説明

EGR装置の故障診断装置

【課題】開度センサを用いることなく、EGR装置の故障の有無を診断することにより、該診断にかかるコストを低減する。
【解決手段】EGR装置20の故障診断装置10において、ECU110は、LAFセンサ108が検出した空燃比に基づいて、インジェクタ74から噴射される燃料の噴射時間又は噴射量に関わる燃料補正係数を算出する。また、ECU110は、少なくとも、エアフローメータ100が検出した吸入空気量、又は、負圧センサ102が検出した吸入空気の負圧と、該ECU110が算出した燃料補正係数とに基づいて、EGR装置20の故障の有無を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出された排気ガスの一部を排気系から吸気系に還流させる排気ガス再循環装置(以下、EGR装置ともいう。)の故障の有無を診断する故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関から排出される排気ガス中の有害成分を除去するために、EGR装置が用いられている。EGR装置は、内燃機関の吸気系と排気系とを連通させることにより、該内燃機関から排出された排気ガスの一部を吸気系に再循環させ、排気ガス中に含まれるNOx等の有害成分を減少させる。
【0003】
ところで、EGR装置の故障の有無を診断するための技術が特許文献1及び2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、吸気系と排気系とを接続し且つEGR装置が設けられるEGR通路(排気還流手段)と、該吸気系との合流部の近傍に、再循環したEGRガス(排気ガス)の温度を検出する温度センサを設けると共に、EGR装置を構成するバルブの開度を検出する開度センサを設け、温度センサが検出したEGRガスの温度と、開度センサが検出したバルブの開度とに基づき、EGR装置及びEGR通路の故障の有無を診断することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、インテークマニホールド(吸気系)から内燃機関に吸入される吸入空気の負圧を測定し、測定した負圧に基づいて、EGR装置の異常を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−291055号公報
【特許文献2】特開2009−287392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術は、比較的高価な開度センサを用いてEGR装置のバルブの開度を検出するため、該EGR装置の故障の有無の診断にかかるコストが増大する。また、EGR装置を作動させなければ、該EGR装置の故障の有無を診断することができない。
【0008】
一方、特許文献2の技術は、吸入空気の負圧のみに基づきEGR装置の故障の有無を診断する。吸入空気の負圧は、EGR装置の故障以外の他の要因の影響も受けやすいため、該吸入空気の負圧が他の要因の影響を受けた場合には、EGR装置の故障を誤検知する可能性が高くなる。
【0009】
本発明は、前記の種々の課題を考慮してなされたものであり、開度センサを用いることなくEGR装置の故障の有無を診断することにより、該診断にかかるコストを低減することができる故障診断装置を提供することを目的とする。また、本発明は、EGR装置の作動の有無に関わりなく、該EGR装置の故障の有無を診断することができる故障診断装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、EGR装置の故障の検知精度を高めることができる故障診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内燃機関の吸気系と排気系とを接続する排気還流手段に設けられ、前記吸気系と前記排気系とを連通させることにより、前記内燃機関から排出された排気ガスの一部を前記排気系から前記排気還流手段を介して前記吸気系に還流させるEGR装置の故障の有無を診断する故障診断装置に関する。
【0011】
そして、本発明に係るEGR装置の故障診断装置は、前記の目的を達成するために、
前記吸気系に設けられ、該吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気の負圧を検出する負圧検出手段、又は、前記吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気系又は前記排気還流手段に設けられ、空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記吸気系における前記内燃機関の近傍に配置された燃料噴射手段から噴射される燃料の噴射時間及び噴射量に関わる燃料補正係数を、前記空燃比検出手段が検出した空燃比に基づき算出する補正係数算出手段と、
少なくとも、前記負圧検出手段又は前記吸入空気量検出手段の検出結果と、前記補正係数算出手段の算出結果とに基づいて、前記EGR装置の故障の有無を診断する故障診断手段と、
を有することを特徴としている。
【0012】
このように、本発明によれば、開度センサを用いることなく、既存のセンサである前記負圧検出手段又は前記吸入空気量検出手段と、前記空燃比検出手段とを用いて、前記EGR装置の故障の検知を行うので、特許文献1の技術と比較して、故障の有無の診断にかかるコストを大幅に低減することができる。
【0013】
また、既存の複数のセンサの検出結果に基づいて前記EGR装置の故障の検知を行うため、特許文献2の技術のように検出結果が前記EGR装置の故障以外の他の要因の影響を受けることを回避することができ、この結果、前記EGR装置の故障の検知精度を高めることができる。
【0014】
さらに、前記故障診断手段は、少なくとも、前記負圧検出手段又は前記吸入空気量検出手段の検出結果と、前記補正係数算出手段の算出結果とに基づいて、前記EGR装置の故障の有無を診断するので、前記EGR装置の作動領域の如何(前記EGR装置の作動の有無)に関わりなく、該EGR装置の故障を検知することができる。
【0015】
ここで、前記故障診断手段は、
前記内燃機関の始動直後から前記空燃比検出手段が活性化するまでの期間内において、前記負圧検出手段で検出された最低負圧の絶対値が所定の負圧閾値よりも小さいか、あるいは、前記吸入空気量検出手段で検出された最大吸入空気量が所定の吸入閾値よりも小さく、
且つ、前記EGR装置が作動していない場合に、前記補正係数算出手段で算出された燃料補正係数が所定の補正係数閾値よりも小さければ、
前記EGR装置が故障していると診断する。
【0016】
このように、複数のセンサの検出結果を用いて前記EGR装置の故障の有無を診断するので、該EGR装置の故障の検知精度をさらに高めることができる。
【0017】
また、前記故障診断手段は、さらに、前記EGR装置が作動していない場合に、前記空燃比検出手段で検出された空燃比が所定の空燃比閾値よりも大きければ、前記EGR装置が故障していると診断することが好ましい。このように、前記最低負圧の絶対値又は前記最大吸入空気量と、前記燃料補正係数とに加え、前記空燃比も用いて前記EGR装置の故障の有無を診断するので、該EGR装置の故障の検知精度を一層高めることができる。
【0018】
また、上述の故障診断装置は、前記EGR装置が作動してから、前記空燃比検出手段で検出される空燃比が所定値に到達するまでの時間を計時するタイマをさらに有し、前記故障診断手段は、前記タイマで計時された時間が所定時間よりも長ければ、前記EGR装置が故障していると診断することが好ましい。これにより、前記EGR装置の作動後における該EGR装置の故障の有無の診断を効率よく行うことができる。
【0019】
なお、前記故障診断装置は、前記故障診断手段が前記EGR装置の故障を示す警告信号を出力した場合に、前記警告信号に基づいて前記EGR装置の故障を外部に報知する警告手段をさらに有してもよい。これにより、ユーザ(ドライバー)は、前記警告手段からの報知内容に基づいて、前記EGR装置が故障したことを直ちに把握することができ、該EGR装置の交換等の必要な故障対応を速やかに行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
すなわち、開度センサを用いることなく、既存のセンサである負圧検出手段又は吸入空気量検出手段と、空燃比検出手段とを用いて、EGR装置の故障の検知を行うので、特許文献1の技術と比較して、故障の有無の診断にかかるコストを大幅に低減することができる。
【0022】
また、既存の複数のセンサの検出結果に基づいて前記EGR装置の故障の検知を行うため、特許文献2の技術のように検出結果が前記EGR装置の故障以外の他の要因の影響を受けることを回避することができ、この結果、前記EGR装置の故障の検知精度を高めることができる。
【0023】
さらに、故障診断手段は、少なくとも、前記負圧検出手段又は前記吸入空気量検出手段の検出結果と、補正係数算出手段の算出結果とに基づいて、前記EGR装置の故障の有無を診断するので、前記EGR装置の作動領域の如何(前記EGR装置の作動の有無)に関わりなく、該EGR装置の故障を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1Aは、本実施形態に係るEGR装置の故障診断装置の概略構成説明図であり、図1Bは、前記故障診断装置によるEGR装置の故障診断動作を説明するためのフローチャートである。
【図2】図2Aは、吸入空気量の時間変化を示すタイムチャートであり、図2Bは、吸入空気の負圧の時間変化を示すタイムチャートであり、図2Cは、空燃比の時間変化を示すタイムチャートであり、図2Dは、燃料補正係数の時間変化を示すタイムチャートであり、図2Eは、冷却水の水温の時間変化を示すタイムチャートであり、図2Fは、EGR装置の動作の時間変化を示すタイムチャートである。
【図3】図3A〜図3Cは、図2Aに示すエリアA1〜A3でのEGR装置の故障診断動作をそれぞれ説明するためのフローチャートである。
【図4】図4Aは、図2Aに示すエリアBでのEGR装置の故障検知を説明するためのフローチャートであり、図4Bは、EGR装置の作動開始からLAFセンサが所定の空燃比を検出するまでの時間経過を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るEGR装置の故障診断装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0026】
[本実施形態の構成]
図1Aにおいて、本実施形態に係る故障診断装置10は、エンジン(内燃機関)12に吸気装置(吸気系)14と排気装置(排気系)16とを設け、吸気装置14と排気装置16とをEGR通路(排気還流手段)18で接続し、該EGR通路18の途中にEGR装置20を設けた構成において、該EGR装置20の故障の有無を診断するための装置である。なお、図1Aでは、複数のシリンダを有する多気筒のエンジン12と、該エンジン12に接続された吸気装置14及び排気装置16とを模式的に図示している。また、EGR装置20は、シャフト22の先端に装着されたバルブ24を備え、シャフト22を変位させてバルブ24を弁開状態にすることで、吸気装置14と排気装置16とを連通可能である。
【0027】
ここで、EGR装置20の故障診断装置10が適用されるエンジン12、吸気装置14、排気装置16及びEGR通路18について説明する。
【0028】
エンジン12は、例えば、自動車や自動二輪車等の車両に搭載され、エンジン本体30の内部には複数のシリンダ室32が形成されている。各シリンダ室32には、ピストン34が軸線方向に沿って変位自在に設けられている。すなわち、ピストン34のストローク変位により、エンジン12における吸気、圧縮、燃焼及び排気の各行程が行われる。そして、ピストン34からコネクティングロッド36及びクランクシャフト38を介してエンジン12の駆動力が出力される。なお、図1Aでは、1つのシリンダ室32のみ図示している。
【0029】
また、シリンダ室32の上方に形成される燃焼室39には、吸気ポート40及び排気ポート42がそれぞれ開口している。吸気ポート40には吸気バルブ44が設けられる一方で、排気ポート42には排気バルブ46が設けられている。吸気ポート40と排気ポート42との間の燃焼室39の上方には、各燃焼室39毎に点火プラグ48が設けられている。
【0030】
さらに、エンジン本体30にはウォータジャケット50が形成され、図示しないラジエータとウォータジャケット50との間で冷却水を循環させることにより、エンジン12のピストン34等を冷却することができる。
【0031】
各吸気ポート40には、吸気装置14を構成するインテークマニホールド60の吸気分岐管62がそれぞれ接続されている。インテークマニホールド60は、下流側としてのエンジン12側で複数本に分岐するように枝状に形成された各吸気分岐管62と、各吸気分岐管62と接続するように形成され、所定容量を有するタンク部64と、タンク部64の上流側に形成され、各吸気分岐管62を纏める吸気集合管66とから構成される。なお、前述のように、図1Aでは、1つのシリンダ室32のみ図示しているため、インテークマニホールド60についても、1つの吸気分岐管62のみ図示している。
【0032】
吸気集合管66には、図示しないアクセルペダルの操作に連動して開閉するスロットルバルブ68を含むスロットルボディ70が設けられている。スロットルボディ70の上流側にはエアクリーナ72が設けられ、該エアクリーナ72を通じて外部からインテークマニホールド60に吸入空気が取り込まれる。この場合、エアクリーナ72によって吸入空気に含有される塵埃等が好適に除去される。
【0033】
また、各吸気分岐管62には、燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)74が吸気ポート40と対向するようにそれぞれ配設されている。なお、インジェクタ74が燃焼室39内に直接向けて配設される直噴エンジンにも適用可能である。
【0034】
一方、各排気ポート42には、排気装置16を構成するエキゾーストマニホールド80の排気分岐管82がそれぞれ接続されている。エキゾーストマニホールド80は、上流側としてのエンジン12側で複数本に分岐するように枝状に形成された各排気分岐管82と、各排気分岐管82を纏める排気集合管84とから構成される。排気集合管84には、エンジン12の排気行程によって各排気ポート42から排気された排気ガス中のCO、HC及びNOx等を浄化する三元触媒等の触媒86が設けられている。なお、図1Aでは、エキゾーストマニホールド80についても、1つの排気分岐管82のみ図示している。
【0035】
排気集合管84の上流側と吸気分岐管62の下流側とは、EGR通路18で接続されている。EGR通路18は、排気集合管84の上流側から延びる排気側排気還流管90をEGR装置20の入力ポート92に接続すると共に、吸気分岐管62の下流側から延びる吸気側排気還流管94をEGR装置20の出力ポート96に接続することにより構成される。
【0036】
そして、EGR装置20においては、シャフト22が軸線方向に変位して、バルブ24が入力ポート92から離間すれば、弁開状態となり、排気ガスの一部を排気集合管84から排気側排気還流管90、EGR装置20及び吸気側排気還流管94を介して、吸気分岐管62に還流させることができる。この結果、吸気装置14に還流された排気ガスと、該吸気装置14の上流側からの吸入空気とに対して、インジェクタ74から燃料を噴射すると、吸気ポート40近傍で燃料と吸入空気及び還流された排気ガスとが混合した混合気が形成され、エンジン12の吸気行程において、該混合気を燃焼室39に吸入することができる。なお、シャフト22の軸線方向への変位によって、バルブ24が入力ポート92を閉塞すれば、EGR装置20は弁閉状態となり、排気集合管84と吸気分岐管62との連通状態が遮断される(排気ガスの還流動作が停止に至る)。
【0037】
また、図1Aにおいて、エンジン12、吸気装置14及び排気装置16には、下記の検出手段が配設されている。
【0038】
吸気装置14の吸気集合管66には、外部からエアクリーナ72を通じて吸気集合管66に取り込まれた吸入空気の量(吸入空気量AFM)を検出するセンサとしてのエアフローメータ(吸入空気量検出手段)100が設けられている。また、タンク部64には、エンジン12の吸気行程において、吸気装置14からエンジン12の燃焼室39に吸入される吸入空気の負圧PBを検出する負圧センサ(負圧検出手段)102が設けられている。
【0039】
エンジン12には、クランクシャフト38のクランク角に基づいて、エンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ104が設けられている。また、エンジン本体30には、ウォータジャケット50内の冷却水の温度(水温TW)を検出する水温センサ106が設けられている。
【0040】
排気装置16の排気集合管84には、排気ガスに対してリーンからリッチにかけての広範囲にわたる空燃比をリニアに検出可能な空燃比検出手段としての広域空燃比センサ(LAFセンサ)108が設けられている。なお、LAFセンサ108は、排気ガス中の酸素濃度に基づき空燃比を検出するので、排気ガスの一部が流入する排気側排気還流管90にLAFセンサ108を設けてもよい。
【0041】
これらのセンサ100〜108の検出結果(を示す検出信号)は、エンジンコントロールユニット(ECU)110に出力される。
【0042】
ECU(補正係数算出手段、故障診断手段)110は、上述の各センサ100〜108の検出結果に基づいて、エンジン12、EGR装置20、点火プラグ48、スロットルバルブ68及びインジェクタ74等を制御する。また、ECU110は、各種の情報を記憶するメモリ112と、所定時間の計時を行うタイマ114と、後述するEGR装置20の故障診断処理に用いられる各種のマップ116〜120とを有する。
【0043】
この場合、ECU110は、各センサ100〜108の検出結果と、マップ116〜120とを用いて、EGR装置20に対する故障診断処理を行った結果、該EGR装置20に何らかの故障が発生したと判断した場合には、該故障の発生を示す警告信号を警告手段としての故障警告灯(MIL)122に出力する。MIL122は、警告信号に基づいて、EGR装置20の故障の発生を外部(ドライバー)に報知する。従って、本実施形態に係るEGR装置20の故障診断装置10は、上述した各センサ100〜108と、ECU110(及び該ECU110内の各構成要素)と、MIL122とにより構成される。
【0044】
[本実施形態の動作]
本実施形態に係るEGR装置20の故障診断装置10は、以上のように構成されるものであり、次に、該故障診断装置10の動作について、図1B〜図4Bを参照しながら説明する。なお、この説明では、必要に応じて、図1Aも参照しながら説明する。
【0045】
図1Bは、故障診断装置10によるEGR装置20の故障診断処理のフローチャートである。図2Aは、エンジン12の始動開始後にエアフローメータ100で検出される吸入空気量AFMの時間変化を示すタイムチャートである。図2Bは、エンジン12の始動開始後に負圧センサ102で検出される吸入空気の負圧PBの時間変化を示すタイムチャートである。図2Cは、エンジン12の始動開始後にLAFセンサ108で検出される空燃比LAFの時間変化を示すタイムチャートである。図2Dは、インジェクタ74からの燃料の噴射時間及び噴射量に関わる燃料補正係数(AFFB係数)の時間変化を示すタイムチャートである。図2Eは、エンジン12の始動開始後に水温センサ106で検出される冷却水の水温TWの時間変化を示すタイムチャートである。図2Fは、EGR装置20の動作の時間変化を示すタイムチャートである。
【0046】
時刻T0でドライバーが図示しないイグニッションスイッチをオンにすることに起因して、エンジン12の始動が開始される場合、図2Aに示すように、吸入空気量AFMは、時刻T0から短時間で急激に増大した後に、時刻T1で最大吸入空気量MAX_AFMに至り、その後、急速に低下して略一定値に落ち着く。また、負圧PBについても、図2Bに示すように、時刻T0から短時間で急激に低下した後に、時刻T1で最低負圧MIN_PBに至り、その後、急速に上昇して略一定値に落ち着く。
【0047】
一方、LAFセンサ108は、所定温度にまで上昇しないと(活性化しないと)空燃比LAFを精度よく検出することができない。従って、図2Cに示すように、LAFセンサ108は、活性化した時刻T2以降において空燃比LAFを検出可能な状態に至る。
【0048】
また、図2Dに示すように、ECU110は、時刻T3以降、LAFセンサ108が検出した空燃比LAFに基づき燃料補正係数AFFBを算出する。この場合、ECU110は、インジェクタ74から噴射する燃料の噴射量又は噴射時間に燃料補正係数AFFBを乗じて、噴射量又は噴射時間を補正し、補正後の噴射量又は噴射時間に従ってインジェクタ74を制御する。この結果、空燃比LAFは、時刻T3以降、ECU110によってフィードバック制御されることになる。なお、空燃比LAFに対するフィードバック制御が行われることにより、時刻T3以降、空燃比LAF及び燃料補正係数AFFBは、時間経過に伴ってそれぞれ変動する。
【0049】
図2Eに示すように、エンジン12の始動により、水温センサ106で検出されるウォータジャケット50内の冷却水の水温TWは上昇する。そして、図2E及び図2Fに示すように、時刻T4において、該水温TWがEGR装置20を動作可能な所定温度に到達すると、ECU110は、EGR装置20に所定のデューティの制御信号を供給し、EGR装置20の動作を開始させる。
【0050】
EGR装置20のバルブ24は、デューティ制御により開度が制御されており、デューティ比が小さくなればなるほど、バルブ24は、弁閉方向に変位し、最終的には弁閉状態となって、吸気装置14への排気ガスの一部の還流を停止させることができる。
【0051】
このように、エンジン12の始動開始後の所定期間内では、時間経過に伴って上記の変化が発生するため、故障診断装置10のECU110では、時刻T0〜T2のエリアA1の時間帯ではステップS1、時刻T2〜T3のエリアA2の時間帯ではステップS2、時刻T3〜T4のエリアA3の時間帯ではステップS3の故障診断処理を順次行う。
【0052】
ステップS1では、最大吸入空気量MAX_AFM又は最低負圧MIN_PBに基づいて、EGR装置20の故障の有無を診断する。ステップS2では、空燃比LAFに基づいて、EGR装置20の故障の有無を診断する。ステップS3では、空燃比LAFに基づき算出された燃料補正係数AFFBを用いて、EGR装置20の故障の有無を診断する。
【0053】
そして、ステップS1〜S3毎に、ECU110は、EGR装置20に故障が発生していると診断した場合には、フラグを立て(フラグ=1)、その診断結果をメモリ112に記憶する。また、故障が発生していないと診断した場合、ECU110は、フラグを立てず(フラグ=0)、その診断結果をメモリ112に記憶する。なお、各ステップS1〜S3での具体的な処理内容については、後述する。
【0054】
次のステップS4において、ECU110は、メモリ112を参照し、ステップS1〜S3についての全てのフラグが立っていた場合(全てのフラグ=1)、EGR装置20に故障が発生していると最終的に判断し、EGR装置20の故障を示す警告信号をMIL122に出力する。MIL122は、警告信号に基づいて、EGR装置20に故障が発生したことを外部に報知する。これにより、ドライバーは、イグニッションスイッチをオフにして、EGR装置20の交換等の故障対応を速やかに取ることができる。なお、ステップS4において、ステップS1〜S3のうち、いずれか1つの処理でも「フラグ=0」の診断結果であった場合、ECU110は、EGR装置20が故障していないと判断し、MIL122への警告信号の出力を行わない。
【0055】
そして、ECU110は、時刻T4以降のエリアBの時間帯ではステップS5の故障診断処理を行う。このステップS5では、ECU110からEGR装置20に制御信号を供給することにより、LAFセンサ108で検出される空燃比LAFの値が、制御信号の供給直前(時刻T4前)と制御信号の供給後(時刻T4後)との間で変化する場合に、ECU110は、制御信号の供給後の空燃比LAFの値と、空燃比LAFの時間変化(応答時間の遅れ)とに基づき、EGR装置20の故障の有無を診断する。この場合でも、ECU110は、EGR装置20に故障が発生したとの診断結果であれば、EGR装置20の故障を示すフラグを立てた(フラグ=1)後に、警告信号をMIL122に出力し、MIL122を介してEGR装置20の故障発生を外部に報知する。
【0056】
次に、各ステップS1〜S3及びS5の故障診断処理について、図3A〜図4Bを参照しながら、より詳細に説明する。
【0057】
図3Aは、ステップS1(エリアA1)の故障診断処理の詳細を示すフローチャートである。
【0058】
図3AのステップS10において、ドライバーが図示しないイグニッションスイッチをオンにすると、水温センサ106は、ウォータジャケット50内の冷却水の水温TWを検出し、該水温TWを示す検出信号をECU110に出力する(ステップS11)。
【0059】
ところで、エリアA1において、EGR装置20の故障(リーク)により、該EGR装置20のバルブ24が開いている場合には、吸気装置14が外部から吸入空気を取り込んだ際、EGR装置20の弁閉状態(正常時)と比較して、最低負圧MIN_PBが上昇したり(最低負圧MIN_PBの絶対値が低下したり)、最大吸入空気量MAX_AFMが低下することがある。また、これらの値は、温度によって異なる値に変化する。
【0060】
そこで、ECU110は、EGR装置20が故障しているか否かの判断基準となる最低負圧MIN_PBの閾値(負圧閾値LMT_PB)と水温TWとの関係、及び、EGR装置20が故障しているか否かの判断基準となる最大吸入空気量MAX_AFMの閾値(吸入閾値LMT_AFM)と水温TWとの関係を示すマップ116を具備している。
【0061】
従って、ステップS12において、ECU110は、マップ116を参照して、水温センサ106が検出した冷却水の水温TWに応じた負圧閾値LMT_PBを決定するか、あるいは、該水温TWに応じた吸入閾値LMT_AFMを決定する。
【0062】
その後、ステップS13において、エンジン12が始動を開始すると、次のステップS14において、エアフローメータ100は、吸入空気量AFMの検出を開始し、及び/又は、負圧センサ102は、負圧PBの検出を開始する。この結果、時刻T1において、エアフローメータ100は、最大吸入空気量MAX_AFMを検出して、該最大吸入空気量MAX_AFMを示す検出信号をECU110に出力する一方で、負圧センサ102は、最低負圧MIN_PBを検出して、最低負圧MIN_PBを示す検出信号をECU110に出力する。
【0063】
そして、ステップS15において、ECU110は、エアフローメータ100で検出された最大吸入空気量MAX_AFMが吸入閾値LMT_AFMよりも大きいか否か(MAX_AFM>LMT_AFMであるか否か)、あるいは、負圧センサ102で検出された最低負圧MIN_PBの絶対値が負圧閾値LMT_PBよりも高いか否か(|MIN_PB|>LMT_PBであるか否か)、を判定する。
【0064】
ステップS15において、MAX_AFM>LMT_AFM、又は、|MIN_PB|>LMT_PBである場合(ステップS15:YES)、次のステップS16において、ECU110は、エリアA1においてEGR装置20に故障が発生していない(リークが発生していない)と診断して「フラグ=0」とし、その診断結果をメモリ112に記憶する。
【0065】
一方、ステップS15において、MAX_AFM≦LMT_AFM、又は、|MIN_PB|≦LMT_PBである場合(ステップS15:NO)には、ECU110は、ステップS17において、エリアA1においてEGR装置20に故障が発生した、すなわち、バルブ24が開いてリークが発生していると診断してフラグを立て(フラグ=1)、その診断結果をメモリ112に記憶する。
【0066】
図3Bは、ステップS2(エリアA2)の故障診断処理の詳細を示すフローチャートである。
【0067】
図3BのステップS20において、LAFセンサ108の活性化が完了している場合(ステップS20:YES)、ステップS21において、LAFセンサ108は、空燃比LAFを検出し、該空燃比LAFを示す検出信号をECU110に出力する。
【0068】
ところで、エリアA2において、EGR装置20のバルブ24が開いている場合には、エリアA1と同様に、吸気装置14が外部から吸入空気を取り込んでも、EGR装置20のリークにより、空燃比LAFが正常時(リークがない場合)と異なる値になる可能性がある。この値も温度によって異なる値に変化する。
【0069】
そこで、ECU110は、EGR装置20が故障しているか否かの判断基準となる空燃比LAFの閾値(目標空燃比AF(目標AF、空燃比閾値))と水温TWとの関係を示すマップ118をさらに具備している。
【0070】
なお、図2Cにおいて、エリアA2における実線は、リークがない場合の空燃比LAFの時間変化を示し、エリアA2での破線は、LAFセンサ108で実際に検出された空燃比LAFを示す。
【0071】
一方、水温センサ106は、エリアA2においても、ウォータジャケット50内の冷却水の水温TWを逐次検出し、その検出信号をECU110に出力している。
【0072】
従って、ステップS22において、ECU110は、マップ118を参照して、水温センサ106が検出した冷却水の水温TWに応じた目標AFを決定し、次のステップS23において、LAFセンサ108で検出された空燃比LAFが目標AFよりも小さいか否か(LAF<目標AFであるか否か)を判定する。
【0073】
ステップS23において、LAF<目標AFであれば(ステップS23:YES)、次のステップS24において、ECU110は、エリアA2においてEGR装置20に故障が発生していない(リークが発生していない)と診断して「フラグ=0」とし、その診断結果をメモリ112に記憶する。
【0074】
一方、ステップS23において、LAF≧目標AFである場合(ステップS23:NO)、ECU110は、ステップS25において、エリアA2においてEGR装置20に故障が発生した(リークが発生している)と診断してフラグを立て(フラグ=1)、その診断結果をメモリ112に記憶する。
【0075】
なお、前述のステップS20において、LAFセンサ108の活性化が完了していなければ(ステップS20:NO)、エリアA2での故障診断処理を行わない。
【0076】
図3Cは、ステップS3(エリアA3)の故障診断処理の詳細を示すフローチャートである。
【0077】
図3CのステップS30において、時刻T3以降である場合(ステップS30:YES)、ECU110は、空燃比LAFに対するフィードバック制御の実行を決定する。
【0078】
そして、ステップS31において、ECU110は、空燃比LAFから燃料補正係数AFFBを算出する。具体的に、ECU110は、先ず、マップ118を参照して、水温センサ106が検出した水温TWに応じた目標AFを算出する。次に、LAFセンサ108が検出した空燃比LAFと、目標AFとの偏差を算出し、算出した偏差に基づいて燃料補正係数AFFBを算出する。
【0079】
ところで、エリアA3において、EGR装置20のバルブ24が開いている場合には、排気ガスの一部がEGR通路18及びEGR装置20を介して吸気装置14にリークするため、LAFセンサ108で検出される空燃比LAFが正常時(リークがない場合)と異なる値となる。この結果、目標AFと空燃比LAFとの偏差に基づき算出される燃料補正係数AFFBの値は、EGR装置20が作動している状態で算出される燃料補正係数AFFBの値に近くなる可能性がある。
【0080】
なお、図2Dにおいて、エリアA3における実線は、リークがない場合の燃料補正係数AFFBの時間変化を示し、エリアA3での破線は、実際に算出された燃料補正係数AFFBの時間変化を示す。
【0081】
そこで、ECU110は、ステップS32において、EGR装置20が故障しているか否かの判断基準となる燃料補正係数AFFBの閾値(補正係数閾値)よりも、ステップS31で求めた燃料補正係数AFFBが大きいか否か(AFFB>補正係数閾値であるか否か)を判定する。
【0082】
ステップS32において、AFFB>補正係数閾値であれば(ステップS32:YES)、次のステップS33において、ECU110は、エリアA3においてEGR装置20に故障が発生していない(リークが発生していない)と診断して「フラグ=0」とし、その診断結果をメモリ112に記憶する。
【0083】
一方、ステップS32において、AFFB≦補正係数閾値である場合(ステップS32:NO)、ECU110は、ステップS34において、エリアA3においてEGR装置20に故障が発生した(リークが発生している)と診断してフラグを立て(フラグ=1)、その診断結果をメモリ112に記憶する。
【0084】
なお、前述のステップS30において、時刻T3前であれば(ステップS30:NO)、ECU110は、エリアA3での故障診断処理を行わない。
【0085】
図4Aは、ステップS5(エリアB)の故障診断処理の詳細を示すフローチャートである。
【0086】
エリアBにおいて、ECU110からEGR装置20に制御信号(所定のデューティのパルス信号)が供給されてバルブ24の開閉動作が行われる場合、エンジン12での燃焼に起因した燃焼生成物がバルブ24やEGR通路18に固着していれば、吸気装置14に還流される排気ガスの量が低下し、この結果、EGR装置20を動作させても、空燃比LAFが所定値に到達しない可能性がある。
【0087】
また、EGR装置20において、制御信号の供給によりソレノイドが励磁されて、シャフト22が軸線方向に変位しても、該シャフト22がスムーズに変位しない場合には、バルブ24の動作遅れ、いわゆる作動渋りが発生する。
【0088】
そこで、エリアBでは、空燃比LAFが所定の上限値に到達したか否か、さらには、バルブ24の作動渋りが発生しているか否かを判断基準として、EGR装置20の故障の有無を診断している。
【0089】
具体的には、図4AのステップS50において、先ず、ECU110は、エリアB(時刻T4以降)であるか否かを判定する。エリアBである場合(ステップS50:YES)、次のステップS51において、ECU110は、図4Bの時刻T5にてEGR装置20に制御信号を供給すると共に、タイマ114による計時を開始させる。なお、LAFセンサ108は、時刻T2以降、空燃比LAFを逐次検出し、その検出信号をECU110に出力しているため、ステップS51において、ECU110は、制御信号の供給直前にLAFセンサ108から入力された検出信号の示す空燃比LAFの値をメモリ112に記憶する処理も行う。
【0090】
次のステップS52において、ECU110は、メモリ112に記憶された制御信号の供給直前の空燃比LAFの値と、LAFセンサ108から順次入力される検出信号の示す空燃比LAFの値とを逐次比較し、両者の差が所定値以上となった場合(空燃比LAFが大きく変化した場合)には、タイマ114の計時を直ちに停止させる。
【0091】
なお、図4Bでは、時刻T5での制御信号の供給開始後、LAFセンサ108で検出される空燃比LAFの値が時刻T6で大きく変化した場合を破線で図示している。実線は、前述の作動渋りや固着が発生しない場合での理想的な空燃比LAFの値の変化を図示している。
【0092】
次のステップS53において、ECU110は、タイマ114の停止直前に入力された空燃比LAFの値がバルブ24の弁開状態における所定の空燃比の値(上限値)に到達しているか否かを判定する。
【0093】
当該空燃比LAFが上限値に到達している場合(ステップS53:YES)、次のステップS54において、タイマ114が計時した時間を、EGR装置20への制御信号の供給開始から空燃比LAFの値が大きく変化するまでの遅れ時間AFΔTIMEとして特定する。
【0094】
また、前述したエンジン回転数センサ104は、クランクシャフト38のクランク角の変化に基づいて、エンジン回転数NEを逐次検出し、検出したエンジン回転数NEを示す検出信号をECU110に出力している。そこで、ECU110は、空燃比LAFの遅れ時間の閾値(遅れ時間閾値AF_LMT_TIME)と、エンジン回転数NEとの関係を示すマップ120をさらに具備している。なお、遅れ時間としては、作動渋りに起因した遅れ時間と、固着に起因した遅れ時間とが考えられるので、図4Bに示す作動渋りに起因した遅れ時間の閾値(作動渋り判定時間)や、固着に起因した遅れ時間の閾値(固着判定時間)を、遅れ時間閾値AF_LMT_TIMEとすればよい。
【0095】
ステップS55において、ECU110は、タイマ114の停止時にエンジン回転数センサ104からエンジン回転数NEが入力された場合、次のステップS56において、マップ120を参照して、該エンジン回転数NEに応じた遅れ時間閾値AF_LMT_TIMEを特定する。
【0096】
次のステップS57において、ECU110は、遅れ時間AFΔTIMEが遅れ時間閾値AF_LMT_TIMEに到達しているか否か(AFΔTIME<AF_LMT_TIMEであるか否か)を判定する。
【0097】
ステップS57において、AFΔTIME<AF_LMT_TIMEであれば(ステップS57:YES)、ECU110は、EGR装置20に固着又は作動渋りが発生していないと診断する。
【0098】
また、ステップS57において、AFΔTIME≧AF_LMT_TIMEであれば(ステップS57:NO)、ECU110は、ステップS58において、EGR装置20に作動渋り又は固着に起因した追従遅れが発生したと診断し、追従遅れ(故障)を示すフラグを立て(フラグ=1)、メモリ112に記憶する。
【0099】
そして、ステップS59において、ECU110は、EGR装置20に故障が発生していることを示す警告信号をMIL122に出力する。これにより、MIL122は、警告信号に基づいて、EGR装置20に故障が発生したことを外部に報知し、ドライバーは、イグニッションスイッチをオフにして、EGR装置20の交換等の故障対応を速やかに取ることができる。
【0100】
また、ステップS53において、変化後の空燃比LAFが上限値に到達していない場合(ステップS53:NO)、ECU110は、ステップS60において、EGR装置20に固着が発生したと診断し、固着(故障)を示すフラグを立て(フラグ=1)、メモリ112に記憶する。その後、ECU110は、ステップS59を実行し、MIL122を介してEGR装置20の故障発生を外部に報知する。
【0101】
なお、前述のステップS50において、エリアB(時刻T4以降)でない場合(ステップS50:NO)、ECU110は、エリアBでの故障診断処理を行わない。
【0102】
また、上記の説明では、故障診断装置10がステップS1〜S3の故障診断処理を順次行う場合について説明したが、LAFセンサ108が活性化した後に、直ちに空燃比LAFに対するフィードバック制御を行う場合には、図1Bの破線に示すように、ステップS1後、ステップS2を飛ばして、ステップS3の故障診断処理を実行してもよい。
【0103】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るEGR装置20の故障診断装置10によれば、開度センサ(リフトセンサ)を用いることなく、既存のセンサであるエアフローメータ100又は負圧センサ102と、エンジン回転数センサ104と、水温センサ106と、LAFセンサ108とを用いて、EGR装置20の故障の検知を行うので、特許文献1の技術と比較して、故障の有無の診断にかかるコストを大幅に低減することができる。
【0104】
このように、既存の複数のセンサ100〜108の検出結果に基づいてEGR装置20の故障の検知を行うため、特許文献2の技術のように検出結果がEGR装置20の故障以外の他の要因の影響を受けることを回避することができ、この結果、EGR装置20の故障の検知精度を高めることができる。
【0105】
また、ECU110は、少なくともステップS1、S3の故障診断処理を行う場合には、負圧センサ102又はエアフローメータ100の検出結果と、燃料補正係数AFFBの算出結果とに基づいて、EGR装置20の故障の有無を診断することになるので、EGR装置20の作動領域の如何(EGR装置20の作動の有無)に関わりなく、該EGR装置20の故障を検知することができる。
【0106】
すなわち、少なくともエリアA1、A3(ステップS1、S3)の故障診断処理を実行すれば、複数のセンサ100、102、108の検出結果を用いてEGR装置20の故障の有無の診断が可能となるので、該EGR装置20の故障の検知精度を高めることができる。
【0107】
さらに、エリアA2の故障診断処理も併せて実行すれば、該EGR装置20の故障の検知精度を一層高めることができる。
【0108】
また、エリアBにおいて、ECU110は、タイマ114で計時された時間(AFΔTIME)が所定時間(AF_LMT_TIME)よりも長ければ、EGR装置20が故障していると診断するので、EGR装置20の作動後における該EGR装置20の故障の有無の診断を効率よく行うことができる。
【0109】
さらに、ECU110からMIL122に警告信号を出力した場合に、MIL122は、警告信号に基づいてEGR装置20の故障を外部に報知するので、ドライバーは、MIL122からの報知内容に基づいて、EGR装置20が故障したことを直ちに把握することができ、該EGR装置20の交換等の必要な故障対応を速やかに行うことが可能となる。
【0110】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0111】
10…故障診断装置 12…エンジン
14…吸気装置 16…排気装置
18…EGR通路 20…EGR装置
24…バルブ 39…燃焼室
50…ウォータジャケット 60…インテークマニホールド
74…インジェクタ 80…エキゾーストマニホールド
100…エアフローメータ 102…負圧センサ
104…エンジン回転数センサ 106…水温センサ
108…LAFセンサ 110…ECU
114…タイマ 116〜120…マップ
122…MIL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系と排気系とを接続する排気還流手段に設けられ、前記吸気系と前記排気系とを連通させることにより、前記内燃機関から排出された排気ガスの一部を前記排気系から前記排気還流手段を介して前記吸気系に還流させる排気ガス再循環装置(以下、EGR装置という。)の故障の有無を診断する故障診断装置において、
前記吸気系に設けられ、該吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気の負圧を検出する負圧検出手段、又は、前記吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気系又は前記排気還流手段に設けられ、空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記吸気系における前記内燃機関の近傍に配置された燃料噴射手段から噴射される燃料の噴射時間及び噴射量に関わる燃料補正係数を、前記空燃比検出手段が検出した空燃比に基づき算出する補正係数算出手段と、
少なくとも、前記負圧検出手段又は前記吸入空気量検出手段の検出結果と、前記補正係数算出手段の算出結果とに基づいて、前記EGR装置の故障の有無を診断する故障診断手段と、
を有することを特徴とするEGR装置の故障診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の故障診断装置において、
前記故障診断手段は、
前記内燃機関の始動直後から前記空燃比検出手段が活性化するまでの期間内において、前記負圧検出手段で検出された最低負圧の絶対値が所定の負圧閾値よりも小さいか、あるいは、前記吸入空気量検出手段で検出された最大吸入空気量が所定の吸入閾値よりも小さく、
且つ、前記EGR装置が作動していない場合に、前記補正係数算出手段で算出された燃料補正係数が所定の補正係数閾値よりも小さければ、
前記EGR装置が故障していると診断する
ことを特徴とするEGR装置の故障診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の故障診断装置において、
前記故障診断手段は、さらに、前記EGR装置が作動していない場合に、前記空燃比検出手段で検出された空燃比が所定の空燃比閾値よりも大きければ、前記EGR装置が故障していると診断する
ことを特徴とするEGR装置の故障診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の故障診断装置において、
前記EGR装置が作動してから、前記空燃比検出手段で検出される空燃比が所定値に到達するまでの時間を計時するタイマをさらに有し、
前記故障診断手段は、前記タイマで計時された時間が所定時間よりも長ければ、前記EGR装置が故障していると診断する
ことを特徴とするEGR装置の故障診断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の故障診断装置において、
前記故障診断手段が前記EGR装置の故障を示す警告信号を出力した場合に、前記警告信号に基づいて前記EGR装置の故障を外部に報知する警告手段をさらに有する
ことを特徴とするEGR装置の故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72428(P2013−72428A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214565(P2011−214565)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】