説明

Ag−Pd合金ナノ粒子を用いる配線基板製造方法

【課題】優秀な導電性及び向上された耐移動性を有する配線形成の配線基板を製造すること。
【解決手段】インクジェット印刷法を利用して導電性インクにて回路パターンを形成することで配線基板を製造し、Ag−Pd合金のうちPd含量が5重量%超過40重量% 未満の導電性インクを提供する。上記配線基板の製造方法は、有機溶剤に上記Ag−Pd合金ナノ粒子が分散されている導電性インクを製造する段階及び、上記導電性インクを基板上にインクジェット方式にて噴射した後焼成して配線を形成する段階を含む。これによれば、価格競争力、優秀な導電性及び向上された耐移動性を有する配線形成の配線基板を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷法を利用して導電性インクにて回路パターンを形成することで配線基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板(PCB)の金属配線技術は、蝕刻技術、スクリーン印刷及びインクジェット印刷技術の順に発展している。この中、インクを使う技術として、金属ペーストを用いるスクリーン印刷を行って焼成する技術が公知されていて、この方法は現在もよく使われている技術ではあるが、焼成する方法において焼成温度が高い。溶剤として、高価で危険性のある非水系溶媒を多量使うなどの問題があって、容易に配線基板の金属配線を行うことは不可能であった。また、スクリーン印刷法を用いる描画方法は、形成される回路パターンの線幅が極めて狭くない分野に適用されるものであって、これに利用される導電性インクとしては、平均粒径が0.5ないし20ミクロンの金属粉を熱強化性樹脂組成物に分散したものが使われた。
【0003】
一方、最近には、情報端末の急速な小型化に伴って、それに搭載される印刷基板の配線間隔が狭小になったり、半導体内回路の精密化に伴って印刷基板上に形成される回路パターンの最小線幅、膜の厚さも徐徐に薄くなる成り行きである。もし、膜の厚さが数ミクロンの場合、従来の平均粒径が0.5ミクロン以上の金属粉を含む金属ペーストを利用すれば、膜の厚さの分布が相対的に大きくて伝導性が不規則になることがある。粒子間の接触に不良が生じて伝導性が損傷される可能性もある。
【0004】
インクジェット方式を利用すれば、微小の液滴状の金属ペーストを利用して直接描画するので微小の大きさの金属ペーストにて最小線幅及び回路間の最小間隔を狭めることができるので高密度の回路パターンを製作することができる。
【0005】
インクジェット方式では、AgやCu金属粒子を有機溶媒に分散させた導電性インクをインクジェット装置を利用して、基板上に直接導体回路を形成し、焼成工程を通じて導電性配線を形成する。インクジェット方式のパターニングは、微細なノズルを利用、吐出するのでナノ金属粒子が均一に分散濃度を維持するように製造する。ここに使われる金属粒子は、Au、Ag、Cuなどであって、現在、基板製作には費用とイオン移動(migration)の問題などのためCuが使われる。しかし、ナノ大きさに行くほどCuの表面積増加とともに酸化になりやすく、これにより室温度中で酸素と易しく結合して表面に酸化膜を形成する。特に湿気を含む空気の中では酸化反応の進行が促進される。Cuの酸化防止のためさまざまの試みを行っているが、表面酸化を完全に回避することは難しいことである。
【0006】
一方Au、Agナノ粒子を利用して超ファイン(ultra-fine)印刷用インクの製造後、微細回路パターニング、金属ナノ粒子焼結工程を経った後の配線形成時、配線幅/配線間隔(L/S)5ないし50ミクロン位である場合、体積固有抵抗率が1x10−5Ω以下の配線形成が可能になる。しかし、Auの場合、高価であるから生産時、製作単価が高くなって経済性のないという問題点がある。一方、Agナノ粒子を利用する場合、製作単価を減少させられるという長所があり、伝導度もまた良好な水準である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、配線間の幅が細くなることによってAgナノ粒子を利用する場合、配線形成の後高い湿度や温度条件に露出時、Agイオンが還元析出されるから一般的に枝状(Dendrite)形態に―極方向に移行成長することになる。これは、断線(short)を発生させて製品の故障になる。既にイオン移動になった後にイオン移動の原因である高い湿度や温度条件を除去する場合、移動現象が消えて製品の信頼性確保も難しくなる。
【0008】
したがって、上記の問題点を解決するため、微細な粒子であって耐移動性を有する導電性金属粒子を含むインクにて配線基板を製造する方法が要求されている。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するため、Ag−Pd合金ナノ粒子を含む導電性インクを提供する。
【0010】
本発明は、価格競争力、優秀な導電性及び、耐移動性を有する配線が形成された配線基板の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また価格競争力、優秀な導電性及び、耐移動性を有する配線が形成されて、希望する配線幅及び配線間隔でも金属イオン移動(migraton)による断線(short)が発生しない微細回路パターンを有する配線基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
Ag−Pd合金粒子ではなく、AgとPdそれぞれのナノ粒子の混合粉末を含む導電性インクを利用して配線基板を生成する場合、インクの溶媒内に混合粉末を均一に分散させるのが難しくて、基板上に塗布、焼成後得られる回路で、焼成によって形成されたAg−Pd合金形成に斑があって、イオン移動現象を完全に防止するのに限界がある。それで、本発明は、有機溶剤にAg−Pd合金ナノ粒子が分散されている導電性インクを利用することによって上記のような問題点を解決する。
【0013】
本発明の望ましい実施例による導電性インクは、Ag−Pd合金ナノ粒子を含んでおり、上記Ag−Pd合金の中、Pdの含量が5重量%超過 40重量%未満であって基板の配線材料として使用することができる。
【0014】
上記Ag−Pd合金の中、Pdの含量が10ないし30重量%であるのがもっと望ましい。
【0015】
本発明の望ましい実施例による導電性インクに含まれるAg−Pd合金粒子は、インクジェットのノズルをパスできるナノ大きさであることができるし、直径が1ないし50nmのナノ粒子であるのが望ましい。
【0016】
本発明の望ましい実施例による導電性インクは、パラジウムアセテート(Palladium acetate)及び銀アセテート(Ag acetate)をソジウムドデシルサルフェート(SDS)水溶液に溶解させた後、加熱反応させて製造されるのが望ましいし、この場合、別の有機溶剤の混合過程なしに簡単な方法で製造される。上記加熱反応はオイルバス(oil bath)内、130℃で行われるのが望ましい。
【0017】
本発明は、有機溶剤にAg−Pd合金ナノ粒子が分散された導電性インクを製造する段階及び、上記導電性インクを基板上にインクジェット方式にて噴射した後焼成して配線を形成する段階を含む配線基板の製造方法及び、これによって製造される配線基板を提供する。望ましくは、Ag−Pd合金の中でPd含量が5重量%超過40重量%未満であって、もっと望ましくは10重量%ないし30重量%である。
【0018】
Ag−Pd合金粒子は、インクジェットのノズルをパスできるナノ大きさであることができ、1ないし50nmが望ましい。
【0019】
Pdの割合が、5重量%以下の場合には、Ag+イオンの移動を抑制する效果発現のための含量に不足であって、40重量%以上の場合には、配線の伝導度が低下されるし高価格のPd含量が増えることで経済性が低下することになる。
【発明の効果】
【0020】
Ag−Pd合金のナノ粒子が分散されたインクを製造して、インクジェット方式にて基板に噴射した後、焼成工程を経って配線を形成することによってAgイオンの移動現象を減らすことができた。したがって、本発明は、価格競争力、優秀な導電性及び向上された耐移動性を有する配線が形成される配線基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明による導電性インクは、イオン移動(migration)が特に問題になる狭い配線幅及び配線間隔を有する微細回路パターンの配線基板の場合もっと要求される。上記のようなイオン移動による断線の発生する可能性がある配線幅及び配線間隔は、一般的に100ミクロン以下である。したがって、本発明の導電性インクは、100ミクロン以下の配線幅及び配線間隔(L/S)を有する配線基板に非常に有用である。
【0022】
本発明の分散させる有機溶剤は、従来公知された導電性インクに使われる有機溶剤を使うことができる。
【0023】
イオン移動(migration)は、プリント回路基板などで、隣接の電極からイオン化になった金属が移行して他の方の電極で金属に還元されて析出されたものが成長した現象である。図1は、イオン移動(ion migration)におけるメカニズムに対して現わす。
【0024】
陰極での反応
(1)Ag+OH→AgOH+e
(2)2AgOH→AgO+H
(3)AgO+HO?2Ag+2OH
陽極での反応
(4)Ag+e→Ag
【0025】
上記のように、陰極から生成された銀イオンが陽極に移動して電子と結合して銀に析出され、枝型デンドライト(dendrite)が陰極の方に成長するようになる。図2は、イオン移動によって生成された枝型デンドライト(dendrite)が陰極の方に移行して陽極と陰極間に断線(short)が発生した写真である。図3は、生成されたデンドライトの断面図を示す。
【0026】
このような現象は、電極間に水気が存在しなければならないことで、実際基板上に、陽極から析出される場合が多く発生する。最近には、Build−up基板とBGAなどのICパッケージ中の配線が微細化になってパターン間の電界強度が増加し絶縁距離が短くなることと同時に電子器機の携帯化に伴う吸湿などによってイオンの移動が発生しやすくなっている。
【0027】
イオン移動(migration)の測定は、イオン移動による絶縁抵抗の低下を測定することでわかる。時間の経過によってイオンの移動が発生すれば、絶縁抵抗が低下するが、その過程の模式図を図4に示した。
【0028】
図4によれば、初期段階(A)では絶縁物の吸湿または水気の吸着によって絶縁抵抗が低下されるが、中期段階(B)では抵抗が安定化される。最終段階(C)に至って、イオン移動が発生すれば、抵抗が急速に減少することになるのでその急速に減少する時点をイオン移動が発生した時点として判断することができる。
【0029】
以下、本発明を次の実施例に基づいてもっと詳しく説明することにするが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0030】
比較例1.Ag粒子が分散された導電性インク製造
銀アセテート前駆体(Silver acetate precursor)を0.1Mソジウムドデシルサルフェート(sodium dodecyl sulfate、SDS)水溶液50mLに溶解させて4.5x10−4mol濃度に製造し、上記溶液をoil bathで徐徐に加温させて、130℃で9時間反応させ、粒子の大きさが1−50nmに分散されたAgインクを製造した。
【0031】
実施例1ないし5.Ag−Pd合金ナノ粒子が分散された導電性インク製造
パラジウムアセテート(Palladium acetate)、銀アセテート(silver acetate)2種の前駆体を0.1Mソジウムドデシルサルフェート(sodium dodecyl sulfate、SDS)水溶液50mLに溶解させて前駆体濃度を4.5x10−4molに製造し、上記溶液をoil bathで徐徐に加温させて、130℃で9時間反応させる。上記合成法を通して粒子が1−50nmに分散されたAg−Pd合金形態のインクを製造した。Ag−Pd合金内のPdの重量%を5重量%(実施例1)、10重量%(実施例2)、20重量%(実施例3)、30重量%(実施例4)及び40重量%(実施例5)に変化させて製造した。
【0032】
比較例2.
基板上に、インクジェット装置を利用して比較例1から製造したAgナノインクをL/S100ミクロンで噴射した後、250℃で焼成工程を行って配線を形成した後、温度85℃、湿度85%の条件下で2.5Vの電圧を60秒間加えて絶縁抵抗値の変化を観察したのを図5に示した。その結果、初期絶縁抵抗値対比60時間まで、絶縁抵抗値の変化なしに初期絶縁抵抗値を維持した。60時間が経過するとイオン移動が発生することになって比抵抗が急速に低下された。
【0033】
実施例6ないし10
基板上に、インクジェット装置を利用して実施例1ないし5から製造したAg−Pd合金ナノインクをL/S100ミクロンで噴射した後、250℃で焼成工程を行って配線を形成した後、伝導度を測定して、温度85℃、湿度85%の条件下で2.5Vの電圧を60秒間加えて絶縁抵抗値の変化を観察し、初期絶縁抵抗値対比、絶縁抵抗値の変化なしに初期絶縁抵抗値を維持する時間(dendrite形成時間)を測定して比較例2とともに表1に現わしたし、この中、Ag−Pd合金中Pdの含量が30重量%の場合の絶縁抵抗値変化を図6に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
上記表1から、Pdの割合が5重量%以下の場合には、Agイオンの移動を抑制する效果発現のための含量に不足であったし、40重量%以上の場合には、イオン移動性(migration)の問題はなかったが伝導度が著しく低下された。また、Pd含量がAg/Pd合金の30重量%である場合に一番安定的な伝導度とともに耐移動性が発現されたし、表2及び図6によれば、120時間が経過するとイオン移動が発生した。これはAgナノ粒子だけ利用した場合の二倍の時間であって、耐移動性の向上されたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】イオン移動(ion migration)に対するメカニズムを示す概略図である。
【図2】基板の回路にイオン移動によって生成された枝型デンドライト(dendrite)の写真である。
【図3】基板の回路に生成されたデンドライトの断面図である。
【図4】イオン移動の時間の経過による絶縁抵抗低下の模式図である。
【図5】本発明によるAgナノ粒子を含む導電性インクをL/S100ミクロンで噴射して焼成工程を行って配線を形成した後、温度85℃、湿度85%の条件下で2.5Vの電圧を60秒間加えて絶縁抵抗値の変化を観察して示したグラフである。
【図6】本発明によるAg−Pd合金ナノ粒子を含む導電性インクをL/S100ミクロンで噴射して焼成工程を行って配線を形成した後、温度85℃、湿度85%の条件下で2.5Vの電圧を60秒間加えて絶縁抵抗値の変化を観察して示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag−Pd合金のナノ粒子を含んでおり、
上記Ag−Pd合金の中、Pdの含量が5重量%超過40重量%未満である導電性インク。
【請求項2】
上記Ag−Pd合金の中、Pdの含量が10ないし30重量%である
請求項1に記載の導電性インク。
【請求項3】
上記Ag−Pd合金のナノ粒子の大きさは、1ないし50nmである
請求項1または請求項2に記載の導電性インク。
【請求項4】
上記導電性インクは、
パラジウムアセテート(Palladium acetate)及び銀アセテート(Ag acetate)をソジウムドデシルサルフェート(SDS)水溶液に溶解させた後、加熱反応させて製造される
請求項1または請求項2に記載の導電性インク。
【請求項5】
上記導電性インクは
パラジウムアセテート(Palladium acetate)及び銀アセテート(Ag acetate)をソジウムドデシルサルフェート(SDS)水溶液に溶解させた後、オイルバス(oil bath)内で、130℃で9時間反応させて製造される
請求項4に記載の導電性インク。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の導電性インクを製造する段階、及び
上記導電性インクを基板上に噴射した後、焼成して配線を形成する段階
を含む配線基板の製造方法。
【請求項7】
上記Ag−Pd合金のナノ粒子の大きさは、1ないし50nmである
請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
上記導電性インクを製造する段階は、パラジウムアセテート(Palladium acetate)及び銀アセテート(Ag acetate)をソジウムドデシルサルフェート(SDS)水溶液に溶解させた後、加熱反応させることを含む
請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
上記導電性インクを製造する段階は、パラジウムアセテート(Palladium acetate)及び銀アセテート(Ag acetate)をソジウムドデシルサルフェート(SDS)水溶液に溶解させた後、オイルバス(oil bath)内で、130℃で9時間反応させることを含む
請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
上記配線を形成する段階は、インクジェット方式で基板上にパターンを有する配線を形成する
請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
請求項6ないし請求項10のいずれかによって製造される配線基板。
【請求項12】
請求項11において、
上記配線基板に形成された配線は、金属イオン移動(migration)による断線の発生可能性がある配線幅及び配線間隔を有する微細回路パターンの配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−257403(P2006−257403A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31730(P2006−31730)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】