説明

AChE−NMDA組み合わせウェーハ

本発明は、親水性ポリマーをベースとし、湿気と接触することにより迅速に崩壊し、認知症関連疾患を処置するために用いられるウェーハ状医薬製品であって、提示が、認知症を処置するのに適する少なくとも2種の活性剤(抗認知症剤)の活性剤の組み合わせを含む、前記ウェーハ状医薬製品に関する。好ましくは、抗認知症剤を、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AchE阻害剤)およびNMDAアンタゴニスト(N−メチル−D−アスパラギン酸アンタゴニスト)を含む群から選択するべきである。本発明はさらに、このような活性剤の組み合わせの、認知症関連疾患、例えばアルツハイマー病を処置するための、経口投与可能な医薬製品を製造するための使用、並びに上記の医薬製品の1種を経口投与することによる、アルツハイマー病の対症療法のための手順に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性ポリマーをベースとし、水分と接触することにより迅速に崩壊し、認知症関連疾患を処置するために用いられるシート状医薬製剤であって、剤形が、認知症を処置するのに適する少なくとも2種の活性剤(抗認知症剤(antidementia agent))の活性剤の組み合わせを含む、前記シート状医薬製剤に関する。
本発明はさらに、このような活性剤の組み合わせの、認知症関連疾患、例えばアルツハイマー病を処置するための、経口投与可能な医薬製品を製造するための使用、並びに上記の医薬製品の1種を経口投与することによる、アルツハイマー病の対症療法のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツでは、現在約120万人の人が、認知症を罹患しており−増大する傾向にある。この理由は、増大する数の高齢者および、認知症に罹患する危険が年齢に伴って増大するという事実にあると見られる。65〜69歳の年齢において、20人に「わずか」1人が、認知症に罹患している一方、年齢が80〜90歳の人の中では、罹患した人の比率は、ほぼ3分の1程度に高い。
【0003】
全人口における高齢者の比率が、上昇すると予期されているため、我々は、認知症の症例の増大を同様に予期しなければならない。専門家は、2030年までに、症例の数が2倍になると予想している。
【0004】
アルツハイマー病は、現在、認知症の最も一般的な形態であり、認知症は、認知機能、例えば思考、記憶および思考内容の関連づけを、日常生活における活動および一連の活動をもはや独立して行うことができない程度に喪失することであると理解されている。この最終段階において、認知症はまた、致命的であり得る。
【0005】
アルツハイマー病は、文献においては、記憶、知能および挙動の損傷に関連する、CNSの進行性かつ変性の疾患であると定義されている;記憶の喪失は、個人的回想のみならず、食物の摂取、空間定位、基本語彙などの程度に初歩的な行動にも影響し得る。記憶性能のこの損傷の原因の1つは、神経伝達物質であるグルタミン酸塩およびアセチルコリンの損傷である。
【0006】
人口の上昇する平均年齢に伴って、アルツハイマー病(Morbus Alzheimer)、または短縮してアルツハイマーは、すべての認知症関連疾患についてと同様に、処置を必要とする増大する数の患者を生じる。
当該疾患は、治癒の見込みが全くない変性であり、進行性の疾患であるため、処置の目的は、知的能力の低下の改善または少なくとも安定化および遅延を達成することでなければならない。これには、非薬物手段、例えば記憶訓練のみならず、適切な薬物療法もまた必要である。
【0007】
進行した認知症において、療法の焦点は、最終的には日常の生活の活動を行う患者の能力を維持すること並びにケアへの依存度および養護施設への照会を遅延させることに合わせられる。
上記で説明したように、疾患の進行を遅延させ、症状の改善をもたらし得る多数の薬物があるにもかかわらず、現在はアルツハイマーを治癒させるのに有用な有効な剤はない。
【0008】
特に、認知症において損傷されるメッセンジャー物質であるグルタミン酸塩およびアセチルコリンに対する正の影響を有するアルツハイマー認知症の薬物処置に有用である、2つの群の医薬品がある。
これらの群の1種は、神経保護NMDAアンタゴニスト(N−メチル−D−アスパラギン酸)であり、これには、例えばメマンチンが含まれる。
【0009】
メマンチンは、NMDAレセプターにおけるグルタミン酸塩の取り込みを停止させ、したがって永久的な刺激の過負荷が低減され、刺激の伝導において、シグナルは、再び認識され得る。連続的な過負荷の結果としての神経細胞の死を、このようにして防止または遅延させることができる。患者は、再び精神的に一層活動的になり、日常の生活の活動を行う当該患者の能力は、増大する。明白な改善がまた、養護ケアをすでに必要としている患者において、見出され得る。
【0010】
アルツハイマーの対症療法のための他の群の医薬品は、AchE阻害剤(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)であり、これは、神経伝達物質であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の分解を防止し、これにより脳中でのシグナル伝導に対して正の影響を有する。
【0011】
患者に対する前述の有利な効果に加えて、十分な薬物療法が特に重要である1つの理由は、これにより、ケアを付与するにあたり消費される時間が大幅に減少し、これによりケアの費用を低下させることができることである。これにより、費用を節約することのみならず、非薬物療法に必要な時間を得ることも、可能である。
【0012】
しかし、特にアルツハイマー病の療法において、また一般的に認知症の療法において、以下の問題にしばしば直面する:
【0013】
患者の記憶技術の欠如のために、所要のコンプライアンスが不足している。即ち、薬物を服用することがしばしば忘れられ、次にこれにより記憶性能が尚さらに低下し、次にこれにより必要な薬物を服用することにおけるさらなる低下がもたらされる。極端な場合において、患者は、経口剤形を飲み込むことの「知識を喪失し」、したがってこれらの患者は、経口形態の療法をもはや得ることができない。
経口療法において、患者が実際に薬物を服用したか否かをチェックすること(錠剤が飲み込まれていない、飲み込むのを忘れたなど)により、しばしば問題が提起される。
【0014】
さらに、当該療法は、1種の薬物を服用する必要があるのみならず、しばしば異なる薬物の組み合わせを用いるという事実により一層困難になる。しかし、各々の追加の薬物により、この薬物およびしばしば、原則として高齢の患者が服用する必要がある他の必要な薬物を服用するのを忘れるかまたは省略する危険が増大する。さらに、服用する必要がある錠剤の増大する数と共に、これらを服用することに対する嫌気が、多くの場合においてまた増大し、したがって患者のコンプライアンスが低下する。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の根底にある課題は、アルツハイマーの対症療法のための組み合わせ療法を単純かつ安全な方式で行うことが可能であり、前述の欠点を防止または低減することが可能である医薬製剤を提供することにあった。本発明の根底にある他の課題は、認知症関連疾患の薬物の組み合わせ療法のための方法を示唆することにあった。
【0016】
療法における活性剤の投与のために一般的に用いられる剤形は、錠剤またはカプセルである。
【0017】
錠剤またはカプセルは、服用するのが容易であるが、これらにより、現実に服用されたか否かをチェックするのが一層困難になり、活性剤は、胃腸管を介して吸収される際には、「初回通過効果」の影響を受けやすく、したがって所望の治療効果を達成するために、錠剤またはカプセルにおいて高い初期の活性剤濃度が必要である。
【0018】
さらに、活性剤を口腔中に放出し、口腔粘膜を介して直接吸収され得る、バッカル錠または舌下錠を用いることが知られている。
このような錠剤の欠点は、しばしば不快な口感触(mouthfeel)および、これらの緻密な形態の理由による、錠剤の低速に過ぎない崩壊および、この結果としての活性剤の低速の放出である。さらに、飲み込み方の知識を喪失したか、または高度に混乱している患者において、錠剤またはカプセルを投与する際の「息詰まり」の危険がある。
【0019】
本発明の課題は、抗認知症剤の群に属する少なくとも2種の活性剤が、口腔中に適用した後に迅速に崩壊する親水性ポリマーフィルム中に含まれていることにより、解決される。好ましくは、前記親水性ポリマーフィルム中に含まれる1種の活性剤は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AchE阻害剤)であり、第2の活性剤は、NMDAアンタゴニスト(N−メチル−D−アスパラギン酸アンタゴニスト)である。
【0020】
認知症の処置における活性剤の組み合わせの改善された治療的成功は、種々の活性剤が種々の作用の機構により有効であり、これにより記憶技術に対する正の効果が、互いに補完または強化されるという事実のためである。
したがって、場合によっては、個別の活性剤の用量が低下され得るか、またはこれらの効果が増強され得る。
【0021】
活性剤を組み合わせる場合においてさえも、薬物の整合性のある摂取および良好なコンプライアンスは、最適な有効性を確実にするための必要条件である。
これらの活性剤の組み合わせをシート状剤形(ウェーハ)において投与することにより、容易な摂取のみならず、活性剤成分の互いに対する正確な適合も可能になり、したがって特に認知症患者において問題である、摂取を忘れたことによる、または1種の活性剤のみの二重の摂取による誤った投薬およびこの結果不適切な療法は、発生しない。
【0022】
迅速に崩壊する親水性ポリマー製のウェーハの形態で経口的に適用可能な剤形により、ウェーハが直ちに口内で崩壊し、したがって投与および摂取の監督が、養護職員にとって一層容易になるため、患者による薬物の摂取は、保証される。
さらに、本発明の剤形は、すでに療法に適合された活性剤の組み合わせを含み、したがって依存型患者への薬物の投与は、1回監督する必要があるに過ぎない。
【0023】
患者自体薬物療法に関与する患者について、活性剤の組み合わせを含むウェーハにより、摂取が顕著に促進され、したがって摂取スケジュールに応じた必要な整合した摂取が、保証される。コンプライアンスおよび療法の成功が、共に改善され、誤った適用の危険は、最小化される。
【0024】
口腔粘膜を介しての活性剤の吸収により、他の経口の剤形と比較して、飲み込みの困難を有する患者、錠剤を服用するのを拒否する患者、または認知症の理由により飲み込む知識を喪失した患者にも、経口経路を介して薬物を投与することができるという追加の利点が得られる。
【0025】
さらに、非経口投与、即ち粘膜を介しての活性剤の直接的な吸収の結果、活性剤は、初回通過効果の影響を受けにくい。このようにして、活性剤は、これがこの作用の部位に到達する前に代謝されないため、初期の用量を、可能な限り低く保持することができる。さらに、不完全な、または遅延された吸収による活性剤濃度の変動、および前に摂取された食物の量に依存する作用の遅延された開始は、抑制されるかまたは最小化される。このようにして、患者を、所要の処置用量に対して一層信頼可能に安定化することができ、例えば空腹で薬物を服用する必要性を、低下させることができる。
【0026】
さらに、単一の活性剤の組み合わせは、相乗効果を有する種々の作用の機構を有する活性剤を含んでいてもよく、したがって異なる生理学的活性および認知症の種々の症状の処置の結果、単一成分の組成物に関する場合よりも少量の活性剤を、投薬することができる。この種類の正の累積的効果は、メマンチンとAchE阻害剤との活性剤の組み合わせを用いて発生することが、知られている。
【0027】
本発明の剤形において、種々のAchE阻害剤、向知性薬およびNMDAアンタゴニストの組み合わせを用い、1つの群の数種の活性剤を本発明の医薬製品中で用いることも、可能である。
ウェーハは、5種まで、好ましくは3種まで、一層好ましくは2種までの活性剤を含んでいてもよく、これらの活性剤の少なくとも1種は、AchE阻害剤、NMDAアンタゴニストまたは向知性薬である。
【0028】
互いに対する活性剤の比率を変化させることにより、処置のそれぞれの必要性および形態に対する投与量を適合させることが可能である。患者の精神状態が変化する場合には、当該患者を、原則として比較的高い活性剤濃度との組み合わせである、変化した活性剤の組み合わせを有する剤形により、容易に安定化することができる。
【0029】
ウェーハの単純であり低費用の製造の理由により、種々の活性剤濃度を含む多数の薬物を提供することが、可能である。
ウェーハを積層物で構成する場合には、例えば、活性剤含有層の厚さのみを変化させること、または活性剤の濃度を変化させることが、可能である。
他方、異なる活性剤含量を有するが、同一の活性剤比率を有する薬物を、単に剤形の表面を種々の大きさに切断することにより、製造することができる。
【0030】
さらに、これらの平坦な形状のために、当該活性剤の組み合わせを含む本発明のウェーハを、例えば財布中に容易に携帯することができ、旅行時においても即座に利用できる。これらは、服用するのが容易であり、またこれらは、迅速に奏効し、これにより、尚移動可能な患者について規則的な摂取が促進される。
【0031】
組み合わせウェーハにおいて用いるのに適する抗認知症剤は、AchE阻害剤、NMDAアンタゴニストおよび向知性薬を含む。
好ましい態様において、活性剤の組み合わせは、AchE阻害剤、NMDAアンタゴニストおよび向知性薬を含む群から選択された少なくとも2種の活性剤からなる。
【0032】
この点における好適なAchE阻害剤は、リバスチグミン、ガランタミンおよびドネゼピル(donezepil)、並びにこれらの活性剤の薬学的に許容し得る塩である。NMDAアンタゴニストとして、メンタミン(mentamine)を用いてもよい。本発明において用いる向知性薬の群には、ピラセタムおよびナフチドロフリルが含まれる。
【0033】
さらに、当該製剤は、一般的に血管拡張薬、カルシウムアンタゴニストおよび血流を刺激する剤に分類されるさらなる活性剤を含んでいてもよい。
【0034】
認知症関連疾患の療法に適するのは、さらに、ニモジピン、ジヒドロエルゴトキシン、ピラセタム、ペントキシフィリン、ナフチドロフリル、イチョウエキス、並びにこれらの活性剤の薬学的に許容し得る塩を含む群から選択された少なくとも1種の活性剤を含むシート状剤形である。好ましくは、これらの活性剤の1種を、AchE阻害剤および/またはNMDAアンタゴニストと組み合わせる。
【0035】
ウェーハの合計の活性剤含量は、ウェーハの合計重量に対して、5%〜50%、好ましくは10%〜30%、一層好ましくは15%〜25%である。
互いに対する活性剤の比率を、自由に変化させることができ、これは、活性剤の効能並びに所望の効果および所要の製剤に依存する。
【0036】
当該剤形を製造するのに適するのは、親水性水溶性および/または膨潤性ポリマーフィルムを形成する水溶性または膨潤性ポリマーである。剤形マトリックスのポリマーは、デキストラン、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースまたはプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(例えばWalocel)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースを含む多糖類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩、ペクチン類、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン天然ガム、トラガカント、高分散二酸化ケイ素、ベントナイト、並びに前述の親水性ポリマーの誘導体、またはこれらのポリマーの2種もしくは3種以上の組み合わせを含む群から選択される。代替として、ポリマーフィルムは、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー製であってもよい。
【0037】
本発明の剤形中のポリマーの比率は、当該剤形の乾燥質量に対して、好ましくは5〜95重量%、一層好ましくは15〜75重量%である。
物理化学的特性を改善する、例えば脆性または脆化を低減するために、保湿剤、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールエステルなどを、フィルムに加えてもよい。
【0038】
他の態様において、酸化防止剤、例えばビタミンC(アスコルビン酸)、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ヒドロキシ安息香酸誘導体を、ウェーハに加えて、フィルムおよび活性剤を安定化させてもよい。さらに、酸性および塩基性イオン交換体を、安定剤として用いてもよい。
【0039】
他の態様において、他の成分、例えば染料、顔料、風味香味剤(taste flavouring)、天然および/または合成香味物質、甘味料、緩衝系を、フィルムに加えてもよい。特に、風味香味剤および香味物質は、活性剤のしばしば劣悪な特有の風味または臭気を防止し、かつ/または剤形に良好な風味を付与することができ、したがって薬剤を服用する患者の用意が、顕著に改善される。風味を隠すために、製剤の活性剤(1種または2種以上)を、酸性または塩基性イオン交換体に結合させることも、可能である。
【0040】
緩衝系を加えることは、一方でフィルムおよび活性剤を外側の影響に対して貯蔵の間安定化する役割を果たし;他方で、剤形のpHは、これにより生理学的に許容し得るpH値に調整され得、したがって粘膜の刺激は、回避される。緩衝系を用いることにより、酸性または塩基性の活性剤のマトリックスへの溶解性を改善することも、可能である。
【0041】
本発明の剤形は、薄くなるように、例えばウェーハの形態に構成される。剤形の厚さは、好ましくは0.1〜5mm、一層好ましくは0.5〜1mmである。剤形の厚さについての下限は、約50μmである。剤形の表面積は、0.09cm〜12cm、好ましくは1cm〜8cm、一層好ましくは3cm〜6cmである。
【0042】
他の態様において、本発明のウェーハは、崩壊剤またはウィッキング剤(wicking agent)、例えば重炭酸塩−酸混合物またはアエロジル(aerosil)を含み、これは、液体との接触により活性化され、これを適用した後にウェーハの崩壊を促進し、これによりまた活性剤の放出を促進する。
【0043】
他の好ましい態様において、ウェーハは、発泡体として存在し、したがって活性剤の放出は、拡大された表面のために尚一層迅速に行われる。この態様において、発泡体の空洞は、液体形態での活性剤または補助剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0044】
粘膜を介しての活性剤の吸収を改善するために、透過促進剤、例えば脂肪族アルコール類、脂肪酸類、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪族アルコールエステル類および脂肪酸エステル類の群からの物質、特にモノラウリル酸ソルビタンまたは長鎖脂肪酸のメチル、エチルもしくはイソプロピルアルコールとのエステル、または脂肪族アルコールの酢酸もしくは乳酸とのエステル、またはDMSO(ジメチルスルホキシド)およびオレイン酸ジエタノールアミンなどの物質を、同様にフィルム中に包含させてもよい。これらの物質の構成成分の量は、存在する場合には、各々の場合において活性剤マトリックスの合計重量に対して0.1重量%〜25重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0045】
さらに、ウェーハの組成物は、活性剤の放出を遅延させる化合物を含んでいてもよい(例えばマイクロカプセル封入)。
他の態様において、ウェーハは、粘膜付着特性を有し、したがってこれは、これが完全に溶解するまで粘膜に付着する。粘膜に付着するウェーハを吐き出すことができないため、この態様により、さらに、薬剤の投与を監督することが一層容易になる。
【0046】
他の好ましい態様において、活性剤の少なくとも1種は、イオン交換体に結合し、したがって親水性ポリマーは、口腔において迅速に崩壊し、他方活性剤の放出は、遅延されるか、または例えば胃腸管中でpHが変化した際に発生する。このようにして、作用および吸収の異なる機構を有する活性剤を、1つの剤形において投与することができる。即ち、放出された活性剤の少なくとも1種は、例えば粘膜を介して適用の部位において吸収され、他の活性剤は、一層遠方に輸送され、他の部位において吸収される。
【0047】
ウェーハはまた、異なる層を有する積層物として構成されてもよく、活性剤は、互いに空間的に分離しており、これらの組成の点で互いに異なっている別個の層中に包含される。このようにして、活性剤を、異なる作用の部位において、しかしまたウェーハの種々の層の崩壊時間が互いに異なる場合には、遅延を伴って放出させることができる。
【0048】
同様に、活性剤を、異なる速度で崩壊する層内に配置し、したがって製剤が全体的に遅延効果を示すようにしてもよい。
さらなる態様において、外層の1つのみは、粘膜付着性であって、粘膜に対する剤形の付着を促進し、直接的な接触を確立することにより粘膜を介して活性剤吸収を容易にしてもよい。
【0049】
本発明の剤形の水性媒体中での崩壊は、好ましくは、1秒〜5分の範囲内で、一層好ましくは5秒〜1分の範囲内で、最も好ましくは10秒〜30秒の範囲内で起こる。
本発明の剤形は、有利には、口腔中に薬物を投与するのに、または直腸内、膣内もしくは鼻腔内投与に適する。
【0050】
本発明はさらに、本発明の活性剤の組み合わせの、認知症関連疾患を処置するための経口剤形を製造するための使用に関し、前記剤形は、好ましくはウェーハとして処方される。
さらに、本発明は、認知症を罹患しているヒトの治療処置のための方法であって、抗認知症剤の上記の活性剤の組み合わせの投与を、少なくとも1種の活性剤の少なくとも部分的な経粘膜吸収を伴う経口的に適用可能な剤形により行う、前記方法に関する。
【0051】
最後に、本発明はまた、シート状剤形の製造方法であって、以下の段階:
−少なくとも1種のポリマーおよび抗認知症剤群の薬物からの少なくとも2種の活性剤を含む溶液を調製する段階、
−当該溶液を、被覆基材上に塗布する段階、並びに
−乾燥し、溶媒を離脱させることにより、塗布した溶液を固化させる段階
を含む、前記方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーをベースとし、水分と接触することにより迅速に崩壊し、認知症関連疾患を処置するために用いられるシート状医薬製剤であって、剤形が、認知症の処置に適する少なくとも2種の活性剤の組み合わせを含むことを特徴とする、前記シート状医薬製剤。
【請求項2】
活性剤が、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AchE阻害剤)、NMDAアンタゴニスト(N−メチル−D−アスパラギン酸アンタゴニスト)および向知性薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
活性剤の少なくとも1種がAchE阻害剤であり、および/または活性剤の少なくとも1種がNMDAアンタゴニストであることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
AchE阻害剤が、リバスチグミン、ガランタミンおよびドネゼピル、並びにこれらの活性剤の薬学的に許容し得る塩を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
NMDAアンタゴニストがメマンチンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項6】
向知性薬がピラセタムまたはナフチドロフリルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項7】
製剤が、血管拡張薬、カルシウムアンタゴニストおよび血流を刺激する剤の群から選択される、認知症を処置するための少なくとも1種のさらなる活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項8】
製剤が、ニモジピン、ジヒドロエルゴトキシン、ペントキシフィリン、ナフチドロフリル、イチョウエキス、並びにこれらの活性剤の薬学的に許容し得る塩を含む群から選択される少なくとも1種の活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項9】
親水性ポリマーが、デキストラン、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースまたはプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばWalocel)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースを含む多糖類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩、ペクチン類、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン天然ガム、トラガカント、高分散二酸化ケイ素、ベントナイト、並びに前述の親水性ポリマーの誘導体またはこれらのポリマーの2種もしくは3種以上の組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項10】
ポリマーフィルムが、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー製であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項11】
製剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールおよびポリグリセロールエステルを含む群から選択される保湿剤を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項12】
製剤が、ビタミンC(アスコルビン酸)、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ヒドロキシ安息香酸誘導体を含む群から選択される酸化防止剤を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
製剤の活性剤が、風味遮蔽のための酸性または塩基性イオン交換体に結合していることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項14】
製剤が、染料および/または顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項15】
製剤が、天然および/または合成香味物質を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
製剤が、崩壊剤またはウィッキング剤を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項17】
製剤のpH値が、緩衝系により調整されていることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項18】
親水性ポリマーが、口腔中に適用された後に5分未満で、好ましくは3分未満で、一層好ましくは1分未満で、最も好ましくは30秒未満で崩壊することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項19】
親水性ポリマーが、口腔中で迅速に崩壊し、一方活性剤は、胃腸管に到達する際にのみ前記活性剤を放出するイオン交換体に依然として結合していることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項20】
活性剤が、互いに空間的に分離され、これらの組成に関して互いに異なる別個の層中に含まれていることを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項21】
製剤が、発泡体として存在し、活性剤の少なくとも1種が、前記発泡体の空洞内に液体形態で存在することを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項22】
請求項1〜7のいずれかにおいて定義した活性剤の組み合わせの、認知症関連疾患を処置するための、ウェーハの形態での経口投与可能な医薬製品を製造するための使用。
【請求項23】
認知症を罹患しているヒトの治療的処置のための方法であって、このヒトに、請求項1〜7のいずれかにおいて定義した活性剤の組み合わせを、経口経路により投与する、前記方法。
【請求項24】
活性剤の組み合わせの投与を、前記組み合わせを含む迅速に崩壊するウェーハにより行うことを特徴とする、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2009−539895(P2009−539895A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514664(P2009−514664)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004951
【国際公開番号】WO2007/144083
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】