説明

Akt活性の阻害剤

本発明はセリン/スレオニン蛋白質キナーゼAktの活性を阻害する置換ピリジン部分を含む化合物に関する。本発明は更に本発明の化合物を含有する化学治療用組成物及び本発明の化合物を投与することを含む癌の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセリン/スレオニンキナーゼAkt(PKBとしても知られ、以下、「Akt」と言う)のアイソフォームの1種以上の活性の阻害剤である置換ピリジンを含む化合物に関する。本発明は前記化合物を含有する医薬組成物と、癌治療における本発明の化合物の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシス(プログラム細胞死)は胚発生と神経変性疾患、心臓血管疾患及び癌等の種々の疾患の病因に重要な役割を果たす。最近の研究により、プログラム細胞死の調節又は実行に関与する種々のプロアポトーシス及びアンチアポトーシス遺伝子産物が同定されている。Bcl2やBcl−x等のアンチアポトーシス遺伝子の発現は各種刺激により誘導されるアポトーシス細胞死を阻害する。他方、BaxやBad等のプロアポトーシス遺伝子の発現はプログラム細胞死をもたらす(Aamsら,Science,281:1322−1326(1998))。プログラム細胞死の実行はカスパーゼ−3、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8及びカスパーゼ−9等のカスパーゼ−1関連プロテイナーゼにより媒介される(Thornberryら,Science,281:1312−1316(1998))。
【0003】
ホスファチジルイノシトール3’−OHキナーゼ(PI3K)/Akt経路は細胞生存/細胞死の調節に重要であると思われる(Kulikら,Mol.Cell.Biol.17:1595−1606(1997);Frankeら,Cell,88:435−437(1997);Kauffmann−Zehら,Nature 385:544−548(1997)Hemmings Science,275:628−630(1997);Dudekら,Science,275:661−665(1997))。血小板由来増殖因子(PDGF)、神経増殖因子(NGF)及びインスリン様増殖因子−1(IGF−1)等の生存因子はPI3Kの活性を誘導することにより種々の条件下で細胞生存を促進する(Kulikら,1997,Hemmings 1997)。PI3Kの活性化によりホスファチジルイノシトール(3,4,5)−三リン酸(PtdIns(3,4,5)−P3)が生産され、続いてプレックストリンホモロジー(PH)−ドメインを含むセリン/スレオニンキナーゼAktと結合してその活性化を促進する(Frankeら,Cell,81:727−736(1995);Hemmings Science,277:534(1997);Downward,Curr.Opin.Cell Biol.10:262−267(1998),Alessiら,EMBO J.15:6541−6551(1996))。PI3Kの特異的阻害剤又はドミナントネガティブAkt突然変異体はこれらの増殖因子又はサイトカインの生存促進活性を阻害する。PI3Kの阻害剤(LY294002又はワートマンニン)が上流キナーゼによるAktの活性化を阻害することは既に開示されている。更に、構成的に活性なPI3K又はAkt突然変異体を導入すると、細胞が通常ではアポトーシス細胞死する条件下で細胞生存が促進される(Kulikら,1997,Dudekら,1997)。
【0004】
二次メッセンジャーにより調節されるセリン/スレオニン蛋白質キナーゼのAktサブファミリーの3種のメンバーが同定され、夫々Akt1/PKBα、Akt2/PKBβ、及びAkt3/PKBγ(以下、「Akt1」、「Akt2」及び「Akt3」と言う)と命名されている。これらのアイソフォームは特に触媒性ドメインをコードする領域において相同である。AktはPI3Kシグナリングに応答して生じるリン酸化イベントにより活性化される。PI3kは膜イノシトールリン脂質をリン酸化し、二次メッセンジャーホスファチジル−イノシトール3,4,5−三リン酸及びホスファチジルイノシトール3,4−二リン酸を生成し、これらはAktのPHドメインに結合することが示されている。Akt活性化の現在のモデルによると、上流キナーゼによるAktの調節部位のリン酸化が生じる場合には、3’−リン酸化ホスホイノシチドにより酵素が膜に動員されるとみなされている(B.A.Hemmings,Science 275:628−630(1997);B.A.Hemmings,Science 276:534(1997);J.Downward,Science 279:673−674(1998))。
【0005】
Akt1のリン酸化は触媒性ドメイン活性化ループにおけるThr308とカルボキシ末端近傍のSer473の2つの調節部位で生じる(D.R.Alessiら,EMBO J.15:6541−6551(1996)及びR.Meierら,J.Biol.Chem.272:30491−30497(1997))。Akt2とAkt3にも同等の調節リン酸化部位が存在する。活性化ループ部位でAktをリン酸化する上流キナーゼはクローニングされ、3’−ホスホイノシチド依存性蛋白質キナーゼ1(PDK1)と命名されている。PDK1はAktだけでなく、p70リボソームS6キナーゼ、p90RSK、血清とグルココルチコイドにより調節されるキナーゼ(SGK)、及び蛋白質キナーゼCもリン酸化する。カルボキシ末端近傍のAkt/PKBの調節部位をリン酸化する上流キナーゼはまだ同定されていないが、最近の報告によると、インテグリン関連キナーゼ(ILK−1)、セリン/スレオニン蛋白質キナーゼ、又は自己リン酸化の役割に関与しているらしい。
【0006】
ヒト腫瘍におけるAktレベルの分析によると、Akt2は有意数の卵巣癌(J.Q.Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:9267−9271(1992))及び膵臓癌(J.Q.Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:3636−3641(1996))で過剰発現していることが示されている。同様に、Akt3は乳癌及び前立腺癌細胞系で過剰発現していることが分かった(Nakataniら,J.Biol.Chem.274:21528−21532(1999)。
【0007】
PtdIns(3,4,5)−P3の3’リン酸を特異的に除去する蛋白質及び脂質ホスファターゼである腫瘍サプレッサーPTENはPI3K/Akt経路のネガティブレギュレーターである(Liら,Science 275:1943−1947(1997),Stambolicら,Cell 95:29−39(1998),Sunら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:6199−6204(1999))。PTENの生殖細胞突然変異はコーデン病等のヒト癌症候群の原因となる(Liawら,Nature Genetics 16:64−67(1997))。PTENは高い比率のヒト腫瘍で欠失しており、機能的PTENを有さない腫瘍細胞系は活性化Aktレベルが高い(Liら,前出,Guldbergら,Cancer Research 57:3660−3663(1997),Risingerら,Cancer Research 57:4736−4738(1997))。
【0008】
これらの観察は、PI3K/Akt経路が腫瘍形成における細胞生存又はアポトーシスの調節に重要な役割を果たすことを実証するものである。
【0009】
Akt活性化及び活性の阻害はLY294002やワートマンニン等の阻害剤でPI3Kを阻害することにより行うことができる。しかし、PI3K阻害は全3種のAktアイソザイムだけでなく、PdtIns(3,4,5)−P3に依存する他のPHドメインを含むシグナリング分子(例えばチロシンキナーゼのTecファミリー)にも無差別に作用する可能性がある。更に、AktはPI3Kに依存しない増殖シグナルにより活性化される可能性もあることが開示されている。
【0010】
あるいは、上流キナーゼPDK1の活性をブロックすることによりAkt活性を阻害することもできる。しかし、特異的PDK1阻害剤は開示されていない。この場合も、PDK1の阻害は活性がPDK1に依存する複数の蛋白質キナーゼ(例えば異型PKCアイソフォーム、SGK、及びS6キナーゼ)の阻害を生じる可能性がある(Williamsら,Curr.Biol.10:439−448(2000)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的はAktの阻害剤である新規な化合物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的はAktの阻害剤である新規化合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は前記Akt活性の阻害剤を投与することを含む癌の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はAkt活性を阻害する置換ピリジンを含む化合物を提供する。特に、開示する化合物はAktアイソフォームの1種又は2種を選択的に阻害する。本発明は更に前記阻害化合物を含有する組成物及び癌治療を必要とする患者に前記化合物を投与することによるAkt活性の阻害方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の化合物はセリン/スレオニンキナーゼAktの活性の阻害に有用である。本発明の第1の態様では、Akt活性の阻害剤は式A:
【0016】
【化4】

[式中、aは0又は1であり;bは0又は1であり;mは0、1又は2であり;nは0、1、2又は3であり;pは0、1又は2であり;qは0、1、2又は3であり;rは0又は1であり;sは0又は1であり;tは2、3、4、5又は6であり;
は1)(C=O)−C10アルキル、2)(C=O)アリール、3)C−C10アルケニル、4)C−C10アルキニル、5)(C=O)ヘテロシクリル、6)(C=O)−Cシクロアルキル、7)COH、8)ハロ、9)CN、10)OH、11)O−Cペルフルオロアルキル、12)O(C=O)NR、13)NR(C=O)NR、14)S(O)、15)S(O)NR、16)NRS(O)、17)オキソ、18)CHO、19)NO、20)NR(C=O)O、21)O(C=O)O−C10アルキル、22)O(C=O)O−Cシクロアルキル、23)O(C=O)Oアリール、24)O(C=O)O−複素環、及び25)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されており;
は1)(C=O)−C10アルキル、2)(C=O)アリール、3)C−C10アルケニル、4)C−C10アルキニル、5)(C=O)ヘテロシクリル、6)(C=O)−Cシクロアルキル、7)COH、8)ハロ、9)CN、10)OH、11)O−Cペルフルオロアルキル、12)O(C=O)NR、13)NR(C=O)NR、14)S(O)、15)S(O)NR、16)NRS(O)、17)CHO、18)NO、19)NR(C=O)O、20)O(C=O)O−C10アルキル、21)O(C=O)O−Cシクロアルキル、22)O(C=O)Oアリール、23)O(C=O)O−複素環、及び24)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは場合によりRから選択される1、2又は3個の置換基で置換されており;
及びRはH、C−C−アルキル及びC−C−ペルフルオロアルキルから独立して選択されるか、又はR及びRは結合して−(CH−を形成し、式中、炭素原子の1個は場合によりO、S(O)、−N(R)C(O)−、及び−N(COR)−から選択される部分で置換されており;
は1)(C=O)−C10アルキル、2)(C=O)アリール、3)C−C10アルケニル、4)C−C10アルキニル、5)(C=O)ヘテロシクリル、6)(C=O)−Cシクロアルキル、7)COH、8)ハロ、9)CN、10)OH、11)O−Cペルフルオロアルキル、12)O(C=O)NR、13)NR(C=O)NR、14)S(O)、15)S(O)NR、16)NRS(O)、17)オキソ、18)CHO、19)NO、20)O(C=O)O−C10アルキル、21)O(C=O)O−Cシクロアルキル、及び22)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されており;
及びRは1)H、2)(C=O)O、3)C−C10アルキル、4)アリール、5)C−C10アルケニル、6)C−C10アルキニル、7)ヘテロシクリル、8)C−Cシクロアルキル、9)SO、10)(C=O)NR、11)OH、及び12)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されており;
は1)(C=O)(C−C10)アルキル、2)O(C−C)ペルフルオロアルキル、3)(C−C)アルキレン−S(O)、4)オキソ、5)OH、6)ハロ、7)CN、8)(C=O)(C−C10)アルケニル、9)(C=O)(C−C10)アルキニル、10)(C=O)(C−C)シクロアルキル、11)(C=O)(C−C)アルキレン−アリール、12)(C=O)(C−C)アルキレンヘテロシクリル、13)(C=O)(C−C)アルキレン−N(R、14)C(O)R、15)(C−C)アルキレン−CO、16)C(O)H、17)(C−C)アルキレン−COH、18)C(O)N(R、19)S(O)、20)S(O)N(R、21)NR(C=O)O、22)O(C=O)O−C10アルキル、23)O(C=O)O−Cシクロアルキル、24)O(C=O)Oアリール、25)O(C=O)O−複素環、及び26)O−P=O(OH)から選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは場合によりR、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ、N(R及びO−P=O(OH)から選択される3個までの置換基で置換されており;
は置換もしくは非置換(C−C)アルキル、置換もしくは非置換(C−C)アルケニル、置換もしくは非置換(C−C)アルキニル、置換もしくは非置換(C−C)シクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、(C−C)ペルフルオロアルキル、2,2,2−トリフルオロエチル、又は置換もしくは非置換ヘテロシクリルであり;
はH、(C−C)アルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ベンジル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−Cアルキル又はS(O)であり;
は1)H、2)C−C10アルキル、3)アリール、4)C−C10アルケニル、5)C−C10アルキニル、6)ヘテロシクリル、7)C−Cシクロアルキル、及び8)C−Cペルフルオロアルキルから選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されている]により表される化合物、又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体である。
【0017】
本発明の第2の態様は式B:
【0018】
【化5】

[式中、Rz’はアルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロシクリルは場合により1〜3個のRで置換されており;他の全ての置換基及び変数は第1の態様で定義した通りである]の化合物、又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体である。
【0019】
本発明の第3の態様は式C:
【0020】
【化6】

[式中、RはH及び(C−C)アルキルから選択され;他の全ての置換基及び変数は第2の態様で定義した通りである]の化合物、又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体である。
【0021】
本発明の特定化合物としては、
5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(1S,2R)−2−フェニルシクロプロピル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−(4−{[(3,4−ジフルオロベンジル)アミノ]メチル}フェニル)−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(3−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(4−フェニルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−[4−({[(4−ベンジルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({メチル[(1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン(1−6);
1−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]フェニル}−N−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]メタンアミン;
N−(3,4−ジフルオロベンジル)−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
2−クロロ−5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル(2−6);
1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オン(3−5);
3−({4−[5−シアノ−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)−1−フェニルプロパン−1−オン;及び
3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)−1−フェニルプロパン−1−オン;又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体が挙げられる。
【0022】
本発明の化合物の特定TFA塩としては、
5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(1S,2R)−2−フェニルシクロプロピル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−(4−{[(3,4−ジフルオロベンジル)アミノ]メチル}フェニル)−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(3−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(4−フェニルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−[4−({[(4−ベンジルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({メチル[(1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
1−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]フェニル}−N−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]メタンアミン;
N−(3,4−ジフルオロベンジル)−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オン(3−5);及び
3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)−1−フェニルプロパン−1−オン;又はその立体異性体が挙げられる。
【0023】
別の態様では、本発明の特定化合物としては、2−クロロ−5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル(2−6);又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体が挙げられる。
【0024】
更に別の態様では、本発明の特定化合物としては、1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オン(3−5);又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体が挙げられる。
【0025】
本発明の化合物は(E.L.Eliel and S.H.Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds,John Wiley & Sons,New York,1994,1119−1190頁に記載されているように)不斉中心、キラル軸、及びキラル面をもつことができ、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個々のジアステレオマーとして存在することができ、光学異性体、前記全ての立体異性体を含む可能な全異性体とその混合物が本発明に含まれる。
【0026】
更に、本明細書に開示する化合物は互変異性体として存在することができ、一方の互変異性体構造しか図示していなくても両方の互変異性形態を本発明の範囲に含むものとする。例えば,化合物A又はBに関する以下の任意記載は互変異性体構造B又はAとその混合物も含む。ベンズイミダゾロニル部分の2つの互変異性形態も本発明の範囲に含まれる。
【0027】
【化7】

【0028】
テトラゾールは1H/2H互変異性体の混合物として存在する。テトラゾール部分の互変異性形態も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
【化8】

【0030】
任意変数(例えばR,R,R等)が任意成分中に2回以上出現する場合には、出現毎の定義は各々独立している。また、置換基と変数の組み合わせはこのような組み合わせにより安定な化合物が得られる場合のみに許容可能である。置換基から環系の内側に引いた線は、指定する結合が置換可能な任意環原子に結合できることを意味する。環系が多環式である場合には、結合は近接環上のみの適切な任意炭素原子と結合するものとする。
【0031】
当然のことながら、本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは容易に入手可能な出発材料から当分野で公知の技術及び下記方法により容易に合成可能な化学的に安定な化合物を提供するように当業者が選択することができる。置換基自体が2個以上の基で置換されている場合には、当然のことながら、これらの複数の基は安定な構造が得られる限り、同一炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよい。「場合により1個以上の置換基で置換された」なる表現は「場合により少なくとも1個の置換基で置換された」なる表現と同義であり、このような場合には、ある態様は0〜4個の置換基をもち、別の態様は0〜3個の置換基をもつ。
【0032】
本明細書において「アルキル」とは指定炭素原子数の分枝及び直鎖飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C−C10アルキル」におけるC−C10は炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の直鎖又は分枝配置の基を表すものと定義される。例えば、「C−C10アルキル」には具体的にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が含まれる。「シクロアルキル」なる用語は指定炭素原子数の単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」にはシクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。
【0033】
「アルコキシ」とは酸素結合を介して結合した指定炭素原子数の環状又は非環状アルキル基を意味する。従って、「アルコキシ」は上記アルキル及びシクロアルキルの定義を含む。
【0034】
炭素原子数を指定していない場合には、「アルケニル」なる用語は少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む炭素原子数2〜10の直鎖、分枝鎖又は環状の非芳香族炭化水素基を意味する。1態様では、1個の炭素−炭素二重結合が存在し、4個までの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在することができる。従って、「C−Cアルケニル」とは炭素原子数2〜6のアルケニル基を意味する。アルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニル及びシクロヘキセニルが挙げられる。アルケニル基の直鎖、分枝鎖又は環状部分は二重結合を含んでいてもよく、置換アルケニル基と記載している場合には、置換されていてもよい。
【0035】
「アルキニル」なる用語は少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む炭素原子数2〜10の直鎖、分枝鎖又は環状炭化水素基を意味する。3個までの炭素−炭素三重結合が存在することができる。従って、「C−Cアルキニル」とは炭素原子数2〜6のアルキニル基を意味する。アルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、1,3−メチルブチニル等が挙げられる。アルキニル基の直鎖、分枝鎖又は環状部分は三重結合を含んでいてもよく、置換アルキニル基と記載されている場合には、置換されていてもよい。
【0036】
場合により、置換基は(C−C)アルキレン−アリールのようにゼロを含む炭素範囲で定義することができる。アリールをフェニルとみなす場合には、この定義はフェニル自体と−CHPh、−CHCHPh、−CH(CH)CHCH(CH)Ph等を含む。
【0037】
本明細書において「アリール」とは少なくとも1個の環が芳香族であり、各環の炭素原子数が7個までの安定な任意単環又は二環式炭素環を意味する。このようなアリールエレメントの例としてはフェニル、ナフチル、テトラヒドロ−ナフチル、インダニル及びビフェニルが挙げられる。アリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族である場合には、当然のことながら、結合は芳香族環を介する。
【0038】
本明細書で使用する「複素環」又は「ヘテロシクリル」なる用語はO、N及びSから構成される群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む3〜10員の芳香族又は非芳香族複素環を意味し、二環基を含む。従って、「ヘテロシクリル」には上記ヘテロアリールに加え、そのジヒドロ及びテトラヒドロアナログが含まれる。「ヘテロシクリル」の他の例としては限定されないが、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロチエニル、並びにそのN−オキシドが挙げられる。ヘテロシクリル置換基の結合は炭素原子又はヘテロ原子を介することができる。
【0039】
別の態様では、ヘテロシクリルは2−アゼピノン、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾロニル、2−ジアザピノン、イミダゾリル、2−イミダゾリジノン、インドリル、イソキノリニル、モルホリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリジル、ピロリジニル、2−ピペリジノン、2−ピリミジノン、2−ピロリジノン、キノリニル、テトラゾリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、チエニル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル及びトリアゾリルから選択される。
【0040】
当業者に自明の通り、本明細書において「ハロ」又は「ハロゲン」とはクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0041】
本明細書では特に指定しない限り、置換アルキル、置換シクロアルキル、置換アロイル、置換アリール、置換ヘテロアロイル、置換ヘテロアリール、置換アリールスルホニル、置換ヘテロアリール−スルホニル及び置換複素環は、化合物の残余との結合点以外に1〜4個の置換基(別の態様では1〜3個の置換基)を含む部分を含む。このような置換基は限定されないが、F、Cl、Br、CF、NH、N(C−Cアルキル)、NO、CN、(C−Cアルキル)O−、(アリール)O−、−OH、O−P=O(OH)、(C−Cアルキル)S(O)−、(C−Cアルキル)C(O)NH−、HN−C(NH)−、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、フェニル、ピリジル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、フリル、イソチアゾリル及びC−C20アルキルを含む群から選択される。例えば、(C−C)アルキルはOH、オキソ、ハロゲン、アルコキシ、ジアルキルアミノ、又はヘテロシクリル(例えばモルホリニル、ピペリジニル等)から選択される1、2、3又は4個(別の態様では1、2又は3個)の置換基で置換することができる。この場合、1個の置換基がオキソであり、他の置換基がOHであるならば、−(C=O)CHCH(OH)CH、−(C=O)OH、−CH(OH)CHCH(O)等が定義に含まれる。
【0042】
同一炭素原子上のR及びRが結合して−(CH−を形成するという定義において形成される部分の例を以下に挙げる。
【0043】
【化9】

【0044】
更に、このような環状部分は場合によりヘテロ原子を含んでいてもよい。このようなヘテロ原子を含む環状部分の例としては限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0045】
【化10】

【0046】
別の態様では、pは0である。
【0047】
別の態様では、qは0である。
【0048】
別の態様では、Rは(C−C)アルキルである。
【0049】
別の態様では、RはH、(C−C)アルキル、(C=O)O(C−C)アルキル、(C=O)(C−C)アルキル及びS(O)から独立して選択される。
【0050】
別の態様では、RはC−Cアルキル、−(C=O)(C−C)アルキル、ハロゲン、フェニル、OH、O−P=O(OH)、NH及びオキソから選択される。
【0051】
別の態様では、Rは(C−C)アルキル、COH、ハロ、CN、OH、O−P=O(OH)、オキソ、CHO及びヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは場合によりRから選択される1〜3個の置換基で置換された以下の基から選択される。
【0052】
【化11】

【0053】
別の態様では、Rはハロ、CN及び場合によりRから選択される1〜3個の置換基で置換された以下の基から選択される。
【0054】
【化12】

【0055】
別の態様では、Rは(C−C)アルキル、COH、ハロ、CN、OH、O−P=O(OH)、オキソ、CHO及びヘテロシクリルから選択される。
【0056】
別の態様では、R及びRはH及び−CHから選択される。
【0057】
別の態様では、R及びRはHから選択される。
【0058】
別の態様では、Rz’は−(C=O)フェニル、フェニル、ヘテロシクリル及びシクロアルキルから選択され、前記フェニル、ヘテロシクリル及びシクロアルキルは場合により1〜3個のRで置換されている。
【0059】
別の態様では、Rz’
【0060】
【化13】

【0061】
−(C=O)フェニル及びシクロプロピルから選択され、これらの基は場合によりフェニル、NH、ハロゲン、C−Cアルキル及び
【0062】
【化14】

【0063】
から選択される1〜3個の置換基で置換されている。
【0064】
本発明には式Aの化合物の遊離形に加え、その医薬的に許容可能な塩及び立体異性体も含まれる。本明細書に例示する単離特定化合物にはアミン化合物のプロトン化塩が含まれる。「遊離形」なる用語は非塩形態のアミン化合物を意味する。本発明の医薬的に許容可能な塩は本明細書に記載する特定化合物について例示する単離塩のみならず、式Aの化合物の遊離形の典型的な医薬的に許容可能な全塩を含む。記載する特定塩化合物の遊離形は当分野で公知の技術を使用して単離することができる。例えば、NaOH、炭酸カリウム、アンモニア及び重炭酸ナトリウム希水溶液等の適切な希塩基水溶液で塩を処理することにより遊離形を再生することができる。遊離形は極性溶媒溶解度等の所定の物性についてはその夫々の塩形態と多少異なる場合もあるが、それ以外については酸及び塩基塩は本発明の目的ではその夫々の遊離形と医薬的に等価である。
【0065】
本発明の化合物の医薬的に許容可能な塩は塩基性又は酸性部分を含む本発明の化合物から従来の化学的方法により合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーにより製造されるか、あるいは適切な溶媒又は種々に組み合わせた溶媒中で遊離塩基を化学量論的量又は過剰の所望塩形成性の無機又は有機酸と反応させることにより製造される。同様に、酸性化合物の塩は適切な無機又は有機塩基との反応により形成される。
【0066】
従って、本発明の化合物の医薬的に許容可能な塩としては本発明の塩基性化合物を無機又は有機酸と反応させることにより形成されるような本発明の化合物の慣用的な非毒性塩が挙げられる。例えば、慣用的な非毒性塩としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導される塩と、酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)等の有機酸から製造される塩が挙げられる。
【0067】
本発明の化合物が酸性である場合には、適切な「医薬的に許容可能な塩」とは無機塩基と有機塩基を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基から製造される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第2鉄、第1鉄、リチウム、マグネシウム、第2マンガン、第1マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。医薬的に許容可能な有機非毒性塩基から誘導される塩としては第1級、第2級及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。
【0068】
上記医薬的に許容可能な塩及び他の典型的な医薬的に許容可能な塩の製造についてはBergら,”Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19に詳細に記載されている。
【0069】
更に、生理的条件下で本発明の化合物の脱プロトン化酸性部分(例えばカルボキシル基)はアニオン性となる可能性があり、この電荷はその後、プロトン化又はアルキル化塩基性部分(例えば第4級窒素原子)のカチオン電荷に対して体内で均衡する可能性があるので、本発明の化合物は潜在的に内部塩又は両性イオンである。
【0070】
用途
本発明の化合物はAktの活性の阻害剤であり、従って、癌、特にAktの活性及びAktの下流細胞ターゲットの異常に関連する癌の治療に有用である。このような癌としては限定されないが、卵巣癌、膵臓癌、乳癌及び前立腺癌や、腫瘍サプレッサーPTENが突然変異している癌(膠芽腫を含む)が挙げられる(Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.(1992)89:9267−9271;Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93:3636−3641;Bellacosaら,Int.J.Cancer(1995)64:280−285;Nakataniら,J.Biol.Chem.(1999)274:21528−21532;Graff,Expert.Opin.Ther.Targets(2002)6(1):103−113;Yamada and Araki,J.Cell Science(2001)114:2375−2382;Mischel and Cloughesy,Brain Pathol.(2003)13(1):52−61)。
【0071】
本発明の化合物、組成物及び方法は特に皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、精巣癌等の充実性腫瘍を含む癌の治療に有用であるとみなされる。より具体的には、本発明の化合物、組成物及び方法により治療することができる癌としては限定されないが、心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、血腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、テラトーマ、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺様腫瘍、脂肪腫);肝臓:ヘパトーマ(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠芽腫)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚芽腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起神経膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前癌子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、顆粒膜−莢膜細胞腫、セルトリ−ライディヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性テラトーマ)、外陰(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒肉腫)、膣(透明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌);血液:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒肉腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎:神経芽腫が挙げられる。従って、本明細書において「癌細胞」なる用語は上記疾患の任意1種に冒された細胞を意味する。
【0072】
Aktシグナリングは血管新生における複数の重要な段階を調節する。Shiojima and Walsh,Circ.Res.(2002)90:1243−1250。癌治療における血管新生阻害剤の有用性は文献から公知である。例えば、J.Rakら,Cancer Research,55:4575−4580,1995及びDredgeら,Expert Opin.Biol.Ther.(2002)2(8):953−966参照。癌における血管新生の役割は乳癌(G.Gasparini and A.L.Harris,J.Clin.Oncol.,1995,13:765−782;M.Toiら,Japan.J.Cancer Res.,1994,85:1045−1049);膀胱癌(A.J.Dickinsonら,Br.J.Urol.,1994,74:762−766);結腸癌(L.M.Ellisら,Surgery,1996,120(5):871−878);口腔腫瘍(J.K.Williamsら,Am.J.Surg.,1994,168:373−380)等の多種の癌と組織で示されている。他の癌としては、進行腫瘍、毛様細胞白血病、黒肉腫、進行頭部及び頸部癌、転移性腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、転移性乳癌、乳腺癌、進行黒肉腫、膵臓癌、胃癌、グリア芽腫、肺癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、各種充実性腫瘍、多発性骨髄腫、転移性前立腺癌、悪性神経膠腫、腎臓癌、リンパ腫、難治性転移性疾患、難治性多発性骨髄腫,子宮頸癌、カポジ肉腫,再発性悪性神経膠腫、及び転移性結腸癌が挙げられる(Dredgeら,Expert Opin.Biol.Ther.(2002)2(8):953−966)。従って、本明細書に開示するAkt阻害剤はこれらの血管新生関連性の癌の治療にも有用である。
【0073】
血管新生を生じた腫瘍は転移する可能性が高い。実際に、血管新生は細胞増殖及び転移に不可欠である(S.P.Cunninghamら,Can.Research,61:3206−3211(2001))。従って、本明細書に開示するAkt阻害剤は腫瘍細胞転移を予防又は減少するためにも有用である。
【0074】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む血管新生が関与する疾患の治療又は予防方法も本発明の範囲に含まれる。組織損傷の多くが眼内の血管の異常浸潤に起因すると考えられる疾患の1例は眼内血管新生性疾患である(WO00/30651,公開日2000年6月2日参照)。望ましくない浸潤は糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜血管閉塞等に起因するもの等の虚血性網膜症により誘発される場合や、年齢関連黄斑変性に認められる脈絡膜血管新生等の変性疾患により誘発される場合がある。従って、本発明の化合物の投与により血管の増殖を抑制すると、血管浸潤を予防し、血管新生が関与する疾患(例えば網膜血管新生、糖尿病網膜症、年齢関連黄斑変性等の眼病)を予防又は治療できると考えられる。
【0075】
血管新生が関与する非悪性疾患の治療又は予防方法も本発明の範囲に含まれ、このような疾患としては限定されないが、眼病(例えば網膜血管新生、糖尿病網膜症及び年齢関連黄斑変性)、アテローム性動脈硬化、関節炎、乾癬、肥満症及びアルツハイマー病が挙げられる(Dredgeら,Expert Opin.Biol.Ther.(2002)2(8):953−966)。別の態様では、眼病(例えば網膜血管新生、糖尿病網膜症及び年齢関連黄斑変性)、アテローム性動脈硬化、関節炎及び乾癬等の血管新生が関与する疾患の治療又は予防方法も含まれる。
【0076】
再狭窄、炎症、自己免疫疾患及びアレルギー/喘息等の過剰増殖疾患の治療方法も本発明の範囲に含まれる。
【0077】
高インスリン血症の治療方法も本発明の範囲に含まれる。
【0078】
本発明の1態様では、本発明の化合物は阻害効力がPHドメインに依存する選択的阻害剤である。この態様では、化合物はPHドメインを欠如する切型のAkt蛋白質に対してin vitro阻害活性の低下を示すか又はin vitro阻害活性を全く示さない。
【0079】
別の態様では、本発明の化合物はAkt1の選択的阻害剤、Akt2の選択的阻害剤及びAkt1とAkt2の両者の選択的阻害剤からなる群から選択される。
【0080】
別の態様では、本発明の化合物はAkt1の選択的阻害剤、Akt2の選択的阻害剤、Akt3の選択的阻害剤及び3種のAktアイソフォームのうちの2種の選択的阻害剤からなる群から選択される。
【0081】
別の態様では、本発明の化合物は全3種のAktアイソフォームの選択的阻害剤であるが、PHドメイン、ヒンジ領域又はPHドメインとヒンジ領域の両方を欠如するように改変されたこのような及びAktアイソフォームのうちの1種、2種又は全種の阻害剤ではない。
【0082】
本発明は治療を必要とする哺乳動物に医薬有効量の本発明の化合物を投与することを含むAkt活性の阻害方法にも関する。
【0083】
本発明の化合物は標準医薬プラクティスに従って単独又は医薬組成物として医薬的に許容可能なキャリヤー、賦形剤又は希釈剤と共にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。化合物は経口又は非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸又は局所投与経路を含む)投与することができる。
【0084】
活性成分を含有する医薬組成物は例えばタブレット、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、分散性散剤又は顆粒剤、エマルション、ハード又はソフトカプセル、シロップ又はエリキシル剤等の経口用に適した形態とすることができる。経口用組成物は医薬組成物の製造に当分野で公知の任意方法により製造することができ、このような組成物は医薬的にエレガントで口当たりのよい製剤にするために甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤から構成される群から選択される1種以上の成分を添加することができる。タブレットはタブレットの製造に適した医薬的に許容可能な非毒性賦形剤と混合した活性成分を含有する。これらの賦形剤としては例えば不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えば微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン、ポリビニルピロリドン又はアラビアガム)及び滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が挙げられる。タブレットはコーティングしなくてもよいし、薬剤の不味さをマスクするため又は胃腸管での崩壊と吸収を遅らせて長時間持続作用を提供するために公知技術によりコーティングしてもよい。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性味マスキング剤や、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース等の時間遅延剤を使用することができる。
【0085】
経口用製剤は活性成分を不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合したハードゼラチンカプセルの形態でもよいし、活性成分を水溶性キャリヤー(例えばポリエチレングリコール)又は油性媒体(例えば落花生油、液体パラフィン、又はオリーブ油)と混合したソトフゼラチンカプセルの形態でもよい。
【0086】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。このような賦形剤としては、懸濁剤として例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガムが挙げられ;分散剤又は湿潤剤として天然ホスファチド(例えばレシチン)又はアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又は脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、又は脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)が挙げられる。水性懸濁液は更に、1種以上の防腐剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、及び1種以上の甘味剤(例えばスクロース、サッカリン又はアスパルテーム)を添加することができる。
【0087】
油性懸濁液は植物油(例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油又は椰子油)又は鉱油(例えば液体パラフィン)に活性成分を懸濁することにより製剤化することができる。油性懸濁液は増粘剤(例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルソルコール)を添加することができる。口当たりのよい経口製剤を提供するために上記のような甘味剤や香味剤を添加することができる。これらの組成物はブチル化ヒドロキシアニソールやα−トコフェロール等の酸化防止剤の添加により防腐処理することができる。
【0088】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散性散剤及び顆粒剤は分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の防腐剤と混合した活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は上記のものが例示される。例えば甘味剤、香味剤及び着色剤等の付加賦形剤も添加することができる。これらの組成物はアスコルビン酸等の酸化防止剤の添加により防腐処理することができる。
【0089】
本発明の医薬組成物は水中油エマルションの形態でもよい。油相は植物油(例えばオリーブ油又は落花生油)又は鉱油(例えば液体パラフィン)又はこれらの混合物とすることができる。適切な乳化剤としては天然ホスファチド(例えば大豆レシチン)及び脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステル又は部分エステル(例えばモノオレイン酸ソルビタン)、及び前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。エマルションは更に甘味剤、香味剤、防腐剤及び酸化防止剤を添加することができる。
【0090】
シロップ及びエリキシル剤は甘味剤(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロース)を配合することができる。このような製剤は更に粘膜保護剤、防腐剤、香味剤、着色剤及び酸化防止剤を添加することができる。
【0091】
医薬組成物は注射用滅菌水溶液の形態でもよい。使用することができる許容可能なビヒクル及び溶剤としては水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。
【0092】
注射用滅菌製剤は活性成分を油相に溶かした注射用滅菌水中油マイクロエマルションでもよい。例えば、まず活性成分を大豆油とレシチンの混合物に溶かす。次に油溶液を水とグリセロールの混合物に導入して処理し、マイクロエマルションを形成する。
【0093】
注射用溶液又はマイクロエマルションは局所ボーラス注射により患者の血流に導入することができる。あるいは、本発明の化合物の循環濃度を一定に維持するように溶液又はマイクロエマルションを投与すると有利な場合がある。このような一定濃度を維持するためには、持続静脈送達装置を利用することができる。このような装置の1例はDeltec CADD−PLUS(登録商標)モデル5400静脈ポンプである。
【0094】
医薬組成物は筋肉内及び皮下投与用注射用滅菌水性又は油性懸濁液の形態でもよい。この懸濁液は上記のような適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して公知技術に従って製剤化することができる。注射用滅菌製剤は非経口投与に許容可能な非毒性希釈剤又は溶剤中の注射用滅菌溶液又は懸濁液でもよく、例えば1,3−ブタンジオール溶液とすることができる。更に、従来通りに滅菌不揮発油を溶剤又は懸濁媒体として使用する。この目的には、合成モノ又はジグリセリドを含む任意不揮発油を使用することができる。更に、オレイン酸等の脂肪酸も注射剤の製造に使用される。
【0095】
式Aの化合物は薬剤の直腸投与用座剤形態で投与することもできる。これらの組成物は常温では固体であるが、直腸温度で液体となり、従って直腸内で溶けて薬剤を放出する適切な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することにより製造することができる。このような材料としてはカカオバター、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0096】
局所用には、式Aの化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液等を使用する。(本願の目的では、局所投与はマウスウォッシュと嗽薬も含む。)
本発明の化合物は適切な鼻腔内ビヒクル及び送達装置の局所使用により鼻腔内形態で投与することもできるし、当業者に周知の経皮皮膚パッチの形態を使用して経皮経路で投与することもできる。経皮送達システムの形態で投与するためには、当然のことながら投与レジメンの全期間を通して断続的ではなく持続的に投与する。本発明の化合物はカカオバター、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステル等の基剤を使用した座剤として送達することもできる。
【0097】
本発明の組成物をヒト対象に投与する場合には、1日用量は一般に処方医により決定され、一般に個々の患者の年齢、体重、及び応答と、患者の症状の重篤度により異なる。
【0098】
1態様では、適量のAkt阻害剤を癌治療下の哺乳動物に投与する。阻害剤約0.1mg/kg体重〜約60mg/kg体重/日、又は0.5mg/kg体重〜約40mg/kg体重/日を投与する。本発明の組成物の別の治療用量としてはAkt阻害剤約0.01mg〜約1000mgが挙げられる。別の態様では、用量はAkt阻害剤約1mg〜約1000mgとする。
【0099】
本発明の化合物は公知治療剤及び抗癌剤と併用しても有用である。例えば、本発明の化合物は公知抗癌剤と併用すると有用である。本発明の化合物と他の抗癌剤又は化学治療剤の併用も本発明の範囲に含まれる。このような薬剤の例はV.T.Devita and S.Hellman編著Cancer Principles and Practice of Oncology,第6版(2001年2月15日刊),Lippincott Williams & Wilkins Publishersに記載されている。当業者は薬剤と該当する癌の特定特性に基づいてどの薬剤併用が有用であるかを判断することができよう。このような抗癌剤としては、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、殺細胞/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及び他の血管新生阻害剤、細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、並びに細胞周期チェックポイントに介入する物質が挙げられる。本発明の化合物は放射線治療と併用投与すると特に有用である。
【0100】
1態様では、本発明の化合物はエストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、殺細胞剤、増殖抑制剤、プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、及び他の血管新生阻害剤等の公知抗癌剤と併用しても有用である。
【0101】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、エストロゲンが受容体に結合するのを妨害又は阻止する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの例としては限定されないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン、及びSH646が挙げられる。
【0102】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、アンドロゲンが受容体に結合するのを妨害又は阻止する化合物を意味する。アンドロゲン受容体モジュレーターの例としてはフィナステリドと他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、及び酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0103】
「レチノイド受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、レチノイドが受容体に結合するのを妨害又は阻止する化合物を意味する。このようなレチノイド受容体モジュレーターの例としてはベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、及びN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが挙げられる。
【0104】
「殺細胞/細胞増殖抑制剤」とは主に細胞の機能を直接妨害することにより細胞死を誘発もしくは細胞増殖を抑制するか、又は細胞有糸分裂を抑制もしくは妨害する化合物を意味し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素症活性化性化合物、微小管阻害剤/微小管安定剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、有糸分裂進行に関与するキナーゼの阻害剤、増殖因子及びサイトカインシグナル伝達経路に関与するキナーゼの阻害剤、代謝拮抗薬、生体応答調節剤、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血細胞増殖因子、モノクローナル抗体標的治療薬、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤及びユビキチンリガーゼ阻害剤が挙げられる。
【0105】
殺細胞/細胞増殖抑制剤の例としては限定されないが、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、イムプロスルファントシラート、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、四塩化(トランス,トランス,トランス)−ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−μ−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]、ジアリジジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO00/50032参照)、Rafキナーゼ阻害剤(例えばBay43−9006)及びmTOR阻害剤(例えばWyethのCCI−779)が挙げられる。
【0106】
低酸素症活性化性化合物の1例はチラパザミンである。
【0107】
プロテオソーム阻害剤の例としては限定されないが、ラクタシスチンとMLN−341(Velcade)が挙げられる。
【0108】
微小管阻害剤/微小管安定剤の例としてはパクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば米国特許第6,284,781号及び6,288,237号参照)及びBMS188797が挙げられる。1態様ではエポチロン類は微小管阻害剤/微小管安定剤に含まれない。
【0109】
トポイソメラーゼ阻害剤の例をいくつか挙げると、トポテカン、ヒカムプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートロイシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ラートテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331,N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキサヒドロフル(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−デ]アクリジン−6−オン、N−[1−[2−(ジメチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、及びジメスナである。
【0110】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例はPCT公開WO01/30768及びWO01/98278、並びに米国出願第60/338,779号(出願日2001年12月6日)、60/338,344号(出願日2001年12月6日)、60/338,383号(出願日2001年12月6日)、60/338,380号(出願日2001年12月6日)、60/338,379号(出願日2001年12月6日)及び60/344,453号(出願日2001年11月7日)に記載されている。1態様では、有糸分裂キネシンの阻害剤としては限定されないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤及びRab6−KIFLの阻害剤が挙げられる。
【0111】
「有糸分裂進行に関与するキナーゼの阻害剤」としては限定されないが、オーロラキナーゼの阻害剤、Polo様キナーゼの阻害剤(PLK;特にPLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤及びbub−R1の阻害剤が挙げられる。
【0112】
「増殖抑制剤」としては、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、及びINX3001等のアンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチドや、エノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスファート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキセド、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デキオシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒドチオセミカルバゾン及びトラスツズマブ等の代謝拮抗薬が挙げられる。
【0113】
モノクローナル抗体標的化治療剤の例としては殺細胞剤又は放射性同位体を癌細胞特異的又はターゲット細胞特異的モノクローナル抗体に結合した治療剤が挙げられる。例としてはBexxarが挙げられる。
【0114】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは3−ヒドロキシ−3−メチルグリタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を意味する。使用可能なHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例としては限定されないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、4,294,926号及び4,319,039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、4,820,850号及び4,916,239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、4,537,859号、4,410,629号、5,030,447号及び5,180,589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号,4,911,165号,4,929,437号、5,189,164号、5,118,853号、5,290,946号及び5,356,896号参照)アトルバスタチン(LIP1TOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、4,681,893号、5,489,691号及び5,342,952号参照)及びセリバスタチン(別称リバスタチン、BAYCHOL(登録商標);米国特許第5,177,080号参照)が挙げられる。本発明の方法で使用することができる上記及び他のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式はM.Yalpani,”Cholesterol Lowering Drugs”,Chemistry & Industry,pp.85−89(1996年2月5日)の87頁と米国特許第4,782,084号及び4,885,314号に記載されている。本明細書で使用するHMG−CoAレダクターゼ阻害剤なる用語はHMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の医薬的に許容可能な全ラクトン及び開環酸形(即ちラクトン環が開環して遊離酸を形成)と酸及びエステル形を含み、従って、このような塩、エステル、開環酸及びラクトン形の使用が本発明の範囲に含まれる。
【0115】
「プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤」とはファルネシル−蛋白質トランスフェラーゼ(FPTase)、ゲラニルゲラニル−蛋白質トランスフェラーゼI型(GGPTase−1)、及びゲラニルゲラニル−蛋白質トランスフェラーゼII型(GGPTase−II、別称Rab GGPTase)等のプレニル−蛋白質トランスフェラーゼ酵素の任意1種又は任意組み合わせを阻害する化合物を意味する。
【0116】
プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤の例は以下の公開公報及び特許に記載されている。WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987号、米国特許第5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、ヨーロッパ特許公開第0 618 221号、ヨーロッパ特許公開第0 675 112号、ヨーロッパ特許公開第0 604181号、ヨーロッパ特許公開第0 696 593号、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514号、米国特許第5,661,152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736号、米国特許第5,571,792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436、及び米国特許第5,532,359号。血管新生に及ぼすプレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤の役割の1例については、European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394−1401(1999)参照。
【0117】
「血管新生阻害剤」とはメカニズムに関係なく、新しい血管の形成を抑制する化合物を意味する。血管新生阻害剤の例としては限定されないが、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤等のチロシンキナーゼ阻害剤、表皮由来、線維芽細胞由来、又は血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン阻害薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ポリ硫酸ペントサン、アスピリンやイブプロフェン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とセレコキシブやロフェコキシブ等の選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤を含むシクロオキシゲナーゼ阻害剤(PNAS,Vol.89,p.7384(1992);JNCI,Vol.69,p.475(1982);Arch.Opthalmol.,Vol.108,p.573(1990);Anat.Rec.,Vol.238,p.68(1994);FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995);Clin.Orthop.Vol.313,p.76(1995);J.Mol.Endocrinol.,Vol.16,p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol.,Vol.75,P.105(1997);Cancer Res.,Vol.57,P.1625(1997);Cell,Vol.93,p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998);J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド性抗炎症薬(例えばコルチコステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、(6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンジオスタチン、トロポリン−1、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandezら,J.Lab.Clin.Med.105:141−145(1985)参照)、及びVEGF抗体(Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963−968(1999年10月);Kimら,Nature,362,841−844(1993);WO00/44777;及びWO00/61186参照)が挙げられる。
【0118】
血管新生を調節又は抑制する治療剤として同様に本発明の化合物と併用することができる他の治療剤としては、血液凝固及び繊維素溶解システムを調節又は抑制する薬剤が挙げられる(Clin.Chem.La.Med.38:679−692(2000)の論考参照)。血液凝固及び繊維素溶解経路を調節又は抑制するこのような薬剤の例としては限定されないが、ヘパリン(Thromb.Haemost 80:10−23(1998)参照)、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビンにより活性化可能な繊維素溶解阻害剤[TAFIa]としても知られる)(Thrombosis Res.101:329−354(2001)参照)が挙げられる。TAFIa阻害剤は米国特許出願第60/310,927号(出願日2001年8月8日)及び60/349,925号(出願日2002年1月18日)に記載されている。
【0119】
「細胞周期チェックポイントに介入する物質」とは細胞周期チェックポイントシグナルを変換する蛋白質キナーゼを阻害することにより癌細胞をDNA損傷剤に感受性化する化合物を意味する。このような物質としてはATR、ATM、Chk1及びChk2キナーゼの阻害剤やcdk及びcdcキナーゼ阻害剤が挙げられ、具体例としては7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel)及びBMS−387032が挙げられる。
【0120】
「細胞増殖及び生存シグナリング経路の阻害剤」とは細胞表面受容体の下流のシグナル伝達カスケードを阻害する化合物を意味する。このような物質としては、セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤(限定されないが、WO02/083064、WO02/083139、WO02/083140及びWO02/083138に記載されているようなAkt阻害剤)、Rafキナーゼの阻害剤(例えばBAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えばCI−1040及びPD−098059)、mTORの阻害剤(例えばWyeth CCI−779)及びPI3Kの阻害剤(例えばLY294002)が挙げられる。
【0121】
上述のように、NSAIDとの併用は強力なCOX−2阻害剤であるNSAIDの使用に関する。本明細書の趣旨では、NSAIDは細胞又はミクロソームアッセイにより測定した場合にCOX−2阻害のIC50が1μM以下である場合に強力である。
【0122】
本発明は選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの併用も含む。本明細書の趣旨では、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは細胞又はミクロソームアッセイによりCOX−1のIC50に対するCOX−2のIC50の比として測定した場合にCOX−2の阻害特異性がCOX−1の少なくとも100倍であるものとして定義される。このような化合物としては限定されないが、いずれも参考として本明細書に援用されている米国特許第5,474,995号、米国特許第5,861,419号、米国特許第6,001,843号、米国特許第6,020,343号、米国特許第5,409,944号、米国特許第5,436,265号、米国特許第5,536,752号、米国特許第5,550,142号、米国特許第5,604,260号、米国特許第5,698,584号、米国特許第5,710,140、WO94/15932、米国特許第5,344,991号、米国特許第5,134,142号、米国特許第5,380,738号、米国特許第5,393,790号、米国特許第5,466,823号、米国特許第5,633,272及び米国特許第5,932,598に開示されているものが挙げられる。
【0123】
本発明の治療方法で特に有用なCOX−2の阻害剤は3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン又はその医薬的に許容可能な塩である。
【0124】
COX−2の特異的阻害剤として上記に記載し、従って、本発明で有用である化合物としては限定されないが、パレコキシブ、BEXTRA(登録商標)及びCELEBREX(登録商標)又はその医薬的に許容可能な塩が挙げられる。
【0125】
血管新生阻害剤の他の例としては限定されないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられる。
【0126】
上記に使用した「インテグリン阻害薬」とは生理的リガンドがαβインテグリンと結合するのを選択的に拮抗、抑制ないし対抗する化合物、生理的リガンドがαβインテグリンと結合するのを選択的に拮抗、抑制ないし対抗する化合物、生理的リガンドがαβインテグリン及びαβインテグリンの両者と結合するのを拮抗、抑制ないし対抗する化合物、並びに毛細血管内皮細胞で発現される特定インテグリンの活性を拮抗、抑制ないし対抗する化合物を意味する。この用語は更にαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンのアンタゴニストも意味する。この用語は更にαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意の組み合わせのアンタゴニストも意味する。
【0127】
チロシンキナーゼ阻害剤の特定例をいくつか挙げると、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロル−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン,4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン、及びEMD121974である。
【0128】
抗癌化合物以外の化合物との併用も本発明の方法に含まれる。例えば、本発明の化合物とPPAR−γ(即ちPPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(即ちPPAR−デルタ)アゴニストを併用すると、所定の悪性腫瘍の治療に有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。内皮細胞でのPPAR−γの発現と血管新生におけるその役割は文献に報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998;31:909−913;J.Biol.Chem.1999;274:9116−9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000;41:2309−2317参照)。より最近では、PPAR−γアゴニストはVEGFに対するin vitro血管新生応答を阻害することが示されており、トログリタゾンとマレイン酸ロシグリタゾンの両者がマウスで網膜血管新生の発生を阻害する(Arch.Ophthamol.2001;119:709−717)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例としては限定されないが、チアゾリジンジオン(例えばDRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、及びピオグリタゾン)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンゾイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN09/782,856に開示)、及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN60/235,708及び60/244,697に開示)が挙げられる。
【0129】
本発明の別の態様は本明細書に開示する化合物と癌治療用遺伝子治療の併用である。癌治療の遺伝子ストラテジーの概要については、Hallら(Am.J.Hum.Genet.61:785−789,1997)及びKufeら(Cancer Medicine,5th Ed,pp 876−889,BC Decker,Hamilton 2000)参照。任意腫瘍抑制遺伝子を送達するために遺伝子治療を使用することができる。このような遺伝子の例としては限定されないが、組換えウイルスによる遺伝子導入により送達することができるp53(例えば米国特許第6,069,134号参照)、uPA/uPARアンタゴニスト(”Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice,”Gene Therapy,August 1998;5(8):1105−13)、及びインターフェロンγ(J.Immunol.2000;164:217−222)が挙げられる。
【0130】
本発明の化合物は先天的多剤耐性(MDR)、特にトランスポーター蛋白質の高レベル発現に関連するMDRの阻害剤と併用することもできる。このようなMDR阻害剤としては、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(バルスポダール)等のp−糖蛋白質(P−gp)の阻害剤が挙げられる。
【0131】
本発明の化合物は本発明の化合物の単独使用又は放射線治療との併用に起因する急性、遅延、晩期、及び予期嘔吐等の悪心ないし嘔吐を治療するための制吐剤と併用することができる。嘔吐を予防又は治療するために、本発明の化合物は他の制吐剤、特にニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト(例えばオンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、及びザチセトロン)、GABAB受容体アゴニスト(例えばバクロフェン)、コルチコステロイド(例えばDecadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecorten又は米国特許第2,789,118号、2,990,401号、3,048,581号、3,126,375号、3,929,768号、3,996,359号、3,928,326号及び3,749,712号に開示されているもの)、抗ドーパミン作用薬(例えばフェノチアジン(例えばプロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン及びメソリダジン)、メトクロプラミド又はドロナビノール)と併用することができる。別の態様では、本発明の化合物の投与により生じる可能性のある嘔吐の治療又は予防のためにニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドから選択される制吐剤との併用治療が開示される。
【0132】
本発明の化合物と併用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストは例えば米国特許第5,162,339号、5,232,929号、5,242,930号、5,373,003号、5,387,595号、5,459,270号、5,494,926号、5,496,833号、5,637,699号、5,719,147号;ヨーロッパ特許公開第EP0 360 390号、0 394 989号、0428 434号、0 429 366号、0 430 771号、0 436 334号、0 443 132号、0 482539号、0 498 069号、0 499 313号、0 512 901号、0 512 902号、0 514 273号、0 514 274号、0 514 275号、0 514 276号、0 515681号、0 517589号、0 520 555号、0 522808号、0 528 495号、0 532 456号、0 533 280号、0 536 817号、0 545 478号、0558156号、0 577 394号、0 585 913号、0 590 152号、0 599 538号、0 610 793号、0 634 402号、0 686 629号、0 693 489号、0 694 535号、0 699 655号、0 699 674号、0 707 006号、0 708 101号、0 709 375号、0 709 376号、0 714 891号、0 723 959号、0 733 632号及び0 776 893号;PCT国際特許公開第WO90/05525号、90/05729号、91/09844号、91/18899号、92/01688号、92/06079号、92/12151号、92/15585号、92/17449号、92/20661号、92/20676号、92/21677号、92/22569号、93/00330号、93/00331号、93/01159号、93/01165号、93/01169号、93/01170号、93/06099号、93/09116号、93/10073号、93/14084号、93/14113号、93/18023号、93/19064号、93/21155号、93/21181号、93/23380号、93/24465号、94/00440号、94/01402号、94/02461号、94/02595号、94/03429号、94/03445号、94/04494号、94/04496号、94/05625号、94/07843号、94/08997号、94/10165号、94/10167号、94/10168号、94/10170号、94/11368号、94/13639号、94/13663号、94/14767号、94/15903号、94/19320号、94/19323号、94/20500号、94/26735号、94/26740号、94/29309号、95/02595号、95/04040号、95/04042号、95/06645号、95/07886号、95/07908号、95/08549号、95/11880号、95/14017号、95/15311号、95/16679号、95/17382号、95/18124号、95/18129号、95/19344号、95/20575号、95/21819号、95/22525号、95/23798号、95/26388号、95/28418号、95/30674号、95/30687号、95/33744号、96/05181号、96/05193号、96/05203号、96/06094号、96/07649号、96/10562号、96/16939号、96/18643号、96/20197号、96/21611号、96/29304号、96/29317号、96/29326号、96/29328号、96/31214号、96/32385号、96/37489号、97/01553号、97/01554号、97/03066号、97/08144号、97/14671号、97/17362号、97/18206号、97/19084号、97/19942号及び97/21702号;並びに英国特許公開第2 266 529号、2 268 931号、2 269 170号、2 269 590号、2 271 774号、2 292 144号、2 293 168号、2 293 169号及び2 302 689号に詳細に記載されている。このような化合物の製造は参考として本明細書に援用されている上記特許及び公開公報に詳細に記載されている。
【0133】
1態様では、本発明の化合物と併用するニューロキニン−1−受容体アンタゴニストは米国特許第5,719,147号に記載の2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、又はその医薬的に許容可能な塩から選択される。
【0134】
本発明の化合物は貧血の治療に有用な薬剤と併用投与することもできる。このような貧血治療剤は例えば持続型エリスロポエシス受容体アクチベーター(例えばエポエチンα)である。
【0135】
本発明の化合物は好中球減少症の治療に有用な薬剤と併用投与することもできる。このような好中球減少症治療剤は例えばヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)等の好中球の生産と機能を調節する造血細胞増殖因子である。G−CSFの例としてはフィルグラスチムが挙げられる。
【0136】
本発明の化合物はレバミソール、イソプリノシン及びZadaxin等の免疫強化剤と併用投与することもできる。
【0137】
従って、本発明の範囲は1)エストロゲン受容体モジュレーター、2)アンドロゲン受容体モジュレーター、3)レチノイド受容体モジュレーター、4)殺細胞/細胞増殖抑制剤、5)増殖抑制剤、6)プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、10)血管新生阻害剤、11)PPAR−γアゴニスト、12)PPAR−δアゴニスト、13)先天的多剤耐性の阻害剤、14)制吐剤、15)貧血の治療に有用な薬剤、16)好中球減少症の治療に有用な薬剤、17)免疫強化剤、18)細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、並びに19)細胞周期チェックポイントに介入する物質から選択される第2の化合物と本発明の化合物の併用を含む。
【0138】
本発明の化合物に関して「投与」なる用語又はその活用形(例えば化合物を「投与する」)は治療を必要とする哺乳動物の系に化合物又は化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを1種以上の他の活性剤(例えば殺細胞剤等)と併用投与する場合には、「投与」及びその活用形は各々化合物又はそのプロドラッグと他の薬剤の同時及び逐次導入を意味するものとする。
【0139】
本明細書で使用する「組成物」なる用語は特定量の特定成分を含有する製剤と、特定量の特定成分の組み合わせにより直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。
【0140】
本明細書で使用する「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床技術者により求められる生物又は医学的応答を組織、系、動物又はヒトに誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0141】
「癌を治療する」又は「癌の治療」なる用語は癌疾患に冒された哺乳動物に投与することを意味し、癌細胞を死滅させることにより癌疾患を緩和させる効果のみならず、癌の増殖及び/又は転移を抑制する効果も意味する。
【0142】
1態様では、第2の化合物として使用する血管新生阻害剤はチロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来増殖因子の阻害剤、線維芽細胞由来増殖因子の阻害剤、血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン阻害薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ポリ硫酸ペントサン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンジオスタチン、トロポリン−1、又はVEGFに対する抗体から選択される。1態様では、エストロゲン受容体モジュレーターはタモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0143】
治療有効量の式Aの化合物を放射線治療と併用投与するか及び/又は1)エストロゲン受容体モジュレーター、2)アンドロゲン受容体モジュレーター、3)レチノイド受容体モジュレーター、4)殺細胞/細胞増殖抑制剤、5)増殖抑制剤、6)プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、10)血管新生阻害剤、11)PPAR−γアゴニスト、12)PPAR−δアゴニスト、13)先天的多剤耐性の阻害剤、14)制吐剤、15)貧血の治療に有用な薬剤、16)好中球減少症の治療に有用な薬剤、17)免疫強化剤、18)細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、並びに19)細胞周期チェックポイントに介入する物質から選択される第2の化合物と併用投与することを含む癌の治療方法も請求の範囲に含まれる。
【0144】
本発明の更に別の態様は治療有効量の式Aの化合物をパクリタキセル又はトラスツズマブと併用投与することを含む癌の治療方法である。
【0145】
本発明は更に治療有効量の式Aの化合物をCOX−2阻害剤と併用投与することを含む癌の治療又は予防方法も包含する。
【0146】
本発明は治療有効量の式Aの化合物と1)エストロゲン受容体モジュレーター、2)アンドロゲン受容体モジュレーター、3)レチノイド受容体モジュレーター、4)殺細胞/細胞増殖抑制剤、5)増殖抑制剤、6)プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、10)血管新生阻害剤、11)PPAR−γアゴニスト、12)PPAR−δアゴニスト、13)細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、並びに14)細胞周期チェックポイントに介入する物質から選択される第2の化合物を含有する癌の治療又は予防に有用な医薬組成物も包含する。
【0147】
明記する全特許、公開公報及び継続特許出願は参考として本明細書に援用される。
【0148】
化学反応の記載及び下記実施例で使用する略語は以下の意味である。AEBSF(弗化p−アミノエチルベンゼンスルホニル);BSA(ウシ血清アルブミン);CuI(ヨウ化銅);CuSO(硫酸銅);DCE(ジクロロエタン);DCM(ジクロロメタン);DIEPA(ジイソプロピルエチルアミド);DMF(ジメチルホルミルアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオスレイトール);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);EGTA(エチレングリコール四酢酸);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);HOAc(酢酸);HPLC(高性能液体クロマトグラフィー);HRMS(高分解能質量分析);LCMS(液体クロマトグラフ質量分析計);MeOH(メタノール);MP(メチルポリスチレン);NaHCO(重炭酸ナトリウム);NaSO(硫酸ナトリウム);NHOAc(酢酸アンモニウム);NBS(N−ブロモスクシンアミド);NMR(核磁気共鳴);PBS(リン酸緩衝食塩水);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);PS−DIEA(ポリスチレンジイソプロピルエチルアミン);THF(テトラヒドロフラン);及びTFA(トリフルオロ酢酸)。
【0149】
本発明の化合物は文献公知であるか又は実験手順に例証する他の標準操作に加え、下記反応スキームに示すような反応を使用することにより製造することができる。従って、下記反応スキームは指定化合物又は例証の目的で使用する特定置換基により限定されない。反応スキームに示す置換基番号は必ずしも請求の範囲で使用する番号と一致せず、多くの場合には分かりやすくするために、上記式Aの定義で複数の置換基が許容される化合物にも置換基が1個だけ結合している状態を示す。
【0150】
本発明の化合物を製造するために使用する反応は文献公知であるか又は実験手順に例証するようなエステル加水分解、保護基の脱離等の他の標準操作に加え、反応スキームI〜IIIに示すような反応を使用することにより製造される。
【0151】
反応スキームの概要
反応スキームIは適切に置換されたヒドロキシピリジンI−1を出発材料とする本発明の化合物の製造を例証する。この材料はピリジン中にて無水トリフルオロメタンスルホン酸で処理することにより対応するピリジルトリフラートI−2に変換することができる。中間体I−2を官能基化アリールボロン酸と標準鈴木カップリングさせるとI−3が得られる。次に、この材料を各種アミン(スキーム1に例示するようなHNR及び表1の化合物)とポリマー担持ホウ水素化物で同時に還元アミノ化すると、I−4が得られる。
【0152】
反応スキームIIは文献(Renault,O.;Dallemagne,P.;and Rault,S.Org.Prep.Proced.Int.,1999,31,324)に従って製造されるケトンII−1を出発材料とする本発明の化合物の合成を例証する。II−1をN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールと縮合するとケト−エナミンII−2が得られ、2−シアノアセトアミドで環化すると、ピリドンII−3が得られる。
【0153】
II−3をオキシ塩化リンで処理すると、クロロピリジンII−4が得られる。ラジカル臭素化後に適切に置換されたアミンで置換すると、アミンII−5が得られる。
【0154】
反応スキームIIIは各種アミン(NR’R”)及びアルコキシド(OR’)による塩化物の置換を示し、このような置換は化学分野で周知である。
【0155】
反応スキームIVは文献(Renault,O.;Dallemagne,P.;and Rault,S.Org.Prep.Proced.Int.,1999,31,324)に従って製造されるケトンIV−1を出発材料とする本発明の化合物の合成を例証する。IV−1を2−クロロ−N,N−ジメチルアミノトリメチニウムヘキサフルオロリン酸塩と反応させると、クロロピリジンIV−2が得られ、パラジウム化学反応によりシアノピリジンIV−3に変換する。ラジカル臭素化後に適切に置換されたアミンで置換すると、アミンIV−4が得られる。次に、化学分野で公知の反応を使用してシアノ基を複素環とアミドに変換する。
【0156】
【化15】



【0157】
以下の実施例は本発明を更によく理解できるようにすることを目的とする。利用する特定材料、種及び条件は本発明の例証を目的とし、その妥当な範囲を制限するものではない。下表に記載する化合物の合成に利用する試薬は市販されており、又は当業者により容易に製造される。
【0158】
【化16】

【0159】
5−シアノ−3−フェニルピリジン−2−イルトリフルオロメタンスルホネート(1−2)
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.384g,1.20mmol)を6−ヒドロキシ−5−フェニルニコチノニトリル(1−1)(1.962g,無水ピリジン60mL中10.0mmol)に0℃で撹拌下に滴下した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物の添加後にピリジン溶液を0℃から室温になるまで一晩撹拌した。翌朝、ピリジン溶液をDCM(300mL)に溶かし、水、飽和NaHCO、及びブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥した。濾過及び濃縮すると粗生成物が得られ、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、純5−シアノ−3−フェニルピリジン−2−イルトリフルオロメタンスルホネート(1−2)が得られた。分析LCMS:単一ピーク(214nm),3.553分。H NMR(500MHz,CDCl):δ 8.64(d,J=2.2Hz,1H),8.16(d,J=2.2Hz,1H),7.52−7.56(m,3H),7.45−7.49(m,2H)。
【0160】
6−(4−ホルミルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(1−3)
5−シアノ−3−フェニルピリジン−2−イルトリフルオロメタンスルホネート(1−2;328mg,1.0mmol)、4−ホルミルフェニルボロン酸(225mg,1.5mmol)、Pd(dppf)(CHCl)(16mg,0.02mmol)、2M CsCO水溶液(2mL,4mmol)、及びTHF(2mL)の混合物を電子レンジ(Smith−Synthesizer)で160℃に10分間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をDCM(40mL)で処理し、水、ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥した。濾過及び濃縮すると粗生成物が得られ、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、純6−(4−ホルミルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(1−3)が得られた。分析LCMS:単一ピーク(214nm),3.240分。H NMR(500MHz,CDCl):δ 10.01(s,1H),8.92(d,J=2.0Hz,1H),8.04(d,J=2.0Hz,1H),7.79(d,J=8.2Hz,2H),7.55(d,J=8.2Hz,1H),7.31−7.39(m,3H),7.13−7.18(m,2H)。
【0161】
5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル(1−5)
DCE−HC(OMe)−HOAc(7:2:1,6mL)中の6−(4−ホルミルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(1−3;57mg,0.2mmol)、1−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)フェニル]メタンアミン(1−4;77mg,0.4mmol)及びMP−BH(CN)樹脂(1g,1.2mmol)の混合物を室温で一晩振盪した。その後、樹脂を濾過し、MeOH(2×4mL)で洗浄した。溶液を合わせて濃縮し、LCMSにより精製すると、所望純生成物(TFA塩)が黄味がかった固体として得られた(1−5)。分析LCMS:単一ピーク(214nm),2.538分。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ 10.94(s,1H),9.69(s,1H),9.13(d,J=2.0Hz,1H),8.42(d,J=2.0Hz,1H),8.22(d,J=8.3Hz,2H),7.65(d,J=8.3Hz,2H),7.39−7.45(m,4H),7.34−7.37(m,3H),7.25−7.27(m,2H),4.26(s,1H),4.22(s,1H);HRMS,C2821S(M+1)の計算値460.1591;実測値460.1580。
【0162】
1−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]フェニル}−N−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]メタンアミン(1−6)
5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル(1−5;TFA塩)(69mg,0.1mmol)、2M NaN水溶液(0.75mL,1.5mmol)、2M ZnBr水溶液(0.5mL,1.0mmol)の混合物を電子レンジ(Smith−Synthesizer)で165℃に15分間加熱した。その後、溶液を濃縮した。残渣をDMSO(1mL)に再溶解し、LCMSにより精製すると、純所望生成物(TFA塩)が黄味がかった固体として得られた(1−6)。分析LCMS:単一ピーク(214nm),2.339分。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ 9.70(s,1H),9.32(d,J=2.1Hz,1H),8.42(d,J=2.1Hz,1H),8.22(d,J=8.2Hz,2H),7.68(d,J=8.3Hz,2H),7.42−7.48(M,4H),7.35−7.40(m,3H),7.28−7.32(m,2H),4.26(s,2H),4.23(s,2H);HRMS,C2822S(M+1)の計算値503.1761;実測値503.1769。
【0163】
【化17】

【0164】
3−(ジメチルアミノ)−1−(4−メチルフェニル)−2−フェニルプロプ−2−エン−1−オン(2−2)
1−(4−メチルフェニル)−2−フェニルエタノン(2−1)(Renault,O;Dallemagne,P.;and Rault,S.Org.Prep.Proced.Int.1999,31,324)(3.29g,15.65mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(4.66g,39.12mmol)のDMF(15mL)溶液を110℃で1時間撹拌した。混合物を減圧濃縮すると、3−(ジメチルアミノ)−1−(4−メチルフェニル)−2−フェニルプロプ−2−エン−1−オンが得られた。LRMS m/z(M+H)計算値:266.4,実測値:266.2。
【0165】
6−(4−メチルフェニル)−2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル(2−3)
0℃のDMF(20mL)中のNaH(1.38g,鉱油中60%,34.41mmol)のスラリーにMeOH(1.5mL)及びDMF(40mL)中の3−(ジメチルアミノ)−1−(4−メチルフェニル)−2−フェニルプロプ−2−エン−1−オン(2−2;4.15g,15.64mmol)と2−シアノアセトアミド(1.45g,17.2mmol)の溶液を40分間滴下した。得られた混合物を90℃で4時間撹拌し、室温まで冷却した。混合物を希HCl水溶液(240mL,0.25M)に注ぎ、濾過し、水洗(40mL)し、減圧乾燥すると、6−(4−メチルフェニル)−2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル(2−3)が得られた。H NMR(500MHz,CDCl):δ 7.96(s,1H),7.15−7.28(m,7H),7.05−7.07(m,2H),2.36(s,3H)。LRMS m/z(M+H)計算値:287.3,実測値:287.1。
【0166】
2−クロロ−6−(4−メチルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(2−4)
POCl(15mL)中の6−(4−メチルフェニル)−2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル(2−3;1.5g,5.24mmol)の混合物を100℃まで3時間加熱し、濃縮した。残渣を炭酸ナトリウム水溶液で塩基性化し、CHCl(3×30mL)で抽出した。有機層を合わせて乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5−10%EtOAc)により精製すると、2−クロロ−6−(4−メチルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(2−4)が得られた。H NMR(500MHz,CDCl):δ 7.95(s,1H),7.33−7.35(m,3H),7.28(d,7=8.3,2H),7.16−7.18(m,2H),7.06(d,J=7.9,2H),2.32(s,3H)。LRMS m/z(M+H)計算値:305.2,実測値:305.1。
【0167】
6−[4−(ブロモメチル)フェニル]−2−クロロ−5−フェニルニコチノニトリル(2−5)
2−クロロ−6−(4−メチルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(2−4;0.066g,0.217mmol)、NBS(0.046g,0.26mmol)及び過酸化ベンゾイル(0.010g,0.043mmol)のCDCl(2mL)溶液を一晩加熱還流した。混合物を濃縮すると、6−[4−(ブロモメチル)フェニル]−2−クロロ−5−フェニルニコチノニトリル(2−5)が得られ、それ以上精製せずに使用した。LRMS m/z(M+H)計算値:383.7,実測値:383.1。
【0168】
2−クロロ−5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル(2−6)
THF(5mL)とMeOH(5mL)中の6−[4−(ブロモメチル)フェニル]−2−クロロ−5−フェニルニコチノニトリル(2−5;0.294g,0.766mmol)の溶液に1−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)フェニル]メタンアミン(0.147g,0.766mmol)とDIPEA(0.495g,3.831mmol)を加えた。混合物を一晩撹拌し、濃縮した。残渣をNaCO水溶液(2M,10mL)で処理し、CHCl(3x×30mL)で抽出した。有機層を合わせて乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl中3−6%MeOH)により精製すると、2−クロロ−5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル(2−6)が得られた。H NMR(500MHz,CDCl):δ 8.63(s,1H),8.01(d,J=8.0,2H),7.98(s,1H),7.47(d,J=8.1,2H),7.28−7.38(m,7H),7.16−7.18(m,2H),3.84(s,2H),3.83(s,2H)。LRMS m/z(M+H)計算値:494.0,実測値:494.1。
【0169】
スキーム1の化合物(1−4)を適切に置換されたアミンとした以外はスキーム1に示すように表1の化合物を合成した。特に指定しない限り、記載する化合物のTFA塩は質量分析HPLC精製により単離した。
【0170】
表1には一方の位置異性体のみを示すが、両方の異性体を合成した。
【0171】
【表1】


【0172】
【化18】

【0173】
5−クロロ−2−(4−メチルフェニル)−3−フェニルピリジン(3−2)
0℃の1−(4−メチルフェニル)−2−フェニルエタノン(4−1)(Renault,O;Dallemagne,P.;and Rault,S.Org.Prep.Proced.Int.1999,31,324)(0.5g,2.38mmol)のTHF(5mL)溶液にTHF中(2.6mL,1M)のtert−ブトキシドを加えた。スラリーを室温で45分間撹拌した。2−クロロ−N,N−ジメチルアミノトリメチニウムヘキサフルオロリン酸塩(1.1g,3.6mmol)を加え、混合物を45℃まで3時間加熱した。酢酸アンモニウム(0.367g,4.76mmol)の添加後、混合物を6時間加熱還流した。溶液を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を合わせて乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中2−4%EtOAc)により精製すると、標記化合物が得られた。LRMS m/z(M+H)計算値:280.8,実測値:280.2。
【0174】
6−(4−メチルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(3−3)
DMA(5mL)中の5−クロロ−2−(4−メチルフェニル)−3−フェニルピリジン(0.320g,1.144mmol)、シアン化亜鉛(0.081g,0.687mmol)、Pd(dba)(0.063g,0.069mmol)、dppf(0.076g,0.137mmol)及び亜鉛(0.018g,0.275mmol)の混合物を脱気し(3×ポンプ/N2)、150℃まで20時間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、濃縮し、EtOAcと水に分配し、EtOAcで3回抽出した。有機層を合わせて乾燥し(無水NaSO)、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中0−20%EtOAc)により精製すると、標記化合物が得られた。H NMR(500MHz,CDCl):δ 8.92(d,1H,J=2.0Hz),7.95(d,1H,J=2.2Hz),7.34−7.33(m,3H),7.28−7.26(m,2H),7.20−7.18(m,2H),7.07(d,2H,J=8.1Hz),2.33(s,3H)。LRMS m/z(M+H)計算値:271.0,実測値:271.0。
【0175】
1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オン(3−5)
CDCl(6mL)中の6−(4−メチルフェニル)−5−フェニルニコチノニトリル(0.250g,0.925mmol)の混合物にNBS(0.173g,0.971mmol)と過酸化ベンゾイル(0.045g,0.185mmol)を加えた。反応混合物を15時間加熱還流した。次に反応混合物を冷却し、濃縮すると、粗6−[4−(ブロモメチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリルが得られた。LRMS m/z(M+H)計算値:348.9,実測値:348.9。
【0176】
1:1MeOH:THF(1mL)中の3−アミノ−1−(2−アミノフェニル)プロパン−1−オンとDIEAの混合物に撹拌下に室温で粗6−[4−(ブロモメチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリルを加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。材料を濃縮し、DMFに取り、逆相HPLC(5%CHCN:95%HO:0.01%TFA→95%CHCN:5%HO:0.01%TFA)により精製した。LRMS m/z(M+H)計算値:433.1,実測値433.1。
【0177】
TFA中のニトリル(0.014g,0.032g)とチオセミカルバジド(0.004g,0.049mmol)の混合物を60℃まで15時間加熱した。次に混合物を冷却し、濃縮した。残渣をDMFに取り、逆相HPLC(5%CHCN:95%HO:0.01%TFA→95%CHCN:5%HO:0.01%TFA)により精製した。NMR(500MHz,dDMSO):δ 12.98(bs,1H),8.77(bs,2H),8.08(d,1H,J=2.19Hz),7.95(d,2H,J=7.1Hz),7.70(d,1H,J=6.84Hz),7.67−7.60(m,3H),7.50(t,2H,J=7.81Hz)7.38−7.25(m,7H),6.79(d,1H,J=7.6Hz),6.57(t,1H,J=8.05Hz),4.22(t,2H,J=5.61Hz),3.39(t,2H,J=6.8Hz),3.28−3.15(m,2H)。LRMS m/z(M+H)計算値:507.0,実測値:507.0。
【0178】
表2に示す以下の化合物も同様に製造した。
【0179】
【表2】

【実施例1】
【0180】
ヒトAktアイソフォームとΔPH−Akt1のクローニング
pS2neoベクター(2001年4月3日付けでATCC PTA−3253としてATCCに登録)を次のように作製した。pRmHA3ベクター(Nucl.Acid Res.16:1043−1061(1988)に記載されているように作製)をBglIIで切断し、2734bpフラグメントを単離した。pUChsneoベクター(EMBO J.4:167−171(1985)に記載されているように作製)をBglIIで切断し、4029bpバンドを単離した。これらの2つの単離フラグメントを相互にライゲートし、ベクターpS2neo−1を作製した。このプラスミドはメタロチオニンプロモーターとアルコールデヒドロゲナーゼpolyA付加部位の間にポリリンカーを含む。更に熱ショックプロモーターにより誘導されるneo耐性遺伝子ももつ。pS2neo−1ベクターをPsp5IIとBsiWIで切断した。2種の相補的オリゴヌクレオチド:
【0181】
【化19】

及び
【0182】
【化20】

を合成した後にアニールした。切断したpS2neo−1とアニールしたオリゴヌクレオチドを相互にライゲートし、第2のベクターpS2neoを作製した。この変換では、S2細胞にトランスフェクションする前に直鎖化し易くするためにNotI部位を付加した。
【0183】
5’プライマー:
【0184】
【化21】

と3’プライマー:
【0185】
【化22】

を使用してヒト脾臓cDNA(Clontech)からヒトAkt1遺伝子をPCR(Clontech)により増幅した。5’プライマーにはEcoRI−BglII部位を付加した。3’プライマーにはクローニングの目的でXbaI−BamHI部位を付加した。得られたPCR産物をpGEM3Z(Promega)にEcoRI/XbaIフラグメントとしてサブクローニングした。発現/精製の目的でPCRプライマー:
【0186】
【化23】

を使用して中型Tタグを全長Akt1遺伝子の5’末端に付加した。得られたPCR産物は5’KpnI部位と3’BamHI部位を含んでおり、これらを使用し、昆虫細胞発現ベクターpS2neoを含むビオチンタグとインフレームにフラグメントをサブクローニングした。
【0187】
Akt1のプレックストリンホモロジードメイン(PH)欠失(Akt1ヒンジ領域の一部の欠失を含むΔaa4−129)変異体を発現させるために、pS2neoベクターの全長Akt1遺伝子を鋳型としてPCR欠失突然変異誘発を行った。PCRは欠失を含むオーバーラップする内部プライマー:
【0188】
【化24】

及び
【0189】
【化25】

と、KpnI部位と5’末端の中型Tタグを含む5’及び3’フランキングプライマーを使用して2段階で実施した。最終PCR産物をKpnIとSmaIで消化し、pS2neo全長Akt1 KpnI/SmaI切断ベクターにライゲートし、クローンの5’末端を欠失変異体で有効に置換した。
【0190】
アミノ末端オリゴプライマー:
【0191】
【化26】

及びカルボキシ末端オリゴプライマー:
【0192】
【化27】

を使用して成人脳cDNA(Clontech)のPCRによりヒトAkt3遺伝子を増幅した。これらのプライマーはクローニング目的のために5’EcoRI/BglII部位と3’XbaI/BglII部位を付加した。得られたPCR産物をpGEM4Z(Promega)のEcoRI及びXbaI部位にクローニングした。発現/精製目的のために、PCRプライマー:
【0193】
【化28】

を使用して中型Tタグを全長Akt3クローンの5’末端に付加した。得られたPCR産物は昆虫細胞発現ベクターpS2neoを含むビオチンタグとのインフレームクローニングを可能にする5’KpnI部位を含んでいた。
【0194】
アミノ末端オリゴプライマー:
【0195】
【化29】

及びカルボキシ末端オリゴプライマー:
【0196】
【化30】

を使用してヒト胸腺cDNA(Clontech)のPCRによりヒトAkt2遺伝子を増幅した。これらのプライマーはクローニング目的のために5’HindIII/BglII部位と3’EcoRI/BamHI部位を付加した。得られたPCR産物をpGem3Z(Promega)のHindIII/EcoRI部位にサブクローニングした。発現/精製目的のために、PCRプライマー:
【0197】
【化31】

を使用して中型Tタグを全長Akt2の5’末端に付加した。得られたPCR産物を上述のようにpS2neoベクターにサブクローニングした。
【実施例2】
【0198】
ヒトAktアイソフォームとΔPH−Akt1の発現
クローニングしたAkt1、Akt2、Akt3及びΔPH−Akt1遺伝子をpS2neo発現ベクターに含むDNAを精製及び使用してリン酸カルシウム法によりショウジョウバエS2細胞(ATCC)にトランスフェクトした。抗生物質(G418,500μg/ml)耐性遺伝子のプールを選択した。細胞を1.0L容量(〜7.0×10/ml)まで増殖させ、ビオチンとCuSOを夫々終濃度50μM及び50mMまで加えた。細胞を72時間27℃で増殖させ、遠心により回収した。細胞ペーストを必要時まで−70℃で凍結した。
【実施例3】
【0199】
ヒトAktアイソフォームとΔPH−Akt1の精製
実施例2に記載したS2細胞1リットルからの細胞ペーストをバッファーA:(50mM Tris pH 7.4,1mM EDTA,1mM EGTA,0.2mM AEBSF,10μg/mlベンズアミジン,ロイペプチン,アプロチニン及びペプスタチン各5μg/ml,10%グリセロール及び1mM DTT)中1%CHAPS 50mlの存在下に音波処理により溶解させた。Protein G Sepharose fast flow(Pharmacia)カラムに9mg/ml抗中型Tモノクローナル抗体をロードし、25%グリセロールを加えたバッファーA中75μM EYMPME(配列番号14)ペプチドで溶出させて可溶性フラクションを精製した。Aktを含むフラクションをプールし、蛋白質純度をSDS−PAGEにより評価した。標準ブラッドフォードプロトコールを使用して精製蛋白質を定量した。精製蛋白質を液体窒素で瞬間冷凍し、−70℃で保存した。
【0200】
S2細胞から精製したAkt及びAktプレックストリンホモロジードメイン欠失蛋白質には活性化が必要であった。10nM PDK1(Upstate Biotechnology,Inc.)、脂質小胞(10μMホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸−Metreya,Inc,100μMホスファチジルコリン及び100μMホスファチジルセリン−Avanti Polar lipids,Inc.)及び活性化用バッファー(50mM Tris pH7.4,1.0mM DTT,0.1mM EGTA,1.0μMミクロシスチン−LR,0.1mM ATP,10mM MgCl,333μg/ml BSA及び0.1mM EDTA)を含む反応液中でAkt及びAktプレックストリンホモロジードメイン欠失蛋白質を活性化した(Alessiら,Current Biology 7:261−269)。反応混合物を22℃で4時間インキュベートした。アリコートを液体窒素で瞬間冷凍した。
【実施例4】
【0201】
Aktキナーゼアッセイ
GSK由来ビオチン化ペプチド基質を使用して活性化Aktアイソフォーム及びプレックストリンホモロジードメイン欠失構築物をアッセイした。ホスホペプチドに特異的なランタニドキレート(Lance)標識モノクローナル抗体をペプチド上のビオチン部分と結合するストレプトアビジン標識アロフィコシアニン(SA−APC)フルオロフォアと併用して均一時間分解蛍光(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)(HTRF)によりペプチドリン酸化の程度を測定した。LanceとAPCが近接(即ち同一ホスホペプチド分子に結合)しているときには、LanceからAPCへ非放射エネルギー移動が生じ、その後、665nmでAPCから発光する。
【0202】
アッセイに必要な材料:
A.活性化Aktアイソザイム又はプレックストリンホモロジードメイン欠失構築物;
B.Aktペプチド基質:GSK3α(S21)ペプチド番号3928ビオチン−GGRARTSSFAEPG(配列番号15),Macromolecular Resources;
C.Lance標識抗ホスホGSK3αモノクローナル抗体(Cell Signaling Technology,クローン番号27);
D.SA−APC(Prozymeカタログ番号PJ25Sロット番号896067);
E.Microfluor(登録商標)B U Bottom Microtiter Plates(Dynex Technologies,カタログ番号7205);
F.Discovery(登録商標)HTRF Microplate Analyzer,Packard Instrument Company;
G.100Xプロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC):1mg/mlベンズアミジン,0.5mg/mlペプスタチン,0.5mg/mlロイペプチン,0.5mg/mlアプロチニン;
H.10Xアッセイバッファー:500mM HEPES,pH 7.5,1%PEG,mM EDTA,1mM EGTA,1%BSA,20mM J−グリセロールリン酸;
I.クエンチバッファー:50mM HEPES pH 7.3,16.6mM EDTA,0.1%BSA,0.1% Triton−100,0.17nM Lance標識モノクローナル抗体クローン番号27,0.0067mg/ml SA−APC;
J.ATP/MgClワーキング溶液:1Xアッセイバッファー,1mM DTT,1X PIC,125mM KCl,5%グリセロール,25mM MgCl,375TM ATP;
K.酵素ワーキング溶液:1Xアッセイバッファー,1mM DTT,1X PIC,5%グリセロール,活性Akt。最終酵素濃度はアッセイが線形応答範囲となるように選択した;
L.ペプチドワーキング溶液:1Xアッセイバッファー,1mM DTT,1X PIC,5%グリセロール,2TM GSK3 ビオチン化ペプチド番号3928。
【0203】
96ウェルマイクロタイタープレートの適当なウェルにATP/MgClワーキング溶液16TLを加えることにより反応混合物を調製した。阻害剤又はビヒクル(1.0Tl)を加えた後にペプチドワーキング溶液10Tlを加えた。酵素ワーキング溶液13Tlを加えて混合することにより反応を開始した。反応を50分間進行させた後にHTRFクエンチバッファー60Tlを加えることにより停止した。停止した反応溶液を室温で少なくとも30分間インキュベートした後にDiscovery計器で読み取った。
【0204】
PKAアッセイ:
各PKAアッセイは以下の成分から構成した。
A.5XPKAアッセイバッファー(200mM Tris pH7.5,100mM MgCl,5mM J−メルカプトエタノール,0.5mM EDTA);
B.水で希釈したKemptide(Sigma)の50μMストック;
C.33P−ATP[10mCi/ml]1.0μlを非標識ATPの50μMストック200Tlで希釈することにより調製した33P−ATP;
D.0.5mg/ml BSAで希釈したPKA触媒サブユニット(UBIカタログ番号14−114)の70nMストック10μl;
E.PKA/Kemptideワーキング溶液:等量の5XPKAアッセイバッファー,Kemptide溶液及びPKA触媒サブユニット。
【0205】
96ディープウェルアッセイプレートで反応混合物を調製した。阻害剤又はビヒクル(10Tl)を33P−ATP溶液10Tlに加えた。PKA/Kemptideワーキング溶液30Tlを各ウェルに加えることにより反応を開始した。反応溶液を混合し、室温で20分間インキュベートした。100mM EDTA及び100mMピロリン酸ナトリウム50Tlを加えて混合することにより反応を停止した。
【0206】
酵素反応物(リン酸化Kemptide)をp81ホスホセルロース96ウェルフィルタープレート(Millipore)上で集めた。プレートを作製するために、p81フィルタープレートの各ウェルに75mMリン酸を充填した。プレートの底に真空を印加することによりフィルターを通してウェルを空にした。リン酸(75mM,170μl)を各ウェルに加えた。リン酸を含むフィルタープレートの対応するウェルに停止した各PKA反応からの30μlアリコートを加えた。真空印加後にペプチドをフィルター上にトラップし、フィルターを75mMリン酸で5回洗浄した。最終洗浄後、フィルターを風乾した。シンチレーション液(30μl)を各ウェルに加え、フィルターをTopCount(Packard)でカウントした。
【0207】
PKCアッセイ:
各PKCアッセイは以下の成分から構成した。
A.10X PKC同時活性化バッファー:2.5mM EGTA,4mM CaCl
B.5X PKC活性化バッファー:1.6mg/mlホスファチジルセリン,0.16mg/mlジアシルグリセロール,100mM Tris pH 7.5,50mM MgCl,5mM J−メルカプトエタノール;
C.33P−ATP[10mCi/ml]1.0μlを非標識ATPの100μMストック100μlで希釈することにより調製した33P−ATP;
D.水で希釈したミエリン塩基性蛋白質(350μg/ml,UBI);
E.0.5mg/ml BSAで希釈したPKC(50ng/ml,UBIカタログ番号;14−115);
F.PKC/ミエリン塩基性蛋白質ワーキング溶液:PKC同時活性化バッファー及びミエリン塩基性蛋白質各5容量をPKC活性化バッファー及びPKC各10容量と混合することにより調製。
【0208】
アッセイ混合物を96ディープウェルアッセイプレートで調製した。阻害剤又はビヒクル(10Tl)を33P−ATP5.0μlに加えた。PKC/ミエリン塩基性蛋白質ワーキング溶液を加えて混合することにより反応を開始した。反応混合物を30℃で20分間インキュベートした。100mM EDTA及び100mMピロリン酸ナトリウム50Tlを加えて混合することにより反応を停止した。ミエリン塩基性蛋白質を96ウェルフィルタープレートでPVDF膜に集め、シンチレーションカウントにより定量した。
【0209】
上記アッセイで本発明の特定化合物を試験した処、Akt1、Akt2及びAkt3の1種以上に対してIC50≦50μMであることが判明した。
【実施例5】
【0210】
Aktの阻害を決定するための細胞アッセイ
細胞(例えば活性化AktをもつLnCaP又はPTEN(−/−)腫瘍細胞株)を100mM皿に播種した。細胞が約70〜80%コンフルエントになったら、細胞に新鮮な培地5mlを補充し、試験化合物を溶液として加えた。対照として未処理細胞、ビヒクル処理細胞及び夫々20μM又は200nMのLY294002(Sigma)又はワートマンニン(Sigma)で処理した細胞も試験した。細胞を2、4又は6時間インキュベートし、培地を除去した。細胞をPBSで洗浄し、掻き取り、遠心管に移した。細胞をペレット化し、再びPBSで洗浄した。最後に、細胞ペレットを溶解用バッファー(20mM Tris pH8,140mM NaCl,2mM EDTA,1%Triton,1mM ピロリン酸Na,10mM J−グリセロールリン酸,10mM NaF,0.5mm NaVO,1μMミクロシスチン,及び1xプロテアーゼ阻害剤カクテル)に再懸濁し、氷上に15分間置き、静かにボルテックスして細胞を溶解させた。溶解液をBeckman卓上遠心機に入れ、100,000×gで4℃にて20分間回転させた。上清蛋白質を標準ブラッドフォードプロトコール(BioRad)により定量し、必要時まで−70℃で保存した。
【0211】
清澄溶解液から蛋白質を次のように免疫沈降(IP)させた。Akt1については、溶解液をNETN(100mM NaCl,20mM Tris pH 8.0,1mM EDTA,0.5%NP−40)中でSanta Cruz sc−7126(D−17)と混合し、蛋白質A/Gアガロース(Santa Cruz sc−2003)を加えた。Akt2については、溶解液をNETN中で抗Akt−2アガロース(Upstate Biotechnology #16−174)と混合し、Akt3については、溶解液をNETN中で抗Akt3アガロース(Upstate Biotechnology #16−175)と混合した。IPを一晩4℃でインキュベートし、洗浄し、SDS−PAGEにより分離した。
【0212】
ウェスタンブロットを使用し、Akt特異抗体(Cell Signaling Technology)としてAnti−Total Akt(カタログ番号9272)、Anti−Phopho Akt Serine 473(カタログ番号9271)、及びAnti−Phospho Akt Threonine 308(カタログ番号9275)を使用して完全Akt、pThr308 Akt1、pSer473 Akt1、及びAkt2とAkt3の対応するリン酸化部位とAktの下流ターゲットを分析した。PBSで希釈した適当な一次抗体+0.5%脱脂粉乳(NFDM)と共に4℃で一晩インキュベートした後、ブロットを洗浄し、PBSで希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体+0.5%NFDMと共に1時間室温でインキュベートした。蛋白質をECL試薬(Amersham/Pharmacia Biotech RPN2134)で検出した。
【実施例6】
【0213】
ヘレグリン刺激によるAkt活性化
MCF7細胞(PTEN+/+のヒト乳癌株)を1×10個/100mMプレートの濃度で播種した。細胞が70〜80%コンフルエントになったら無血清培地5mlを加えて一晩インキュベートした。翌朝、化合物を加え、細胞を1〜2時間インキュベートした後、(Aktの活性化を誘導するために)ヘレグリンを30分間加え、上記のように細胞を分析した。
【実施例7】
【0214】
腫瘍増殖の阻害
癌細胞増殖の阻害剤のin vivo効力は当分野で周知の数種のプロトコールにより確認することができる。
【0215】
PI3K経路のデレギュレーションを示すヒト腫瘍細胞株(例えばLnCaP,PC3,C33a,OVCAR−3,MDA−MB−468等)を6〜10週例雌ヌードマウス(Harlan)に0日目に皮下注射する。ビヒクル、化合物又は併用治療群にマウスをランダムに割り当てる。毎日投与を1日目に開始し、実験期間中継続する。あるいは、阻害剤試験化合物を連続輸液ポンプにより投与してもよい。合計容量0.2mlの化合物、化合物併用又はビヒクルを送達する。ビヒクルを投与した全動物が直径0.5〜1.0cmの病変を示すとき(一般に細胞注入から4〜5.5週間後)に腫瘍を切除し、計量する。細胞株毎に各投与群の腫瘍の平均重量を計算する。
【配列表】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

[式中、aは0又は1であり;bは0又は1であり;mは0、1又は2であり;nは0、1、2又は3であり;pは0、1又は2であり;qは0、1、2又は3であり;rは0又は1であり;sは0又は1であり;tは2、3、4、5又は6であり;
は1)(C=O)−C10アルキル、2)(C=O)アリール、3)C−C10アルケニル、4)C−C10アルキニル、5)(C=O)ヘテロシクリル、6)(C=O)−Cシクロアルキル、7)COH、8)ハロ、9)CN、10)OH、11)O−Cペルフルオロアルキル、12)O(C=O)NR、13)NR(C=O)NR、14)S(O)、15)S(O)NR、16)NRS(O)、17)オキソ、18)CHO、19)NO、20)NR(C=O)O、21)O(C=O)O−C10アルキル、22)O(C=O)O−Cシクロアルキル、23)O(C=O)Oアリール、24)O(C=O)O−複素環、及び25)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されており;
は1)(C=O)−C10アルキル、2)(C=O)アリール、3)C−C10アルケニル、4)C−C10アルキニル、5)(C=O)ヘテロシクリル、6)(C=O)−Cシクロアルキル、7)COH、8)ハロ、9)CN、10)OH、11)O−Cペルフルオロアルキル、12)O(C=O)NR、13)NR(C=O)NR、14)S(O)、15)S(O)NR、16)NRS(O)、17)CHO、18)NO、19)NR(C=O)O、20)O(C=O)O−C10アルキル、21)O(C=O)O−Cシクロアルキル、22)O(C=O)Oアリール、23)O(C=O)O−複素環、及び24)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは場合によりRから選択される1、2又は3個の置換基で置換されており;
及びRはH、C−C−アルキル及びC−C−ペルフルオロアルキルから独立して選択されるか、又はR及びRは結合して−(CH−を形成し、式中、炭素原子の1個は場合によりO、S(O)、−N(R)C(O)−、及び−N(COR)−から選択される部分で置換されており;
は1)(C=O)−C10アルキル、2)(C=O)アリール、3)C−C10アルケニル、4)C−C10アルキニル、5)(C=O)ヘテロシクリル、6)(C=O)−Cシクロアルキル、7)COH、8)ハロ、9)CN、10)OH、11)O−Cペルフルオロアルキル、12)O(C=O)NR、13)NR(C=O)NR、14)S(O)、15)S(O)NR、16)NRS(O)、17)オキソ、18)CHO、19)NO、20)O(C=O)O−C10アルキル、21)O(C=O)O−Cシクロアルキル、及び22)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されており;
及びRは1)H、2)(C=O)O、3)C−C10アルキル、4)アリール、5)C−C10アルケニル、6)C−C10アルキニル、7)ヘテロシクリル、8)C−Cシクロアルキル、9)SO、10)(C=O)NR、11)OH、及び12)O−P=O(OH)から独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されており;
は1)(C=O)(C−C10)アルキル、2)O(C−C)ペルフルオロアルキル、3)(C−C)アルキレン−S(O)、4)オキソ、5)OH、6)ハロ、7)CN、8)(C=O)(C−C10)アルケニル、9)(C=O)(C−C10)アルキニル、10)(C=O)(C−C)シクロアルキル、11)(C=O)(C−C)アルキレン−アリール、12)(C=O)(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、13)(C=O)(C−C)アルキレン−N(R、14)C(O)R、15)(C−C)アルキレン−CO、16)C(O)H、17)(C−C)アルキレン−COH、18)C(O)N(R、19)S(O)、20)S(O)N(R、21)NR(C=O)O、22)O(C=O)O−C10アルキル、23)O(C=O)O−Cシクロアルキル、24)O(C=O)Oアリール、25)O(C=O)O−複素環、及び26)O−P=O(OH)から選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは場合によりR、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ、N(R及びO−P=O(OH)から選択される3個までの置換基で置換されており;
は置換もしくは非置換(C−C)アルキル、置換もしくは非置換(C−C)アルケニル、置換もしくは非置換(C−C)アルキニル、置換もしくは非置換(C−C)シクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、(C−C)ペルフルオロアルキル、2,2,2−トリフルオロエチル、又は置換もしくは非置換ヘテロシクリルであり;
はH、(C−C)アルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ベンジル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−Cアルキル又はS(O)であり;
は1)H、2)C−C10アルキル、3)アリール、4)C−C10アルケニル、5)C−C10アルキニル、6)ヘテロシクリル、7)C−Cシクロアルキル、及び8)C−Cペルフルオロアルキルから選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは場合によりRから選択される1個以上の置換基で置換されている]の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
請求項1に記載の式B:
【化2】

[式中、R’はアルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロシクリルは場合により1〜3個のRで置換されている]の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
請求項2に記載の式C:
【化3】

[式中、RはH及び(C−C)アルキルから選択される]の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(1S,2R)−2−フェニルシクロプロピル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−(4−{[(3,4−ジフルオロベンジル)アミノ]メチル}フェニル)−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(3−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(4−フェニルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−[4−({[(4−ベンジルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({メチル[(1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
1−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]フェニル}−N−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]メタンアミン;
N−(3,4−ジフルオロベンジル)−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
2−クロロ−5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オン;
3−({4−[5−シアノ−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)−1−フェニルプロパン−1−オン;及び
3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)−1−フェニルプロパン−1−オンから選択される化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項5】
5−フェニル−6−[4−({[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(1S,2R)−2−フェニルシクロプロピル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−(4−{[(3,4−ジフルオロベンジル)アミノ]メチル}フェニル)−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(3−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({[2−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
5−フェニル−6−[4−({[(4−フェニルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]ニコチノニトリル;
6−[4−({[(4−ベンジルモルホリン−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
6−[4−({メチル[(1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]−5−フェニルニコチノニトリル;
N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
1−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]フェニル}−N−[4−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)ベンジル]メタンアミン;
N−(3,4−ジフルオロベンジル)−N−{4−[3−フェニル−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル]ベンジル}アミン;
1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オン;及び
3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)−1−フェニルプロパン−1−オンである請求項1に記載の化合物のTFA塩又はその立体異性体。
【請求項6】
1−(2−アミノフェニル)−3−({4−[5−(5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−3−フェニルピリジン−2−イル]ベンジル}アミノ)プロパン−1−オンである請求項4に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項7】
医薬キャリヤーと、前記キャリヤーに分散された治療有効量の請求項1に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項8】
医薬キャリヤーと、前記キャリヤーに分散された治療有効量の請求項4に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項9】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるAktのアイソフォームの1種以上の阻害方法。
【請求項10】
治療有効量の請求項4に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるAktのアイソフォームの1種以上の阻害方法。
【請求項11】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む癌の治療方法。
【請求項12】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の請求項4に記載の化合物を投与することを含む癌の治療方法。
【請求項13】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、血管新生が関与する非悪性疾患の治療方法。
【請求項14】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の請求項4に記載の化合物を投与することを含む、血管新生が関与する非悪性疾患の治療方法。
【請求項15】
1)エストロゲン受容体モジュレーター、2)アンドロゲン受容体モジュレーター、3)レチノイド受容体モジュレーター、4)殺細胞/細胞増殖抑制剤、5)増殖抑制剤、6)プレニル−蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、10)血管新生阻害剤、11)PPAR−γアゴニスト、12)PPAR−δアゴニスト、13)細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、並びに14)細胞周期チェックポイントに介入する物質から選択される第2の化合物を更に含有する請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
放射線治療と併用して治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む癌の治療方法。
【請求項17】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む再狭窄、炎症、自己免疫疾患及びアレルギー/喘息から選択される過剰増殖疾患の治療方法。
【請求項18】
治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含むインスリン過剰症の治療方法。

【公表番号】特表2006−524257(P2006−524257A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513183(P2006−513183)
【出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/012265
【国際公開番号】WO2004/096135
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】