説明

EMF波伝播を利用した液体の水位および品質の感知装置システムおよび方法

液体の水位、成分、汚染センサは、可変インダクタおよびキャパシタを含む共振回路にわたってRF信号を生成する。結果として生じる電磁放射は、液体を伝播し、液体の伝導度および誘電特性の変化に起因し、液体の量および体積に比例する、共振回路のインピーダンスおよび共振の変化が検出される。液体の伝導度および誘電特性は、変化した共振回路のインピーダンスおよび共振に基づいて測定され、また、経年劣化および他の液体による尿素溶液の汚染を判定するために比較される。また、光学センサは、液体の屈折率を判定するために液体内に水没してもよい。この液体の屈折率は、液体が水か尿素溶液か、尿素溶液の濃度を判定するために用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「EMF波伝播を使用した液体の水位、成分、および、汚染の判定装置システムおよび方法」と題されて2009年6月26日に米国仮特許出願された出願第61/269,648号の優先権の利益を主張し、この出願を参照することによって組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的にタンクまたはコンテナ内の液体の状態を感知するためのシステム及び方法に関する。より詳しくは、本発明の実施形態は、自動車の尿素タンク内の自動車の尿素溶液の特性、特に液体状態の燃料タンク内の燃料の成分や組成及び汚染等を、このようなタンク内において電磁波の伝播によって感知する発明に関する。
【背景技術】
【0003】
「Euro V自動車」と呼ばれる選択接触還元(SCR)自動車は、ディーゼル駆動式モーター自動車であり、排出物を減らすための作動液の使用に適している。典型的には、SCR自動車は燃料タンクとは別に設けられた、自動車の尿素溶液等の作動液を運ぶために使用される尿素タンクを有する。自動車の尿素溶液(AUS)は、脱塩水における高純度の尿素溶液である。AUSはSCR自動車の尿素タンクに貯留されて窒素酸化物を窒素と水に変換するために自動車の排気ガスに噴霧される。SCR自動車は、Euro V 排出基準を好都合に満足する。
【0004】
EMSが特に排ガス浄化のような車両性能を最適化するためのいくつかの車両パラメータを調整できるように、AUSの成分の情報を有することが、SCR自動車のエンジン管理システム(EMS)にとって重要である。
【0005】
SCR自動車の排ガスを減少させる方法を効果的にしておくことを確実にするために、AUSの品質は維持されなければならない。汚染物質、高純度尿素の他の成分に対する比率の変化、温度のばらつき、その他の変化は、AUSの寿命および排ガスの減少におけるAUSの効果に影響を与え得る。
【0006】
SCR自動車は一般的に、タンク内のAUSの水位を判定するために直接的な測定システムの使用に頼っている。このようなシステムは、典型的に複数のセンサを有しており、それらは、尿素タンクの内側の鉛直面に沿って異なる高さに配置される。このようなセンサは典型的に、分解能が低く、邪魔になり、AUSの温度や品質を検出しない。このような直接測定システムは尿素タンクに装置を設置する必要がある。また、このような内部直接測定システムは、修繕、置き換え、調整に問題がある。さらに、このシステムは、AUSが凍結することを防ぐための加熱装置を有効にするような、AUSの温度を測定する手段を提供しないため、AUSが典型的に凍結する温度である、マイナス11℃以下にさらされたSCR自動車において使用されるとき効果的でない。
【0007】
SCR自動車は、自動車排ガスの減少におけるAUSの効果を判定するために、通常、間接的な測定システムに頼っている。このような間接的な測定は排出ガスを減らし、EMSに移動し、その結果、EMSはタンクから放出されるAUSの量を増加または減少するかもしれない。このようなシステムは、典型的に、反応が遅く、また、AUSの実際の品質や成分を正確に反映しない。
【0008】
したがって、従来の技術は、信頼でき、安価で、正確に、AUSの水位または品質を測定する方法およびシステムを提供することができなかった。
【0009】
加えて、または、代わりに、フレックス燃料自動車(FFVs)は、自動車の燃料の重要な成分としてアルコールを使用するのに適した自動車である。アルコールベースの燃料は、再生可能で、生物由来物質から生成される輸送燃料の代替タイプであり、潜在的に石油ベースの燃料に依存することを減少させる。アルコールベースの燃料は典型的にプレミアムガソリンよりもオクタン価が高いため、運転手は、よりよいエンジン性能で増加した馬力を有利に得られる。アルコールベースの燃料は、85%がエタノールで15%がガソリンである自動車燃料のブレンドの用語である“E85”を含む。E85は代替的な燃料であり、米国エネルギー省によって定義され、また、FFVsにおいて使用することが意図されている。エタノールまたは他のアルコールはガソリンよりも燃焼による大気汚染が少なく、国産で、環境に配慮した燃料である。FFVsは典型的に、エタノール0%とガソリン100%から、エタノール85%とガソリン15%(E85)に至るまで、エタノールとガソリンのいかなるブレンドでも燃料とすることができる。
【0010】
EMSが、特に、燃料の消費量、排ガス浄化、エンジンの動力、のような車両性能を最適化するための確かな車両パラメータを調整できるように、AUSの成分の情報を有することが、FFVのエンジン管理システム(EMS)にとって重要である。
【0011】
自動車のオペレータは、一般的に、FFVの燃料タンク内のアルコールの量を決定する間接的な方法に頼っている。自動車内の残りの燃料のアルコール含有量を確定する最も一般的な方法は、自動車の本体制御モジュールまたはEMSにより実行されるソフトウエアのアルゴリズムを使用することである。アルコール含有量は、継続してE85または従来のガソリンを使用する要求が無いとき、各々の燃料タンクの充填において、ドライバーによって変更される。アルゴリズムベースのシステムは、燃料の成分の変更に対する反応が遅く、典型的にプラスまたはマイナス10%のアルコール含有量の正確さしかない。さらに、このようなシステムは、燃料が均一に混合されないかまたは自動車が運転されるとともに燃料の混合が変化するような、サドル燃料タンクや同様の貯蔵装置が付いた自動車において使用されるとき、より効果的ではない。
【0012】
直接測定システムは存在するが、装置内、または燃料ラインと共に一列に並べて設置することが要求される。このように、内部または一列の燃料成分測定装置の、修繕、置き換え、又は、調整は問題がある。
【0013】
従来の技術は、燃料ラインや燃料タンク等の外側に取り付けられるシステムを使用する、信頼でき、安価で、正確な、自動車の燃料の成分を測定する方法およびシステムを提供することができなかった。
【0014】
さらに、自動車の運転手は、燃料タンク内の残りの燃料の量の正確な情報を提供する燃料計に頼っている。燃料タンク内の残りの燃料の量を測定する最も一般的な方法は、タンク内に機械的な浮とレバーを置くことである。タンク内の燃料の水位が変わったとき、浮はレバーを旋回させる。燃料の水位に応じてレバーが旋回するとき、電気信号が比例して発生および/または変更される。電気信号の変化は、燃料計又はタンクの外側に取り付けられた自動車データバスに伝わる。このような電気機械的な燃料測定システムは、典型的に正確ではなく、当然ながら、タンクの内側に装置を設置する必要がある。内部燃料水位測定システムは、修繕、置き換え、又は、調整が問題であり、かつ、尿素タンク、および/または、フレックス燃料タンクにおいては、尿素やアルコールよりも比較的により腐食性が高いことが原因で、このような内部燃料水位測定システム機構を使用することは、実際に役に立たないかもしれない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
多かれ少なかれ、本出願と共通に所有された種々の特許出願において、上記の問題は取り組まれてきた。例えば、「燃料タンク内の液体の水位および成分を感知するシステムおよび方法」と題されて、2006年5月10日に出願された、米国特許出願第11/431,912号は、燃料タンクの外側に連結した燃料水位(および成分)センサの設置方法を提供する。直列の実施形態を含むフレックス燃料センサは、「EMF波伝播を使用した液体の成分の感知システムおよび方法」と題されて、2007年12月18日に出願された、米国特許出願番号,に開示されている。「EMF波伝播を使用した燃料タンク内の液体の水位および成分を感知するシステムおよび方法」と題されて、2007年5月8日に出願された、米国特許出願第11/800,965号は、少なくとも前述の問題、特に、SCR装備自動車におけるAUSの成分および./または水位を感知することに関して取り組んでいる。上記各々の出願は参照することによって組み込まれる。
【0016】
本システムおよび方法は、モータ自動車の内部または外部の測定システムによって、より正確に、好ましくは、継続的に、水位、温度および/または液体特にAUSの品質(例えば、成分および/または汚染)を測定する。特に、尿素タンク内のAUSの量を含むAUSの正確な特徴、および、アンモニアおよび/または汚染を含む他の成分含有量のパーセンテージを測定するために、本発明の実施形態は、SCR自動車において使用されるかもしれない。この情報は、SCR自動車の本体制御システムまたはEMSに伝えられ、EMSは応答することができ、それによって、迅速にまた正確に、調整が実行されまた改善されることができ、また少なくとも、SCR自動車の排出量削減能力を維持する。本発明のいくつかの実施形態は、AUSにいかなる直接的な接触をせず、アンモニア等にさらされることによる測定デバイスの摩耗または漏れの危険性を最小限に抑えつつ、AUSの特徴を検出する。この目的のために、本発明の実施形態は、尿素タンクとともに、燃料タンクの底面/側面または燃料タンク内に配置されてもよい。他の実施形態は、本システムおよび方法にしたがって用いる測定のためのプローブの使用を通して、液体への直接的な接触を採用してもよい。種々の実施形態は、燃料タンク内の燃料に関する類似の情報(つまり、アルコール濃度、燃料水位、等)、または、コンテナ内のいかなる他の流体の類似の情報を提供しても良い。
【0017】
本発明の目的は、SCRシステムに関して、システムの誤用(顧客により、尿素タンク内の尿素のかわりに、水、または、他の液体が使用される)の検出も含む。他のこのような目的は、AUSの経年劣化を検出し、また、同様に尿素溶液の濃度を測定することであるがこれは典型的に32.5%になるべきである。
【0018】
本発明の実施形態にしたがって、RF信号は共振回路にわたって発生され、共振回路は可変インダクタおよびキャパシタからなる。電磁放射は、測定されるために液体中を伝播される。結果として、液体の伝導度および誘電特性は、回路のインピーダンスおよび共振を変化させる。これらの変化は、液体の量および体積に比例して、基板にとり付けられたマイクロコントローラ等によって検出された後、メインECUまたは他のエンジン管理電気機器に伝送される。
【0019】
本発明の実施形態は、誘電率および伝導度を測定および比較することによって、AUSまたは他の液体(つまり、液体の構成)の品質を判定するが、これは、与えられた最適周波数における、複素誘電率の実部および虚部の各々を表す。その結果、本発明は、AUS内の尿素の濃度の判定、尿素の経年劣化の検出、タンク内の液体の種類(尿素または非尿素)の判定(誤用検出のために)、現在のタンク内の水の品質(塩分濃度)の判定、および/または、AUS内のディーゼル、オイル、または、尿素を含まないいかなる液体の存在の検出をする能力がある。
【0020】
誘電率測定は、氷の検出にもまた使用され得る。氷は本発明によって検出され得るが、液体が固体になるとき、相転移の間、物質の誘電性および伝導度(誘電率)は、きわめて大幅に変化する。32.5%の尿素溶液はマイナス11℃、水は0℃で凍結するため、AUS内の氷の検出は、尿素の濃度判定にもまた使用され得る。32.5%以下のAUS内の尿素の濃度は、マイナス11℃から0度の間の11度の温度幅において、AUS内の尿素の割合の減少に正比例する量だけ凍結温度を上げる。物質の状態の物理的な変化(液体から固体)の認識の結合、および、これが起きる時の温度の測定は、尿素溶液の判定に用いられることができ、また、尿素タンク内の氷の検出は好ましくはヒーターを動作させ、これは、システムが適切に機能し且つ法定の要求を満たすように氷を解かす。
【0021】
また、本発明にしたがって、上述の液体の品質判定手法は、光学センサを加えることによって補完され得る。光学センサは、AUSの尿素の濃度をより正確に判定することを補助するために使用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、上述のようなセンサのいくつか、あるいは全ての測定は、液体の品質、特に液体の成分および/または汚染の測定に採用されても良い。例えば、品質の測定は、水位(体積)および液体の温度に関して補正してもよい。これは、液体および他の物質の複素誘電率(誘電性/伝導度)が温度と共に変化するという点において、特に有利である。また、回路パラメータが測定され、これは、好ましくは、装置の操作の周波数に起因する複素誘電率(誘電性/伝導度)の変化に比例する。しかしながら、装置の操作の周波数を変更もしくは最適化することは、タンク内の液体の水位(体積)に依存することを減少もしくはなくすことが出来る。本システムおよび方法にしたがって、品質測定に対する水位の影響を減少または取り除く他の方法は、電気的な接地基準(プローブ、PCB、板、筒)を、液体に近接して配設されるデバイスのPCBに付加することでもよい。
【0023】
前述は、後述する発明の詳細な説明がより理解される目的で、本発明の特徴及び技術的な利点をやや広く概説したものである。これは、本発明の追加的な特徴及び利点が以下に記載され、本発明のクレームの主題を構成する。当業者によって、開示される観念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を達成するために、変更又は他の構造を設計するための基礎として容易に用いられるかもしれないと理解されるべきである。また、当業者によって、このような同等の構造は、添付のクレームにおいて説明されるような、発明の趣旨及び範囲から逸脱しないと理解されるべきである。さらなる目的及び効果とともに、その構成及び操作方法の両方について、本発明の特徴であると信じられる新しい特徴は、添付図面と関連付けて考慮されるとき、以下の詳細からより理解されるであろう。明示的に理解されるが、各々の図面は、実例及び説明の目的で提供されるだけであり、また、本発明の限定を定義するものとして意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付図面は、同様の数字は同様の部分を示し、明細書の一部を包含して形成するが、そこには、本発明の実施形態と説明と共に示され、発明の原理を説明する役割を果たす。図において、
【0025】
【図1】尿素タンクに連結して配設される本実施形態のAUSシステムの外付けの実施形態を表す斜視図である。
【0026】
【図2】尿素タンクに連結して配設される本実施形態のAUSシステムの内付けの実施形態を表す部分破断斜視図である。
【0027】
【図3】本発明による、水位、温度、品質測定のための装置の実施形態を表す部分破断斜視図である。
【0028】
【図4】本センサ装置およびシステムの実施形態の簡略化した回路図である。
【0029】
【図5】低伝導度の液体の誘電率を表すグラフである。
【0030】
【図6】高伝導度の液体の誘電率を表すグラフである。
【0031】
【図7】塩が加えられた水(左)と古い尿素(水)の伝導度および誘電特性の変化を表すグラフおよびチャートであって、“AB”は“AdBlue”自動車の尿素溶液の略語であり、“NI”は北アイルランドの略語である。
【0032】
【図8】図6に表される尿素および水の伝導度および誘電特性の変化を表すグラフおよびチャートであって、さらに尿素に水が加えられたものである。
【0033】
【図9】チャートに示される、他の液体の伝導度に対する誘電性のデータ点とともに、図6に表される尿素および水の伝導度および誘電特性の変化を表すグラフおよびチャートである。
【0034】
【図10】並列抵抗を有する種々の液体のキャパシタンスの相関を表すテーブルである。
【0035】
【図11】図10のテーブルに示される結果のグラフである。
【0036】
【図12−13】本発明に関連して採用された電気光学センサの実施形態の図である。
【0037】
【図14】古い尿素溶液と同様に、種々の塩分濃度の水、種々の尿素溶液、水、の相対的な屈折率を表すグラフおよびチャートである。
【0038】
【図15】水で薄められたときの(右から左へ)、AUSの相対的な屈折率を表すグラフおよびチャートである。
【0039】
【図16】種々の他の液体の相対的な屈折率を表すグラフおよびチャートである。
【0040】
【図17】様々な濃度の尿素溶液と同様に、図16において図表にされた、他の種々の液体の相対的な屈折率を表す、線グラフと棒グラフを組み合わせたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本システム及び方法は容器内の液体のタイプを決定することができ、特に、ここでの液体とは実質的に水であり、この説明において使用される例には限定されない。図示され、説明された実施形態において、本システムは自動車のEMSにこの情報を提供することができ、EMSは、自動車製造業者によって推奨されるAUSよりむしろ水などを尿素タンク内に入れた、SCR自動車の不適切な操作を防止するとともに、タンク内の尿素の水位及び濃度を検出するためにこの情報を使用してもよい。
【0042】
図1は、AUSモニタリングデバイスをタンクの外部に取付けたような、尿素タンク102に連結して配設された、本発明におけるAUSモニタリングデバイス100の実施形態を示す。種々の実施形態は、本発明におけるAUSモニタリングデバイスをタンクの外側の側面または外側の底面に取付けることを要求する。尿素タンク102は、プラスチックのような非導電材料で形成されても良い。AUSは、排ガス浄化目的のために、ポンプ103によって、尿素タンク102から自動車の排気管104中へ圧送されても良い。
【0043】
図2は、AUSモニタリングデバイス200をタンクの内部に取り付けたような尿素タンク102に関連して配設された、本発明におけるAUSモニタリングデバイスの他の実施形態(200)を示す。本実施形態は、尿素タンク102が金属のような導電材料で構成された、特定の用途で使用されても良い。
【0044】
図3は、本発明に従って、液体の水位、温度、品質のためのセンサ300の実施形態の部分破断斜視図である。センサ300は、好ましくは、図1と図2に示される尿素タンク102のようなタンクの内部に取付けられる。センサ300は、プローブ302と304を有して示されるが、これらは、例えば、以下で詳述するように、液体の品質を判定するために、並列キャパシタンス(Cp)および/または並列抵抗(Rp)を実現することで測定してもよい。プローブ302及び304は、液体に直接的に接触することで測定をしてもよい。このように、本システム及び方法は、直接的に接触し、もしくは、直接的に接触することなく、液体の特性を測定しても良い。直接接触することがないと、尿素溶液(アンモニア)などにさらされることによる摩耗及び漏れの危険性を最小限に抑える利点を有する。しかしながら、プローブ302及び304は好ましくは、尿素にさらされることによる腐食を回避するためにステンレス等で作られる。
【0045】
図4は、本センサ装置及びシステムの実施形態を単純化された回路図である。このようなデバイス(400)の実施形態は駆動回路404と連結される共振回路402を含む。共振回路402は好ましくは、可変のインダクタ406とキャパシタ408を含み、インダクタはコンテナ内の液体に近接して配置される。測定回路410は、液体の伝導度及び誘電特性の変化に起因する共振回路の共振及びインピーダンスの変化を検出し、共振回路における変化したインピーダンス及び共振にもとづいて液体の伝導度及び誘電特性を測定し、また、測定される液体の誘電性及び電導性を比較しても良い。
【0046】
本発明によれば、図4に示される回路402のようなLCR回路の共振周波数(f)は以下のとおりである。
【0047】
f=1/2π√LC (1)
【0048】
ここでC(LCR回路における等価静電容量)は、液体の誘電率εの関数である。
【0049】
C=εA/d (2)
【0050】
ここでA=キャパシタコンダクタの面積、d=キャパシタコンダクタ間の距離である。
【0051】
ε=ε+jσ/ω (3)
【0052】
ここで、
【0053】
ε=複素誘電率すなわち誘電係数
【0054】
ε=実数部の誘電率=誘電性
【0055】
σ=虚数部の誘電率=伝導度
【0056】
ω=2πf
【0057】
j=jの表記は複素数を示す。
【0058】
高い伝導度の液体にとって、周波数は液体の誘電性であるεおよび液体の伝導度σに比例する(上記等式参照)。
【0059】
実験結果として、実際の誘電率は、低い伝導度の液体においては実数部(誘電性)により比例するが、高い伝導度の液体においては虚数部(伝導度)により比例することが判定された。図5は、前者を、実験的に例として10MHzでの低い伝導度の液体の誘電率のグラフに示し、一方、図6は、10MHzでの高い伝導度の液体誘電率を示す。異なる周波数においては、誘電性および伝導度は異なる態様で振舞う。例えば、周波数が高くなるほど(つまり100MHzにより近くなると)液体の実際の誘電率は低い伝導度及び高い伝導度の液体において、実数部(誘電性)により比例する。したがって、本発明によれば、伝導度は誘電率の変化を支配しないため、周波数が10MHzから増加することによって誘電性をより簡単に認識することが可能となる。
【0060】
さらに実験的なデータが図7において示され、ここでは塩が加えられた水(左)および古い尿素(右)の、伝導度および誘電性の特性の変化がグラフに描かれている。図8は、尿素溶液の希釈による、さらなる実験データを示すグラフである。図9は、他の液体の伝導度および誘電性の特性のデータポイントを図7および図8のグラフに描かれたデータの上に重ねたものである。このように、水と尿素の差別化を容易にするために、本発明の実施形態においてεおよび伝導度が測定される。
【0061】
本方法の種々の実施形態は、可変のインダクタおよびキャパシタを含む共振回路にわたってRF信号を発する。結果として生じる電磁放射は、測定される液体内に伝播される。液体の伝導度および誘電特性の変化に起因するインピーダンスおよび共振回路の共振の変化が測定される。伝導度および誘電特性の変化は測定され、液体の量および体積に比例する。液体の伝導度および誘電特性は、変化したインピーダンスと共振回路の共振とに基づいて測定され、測定された液体の誘電性および伝導度が比較される。
【0062】
この比較は、タンク内の液体が尿素溶液か否かのように、タンク等内の液体の種類を決定するために使用されてもよい。測定された液体が尿素水溶液であれば、その比較は、尿素水溶液の尿素の濃度を提供してもよく、および/または、尿素水溶液の尿素の経年劣化を検出してもよい。あるいは、その比較は、現在タンク内にある水の品質を判定してもよく、このような現在タンク内にある水の品質は水の塩分濃度に基づいても良い。さらに、測定された液体が尿素水溶液のとき、この比較は、ディーゼル燃料、オイル、ガソリン等のような、尿素水溶液内の尿素を含まない液体の存在を検出してもよい。
【0063】
本発明のさらなる実施形態にしたがって、液体の並列抵抗および並列キャパシタンスの測定が行われても良い。このような、液体の並列抵抗および並列キャパシタンスは、個々の液体の伝導度および誘電性に比例することが発見された。したがって、図10は、これらの液体の並列抵抗と種々の液体のキャパシタンスとの相関関係を表すテーブルであり、一方、図11は、図10のテーブルに示される結果のグラフであり、伝導度(並列抵抗Rp)および誘電性(Cp)もしくは各々に比例するパラメータを測定および比較することによって、尿素濃度、経年劣化、汚染がわかることを強調表示している。図10および図11に示される測定結果は、図3に示されるセンサ300のような本発明による装置を使用して得られる。
【0064】
したがって、液体の伝導度および誘電特性の変化の結果である、共振回路のインピーダンスおよび共振の変化を検出することは、液体の並列抵抗および並列キャパシタンスを測定することから導き出されてもよい。液体の並列抵抗は液体の伝導度に比例し、また、液体の並列キャパシタンスは液体の誘電性に比例する。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、上述のようなセンサのいくつか、あるいは全ての測定は、液体の品質、特に液体の成分および/または汚染の測定に採用されても良い。例えば、品質の測定は、水位(体積)および液体の温度に関して補正してもよい。特に、液体および他の材料の複素誘電率(誘電性/伝導度)は温度とともに変化する。本システムおよび方法にしたがって実行された測定結果をさらに改善するために、液体の温度が測定されてもよく、また、測定された液体の誘電性および伝導度の比較は、液体の測定された温度を使用して補正されてもよい。
【0066】
また、並列キャパシタンスおよび並列抵抗のような測定された回路パラメータ、これらは、複素誘電率、すなわち、液体の誘電性および伝導度に比例するが、装置の操作の周波数に起因して、液体の水位が変化するにしたがって変化する。このように、伝導度および誘電特性の変化から推測された液体の体積が、測定された液体の誘電性および伝導度の比較結果を補正するために使用されても良い。加えて、もしくは、代わりに、装置の操作の周波数を変更もしくは最適化することは、タンク内の液体の水位(体積)に依存することを減少もしくはなくすことが出来る。本システムおよび方法にしたがって、品質測定に対する水位の影響を減少または取り除く他の方法は、PCBが液体に近接して配設されるので、電気的な接地基準(プローブ、PCB、板、筒)を、デバイスのPCB取付け電気回路に付加することでもよい。
【0067】
図12および図13は、本発明に関連して採用されても良い電気光学センサ1200の実施形態の図である。電気光学センサ1200は赤外線のLEDおよび光検出器1202を含む。LED1201からの光は、センサの先端を形成するプリズム1203へ入射される。液体の無い状態(1205)を示すと(図12のように)LEDからの光は、プリズム1203内で反射されて検出器1202へ向かう。上昇する液体(1205)がプリズム1203を浸す(図13において示されるように)とき、検出器1202に届く少量の光しか残さずに、光は屈折されて液体に入射する。検出された光は、液体の屈折率に正比例する。図14は、様々な塩分濃度、および、古い尿素溶液と同様に、種々の尿素溶液の、水の相対的な屈折率を表すグラフとチャートである。図15は、水で希釈された(右から左へ)AUSにおける屈折率の違いを表すグラフおよびテーブルである。図16は、様々な他の液体の相対的な屈折率を示すグラフおよびテーブルであり、図17は、様々な濃度の尿素溶液と同様に、図16において図表にされた、他の種々の液体の相対的な屈折率を表す、線グラフと棒グラフを組合わせたグラフである。
【0068】
このように、本発明の種々の実施形態にしたがって、光学センサは液体に沈めてもよく、光はセンサの先端を形成するプリズムに入射してもよく、屈折して液体内に入射する。センサによって検出された反射された光は、液体の屈折率に正比例し、これは、液体が水か尿素溶液であるか否か判定するため、また、屈折率に基づきそのような尿素溶液の濃度を判定するために測定され得る。
【0069】
図14から図17のテーブルおよびグラフは、水と尿素との違いを検出することに光技術が効果的であることを示し、一方、図5から図11のテーブルおよびグラフは、経年劣化および他の液体による汚染を検出することに対して誘電技術が効果的であることを示す。このように、本システムおよび方法の種々の実施形態にしたがって、相補的な方法で、両方の技術の使用が実行されても良い。
【0070】
このように、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、さらなる方法は可変インダクタおよびキャパシタを有する共振回路にわたってRF信号を発生させてもよく、結果として生じる電磁放射が測定される液体中を伝播するかもしれない。液体の伝導度および誘電特性の変化による、共振回路のインピーダンスおよび共振の変化が検出されてもよく、そこでの伝導度および誘電特性の変化は液体の量および体積に比例する。共振回路のインピーダンスおよび共振に基づいて液体の伝導度および誘電特性が測定されてもよく、液体の誘電性および伝導度が比較されても良い。また、このような実施形態によれば、光が液体内に屈折して入射されるように、光学センサが液体に浸水し、かつ、光がセンサの先端を構成するプリズムに入射する。反射された光はセンサによって検出され、検出された光は液体の屈折率に正比例し、屈折率が測定され得る。それにより、判定が実行されてもよく、液体が水か尿素溶液であるか、および、屈折率に基づく尿素溶液の濃度、および、経年劣化、および、他の液体による汚染が尿素の誘電性および伝導度に基づいて判定されてもよい。
【0071】
本発明と本発明の効果が詳細に記載されているが、添付のクレームによって定義されるような本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、様々な変更、置換、修正が可能であると理解されるであろう。さらに、本出願の範囲は、本明細書内に記載された、製造プロセス、機械、製品、物質構造、手法、方法、手順の特定の実施形態に限定されることを意図しない。本技術分野に属する通常の知識を有する者が、現存し又は後に開発され、ここに表される実施形態に相当するような、実質的に同じ機能を発揮し又は実質的には同じ結果を達成する、製造プロセス、機械、製品、物質構造、手法、方法、手順が、本発明によって利用されても良いことが直ちに理解されるであろう。例えば、上述のように、本システムおよび方法は、他の容器および/または伝送路内の液体の成分を識別および測定することができ、また、本説明内に使用される例に限定されない。このシステムは、科学的、民生、工業、医療の多種多様の環境で使用できる。したがって、添付のクレームはそれらのスコープ内にこのような製造プロセス、機械、製品、物質構造、手法、方法、手順、を含むことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振回路にわたってRF信号を発生し、前記共振回路は可変インダクタおよびキャパシタを備え、
測定される液体の中に結果として生じる電磁放射を伝播させ、
液体の誘電特性および伝導度の変化による共振回路のインピーダンスおよび共振の変化を検出し、前記伝導度および誘電特性の変化が液体の量及び体積に比例し、
前記共振回路の前記変化したインピーダンスおよび共振に基づいて液体の伝導度および誘電特性を測定し、かつ、
測定された液体の前記誘電性および伝導度を比較すること
を備える方法。
【請求項2】
前記液体の温度を測定することをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体の測定された温度を用いて、測定された液体の前記誘電性および伝導度の比較の結果を補正することをさらに備える請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体の伝導度および誘電特性の変化を用いて、前記液体の体積を導くことを備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
結果として生じる前記液体の体積の測定を用いて、測定された液体の前記誘電性および伝導度の、結果として生じる前記比較を補正することをさらに備える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
液体の伝導度および誘電特性の変化による、共振回路のインピーダンスおよび共振の前記検出の変化は、前記液体の並列抵抗および並列キャパシタンスの測定によることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体の前記並列抵抗が前記液体の前記伝導度に比例する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記液体の前記並列キャパシタンスが前記液体の前記誘電性に比例する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記測定された液体が尿素水溶液であって、前記比較が前記尿素水溶液の濃度を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記測定された液体が尿素水溶液であって、前記比較が前記尿素水溶液の経年劣化を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記比較がタンク内の液体の種類を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記比較が前記タンク内の液体が尿素溶液か否か判定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記比較が現在のタンク内の水の品質を判定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンク内の水の前記品質は前記水の塩分濃度に基づく、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記測定された液体が尿素水溶液であって、前記比較が前記尿素水溶液内の尿素を含まない液体の存在を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記尿素を含まない液体がディーゼル燃料である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記尿素を含まない液体がオイルである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記尿素を含まない液体がガソリンである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
駆動回路に連結された共振回路であって、前記共振回路は可変インダクタおよびキャパシタを備え、前記インダクタがコンテナ内の液体に近接配置された共振回路と、
液体の伝導度および誘電特性の変化による共振回路のインピーダンスおよび共振の変化を検出する手段と、
前記共振回路の前記変化したインピーダンスおよび共振に基づいて前記伝導度および誘電特性を測定する手段と、
測定された液体の前記誘電性および伝導度を比較する手段と
を備える測定装置。
【請求項20】
前記液体が尿素水溶液である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
光学センサを液体内に沈めることと、
光は前記センサの先端を形成するプリズムに光を入射し、前記光は屈折して液体に入射されることと、
前記センサによって反射された光を検出し、検出された光は液体の屈折率に正比例することと、
前記屈折率を測定することと、かつ、
前記屈折率に基づいて、前記液体が水または尿素溶液であるか、および、尿素溶液の濃度を判定すること
を備える方法。
【請求項22】
共振回路にわたってRF信号を発生させ、前記共振回路は可変インダクタおよびキャパシタを備え、
測定される液体の中に結果として生じる電磁放射を伝播させ、
液体の伝導度および誘電特性の変化による共振回路のインピーダンスおよび共振の変化を検出し、伝導度および誘電特性の前記変化が液体の量および体積に比例し、
前記共振回路のインピーダンスおよび共振の前記変化に基づいて液体の前記伝導度および誘電特性を測定し、
前記液体の前記誘電性および伝導度を比較し、
光が前記センサの先端を形成するプリズムに入射し、前記光が液体に屈折して入射し、
前記センサによって反射した光を検出し、検出された光は液体の屈折率に正比例し、
前記屈折率を測定し、かつ、
屈折率に基づき前記液体が水または尿素溶液であるか、および、尿素溶液の濃度、および、経年劣化、および、前記尿素溶液の誘電性および伝導度の比較に基づいて、他の液体による前記尿素溶液の汚染を検出すること
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−531585(P2012−531585A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517493(P2012−517493)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/001817
【国際公開番号】WO2010/151327
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(508222597)シュレイダー エレクトロニクス リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】SCHRADER ELECTRONICS LTD
【Fターム(参考)】