説明

GISを用いた統合防災システム

【課題】土砂災害システムや砂防情報システム、震度情報システムなど所定地域内に設置された各種の防災システムを統合し、各防災システムで取り扱う情報をリアルタイム且つ一括で収集しながら、運用と管理を行う、統合防災システムを提供する。
【解決手段】所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された各種類の計測器の計測情報や設備情報を監視手段を介して、収集する。収集された計測情報や設備情報と、GIS情報手段が保有するGIS情報とを統合して、防災システムをリアルタイムに運用し、且つ管理する。また、GIS情報に基づいて、整備候補地を判定して、整備計画を効率的に進める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GIS(地理情報システム)をベースにした、土砂災害システムや震度情報システムなどの各種のGISを用いた防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自然災害に対応するための種々の防災システムが提案されてきている。特許文献1には、土砂災害の発生限界線、警戒基準線及び避難基準線の設定方法が示されている。そこでは、斜面要因又は渓流要因を考慮した非線形の土砂災害の発生限界線、避難基準線及び警戒基準線の設定方法や、それを実行するプログラムと現時点において今後に予測される予測雨量あるいは実測降雨データを用いて、降雨の推移状況を示すスネーク曲線を作成し、その発生限界線、避難基準線及び警戒基準線を超えるかどうかを判定するようにしている。
【0003】
また、特許文献2では、まず、GIS表示部が所定の地図上に複数のカメラの各所在位置を表示する。そして、位置指定部よりその地図上の撮影範囲を指定すると、GIS処理部がその撮影範囲の撮影に最適なカメラを複数のカメラの中から選択し、カメラ画像表示部が、選択されたカメラで撮影された画像を表示する。このようにして、指定した撮影範囲を最適なカメラで撮影するGIS統合装置が提案されている。
【特許文献1】特開2004−003274号公報
【特許文献2】特開2003−153249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は土砂災害に対応するために、土砂災害の発生限界線等を設定するものであり、また、特許文献2はGIS表示部に最適な位置で撮影されたカメラ画像を表示するものである。これら従来のものは、GISを用いてはいるが、基本的に単機能の防災システムである。また、それらの防災システムに関連する、限界線の設定や現況の表示は行うことができるとしても、防災システムの関連設備の管理や設備計画などには、対応することはできない。このように従来のものは単なる緯度、経度を用いたシステムに過ぎず、本来GISの有する演算・解析機能は使われることなくシステム構築されている。
【0005】
本発明は、土砂災害システムや砂防情報システム、震度情報システムなど所定地域内に設置された各種の防災システムを統合し、各防災システムで取り扱う情報をリアルタイム且つ一括で収集し、GIS情報と統合させて、運用と管理を行うことができる、統合防災システムを提供することを目的とする。また、これらのシステムをGIS情報と統合させて、それらのシステムの整備とその将来計画の策定に寄与することができる統合防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の統合防災システムは、所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された、第1種類の計測手段乃至第N(但し、Nは2以上)種類の計測手段からの、それぞれの箇所の且つそれぞれの種類の計測情報を受ける、第1監視手段乃至第N監視手段と、
前記第1監視手段乃至第N監視手段からの各計測情報を収集する計測情報収集手段と、
GIS情報を保有するGIS情報手段と、
前記計測情報収集手段の収集された計測情報と、前記GIS情報手段が保有するGIS情報とを統合する情報統合手段と、
該情報統合手段で統合された統合情報を出力する統合情報出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2の統合防災システムは、所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された、第1種類の計測手段乃至第N(但し、Nは2以上)種類の計測手段からの、それぞれの箇所の且つそれぞれの種類の計測情報及び設備情報を受ける、第1監視手段乃至第N監視手段と、
前記第1監視手段乃至第N監視手段からの各計測情報を収集する計測情報収集手段と、
前記第1監視手段乃至第N監視手段からの各設備情報を収集する設備情報収集手段と、
GIS情報を保有するGIS情報手段と、
前記計測情報収集手段の収集された計測情報と、前記設備情報収集手段の収集された設備情報と、前記GIS情報手段が保有するGIS情報とを統合する情報統合手段と、
該情報統合手段で統合された統合情報を出力する統合情報出力手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3の統合防災システムは、請求項1または2に記載の統合防災システムにおいて、前記第1種類乃至第N種類の計測手段の内の任意の計測手段を、整備対象計測手段として整備する際に、
当該整備対象計測手段の種類と整備候補地に対応した設置条件が、満たされるか否かを、前記GIS情報手段が保有するGIS情報に基づいて判定する、整備条件合否判定手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の統合防災システムによれば、土砂災害システムや砂防情報システム、震度情報システムなど所定地域内に設置された各種の防災システムを、GIS情報を保有するGIS情報手段と統合するから、各防災システムで取り扱う情報をリアルタイム且つ一括で収集しながら、運用と管理を行うことができる。
【0010】
特に、国の工事事務所や地方自治体が管轄する所定地域内には、水位計や雨量計、震度計など様々な計測手段(計測器や観測装置)が多数分散して配置されているが、それら全ての計測手段の稼働状況を把握できる。例えば、計測手段の障害や故障の発生時にも迅速に対応できる。
【0011】
また、各種の防災情報を、GIS情報とともに統合して、一元管理できるから、災害予防や避難勧告など、「動的な防災計画」立案にも有効である。
【0012】
また、整備対象となる計測手段(計測器や観測装置)の種類と整備候補地に対応した設置条件が、満たされるか否かを、GIS情報手段が保有する種々のGIS情報から、その整備対象計測手段に対応したGIS情報に基づいて判定する。これにより、防災システムの将来計画を含めた整備計画の策定を効率的に進めることができる。同時に、複数のシステムの整備状況を把握したうえでのシステム設計を実現できることから、システムの重複整備を回避し、整備費用の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の統合防災システム100と、この統合防災システム100へ、その統合防災システム100が管轄する所定値域の各種の観測情報を伝送するための計測器a1〜c13や観測装置A1〜C4とを含むネットワーク構成を示す図である。
【0014】
図1では、砂防情報システムとして、計測器(例えば、水位計;図中「●」で示している)a1〜a13と、観測装置A1〜A4を有している。これを、A系列と言う。観測装置A1には計測器a1〜a4が、観測装置A2には計測器a5〜a7が、観測装置A3には計測器a8〜a10が、観測装置A4には計測器a11〜a13が、それぞれ有線で接続されている。また、観測装置A1〜A4は、統合防災システム100内の第1監視手段10Aに無線もしくは有線で接続されている。そして、それぞれ計測データ(例、水位データ)が伝送される。
【0015】
また、土砂災害情報システムとして、計測器(例えば、雨量計;図中「▲」で示している)b1〜b14と、観測装置B1〜B4を有している。これを、B系列と言う。観測装置B1には計測器b1〜b4が、観測装置B2には計測器b5〜b8が、観測装置B3には計測器b9〜b11が、観測装置B4には計測器b12〜b14が、それぞれ有線で接続されている。また、観測装置B1〜B4は、統合防災システム100内の第2監視手段10Bに無線もしくは有線で接続されている。そして、それぞれ計測データ(例、雨量データ)が伝送される。
【0016】
また、震度情報ネットワークシステムとして、計測器(例えば、震度計;図中「■」で示している)c1〜c13と、観測装置C1〜C4を有している。これを、C系列と言う。観測装置C1には計測器c1〜c3が、観測装置C2には計測器c4〜c7が、観測装置C3には計測器c8〜c10が、観測装置C4には計測器c11〜c13が、それぞれ有線で接続されている。また、観測装置C1〜C4は、統合防災システム100内の第3監視手段10Cに無線もしくは有線で接続されている。そして、それぞれ計測データ(例、震度データ)が伝送される。
【0017】
この図1の例では、情報システムとして、砂防情報システム、土砂災害情報システム、震度情報ネットワークシステムとし、その計測器として、水位計、雨量計、震度計を例示している。この例に限らず、大気情報システムや気象観測システムなど他の情報システムや、濃度計(例、窒素酸化物(NOX)、2酸化炭素(CO2))など、任意のシステムや計測器を用いることができる。
【0018】
これらの計測器a1〜c13や観測装置A1〜C4は、所定の観測地域(例えば、管轄地域;県単位)に、分散配置されている。そして、管轄地域に配置された各情報システムの観測情報を、第1〜第3監視装置10A〜10Cから、データ処理システム20に収集する。
【0019】
データ処理システム20では、収集された各系列の観測情報を、GIS情報とともに統合する。そのGIS情報と各系列の観測情報とが統合された統合情報に基づいて、各情報システムの「運用」、「管理」、及び「整備計画(新設、更新、廃棄など)の策定を行う。
【0020】
図2は、図1に示されるネットワーク構成(但し、その一部)を、各系列別に纏めて、見やすく表現したものである。記号などは、図1におけるものと同じである。
【0021】
図3は、本発明の統合防災システム100を、各機能手段で構成した図を示している。また、図4は、その統合防災システム100の概念を表現する図である。
【0022】
図3において、第1監視手段10Aは、所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された、第1種類の計測手段a1〜a13の計測情報(例、水位データ)や設備情報が、観測装置A1〜A4から供給される。同様に、第2〜第N監視手段10B〜10Nは、所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された、第2〜第N種類の各計測手段の計測情報(例、雨量データ、震度データや、大気データなど)や設備情報が、観測装置B1〜Ni(iは、任意の数)から供給される。
【0023】
計測情報収集手段110は、第1〜第N監視手段10A〜10Nから、各計測情報を収集する。また、設備情報収集手段120は、第1〜第N監視手段10A〜10Nから、各設備情報を収集する。
【0024】
GIS情報手段130は、当該所定地域をカバーするGISデータを持つ。そのGISデータは、GISに関する各種のデータベース(以下、DB)の集合体として構成されている。その各種DBとしては、土地利用DB、自然(環境)DB、建物DB、周辺通信設備DB、標高DB、埋設物DB、気象DB、災害DB、防災設備DB、地盤/地質DB、通信回線DB、道路網DB、交通量DB、特定DBなどの、データベースである。
【0025】
GIS情報手段130からは、これらの各種のGIS−DBのうちの、その時点で必要なDBが呼び出されて、利用される。また、GIS情報手段130のGIS−DBのうちの特定のDB、例えば気象DB、災害DB、防災設備DBは、第1〜第N監視手段10A〜10Nから収集される、各計測情報や各設備情報に基づいて、そのデータ内容が更新される。また、システム利用者が任意にDBを選び表示させることができる。
【0026】
情報統合手段140は、計測情報収集手段110で収集された計測情報と、設備情報収集手段120で収集された設備情報と、GIS情報手段130が保有するGIS情報とを統合する。統合されるGIS情報は、GIS情報手段130が保有する各種DBから、統合される計測情報や設備情報に応じて、必要なDBが呼び出される。
【0027】
具体的には、情報統合手段140は、第1情報統合手段140−1と第2情報統合手段140−2を有していることがよい。第1情報統合手段140−1では、計測情報収集手段110で収集された計測情報と、GIS情報手段130が保有するGIS情報とを統合する。また、第2情報統合手段140−2では、設備情報収集手段120で収集された設備情報と、GIS情報手段130が保有するGIS情報とを統合する。
【0028】
統合情報出力手段150は、情報統合手段140で統合された計測情報、設備情報、及びGIS情報を含む統合情報を出力する。この統合情報出力手段150からの出力形態は、表示形態、警報形態、通報形態、もしくはそれらの組み合わせ形態で出力される。統合情報出力手段150からの出力形態は、基本的には、表示形態でよく、これに警報形態や通報形態を組み合わせることがよい。これにより、統合情報を表示するとともに、計測情報や設備情報の異常値に応じて、所要の警報を行ったり、また、離隔地の事務所や出張所へ通報する。
【0029】
統合情報出力手段150は、第1統合情報出力手段150−1と第2統合情報出力手段150−2を有していることがよい。第1統合情報出力手段150−1では、第1情報統合手段140−1で統合された、計測情報とGIS情報との統合情報を出力する。この第1統合情報出力手段150−1の出力は、主に、統合防災システムの「運用」に用いられる。また、第2統合情報出力手段150−2では、第2情報統合手段140−2で統合された、設備情報とGIS情報との統合情報を出力する。この第2統合情報出力手段150−2の出力は、主に、統合防災システムの「管理」に用いられる。
【0030】
このように、土砂災害システムや砂防情報システム、震度情報システムなど所定地域内に設置された各種の防災システムを、GIS情報を保有するGIS情報手段130と統合する。これにより、各防災システムで取り扱う情報をリアルタイム且つ一括で収集しながら、防災システムの運用と管理を行うことができる。特に、国の工事事務所や地方自治体が管轄する所定地域内には、水位計や雨量計、震度計など様々な計測手段(計測器や観測装置)が多数分散して配置されているが、それら全ての計測手段の稼働状況を把握できる。例えば、計測手段の障害や故障の発生時にも迅速に対応できる。
【0031】
整備条件合否判定手段160は、第1種類乃至第N種類の計測手段(計測器や観測装置)の内の任意の計測手段を、整備対象計測手段として整備する際に、当該整備対象計測手段の種類と整備候補地に対応した設置条件が、満たされるか否かを、GIS情報手段130が保有するGIS情報に基づいて判定する。また、その判定の際に用いられるGIS情報の種類は、整備対象となる計測手段(計測器や観測装置)の種類に応じて、適切な種類が選択されて用いられる。
【0032】
計測情報・設備情報蓄積手段170は、計測情報収集手段110と設備情報収集手段120で収集された計測情報及び設備情報を蓄積する。その計測情報・設備情報蓄積手段170に蓄積された計測情報及び設備情報に基づいて、GIS情報手段130における、関係するDB、即ち、気象DB、災害DB、防災設備DBのデータを、必要に応じて適時に更新する。
【0033】
このように、整備対象となる計測手段(計測器や観測装置)の種類と整備候補地に対応した設置条件が、満たされるか否かを、GIS情報手段が保有するGIS情報に基づいて判定するから、防災システム整備計画を効率的に進めることができる。
【0034】
図4は、以上に説明した本発明の統合防災システム100を、概念的に表現している。この図のように、各種のDBから構成されるGIS情報と、砂防情報(例、水位データ)、土砂情報(例、雨量データ)、震度情報(例、震度データ)などとを統合し、防災システムの運用、管理、整備計画の策定を行う。
【0035】
図5は、本発明の統合防災システム100の構成例を示す図であり、図6は、その一部の具体例を示す図である。
【0036】
図5において、統合防災システム100は、第1監視手段である水位監視装置10Aと、第2監視手段である雨量監視装置10Bと、第3監視手段である震度監視装置10Cと、第N監視手段である大気監視装置10Nと、データ処理システム20とを有している。各監視装置1A〜10Nは、各観測装置から送られてくる、第1〜第N観測情報を蓄積しておくための水位計DB12A、雨量計DB12B、震度計DB12C、・・・大気計DB12Nを、それぞれに対応して有することがよい。
【0037】
データ処理システム20は、Webサーバ22,GISサーバ24、収集サーバ26を含んで構成されている。収集サーバ26は、情報収集の役割を果たす演算処理部26aと、演算処理部26aで収集された収集情報を蓄積しておくデータ蓄積部26bと、外部との情報のやり取りを行う外部入出力部26cを有している。
【0038】
GISサーバ24は、クライアントの操作にしたがって、GISデータとデータ蓄積部26bの収集情報との統合処理、出力処理や整備条件判定処理などGIS処理の中枢処理を果たす演算処理部24aと、各種のGIS−DBを蓄積しておき、演算処理部24aに蓄積データを供給し、また、演算処理部24aから更新された蓄積データを更新するデータ蓄積部24bと、外部との情報のやり取りを行う外部入出力部24cを有している。
【0039】
また、Webサーバ22は、クライアントへの情報伝送や、クライアントの操作情報の収集などを処理する演算処理部22aと、クライアントとの間で送受される情報を蓄積しておくデータ蓄積部22bと、外部との情報のやり取りを行う外部入出力部22cを有している。
【0040】
即ち、このデータ処理システム20は、図3における、計測情報収集手段110〜計測情報・設備情報蓄積手段170を構成する。
【0041】
また、データ処理システム20は、インターネット(またはイントラネット)200を介して、関連部署、例えば、事務所210や出張所220に接続される。
【0042】
このように、所定地域(管轄)内にある防災関連システムを接続し、管轄内にある全ての計測器、観測装置、監視装置を一つながりで結びつける。そして、全ての収集情報を収集サーバ26のデータ蓄積部26bに蓄積する。そして、GISサーバ24は、これらの収集情報と、予めデータ蓄積部24bに格納されていたGISデータとを統合処理する。その統合処理された統合情報を、表示・警報するとともに、Webサーバ22からインターネット200を介して、関連する事務所210や出張所220などの機関に公開する。
【0043】
図7、図8及び図9は、図2に示されるようなシステム構成にあるときの、システム管理の処理フローを示す図である。
【0044】
図7は、監視装置10A〜10Cの稼働状況を監視する処理フローである。図7において、監視装置10A〜10Cから観測情報を受信したか否かを、ステップS701〜ステップS707によって順次判定する。その判定結果にしたがって、ステップS708〜ステップS715に示すように、「防災システムの異常故障」、「監視装置10A、10Bは異常故障」、「監視装置10A、10Cは異常故障」、「監視装置10Aは異常故障」、「監視装置10Bは異常故障」、「監視装置10Cは異常故障」、「全監視装置は正常」を、出力する。
【0045】
図8は、観測装置A1〜A2の稼働状況を監視する処理フローである。図8において、まず、監視装置10Aから観測情報を受信したか否か、次いで観測装置A1、A2から観測情報を受信したか否かを、ステップS801〜ステップS804によって順次判定する。その判定結果にしたがって、ステップS805〜ステップS809に示すように、「監視装置10Aは異常故障」、「全観測装置は異常故障」、「観測装置A1は異常故障」、「観測装置A2は異常故障」、「全観測装置は正常」を、出力する。このようにして、観測装置A1、A2の観測装置の管理を行う。他の観測装置についても同様に管理が行われる。
【0046】
図9は、計測器a1〜計測器a4の稼働状況を監視する処理フローである。図9において、まず、観測装置A1から観測情報を受信したか否か、次いで計測器a1〜a4から観測情報を受信したか否かを、ステップS901〜ステップS916によって順次判定する。その判定結果にしたがって、ステップS918〜ステップS933に示すように、「観測装置A1は異常故障」、「全計測器は異常故障」、「全計測器は正常」、及び各計測器についての正常あるいは異常故障を、出力する。このようにして、計測器a1〜a4の管理を行う。他の計測器についても同様に管理が行われる。なお、これら図7〜図9で説明した処理フローは、それぞれ個別に行うこともできるが、同時且つリアルタイムで行われることが望ましい。
【0047】
これら図7〜図9に示した、統合防災システムの「管理」に基づいて、平時(異常気象でないとき)から、防災システムの状態監視や保守作業を容易に行うことができる。
【0048】
図10、図11及び図12は、観測装置や計測器の整備・設置の計画立案を行う際に、整備条件合否判定手段160において行われる、整備条件合否判定の処理フローを示す図である。図10は、全ての観測装置や計測器に共通する一般的な整備条件合否判定の処理フローを示し、図11は、観測装置の設置を計画した場合の整備条件合否判定の処理フローを示し、また、図12は、計測器として地震計の設置を計画した場合の整備条件合否判定の処理フローを示している。
【0049】
図10では、スタートすると、まず、ステップS101で候補地案を入力する。この候補地案の入力と同時に、該当する観測装置もしくは計測器の設置位置条件001が入力される。
【0050】
GIS情報手段130には、土地利用DB002、自然(環境)DB003、建物DB004、周辺通信設備DB005、標高DB006、埋設物DB007、気象DB008、災害DB009、防災設備DB010、地盤/地質DB011、通信回線DB012、道路網DB013、交通量DB014、及び設置される観測装置もしくは計測器に応じた基準・条件データが入力される特定DB015が、用意されている。当然ながら、この基準・条件データは、利用者が任意に変更することができ、また新たに追加することができる。
【0051】
ステップS102〜S115で、それぞれ土地利用DB002、自然(環境)DB003、建物DB004、周辺通信設備DB005、標高DB006、埋設物DB007、気象DB008、災害DB009、防災設備DB010、地盤/地質DB011、通信回線DB012、道路網DB013、交通量DB014、及び特定DB015のデータを、設置位置条件と、順次比較する。
【0052】
いずれかのステップで、条件を満たさない場合(アンクリアの場合)には、ステップS101に戻り、候補地案を再度入力して、処理フローを繰り返す。
【0053】
ステップS115まで全てのステップで条件を満たした場合(全てクリアの場合)には、ステップS116で候補地を仮決定する。
【0054】
この仮決定された候補地について、ステップS117でシミュレーションを実施し、満足するか、不満足であるかを判断する。不満足である場合には、再度、ステップS101に戻り、候補地案を入力する。
【0055】
ステップS117でシミュレーション結果が満足である場合には、ステップS118で候補地を確定して、処理フローを終了する。
【0056】
観測装置の設置を計画した場合の整備条件合否判定の処理フローの例が、図11に示されている。図11では、ステップS101で観測装置の候補地案を入力すると、同時に、該当する観測装置の設置位置条件001Aが入力される。
【0057】
この観測装置の設置では、土地利用DB002、自然(環境)DB003、埋設物DB007、気象DB008、道路網DB013、交通量DB014に関する判定条件は使用されない。したがって、ステップS102、S103、S107、S108、S113、S114は、判断されない。
【0058】
ステップS104では、建物DB004を用いて、「50m以内に何もないこと」、ステップS105では、周辺通信設備DB005を用いて、「50m以内に何もないこと」、ステップS106では、標高DB006を用いて、「300m以下であること」、ステップS109では、災害DB009を用いて「雪崩・洪水・山崩れが発生したことがないこと」、ステップS110では、防災設備DB010を用いて、「50m以内に何もないこと」、ステップS111では、地盤/地質DB011を用いて、「軟弱地盤ではないこと」、ステップS112では、通信回線DB012を用いて、「近くまで整備されていること」、ステップS115では、特定(傾斜度)DB015Aを用いて、「傾斜度(見通し)35〜45度に何もないこと」、をそれぞれ判定する。その後の処理は、図10と同様である。
【0059】
計測器として地震計の設置を計画した場合の整備条件合否判定の処理フローの例が、図12に示されている。図12では、ステップS101で地震計の候補地案を入力すると、同時に、地震計の設置位置条件001Bが入力される。
【0060】
この地震計の設置では、標高DB006、気象DB008、防災設備DB010、通信回線DB012に関する判定条件は使用されない。したがって、ステップS106、S108、S110、S112は、判断されない。
【0061】
ステップS102では、土地利用DB002を用いて、「工業地域ではないこと」、ステップS103では、自然(環境)DB003を用いて、「高さ5m以上の樹木の根本から10m以上離れていること」、ステップS104では、建物DB004を用いて、「20m以内に何もないこと」、ステップS105では、周辺通信設備DB005を用いて、「高圧線から20m以上離れていること」、ステップS107では、埋設物DB007を用いて、「幅1m以上のタンクや下水道などから20m以上離れていること」、ステップS109では、災害DB009を用いて、「冠水がなかったこと」、ステップS111では、地盤/地質DB011を用いて、「軟弱地盤ではないこと」、ステップS113では、道路網DB013を用いて、「20m以上離れていること」、ステップS114では、交通量DB014を用いて、「大型車混入率は5%未満であること」、ステップS115では、特定(鉄道網)DB015Bのデータを用いて、「100m以上離れていること」、をそれぞれ判定する。その後の処理は、図10と同様である。
【0062】
このように、計測器や観測装置の位置といった「システム整備情報」、さらに、住宅や河川流域、等高線、土地利用状況といった、予め蓄積しておいた各種の「地理情報」と組み合わせることによって、例えば、「土砂災害システムの計測器の設置を、○○地域や、△△川流域に増やそう」といった防災システムの整備計画に反映することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の統合防災システムを含むネットワーク構成を示す図
【図2】図1に示されるネットワーク構成の一部を、各系列別に纏めた図
【図3】本発明の統合防災システムを、各機能手段で構成した図
【図4】本発明の統合防災システムの概念を表現する図
【図5】本発明の統合防災システムの構成例を示す図
【図6】図5の一部の具体例を示す図
【図7】監視装置のシステム管理の処理フローを示す図
【図8】観測装置のシステム管理の処理フローを示す図
【図9】計測器のシステム管理の処理フローを示す図
【図10】整備・設置の計画時の一般的な、整備条件合否判定の処理フロー
【図11】観測装置の整備・設置の計画時の整備条件合否判定の処理フロー
【図12】計測器(地震計)の整備・設置の計画時の整備条件合否判定の処理フロー
【符号の説明】
【0064】
100 統合防災システム
110 計測情報収集手段
120 設備情報収集手段
130 GIS情報手段
140 情報統合手段
150 統合情報出力手段
160 整備条件合否判定手段
170 計測情報・設備情報蓄積手段
10A〜10N 監視手段(監視装置)
20 データ処理システム
22 Webサーバ
24 GISサーバ
26 収集サーバ
A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4 観測装置
a1〜a13、b1〜b14、c1〜c13 計測器
200 インターネット
210 事務所
220 出張所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された、第1種類の計測手段乃至第N(但し、Nは2以上)種類の計測手段からの、それぞれの箇所の且つそれぞれの種類の計測情報を受ける、第1監視手段乃至第N監視手段と、
前記第1監視手段乃至第N監視手段からの各計測情報を収集する計測情報収集手段と、
GIS情報を保有するGIS情報手段と、
前記計測情報収集手段の収集された計測情報と、前記GIS情報手段が保有するGIS情報とを統合する情報統合手段と、
該情報統合手段で統合された統合情報を出力する統合情報出力手段と、を有することを特徴とする、統合防災システム。
【請求項2】
所定地域内のそれぞれ複数箇所に配置された、第1種類の計測手段乃至第N(但し、Nは2以上)種類の計測手段からの、それぞれの箇所の且つそれぞれの種類の計測情報及び設備情報を受ける、第1監視手段乃至第N監視手段と、
前記第1監視手段乃至第N監視手段からの各計測情報を収集する計測情報収集手段と、
前記第1監視手段乃至第N監視手段からの各設備情報を収集する設備情報収集手段と、
GIS情報を保有するGIS情報手段と、
前記計測情報収集手段の収集された計測情報と、前記設備情報収集手段の収集された設備情報と、前記GIS情報手段が保有するGIS情報とを統合する情報統合手段と、
該情報統合手段で統合された統合情報を出力する統合情報出力手段と、を有することを特徴とする、統合防災システム。
【請求項3】
前記第1種類乃至第N種類の計測手段の内の任意の計測手段を、整備対象計測手段として整備する際に、
当該整備対象計測手段の種類と整備候補地に対応した設置条件が、満たされるか否かを、前記GIS情報手段が保有するGIS情報に基づいて判定する、整備条件合否判定手段を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の統合防災システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−268360(P2006−268360A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84621(P2005−84621)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】