説明

DME改質装置、DME燃料を用いた燃料電池システム及びDME燃料の改質方法

【課題】DMEの分解反応を抑制することによりCO生成の抑制を図り、CO濃度を低減させたDME改質装置、DME燃料を用いた燃料電池システム及びDME燃料の改質方法を提供する。
【解決手段】DME改質装置10は、原燃料であるジメチルエーテル(DME)11を改質ガス12に改質する改質触媒装置13と、前記改質触媒装置13で発生したCOを変成するCO変成装置14と、残留するCOをCO除去触媒15により除去して燃料ガス16とするCO除去装置17とを備えるDME改質装置において、前記CO除去触媒15がメタノール耐久性を有するメタノール耐久性CO除去触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル(DME)を原燃料とする水素(H2)を製造する燃料改質装置に使用するDME改質装置、DME燃料を用いた燃料電池システム及びDME燃料の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体高分子型燃料電池(PEFC)は低公害で、さらに熱効率が高いため自動車用電源や分散電源等の幅広い分野での動力源としての適用が期待されている。この燃料電池に、その燃料である水素を供給するには幾つかの方法が考えられるが、一般に改質器において燃料ガスである炭化水素系燃料に対し、触媒を用いて水蒸気改質反応等により水素を製造することが行われる。かかる水素製造において炭化水素を主成分とする原料として、メタノール(MeOH)やメタン等が用いられるが、運搬、貯蔵に適していることから、ジメチルエーテル(DME)も原料として採用されている。
【0003】
また、車載用のDME改質装置のDME改質器は起動性が重視される点から、熱容量の大きな触媒はコンパクト性が重要である。また、DME改質器に用いられる触媒の一つとして、微量COを選択燃焼して除去するCO除去装置に用いられるCO除去触媒がある。COは燃料電池を劣化させる有害な物質であるため、DME改質装置出口ではCO濃度は数十ppm以下にまで除去する必要がある。このCO除去触媒には、Pt、或いはPtにRuを助触媒として用いるなどptを触媒成分としているものが一般的であり、COの選択酸化反応に適した触媒として採用している。(特許文献1、2)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−327868号公報
【特許文献2】特開2003−254911号公報
【0005】
このCO除去触媒は、以下の式(1)、(2)のように可燃性ガス(CO、H2)の酸化反応が競争的に起こっている。
CO+1/2O2 → CO2 ・・・(1)
2+1/2O2 → H2O ・・・(2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、図11は、従来のDME改質装置のCO除去装置の触媒長さ方向と温度との関係を示す図である。図11に示すように、COの酸化反応によりCO除去装置のCO、CO2の濃度は入口部から出口部にかけて一度低くなる。しかし、その後CO除去装置の出口部にかけてCO、O2の濃度が高くなるという傾向がある。これは、CO除去装置に用いられる触媒として、Ptを触媒成分としているものを用いると、未反応のDMEがCO除去装置に入ってきた場合、以下の式(3)、(4)、(5)、(6)のようにPt触媒によって未反応のDMEが分解され、新たなCOを生成するためである。また、未反応のDMEが加水分解され生成したMeOHが分解して、新たなCOを生成するためである。またこのことは無酸素ではCO生成が顕著であることからも明らかである。
DME → CO+CH4+H2 ・・・(3)
DME+H2O → 2CO2+4H2 ・・・(4)
DME+H2O → 2MeOH ・・・(5)
MeOH → CO+2H2 ・・・(6)
【0007】
そのため、CO除去装置に用いられるCO除去触媒としてPtを触媒成分としているものを用いると、新たなCOが生成されるため、COの低減が図れない、という問題がある。
【0008】
また、CO除去装置を2段で構成すると、別途装置を設ける必要があるためコストが増大する、という問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、DMEの分解反応を抑制することによりCO生成の抑制を図り、CO濃度を低減させたDME改質装置、DME燃料を用いた燃料電池システム及びDME燃料の改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、ジメチルエーテル(DME)を改質ガスに改質する改質触媒装置と、前記改質触媒装置で発生したCOを変成するCO変成装置と、残留するCOをCO除去触媒により除去して燃料ガスとするCO除去装置とを備えるDME改質装置において、前記CO除去触媒がメタノール耐久性を有するメタノール耐久性CO除去触媒であることを特徴とするDME改質装置にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とC
O選択酸化触媒部とを有することを特徴とするDME改質装置にある。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とCOをメタン化するメタネーション触媒部とを有することを特徴とするDME改質装置にある。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とCOをメタン化するメタネーション触媒部とを有することを特徴とするDME改質装置にある。
【0014】
第5の発明は、第1乃至4の発明のいずれか1つにおいて、前記メタノール耐久性CO除去触媒が、Ruを主成分とする触媒であることを特徴とするDME改質装置にある。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、Ruを担持する担体が二つ以上の細孔径ピークを
もつ細孔径分布を有するものであることを特徴とするDME改質装置にある。
【0016】
第7の発明は、第2乃至第6の発明のいずれか1つにおいて、前記CO選択酸化触媒部がPtを主成分とする触媒からなることを特徴とするDME改質装置にある。
【0017】
第8の発明は、第3乃至第7の発明のいずれか1つにおいて、前記メタネーション触媒部がRuを主成分とする触媒からなることを特徴とするDME改質装置にある。
【0018】
第9の発明は、第6乃至第8の発明のいずれか1つにおいて、前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有する担体が、Al23、ZrO2、TiO2のいずれか1つからなるものであることを特徴とするDME改質装置にある。
【0019】
第10の発明は、第1乃至第9の発明のいずれか1つのDME改質装置と、改質されたガスを用いて発電する燃料電池とを備えることを特徴とするDME燃料を用いた燃料電池システムにある。
【0020】
第11の発明は、第10の発明において、DME改質装置と燃料電池との間に余剰水分を除去する水分除去部を有することを特徴とするDME燃料を用いた燃料電池システムにある。
【0021】
第12の発明は、第10又は第11の発明において、DME改質装置の温度分布を測定する温度測定部、又はDME改質装置の出口のCO濃度を計測するCO計測部を有することを特徴とするDME燃料を用いた燃料電池システムにある。
【0022】
第13の発明は、DMEの改質を行うに際し、発生する水蒸気量を低減しつつ発生するCO及びメタノールを除去することを特徴とするDME燃料の改質方法にある。
【0023】
第14の発明は、第13の発明において、Ruを主成分とし、該Ruを担持する担体が二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するものであるメタノール耐久性触媒を用いてCOを除去することを特徴とするDME燃料の改質方法にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前記CO除去触媒としてメタノール耐久性CO除去触媒を用いることによりDMEの分解反応を抑制するため、CO生成の抑制を図り、高効率にCO濃度を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、この実施形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態にかかるDME改質装置について、図1を参照して説明する。 図1は、本発明の第1の実施形態にかかるDME改質装置の概略構成を示す図である。 図1に示すように、本実施形態にかかるDME改質装置10は、原燃料であるジメチルエーテル(DME)11を改質ガス12に改質する改質触媒装置13と、前記改質触媒装置13で発生したCOを変成するCO変成装置14と、残留するCOをCO除去触媒15により除去して燃料ガス16とするCO除去装置17とを備えるDME改質装置において、前記CO除去触媒15がメタノール耐久性を有するメタノール耐久性CO除去触媒である。
【0027】
本実施形態では、前記メタノール耐久性CO除去触媒としては、Ruを主成分とする触媒で構成されている。Ruを主成分とする触媒を用いることにより、COの酸化反応を進行すると共に、CO酸化反応が進行する温度条件である100〜200℃の範囲でのDMEの分解反応をも抑制することができる。
【0028】
また、RuはCOの酸化反応の他にメタン化反応も促進する。そのため、前記メタノール耐久性CO除去触媒としてRuを主成分とする触媒を用いることにより、CO酸化反応に加えてメタン化反応も行うことにより、より効率的にCOを除去することができる。
【0029】
更に、前記メタノール耐久性CO除去触媒は、二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有する担体にRuを担持したものを用いると好ましい。
【0030】
ここで、前記CO除去触媒15に担体として用いられる二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18について、図2を参照して詳細に説明する。
図2は、前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18の構成を示す概念図である。
図2に示すように、前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18は、複数の細孔分布を有した構造をしており、これら異なる複数の細孔分布ではそれぞれ以下に述べるような機能を発現している。
本実施形態における二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18として、例えばAl23からなるものを用いている。
前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18の細孔は、4つに分けられる。ここで、4つの細孔を細孔径の小さいほうから順にナノ細孔(10nm以下)、ミクロ細孔(10〜100nm)、メソ細孔(100〜5000nm)、マクロ細孔(5000〜30000nm)とする。
これら複数のそれぞれの細孔では、各々次のような効果がある。
【0031】
前記ナノ細孔(10nm以下)は、含浸した貴金属の活性種を高分散に担持させる役割を果たす。前記ナノ細孔(10nm以下)により、貴金属の活性種の表面積が増加して貴金属の活性種を有効に利用することができる。そのため、従来担体として用いていた触媒に比べて触媒の初期活性を向上させることができ、触媒の反応性を向上させることができる。
【0032】
また、前記ミクロ細孔(10〜100nm)は、酸化還元して触媒が膨張収縮して広がるのを防止する役割を果たす。そのため、従来担体として用いていた触媒に比べて酸化還元により触媒が膨張収縮して広がるのを防止することができるため、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、前記メソ細孔(100〜5000nm)は、ガスを拡散させるためのガス拡散層としての機能を果たす。そのため、従来担体として用いていた触媒に比べて反応ガスが触媒層内部に浸透することができるため、高分散化された貴金属の活性種を有効に利用することができ、触媒の反応性を向上させることができる。また、メソ細孔により触媒内部に析出したカーボンが水蒸気と反応してガス化する過程においてガスが抜けるスペースを形成するため、触媒の粉化をも抑制することができる。
【0034】
また、前記マクロ細孔(5000〜30000nm)は、DSS運転等で発生した凝縮水を吸収して蒸発を促進して蒸発促進層として機能を果たす。そのため、従来担体として用いていた触媒に比べてDSS運転等で発生した凝縮水を吸収して蒸発を促進することができるため、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0035】
また、前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18の構造中に水は浸入するが、DMEは前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18表面にとどまる。よって、DMEと水との加水分解反応を抑制することができるため、MeOHの生成を抑制しCOの生成を抑制することができる。
【0036】
よって、前記メタノール耐久性CO除去触媒に前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18を用いることにより、反応性の向上によりCO酸化反応を促進すると共に、DSSの分解を抑制することができるという利点が得られる。
【0037】
また、前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18の成分としてはアルミナ(Al23)に限定されず、本発明はジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などを用いるようにしてもよい。
【0038】
本発明の第1の実施形態によるDME改質装置は、CO除去触媒15に前記メタノール耐久性CO除去触媒を用いることにより、DME分解反応を抑制することができるので、CO生成が抑制され、CO濃度を低減させることができるという利点が得られる。
【0039】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態にかかるDME改質装置について、図3を参照して説明する。
本実施形態にかかるDME改質装置は、図1に示す第1の実施形態のDME改質装置の構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0040】
図3は、本実施形態におけるDME改質装置の前記CO除去触媒15の構成を示す概略図である。
図3に示すように、本発明の第2の実施形態によるDME改質装置は、前記CO除去触媒15がメタノール耐久性触媒部15−1とCO選択酸化触媒部15−2を有している。
ここで、前記メタノール耐久性触媒部15−1は前段側に配置され、CO選択酸化触媒部15−2は後段側に配置される。
【0041】
本実施形態では、CO選択酸化触媒部15−2はPtを主成分とする触媒で構成されている。Ptを主成分とする触媒を用いることにより、メタノール(MeOH)の酸化反応が進行する。また、MeOHの酸化反応はメタノール耐久性触媒部15−1のCO酸化反応が起こる100〜200℃の範囲において進行する。
【0042】
よって、本実施形態のように、前記メタノール耐久性触媒部15−1の後段側に前記CO選択酸化触媒部15−2を配置することにより、メタノール耐久性触媒部15−1のみでは完全には抑制できないDMEの加水分解反応により生成したMeOHを酸化除去することができるため、CO濃度を低減することができる。
【0043】
また、前記CO選択酸化触媒部15−2にPtを担持する担体としては、疎水性の結晶性シリケート、無定形シリカ、或いは比表面積が10m2/g以下のα-アルミナなどのいずれか一種、またはこれらを組み合わせたものを含む酸化物を用いる。これにより、MeOHの酸化反応を促進できると共に、雰囲気中に含まれる水分の影響を少なくすることができる。
【0044】
更に、PtはDMEに対しては120℃以下では不活性であるため、CO選択酸化触媒部15−2の温度を80℃〜120℃とすることにより、COのみの酸化反応を促進することができる。
【0045】
本発明の第2の実施形態によるDME改質装置によれば、前記メタノール耐久性触媒部15−1の後段側に前記CO選択酸化触媒部15−2を配置することにより、メタノール耐久性触媒部15−1のみでは完全には抑制できないDMEの加水分解反応により生成したMeOHを酸化除去することができるため、スリップしたDMEの加水分解反応によって生成するMeOHの影響を受けることなく高効率にCOを除去することができるという利点が得られる。
【0046】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態にかかるDME改質装置について、図4を参照して説明する。
本実施形態にかかるDME改質装置は、図1に示す第1の実施形態のDME改質装置の構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0047】
図4は、本実施形態におけるDME改質装置の前記CO除去触媒15の構成を示す概略図である。
図4に示すように、本発明の第3の実施形態によるDME改質装置は、前記CO除去触媒15が、メタノール耐久性触媒部15−1と、COをメタン化するメタネーション触媒部15−3を有している。
ここで、前記メタノール耐久性触媒部15−1は前段側に配置され、前記メタネーション触媒部15−3は後段側に配置されている。
【0048】
本実施形態では、メタネーション触媒部15−3がRuを主成分とする触媒を用いている。Ruを主成分とする触媒を用いることにより、COをメタン化してメタン(CH4)にしてCOを除去することができる。
【0049】
よって、メタノール耐久性触媒部15−1の後段側に前記メタネーション触媒部15−3を配置することにより、前記メタノール耐久性触媒部15−1では完全には除去できず、改質ガスに残っているCOをメタン(CH4)にメタン化し、COを除去することができる。
【0050】
また、前記メタノール耐久性触媒部15−1の下流側に配置されているメタネーション触媒部15−3に前記メタノール耐久性触媒部15−1の熱をそのまま利用することができる。
更に、CO除去触媒15に後段側に別途CO除去するためのCO除去装置を設ける必要がないため、CO除去触媒15をコンパクト化することもできる。
【0051】
また、メタネーション触媒部15−3には、二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18にRuを担持したものを用いてもよい。
また、前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体18に担持する金属はRuに限定されず、本発明はNiなどを用いるようにしてもよい。
【0052】
本発明の第3の実施形態によるDME改質装置によれば、前記メタノール耐久性触媒部15−1の後段にメタネーション触媒部15−3を配置することにより、メタノール耐久性触媒部15−1で完全には除去できなかったCOをメタン化して除去することができるため、より高効率にCOを除去することができると共に、CO除去触媒15をコンパクト化することができるという利点が得られる。
【0053】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態にかかるDME改質装置について、図5を参照して説明する。 本実施形態にかかるDME改質装置は、図1に示す第1の実施形態のDME改質装置の構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0054】
図5は、本実施形態におけるDME改質装置の前記CO除去触媒15の構成を示す概略図である。
図5に示すように、本発明の第4の実施形態によるDME改質装置は、前記CO除去触媒15がメタノール耐久性触媒部15−1とCO選択酸化触媒部15−2とCOをメタン化するメタネーション触媒部15−3とを有している。
ここで、前記CO除去触媒15は、前段側から順にメタノール耐久性触媒部15−1、CO選択酸化触媒部15−2、メタネーション触媒部15−3を配置している。
【0055】
前記メタノール耐久性触媒部15−1の後段側に前記CO選択酸化触媒部15−2を配置することにより、メタノール耐久性触媒部15−1では完全には抑制できなかったDMEの加水分解反応によって生成したMeOHを酸化除去することができる。
【0056】
また、前記CO選択酸化触媒部15−2の後段側に前記メタネーション触媒部15−3を配置することにより、メタノール耐久性触媒部15−1及び前記CO選択酸化触媒部15−2では完全には除去できなかったCOをメタン(CH4)にメタン化し、COを除去することができる。
【0057】
本発明の第4の実施形態によるDME改質装置によれば、前記メタノール耐久性触媒部15−1の後段側に前記CO選択酸化触媒部15−2とメタネーション触媒部15−3とを配置とすることにより、DMEの加水分解反応によって生成するMeOHを酸化除去することができると共に、完全には除去できなかったCOをメタン化して除去することができるため、より高効率にCOを除去することができるという利点が得られる。
【0058】
[第5の実施形態]
次に、本発明のDME改質装置を用いた燃料電池システムについて、図6を参照して説明する。
【0059】
図6は、PEFC型燃料電池システムを示す概念図である。DME改質装置の構成は、本発明の第1の実施形態によるDME改質装置と同様であるため、ここでは説明は省略する。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係るPEFC型燃料電池発電システム(PEFC発電システム)1000は、燃料ガス1001を供給する燃料極1002−1と、空気1003を供給する空気極1002−2と、冷媒1004を供給して作動時の電気化学反応に伴う発生熱を除去する冷却部1002−3とからなる燃料電池1002と、燃料極1002−1に供給する燃料ガス1001を原燃料1005から改質するDME改質装置1006とを具備してなり、燃料極1002−1に供給した燃料により発電されて、燃料電池1002から直流電力1020を得ている。この発電システム1000は、図示しない制御システムにより、燃料電池の起動、発電、停止及び警報・保護を全自動で行うようにしている。
【0061】
前記原燃料1005は、DME改質装置1006にて改質される。ここで、前記原燃料1005の改質は、主として改質器1006−1を構成するDME改質触媒装置1006−1Aの改質触媒(耐S改質触媒)における水蒸気改質反応によって行われる。即ち、原燃料1005と水蒸気1009とを混合して改質触媒層に流通させ、改質器バーナ1006−1Bを用いて、例えば700〜800℃の温度で水蒸気改質反応を起こさせることにより行われる。また、改質された改質ガス1007は、CO変成装置1006−2とCO除去装置1006−3とを通過して、燃料ガス1001としている。前記CO除去装置1006−3における前記CO除去触媒としては、メタノール耐久性CO除去触媒、メタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とを有している触媒、メタノール耐久性触媒部とCOをメタン化するメタネーション触媒部を有している触媒、前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とメタネーション触媒部とを有している触媒等を例示することができる。
【0062】
また、前記冷媒1004の冷却ラインL1には、例えば水又は空気等を熱交する放熱部1010が設けられており、燃料電池発電における発熱の際に放熱するようにしている。また、本システムでは、前記放熱部1010等のように、前記燃料電池反応に付随して発生する熱を利用して各種の熱源とするようにしている。
【0063】
図6のシステムにおいて、燃料電池発電の起動時の際には、改質器1006−1を構成する改質器バーナ1006−1Bに原燃料1005を供給してDME改質触媒装置1006−1Aを昇温させて、水蒸気改質に適した所定の温度条件とした後、原燃料1005を供給して改質ガス1007に改質する。その後、改質ガス1007はCO変成装置1006−2及びCO除去装置1006−3を経て、COが除去された燃料ガス1001とされ、燃料極1002−1に供給され、発電が開始される。前記燃料極1002−1からの排出ガスは、未反応ガスを利用するために、改質器バーナ1006−1Bに送られ、ここで燃焼される。
【0064】
また、図6のシステムにおいて、CO除去装置1006−3に温度測定部1006−4を設け、CO除去装置1006−3内のCO除去触媒の触媒層の温度分布を測定する。また、CO除去装置1006−3の出口側にCO計測部1006−5が設けられ、DME改質装置1006の出口のCO濃度を計測するようにしている。
【0065】
本PEFC型燃料電池の発電システムは、CO除去触媒15にDMEの分解反応を抑制するための前記メタノール耐久性CO除去触媒を用いているため、CO生成が抑制され、CO濃度を低減させることが可能となり、CO濃度が低減された安定且つ信頼性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0066】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態にかかるPEFC型燃料電池システムについて、図7を参照して説明する。
本実施形態にかかるPEFC型燃料電池システムは、図6に示す第5の実施形態のPEFC型燃料電池システムの構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0067】
図7は、本実施形態における前記CO除去触媒15の構成を示す概略図である。
図7に示すように、本発明の第6の実施形態によるPEFC型燃料電池システムは、DME改質装置1006と燃料電池1002との間に水分除去部であるドレイン1008を設けている。他の原燃料に比べてDMEを原燃料とする場合では、DMEの酸化によって生成する水が多いため、ドレイン1008により余剰水分1011を除去し、高濃度の水素(H2)を燃料電池1002に供給することができる。
【0068】
本PEFC型燃料電池の発電システムは、更にドレインを設けているため、CO生成を抑制し、CO濃度を低減させると共に、更に余剰水分を排除し高濃度の水素(H2)を安定且つ信頼性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【実施例1】
【0069】
以下、本発明の効果を示す実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
Ruを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1のDMEが存在する場合のCO除去効率について検証する。
【0071】
[Ruを担持させた触媒1及びPtを担持させた触媒である比較触媒1の調製方法]
まず、本実施例において用いられるRuを担持させた触媒1及びPtを担持させた比較触媒1の調製方法について説明する。
その後、Ruを担持させた触媒1及びPtを担持させた比較触媒1の触媒性能の評価結果について説明する。
【0072】
[Ruを担持させた触媒1の調製方法]
まず、Ruを担持させた触媒1の調製方法について説明する。
5wt%ルテニウムを含む硝酸ルテニウム(Ru(NO34 MW 349)水溶液を所定量とり蒸留水300mlに希釈した。そして、担体として蒸発皿に用意してある3mmφの粒状アルミナ担体100gを前記の希釈した5wt%ルテニウムを含む硝酸ルテニウム(Ru(NO34 MW 349)水溶液に浸漬した。その後、ホットプレート上120℃にて水分を蒸発させた。その後500℃で5時間焼成し、Ruを0.1wt%担持して、Ruを担持させた触媒1を得た。
【0073】
[Ptを担持させた比較触媒1の調製方法]
次に、Ptを担持させた比較触媒1の調製方法について説明する。
3wt%白金を含むジニトロジアンミン酸白金水溶液を所定量とり蒸留水300mlに希釈した。そして、担体として蒸発皿に用意してある3mmφの粒状アルミナ担体100gを前記の希釈した3wt%白金を含むジニトロジアンミン酸白金水溶液に浸漬した。その後ホットプレート上120℃にて水分を蒸発させた。その後、500℃で5時間焼成し、Ptを0.1wt%担持して、Ptを担持させた比較触媒1を得た。
【0074】
以上、前記のようにして調整したRuを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1との触媒成分とその担持量及び用いた担体とをまとめた結果を下記表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
[実施例1及び比較例1のCO除去性能の検証]
Ruを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1について、固定床流通式リアクタにより下記条件でCO濃度を測定し、CO除去性能を検証した。
CO濃度及びDME濃度の測定はCO濃度分析計及びFID(Flame Ionization Detector)検出器ガスクロマトグラフで測定した。
【0077】
ここで、Ruを担持させた触媒1が実施例1に該当し、Ptを担持させた比較触媒1が比較例1に該当する。
【0078】
[実施例1及び比較例1での検証に用いた反応条件]
Ruを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1は、入口ガス温度を150℃とし、圧力を0.1MPaとし、GHSVを4000h-1とし、添加O2量を入口CO量の2倍量として検証を行った。
【0079】
Ruを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1について、DMEが存在する場合のCO除去効率について検証する際に用いた反応条件として、温度、圧力、GHSV(Gas Hourly Space Velocity)、ガス組成、添加O2量を下記表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
[実施例1及び比較例1のCO除去性能]
図8は、入口DME濃度と出口CO濃度の関係を示した図である。
図8より、まず入口DME濃度が0%の時の入口CO濃度は3000ppm程度であり、入口DME濃度が3%の時には入口CO濃度は1500ppm程度であった。
また、Ruを担持させた触媒1を用いた実施例1では、入口DME濃度が0%の時には出口CO濃度は4ppm程度であり、入口DME濃度が3%の時には出口CO濃度は35ppm程度であった。
【0082】
一方、Ptを担持させた比較触媒1を用いた比較例1では、入口DME濃度が0%の時には出口CO濃度は1ppm程度であったが、入口DME濃度が3%の時には出口CO濃度は10000ppm程度であった。よってPtを担持させた比較触媒1を用いた場合には、入口DME濃度が高くなるに従って出口CO濃度が高くなり、入口DME濃度が3%の時には入口CO濃度より非常に高い値となることが確認された。これは、CO除去触媒としてPtを用いると未反応のDMEがCO除去触媒で分解されCO濃度が高くなるため、十分なCO除去性能が発現されないためである。
【0083】
本実施例によれば、CO除去触媒としてRuを用いることにより、未反応のDMEがCO除去触媒で分解されCO濃度が高くなることはないため、DMEが残存する際でも十分なCO除去性能を発揮することができる。
【実施例2】
【0084】
次に、細孔径のピークを複数持つ担体にRuを担持させた触媒と触媒内部に複数の細孔を持たないモノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた触媒とのCO除去性能及びDME分解抑制効果を検証した。
【0085】
[細孔径のピークを複数持つ担体1〜6の調製方法]
先ず、本実施例において用いられる細孔径のピークを複数持つ担体1〜6の調製方法と、細孔径のピークを複数持つ担体にRuを担持させた触媒2〜7の調製方法とについて説明する。
尚、比較触媒2は触媒内部に複数の細孔を持たないモノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた触媒である。
その後、細孔径のピークを複数持つ担体にRuを担持させた触媒2〜7及びモノモーダル型α−アルミナ担体にRuを担持させた比較触媒2を用いた触媒性能の評価結果について説明する。
【0086】
[細孔径のピークを複数持つ担体1の調製方法]
最初に、細孔径のピークを複数持つ担体1の調製方法について説明する。
比表面積が8m2/g、平均粒子径が40μmのα−アルミナ粉末1500gと、比表面積が12m2/g、平均粒子径が10μmのα−アルミナ粉末200gをミキサーにて混合した。
さらに、水50mlを添加し、ミキサーにて攪拌、混合した。そしてこの粉末を転動造粒装置を用いて1〜5mm球状にし、直径2〜4mmの範囲の篩で分級し、細孔径のピークを複数持つ担体1を得た。
【0087】
前記細孔径のピークを複数持つ担体1を光学顕微鏡による目視観察を行った。前記細孔径のピークを複数持つ担体1は細孔分布測定から、細孔径分布のピークであるメイン細孔径が0.5〜5μmのメソ細孔及びメイン細孔径が0.03〜0.1μmのミクロ細孔を有していることが確認された。
尚、細孔の比率は細孔分布曲線を積分することで得られる細孔容積の比率で示すことができる。
前記細孔径のピークを複数持つ担体1におけるメソ細孔及びミクロ細孔の比率はそれぞれ1対5であった。
【0088】
[細孔径のピークを複数持つ担体2の調製方法]
次に、細孔径のピークを複数持つ担体2の調製方法について説明する。
比表面積が250m2/g、平均粒子径が15μmのγ−アルミナ粉末100gと、塩基性アルミナゾル30cc(アルミナとして3g)を水300mlと混合した。そして、ボールミル粉砕器にて0.5h粉砕し、平均粒子径が3μmのγ−アルミナ含有スラリー1を得た。このスラリー1を50g(アルミナ含有量12g)と担体1を300g混練した。そして150℃のプレート上で乾燥し、さらに350℃で7時間焼成し、細孔径のピークを複数持つ担体2を得た。
【0089】
前記細孔径のピークを複数持つ担体2を光学顕微鏡及び電子顕微鏡(SEM)の目視観察を行った。
前記細孔径のピークを複数持つ担体2は細孔分布測定から担体1でのメソ細孔、ミクロ細孔に加え、メイン細孔径2nm〜10nmのナノ細孔を有していることが確認された。
尚、前記細孔径のピークを複数持つ担体2におけるメソ細孔、ミクロ細孔及びナノ細孔の比率は前記方法により1対5対5であった。
【0090】
[細孔径のピークを複数持つ担体3の調製方法]
また、細孔径のピークを複数持つ担体3の調製方法について説明する。
担体1及びスラリー1の配分比率を変えて混合することにより、細孔径のピークを複数持つ担体3を得た。
また、前記細孔径のピークを複数持つ担体3のメソ細孔、ミクロ細孔及びナノ細孔の比率は前記方法により1対5対3であった。
【0091】
[細孔径のピークを複数持つ担体4の調製方法]
また、細孔径のピークを複数持つ担体4の調製方法について説明する。
前記細孔径のピークを複数持つ担体3の調整をした時と同様に、担体1及びスラリー1の配分比率を変えて混合することにより、細孔径のピークを複数持つ担体4を得た。
また、前記細孔径のピークを複数持つ担体4のメソ細孔、ミクロ細孔及びナノ細孔の比率は前記方法により1対5対10であった。
【0092】
[細孔径のピークを複数持つ担体5の調製方法]
また、細孔径のピークを複数持つ担体5の調製方法について説明する。
比表面積が8m2/g、平均粒子径が40μmのα−アルミナ粉末1000gと、比表面積が12m2/g、平均粒子径が10μmのα−アルミナ粉末700gをミキサーにて混合した。
その後の担体の調製方法は担体1を調整した場合と同様にして操作し、細孔径のピークを複数持つ担体5を得た。
前記細孔径のピークを複数持つ担体5におけるメソ細孔及びミクロ細孔の比率は1対7であった。
【0093】
[細孔径のピークを複数持つ担体6の調製方法]
また、細孔径のピークを複数持つ担体6の調製方法について説明する。
前記細孔径のピークを複数持つ担体5を200gと60gのスラリー1とを混練した。その後の担体の調製方法は前記細孔径のピークを複数持つ担体2を調整した場合と同様にして操作し、細孔径のピークを複数持つ担体6を得た。
また、細孔径のピークを複数持つ担体6におけるメソ細孔、ミクロ細孔及びナノ細孔の比率は前記方法により1対7対4であった。
【0094】
[細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7の調製方法]
次に細孔径のピークを複数持つ担体にRuを所定量担持させた触媒2〜7の調製方法について説明する。
【0095】
5wt%ルテニウムを含む硝酸ルテニウム(Ru(NO34 MW 349)水溶液を所定量とり蒸留水300mlに希釈した。
上述により調整した前記細孔径のピークを複数持つ担体1〜6のそれぞれ100gを前記5wt%ルテニウムを含む硝酸ルテニウム(Ru(NO34 MW 349)水溶液に浸漬した。その後、水分を蒸発させ350℃で11h焼成し、前記細孔径のピークを複数持つ担体1〜6に以下に示す所定量のRuを担持させた触媒2〜7を得た。
【0096】
前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を得た。また前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を得た。また細孔径のピークを複数持つ担体3にRuを0.5wt%担持させた触媒4を得た。また前記細孔径のピークを複数持つ担体4にRuを2.0wt%担持させた触媒5を得た。また前記細孔径のピークを複数持つ担体5にRuを3.0wt%担持させた触媒6を得た。また前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を得た。
【0097】
[モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2の調製方法]
次に、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2の調製方法について説明する。
比表面積が8m2/g、平均粒子径が40μmのα−アルミナ粉末を転動造粒により3mmに成型し、モノモーダル型α−アルミナである担体を得た。このモノモーダル型α−アルミナである担体にRuを1.0wt%担持し、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2を得た。
【0098】
以上、前記のようにして調整した細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7と、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2との触媒成分とその担持量及び用いた担体とをまとめた結果を前記表1に示す。
【0099】
[実施例2−1〜1−6及び比較例2のCO除去性能及びDME分解抑制効果の検証]
前記のようにして調整した細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7と、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2について、固定床流通式リアクタにより下記条件でCO濃度及びDME濃度を測定し、CO除去性能及びDME分解抑制効果を検証した。
CO濃度及びDME濃度の測定はCO濃度分析計及びFID(Flame Ionization Detector)検出器ガスクロマトグラフで測定した。そして、下記数式(I)、(II)より、CO除去反応率及びDME分解率を算出した。
CO除去反応率(%)=1−(未反応CO濃度(ppm))/(入口CO濃度(ppm))×100 ・・・(I)
DME改質率(%)=1−(未反応DME濃度(%))/(入口DME濃度(%))×100 ・・・(II)
尚、以下の実施例3及び比較例1、2においてもCO濃度及びDME濃度を測定する際には、同様にCO除去反応率(%)及びDME分解率(%)を算出し、触媒性能の有無を判断した。
【0100】
ここで、本実施例及び比較例では細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7が実施例2−1〜2−6に該当し、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた触媒である比較触媒2が比較例2に該当する。
【0101】
[実施例2−1〜1−6及び比較例2での検証に用いた反応条件]
実施例2−1〜1−6及び比較例2は、入口ガス温度を120〜200℃とし、圧力を0.1MPaとし、GHSVを4000h-1とし、添加O2量を入口CO量の2倍量として検証を行った。
【0102】
実施例2−1〜1−6及び比較例2での検証に用いた反応条件として、温度、圧力、GHSV、ガス組成、添加O2量を下記表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
[実施例2−1〜1−6及び比較例2のCO除去性能及びDME分解抑制効果]
細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7を用いた実施例2−1〜2−6とモノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2における触媒性能として、前記条件で入口ガス温度を120℃、150℃、200℃の3通りとした場合におけるCO濃度及びDME濃度を測定して算出したCO除去反応率(%)及びDME分解率(%)を下記表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
表4より、CO除去反応率(%)については、細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7を用いた実施例2−1〜2−6では、入口ガス温度が高いほどCO除去反応率(%)が高くなる傾向があり、入口ガス温度が最も高い200℃のときにはCO除去反応率(%)が95%前後であった。
一方、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2を用いた比較例2では、入口ガス温度が150℃のときがCO除去反応率(%)が49%であり、最も高い値であった。
【0107】
よって、CO除去触媒の担体として細孔径のピークを複数持つ担体を用いることにより、モノモーダル型α−アルミナ担体を用いた場合よりもCO除去反応率(%)を非常に高くすることができることが確認された。
【0108】
また、DME分解率(%)について、細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7を用いた実施例2−1〜2−6では、入口ガス温度が高いほどDME分解率(%)が高くなる傾向があった。入口ガス温度が最も低い120℃のときにはDME分解率(%)が10%前後であり、入口ガス温度が最も高い200℃のときでもDME分解率(%)が20%前後であった。
【0109】
一方、モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2を用いた比較例2でも、入口ガス温度が高いほどDME分解率(%)が高くなる傾向があった。入口ガス温度が最も低い120℃のときにはDME分解率(%)が39%であり、入口ガス温度が最も高い200℃のときにはDME分解率(%)が最も高く73%であった。
【0110】
よって、CO除去触媒に担体として細孔径のピークを複数持つ担体を用いることにより、モノモーダル型α−アルミナ担体を用いた場合よりもDMEの分解を抑制することができることが確認された。また入口ガス温度が低いほどDMEの分解を抑制することができることが確認された。
【0111】
本実施例によれば、DMEの分解反応を抑制することによりCO生成を抑制し、CO濃度を低減することができる。
【実施例3】
【0112】
[実施例3のための予備試験]
ここで、メタノール耐久性触媒部とCOを選択酸化するCO選択酸化触媒部を組み合わせた実施例3について説明するにあたり、まずPtを担持させた触媒のMeOHを酸化除去する効果について検証する。
その後、ガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体1〜6に所定量のRuを担持させた触媒2〜7又はモノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2からなるメタノール耐久性触媒部を配置し、ガス流れ後段部に所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11又はγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3からなるCO選択酸化触媒部を配置した実施例3について説明する。
【0113】
[所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11の調製方法]
まず、所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11の調製方法について説明する。
最初にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8の調製方法について説明する。
3wt%の白金を含むジニトロジアンミン酸白金水溶液を所定量とり蒸留水300mlに希釈した。そして、担体としてMFI型ゼオライトの粒状成型品100gを前記の希釈した3wt%の白金を含むジニトロジアンミン酸白金水溶液に浸漬した。その後、水分を蒸発させ300℃で8h焼成し、Ptを0.3wt%担持させ、MFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を得た。
【0114】
次に、Y型ゼオライトにPtを担持させた触媒9の調製方法について説明する。
触媒を担持する担体としてY型ゼオライトの粒状成型品100gを用いて前記の希釈した3wt%の白金を含むジニトロジアンミン酸白金水溶液に浸漬した。その後の触媒の調製方法については、触媒8を調整した方法と同様にして操作し、Ptを0.5wt%担持させ、Y型ゼオライトにPtを担持させた触媒9を得た。
【0115】
また、無定形シリカにPtを担持させた触媒10の調製方法について説明する。
触媒を担持する担体として、比表面積が430m2/gの無定形シリカ(シリカゲル)の粒状担体(粒径3mm)を用いた。その後の触媒の調製方法については、触媒8を調整した方法と同様にして操作し、Ptを1.0wt%担持させ、無定形シリカにPtを担持させた触媒10を得た。
【0116】
また、α−アルミナにPtを担持させた触媒11の調整方法について説明する。
触媒を担持する担体として、比表面積が8m2/gのα−アルミナの粒状担体(粒径3mm)を用いた。その後の触媒の調製方法については、触媒8を調整した方法と同様にして操作し、Ptを2.0wt%担持させ、α−アルミナにPtを担持させた触媒11を得た。
【0117】
[γ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3の調製方法]
次に、γ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3の調製方法について説明する。
比表面積が220m2/gのγ−アルミナ粉末を円球状に打状成型して担体を得た。このγ−アルミナである担体にPtを0.5wt%担持し、γ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3を得た。
【0118】
以上、前記のようにして所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及びγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3との触媒成分とその担持量及び用いた担体とをまとめた結果を前記表1に示す。
【0119】
[所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及びγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3のCO除去性能及びMeOH酸化性能の検証]
所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及び比較触媒3について、前記同様固定床流通式リアクタにより下記条件でCO濃度及びMeOH濃度を測定し、CO除去性能及びMeOH酸化性能を検証した。
CO濃度及びMeOH濃度の測定はCO濃度分析計及びFID(Flame Ionization Detector)検出器ガスクロマトグラフで測定した。そして、下記数式(I)、(III)より、CO除去反応率及びMeOH酸化率を算出した。
CO除去反応率(%)=1−(未反応CO濃度(ppm))/(入口CO濃度(ppm))×100 ・・・(I)
MeOH酸化率(%)=1−(未反応MeOH濃度(%)/(入口MeOH濃度(%))×100 ・・・(III)
【0120】
[所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及びγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3での検証に用いた反応条件]
所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及びγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3は、入口ガス温度を80〜120℃とし、圧力を0.1MPaとし、GHSVを4000h-1とし、添加O2量を入口CO量の2倍量として検証を行った。
【0121】
所定の担体にPtを担持させた触媒8〜10及びγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3での検証に用いた反応条件として、温度、圧力、GHSV、原料ガス組成、添加O2量を下記表5に示す。
【0122】
【表5】

【0123】
[所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及びγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3のCO除去性能及びMeOH酸化性能]
所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11及び比較触媒3における触媒性能として、前記条件で入口ガス温度を80℃と120℃とした場合におけるCO濃度及びMeOH濃度を測定して算出したCO除去反応率(%)、MeOH酸化率(%)を下記表6に示す。
【0124】
【表6】

【0125】
表6より、CO除去反応率(%)については、所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11では、入口ガス温度が80、120℃いずれの場合でも安定してCO除去反応率(%)が90%前後であった。
一方、γ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3では、入口ガス温度が高くなるほどCO除去反応率(%)が高くなる傾向にあり、入口ガス温度が80℃の時はCO除去反応率(%)が39%であり、入口ガス温度が120℃の時はCO除去反応率(%)が51%であった。
【0126】
よって、CO除去触媒の担体として、ゼオライト、シリカ或いはαアルミナ等を用いることにより、ゼオライト、シリカ或いはαアルミナ等の担体を用いない場合よりもCO除去反応率(%)を非常に高くすることができ、安定してCOを高効率で酸化除去できることが確認された。
【0127】
また、MeOH酸化率(%)について、所定の担体にPtを担持させた触媒8〜11は入口ガス温度が80℃のときにMeOH酸化率(%)が90%以上であって、入口ガス温度が120℃のときにはMeOH酸化率(%)が99%前後であった。
一方、Ptを担持させた触媒である比較触媒3では、入口ガス温度が高いほどMeOH酸化率(%)が高くなる傾向があった。入口ガス温度が最も低い80℃のときにはMeOH酸化率(%)が27%であり、入口ガス温度が最も高い120℃のときにはMeOH酸化率(%)が44%であった。
【0128】
よって、CO除去触媒の担体として、ゼオライト、無定形シリカ或いはα-アルミナ等を用いることにより、ゼオライト、無定形シリカ或いはα-アルミナ等の担体を用いない場合よりもMeOH酸化率(%)を非常に高くすることができ、安定してMeOHを高効率で酸化除去しCOを除去することができることが確認された。
【0129】
[実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3における触媒性能の検証]
次に、ガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7又はモノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2からなるメタノール耐久性触媒部を配置し、ガス流れ後段部に所定の担体にPtを所定量担持させた触媒8〜11又はγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3からなるCO選択酸化触媒部を配置した実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3の触媒性能について検証する。
【0130】
[実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3の触媒の配置方法]
実施例3−1では、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記MFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置した。
【0131】
同様に、実施例3−2では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記Y型ゼオライトにPtを担持させた触媒9を配置した。
【0132】
また、実施例3−3では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体3にRuを0.5wt%担持させた触媒4を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記無定形シリカにPtを担持させた触媒10を配置した。
【0133】
また、実施例3−4では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体4にRuを2.0wt%担持させた触媒5を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記α−アルミナにPtを担持させた触媒11を配置した。
【0134】
また、実施例3−5では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体5にRuを3.0wt%担持させた触媒6を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記α−アルミナにPtを担持させた触媒11を配置した。
【0135】
また、実施例3−6では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記α−アルミナにPtを担持させた触媒11を配置した。
【0136】
また、比較例3−1では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記γ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3を配置した。
【0137】
また、比較例3−2では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記モノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記α−アルミナにPtを担持させた触媒11を配置した。
【0138】
また、比較例3−3では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部に前記γ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3を配置した。
【0139】
また、実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に配置する触媒とガス流れ後段部に配置した触媒の触媒量が合計で100ccとなるようにした。
【0140】
実施例3−1、3−5、3−6及び比較例3−1〜3−3では、ガス流れ前段部に配置する触媒を50ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を50ccとした。
【0141】
また、実施例3−2では、ガス流れ前段部に配置する触媒を40ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を60ccとした。
【0142】
また、実施例3−3では、ガス流れ前段部に配置する触媒を30ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を70ccとした。
【0143】
また、実施例3−4では、ガス流れ前段部に配置する触媒を70ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を30ccとした。
【0144】
前記のように触媒を配置して操作を行った実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3の触媒の配置方法を下記表7に示す。
【0145】
【表7】

【0146】
[実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3での検証に用いた反応条件]
実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3は、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部では、入口ガス温度を120℃、150℃、200℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、添加O2量を1.6リットル/hとし、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部では、入口ガス温度を80℃、100℃、120℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、添加O2量を0.8リットル/hとして検証を行った。そして、トータルでの添加O2量は入口CO量の1.5倍量とし、トータルGHSVを4,000h-1とし、トータルガス量を400リットル/hとして検証を行った。
【0147】
実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3での検証に用いた反応条件として、ガス流れ前段部とガス流れ後段部との入口ガス温度、圧力、添加O2量、入口ガス組成、トータルGHSV、トータルガス量を下記表8に示す。
【0148】
【表8】

【0149】
実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3では、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部とガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部との入口ガス温度は、以下の3通りで行った。
【0150】
1つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を80℃とした場合である。2つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を150℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした場合である。3つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を200℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を120℃とした場合である。
【0151】
[実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3の出口CO濃度(ppm)]
実施例3−1〜3−6及び比較例3−1〜3−3での触媒性能として、前記条件でガス流れ前段部とガス流れ後段部とを前記3通りの場合の入口ガス温度条件における出口CO濃度(ppm)を測定した。
反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを所定量担持させた触媒2〜7のいずれかの触媒を配置し、ガス流れ後段部にはPtを所定量担持させた触媒8〜11のいずれかの触媒を配置した実施例3−1〜3−6の出口CO濃度(ppm)を下記表9に示す。
【0152】
また、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部にモノモーダル型α−アルミナにRuを担持させた比較触媒2を配置し、ガス流れ後段部にはγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3又はα−アルミナにPtを担持させた触媒11を配置した比較例3−1及び3−2の出口CO濃度(ppm)を下記表9に示す。
【0153】
また、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ後段部にはγ−アルミナにPtを担持させた比較触媒3を配置した実施例3−3における出口CO濃度(ppm)を下記表9に示す。
【0154】
【表9】

【0155】
表9より、前記のように触媒を配置した実施例3−1〜3−6では、ガス流れ前段温度が120℃であってガス流れ後段温度が80℃の実施例3−1−1、3−2−1、3−3−1、3−4−1、3−5−1、3−6−1では、出口CO濃度(ppm)は平均して5ppm程度であり、最大でも7ppmであった。
また、ガス流れ前段温度が150℃であってガス流れ後段温度が100℃の実施例3−1−2、3−2−2、3−3−2、3−4−2、3−5−2、3−6−2では、出口CO濃度(ppm)は平均して2ppm程度であり、最大でも3ppmであった。
また、ガス流れ前段温度が200℃であってガス流れ後段温度が120℃の実施例3−1−3、3−2−3、3−3−3、3−4−3、3−5−3、3−6−3では、出口CO濃度(ppm)は1ppm以下であった。
よって、ガス流れ前段温度及びガス流れ後段温度が高くなるほど出口CO濃度(ppm)は低減する傾向であったことが確認された。
【0156】
一方、比較例3−1では、ガス流れ前段温度が120℃であってガス流れ後段温度が80℃の比較例3−1−1でも出口CO濃度(ppm)は160ppmであった。また、ガス流れ前段温度が150℃であってガス流れ後段温度が100℃の比較例3−1−2では、出口CO濃度(ppm)は平均して125ppmであった。また、ガス流れ前段温度が200℃であって、ガス流れ後段温度が120℃の比較例3−1−3でも出口CO濃度(ppm)は79ppmあり、実施例3−1〜3−6に比べて出口CO濃度(ppm)は非常に高かったことが確認された。
【0157】
また、比較例3−2では、ガス流れ前段温度が120℃であってガス流れ後段温度が80℃の比較例3−2−1では出口CO濃度(ppm)は77ppmであった。また、ガス流れ前段温度が150℃であってガス流れ後段温度が100℃の比較例3−2−2では、出口CO濃度(ppm)は平均して52ppmであった。また、ガス流れ前段温度が200℃であってガス流れ後段温度が120℃の比較例3−2−3でも出口CO濃度(ppm)は19ppmあり、実施例3−1〜3−6に比べて出口CO濃度(ppm)は非常に高かったことが確認された。
【0158】
また、比較例3−3では、ガス流れ前段温度が120℃であってガス流れ後段温度が80℃の比較例3−3−1では出口CO濃度(ppm)は105ppmであった。また、ガス流れ前段温度が150℃であってガス流れ後段温度が100℃の比較例3−3−2では、出口CO濃度(ppm)は平均して80ppmであった。また、ガス流れ前段温度が200℃であってガス流れ後段温度が120℃の比較例3−3−3でも出口CO濃度(ppm)は22ppmあり、実施例3−1〜3−6に比べて出口CO濃度(ppm)は非常に高かったことが確認された。
【0159】
この結果より、CO除去触媒に用いる担体として細孔径のピークを複数持つ担体を用いた場合のほうが、細孔径のピークを複数持つ担体を用いない場合よりも、より高効率でCOを除去できるため、出口CO濃度(ppm)を非常に低くすることができることが確認された。
【0160】
また、ガス流れ前段部及びガス流れ後段部のいずれも高温の場合の方が、ガス流れ前段部及びガス流れ後段部のいずれも低温の場合よりも、COの除去効率が高いため出口CO濃度(ppm)を低くすることができることが確認された。
【0161】
本実施例によれば、残余のDMEの影響をうけることなく、より高効率でCOを除去できるため、出口CO濃度(ppm)を非常に低くすることができる。
【実施例4】
【0162】
[実施例4及び実施例5のための予備試験]
ここで、メタノール耐久性触媒部とCOをメタン化してCO除去するメタネーション触媒部を組み合わせた実施例3について説明するにあたり、まずRuを担持させた触媒がCOをメタン化してCO除去する効果について検証する。
その後、ガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを担持させた触媒2〜7からなるメタノール耐久性触媒部を配置し、ガス流れ後段部にCOをメタン化する触媒からなるメタネーション触媒部を配置した実施例4のCO除去性能及びMeOHを酸化除去する効果について検証する。
また、ガス流れ前段部から順に、細孔径のピークを複数持つ担体1〜6にRuを担持させた触媒2〜7からなるメタノール耐久性触媒部と、所定の担体にPtを所定量担持させた触媒8〜11からなるCO選択酸化触媒部と、COをメタン化する触媒からなるメタネーション触媒部とを配置した実施例5のCO除去性能及びMeOHを酸化除去する効果についても検証する。
また、本予備試験で用いたRuを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1の触媒成分とその担持量及び用いた担体とをまとめた結果は前記表1に示す。
【0163】
[Ruを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1での検証に用いた反応条件]
Ruを担持させた触媒1は、入口ガス温度を110℃とし、圧力を0.1MPaとし、GHSVを8000h-1として検証を行った。
【0164】
本予備試験において、Ruを担持させた触媒1での検証に用いた反応条件として、ガス組成、圧力、入口ガス温度、GHSV、用いた触媒を下記表10に示す。
【0165】
【表10】

【0166】
また、Ptを担持させた比較触媒1は、圧力を0.1MPaとし、GHSVを8000h-1とし、O2に対するCOの比(O2/CO)を1.5倍して検証を行った。
【0167】
本予備試験において、Ptを担持させた触媒である比較触媒1での検証に用いた反応条件として、ガス組成、圧力、GHSV、O2/CO、用いた触媒を下記表11に示す。
【0168】
【表11】

【0169】
[比較例2で用いたRuを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1の出口CO濃度(ppm)]
比較例2で用いたRuを担持させた触媒1とPtを担持させた比較触媒1の触媒性能として、前記条件で出口CO濃度(ppm)を測定した。
図9は、Ruを担持させた触媒1を用いて無酸素下での温度と出口CO濃度の関係を示した図である。
図9より、温度が100℃の時には出口CO濃度(ppm)が100ppmであり、温度が180℃の時には出口CO濃度(ppm)10ppm前後にまで低下し、温度が上昇するに従い出口CO濃度が低くなった。
よって、Ruを担持させた触媒1を用いることにより、出口CO濃度を低減させることができることが確認された。
【0170】
また、140℃を超えたところから出口CO濃度(ppm)が急激に減少し温度が180℃の時には出口CO濃度(ppm)10ppm前後にまで低下していった。これは、メタネーションは160℃を超えると、反応が急激に生じるためである。
【0171】
また、メタネーションは160℃を超えると、反応が急激に生じることから、Ruを担持してなる触媒を用いてCOをメタン化しCO除去を行う場合には、高温でのCO除去に適していると言える。よって、CO除去触媒15としてメタノール耐久性触媒部15−1の後段側にメタネーション触媒15−3を配置することにより、前段側に配置したメタノール耐久性触媒15−1で高まった温度を冷却する必要なくそのままメタネーション触媒15−3でCO除去を行うのに利用できるため、効率的に熱を利用することができる。
【0172】
また、図10はPtを担持させた比較触媒1を用いてDMEが1%ある場合とDMEがない場合の温度と出口CO濃度の関係を示した図である。
図10より、100〜180℃の範囲内でDMEが1%存在する場合では、出口CO濃度が100ppmから200ppmに増加した。
また、DMEが存在しない場合でも出口CO濃度が20ppmから100ppm前後に増加した。
【0173】
よって、CO除去触媒15としてPtを用いた場合には燃料ガス中のCOを除去するため、CO除去触媒15の後段側に再度CO除去装置を置く必要があると言える。また、再度CO除去装置を置く場合には空気供給部等の設置が必要となり高コストとなると共に、空気供給により水素濃度も低減することになる。
【0174】
よって、前段のメタノール耐久性触媒部の後段側にメタネーション触媒部を用いることにより、低コストかつ水素濃度を低下させない手法として空気(酸素)を供給することなくCOをメタネーションしてCO除去することができることが確認された。
【0175】
[実施例4−1〜4−3及び比較例4における触媒性能の検証]
次に、ガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体にRuを所定量担持させた触媒からなるメタノール耐久性触媒部を配置し、ガス流れ前段部にCOをメタン化するメタネーション触媒部を配置した実施例4−1〜4−3の触媒性能について検証する。また、ガス流れ前段部及びガス流れ後段部にCOをメタン化する触媒からなるメタネーション触媒部のみを配置した比較例4の触媒性能についても併せて検証する。
【0176】
[実施例4−1〜4−3及び比較例4の触媒の配置方法]
実施例4−1では、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
【0177】
同様に、実施例4−2では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部には前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
【0178】
また、実施例4−3では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部には前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
また、比較例4では、Ruを0.1wt%担持させた触媒1のみを配置した。
【0179】
また、実施例4−1〜4−3では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に配置する触媒とガス流れ後段部に配置した触媒の触媒量が合計で100ccとなるようにした。また、比較例4で配置した触媒の触媒量は100ccとした。
【0180】
実施例4−1では、ガス流れ前段部に配置する触媒を20ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を80ccとした。
【0181】
また、実施例4−2では、ガス流れ前段部に配置する触媒を40ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を60ccとした。
【0182】
また、実施例4−3では、ガス流れ前段部に配置する触媒を50ccとし、ガス流れ後段部に配置する触媒を50ccとした。
【0183】
また、比較例4では、配置したRuを0.1wt%担持させた触媒1を100ccとした。
【0184】
前記のように触媒を配置して操作を行った実施例4−1〜4−3及び比較例4の触媒の配置方法を下記表12に示す。
【0185】
【表12】

【0186】
[実施例4−1〜4−3及び比較例4での検証に用いた反応条件]
実施例4−1〜4−3は、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部では、入口ガス温度を120℃、140℃、160℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、添加O2量を1.6リットル/hとし、ガス流れ後段部のCO選択酸化触媒部では、入口ガス温度を110℃、130℃、150℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとして検証を行った。そして、ガス量を400リットル/hとして検証を行った。
【0187】
また、比較例4は、入口ガス温度を120℃、140℃、160℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、ガス量を400リットル/hとして検証を行った。
【0188】
実施例4−1〜4−3及び比較例4での検証に用いた反応条件として、メタノール耐久性触媒部とメタネーション触媒部との入口ガス温度、添加O2量、圧力、ガス量、ガス組成を下記表13に示す。
【0189】
【表13】

【0190】
実施例4−1〜4−3では、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部とガス流れ後段部のメタネーション触媒部との入口ガス温度は、以下の3通りで行った。
【0191】
1つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を110℃とした場合である。2つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を130℃とした場合である。3つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を150℃とした場合である。
【0192】
また、比較例4では、入口ガス温度を120℃、140℃、160℃の3通りで行った。
【0193】
[実施例4−1〜4−3及び比較例4の出口CO濃度(ppm)]
実施例4−1〜4−3での触媒性能として、前記条件でガス流れ前段部とガス流れ後段部とを前記3通りの場合の入口ガス温度条件における出口CO濃度(ppm)を測定した。
【0194】
また、比較例4でも、前記条件で前記3通りの場合の入口ガス温度における出口CO濃度(ppm)を測定した。
【0195】
前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例4−1の出口CO濃度(ppm)を下記表14に示す。
【0196】
また、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部には前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例4−2の出口CO濃度(ppm)を下記表14に示す。
【0197】
また、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部には前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例4−3の出口CO濃度(ppm)を下記表14に示す。
【0198】
また、Ruを0.1wt%担持させた触媒1のみを配置した比較例4の出口CO濃度(ppm)も下記表14に示す。
【0199】
【表14】

【0200】
表14より、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例4−1においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を110℃とした実施例4−1−1と、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を130℃とした実施例4−1−2の出口CO濃度(ppm)は7ppmであった。
【0201】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を150℃とした実施例4−1−3の出口CO濃度(ppm)は6ppmであった。
【0202】
また、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部には前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例4−2においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を110℃とした実施例4−2−1の出口CO濃度(ppm)は8ppmであった。
【0203】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃として、ガス流れ後段部の入口ガス温度を130℃とした実施例4−2−2と、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を150℃とした実施例4−2−3の出口CO濃度(ppm)は7ppmであった。
【0204】
また、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部には前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例4−3においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を110℃とした実施例4−3−1の出口CO濃度(ppm)は10ppmであった。
【0205】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を130℃とした実施例4−3−2の出口CO濃度(ppm)は8ppmであった。
【0206】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を150℃とした実施例4−3−3の出口CO濃度(ppm)は7ppmであった。
【0207】
一方、Ruを0.1wt%担持させた触媒1のみを配置した比較例4において、触媒層の入口ガス温度を120℃とした比較例4−1の出口CO濃度(ppm)は100ppmであった。また、触媒層の入口ガス温度を140℃とした比較例4−2の出口CO濃度(ppm)は88ppmであった。また、触媒層の入口ガス温度を160℃とした比較例4−3の出口CO濃度(ppm)は62ppmであった。
【0208】
この結果より、CO除去触媒に用いる触媒としてメタノール耐久性触媒部とメタネーション部を組み合わせた触媒を用いた場合のほうが、メタネーション部のみから触媒を用いる場合よりも、より高効率でCOを除去できるため、DMEが存在する場合においてもCOを10ppm以下にすることができ、出口CO濃度(ppm)を非常に低くすることができることが確認された。
【0209】
また、ガス流れ前段部及びガス流れ後段部のいずれも高温の場合の方が、ガス流れ前段部及びガス流れ後段部のいずれも低温の場合よりも、COの除去効率が高いため出口CO濃度(ppm)を低くすることができることが確認された。
【0210】
本実施例によれば、残余のDMEの影響をうけることなく、より高効率でCOを除去できるため、出口CO濃度(ppm)を非常に低くすることができる。
【実施例5】
【0211】
次に、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に細孔径のピークを複数持つ担体にRuを所定量担持させた触媒からなるメタノール耐久性触媒部を配置し、ガス流れ中段部に所定の担体にPtを所定量担持させた触媒からなるCO選択酸化触媒部を配置し、ガス流れ後段部にCOをメタン化する触媒からなるメタネーション触媒部を配置した実施例5−1〜5−3の触媒性能について検証する。また、ガス流れ前段部に所定の担体にPtを所定量担持させた触媒からなるCO選択酸化触媒部を配置し、ガス流れ後段部にCOをメタン化する触媒からなるメタネーション触媒部とを配置した比較例5の触媒性能についても併せて検証する。
【0212】
[実施例5−1〜5−3及び比較例5の触媒の配置方法]
実施例5−1では、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
【0213】
また、実施例5−2では、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部にY型ゼオライトにPtを担持させた触媒9を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
【0214】
また、実施例5−3では、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部15−1に前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部15−2に無定形シリカにPtを担持させた触媒10を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部15−3にガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
【0215】
また、比較例5では、前記反応管のガス流れ方向に対して前段部のCO選択酸化触媒部にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置し、後段部のメタネーション触媒部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した。
【0216】
また、実施例5−1〜5−3では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部から順に、メタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とメタネーション触媒部とに配置した触媒の触媒量が合計で100ccとなるようにした。また、比較例5では、反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部に配置した触媒とガス流れ後段部に配置した触媒の触媒量が合計で100ccとなるようにした。
【0217】
実施例5−1では、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に配置する触媒を20ccとし、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部に配置する触媒を20ccとし、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部に配置する触媒を60ccとした。
【0218】
また、実施例5−2では、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に配置する触媒を40ccとし、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部に配置する触媒を10ccとし、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部に配置する触媒を50ccとした。
【0219】
また、実施例5−3では、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に配置する触媒を50ccとし、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部に配置する触媒を10ccとし、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部に配置する触媒を40ccとした。
【0220】
また、比較例5では、CO選択酸化触媒部に配置する触媒を50ccとし、メタノール耐久性触媒部に配置する触媒を50ccとした。
【0221】
前記のように触媒を配置して操作を行った実施例5−1〜5−3及び比較例5の触媒の配置方法を下記表15に示す。
【0222】
【表15】

【0223】
[実施例5−1〜5−3及び比較例5での検証に用いた反応条件]
実施例5−1〜5−3は、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部では、入口ガス温度を120℃、140℃、160℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、添加O2量を1.2リットル/hとした。ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部では、入口ガス温度を100℃、120℃、140℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、添加O2量を0.6リットル/hとして検証を行った。ガス流れ後段部のメタネーション触媒部では、入口ガス温度を100℃、120℃、140℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとして検証を行った。そして、ガス量を400リットル/hとして検証を行った。
【0224】
また、比較例5は、ガス流れ前段部のCO選択酸化触媒部では、入口ガス温度を120℃、140℃、160℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとし、添加O2量を0.6リットル/hとし、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部では、入口ガス温度を100、120、140℃の3通りとし、圧力を0.1MPaとして検証を行った。そして、ガス量を400リットル/hとして検証を行った。
【0225】
実施例5−1〜5−3及び比較例5での検証に用いた反応条件として、メタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とメタネーション触媒部との入口ガス温度、添加O2量、圧力、ガス量、ガス組成を下記表16に示す。
【0226】
実施例5−1〜5−3では、ガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部とガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部とガス流れ後段部のメタネーション触媒部との入口ガス温度は、以下の3通りで行った。
【0227】
1つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を100℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした場合である。2つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を120℃とした場合である。3つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を140℃とした場合である。
【0228】
また、比較例5では、以下の3通りで行った。
1つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした場合である。2つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を120℃とした場合である。3つ目が、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を140℃とした場合である。
【0229】
【表16】

【0230】
[実施例5−1〜5−3及び比較例5の出口CO濃度(ppm)]
実施例5−1〜5−3での触媒性能として、前記条件でガス流れ前段部とガス流れ中段部とガス流れ後段部とを前記3通りの場合の入口ガス温度条件における出口CO濃度(ppm)を測定した。
【0231】
また、比較例5でも、前記条件でガス流れ前段部とガス流れ後段部とを前記3通りの場合の入口ガス温度における出口CO濃度(ppm)を測定した。
【0232】
前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例5−1の出口CO濃度(ppm)を下記表17に示す。
【0233】
また、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部にY型ゼオライトにPtを担持させた触媒9を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例5−2の出口CO濃度(ppm)を下記表17に示す。
【0234】
また、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部に無定形シリカにPtを担持させた触媒10を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例5−3の出口CO濃度(ppm)を下記表17に示す。
【0235】
また、前記反応管のガス流れ方向に対して前段部のCO選択酸化触媒部にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置し、後段部のメタネーション触媒部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した比較例5の出口CO濃度(ppm)も下記表17に示す。
【0236】
【表17】

【0237】
表17より、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体1にRuを2wt%担持させた触媒2を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例5−1においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を100℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした実施例5−1−1の出口CO濃度(ppm)は2ppmであった。
【0238】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃として、ガス流れ中段部の入口ガス温度を120℃として、ガス流れ後段部の入口ガス温度を120℃とした実施例5−1−2の出口CO濃度(ppm)は5ppmであった。
【0239】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃として、ガス流れ中段部の入口ガス温度を140℃として、ガス流れ後段部の入口ガス温度を140℃とした実施例5−1−3の出口CO濃度(ppm)は6ppmであった。
【0240】
また、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体2にRuを1.0wt%担持させた触媒3を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部にY型ゼオライトにPtを担持させた触媒9を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例5−2においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を100℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした実施例5−2−1の出口CO濃度(ppm)は3ppmであった。
【0241】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃として、ガス流れ中段部の入口ガス温度を120℃として、ガス流れ後段部の入口ガス温度を120℃とした実施例5−2−2出口CO濃度(ppm)は6ppmであった。
【0242】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃として、ガス流れ中段部の入口ガス温度を140℃として、ガス流れ後段部の入口ガス温度を140℃とした実施例5−2−3出口CO濃度(ppm)は7ppmであった。
【0243】
また、前記反応管のガス流れ方向に対してガス流れ前段部のメタノール耐久性触媒部に前記細孔径のピークを複数持つ担体6にRuを0.2wt%担持させた触媒7を配置し、ガス流れ中段部のCO選択酸化触媒部に無定形シリカにPtを担持させた触媒10を配置し、ガス流れ後段部のメタネーション触媒部にガス流れ後段部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した実施例5−3においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を100℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした実施例5−3−1の出口CO濃度(ppm)は3ppmであった。
【0244】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を120℃とした実施例5−3−2の出口CO濃度(ppm)は5ppmであった。
【0245】
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ中段部の入口ガス温度を140℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を140℃とした実施例5−3−3の出口CO濃度(ppm)は7ppmであった。
【0246】
一方、前記反応管のガス流れ方向に対して前段部のCO選択酸化触媒部にMFI型ゼオライトにPtを担持させた触媒8を配置し、後段部のメタネーション触媒部にRuを0.1wt%担持させた触媒1を配置した比較例5においては、ガス流れ前段部の入口ガス温度を120℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を100℃とした比較例5−1の出口CO濃度(ppm)は55ppmであった。
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を140℃とし、後段部の入口ガス温度を120℃とした比較例5−2の出口CO濃度(ppm)は40ppmであった。
また、ガス流れ前段部の入口ガス温度を160℃とし、ガス流れ後段部の入口ガス温度を140℃とした場合の出口CO濃度(ppm)は23ppmであった。
【0247】
この結果より、CO除去触媒に用いる触媒としてメタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とメタネーション部を組み合わせた触媒を用いた場合のほうが、CO選択酸化触媒部とメタネーション部とから触媒を用いる場合よりも、より高効率でCOを除去できるため、DMEが存在する場合においてもCOを10ppm以下にすることができ、出口CO濃度(ppm)を非常に低くすることができることが確認された。
【0248】
また、ガス流れ前段部、中段部及び後段部のいずれも低温の場合の方が、ガス流れ前段部、中段部及び後段部のいずれも高温の場合よりも、COの除去効率が高いため出口CO濃度(ppm)を低くすることができることが確認された。
【0249】
本実施例によれば、残余のDMEの影響をうけることなく、より高効率でCOを除去できるため、出口CO濃度(ppm)を非常に低くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0250】
以上のように、本発明に係るDME改質装置及び燃料電池システムは、前記CO除去触媒としてメタノール耐久性CO除去触媒を用いることによりDMEの分解反応を抑制するため、CO生成の抑制を図り、高効率にCO濃度を低減させることができるので、DME改質装置のCO除去触媒に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるDME改質装置の概略構成を示す図である。
【図2】二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体の構成を示す概念図である。
【図3】第2の実施形態におけるDME改質装置の前記CO除去触媒の構成を示す概略図である。
【図4】第3の実施形態におけるDME改質装置の前記CO除去触媒の構成を示す概略図である。
【図5】第4の実施形態における本実施形態におけるDME改質装置の前記CO除去触媒の構成を示す概略図である。
【図6】PEFC型燃料電池システムを示す概念図である。
【図7】PEFC型燃料電池システムの別の構成を示す概念図である。
【図8】入口DME濃度と出口CO濃度の関係を示した図である。
【図9】Ruを担持させた触媒を用いて無酸素下での温度と出口CO濃度の関係を示した図である。
【図10】Ptを担持させた触媒を用いてDMEが1%ある場合とDMEがない場合の温度と出口CO濃度の関係を示した図である。
【図11】従来のDME改質装置のCO除去装置の触媒長さ方向と温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0252】
10 DME改質装置
11 原燃料(DME)
12 改質ガス
13 改質触媒装置
14 CO変成装置
15 CO除去触媒
16 燃料ガス
17 CO除去装置
15−1 メタノール耐久性触媒部
15−2 CO選択酸化触媒部
15−3 メタンネーション触媒部
18 二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するAl23担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテル(DME)を改質ガスに改質する改質触媒装置と、
前記改質触媒装置で発生したCOを変成するCO変成装置と、
残留するCOをCO除去触媒により除去して燃料ガスとするCO除去装置とを備えるDME改質装置において、
前記CO除去触媒がメタノール耐久性を有するメタノール耐久性CO除去触媒であることを特徴とするDME改質装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とを有することを特徴とするDME改質装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とCOをメタン化するメタネーション触媒部とを有することを特徴とするDME改質装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記CO除去触媒がメタノール耐久性触媒部とCO選択酸化触媒部とCOをメタン化するメタネーション触媒部とを有することを特徴とするDME改質装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
前記メタノール耐久性CO除去触媒が、Ruを主成分とする触媒であることを特徴とするDME改質装置。
【請求項6】
請求項5において、
Ruを担持する担体が二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するものであることを特徴とするDME改質装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1つにおいて、
前記CO選択酸化触媒部がPtを主成分とする触媒からなることを特徴とするDME改質装置。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか1つにおいて、
前記メタネーション触媒部がRuを主成分とする触媒からなることを特徴とするDME改質装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1つにおいて、
前記二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有する担体が、Al23、ZrO2、TiO2のいずれか1つからなるものであることを特徴とするDME改質装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つのDME改質装置と、改質されたガスを用いて発電する燃料電池とを備えることを特徴とするDME燃料を用いた燃料電池システム。
【請求項11】
請求項10において、
DME改質装置と燃料電池との間に余剰水分を除去する水分除去部を有することを特徴とするDME燃料を用いた燃料電池システム。
【請求項12】
請求項10又は11において、
DME改質装置の温度分布を測定する温度測定部、又はDME改質装置の出口のCO濃度を計測するCO計測部を有することを特徴とするDME燃料を用いた燃料電池システム。
【請求項13】
DMEの改質を行うに際し、発生する水蒸気量を低減しつつ発生するCO及びメタノールを除去することを特徴とするDME燃料の改質方法。
【請求項14】
請求項13において、
Ruを主成分とし、該Ruを担持する担体が二つ以上の細孔径ピークをもつ細孔径分布を有するものであるメタノール耐久性触媒を用いてCOを除去することを特徴とするDME燃料の改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−284316(P2007−284316A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116110(P2006−116110)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構提案公募事業 天然ガス有効利用技術 燃料電池自動車用DME低温水蒸気改質システムの開発、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】