズ643からのアフォーカル状態の光束は、ミラー664で反射され実体顕微鏡7の右側光路LRに入射する。この場合、ミラー664で反射された光束は、図14に示す丸オスアリ601cの開口穴601c1を通過して右側光路LRに入り、ズーム鏡筒本体701、対物レンズ703を通って集光され、撮像光軸すなわち左側光路LLに対してθ1の角度をもって標本3面上に格子パターン像10として形成される。この場合、実体顕微鏡7のズームハンドル702を操作して倍率を挙げれば、ズーム鏡筒本体701の作用により縮小投影された格子パターン像10が標本3上に投影される。また、投影光路切換え部645の操作ツマミ675をg方向に引き出し、ミラー664をg位置に移動すると、ミラー664が第1の投影光学系641の光路から外れ、対物レンズ643からのアフォーカル状態の光束は、ミラー664で反射されないため、標本3には、格子パターン像10が投影されず、接眼レンズ706を通した標本3の目視観察が可能になる。
【0076】
一方、図15に示すように投影光学系切換え部640の操作ツマミ662をd方向に押し込み、ミラー664を光路上のd位置に移動すると、光学変調素子605を通過した光束Lは、今度は、第2の投影光学系642側に入射する。第2の投影光学系642に入射した光束は、集光光学系646呼び光学部材648を通って集光光学系647に入射し、実体顕微鏡7の撮像光軸の左側光路LLに対してθ2の角度で格子パターン像を標本3に投影させる。
【0077】
この場合も、位相シフト法で高さ換算するためには、図9に示すように格子パターン604の投影光軸Aが実体顕微鏡7側の撮像光軸B(左側光路LL)に対してθだけ傾いた状態で、この投影光軸Aの傾き方向に濃淡パターンが変化するように投影されている。
【0078】
標本3上の格子パターン像10は、第1の実施の形態で述べたのと同様に、実体顕微鏡7の対物レンズ703を通り左側光路LLを通過して3眼鏡筒704の結像レンズ713によって集光される。この場合、3眼鏡筒704の切換え用ツマミ714を操作し光路切換え用ミラー711、712を移動させて光路LLをTVカメラ707側に切替えれば、結像レンズ713で集光される格子パターン像10は、TVカメラ707の不図示の撮像素子で結像し、ケーブル708を通して画像処理装置709に取り込まれ、モニタ710上に測定結果として表示される。
【0079】
なお、この第2の実施の形態についても、投影光縣切換え部640と投影光路切換え部645は、いずれも手動式になっているが、電動式のものであってもよい。また、投影光縣切換え部640のガイド部650及び投影光路切換え部645のガイド部665は、上述した構成や機構に限定されるものではない。さらに、レンズ群609で構成される照明光学系や第1及び第2の投影光学系641、642の配置なども上述した配置に限定されるものでない。
【0080】
したがって、このようにすれば、格子パターン投影装置6は、投影光学系切換え部640により第1の投影光学系641と第2の投影光学系642を選択的に切換え可能とし、このうち一方の第1の投影光学系641により実体顕微鏡7内の右側光路LRを通して格子パターン像を標本3に投影するようにしたので、標本3の影の低減に効果のある2方向投影に安価に対応することができる。また、第1の投影光学系641と第2の投影光学系642を切換え、つまり実体顕微鏡7の右側光路LRを通しての格子パターン像の投影と実体顕微鏡7外部からの格子パターン像の投影の切換えは投影光学系切換え部640で行われ、実体顕微鏡7の右側光路LRに対する第1の投影光学系641の切換えは投影光路切換え部645で行われるが、これらの切換えはミラーのみを挿脱する構成で実現しているので、シンプルな機構で、価格的にも安価に対応できる。さらに、投影光路切換え部645による切換えにより標本3の形状測定と実体顕微鏡7による立体視観察にも簡単に対応できるため、数値による形状把握を必要としない場合は、目視確認のみで済ませることができるなど用途に応じて柔軟に使い分けが可能である。さらに、実体顕微鏡7の変倍又はズーム機能を組み合わせれば、実体顕微鏡7の右側光路LRからの投影では観察倍率に連動して格子パターン像の投影倍率が変化することから観察倍率を上げることで格子パターン像を縮小して標本3に投影するようにできる。このことは、格子パターン像が縮小投影されると、格子パターン像のピッチを小さくできるので、標本3上の微小部分を精度良く測定することができる。つまり、格子パターン604自体がピッチ不変なものであっても、実体顕微鏡7の右側光路LRからの投影に切り換えて観察倍率を上げれば、格子パターン像が標本3に縮小して投影されるので、微小部分を高精度に測定することができる。また、2方向の投影によって得られた2つの画像を画像処理装置で合成処理すれば、影の影響の少ない高精度な測定を迅速に行なうこともできる。
【0081】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図16は、本発明の第3の実施の形態に係わる格子パターン投影法を採用した3次元形状測定装置の右側面(全体図)を示すものである。この第3の実施の形態では、格子パターン投影装置6以外の構成は、第2の実施の形態と同様であり、これらは第2の実施の形態と同一部分には、同符号を付して説明を省略する。
【0082】
この場合、格子パターン投影装置6は、第2の実施の形態の第2の投影光学系642と異なる第2の投影光学系680が用いられている。この第2の投影光学系680は、第1の実施の形態で述べた投影光学系611と同様な構成になっている。このため、第2の投影光学系680は、投影光学系611と同一部分には、同符号を付している。
【0083】
なお、新たな第2の投影光学系680を用いることで、装置本体601は、第2の投影光学系680を収容するのに最適な形状になっている 。
【0084】
このようにすれば、第1の投影光学系641では、第2の実施の形態と同様の作用を得られ、第2の投影光学系680では、第1の実施の形態の投影光学系611と同様な作用を得られることになる。これにより、第3の実施の形態によれば、全体として第2の実施の形態と同様の効果を得られるとともに、第2の投影光学系680についても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる格子パターン投影法を採用した3次元形状測定装置を示す右側面図(全体図)。
【図2】第1の実施形態の3次元形状測定装置を示す正面図(全体図)。
【図3】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる格子パターン投影装置の右側面図。
【図4】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる格子パターン投影装置の一部断面図。
【図5】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる投影角度切換え部の一部断面図。
【図6】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる投影角度切換え部の一部断面図。
【図7】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる投影角度切換え部を作用を説明するための図。
【図8】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる投影角度切換え部を作用を説明するための図。
【図9】第1の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる標本に投影された格子パターンの状態例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係わる格子パターン投影法を採用した3次元形状測定装置を示す右側面図(全体図)。
【図11】第2の実施形態の3次元形状測定装置を示す正面図(全体図)。
【図12】第2の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる格子パターン投影装置の一部断面図。
【図13】第2の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる格子パターン投影装置の上面図。
【図14】第2の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる投影光路切換え部の一部断面図。
【図15】第2の実施形態の3次元形状測定装置に用いられる光学系切換え部の断面図。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係わる格子パターン投影法を採用した3次元形状測定装置を示す右側面図(全体図)。
【符号の説明】
【0087】
1…基台、2…ステージ、3…標本
3a…突出部、4…支柱、5…焦準装置
501…装置本体、502…固定ハンドル
503…移動部材、504…ガイド部
505…焦準ハンドル、506…ビス
6…格子パターン投影装置、601…装置本体
601a…開口穴、601b…膨出部
601c…丸オスアリ、601d…丸メスアリ
601c1.601d1…開口穴、601e…凹部
601f、601g…開口穴、602…スライドオスアリ
603…導入部、604…格子パターン
605…光学変調素子、606…光学変調部
607…挿入穴、608…固定ネジ、609…レンズ群
610…駆動源、611…投影光学系
612…対物レンズ、613.614…反射ミラー
615…投影角度切換え部、616…結像レンズ
617…ミラー、618…ガイド部
619…操作部、620…保持枠
621,622…絞り、623…移動部材
624…ガイド枠、625.626…ガイド溝
627…ボール、628…ボールプランジャー
629…溝部、630…規制ピン、631…連結棒
632…操作ツマミ、633…遮光板、634…指標
635…レンズ枠、635a…開口穴、637…ビス
641…第1の投影光学系、642…第2の投影光学系
643…対物レンズ、644…光学部材
646.647…集光光学系、648…光学部材
649…ミラー、650…ガイド部
652…操作部、653…移動部材、654…ガイド枠
655.656…ガイド溝、657…ボール
658…ボールプランジャー、659…溝部
660…規制ピン、661…連結棒、662…操作ツマミ
664…ミラー、665…ガイド部、666…操作部
667…移動部材、668…ガイド枠、669.670…ガイド溝
671…ボール、672…ボールプランジャー
673…溝部、674…連結棒、675…操作ツマミ
680…第2の投影光学系、7…実体顕微鏡
701…ズーム鏡筒本体、702…ズームハンドル
703…対物レンズ、704…3眼鏡筒
705、705a、705b…ビス
706…接眼レンズ、707…TVカメラ
708…ケーブル、709…画像処理装置
710…モニタ、711.712…光路切換え用用ミラー
713…結像レンズ、714…切換え用ツマミ
715…観察光学系、8…光源装置
81…光量調整ツマミ、901…ライトガイド
902…出射端、10…格子パターン像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
格子パターンを有する光学変調手段と、前記光源からの光が前記光学変調手段を介することで形成される格子パターン像を被測定物に投影する投影手段と、前記被測定物に対して投影される格子パターン像の投影角度を可変する投影角可変手段とを有する格子パターン投影部と、
前記被測定物及び前記格子バターン像を観察するための観察光学系を有した観察部と、
を備えることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項2】
前記投影手段は、
前記光学変調手段により形成された格子パターン像の光束をアフォーカル状態にするアフォーカル光学素子と、
前記アフォーカル光束を結像させ、前記被測定物上に格子パターン像を形成する集光光学素子と
を備えることを特徴とする請求項1記載の3次元形状測定装置。
【請求項3】
前記観察部は、前記被測定物上で所定の内向角度をもって交差する二つの観察光路を有し、前記被測定物及び前記被測定物に投影された格子パターン像を観察する実体顕微鏡であることを特徴とする請求項1記載の3次元形状測定装置。
【請求項4】
前記投影手段は、前記アフォーカル光束を前記集光光学素子の光軸方向に沿って前記集光光学素子に導く光学部材を有することを特徴とする請求項2記載の3次元形状測定装置。
【請求項5】
前記投影角可変手段は、前記集光光学系に導かれる前記アフォーカル光束が、前記集光光学素子の光軸に垂直な方向に沿って平行移動するように前記光学部材を移動させる移動機溝を備えることを特徴とする請求項4記載の3次元形状測定装置。
【請求項6】
前記投影手段は、前記光学変調手段を介した光束を、前記実体顕微鏡の一方の観察光路に導いて前記被測定物上に投影する第1の投影光学系と、前記光学変調手段により形成された格子パターン像を前記実体顕微鏡の外部から前記被測定物上に投影する第2の投影光学系を有し、前記投影角可変手段は、前記光学変調手段を介した光束を前記第1の投影光学系又は前記第2の投影光学系のいずれか一方に導く光路切換え手段を有することを特徴とする請求項3記載の3次元形状測定装置。
【請求項7】
前記第1の投影光学系は、前記格子パターン像の光束をアフォーカル状態にするアフォーカル光学素子と、前記アフォーカル光束を前記実体顕徴鏡の一方の観察光路に入射させる反射部材を有することを特徴とする請求項6記載の3次元形状測定装置。
【請求項8】
前記第2の投影光学系は、前記光学変調手段により形成された格子パターン像の光束をアフォーカル状態にするアフォーカル光学素子と、前記アフォーカル光束を結像させて前記被測定物上に格子パターン像を形成する集光光学素子と、前記アフォーカル光束を前記集光光学素子の光軸方向に沿って導くように設けられた光学部材とを有し、
前記投影角度可変手段は、前記アフォーカル光束を前記集光光挙素子の光軸に垂直な方向に沿って平行移動するように前記光学部材を移動させる移動機構とを有することを特徴とする請求項6記載の3次元形状測定装置。
【請求項9】
直立して設けられる支柱に沿って移動可能に設けられる焦準装置と、
前記焦準装置とともに移動可能に設けられ、光源からの光路上に配置されたスリット状の格子パターンを有する光学変調手段と、前記光学変調手段より形成される格子パターン像を標本に対し所定角度傾けて投影する投影光学系とを有するユニット化された格子パターン投影装置と、
前記格子パターン投影装置を介して前記焦準装置に設けられ、前記標本に投影された格子パターン像を対物レンズを介して観察する観察手段を有する顕微鏡と、
前記観察手段で観察される前記格子パターン像を撮像する撮像手段と、
を有し、前記標本に対する前記格子パターン像の投影角度を調整可能であることを特徴とする3次元形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−85753(P2007−85753A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271761(P2005−271761)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】