説明

DETを形成するためのPETのエタノリシス及びその酸化

PETを含む供給材料をエタノールと反応させ、エチレングリコール、並びにジエチルイソフタレート及び/又はジエチルテレフタレートのような芳香族ジエチルエステルを回収する、PETのエタノリシス法を開示する。PET、又はテレフタレートモノマー及びエチレングリコールモノマーを含むターポリマーをエタノールと反応させて、エタノール、ジエチルテレフタレート、エチレングリコール、及び場合によってはジエチルイソフタレートを回収する。回収されたジエチル成分は、液相酸化にかけて芳香族カルボン酸を製造することができる。また、回収されたジエチル成分の液相酸化によって酢酸を製造することもできる。芳香族カルボン酸を用いてポリマーを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族エチルエステルを酸化し、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、並びにエチレンモノマー及びエステルモノマー、特に芳香族エステルモノマーを含む他のポリマーを再生利用する方法を提供する。本発明は、また、PET及び場合によっては他のポリマーを有する廃ポリマーを再生利用する方法も提供する。本発明は、かかる廃ポリマーからエチレングリコール及びエチルエステルを回収し、それからポリマーを製造する方法を提供する。本発明は、また、芳香族カルボン酸を製造するのに有用な芳香族エチルエステル成分を有する供給材料、並びに、酢酸及び芳香族カルボン酸を製造する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
PET、及び他のコポリマー、例えばポリ(エチレンイソフタレート)(「PEI」)、ポリ(エチレンナフタレート)(「PEN」)などは、フィルム、繊維、包装、及び数多くの他の用途において通常的に用いられている。かかるポリマーの幅広い用途によって、かかるポリマーから製造される生成物を再生利用することに関して関心が高まっている。多くの地域において、ポリマーを再生利用することが求められているか、或いは奨励されている。消費者及び消費者指向の事業においても、再生利用可能な製品を用いたり又は販売することに関して関心が高まっている。本明細書において用いる「ポリマー」は、コポリマーを包含する。本明細書において用いる「エステル−エチレンポリマー」は、少なくともエステルモノマー及びエチレンモノマーを有し、他のモノマー成分を含んでいてもよいポリマーを意味する。本明細書において用いる「芳香族エステル−エチレンポリマー」は、エステルモノマーが1以上の芳香環を有するエステルモノマーを包含するエステル−エチレンポリマーを指す。
【0003】
かかるポリマー生成物を再生利用する一つの方法は、廃ポリマーをバージンポリマーと配合することによるものである。残念ながら、ポリマー生成物及びその結果として廃ポリマーは、しばしば、かかる配合プロセスを行うと有用性を大きく制限する相当量の不純物を含む。廃ポリマーは、しばしば、接着剤、金属、染料、及びかかる廃棄物を多くの再生利用プロセスに不適当なものにする多くの他の汚染物質を含む。幾つかの場合においては、ポリマー生成物は複数のポリマー又はコポリマーを含んでおり、これにより再生利用に関する困難性が高まる。例えば、PETの場合においては、しばしば、PEI及び無水フタル酸誘導体が、再生利用に有害な不純物と考えられる。幾つかの異なるタイプのポリマーを含む生成物に関しては、廃ポリマー/バージンポリマーの配合が不適当である可能性がある。更に、廃製品とバージン製品とを配合すると、しばしば、廃製品による大きな劣化を引き起こし、これにより得られる配合ポリマーが多くの用途に関して不適当なものになる。
【0004】
PETを再生利用するための他の再生利用法はメタノリシスであり、これは、PETをメタノールと反応させて、ジメチルテレフタレート(「DMT」)及びエチレングリコールを生成させる。かかるメタノリシス法は僅かにより多い量の不純物を許容することができるが、かかる方法は未だ不純生成物を再生利用するその能力が大きく制限されている。更に、幾つかの異なるタイプのポリマーを含む生成物、例えばPET及びポリ塩化ビニル若しくは他のハロゲン化ポリマー又は相当量の金属を含むポリマーの混合物を含む生成物は、全く不適当であるか、或いはメタノリシスプロセスの有効性を大きく損なう可能性がある。PETのメタノリシスは、エチレングリコールからDMTを抽出する困難な分離プロセスをはじめとする他の大きな欠点を有する。更に、DMTの保管及び取り扱いは、その高い融点のために困難である可能性がある。
【0005】
エタノリシスは、PETをエタノールによってエステル交換してエチレングリコール及びジエチルテレフタレート(DET)を生成させる反応である。PETのメタノリシスの幾つかの開示においては、他のより低級なアルコールを用いる可能性が言及されているが、エタノールを用いてかかるプロセスをどのように行うことができるかの開示はない。更に、PETのメタノリシスとPETのエタノリシスとの間の大きな相違の認識はない。また、PETのエタノリシスが他のメタノリシスを超えて提供することができる大きな有利性の認識もない。例えば、パラキシレンの液相酸化によってTAを製造するための既存の運転においてDETを液相酸化によって酸化してテレフタル酸(「TA」)を製造することができる。更なる例としては、DET生成物はDMTよりも低い融点を有しており、そのためエチレングリコールからの液−液分離のような液相操作をより容易に行うことができる。また、DET生成物のより低い融点によって、DMTと比較して保管及び取り扱いがより容易になる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PETを再生利用する他の方法は、解重合である。解重合においては、エステル結合を開裂し、ポリマーをそのモノマー成分に分解する。通常、モノマーを精製することが望ましい。しかしながら、既存の解重合方法においては、かかる精製のために、再生利用ポリマーがバージンポリマーよりもより製造するのが困難で、より高価になる可能性がある。
【0007】
PETをエチレングリコールと反応させてビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を形成することは、解重合によってPETを再生利用する一つの方法である。しかしながら、得られるBHETモノマーは、低い揮発性を有し、昇温温度においてPETに重合するので、その精製方法が制限される。これらの性質のために、BHETモノマーの蒸留は現実的でなく、これは極めて清浄な再生利用PET供給流をグリコリシスによる解重合のために用いなければならないことを意味する。これによって、PET再生利用プロセスとしてのグリコリシスの有用性が著しく制限される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、廃ポリマー、特にPET及び他のエステル−エチレンポリマーを、エタノリシスしてエチルエステル及びエチレングリコールを形成し、得られたエチルエステルを酸化して、それからPET及び他のポリマーを生成させることができるカルボン酸及び酢酸を形成することによって再生利用する方法を見出した。
【0009】
安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、及びナフタレンジカルボン酸のような芳香族カルボン酸は、多くの化学製品及びポリマー製品のための重要な中間体である。テレフタル酸及びイソフタル酸は、それぞれ、PET及びPEIを製造するために用いられている。ナフタレンジカルボン酸は、PENを製造するために用いられている。フタル酸は、その無水物形態で、可塑剤、染料、香料、サッカリン、及び多くの他の化合物を製造するために幅広く用いられている。
【0010】
芳香族カルボン酸は、一般に、対応するジメチル芳香族炭化水素前駆体を酸化することによって製造することができる。例えば、テレフタル酸は、通常、パラキシレンを酸化することによって製造され、イソフタル酸は、通常、メタキシレンを酸化することによって製造されている。フタル酸は、オルトオキシレンを酸化することによって製造することができる。ナフタレンジカルボン酸は、通常、2,6−ジメチルナフタレンを酸化することによって製造されている。
【0011】
かかるプロセスの例は、参照として本明細書に包含する米国特許2,833,816において見ることができ、ここでは、臭素の存在下、コバルト及びマンガン成分を有する触媒を用いて、キシレン異性体を対応するベンゼンジカルボン酸に液相酸化することが開示されている。更なる例としては、参照として本明細書に包含する米国特許5,103,933においては、ジメチルナフタレンのナフタレンジカルボン酸への液相酸化を、臭素、並びにコバルト及びマンガン成分を有する触媒の存在下でも行うことができることが開示されている。
【0012】
通常、芳香族カルボン酸は引き続くプロセスにおいて精製する。例えば、このプロセスは、粗芳香族カルボン酸を、例えば米国特許3,584,039、米国特許4,892,972、及び米国特許5,362,908に記載されているように、還元雰囲気中で触媒及び水素と接触させることを含む。
【0013】
引き続く精製プロセスは、通常、酸化の粗芳香族カルボン酸生成物の溶液を、還元条件下で水素及び触媒と接触させることを含む。かかる精製のために用いる触媒は、通常、好適な担体、例えば炭素又はチタニア上の、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、又は白金のような1種以上の活性水素化金属を含む。
【0014】
本明細書において用いる「芳香族炭化水素」は、炭素原子及び水素原子から構成され、1以上の芳香環、例えばベンゼン環又はナフタレン環を有する分子を意味する。本発明の目的のためには、「芳香族炭化水素」は、酸素原子又は窒素原子のような1以上のヘテロ原子を有するかかる分子を包含する。「メチル芳香族炭化水素」は、1以上の芳香環に結合した1以上のメチル基を有する芳香族炭化水素分子を意味する。「芳香族エチルエステル」は、1以上のエチル基を有する芳香族酸のエチルエステルを意味する。本明細書において用いる「芳香族カルボン酸」は、1以上のカルボン酸基を有する芳香族酸を意味する。
【0015】
ジメチル芳香族炭化水素の芳香族カルボン酸への液相酸化は、一般に、メチル芳香族炭化水素及び溶媒を含む反応混合物を用いて、分子状酸素源の存在下で行う。通常、溶媒は、C〜Cモノカルボン酸、例えば酢酸又は安息香酸、或いはこれらと水との混合物を含む。若干の溶媒が、例えば燃焼、副反応、分離の非効率性、又は他のプロセス損失のために損なわれるので、かかるプロセスは、一般に、一定量の補給溶媒の添加を含む。かかる溶媒損失は、相当に望ましくない可能性があり、しばしば、損失を最小にし溶媒回収を最大にして、必要な補給溶媒の量を減少させるために大きな努力が払われる。
【0016】
また、触媒は、酸化反応混合物中にも存在させる。通常、触媒は、促進剤、例えば臭素、及び少なくとも一種の好適な重金属成分を含む。好適な重金属としては、約23〜約178の範囲の原子量を有する重金属が挙げられる。例としては、コバルト、マンガン、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、ハフニウム、又はランタノイド金属、例えばセリウムが挙げられる。これらの金属の好適な形態としては、例えば、酢酸塩、水酸化物、及び炭酸塩が挙げられる。
【0017】
また、分子状酸素源を、反応混合物中に導入する。通常、分子状酸素源として酸素ガスを用い、液相反応混合物中にバブリング又は他の方法で混合する。一般に、空気を用いて酸素を供給する。一般に、1モルのHOを共製造してメチル芳香族炭化水素を対応する芳香族カルボン酸に転化させるために、それぞれのメチル基に関して最小で1.5モルのOが必要である。例えば、1モルのジメチル芳香族炭化水素を1モルの芳香族ジカルボン酸に転化させるためには、最小で3.0モルのOが必要で、2モルのHOが生成する。
【0018】
本発明者らは、芳香族エチルエステルが、芳香族カルボン酸の製造のための好適な供給材料であることができ、メチル芳香族炭化水素から芳香族カルボン酸を製造するために用いられるものと同一又は同等のプロセスにおいても用いることができることを見出した。酸化プロセスにおいては、芳香族エチルエステルを酸化して対応する芳香族ジカルボン酸及び酢酸を形成するので、芳香族エチルエステルを用いることは、反応溶媒が酢酸を含む場合に特に有用である。溶媒が酢酸を含む場合においては、芳香族エチルエステルを用いて、補給溶媒に関する必要性を減少させるか或いは排除することもできる。
【0019】
PETのメタノリシスを用いてDMT及びエチレングリコールを製造する場合には、得られるDMTは、通常、加水分解によってTA及びメタノールに転化されるであろう。残念なことに、かかる加水分解は、プロセス及びメタノール副生成物の回収の両方のために特別な装置を必要とする。TAはパラキシレンの液相酸化によってより一般的に製造されるが、DMTは、他の理由の中でも、メチル基がCO、CO、酢酸メチル、又は他の望ましくない副生成物に転化するので、かかる液相酸化プロセスにおいて用いるのに不適当である。これに対して、DETは、液相酸化プロセスのために好適であり、また、パラキシレンをTAに転化させることもできる。
【0020】
発明の概要
本発明者らは、芳香族エチルエステルが、芳香族カルボン酸を製造するための供給材料として有用であることを見出した。好ましくは芳香族ジエチルエステルを包含する芳香族エチルエステルを液相酸化プロセスにおいて用いて、芳香族カルボン酸を製造することができる。かかるメカニズムは、DET、ジエチルイソフタレート(「DEI」)、及びジエチルナフタレート(「DEN」)の場合に特に有用であり、これを既存のキシレン酸化プロセスにおいて用いて、それぞれ、テレフタル酸及びイソフタル酸を製造することができる。また、芳香族エチルエステルを用いて、酢酸を製造するか、或いは芳香族カルボン酸及び酢酸を共製造することもできる。いずれも2005年12月29日に出願の「PETのエタノリシス及びジエチルテレフタレートの製造」及び「PETの再生利用方法」と題された本出願人の親出願(参照として本明細書に包含する)において開示されているように、芳香族エチルエステルは、芳香族カルボン酸から誘導されるポリマー生成物を再循環することによって回収することができ、カルボン酸を用いてポリマーを形成することができる。特に、エタノリシスを用いて、DET及びDEIをそれぞれPET及びPEIから回収することができる。
【0021】
幾つかの態様においては、本発明は、少なくとも一種の芳香族エチルエステル、好ましくは芳香族ジエチルエステルを含む、芳香族カルボン酸の製造のための供給材料を提供する。所望の一種又は複数の芳香族カルボン酸のための全芳香族カルボン酸前駆体を基準として測定して、供給材料は、好ましくは、少なくとも約1重量%の少なくとも一種の芳香族エチルエステル、より好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約10重量%の少なくとも一種の芳香族エチルエステルを含む。芳香族ジエチルエステルは、好ましくは、DET、DEI、DEN、又はこれらの組み合わせである。供給材料は、また、ジメチル芳香族炭化水素、例えばパラキシレンを含んでいてもよい。
【0022】
他の態様においては、本発明は、ジエチルテレフタレートを酸化してテレフタル酸を形成することを含む、テレフタル酸の製造方法を提供する。
他の態様においては、本発明は、反応領域において、少なくとも一種の芳香族エチルエステル、好ましくは芳香族ジエチルエステルと酸素とを、酢酸を含む溶媒の存在下で反応させる工程を含む、芳香族カルボン酸の製造方法を提供する。所望の一種又は複数の芳香族カルボン酸のための反応領域内に存在する全芳香族カルボン酸前駆体を基準として測定して、少なくとも一種の芳香族エチルエステルは、好ましくは、少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約10重量%で存在する。芳香族ジエチルエステルは、好ましくは、DET、DEI、DEN、又はこれらの組み合わせである。本方法は、更に、反応領域において、少なくとも一種のジメチル芳香族炭化水素と酸素とを溶媒の存在下で反応させる工程を含むことができる。少なくとも一種のジメチル芳香族炭化水素は、好ましくはパラキシレンである。好ましくは、少なくとも一種の重金属を含む触媒を反応領域内に存在させる。少なくとも一種の重金属は、好ましくは、コバルト又はマンガンの少なくとも一方を含む。触媒は、また、好ましくは、ハロゲン化合物、好ましくは臭素を含む。
【0023】
幾つかの他の態様においては、本発明は、反応領域において、少なくとも一種の芳香族エチルエステル、好ましくは芳香族ジエチルエステルを、酸素及び場合によっては水の存在下で反応させる工程を含む、酢酸の製造方法を提供する。好ましくは、反応領域内に、少なくとも一種の重金属を含む触媒を存在させる。少なくとも一種の重金属は、好ましくは、コバルト又はマンガンの少なくとも一方を含む。また、触媒は、好ましくは、ハロゲン化合物、好ましくは臭素も含む。好ましくは、少なくとも一種の芳香族ジエチルエステルは、DET、DEI、DEN、又はこれらの組み合わせを含む。
【0024】
他の態様においては、本発明は、反応領域において、芳香族エチルエステル、好ましくは芳香族ジエチルエステルを含む供給材料を酸素と反応させることを含む、芳香族カルボン酸及び酢酸の共製造方法を提供する。芳香族ジエチルエステルは、好ましくは、DET、DEI、DEN、又はこれらの組み合わせである。場合によっては、少なくとも一種のジメチル芳香族炭化水素、好ましくはパラキシレンを反応領域内に存在させることができる。好ましくは、少なくとも一種の重金属を含む触媒を反応領域内に存在させる。少なくとも一種の重金属は、好ましくは、コバルト又はマンガンの少なくとも一方を含む。また、触媒は、好ましくは、ハロゲン化合物、好ましくは臭素も含む。
【0025】
本発明者らは、エタノリシスによってPETを再生利用することによって、他の再生利用方法をしのぐ大きな有利性を与えることができることを見出した。注目すべきは、PETのエタノリシスの生成物はDET及びエチレングリコールであることである。反応生成物から及び互いからのDET及びエチレングリコールの分離は、DMT及びエチレングリコールの分離とは大きく異なり、これよりもより望ましい。更に、DETは、パラキシレンの液相酸化によってTAを製造する多くの既存のプラントにおいて用いることができる。更に、DETはDMTよりも非常に低い融点を有しているので、DETは、固体としてよりも溶融体としてより容易に取り扱い、輸送し、及び/又は保管することができる。一般に、与えられた温度に関して液相で操作する場合には、メタノールとは対照的にエタノールを用いることにより、より低圧で操作して液相中のアルコールの所望の濃度を達成することができる。より低圧で操作することによって、大きなエネルギー節約を得ることができる。
【0026】
本発明者らは、あるタイプのPETが、PETのエタノリシスを触媒する不純物を含むことを見出した。更に、好ましくは有機チタネートの形態のチタンが有効な触媒である。本発明者らは、また、若干の水の存在を許容して、それにより燃料グレードのエタノールを用いることを可能にするように、PETのエタノリシスを行うことができることも見出した。
【0027】
また、本発明者らは、反応後に、DMTとエチレングリコールの反応などの望ましくない逆反応を回避するために触媒をクエンチすることが必要な可能性がある幾つかのメタノリシス再生利用プロセスとは異なり、エタノリシス触媒は、生成物回収に対する有害な影響なしに活性状態に維持することができることを見出した。これにより、再活性化工程なしに触媒を再利用するオプションが可能になる。
【0028】
一態様においては、本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)を再生利用する方法を提供する。本方法は、反応領域において、ポリ(エチレンテレフタレート)をエタノールと化合して反応混合物を形成し;反応混合物を約180℃〜約300℃の範囲の温度で反応させて反応生成物混合物を形成し;反応生成物混合物から、回収エタノールを含む第1のフラクションを回収し;反応生成物混合物から、エチレングリコールを含む第2のフラクションを回収し;反応生成物混合物から、ジエチルテレフタレートを含む第3のフラクションを回収する;工程を含む。
【0029】
好ましくは、反応生成物混合物から回収エタノールを含む第1のフラクションを回収する工程は第1の分離領域において行い、反応生成物混合物からエチレングリコールを含む第2のフラクションを回収する工程及び反応生成物混合物からジエチルテレフタレートを含む第3のフラクションを回収する工程は第2の分離領域において行う。
【0030】
幾つかの態様は、また、第2のフラクションを、大部分のジエチルテレフタレートを含む第1の流れ、及びエチレングリコールを含む第2の流れに分離し;第1の流れの少なくとも一部を第2の分離領域に戻し;第3の分離領域において第2の流れからエチレングリコールを回収する;工程を更に含む。好ましくは、第2のフラクションを分離する工程は、液−液分離を用いて行う。場合によっては、第2のフラクションを分離する工程は、第2のフラクションの少なくとも一部に水を加える工程を含むことができる。幾つかの態様においては、第1の分離領域は第1の蒸留カラムを含み、第2の分離領域は第2の蒸留カラムを含む。好ましくは、第1の蒸留カラムはほぼ大気圧で操作し、第2の蒸留カラムは大気圧よりも低い圧力で操作する。場合によっては、第1のフラクション中の回収エタノールの少なくとも一部を反応領域に送ることができる。
【0031】
幾つかの態様においては、触媒を反応領域に供給し、好ましくは、触媒は、PET中に存在する触媒作用不純物、銅フタロシアニン、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、チタン(IV)イソプロポキシド若しくは他の有機チタネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。場合によっては、例えば燃料グレードのエタノールを用いることによって反応領域に水を供給することができる。好ましくは、かかる態様においては、触媒は、好ましくは有機チタネートの形態のチタンを含む。
【0032】
幾つかの態様は、反応生成物混合物から、触媒及びPETオリゴマーを含む第4のフラクションを回収する工程を含む。好ましくは、第4のフラクションの少なくとも一部を反応領域に送る。
【0033】
本発明の他の態様は、ポリ(エチレンテレフタレート)を再生利用するための装置を提供する。この装置は、ポリ(エチレンテレフタレート)とエタノールとを反応させて反応生成物混合物を形成することのできる反応器;反応生成物混合物からエタノールを回収するように構成されているフラッシュドラム又は大気圧蒸留カラム;及び、反応生成物混合物からジエチルテレフタレートを回収するように構成されている真空蒸留カラム;を含む。場合によっては、装置は、反応生成物混合物の一部を受容するように構成されているデカンテーション容器を含むことができる。
【0034】
幾つかの態様は、ジエチルテレフタレートの製造方法を提供する。かかる方法は、反応領域において、ポリ(エチレンテレフタレート)とエタノールとを反応させて、エタノール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ジエチルテレフタレート、及びエチレングリコールを含む反応生成物混合物を形成し;反応生成物混合物から、エタノールを含む第1のフラクション、ジエチルテレフタレート−エチレングリコール共沸混合物を含む第2のフラクション、及びジエチルテレフタレートを含む第3のフラクションを分離し;共沸混合物から、大部分のジエチルテレフタレートを含む流れを回収し;この流れの少なくとも一部を分離工程に送る;工程を含む。好ましくは、反応領域内に触媒を存在させる。触媒は、より好ましくは、PET中に存在する触媒作用不純物、銅フタロシアニン、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、チタン(IV)イソプロポキシド又は他の有機チタネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの態様においては、本発明は、ジエチルテレフタレート及びジエチルイソフタレートの製造方法を提供する。かかる方法は、反応領域において、エタノールを、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(エチレンイソフタレート)を含む供給材料と反応させて反応生成物混合物を形成し;反応生成物混合物から、エタノールを含む第1のフラクションを回収し;反応生成物混合物から、エチレングリコールを含む第2のフラクションを回収し;反応生成物混合物から、ジエチルテレフタレート及びジエチルイソフタレートを含む第3のフラクションを回収する;工程を含む。好ましくは、反応領域内に触媒を存在させる。触媒は、より好ましくは、PET中に存在する触媒作用不純物、銅フタロシアニン、酢酸亜鉛、チタン(IV)イソプロポキシド又は他の有機チタネート、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。場合によっては、反応領域内に水を存在させることができる。好ましくは、有機チタネートを反応領域内に存在させる。好ましくは、反応領域内のエタノールは燃料グレードのエタノールを含む。
【0035】
本発明者らは、PETを含む供給材料をエタノールと反応させてジエチルエステルを形成することができ、これを酸化させて芳香族カルボン酸を形成することができ、次にこれを用いてポリマーを形成することができることを見出した。特に、PETをエタノールと反応させてエチレングリコール及びジエチルテレフタレートを形成することができ、これを、PETを形成するのに用いることができるテレフタル酸の製造のための既存の液相酸化プロセスに供給することができることができる。再生利用プロセスは多くの汚染物質を許容し、これにより広範囲の廃PETを用いることが可能になる。本再生利用方法によって、最終的な再生利用ポリマー生成物を品質劣化させることなく、PET及び他のポリマーを再生利用することが可能になる。
【0036】
幾つかの態様においては、本発明は、PETを再生利用する方法を提供する。この方法は、第1の反応領域において、PETを含む第1の供給材料をエタノールと反応させて第1の反応生成物混合物を形成し;第1の反応生成物混合物から芳香族エチルエステルを回収し;第2の反応領域において、芳香族エチルエステルの少なくとも一部を含む第2の供給材料を酸化させて芳香族カルボン酸を形成し;そして、第3の反応領域において、芳香族カルボン酸の少なくとも一部とエチレングリコールとを反応させて、PETを含むポリマーを形成する;工程を含む。第1の供給材料は、少なくとも1000ppmw(PET基準)のポリ塩化ビニルを含むことができる。第2の供給材料は、好ましくは、所望の芳香族カルボン酸のジメチル芳香族炭化水素前駆体を含む。第1の反応生成物混合物の少なくとも一部をイオン交換樹脂と接触させて、第1の反応生成物混合物中に存在している可溶の汚染物質の少なくとも一部を除去することができる。第1の反応生成物混合物を、約50℃〜約120℃の温度にして、取り扱い及び処理を簡単にすることができる。
【0037】
芳香族カルボン酸は、これを用いてポリマーを形成する前に精製することができる。用いるエタノールは燃料グレードのエタノールであってよい。
他の態様においては、本発明は、廃PETからPETを製造する方法を提供する。この方法は、第1の反応領域において、PETを含む第1の供給材料をエタノールと反応させて第1の生成物混合物を形成し;第1の反応生成物混合物からDETを回収し;第2の反応領域において、DETの少なくとも一部を、低分子量モノカルボン酸を含む溶媒の存在下で酸素と反応させてテレフタル酸を形成し;水素化反応領域において、テレフタル酸の少なくとも一部を精製して精製テレフタル酸を形成し;精製テレフタル酸の少なくとも一部を用いてPETを製造する;工程を含む。
【0038】
好ましい態様の説明
本発明は、エタノリシスによってPETを再生利用し、DETを製造するための方法及び装置を提供する。エタノリシスは、エタノールを用いてPETをエステル交換してエチレングリコール及びDETを製造する方法である。褐色フレーク、緑色フレーク、青色フレーク、透明フレーク、琥珀色フレーク、又はこれらの混合物などの(但しこれらに限定されない)種々のタイプ及びグレードのPETを、エタノリシスによって再生利用することができる。混合PETフレークは純粋な透明フレークのような純粋なフレークよりもより容易に入手できる供給材料であるので、混合PETフレークを用いることができることは有利である。幾つかの態様においては、再生利用するPETは、場合によっては粉砕及び/又は好適な溶媒中に溶解していてもよいPETベールの形態である。
【0039】
本発明は、また、芳香族カルボン酸を製造するのに有用な供給材料を提供する。かかる供給材料は、1種以上の芳香族エチルエステルを含む。かかる供給材料として芳香族エチルエステルを単独で用いることができる。好ましい態様においては、芳香族カルボン酸を製造するための供給材料の一成分として、1種以上の芳香族エチルエステルを用いる。芳香族エチルエステルは、芳香族カルボン酸を製造するための液相酸化プロセス用の供給材料として特に有用である。
【0040】
本発明は、また、廃ポリマーをエタノールと反応させて、エチレングリコール及び対応するカルボン酸に酸化することができるエチルエステルを形成することによってPET及び他のポリエステルを再生利用する方法を提供する。エタノリシスから回収されるカルボン酸及び場合によってはエチレングリコールを用いてポリエステルを形成することができる。
【0041】
幾つかの態様においては、エチルエステルを、対応するカルボン酸を製造するための既存の酸化プロセスにおいて、供給材料として用いることができる。例えば、芳香族ジエチルエステルを、芳香族ジメチル炭化水素から芳香族ジカルボン酸を製造するための既存の液相酸化プロセスにおいて用いることができる。芳香族ジカルボン酸に転化させたら、これを、再生利用ポリエステルを起源としない芳香族ジカルボン酸に代えてか又はこれと一緒に用いることができる。これにより、最終的なポリエステル生成物の品質劣化を起こすことなく、且つ、芳香族カルボン酸を用いてポリエステルを生成させる既存の重合プロセスを変更することなく、再生利用材料を用いることが可能になる。
【0042】
エタノリシスは、エタノールを用いてポリエステルをエステル交換してエチルエステル及びエチレングリコールを製造する方法である。エチルエステルを対応するカルボン酸に転化させることができ、これを用い、重縮合反応プロセスを用いてポリマーを形成することができる。
【0043】
特定の態様においては、再生利用プロセスは、多くの不純廃ポリエステルを包含する広範囲のポリエステル供給材料を用いることができる。再生利用方法を用いて廃PETを再生利用する態様においては、他のポリエステルを有し、ターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、接着剤、重金属、及び他の再生利用プロセスには不適当である可能性がある多くの他の不純物を有する廃PETなどの(但しこれに限定されない)広範囲の不純廃PET供給材料を用いることができる。
【0044】
エタノリシスによるPETの再生利用によって、DET及びエチレングリコールが製造される。エタノリシスは、エタノールを用いてPETをエステル交換して、エチレングリコール及びDETを製造する方法である。褐色フレーク、緑色フレーク、青色フレーク、透明フレーク、琥珀色フレーク、又はこれらの混合物などの(但しこれらに限定されない)種々のタイプ及びグレードのPETを、エタノリシスによって再生利用することができる。混合フレークは、純粋な透明フレークのような純粋なフレークよりもより容易に入手可能な供給材料であるので、混合PETフレークを用いることができることは、有利である。幾つかの態様においては、再生利用するPETは、場合によっては粉砕及び/又は好適な溶媒中に溶解することができるPETベールの形態である。
【0045】
エタノールを用いたPETの再生利用は、DET及びエチレングリコールを得る連続法又はバッチ法としてか、或いは半バッチ法として行うことができる。半バッチ法の例は、PETのバッチエタノリシス、及び、バッチ反応混合物からDET及びエチレングリコール生成物を回収するための連続回収プロセスである。PET及びエタノールを、エタノリシス反応領域において、好適な触媒の存在下で反応させる。得られた反応生成物混合物を、生成物回収のための分離にかける。かかる分離は、当該技術において公知の数多くの分離方法を用いて行うことができる。しかしながら、分離方法としては、好ましくは、蒸留を行ってエタノール、DET、及びエチレングリコールを回収することが挙げられる。
【0046】
通常は消費者製品廃棄物の形態又は廃フレークとしてのPETは、好ましくは、溶媒中に溶解させる。エタノリシス反応に有害でない任意の溶媒を用いることができる。しかしながら、溶媒は、エタノール、及び/又は第2の分離領域からの蒸留塔底物を含むことが好ましい。一態様においては、溶媒は、反応領域から得られる反応生成物混合物の一部を含む。場合によっては、必要に応じて溶解したPET供給材料を濾過して、幾つかの供給材料中に存在する可能性のある不純物、例えば接着剤を除去することができる。PET供給材料を、反応領域において、好適な触媒の存在下でエタノールと反応させる。エタノールは、反応領域内において、反応領域の上流において、或いはこれらの組み合わせを用いて、PET供給材料と化合させることができる。触媒は、PET供給材料と一緒に、エタノールと一緒に、溶媒と一緒に、反応領域中に加えることができ、或いは、再生利用塔底流中に存在する可能性があり、或いはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0047】
PET供給材料は、他のポリマー及び不純物、例えば、PEI、PEN、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、重金属、染料、可塑剤、及び、しばしばPET生成物を形成するために用いられるか又はPETと共に用いられる多くの他の化合物を含む可能性がある。一般に、本明細書において記載するように、PETのエタノリシスは、多くの他のPET再生利用方法よりも、かかる他のポリマー及び不純物の存在をより許容する。有利なことに、幾つかの他のポリマーは、エタノリシスによって対応するエチルエステルに転化し、これを対応するカルボン酸に転化させることができ、これをエステル化及び重合してポリマーを形成することができる。幾つかの態様においては、PETと共に存在する他のポリマーの少なくとも一部をエタノールと反応させて芳香族エチルエステルを形成する。かかる芳香族エチルエステルを酸化して芳香族カルボン酸を形成することができ、これをエステル化及び重合してポリマーを再形成することができる。
【0048】
エタノリシスのために用いるエタノールは工業グレードのエタノールであってよいが、本発明者らは、燃料グレードのエタノールを有効に用いることができることを見出した。燃料グレードのエタノールは、通常、工業グレードのエタノールよりも多くの水を含み、通常、変性剤(通常は炭化水素又は炭化水素質化合物)を含む。本発明の幾つかの態様においては、変性剤としてパラキシレンを用いることができる。かかる態様においては、パラキシレンを反応生成物から回収し、DETと配合することができる。かかる態様は、パラキシレンをTAに転化させるための液相酸化プロセスにおいて用いるのに特に有利である。燃料グレードのエタノールの実際の配合は変化するが、燃料グレードのエタノールは、約0.25〜約2.0容量%の水を含む可能性があり、通常は約1容量%の水及び約1〜5容量%の変性剤を含む。燃料グレードのエタノールは、また、他の化合物、例えば痕跡量の金属化合物、ゴム、及びメタノールを含む可能性がある。燃料グレードのエタノールに関して異なる地域は異なる規格を有する可能性があるが、かかる変動は、本明細書において記載するように、PETのエタノリシスに大きな影響を与えないと考えられる。ASTM D4806(自動車用火花点火エンジン燃料として用いるための、ガソリンと配合するための変性燃料エタノールに関する標準規格)は、米国において通常用いられている燃料グレードのエタノールに関する規格の例である。
【0049】
本発明者らは、燃料グレードのエタノール中の水、変性剤、及び他の化合物の存在にもかかわらず、エタノリシスを効率的に実施することができることを見出した。本発明者らは、本明細書において教示するようなエタノリシスは、約5重量%以下の水を有するエタノールを用いて効率的に実施することができることを見出した。燃料グレードのアルコールは容易に入手可能な商品であるので、燃料グレードのアルコールを用いることができることは有意義である。更に、エタノールは、一般に、環境的に望ましく、再生可能な資源であると考えられている。多くの地域においては、エタノールのような製品を用いることが奨励されている。
【0050】
反応領域は、PET供給材料、エタノール、及び触媒を十分に混合することができる、連続攪拌タンク反応器、栓流反応器、バッチ反応器、又はこれらの組み合わせのような1以上の反応器を含むことができる。
【0051】
エタノリシス反応は、好ましくは、少なくとも約180℃、より好ましくは少なくとも約195℃の温度で行う。より低い温度を用いることができるが、転化が望ましくないことに劣ってしまう可能性がある。好ましくは、反応は、約300℃以下、より好ましくは約250℃以下の温度で行う。より高い温度を用いることができるが、かかるより高い温度では、望ましくない量の副生成物、例えばジエチルエーテルが生成する可能性がある。
【0052】
エタノリシス反応は、大気圧よりも低い圧力、例えば80kPa、或いは大気圧で行うことができる。好ましくは、エタノリシス反応は、大気圧よりも高い圧力、より好ましくは少なくとも約200kPa、より好ましくは少なくとも約1,000kPa、より好ましくは少なくとも約2,000kPaの圧力で行う。好ましくは、エタノリシス反応は、約6,000kPa以下、より好ましくは約5,000kPa以下の圧力で行う。上記は例示であり、特にクローズドバッチエタノリシスを行う場合には、反応が進行する間に圧力が大きく変動する可能性がある。例えば、クローズドバッチシステムにおいては、一般に、反応が進行するにつれて圧力は減少する。圧力は、多少は用いる温度に依存するが、エタノール及び廃PETを液相中に保持するために広範囲の条件によって、温度及び圧力を他から独立して制御することが可能になる。
【0053】
次に、反応生成物混合物を分離にかけて、エタノール、DET、及びエチレングリコール、並びに場合によってはDEI、DEN、及び他の所望の成分を含む反応生成物を回収する。分離中において、所望の場合には更なる成分を回収することができる。かかる更なる成分の例としては、存在する場合にはパラキシレン、他の反応及び未反応ポリマー、或いはPET中に存在する可能性がある所望の化合物が挙げられる。上述したように、反応生成物混合物の一部をPET供給材料のための溶媒として用いることができる。幾つかの連続プロセスの態様においては、更なる反応成分を導入しながら反応生成物混合物の一部を取り出す。また、反応混合物のいくらかをパージして、有効な連続運転を維持することもできる。
【0054】
分離は、結晶化、蒸留、濾過、液−液相分離、溶媒抽出、又は他の公知の分離法、或いは複数の分離法の組み合わせによって行うことができる。好ましくは、分離は、エタノールを回収するための第1の分離領域、DET及びエチレングリコールを回収するための第2の分離領域、及び精製エチレングリコールを回収するための第3の分離領域を含む。分離は、場合によっては、反応生成物と共に存在する1以上の成分を除去するための1以上の精製工程を含むことができる。一態様においては、第1及び第2の分離領域は、蒸留及び液−液相分離を含む。DMTは、通常、約140〜142℃で溶融し、これよりも高い温度でエチレングリコールと混和するので、液−液相分離はメタノリシスプロセスからDMTを回収するための有効な分離手段ではない。
【0055】
分離は、好ましくは、少なくとも、主としてエタノール及び軽質反応副生成物を含む第1のフラクション、大部分のエチレングリコールを含む第2のフラクション、主としてDETを含む第3のフラクション、及び高沸点非揮発性化合物を含む第4のフラクションを回収するように行う。好ましい態様においては、第1のフラクションを第1の反応領域において回収し、第2のフラクション、第3のフラクション、及び第4のフラクションを第2の分離領域において回収する。しかしながら、フラクションは別々に回収することができ、或いはフラクションの組み合わせを一緒に回収することができる。更に、フラクションの一部を分離の異なる段階において回収することができる。例えば、主としてエタノール及び軽質副生成物を含む第1のフラクションの一部を分離中のある時点で回収することができ、第1のフラクションの他の部分を蒸留を用いて回収することができる。分離装置は、1を超える分離領域の一部であることができる。一態様においては、主としてエタノール及び軽質副生成物を含む第1のフラクションの一部を、第1の分離領域においてフラッシュドラムを用いて回収し、第1のフラクションの他の部分を、第1の分離領域の一部であり、第2の分離領域の一部である蒸留カラムにおいて回収する。
【0056】
好ましくは、分離は蒸留を含む。第1の分離領域の一部として1以上の蒸留カラムを用いて蒸留を行って、主としてエタノール及び軽質反応副生成物を含む第1のフラクションを形成することができる。好ましくは、第2の分離領域の一部として1以上の蒸留カラムを用いて、大部分のエチレングリコールを含む第2のフラクション、主としてDETを含む第3のフラクション、及び高沸点化合物を含む第4のフラクションを回収するようにすることができる。一態様においては、第1の分離領域は大気圧又は大気圧付近で運転する蒸留カラムを含み、第2の分離領域は大気圧より低い圧力で運転する蒸留カラムを含む。他の態様においては、分離は、少なくとも第1の分離領域の一部及び少なくとも第2の分離領域の一部を形成する蒸留カラムを含む。好ましくは、かかる態様においては、主としてエタノール及び軽質反応副生成物を含む第1のフラクションの少なくとも一部、大部分のエチレングリコールを含む第2のフラクション、主としてDETを含む第3のフラクション、及び高沸点非揮発性化合物を含む第4のフラクションを、蒸留カラムから回収する。
【0057】
分離から回収されたエタノールの全部又は一部を、エタノリシス反応において用いるために再循環することができる。かかる再循環は、PET供給材料のための溶媒として分離から回収されたエタノールを用いることによって行うことができる。かかる再循環は、また、分離から回収されたエタノールを、エタノリシス反応領域の上流か又はエタノリシス反応領域に導入することによっても行うことができる。一態様においては、主としてエタノール及び軽質反応副生成物を含む第1のフラクションを第1の分離領域において回収し、第1のフラクションの全部又は一部を、好ましくは濃縮又は他の公知の分離法によって処理して、第1のフラクションから軽質副生成物の少なくとも一部を除去し、第1のフラクションのエタノールの少なくとも一部を、エタノリシス反応において用いるためか又はPETのための溶媒として用いるために再循環する。場合によっては、第1のフラクションの全部又は一部を、エタノリシス反応において用いるか又はPETのための溶媒として用いる前に、他の処理にかけるか、及び/又は保管するか、及び/又は他のエタノール供給流と混合することができる。一態様においては、第1のフラクションからのエタノールの全部又は一部を反応領域中に導入して、第1のフラクションからのかかるエタノールの熱含量を利用してPETを反応温度に加熱することを補助することができる。
【0058】
分離領域から回収されたエチレングリコール、好ましくは第2の分離領域から回収された第2のフラクション中のエチレングリコールは、主としてエチレングリコール−DET共沸混合物(「EG−DET共沸混合物」)の形態である。EG−DET共沸混合物中のDETの濃度は、用いる分離方法及びその運転によって変動するが、EG−DET共沸混合物は、通常、10重量%未満のDETを含む。DETの融点(44℃、1気圧)より高く、エチレングリコールの沸点(196〜198℃)より低い温度において、共沸混合物は、DETに富む第1の層及びエチレングリコールに富む第2の層に分離する。
【0059】
DETに富む第1の層は、デカンテーションのような公知の液−液分離法によって回収することができ、好ましくは分離領域、より好ましくは第2の分離領域に戻される。場合によっては、第1の層は、DET生成物保管に直接送ることができる。エチレングリコールに富む第2の層は、次に、第3の分離領域において蒸留又は他の手段による精製にかけてエチレングリコールを回収することができ、第2の層の残りは分離プロセスに戻すことができる。第2の層の残りをプロセスに戻す場合には、それを戻す個所は、第3の分離領域において用いる一つ又は複数の分離法に依存する。例えば、第3の分離領域において蒸留を用いる場合には、エチレングリコール流及びエチレングリコール/DET共沸混合物流の両方が形成され、共沸混合物流は、最良には、第2の分離領域の第2のフラクションと混合する。濾過、結晶化、又は蒸留のような分離法を用いて第2の層からエチレングリコールを回収する場合には、好ましくは第2の層の残りを第2の分離領域に戻す。他の分離法、例えば溶媒抽出又は共沸蒸留では、第2の層の残り及び/又は回収されたエチレングリコールの更なる処理が必要な可能性がある。EG−DET共沸混合物は、また、主としてエチレングリコールに富む層中に含まれるジエチレングリコールを含む可能性があり、これは好ましくは第3の分離領域において精製にかけられる。少量のジエチレングリコールがDETに富む層中に残留し、これは好ましくはDETと共に分離に戻される。
【0060】
メタノリシス法においては、通常、エチレングリコール−DET共沸混合物が形成され、これは約15重量%のDMTを含んでいてよい。上述したように、液−液分離法はDMTを回収しエチレングリコールを回収するのには有効でなく、通常はより困難でしばしばエネルギーをより大量に消費する異なる方法が用いられる。
【0061】
一態様においては、水を用いてエチレングリコール−DET混合物の分離を促進させる。DETは、水を加えた後に液−液分離を行うことによって、エチレングリコール及びDETの混合物から回収することができる。水を加えることによって、第1の層中のDETの濃度が増加し、第2の層中のDETの濃度が減少する。液−液分離法、例えばデカンテーションを用いて第1の層を回収することができ、これは、好ましくは第2の分離領域に戻し、或いは場合によってはDET生成物保管に送る。分離を促進させるために用いた水の大部分は第2の層中においてみられ、これは更なる精製にかけることができる。
【0062】
他の態様においては、炭化水素、好ましくはパラキシレンを用いて分離を促進させる。かかる炭化水素を加えることによって、第1の層中のDETの濃度が増加し、第2の層中のDETの濃度が減少する。炭化水素を用いて分離を促進させる場合には、炭化水素は、主として第1の層中に存在し、第1の層と一緒に処理される。かかる場合においては、更なる分離を行うことができる。パラキシレンは、所望の場合にはDET生成物と共に残留させて、本明細書において記載するようなTAを製造するための液相酸化反応において用いることができるので、特に有利である。また、若干量のパラキシレンを用いて、DETの融点を低下させることによってDET生成物の取り扱い性を改良することができる。幾つかの態様においては、水及びパラキシレンを両方とも存在させて分離を促進させる。
【0063】
第1の層は必ずしもより軽質の層ではない。例えば、水を用いて分離を促進させる場合には、第1の層はより重質の層である。これに対して、パラキシレンを用いて分離を促進させる場合には、第1の層はより軽質の層である。
【0064】
DETは、分離領域から、好ましくは第2の分離領域からの第3のフラクションの主要部として回収される。分離は、通常、第2の分離領域からの第3のフラクションが少なくとも95重量%のDET、好ましくは少なくとも97重量%のDETを含むように行うが、第3のフラクションを更なる分離方法、例えば濾過、蒸留、又は結晶化にかけてDETを精製することが望ましい場合がある。例えば、回収されたDETは、少量のジエチレングリコール(DEG)、エチレングリコール、又はこれらの両方を含む可能性があり、また水を含む可能性もある。液−液分離法を用いてDETを精製することができる。場合によっては、回収されたDET中に水が存在する場合には、これが液−液分離を促進させるために用いられたかそうでないかにかかわらず、回収されたDETを脱水して水を除去することができる。更なる例としては、PETは、PET供給材料中に存在している可能性があるイソフタレートを含む可能性があり、これはエタノリシスによってDEIを形成する可能性がある。DEIは、反応生成物混合物中に存在している場合には、通常、DETと共に少量成分として分離によって好ましくは第3のフラクション中に回収される。DEIは、場合によっては、結晶化又は蒸留のような公知の分離法を用いてDETから分離することができる。しかしながら、DEIは、DET生成物の一部として保持することができる。
【0065】
好ましくは第2の分離領域から第4のフラクションとして回収される反応生成物混合物の残りは、活性触媒、反応副生成物、及び他の高沸点化合物を含む。通常、メタノリシス法においては、DMT及びエチレングリコール生成物の一方又は両方をメタノリシス反応と同時にストリッピングするか、或いは触媒を失活させて、反応を停止して分離中の望ましくない反応を回避する。有利には、反応生成物混合物の残りの中に存在する触媒は、エタノリシス反応を触媒するのに好適な活性触媒を含む。好ましくは、反応生成物混合物の残りの少なくとも一部を、反応領域において用いるために再循環する。かかる再循環は、残りの部分の少なくとも一部を、反応領域か又は反応領域の上流に加えて、例えばPETの溶解を補助することによって実施することができる。場合によっては、残りの部分の少なくとも一部を処理して、より高い触媒濃度を有する触媒再循環流を生成させ、反応領域において用いるために再循環することができる。
【0066】
任意の段階において、供給材料又は反応生成物混合物を精製にかけて不要の汚染物質を減少させることができる。精製は、1以上の段階で行うことができ、多段階で異なる流れに対して行うことができる。好ましくは、精製は、反応生成物混合物に対して行い、任意の分離領域の前又は後に行うことができる。一態様においては、精製は、第1の分離領域において第1のフラクションを回収した後の反応生成物混合物に対して行う。他の態様においては、精製は、第2の分離領域において回収された第4のフラクションの少なくとも一部に対して行う。他の態様においては、精製は、第1の分離領域において第1のフラクションを回収した後の反応生成物混合物に対して行い、また、第2の分離領域において回収された第4のフラクションの少なくとも一部に対しても行う。精製工程にバイパスラインを含ませて、精製供給流の全部又は一部が精製工程の全部分又は任意の部分をバイパスすることができるようにすることができる。かかるバイパスラインは、異なる汚染物質を有する種々の廃PETを用いる場合に特に有利であり、精製の望ましくない部分をバイパスすることができる。
【0067】
DETは1気圧において約44℃の融点を有しているので、反応生成物は溶融体として維持させることができ、数多くの精製法を有効に利用することができる。用いる精製法は、精製によって除去することを意図する汚染物質の性質に依存し、例として、遠心分離、蒸留、溶媒抽出、濾過、イオン交換、吸着、又は他の方法を用いることができる。例えば、廃PETが、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、アルミニウム、紙、ガラス、土、又は他の不溶物質のような不溶の汚染物質を含む場合には、濾過又は遠心分離が適当である。重合触媒として廃PET中に存在するアンチモンのような可溶金属を除去することが望ましい場合には、イオン交換又は活性炭による処理のような方法が適当である。精製のために複数の方法の組み合わせを用いることができる。好ましくは、精製は、分離プロセス中の時点における反応生成物に対して行う。
【0068】
特に、イオン交換樹脂を用いた精製を反応生成物混合物に対して行って、可溶金属を除去することができる。イオン交換は、固体(イオン交換材料はイオン交換樹脂とも呼ばれる)と液体又は溶融体との間のイオンの可逆的な交換であり、固体の構造における永久的な変化はない。従来のイオン交換樹脂は、通常、構造体全体にわたって比較的均一なイオン活性サイトの分布を有する架橋ポリマーマトリクスから構成される。一般に、イオン交換材料は、特定の用途の必要性を満足する特定の寸法及び均一性を有する球状体又は時々は粒状体として入手することができる。イオン交換材料は、限定された熱安定性を有する。一般に、イオン交換材料は、150℃以下の温度に制限され、しばしば、これより遙かに低い温度制限を有する。精製において用いるのに好適なイオン交換樹脂は、市販されており、例としては、アンチモンなどの重金属の除去に好適なDOWEX樹脂が挙げられる。用いる特定のイオン交換樹脂は、イオン交換樹脂によって除去することが意図される望ましくない汚染物質の性質などの数多くのファクターに依存する。
【0069】
可溶金属は、重合プロセスにおける触媒としてのかかる金属の使用のために、ポリマー生成物の一部である可能性がある。通常、イオン交換樹脂は、メタノリシスプロセスにおけるような高温環境において用いるのには不適当である。しかしながら、エタノリシス反応及び反応生成物は、イオン交換樹脂に好適な温度に保持することができる。例えば、反応生成物は、44℃〜100℃の温度に保持することができる。イオン交換樹脂を用いる精製は、PET供給材料中に存在する可能性のあるアンチモンのような可溶の重金属を除去するのに特に有利である。更に、遠心分離を用いる精製は、ポリ塩化ビニルのような不溶のハロゲン化化合物を除去するのに特に有利である。可溶の重金属及び/又は不溶のハロゲン化ポリマーを含むPET供給材料を処理することができることによって、利用できるPET供給材料の範囲が大きく増大し、これによってメタノリシス又は他の既存の再生利用方法を用いて再生利用可能なものよりも、非常に広範囲のPET生成物を再生利用することが可能になる。
【0070】
また、廃PET供給材料中にポリ塩化ビニルが存在する場合には、イオン交換樹脂を用いて反応生成物混合物中に存在する可能性のあるHClを除去することができる。HClを除去するためにイオン交換樹脂を用いることができることによって、他の再生利用方法に通常好適であるものよりも、非常に高い濃度のポリ塩化ビニルを有する廃PET供給材料を用いることが可能になる。幾つかの態様においては、本発明は、1000ppmw(PET基準)より多いポリ塩化ビニルを有するPET供給材料を有する廃PETの再生利用方法を提供する。他の態様においては、本発明は、1250ppmw、或いは更に1500ppmw(PET基準)より多いポリ塩化ビニルを有するPET供給材料を有する廃PETの再生利用方法を提供する。
【0071】
エタノリシス反応に好適な触媒としては、公知のエステル交換触媒が挙げられる。好適な触媒としては、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。触媒金属は、好ましくは、酢酸塩の形態か、或いはチタンの場合にはチタン(IV)イソプロポキシド又は他の有機チタネート並びにこれらの組み合わせの形態である。しかしながら、予期しなかったことに、混合PETフレーク中に存在する不純物、例えば染料及び金属化合物が、PETのエタノリシスのための有効な触媒になることができることが見出された。エタノリシスを触媒するのに有用なPETフレーク中に存在するかかる不純物は、本明細書において「触媒作用不純物」と称する。褐色フレークは、触媒作用不純物の特に望ましい量及びタイプを有することが見出された。一態様においては、エタノリシス反応のための触媒は触媒作用不純物を含む。他の態様においては、反応生成物混合物の残りの少なくとも一部は、触媒作用不純物を含み、有利には、エタノリシス反応のための触媒として用いられる。
【0072】
驚くべきことに、エタノリシス反応のための好適な触媒として銅フタロシアニンを用いることができる。銅フタロシアニンを触媒として用いる場合には、好ましくは、少なくとも約3ppmw(PETフレークに対して)の濃度でエタノリシス反応中に存在させる。他の態様においては、褐色、青色、又は緑色PET、或いはこれらの組み合わせを有する廃PETフレークを、PET供給材料及び反応触媒の少なくとも一部として有利に用いる。しかしながら、エタノリシス反応中に、例えば燃料グレードのエタノールを用いることからの水が存在すると、銅フタロシアニンなどの触媒作用不純物の有効性が低下する可能性がある。また、チタンも、好ましくはチタン(IV)イソプロポキシドのような有機チタネートの形態で、燃料グレードのエタノールに関しても望ましい触媒であることが見出された。燃料グレードのエタノールを用いるか、或いは他の水成分が反応領域中に存在する場合には、好ましくは、触媒の少なくとも一部は、好ましくは有機チタネートの形態のチタンである。チタンを触媒として通常は有機チタネートとして用いる場合には、チタンは、通常、反応領域におけるPETの重量を基準として約5ppmのチタン〜約5,000ppmのチタンを与えるように反応領域中に存在させる。
【0073】
図1は、エタノリシス反応をバッチ法として行い、分離プロセスを連続法として行う本発明の一態様を示す。
図1において、並行して運転している二つのバッチ反応器を有する反応領域内のバッチ反応器R1に廃PETを供給する。図1においては、バッチ反応器R1は供給材料充填モードで示されており、一方、バッチ反応器R2は生成物排出モードで示されている。PET供給材料を、エタノール収容容器からのエタノール、及び第1の分離領域からの第1のフラクションF1からのエタノールと混合する。反応生成物混合物V1から第1のフラクションの一部をフラッシングによって取り出し、第1の蒸留カラムV4から第1のフラクションの第2の部分を回収し、第2の蒸留カラムV5から第1のフラクションの残りの部分を回収する。触媒収容容器から好適な触媒をバッチ反応器R1に供給する。反応は、他方の容器を空にして供給材料を充填しながら、一方の反応容器内で進行させることができる。エタノリシス反応は、好ましくは約200kPa〜約1000kPaの開始圧力、及び約70℃〜約100℃の開始温度を用いて、充填反応容器内で進行させる。反応が進行するにつれて、容器の温度が約180℃〜約260℃の範囲に上昇し、圧力が約1500kPaから約5000kPaに増加する。反応容器を、かかる圧力及び温度において、約0.25時間〜約5.0時間保持し、その後、圧力が約10kPa〜約500kPaの範囲になるまで温度を低下させ、反応生成物混合物を、第1の分離領域の一部である中間体収容タンクV2に供給する。
【0074】
図1に示されているように、フラッシュドラムV1において、反応生成物混合物中に存在するエタノール及び軽質副生成物を含む第1のフラクションF1の一部をフラッシングによって取り出し、エタノールを、第2のバッチ反応器R1中に充填して濃縮するか、又はエタノール収容容器に戻す。これによって、中間体収容タンクV2を、好ましくはほぼ大気圧及び約50〜100℃の比較的穏和な条件に保持することが可能になる。かかる条件によって、反応生成物混合物を液相で保持することが可能になり、DETとエチレングリコールとの間の逆反応が殆どなくなる。DMTを液相に保持するのに必要な条件によって、DMTとエチレングリコールとの間の望ましくない量の逆反応が同時に引き起こされるので、かかる穏和な条件下の中間体収容タンクは、メタノリシスプロセスにおいては実施不可能である。
【0075】
図1を参照すると、反応生成物混合物の一部を、反応領域F4、この場合には充填される反応器である反応器R1に戻す。この態様においては、反応生成物混合物を、中間体収容タンクから精製工程V3に連続的に供給する。精製工程には、バイパスラインを含ませて、中間体収容タンクからの反応生成物混合物の全部又は一部が、精製工程の全部又は任意の部分をバイパスすることができるようにすることができる。精製工程のために用いることができる精製法の例としては、濾過、遠心分離、イオン交換、及び活性炭又はクレー上への吸着が挙げられるが、これらに限定されない。精製法の選択は、用いる廃PET供給材料の性質に依存する。例えば、廃PETが、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、アルミニウム、紙、ガラス、土、又は他の不溶物質のような不溶の汚染物質を含む場合には、濾過又は遠心分離が適当である。廃PET中に重合触媒として存在するアンチモンのような可溶金属を除去することが望ましい場合には、イオン交換又は活性炭による処理のような方法が適当である。複数の方法の組み合わせを用いることができる。
【0076】
図1においては、精製工程V3からの反応生成物混合物を、第1の分離領域の一部である第1の蒸留カラムV4に供給する。第1の蒸留カラムV4は、大気圧か又は大気圧付近で運転する。第1の蒸留カラムV4から、主としてエタノール、及び軽質反応副生成物を含む第1のフラクションF1の第2の部分を回収する。
【0077】
図1においては、第1の蒸留カラムV4の後に、反応生成物混合物を、第1の分離領域の一部及び第2の分離領域の一部を形成する第2の蒸留カラムV5に供給する。第2の蒸留カラムV5は、大気圧未満で運転する。第2の蒸留カラムV5から、四つのフラクション:主としてエタノール、及び軽質の反応副生成物を含む第1のフラクションF1の残りの部分、大部分のエチレングリコールを含む第2のフラクションF2、主としてDETを含む第3のフラクションF3、及び高沸点化合物を含む第4のフラクションF4;が回収される。第1のフラクションの残りを第1のフラクションの他の部分と混合し、第1のフラクションを凝縮器に供給して、凝縮されたエタノールをエタノール収容容器に戻し、第1のフラクションの残りをパージする。
【0078】
図1に示されるように、第2のフラクションF2は、液−液分離のためのデカンテーションタンクV6に送られ、ここで第2のフラクションF2は、DETに富む第1の層L1、及びエチレングリコールに富む第2の層L2を形成する。収容容器V7からの水を第2のフラクションF2に加えて、第1の層L1中のDETの濃度を増加させ、第2の層L2中のDETの濃度を減少させる。第1の層L1からの液体は、第2の蒸留カラムV5か、又はDET生成物保管タンクV9か、或いは両方に戻し、第2の層L2からの液体は、第3の分離領域V8に送る。第3のフラクションF3は、DET生成物収容タンクV9に送る。第4のフラクションF4の一部は反応領域において用いるために再循環し、第4のフラクションの残りはパージする。
【0079】
図1に示されるように、第2の層L2は第3の分離領域V8に送って、これからエチレングリコールを回収して、エチレングリコール生成物収容タンクV10に送る。
得られたエチルエステル生成物は、次に、カルボン酸生成物に転化させることができる。好ましくは、エチルエステル生成物は、芳香族エチルエステル、より好ましくは芳香族ジエチルエステルである。エチルエステルは、エチルエステルを酸素と反応させることによって酸化して、対応するカルボン酸及び酢酸を形成することができる。
【0080】
本明細書において用いる「芳香族炭化水素」は、炭素原子及び水素原子から構成され、1以上の芳香環、例えばベンゼン又はナフタレン環を有する分子を意味する。本出願の目的のためには、「芳香族炭化水素」は、酸素又は窒素原子のような1以上のヘテロ原子を有するかかる分子を包含する。「メチル芳香族炭化水素」は、1以上の芳香環に結合した1以上のメチル基を有する芳香族炭化水素分子を意味する。「芳香族エチルエステル」は、1以上のエチル基を有する芳香族酸のエチルエステルを意味する。本明細書において用いる「芳香族カルボン酸」は、1以上のカルボン酸基を有する芳香族酸を意味する。
【0081】
本発明者らは、芳香族エチルエステルが、芳香族カルボン酸を製造するための供給材料又は供給材料成分として有用であることを見出した。一態様においては、本発明は、芳香族カルボン酸を製造するのに有用な供給材料を提供する。かかる供給材料は、1種以上の芳香族エチルエステルを含む。芳香族エチルエステルは、単独でかかる供給材料として用いることができる。好ましい態様においては、芳香族カルボン酸を製造するための供給材料の成分として1種以上の芳香族エチルエステルを用いる。芳香族エチルエステルは、芳香族カルボン酸を製造する液相酸化プロセスのための供給材料として特に有用である。
【0082】
本発明に適する芳香族カルボン酸としては、1以上の芳香環を有し、液相系中で気体状及び液体の反応物質を反応させることによって製造することができるカルボキシル化種が挙げられる。本発明に特に適している芳香族カルボン酸の例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及びナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0083】
本発明による供給材料は、1種以上の芳香族エチルエステルを含む。用いる特定の芳香族エチルエステル又は複数の芳香族エチルエステルの組み合わせは、所望の芳香族カルボン酸に依存する。特に望ましい芳香族カルボン酸のためには、供給材料の全部又は一成分として、対応する芳香族エチルエステル前駆体を用いる。例えば、テレフタル酸のためには、供給材料の全部又は一部としてジエチルテレフタレートを用いる。イソフタル酸又はフタル酸のためには、供給材料の全部又は一成分として、それぞれジエチルイソフタレート又はジエチルフタレートを用いる。一態様においては、1種より多い芳香族エチルエステルを供給材料の全部又は一成分として用い、場合によってはこれを用いて1種より多い芳香族カルボン酸を製造することができる。
【0084】
一態様においては、芳香族カルボン酸を製造するのに有用な供給材料は、少なくとも1種の芳香族エチルエステル成分、及び少なくとも1種のメチル芳香族炭化水素成分を含む。例えば、テレフタル酸の製造のためには、供給材料に、パラキシレン及びジエチルテレフタレートを含ませることができる。更なる例として、テレフタル酸及びイソフタル酸の共製造のためには、好ましくは、供給材料は、パラキシレン、ジエチルテレフタレート、並びにメタキシレン及びジエチルイソフタレートの一方又は両方を含む。ナフタレンジカルボン酸の製造のためには、好ましい供給材料は、少なくとも1種のジエチルナフタレート成分及び少なくとも1種のジメチルナフタレン成分を含む。
【0085】
供給材料成分の割合は、本発明には重要ではない。しかしながら、供給材料は、少なくとも1重量%(所望の1種又は複数の芳香族カルボン酸のための全芳香族カルボン酸前駆体を基準として測定)の芳香族エチルエステル成分を含むことが好ましい。より好ましくは、供給材料は、少なくとも5重量%の芳香族エチルエステル成分、より好ましくは少なくとも10重量%の芳香族エチルエステル成分を含む。供給材料は、100重量%以下(所望の1種又は複数の芳香族カルボン酸のための全芳香族カルボン酸前駆体を基準として測定)の芳香族エチルエステル成分を含むことができるが、好ましくは、供給材料は、100重量%未満の芳香族エステル化合物を含む。供給材料は、100重量%を大きく下回る芳香族エステル化合物、例えば50重量%未満或いは更に30重量%未満の芳香族エチルエステル成分を含むことができる。場合によっては、芳香族エチルエステルの割合は、反応領域における溶媒の所望のレベル及び組成を維持するように選択及び調節する。
【0086】
芳香族カルボン酸を製造するためには、比較的純粋な供給材料、より好ましくは、供給材料成分(所望の1種又は複数の酸に対応する全ての前駆体を含む)の全含量が、少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、或いは更にこれ以上である供給材料を用いることが好ましい。
【0087】
芳香族カルボン酸を製造するための芳香族エチルエステルの液相酸化は、バッチ法、連続法、又は半連続法として行うことができる。酸化反応は、1以上の反応器を含むことができる反応領域において行う。反応領域は、成分を配合し酸化反応を行う混合容器又は導管を含むことができる。供給材料、溶媒、及び触媒を含む成分を、場合によっては促進剤、通常は臭素と共に混合することによって、反応混合物を形成する。連続法又は半連続法においては、反応混合物成分は、好ましくは、酸化反応器中に導入する前に混合容器内で混合するが、反応混合物を酸化反応器中で形成することができる。
【0088】
水性カルボン酸、例えば安息香酸、及び特に低級アルキル(例えばC〜C)モノカルボン酸、例えば酢酸を含む溶媒は、芳香族カルボン酸の製造のために用いる通常の酸化反応条件下で僅かしか酸化されない傾向があり、酸化における触媒効果を促進させることができるので、好ましい。好適なカルボン酸溶媒の特定の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、及びこれらの混合物が挙げられる。また、エタノール、又は酸化反応条件下でモノカルボン酸に酸化される他の共溶媒材料を、そのままか又はカルボン酸と組み合わせて用いて良好な結果を得ることができる。勿論、全プロセス効率の目的及び分離を最小にする目的で、モノカルボン酸及びかかる共溶媒の混合物を含む溶媒を用いる場合には、共溶媒はそれと一緒に用いるモノカルボン酸に酸化できるものとすべきである。
【0089】
通常、反応領域において、溶媒の一部は、溶媒燃焼(酸化)か、或いは回収非効率などのプロセス損失のいずれかのために損失する。幾つかの商業的運転においては、かかる損失は、溶媒の2重量%、或いは更に4重量%若しくはこれ以上である可能性がある。かかる損失のために、通常、補給溶媒と称される更なる溶媒をプロセスに加えて、溶媒損失を補填する。本発明によれば、芳香族エチルエステルの酸化によって酢酸が生成するので、溶媒が酢酸を含む場合には、更なる有利性を提供することができる。溶媒が酢酸を含む場合には、芳香族エチルエステルを用いることによって、用いる補給溶媒の量を減少させるか或いは排除することさえ可能である。一態様においては、供給材料における芳香族エチルエステル成分の割合を、芳香族エチルエステル成分の酸化によって反応領域に加えられる酢酸の量に基づいて選択して、用いる補充酢酸の量の望ましい減少を達成するか又はこれに近づけるようにする。
【0090】
本発明によって用いられる触媒は、芳香族エチルエステル供給材料の芳香族カルボン酸への酸化を触媒するのに有効な物質を含む。好ましくは、触媒は、液体酸化反応物質中に可溶で、触媒、酸素、及び液体供給材料の間の接触を促進するが、不均一な触媒又は触媒成分を用いることもできる。触媒は、約23〜約178の範囲の原子量を有する金属のような少なくとも1種の好適な重金属成分を含む。好適な重金属の例としては、コバルト、マンガン、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、ハフニウム、又はセリウムのようなランタノイド金属が挙げられる。これらの金属の好適な形態としては、例えば、酢酸塩、水酸化物、及び炭酸塩が挙げられる。触媒は、好ましくは、コバルト化合物を、単独か、又はマンガン化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、又はハフニウム化合物の1以上と組み合わせて含む。
【0091】
通常、触媒は、好ましくは望ましくないタイプ及びレベルの副生成物を生成させることなく触媒金属の酸化活性を高めるのに用いられ、好ましくは液体反応混合物中に可溶な形態で用いられる促進剤を含むことができる。促進剤としては、ハロゲン化合物、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン置換炭化水素、ハロゲン置換カルボン酸、及び他のハロゲン化化合物を、通常用いる。好ましくは、促進剤として臭素化合物を用いる。好適な臭素促進剤としては、ブロモアントラセン、Br、HBr、NaBr、KBr、NHBr、臭化ベンジル、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、テトラブロモエタン、エチレンジブロミド、ブロモアセチルブロミド、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
酸化反応は、少なくとも一つの酸化反応器を含む反応領域において行う。酸化反応器は、1以上の反応容器を含むことができる。好適な酸化反応器は、液体及び気体状反応物質を混合し、反応熱を制御するために気体状生成物を排気することができるものである。用いることのできる反応器のタイプとしては、連続撹拌タンク反応器及び栓流反応器が挙げられるが、これらに限定されない。通常、酸化反応器は、酸素を液相沸騰反応混合物内に分配するための1以上の混合機構を有するカラム状容器を含む。通常、混合機構は、回転可能か或いはそれ以外の可動性のシャフト上に取り付けられた1以上のインペラーを含む。例えば、インペラーは、回転可能な中心の縦シャフトから伸長することができる。反応器は、用いる特定の温度、圧力、及び反応化合物に耐えるように設計された材料で構成することができる。一般に、好適な酸化反応器は、チタンのような不活性材料を用いて構成するか、或いは、チタン又はガラスのような材料でライニングして腐食及び他の有害な影響に対する抵抗性を向上させることができる。例えば、酢酸を含む溶媒、及び臭素促進剤を含む可能性のある触媒系を用いて、通常の反応条件下で、ジエチルテレフタレート及び場合によってはパラキシレンからテレフタル酸を製造するための反応器及び幾つかの他のプロセス装置に関しては、酸溶媒、及び幾つかの反応生成物、例えば臭化メチルの腐食性ゆえに、通常、チタン及びガラス、或いは他の好適な耐腐食性材料を用いる。
【0093】
また、分子状酸素源を、反応領域中、好ましくは酸化反応器中に導入する。通常、気体状の分子状酸素源として、酸化剤ガスを用いる。分子状酸素源として空気が好都合に用いられる。酸素に富む空気、純粋な空気、及び通常は少なくとも約10容量%の分子状酸素を含む他の気体混合物もまた有用である。明らかなように、源の分子状酸素含量が上昇すると、圧縮機の要求、及び反応器オフガス中の不活性ガスの取り扱いが減少する。分子状酸素源は、1以上の個所で反応領域中に導入することができ、通常は、分子状酸素と他の反応化合物との間の接触を促進させるような形態で導入する。通常、酸化剤ガスは、反応器の下部において導入し、回転シャフト上に取り付けられた1以上のインペラーのような混合機構によって分配される。酸化剤ガスの分子状酸素含量は、変化するが、通常は分子状酸素が約5〜約100容量%の範囲である。潜在的に爆発性の混合物が形成されることを回避するために、酸化剤ガスは、一般に、液体反応の上部の気体空間中の未反応の酸素が引火性限界を下回るように加える。オフガスの酸素含量を引火性限界以下に維持することは、酸素導入の形態及び速度、反応速度(反応条件によって影響を受ける)、及びオフガス排出に依存する。通常、酸化剤ガスは、かかる運転パラメーターに対して、反応器塔頂蒸気が約0.5〜約8容量%の酸素(無溶媒基準で測定)を含むような量で供給する。
【0094】
供給材料、触媒、酸素、及び溶媒の割合は、本発明に対して重要ではなく、供給材料及び目的とする生成物の選択だけでなく、プロセス装置及び運転ファクターの選択によっても変動する。溶媒と供給材料との重量比は、好ましくは、約1:1〜約30:1の範囲である。酸化剤ガスは、通常、少なくとも供給材料を基準として化学量論量であるが、液体反応の上方の気体空間中の未反応の酸素が引火性限界を超える程は多くない量で用いる。有利には、芳香族エチルエステルの芳香族カルボン酸への酸化は、芳香族カルボン酸を形成するメチル芳香族炭化水素の酸化よりも、酸素に関する化学量論的必要量が低い。例えば、1モルのジメチル芳香族炭化水素を1モルの対応する芳香族ジカルボン酸に酸化させると、最小で3モルのOが消費され、2モルのHOが生成する。多くの場合、HO副生成物は望ましくなく、再循環する前に、更なる処理を行って他の溶媒成分からこの副生成物を除去しなければならない。これに対して、1モルの芳香族ジエチルエステルを1モルの対応する芳香族ジカルボン酸に酸化するために必要なOの化学量論量は僅か2モルのOであり、酸化の副生成物は酢酸であり、これは、溶媒として用いることができ、したがって除去する必要がない可能性がある。酸素は、通常、化学量論量よりも大きな量で反応領域に供給するが、メチル芳香族炭化水素供給材料成分の全部又は一部に代えて芳香族エチルエステル成分を用いることにより、所望量の芳香族カルボン酸を製造するための全酸素必要量が減少する。芳香族カルボン酸の生成速度が酸素必要量によって制限される場合には、メチル芳香族炭化水素に代えて芳香族エチルエステルを用いることによって、芳香族カルボン酸の生成速度を増加させることができる。
【0095】
触媒は、好適には、芳香族炭化水素供給材料及び溶媒の重量を基準として、約100ppmwより大きく、好ましくは約500ppmwより大きく、約10,000ppmw未満、好ましくは約7,000ppmw未満、より好ましくは約5000ppmw未満の触媒金属の濃度で用いる。好ましくは、ハロゲン促進剤、より好ましくは臭素を、ハロゲンと触媒金属との原子比が、好適には約0.1:1より大きく、好ましくは約0.2:1より大きく、好適は約4:1未満、好ましくは約1:1未満となるような量で存在させる。ハロゲンと触媒金属との原子比は、最も好ましくは約0.25:1〜約1:1の範囲である。
【0096】
芳香族エチルエステルを酸化して芳香族カルボン酸を製造する反応は、酸化反応条件下で行う。反応は、溶媒の燃焼を制限しながら、酸化反応を推進し、望ましい純度を与えるのに十分な温度で行う。酸化によって生成する熱を消散させて反応条件を保持する。通常は、反応熱は、反応混合物を沸騰させ、沸騰から得られる蒸気を反応領域から除去することによって消散させる。概して、好適な温度は、約120℃を超え、好ましくは140℃を超え、約250℃未満、好ましくは約230℃未満である。幾つかの芳香族カルボン酸、例えばテレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸を製造するためには、約145℃〜約230℃の間の反応温度が好ましい。約120℃より低い温度においては、酸化反応は、通常、過度にゆっくりと進行し、その結果、不十分な生成物純度及び望ましくなく低い転化率を与える。例えば、約120℃未満の温度においてDETを酸化してテレフタル酸を製造する反応は、実質的な終了まで進行させるのに4時間以上かかる可能性がある。得られるテレフタル酸生成物は、その高い不純物のレベルのために重要な更なる処理を必要とする可能性がある。250℃を超える温度においては、溶媒燃焼のために溶媒の有意な損失が起こる可能性がある。
【0097】
反応容器内の圧力は、少なくとも、容器内に供給材料及び溶媒を含む実質的な液相を保持するのに十分に高いものである。一般に、約5〜約40kg/cmゲージの圧力が好適であり、特定のプロセスに関して好ましい圧力は、供給材料及び溶媒の組成、温度、及び他のファクターによって変動するが、通常は約10〜約30kg/cmである。反応容器内での滞留時間は、所定の処理量及び条件に適当なように変動させることができ、約20〜約150分が一定範囲のプロセスに一般に適している。反応混合物のための溶媒として酢酸及び水を用いて芳香族ジエチルエステルをテレフタル酸又はイソフタル酸に酸化する反応のようなプロセスにおいては、固形分含量は液体反応物質の約50重量%程度の高さにすることができ、約10〜約35重量%のレベルがより通常的である。芳香族酸の製造の当業者に明らかなように、好ましい条件及び運転パラメーターは異なる生成物及びプロセスによって変動し、上記に示した範囲内又は更にこの範囲を超えて変動する可能性がある。
【0098】
反応器の塔頂蒸気は、通常、溶媒、及びメチル芳香族炭化水素が存在する場合には水を含む。有利には、供給材料中のメチル芳香族炭化水素成分の全部又は一部を芳香族エチルエステル成分で置き換えることによって、過剰の水の生成が減少し、これにより過剰の水を処理するか又は他に使用するか又は廃棄する必要性が減少する。例えば、パラキシレンを液相酸化してテレフタル酸を形成する反応では、1モルの生成テレフタル酸あたり約2モルの過剰水が生成する。これに対して、DETを液相酸化してテレフタル酸を形成する反応では、過剰水の生成を僅かにするか又は全く生成させないようにすることができる。塔頂ガスは、また、未反応の酸化剤ガス、未反応の供給材料成分、炭素酸化物のような気体状反応副生成物、臭化メチルのような気化反応副生成物、触媒、又はこれらの組み合わせを含む可能性がある。酸化剤ガスとして空気を用いる場合には、反応器塔頂蒸気は、通常、溶媒、水、未反応の供給材料成分、モノエチル芳香族炭化水素、過剰の酸素(存在する場合には)、炭素酸化物、窒素ガス、及び反応副生成物を含む。
【0099】
場合によっては、反応器塔頂蒸気を処理して、再生利用可能な成分を反応領域に戻すことができる。通常、反応器塔頂蒸気は高圧及び高温であり、好ましくは蒸気を処理して溶媒及び未反応の供給材料成分を反応領域に戻した後に、反応器塔頂蒸気からエネルギーを回収することができる。かかる処理としては、例えばAbramsの米国特許5,723,656(参照として本明細書中に包含する)において記載されているような高効率分離を挙げることができる。かかる高効率分離は、溶媒損失を減少させるのに役立ち、反応溶媒(水を含まない)及び未反応の芳香族エチルエステルを反応領域に戻すことによって反応において用いる補給溶媒の量を減少させるのに役立つ。また、高効率分離によって、エネルギー回収のために有用な気相中に水を実質的に保持することができる。
【0100】
エネルギーは、他の材料、例えば水を用いて熱交換を行って蒸気を生成させることによって熱の形態で回収することができ、かかる材料は、次に、プロセスの他の部分において、或いは他のプロセスのために、或いは両方のために用いることができる。また、エネルギーは、例えば膨張器、又は仕事をエネルギーに変換することができる他の装置を用いて仕事の形態で回収することもできる。エネルギーは、連続して又は並行して、熱の形態及び仕事の形態で回収することができる。回収されたエネルギーは、プロセスのエネルギー要求を埋め合わせるために用いたり、他のプロセスにおいて用いたり、保存したり、エネルギー配管に戻したり、これらの使用の任意の組み合わせにおいて用いたり、或いは任意の他の望ましい使用において用いることができる。
【0101】
用いる特定の触媒成分、供給材料、及び溶媒に依存して、反応器塔頂蒸気は、腐食性化合物、又はエネルギー回収のために用いる装置に有害な他の化合物を含む可能性がある。例えば、DETを液相酸化してテレフタル酸を製造する反応において促進剤として臭素を用いる場合には、反応器塔頂蒸気中に臭化メチルが存在している可能性がある。
【0102】
反応器塔頂蒸気に対して、他の処理又は複数の処理の組み合わせを用いることができる。例えば、腐食性又は燃焼性材料を除去するために、反応器塔頂蒸気を、好ましくは溶媒及び未反応の供給材料成分を回収するための他の処理の後に処理することができる。好ましくは液体水を大きく凝縮させないで腐食性又は燃焼性物質を除去するための任意の処理を用いることができるが、好ましくは、反応器塔頂蒸気は、熱酸化プロセス、より好ましくは接触熱酸化プロセスにかける。好ましくは、処理された反応器塔頂蒸気を接触酸化装置に送り、ここで、高温及び高圧において、空気又は他の分子状酸素源の存在下で、処理された反応器塔頂蒸気を好適な触媒材料と接触させて、腐食性及び燃焼性副生成物を、腐食性がより低いか又はより環境的に適合する物質に接触酸化する。場合によっては、かかる接触酸化処理の前に予備加熱を用いることができる。予備加熱は、熱交換器、直接蒸気圧入、又は当該技術において公知の他の手段のような任意の好適な手段によって行うことができる。
【0103】
かかる接触酸化処理を用いて、腐食性の臭化アルキル化合物を減少させるか又は排除することができる。更に、かかる接触酸化処理によって、存在する可能性がある残留溶媒を除去することができる。好ましくは、反応器塔頂蒸気を処理して溶媒の相当部分を除去し、これによって接触酸化ユニットに対する負荷を低減する。接触酸化処理に送られる蒸気中の反応溶媒のレベルが高いと、接触酸化ユニットにおいて許容できない大きな温度上昇が引き起こされる。更に、そうでなければ酸化に再循環することができる反応溶媒が燃焼することは、経済的損失である。
【0104】
かかる接触酸化のための酸化触媒は、例えば、Engelhard Corp.又はAlliedSignal Inc.から商業的に入手することができる。通常、かかる酸化触媒は、周期表(IUPAC)の遷移族元素、例えば第VIII族金属を含む。白金が接触酸化処理のために好ましい金属である。かかる触媒金属は、酸化物のような複合形態で用いることができる。通常、かかる触媒金属のための担体は、触媒的により活性でないか又は不活性であってよい。担体は複合体で存在することができる。通常の触媒担体材料としては、ムライト、スピネル、砂、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、及び上記の複合体が挙げられる。かかる接触酸化触媒は、接触酸化にかけられる流れに酸化促進成分を曝露する任意の都合のよい構造、形状、又は寸法で用いることができる。例えば、触媒は、ペレット、顆粒状、環状、球状などの形態であってよい。
【0105】
反応器塔頂蒸気に関する他の場合によって用いる処理としては、臭素又は臭化水素のような酸性の無機物質を除去するためのスクラビングが挙げられる。臭素及び臭化水素は、臭化アルキル及び有機不純物の接触酸化によって生成する。
【0106】
特定の態様においては、DET及びパラキシレンを含む供給材料をテレフタル酸に沸騰液相酸化するために、本発明を用いる。場合によっては、供給材料は、また、テレフタル酸及びイソフタル酸を共製造するために、DEI及び/又はメタキシレンを含む。供給材料及び溶媒を、反応容器を含む反応領域中に連続的に導入する。同様に好ましくはそれぞれ溶媒中に溶解されている触媒及び促進剤を、反応容器中に導入する。酢酸又は酢酸水溶液が好ましい溶媒であり、約2:1〜約5:1の溶媒:供給材料の比が好ましい。触媒は、好ましくは、コバルトを、マンガン、セリウム、ジルコニウム、ハフニウム、又はこれらの任意の組み合わせ、並びに臭素源と一緒に含む。触媒は、好適には、芳香族炭化水素及び溶媒の重量を基準として約600ppmw〜約3500ppmwの触媒金属を与える量で存在させる。促進剤は、最も好ましくは、臭素:触媒金属の原子比が約0.2:1〜約1.5:1となるような量で存在させる。酸化剤ガス、最も好ましくは空気は、供給材料中の芳香族炭化水素1モルあたり少なくとも約3〜約5.6モルの分子状酸素を与えて、反応器塔頂蒸気が約0.5〜約8容量%の酸素(無溶媒基準で測定)を含むようにするのに有効な速度で反応容器に供給する。
【0107】
かかる特定の態様においては、反応容器は、好ましくは、約5〜約40kg/cmゲージの圧力下、約150〜約225℃に保持する。かかる条件下において、液体中で酸素と供給材料成分とを接触させると、通常は微粉砕形態の固体のテレフタル酸の結晶が形成する。かかる条件下において、液体中で酸素とジエチル炭化水素成分とを接触させると、酢酸及び固体のテレフタル酸の結晶が形成する。沸騰液体スラリーの固形分含量は、溶媒重量を基準として、通常、約40重量%以下、好ましくは約20〜約35重量%の範囲であり、含水量は、通常、約5〜約20重量%である。反応による発熱を制御するために液体を沸騰させると、溶媒及び反応水を含む液体の揮発性成分が、気化副生成物、未反応の供給材料成分と共に液体内で気化する。未反応の酸素及び気化した液体成分が、液体から液体の上方の反応器空間中に脱出する。他の種、例えば酸化剤ガスとして空気を用いる場合に存在する窒素及び他の不活性ガス、炭素酸化物、及び気化副生成物、例えば酢酸メチル及び臭化メチルも、反応器塔頂蒸気中に存在する可能性がある。
【0108】
かかる態様においては、液体の一部中にスラリー化しているか又は溶解している芳香族ジカルボン酸反応生成物が容器から取り出される。従来の方法を用いて、通常は結晶化、液−固分離、及び乾燥を用いることによって生成物流を処理して、その成分を分離し、その中に含まれる芳香族カルボン酸を回収することができる。好都合には、液体中の固体生成物のスラリーに、一以上の段階で、遠心分離、濾過、又は両方の処理を行う。液体中に溶解している可溶の生成物は、結晶化によって回収することができる。水、溶媒、未反応の供給材料を含み、しばしば1種以上の液体触媒、促進剤、及び反応中間体も含む液体を、反応容器に戻すことができる。DETからのテレフタル酸の生成は、パラキシレンのテレフタル酸への転化よりもよりゆっくりと進行する可能性がある。しかしながら、反応器塔頂蒸気又は生成物と共に反応領域から排出される未反応のDETを、溶媒を用いて回収して反応領域に戻し、これによりDETの有効滞留時間を増加させて、より遅い反応を効率よく進行させることを可能にすることができる。
【0109】
かかる態様においては、液体から回収された芳香族ジカルボン酸生成物を、そのまま用いるか又は保管することができ、或いは精製又は他の処理にかけることができる。精製は、回収された芳香族ジカルボン酸と共に存在する可能性のある副生成物及び不純物を除去するのに有益である。テレフタル酸及びイソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸に関しては、精製は、好ましくは、通常は水又は他の水性溶媒中に溶解している酸化生成物を、昇温及び昇圧下において、通常は炭素、チタニア、又は触媒金属のための他の好適な耐化学薬品性担体又はキャリア上に担持されている、ルテニウム、ロジウム、白金、又はパラジウムのような水素化触媒活性を有する金属を含む触媒の存在下で水素化することを含む。精製プロセスは、例えば米国特許3,584,039号明細書、4,782,181号明細書、4,626,598号明細書及び4,892,972号明細書から公知である。
【0110】
有利には、芳香族エチルエステルを用いることによって、幾つかの不純物の形成を減少させることができる。例えば、粗テレフタル酸(パラキシレンから製造)中の主要な不純物は、パラキシレンからのテレフタル酸の形成における中間体である4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)である。しばしば、テレフタル酸中に存在する4−CBAの量を減少させるために大きな努力が費やされている。これに対して、4−CBAは、DETからのテレフタル酸の形成の中間体ではない。DETを供給材料において用いて、テレフタル酸生成物中の4−CBAの形成を減少させることに役立てることができる。
【0111】
溶媒として水を用いて精製を行う場合には、乾燥に代わる手段として、水で洗浄して固体芳香族カルボン酸から残留酸化溶媒を除去することができる。かかる洗浄は、米国特許5,679,846号明細書及び米国特許5,175,355号明細書に開示されているフィルターのような好適な溶媒交換装置を用いて行うことができる。場合によっては、精製プロセスからの母液の全部又は一部を、高効率分離装置又は他の処理に、直接又は間接的に送ることができる。例えば、1以上の高効率蒸留カラムを用いて高効率分離を行う場合には、精製母液の全部又は一部を、1以上のかかる高効率蒸留カラムのための還流液として用いることができる。
【0112】
通常、当該技術において公知の分離方法、例えば濾過、遠心分離、又は公知の方法の組み合わせによって、未精製芳香族カルボン酸生成物から酸化母液を分離する。母液の少なくとも一部を再循環することが好ましく、商業的な運転においては、通常、母液の大部分を再循環する。例えば、かかる母液は、酸化反応器又は高効率分離装置に、直接又は間接的に再循環することができる。かかる再循環は、DET及びパラキシレンを含む供給材料からのテレフタル酸の製造において特に望ましい。同様の方法によって精製芳香族ジカルボン酸生成物から母液を分離することができ、かかる母液は、処理を行ってか又は行わずに、本プロセスの他の段階又は他のプロセスにおいて用いるために再循環することができる。
【0113】
反応中に、反応副生成物、例えば芳香族モノエチルエステルが形成される可能性があることが理解される。幾つかの副生成物は気相中に侵入して反応器塔頂蒸気の一部として処理され、幾つかの副生成物は酸化母液と共に残留し、幾つかの副生成物は芳香族カルボン酸生成物と共に存在する。1を超えるこれらの流れの中に同じ副生成物が存在する可能性がある。かかる副生成物又はその一部は、回収して、所望の場合には、反応領域に再循環するか、或いは回収後か又はパージ流の一部としてパージすることができる。好ましくは、酸化して芳香族カルボン酸又は溶媒を形成することのできる副生成物を、反応領域に再循環する。
【0114】
芳香族カルボン酸を製造するために用いるのに加えて、芳香族ジエチルエステルは、また、酸化プロセスにおいて用いて過剰の酢酸を製造することができ、これを回収して販売するか又は他のプロセスにおいて用いることができる。酢酸は非常に望ましい商品であり、共生成物としてそれを製造することができることは特に有利である。一態様においては、本発明は、酢酸を製造して、溶媒損失を減少させるか又は過剰の酢酸を製造する方法を提供する。かかる態様においては、芳香族エチルエステルを、本明細書で記載した種類の液相酸化プロセスにおいて用いる。
【0115】
芳香族カルボン酸を用いてポリマーを形成することができる。カルボン酸からポリマーを形成する数多くの方法が存在するが、通常、カルボン酸を、エチレングリコールとの縮合反応において用いて芳香族エステル−エチレン分子を形成し、これを次に重合することができる。例えば、テレフタル酸をエチレングリコールと反応させてPETを形成することができる。更なる例として、ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと反応させてPENを形成することができる。通常、縮合反応は、加熱下において、酸触媒の存在下で行う。副生成物として形成される水は、例えば、蒸留によって反応から除去して、反応を推進し、逆反応を最小にする。
【0116】
一態様においては、テレフタル酸及びエチレングリコールからPETを形成する。反応の第1段階においては、酸及び2分子のエチレングリコールからエステルを形成する。第2段階においては、エステルを、低圧において、約210〜約290℃の範囲の温度に加熱する。数多くの触媒が、重合反応を触媒することが知られており、用いることができる。好ましくは、触媒は、アンチモン化合物、例えば酸化アンチモン(III)を含む。この第2段階においては、PETが形成され、エチレングリコールの一部が再生される。エチレングリコールは、通常、取り出され、再循環される。
【0117】
他の態様においては、ポリマーを形成するのに用いるエチレングリコールの少なくとも一部をエタノリシス反応において形成した。
また、芳香族カルボン酸をメチルエステルに転化し、アルコールエステル交換反応においてエチレングリコールと反応させて芳香族エステル−エチレン分子を形成し、これを次に重合することができる。かかる反応においては、メタノールが副生成物として生成し、これを除去して反応を推進する。
【0118】
芳香族エステル−エチレン分子は、場合によっては、重合する前か又は段階的重合の各段階の間か又は両方において精製する。更に、他のモノマー又はオリゴマーを重合プロセス中に導入して、コポリマー、ターポリマーなどを製造することができる。
【0119】
上記の記載及び下記の実施例において特定の態様を参照して本発明を説明したが、特に記載された装置及び方法に対して変更を行うことができ、これはなお本発明の範囲内であることが理解されるであろう。例えば、本発明の範囲を逸脱することなく、熱交換器、プレヒーター、更なる凝縮器、リボイラー、エネルギー回収装置、及び商業的運転において用いられている他の装置のような更なる装置を含ませることができる。更なる例としては、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の流れを処理して不純物を除去したり又は流れの物理的若しくは化学的性質を変化させるような更なる工程を行うことができる。
【実施例】
【0120】
以下の非限定的な実施例によって、本発明の種々の態様を更に示す。
実施例1〜5に関しては、他に示さない限り、下記実施例におけるエタノリシス反応は、2リットルのParr反応器を用いておこなった。反応物質を反応器内に配置し、反応器を密封し、反応器内の雰囲気を窒素でパージした。他に記述しない限り、反応器は、まず、40psig(約276kPa)に加圧し、スターラーを始動させ、反応器を200℃に2時間加熱した。2時間後、加熱を停止し、反応器を一晩かけて雰囲気温度に冷却した(撹拌を継続して行った)。その後、撹拌を停止し、蒸留を用いて反応生成物を分離した。環境気圧における撹拌蒸留を用いてエタノールを回収し、残りの反応生成物を真空蒸留にかけた。真空蒸留は、約27”〜29”Hgにおいて行った。
【0121】
実施例1
表1に示されているタイプの300gのPETフレークを、上記の手順にしたがって、3:1のエタノール:PET重量比で、エタノールと反応させた。エタノールは0.0734重量%の含水量を有していた。外部触媒は加えなかった。混合フレーク及び透明なフレークの両方を、全米PET容器資源協会(NAPCOR)を介して得た。混合フレークは約55重量%の褐色フレークを含んでおり、残りは、主として緑色、琥珀色、及び透明なPETフレークであった。Wellman Inc.から製品番号61802としてバージンボトル樹脂を得た。反応混合物中のDET及びエチレングリコールの理論的な最大割合は、それぞれ28.86重量%及び8.06重量%であった。
【0122】
【表1】

【0123】
表1における実験1及び2からの結果によって、触媒を加えなくても、混合フレークは、エタノリシス反応を触媒する触媒作用不純物を含んでいたことが示された。実験3〜8によって、触媒作用不純物は主として褐色フレーク中に存在していたことが示された。本発明者らは、驚くべきことに、褐色PET中において通常用いられている顔料である銅フタロシアニンが、エタノリシス反応のために特に有効な触媒であることを見出した。
【0124】
実施例2
300gの透明なPETフレークを、上記に概略記載の手順にしたがって、有機チタネートの形態のチタンの存在下において、900gのエタノールと反応させた。DuPontから市販されている有機チタネートであるTYZOR TPTを、チタン源として用いた。エタノールは0.0734重量%の水濃度を有していた。有機チタネートは、1000ppmw(PET基準)のチタンに相当する量で加えた。結果を下表2の実験9として示す。実験10は、200gの透明なPETフレーク及び600gのエタノールを用いて、上記の手順にしたがって行った。有機チタネートは、17.6ppmw(PET基準)のチタンに相当する量で加えた。結果を下表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
表2は、PETのエタノリシスを接触する有機チタネートの有効性を示す。実験10において用いた極めて少量でも有効であった。
実施例3
上記の手順にしたがって、触媒を加えずに、実施例1に記載した混合PETフレーク及び0.0734重量%の含水量を有するエタノールを用いて、エタノリシスを行った。エタノール:PET比は3:1であり、外部触媒は加えなかった。上記に記載のようにして反応生成物を蒸留した後、蒸留塔底物を更なるエタノリシス反応のための触媒として用いた。0.0734重量%の含水量を有する600gのエタノール、162gの透明なPETフレーク、及び38gの蒸留塔底物を用いて、更なるエタノリシス反応を行った。追加の触媒は用いなかった。結果を下表3に示す。
【0127】
【表3】

【0128】
表3は、混合フレーク供給材料中に存在する触媒作用不純物は蒸留プロセスを経ても活性を維持しており、蒸留塔底物の一部の再循環流を用いてPETのエタノリシスを有効に触媒することができることを示す。表1の実験4と表3の実験11とを比較することにより、蒸留塔底物のエタノリシス反応を触媒することに対する有効性が特に強調される。
【0129】
実施例4
エタノリシス反応に対する水の効果を調べるために更なる試験を行った。上記の手順にしたがってエタノリシス反応を行い、結果を下表4に示す。表4は、用いたエタノールにおける水濃度(重量%)を示す。実験12〜17に関しては、混合フレーク(上記に記載)をPET源として用い、3:1のエタノール:PET比でエタノールと配合した。実験17に関しては、300gの混合フレークを真空オーブン内で乾燥し、それによって約1.78gの水を除去した。実験18に関しては、透明なフレークをPET供給材料として用い、有機チタネートの形態の20ppmw(PET基準)のチタンを加えた。
【0130】
【表4】

【0131】
表4における結果は、触媒作用不純物のPETのエタノリシスを触媒する有効性が水の存在に対して感受性であることを示す。燃料グレードのエタノール中に約1重量%の水が存在していても、触媒作用不純物の有効性が大きく低下した。しかしながら、驚くべきことに、有機チタネートは、燃料グレードのエタノール(約1重量%の水)を用いても有効な触媒であった。燃料グレードのエタノールは多くの地域において容易に得ることのできる商品であるので、燃料グレードのエタノールを用いることができることは特に重要である。更に、エタノールの水に対する親和性のために、エタノール中の若干の水を許容することができ、このために運搬及び取り扱いの際の懸念が大きく緩和される。
【0132】
実施例5
水を用いてDET及びエチレングリコールの液−液分離を容易にすることができることが見出された。200gの混合PETフレーク(上記に記載)、600gのエタノール(0.0734重量%の水を有する)、及び0.133gの酢酸亜鉛を、2リットルのParr反応器に充填し、220℃に加熱し、2時間撹拌し、冷却した。大気圧で蒸留することによって反応生成物混合物からエタノールを除去し、次に残りの揮発分を真空蒸留した。真空蒸留からの全塔頂物を一つのフラクションとして回収し、秤量すると207gであった。このフラクションは、58℃のオーブン内で2つの液層を形成した。液層を分析し、結果を下表5に19a(下層)及び19b(上層)として示す。次に、水(41g)を加え、混合物を振盪し、2層に分離させた。層を分析し、結果を下表5に20a(下層)及び20b(上層)として示す。
【0133】
【表5】

【0134】
表5に示されるように、水によってDETとエチレングリコールとの間の液−液分離が促進される。エチレングリコールの量は下層において大きく減少し、下層中のDETの量は多少の増加を示した。重要なことに、大部分の水が大部分のエチレングリコールと共に上層中に残留した。水は主として上層中に存在しているので、更なる精製のためにエチレングリコールと共に送ることができ、下層は、蒸留に戻すか、又は最終DET生成物として単離することができる。
【0135】
実施例6
パラキシレンを用いて、液−液抽出によってエチレングリコールに富むフラクションからDETを取り出すことを容易にすることができることが見出された。それぞれのバッチにおいて、800gの混合PETフレーク(上記に記載)、2400gのエタノール(0.0734重量%の水を有する)、及び80mgのチタン(IV)イソプロポキシドを、Parr反応器に充填し、200℃に加熱し、2時間撹拌し、冷却した。それぞれのバッチに関して、大気圧で蒸留することによって反応生成物混合物からエタノールを除去し、次に残りの揮発分を真空蒸留した。幾つかのバッチの真空蒸留からの全塔頂物を回収し、一つのフラクションとして回収し、秤量すると947gであった。このフラクションを4工程で処理した。工程1においては、70℃のオーブン内でこのフラクションから二つの液層を形成した。下層はDETに富み、上層はエチレングリコールに富んでいた。重量が208gであった上層を単離した。工程2においては、工程1において単離した上層に50gの水を加えた。この水の添加によって二層が形成され、上層はエチレングリコールに富み、重量は214.6gであり、下層はDETに富み、重量は43.4gであった。工程2の上層を単離し、その組成を下表6に示す(抽出物0)。工程3においては、工程2の上層の一部(重量139g)を等重量のパラキシレンと混合し、混合物を振盪し、70℃において二つの層に分離した。下層がエチレングリコールに富むことが見出され、これを単離した。この単離された工程3の下層の組成を、下表6に示す(抽出物1)。工程4においては、工程3の下層を、等重量の新しいパラキシレンと混合し、二つの層に分離させて、下層(エチレングリコールに富む)を単離した。工程4において単離された下層の組成を、下表6に示す(抽出物2)
【0136】
【表6】

【0137】
表6に示されるように、パラキシレンを用いて抽出することにより、グリコールに富む層からDETを有効に取り出すことができる。グリコールに富む層の組成は、パラキシレンのような炭化水素で抽出した後には、蒸留のような普通の方法によってポリエステルグレードのエチレングリコールに更に精製することを可能にするのに十分な純度であると考えられる。
【0138】
実施例7
反応器の内容物を撹拌するための振盪装置に接続した71mLのチタンバッチ反応器を用いて、バッチ液相酸化反応を行った。下表6に示す供給材料成分、及び、反応器内において0.1重量%のCo+Mn(酢酸塩の形態)及びHBrを有し、1/1/1のCo/Mn/Brのモル比を有する触媒溶液を、この反応器に充填した。比較実験A並びに実験21及び22に関して充填した溶媒は、80重量%の安息香酸及び水(20重量%)の混合物であった。実験23に関して充填した溶媒は、80重量%の酢酸及び20重量%の水の混合物であった。反応器を空気で加圧して、充填したパラキシレン1モルあたり4.3モルのOを与えた。次に、撹拌して内部混合を与えながら、反応器を示されている温度まで昇温した。反応器をその温度において示されている時間保持し、25℃に冷却し、気体及びスラリー生成物の両方を取り出して分析した。高圧液クロマトグラフィー(HPLC)を用いて全生成物を分析した。酢酸形成はガスクロマトグラフィーによって測定した。酢酸収量を、比較実験A(触媒金属と共に導入)において存在する酢酸に合わせて調整し、炭素酸化物の形態の酢酸損失に関しては補正は行わなかった。結果(比較実験Aを含む)を下表7に示す)
【0139】
【表7】

【0140】
安息香酸溶媒を用いて行った実験によって酢酸の正味形成量を測定することが可能になり、これは、安息香酸溶媒の存在下において低レベルで検出することができる。これらの結果により、実験21においては、DETと共に導入されたエチル基の33.9%が反応時間の間に転化したことが示される。これは、生成物中の残留DET及びMETのレベルによって測定することができる。生成物中の酢酸により、転化したエチル基の52.2%が酢酸の正味の形成として現れたことが示された。実験22においては、僅かにより高い温度(383°Fに対して390°F)及びより長い反応時間(20分に対して30分)を用いると、エチル基の転化率は53.5%に増加し、酢酸形成への選択率は59.6%に増加した。
【0141】
実験23においては、酢酸を溶媒として用いたので、反応器内の酢酸の増加を正確に定量することはできなかった。しかしながら、DET及びMETからのエチル基の70%の転化は、この溶媒を用いた有利な転化を示す。
【0142】
表7における結果から明らかなように、供給材料成分としてDETを用いることはテレフタル酸製造に悪影響を与えず、実験22及び23においては4−CBAの製造が大きく低下した。実施例6は、テレフタル酸の液相製造のための供給材料として通常用いられているパラキシレンの全部又は一部の代替としてDETを用いることができることを示す。
【0143】
実施例8
チタンで構成された2リットルの撹拌圧力反応器を用いて半連続液相酸化を行った。このユニットに溶媒及び触媒のみを充填し、窒素下で加圧し、1000RPMで撹拌しながら示されている反応温度に加熱した。次に、20重量%のDET及び80重量%のパラキシレンの供給材料混合物を、80分かけて333gの速度で反応器に加えた。また、この間に、窒素中21重量%のOで構成される気体流を反応器の底部中に供給し、反応器から排出される気体を凝縮器に通して、非凝縮性気体成分を排気しながら凝縮性溶媒を反応器に戻した。全てのDET/パラキシレン供給材料を加えた後、気体を窒素に戻し、ユニットを冷却し、生成物を回収し、従前の実施例と同様に分析した。結果を下表8に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
表8は、DETを、パラキシレンの液相酸化のためのプロセスにおいて供給材料の一部として成功裏に用いて、低い4−CBA値、及び1パスあたり50%を超えるDET/MET混合物の転化率でテレフタル酸を製造することができることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、本発明の一態様にしたがうエタノリシス及び生成物回収の態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応領域においてポリ(エチレンテレフタレート)をエタノールと反応させて反応生成物混合物を形成し;
(b)反応生成物混合物から、回収されたエタノールを含む第1のフラクションを回収し;
(c)反応生成物混合物から、エチレングリコールを含む第2のフラクションを回収し;
(d)反応生成物混合物から、ジエチルテレフタレートを含む第3のフラクションを回収する;
工程を含む、ポリ(エチレンテレフタレート)を再生利用する方法。
【請求項2】
反応領域においてポリ(エチレンテレフタレート)をエタノールと化合させて反応混合物を形成する工程におけるエタノールが、燃料グレードのエタノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
回収されたエタノールを含む第1のフラクションを反応生成物混合物から回収する工程を第1の分離領域において行い、エチレングリコールを含む第2のフラクションを反応生成物混合物から回収する工程及びジエチルテレフタレートを含む第3のフラクションを反応生成物混合物から回収する工程を第2の分離領域において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(e)第2のフラクションを、大部分のジエチルテレフタレートを含む第1の流れ、及びエチレングリコールを含む第2の流れに分離し;
(f)第1の流れの少なくとも一部を第2の分離領域に戻し;
(g)第3の分離領域において、第2の流れからエチレングリコールを回収する;
工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2のフラクションを分離する工程が、第2のフラクションの少なくとも一部に水を加える工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2のフラクションを分離する工程が、第2のフラクションの少なくとも一部に、n−ヘプタン、パラキシレン、又は両方を加える工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1の分離領域がほぼ大気圧で運転する第1の蒸留カラムを含み、第2の分離領域が大気圧よりも低い圧力で運転する第2の蒸留カラムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
第1のフラクション中の回収されたエタノールの少なくとも一部を反応領域内に存在させる、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
反応領域内に触媒を存在させ、触媒が、触媒作用不純物、銅フタロシアニン、亜鉛、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応領域内に触媒を存在させ、触媒がチタンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応領域においてポリ(エチレンテレフタレート)をエタノールと化合させて反応混合物を形成する工程におけるエタノールが、燃料グレードのエタノールを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応生成物混合物から触媒を含む第4のフラクションを回収する工程を更に含み、第4のフラクションの少なくとも一部を反応領域に送る、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
反応生成物混合物の少なくとも一部を固−液分離にかけて、望ましくない汚染物質の少なくとも一部を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
反応生成物混合物の少なくとも一部をイオン交換にかけて、望ましくない汚染物質の少なくとも一部を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(a)ポリ(エチレンテレフタレート)とエタノールとを反応させて反応生成物混合物を形成することのできる反応器;
(b)反応生成物混合物からエタノールを回収して、回収されたエタノールの少なくとも一部を直接的又は間接的に反応器に戻すように構成されている大気圧蒸留カラム;及び
(c)反応生成物混合物からジエチルテレフタレートを回収するように構成されている真空蒸留カラム;
を含む、ポリ(エチレンテレフタレート)を再生利用するための装置。
【請求項16】
反応生成物混合物の少なくとも一部から不溶の望ましくない汚染物質の少なくとも一部を除去することのできる固−液分離装置を更に含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
反応生成物混合物の少なくとも一部から不溶の望ましくない汚染物質の少なくとも一部を除去することのできるイオン交換樹脂を更に含む、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
(a)反応領域において、ポリ(エチレンテレフタレート)とエタノールとを反応させて、エタノール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ジエチルテレフタレート、及びエチレングリコールを含む反応生成物混合物を形成し;
(b)反応生成物混合物から、エタノールを含む第1のフラクション、ジエチルテレフタレート−エチレングリコール共沸混合物を含む第2のフラクション、及びジエチルテレフタレートを含む第3のフラクションを分離する;
工程を含む、ジエチルテレフタレートの製造方法。
【請求項19】
反応領域内に水が存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(c)ジエチルテレフタレートの融点より高い温度において、液−液分離を用いて共沸混合物から大部分のジエチルテレフタレートを含む流れを回収し;
(d)工程(c)の流れの少なくとも一部を工程(b)における分離に送る;
工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
反応生成物混合物から、不溶の望ましくない汚染物質の少なくとも一部を分離する工程を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
イオン交換を用いて、反応生成物混合物から可溶の望ましくない汚染物質の少なくとも一部を分離する工程を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
触媒を反応領域内に存在させ、触媒が、触媒作用不純物、銅フタロシアニン、亜鉛、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
触媒がチタン(IV)イソプロポキシドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(a)反応領域において、エタノールを、テレフタル酸、イソフタル酸、及びエチレングリコールのターポリマーを含む供給材料と反応させて、反応生成物混合物を形成し;
(b)反応生成物混合物から、エタノールを含む第1のフラクションを回収し;
(c)反応生成物混合物から、エチレングリコールを含む第2のフラクションを回収し;
(d)反応生成物混合物から、ジエチルテレフタレート及びジエチルイソフタレートを含む第3のフラクションを回収する;
工程を含む、ジエチルテレフタレート及びジエチルイソフタレートの製造方法。
【請求項26】
触媒を反応領域内に存在させ、触媒が、触媒作用不純物、銅フタロシアニン、亜鉛、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
反応領域内のエタノールが燃料グレードのエタノールを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも一種の芳香族エチルエステルを含む、芳香族カルボン酸を製造するための供給材料。
【請求項29】
少なくとも一種の芳香族エチルエステルが芳香族ジエチルエステルを含む、請求項28に記載の供給材料。
【請求項30】
芳香族ジエチルエステルがジエチルテレフタレートである、請求項29に記載の供給材料。
【請求項31】
更にジエチルイソフタレートを含む、請求項30に記載の供給材料。
【請求項32】
少なくとも一種の芳香族エチルエーテルがジエチルナフタレンを含む、請求項28に記載の供給材料。
【請求項33】
少なくとも一種のジメチル芳香族炭化水素を更に含む、請求項28に記載の供給材料。
【請求項34】
少なくとも一種の芳香族エチルエステルがジエチルテレフタレートを含み、少なくとも一種のジメチル芳香族炭化水素がパラキシレンを含む、請求項33に記載の供給材料。
【請求項35】
ジエチルイソフタレートを更に含む、請求項34に記載の供給材料。
【請求項36】
反応領域において、酢酸を含む溶媒の存在下で、少なくとも一種の芳香族エチルエステルと酸素とを反応させる工程を含む、芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項37】
芳香族エチルエステルがジエチルテレフタレートを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
パラキシレンを反応領域内に存在させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(a)反応領域から、ジエチルテレフタレート及びテレフタル酸を含む反応生成物混合物を排出し;
(b)反応生成物混合物を分離してテレフタル酸生成物を回収し、ジエチルテレフタレートを含む反応母液を形成し;そして
(c)反応母液の少なくとも一部を反応領域に戻す;
工程を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
酸化母液がモノエチルテレフタレートを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
反応領域において、水の存在下で、少なくとも一種の芳香族エチルエステルと酸素とを反応させる工程を含む、酢酸の製造方法。
【請求項42】
少なくとも一種の芳香族エチルエステルがジエチルテレフタレートを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも一種の芳香族エチルエステルがジエチルイソフタレートを更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
反応領域において、少なくとも一種の芳香族エチルエステルを含む供給材料を酸素と反応させることを含む、芳香族カルボン酸及び酢酸の共製造方法。
【請求項45】
芳香族カルボン酸がテレフタル酸を含み、少なくとも一種の芳香族エチルエステルがジエチルテレフタレートを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
パラキシレンを反応領域内に存在させる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(a)第1の反応領域において、ポリ(エチレンテレフタレート)を含む第1の供給材料をエタノールと反応させて第1の反応生成物混合物を形成し;
(b)第1の反応生成物混合物から芳香族エチルエステルを回収し;
(c)第2の反応領域において、芳香族エチルエステルの少なくとも一部を含む第2の供給材料を酸化させて芳香族カルボン酸を形成し;そして
(d)第3の反応領域において、芳香族カルボン酸の少なくとも一部とエチレングリコールとを反応させて、ポリ(エチレンテレフタレート)を含むポリマーを形成する;
工程を含む、ポリ(エチレンテレフタレート)を再生利用する方法。
【請求項48】
第1の供給材料が、(ポリ(エチレンテレフタレート)を基準として)少なくとも1000ppmwのポリ塩化ビニルを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
第1の反応生成物混合物の少なくとも一部をイオン交換樹脂と接触させて、第1の反応生成物混合物中に存在している可溶性汚染物質の少なくとも一部を除去する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
エタノールが燃料グレードのエタノールである、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
第2の供給材料が、芳香族カルボン酸のジメチル芳香族炭化水素前駆体を含む、請求項47に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−522305(P2009−522305A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548812(P2008−548812)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/062357
【国際公開番号】WO2007/076384
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】