説明

3次元測定装置

【課題】2次元画像生成時にZ軸真直度の機械的な誤差に基づく画素のずれを補正し、2次元画像の2点間の幅測定を正確に行える次元測定装置を提供する。
【解決手段】共焦点顕微鏡10は、Zステージ21によりZ軸方向に移動可能に設けられ、試料16に対して異なるZ位置での焦点画像を測定カメラ18で撮像し、制御ユニット20へ出力する。制御ユニット20は、Zステージ21のZ軸真直度のずれに基づく画素のずれを補正する補正テーブル201を備えている。制御ユニット20は、カメラ画像取込時にZ軸の高さ位置をリニアスケール23から読取り、補正テーブル201に記憶されている補正データに基づいてカメラ画素の位置を補正し、最大値メモリに保持されている最大輝度値と比較して2次元画像を生成し、Z軸真直度のずれに起因する画素の位置ずれを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さに関する2次元画像を生成し、この2次元画像から2点間の幅を測定する3次元測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD基板や半導体ウェハ等の試料の共焦点画像を共焦点顕微鏡により取得し、その画像を用いて試料の表面形状(高さ)を測定する3次元測定装置が提供されている。この種の3次元測定装置は、例えば被写界深度の浅い共焦点光学顕微鏡を用い、この共焦点光学顕微鏡の合焦位置を光軸方向(Z軸)に移動させながら当該顕微鏡により拡大された試料の光学像を測定カメラで撮像して、その撮像画像データをメモリに格納する。そして、この撮像画像データの各画素に対して輝度が最大となる画素を検出し、その最大輝度の画素を集めて1枚の画像を合成することで全焦点画像(extended focus image)を取得できる。または、その最大輝度が得られたときの合焦位置(高さ)を各画素の位置であるとして1枚の画像を作成することで、高さ画像または断面プロファイルを取得できる。
【0003】
また、従来、上記3次元測定装置で生成された2次元画像から2点間の幅を測定することが行われている。
【0004】
上記3次元測定装置は、図4に示すようにして2次元画像を生成し、この2次元画像から2点間の幅を測定する。すなわち、測定カメラで撮像された図4(a)に示すカメラ画像1の各画素(ピクセル)2において、同図(b)に示すようにZ軸を上下の1方向に移動(スキャン)した時の測定カメラから得られる各画素ZP1、ZP2、…毎の輝度値を最大値メモリに保持されている対応画素の最大輝度値と比較し、輝度値のピークによって示される平面画像とピーク時のZ軸高さ値をメモリに記憶する。なお、3次元測定装置では、共焦点光学顕微鏡をZ軸方向に移動するZステージ駆動部に高さ情報を得るためのリニアスケールを搭載しているので、このリニアスケールにより測定された値を上記Z軸高さ値としてメモリに記憶する。
【0005】
上記2次元画像の生成において、図5に示すようにZ軸真直度に誤差がある場合、Z軸の上下動作が試料に対して垂直に行われないために、異なる高さの共焦点画像の各画素の最大値比較は、例えば画素ZP2の位置がずれていた場合には、その近隣の画素ZPxと誤って比較することになる。従って、生成した2次元画像は、Z軸真直度の誤差を含んだものとなり、この画像を用いて2点間の幅を測定すると正しい結果が得られない可能性がある。
【0006】
なお、画像のずれを補正する公知技術として、床や装置内部の電動部分による振動に起因するX−Y平面上のずれ量を検出しつつ、ずれを補正し、補正した画像データを保存する走査型レーザ顕微鏡(例えば、特許文献1参照。)や、時間経過と共に標本がXY軸方向にずれる量を検出して補正するレーザ走査型顕微鏡(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
【特許文献1】特開2002−98901号公報
【特許文献2】特開2004−191846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように3次元測定装置により2次元画像を生成し、この2次元画像から2点間の幅を測定する場合、2次元画像生成時にZ軸真直度に機械的な誤差があると、Z軸の上下動作が試料に対して垂直に行われないために、その誤差に応じて画素の位置が変動し、異なる高さの共焦点画像の各画素の最大値比較を行う際に、その近隣の画素と誤って比較することになり、2点間の幅測定に測定誤差を生じるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、2次元画像生成時にZ軸真直度の機械的な誤差に基づく画素のずれを補正し、2次元画像における2点間の幅測定を正しく行うことができる3次元測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る3次元測定装置は、試料の光学像を拡大する共焦点顕微鏡と、前記共焦点顕微鏡により拡大された前記試料の光学像を撮像してその画像データを出力するカメラと、前記試料に対する前記共焦点顕微鏡の焦点位置をその光軸方向に可変移動する駆動機構と、前記駆動機構により駆動される前記共焦点顕微鏡の光軸方向の位置を測定するリニアスケールと、前記駆動機構を制御する共に、前記カメラにより撮像された画像データを処理する制御ユニットとを具備し、
前記制御ユニットは、前記駆動機構の光軸方向真直度のずれに基づく画素のずれを補正するための補正データを記憶してなる補正テーブルと、前記カメラにより撮像された前記試料の画像データを取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により前記カメラの画像データを取得する際、前記リニアスケールの測定値に基づいて前記補正テーブルに記憶されている補正データを参照し、前記画像データの各画素の位置を補正する補正手段と、前記補正手段により補正された各画素の輝度値を最大値メモリに保持される最大輝度値と比較し、輝度値のピークによって示される2次元画像を生成する画像生成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2次元画像生成時に、予め作成した補正テーブルに基づいてZ軸真直度のずれに伴うカメラ画素の位置ずれを補正して画像を生成することで、2次元画像における2点間の幅測定を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元測定装置の構成図である。図1において、10は共焦点顕微鏡で、共焦点ユニット11を主体として構成される。上記共焦点ユニット11は、下側に対物レンズ12を備えると共に、内部にビームスプリッタ(図示せず)を備え、このビームスプリッタ部に外部の照明装置13から照射される光がライトガイド14及び投光管15を介して導かれ、上記ビームスプリッタ部から対物レンズ12を介して試料16に集光される。
【0013】
照明装置13は、例えばメタルハライドランプを用いた光源であり、制御ユニット20からの指令に従って電動絞りやフィルタにより光量(照度)及び波長帯域を変更できるようになっている。
【0014】
上記試料16は検査ステージ17上に載置される。この検査ステージ17は、制御ユニット20により駆動部(図示せず)が制御され、X、Yの水平方向に駆動される。また、上記共焦点ユニット11の上部には、例えばCCDカメラを用いた測定カメラ18が装着される。
【0015】
上記照明装置13から対物レンズ12を介して試料16に照射された光は、該試料16で反射されて対物レンズ12を通り共焦点ユニット11に入る。共焦点ユニット11は、焦点の合った光のみ通過する特性があり、測定カメラ18には現在焦点が合っている部分の画像のみ映るようになっている。
【0016】
共焦点顕微鏡10は、Zステージ21により垂直方向に移動可能に設けられる。Zステージ21は、Zモータ22により駆動され、試料16に対する共焦点顕微鏡10の焦点位置を垂直方向(Z軸方向)、つまり共焦点顕微鏡10の光軸方向に移動させる。
【0017】
上記Zモータ22は、制御ユニット20からの指示に従って動作するZステージ駆動部(図示せず)により駆動される。このZステージ駆動部は、共焦点顕微鏡10のZ軸方向における焦点位置を高精度に測定する高分解能リニアスケール23を搭載し、このリニアスケール23により取得したZ軸座標が制御ユニット20からの指示と一致するようにZステージ21を制御する。
【0018】
上記のようにZステージ21を移動させることにより、異なるZ位置での焦点画像を測定カメラ18で撮像することができる。この測定カメラ18で撮像された画像は、制御ユニット20へ送られて処理される。
【0019】
制御ユニット20は、装置全体を制御する機能を備えると共に、Zステージ21をZ軸方向に移動したときのZ軸真直度のずれに基づく画素の位置ずれを補正するための補正テーブル201を備えている。この補正テーブル201には、予め例えばレーザ干渉計等の高精度の測定器を使用して、Zステージ21をZ軸方向に移動したときの各位置を測定し、その測定結果に基づいてZ軸真直度のずれに伴う画素の位置ずれを補正するための補正データを記憶させている。
【0020】
また、制御ユニット20は、図示しないが、測定カメラ18により撮像された試料16の画像データを取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により測定カメラ18の画像データを取得する際、リニアスケール23の測定値に基づいて予め補正テーブル201に記憶されている補正データを参照し、画像データの各画素2の位置を補正する補正手段と、前記補正手段により補正された各画素の輝度値を最大値メモリに保持される最大輝度値と比較し、輝度値のピークによって示される2次元画像を生成してメモリに記憶する画像生成手段等からなる画像処理機能を備えている。
【0021】
次に上記のように構成された3次元測定装置を用いて2次元画像を生成する場合の動作を説明する。2次元画像の生成時、照明装置13は制御ユニット20からの制御指令に従って所定の照明光を照射する。照明装置13から照射された光は、ライトガイド14及び投光管15を通って共焦点ユニット11内に導かれ、対物レンズ12により試料16上に集光される。
【0022】
試料16に照射された光は、該試料16で反射されて対物レンズ12を通り共焦点ユニット11に入り、焦点の合った光のみが共焦点ユニット11を通過して測定カメラ18で撮像される。この測定カメラ18で撮像された試料16の画像は、制御ユニット20へ送られる。
【0023】
制御ユニット20は、図4(a)に示したように測定カメラ18で撮像されたカメラ画像1の各画素2において、同図(b)に示すようにZ軸を上下の1方向に移動した時の測定カメラ18から得られる各画素ZP1、ZP2、…毎の輝度値を最大値メモリに保持されている最大輝度値と比較し、輝度値のピークによって示される2次元画像とピーク時のZ軸高さ値をメモリに記憶する。
【0024】
すなわち、制御ユニット20は、照明装置13から照明光が試料16に照射された状態で、Zステージ21を駆動して共焦点顕微鏡10の焦点位置を光軸方向に段階的に移動させながら、各焦点位置における試料16の画像を測定カメラ18に撮像させる。また、この撮像により各焦点位置における試料16の画像が得られるごとに、最大輝度画像の同一位置の画素との間で輝度値を比較する。このとき、今撮像したカメラ画像1における画素2の輝度値の方が高ければ、最大輝度画像の当該画素の輝度値を更新して最大値メモリに記憶させる。またそれと共に、この輝度値が高い画素を撮像したときの共焦点顕微鏡10の焦点位置を、当該画素に対応付けてメモリに記憶させる。これが高さ画像となる。上記共焦点顕微鏡10の焦点位置(光軸方向の高さ)は、リニアスケール23で測定した値を用いる。なお、最大輝度画像の初期値は全て0なので、焦点位置を移動させる最初の位置で得られた最初の画像は、そのままその時点での最大輝度画像となる。
【0025】
制御ユニット20は、上記2次元画像を作成する際、画像取込時のZ軸の高さ位置をリニアスケール23から読取り、予め作成しておいた補正テーブル201に基づいてZ軸真直度を計算してカメラ画像1の画素位置を補正し、最大値メモリに保持されている最大輝度値と比較し、輝度値のピークによって示される2次元画像を生成してメモリに記憶する。
【0026】
上記2次元画像生成時のZ軸真直度を考慮した補正動作を図2を参照して説明する。図2はZ軸真直度において、画素ZP2に対しては矢印aで示す右方向の誤差、画素ZP3に対しては矢印bで示す左方向の誤差を生じている場合を示している。矢印a、bの長さは実際の真直度を表しており、その長さに応じて真直度の方向とは反対方向に画素ZP2、ZP3を矢印a’、b’で示すように補正し、最大値メモリに保持されている最大輝度値と比較する。これらの処理は、測定カメラ18で撮像された画像の全ての画素に対して行う。
【0027】
上記のように2次元画像の生成時に、予め作成した補正テーブル201に基づいてZ軸真直度のずれに伴うカメラ画素の位置ずれを補正して画像を生成することで、2次元画像を利用した2点間の幅測定において、誤差を生じることなく正確に測定することができる。
【0028】
また、上記2次元画像を利用した2点間の幅測定において、更に測定分解能を向上したい場合には、図3(a)、(b)に示すように測定カメラ18により撮像されたカメラ画像1の各画素2について隣接画素との間で画素補間を行って画素数を数倍に拡張し、例えば画素2bについて左右隣の画素2a、2cとの間で画素補間を行って画素数を5倍に拡張し、補正テーブル201に基づいてZ軸真直度を考慮した補正を行うことで、測定カメラ18の画素分解能の1/5の分解能で測定を行うことができる。なお、図3(b)に示す画素2a〜2cは、カメラ画素中の任意の3画素を示している。実際の2次元画像に対しては、3×3画素の積和演算(フィルタ)により補間する。
【0029】
上記のように測定カメラ18により撮像された画像1について画素補間を行って画素数を数倍に拡張し、サブピクセル単位でZ軸真直度を補正することで、測定分解能を向上させることができる。
【0030】
以下に補正テーブル201の作成方法の他の一例を説明する。この作成方法では、結晶性に由来する直線的な構造を持つ試料を校正用に用いる。校正試料としては、例えばシリコン(100)基板上に成長させたピラミッド状のシリコン単結晶を用いることができ、このSiピラミッドは正確に4つの(111)面を有し、その辺(ファセットエッジ)は直線である。このような校正試料を前述の共焦点顕微鏡で測定し、全焦点画像と高さ画像を得る。
【0031】
図6は、完全でない補正テーブルを用いたときのSiピラミッドの全焦点画像である。基板面とエッジだけから強い反射光が戻ってくるため、エッジは他の部分とは容易に判別することができる。真直度が完全に補償されていないため、直線になるはずのエッジがわずかに曲線になっている。
【0032】
次に、得られた全焦点画像と高さ画像をパソコンなどに取り込み、操作者の操作により画像処理によりエッジを検出すべきエリアを帯状に指定する。図6にはこのエリアを斜線で示してある。帯状エリアは、その内部にエッジを1本のみ含むように設定する。そして、Canny法のような公知のエッジ検出法を用いて、帯状エリア内の全焦点画像からエッジを検出し、エッジとして検出された画素のX、Y座標と、高さ画像の値(Z座標)の組を、複数得る。
【0033】
次に、これらの組について最小二乗法により回帰直線を計算し、当回帰直線からのx、yの偏差を必要な補償量とする。即ち、偏差Vx、VyをそれぞれZの関数として多項式(2次式)近似やナイキスト補間等で補間し、その偏差Vx(Z)、Vy(Z)を現在の補正テーブルの値に足しこめばよい。
【0034】
この方法によれば、全焦点画像と高さ画像を元に補償料を算出するので、3次元測定方法自体は変更する必要が無いほか、Zスキャンの開始終了位置やスキャン速度等が実際の測定と同じ条件(Zスキャン速度)で補正テーブルを作成できる利点がある。ただし、そのZスキャン範囲で合焦点像が得られるように、校正試料の高さは(基板を底上げするなどして)実際の試料と同程度に合わせておく必要がある、なお、本方法を繰り返せば、更に補正テーブルの精度向上が見込める。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元測定装置の構成図である。
【図2】同実施形態における2次元画像生成時のZ軸真直度を考慮した補正動作を説明するための図である。
【図3】同実施形態において、2次元画像生成時に画素補間によりカメラ画素を拡張して測定分解能を向上させる場合の動作説明図である。
【図4】3次元測定装置により2次元画像を生成する場合の説明図である。
【図5】従来の3次元測定装置により2次元画像を生成する場合において、Z軸方向真直度による影響を説明するための図である。
【図6】完全でない補正テーブルを用いたときのSiピラミッドの全焦点画像である。
【符号の説明】
【0037】
10…共焦点顕微鏡、11…共焦点ユニット、12…対物レンズ、13…照明装置、14…ライトガイド、15…投光管、16…試料、17…検査ステージ、18…測定カメラ、20…制御ユニット、21…Zステージ、22…Zモータ、23…リニアスケール、201…補正テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の光学像を拡大する共焦点顕微鏡と、前記共焦点顕微鏡により拡大された前記試料の光学像を撮像してその画像データを出力するカメラと、前記試料に対する前記共焦点顕微鏡の焦点位置をその光軸方向に可変移動する駆動機構と、前記駆動機構により駆動される前記共焦点顕微鏡の光軸方向の位置を測定するリニアスケールと、前記駆動機構を制御する共に、前記カメラにより撮像された画像データを処理する制御ユニットとを具備し、
前記制御ユニットは、
前記駆動機構の光軸方向真直度のずれに基づく画素のずれを補正するための補正データを記憶してなる補正テーブルと、
前記カメラにより撮像された前記試料の画像データを取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により前記カメラの画像データを取得する際、前記リニアスケールの測定値に基づいて前記補正テーブルに記憶されている補正データを参照し、前記画像データの各画素の位置を補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された各画素の輝度値を最大値メモリに保持される最大輝度値と比較し、輝度値のピークによって示される2次元画像を生成する画像生成手段と
を備えることを特徴とする3次元測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−288162(P2009−288162A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143029(P2008−143029)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】