説明

GNSS受信装置及び測位方法

【課題】測定精度を向上させること。
【解決手段】GNSS受信装置は、GNSS衛星からの測位信号に含まれるコードを用いて、当該GNSS受信装置により観測すべきデータを求める手段と、GNSS衛星からの測位信号に含まれる軌道情報に基づいて、GNSS衛星の位置を算出する手段と、測位信号以外の情報に基づいて、当該GNSS受信装置の位置を推定する手段と、算出されたGNSS衛星の位置と、推定された当該GNSS受信装置の位置とに基づいて、GNSS衛星と当該GNSS受信装置との間で観測すべきデータを推定する手段と、当該GNSS受信装置の有する誤差に起因する観測データの誤差を推定する手段と、観測データと、観測データ推定値と、受信装置誤差推定値に基づいて、観測データに含まれる誤差を推定する観測データ誤差推定部と、推定された観測データ誤差が所定の閾値以下である観測データを用いて測位演算を行う手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSS用周回衛星からの信号を受信して位置や速度を測定するGNSS受信装置及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星航法(GNSS: Global Navigation Satellite System)とは、航空機から3つの航法衛星(GNSS用周回衛星)(以下、GNSS衛星と呼ぶ)を捕捉することで各GNSS衛星からの距離を得るとともに、4つ目の航法衛星からの信号で時刻合わせを行い、航空機の3次元での飛行位置を得ることができる航法システムである。衛星航法には、全地球的測位システム(GPS: Global Positioning System)、ガリレオ(GALILEO)、グロナス(Glonass)などが含まれる。
【0003】
例えば、GNSS受信装置は移動体に搭載され、該移動体の位置及び速度を測定する。例えば、GNSS受信装置は、複数のGNSS衛星からの電波を受信することによって、複数のGNSS衛星から当該GNSS受信装置までの距離(擬似距離)をそれぞれ測定し、該測定値に基づいて当該GNSS受信装置が搭載された移動体の測位を行う。GNSS衛星により発射された信号は、GNSS衛星とGNSS受信装置との間の距離を電波が伝搬する時間だけ遅れてGNSS受信装置に到達する。従って、複数のGNSS衛星について電波伝搬に要する時間を求めれば、測位演算によってGNSS受信装置の位置を求めることができる。例えば、複数のGNSS衛星により発射された電波は、GNSS受信装置の測拒部において、各GNSS衛星からGNSS受信装置までの距離(擬似距離)が求められる。そして、測位演算部において、測拒部において求められた距離に基づいて、GNSS受信装置の位置が求められる。
【特許文献1】特開2001−264409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GNSS受信装置においては、当該GNSS受信装置とGNSS衛星とを直接結ぶ経路で到来する直接波以外に、建物などで反射して到来する反射波が受信される場合がある。このように、GNSS衛星からの電波が2以上の経路でGNSS受信装置に受信される現象はマルチパスと呼ばれる。GNSS受信装置が直接波ではなく反射波に基づいて擬似距離を求めた場合、反射波は、直接波よりも到達時間が長くなるため、直接波により求められる擬似距離よりも誤差が大きくなる。
【0005】
例えば、GPS受信装置では、GPS衛星からの受信信号と、該受信信号のレプリカ信号との相関が求められ、該相関ピークの位置から擬似距離が求められる。マルチパス環境下で、複数のGPS衛星からの受信信号に基づいて擬似距離が求められる場合、受信信号には反射波が含まれるため、受信信号と、該受信信号のレプリカ信号との相関値のばらつきが大きくなる。受信信号と、該受信信号のレプリカ信号との相関値のばらつきが大きくなるため、擬似距離のばらつきも大きくなり、測位結果の誤差も大きくなる。
【0006】
マルチパスへの対策としては、観測されたドップラーシフト量と、ジャイロセンサや車速センサーの出力によっていわゆるINS(Inertial Navigation System)により算出される推定ドップラーシフト量との差分が閾値よりも小さい衛星からの信号のみを用いて測位演算を行なう方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、ジャイロセンサや車速センサーの出力など、GNSS受信装置において観測できるデータは数多くあるが、観測されたデータの測定精度の良否については観測できない。精度の低い観測データを測位演算に使用した場合には、該測位演算により得られた結果(位置・速度)の精度も悪くなる。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、測定精度を向上させることができるGNSS受信装置及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本GNSS受信装置は、
GNSS衛星から送信される測位信号に基づいて測位演算を行うGNSS受信装置であって、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれるコードを用いて、当該GNSS受信装置により観測すべきデータを求める観測データ演算部と、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれる軌道情報に基づいて、GNSS衛星の位置を算出する位置算出部と、
前記測位信号以外の情報に基づいて、当該GNSS受信装置の位置を推定する位置推定部と、
前記位置算出部により算出されたGNSS衛星の位置と、前記位置推定部により推定された当該GNSS受信装置の位置とに基づいて、GNSS衛星と当該GNSS受信装置との間で観測すべきデータを推定する観測データ推定部と、
当該GNSS受信装置の有する誤差に起因する観測データの誤差を推定する受信装置誤差推定部と、
前記観測データ演算部により求められた観測データと、前記観測データ推定部により推定された観測データ推定値と、前記受信装置誤差推定部により求められた受信装置誤差推定値に基づいて、前記観測データに含まれる誤差を推定する観測データ誤差推定部と、
前記観測データ誤差推定部により推定された観測データ誤差が所定の閾値以下である観測データを用いて測位演算を行う測位演算部と
を有する。
【0010】
他の例では、
前記観測すべきデータには、擬似距離、擬似距離変化率、及び擬似距離変化量のうち、少なくとも1つが含まれる。
【0011】
他の例では、
前記受信装置誤差推定部は、前回の観測データの誤差から観測データの誤差を推定し、前記測位演算部による測位演算結果に基づいて該観測データの誤差を修正する。
【0012】
他の例では、
前記受信装置誤差推定部は、前記測位演算部による位置及び速度演算結果から算出される誤差及び誤差の微分値に基づいて、前記観測データの誤差を修正する。
【0013】
他の例では、
当該GNSS受信装置の有する誤差には、時計誤差が含まれる。
【0014】
他の例では、
前記測位信号以外の情報には、加速度センサ、角加速度センサ、及び地磁気センサのうち、少なくとも1つのセンサからの情報が含まれ、
前記位置推定部は、慣性航法により、当該GNSS受信装置の位置を推定する。
【0015】
他の例では、
地図データベース
を有し、
前記位置推定部は、前記地図データベースとマップマッチングにより、当該GNSS受信装置の位置を推定する。
【0016】
本測位方法は、
GNSS衛星から送信される測位信号に基づいて測位演算を行うGNSS受信装置における測位方法であって、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれるコードを用いて、当該GNSS受信装置により観測すべきデータを求める観測データ演算ステップと、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれる軌道情報に基づいて、GNSS衛星の位置を算出する位置算出ステップと、
前記測位信号以外の情報に基づいて、当該GNSS受信装置の位置を推定する位置推定ステップと、
前記位置算出ステップにより算出されたGNSS衛星の位置と、前記位置推定ステップにより推定された当該GNSS受信装置の位置とに基づいて、GNSS衛星と当該GNSS受信装置との間で観測すべきデータを推定する観測データ推定ステップと、
当該GNSS受信装置の有する誤差に起因する観測データの誤差を推定する受信装置誤差推定ステップと、
前記観測データ演算ステップにより求められた観測データと、前記観測データ推定ステップにより推定された観測データ推定値と、前記受信装置誤差推定ステップにより求められた受信装置誤差推定値に基づいて、前記観測データに含まれる誤差を推定する観測データ誤差推定ステップと、
前記観測データ誤差推定ステップにより推定された観測データ誤差が所定の閾値以下である観測データを用いて測位演算を行う測位演算ステップと
を有する。
【発明の効果】
【0017】
開示のGNSS受信装置及び測位方法によれば、測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明する。
【0019】
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0020】
(第1の実施例)
(システム)
本実施例に係るGNSS(Global Navigation Satellite System 全世界航法衛星システム)は、地球周りを周回するGNSS衛星と、地球上に位置し地球上を移動しうるGNSS受信装置100を備える。本実施例では、GNSSの一例としてGPSについて説明するが、GPS以外のGNSSにも適用できる。
【0021】
GNSS衛星は、航法メッセージ(衛星信号)を地球に向けて常時放送する。航法メッセージには、対応するGNSS衛星に関する衛星軌道情報(エフェメリスやアルマナク)、時計の補正値、電離層の補正係数が含まれる。航法メッセージは、C/Aコードにより拡散され、L1帯の搬送波(周波数:1575.42MHz)に乗せられて、地球に向けて常時放送されている。尚、L1帯の搬送波は、C/Aコードで変調されたSin波とPコード(Precision Code)で変調されたCos波との合成波であり、直交変調されている。C/Aコード及びPコードは、擬似雑音(Pseudo Noise)符号であり、−1と1とが不規則に周期的に並ぶ符号列である。
【0022】
尚、現在、24個のGPS衛星が高度約20,000kmの上空で地球を一周しており、各4個のGPS衛星が55度ずつ傾いた6つの地球周回軌道面に均等に配置されている。従って、天空が開けている場所であれば、地球上のどの場所にいても、常時、少なくとも5個以上のGPS衛星が観測可能である。
【0023】
GNSS受信装置100は、例えば、移動体に搭載される。移動体には、車両、自動二輪車、列車、船舶、航空機、ロボットなど、また、人の移動に伴い移動する携帯端末などの情報端末などが含まれる。
【0024】
GNSS受信装置100の観測データには様々な誤差が含まれる。しかし、GNSS受信装置100では、該誤差を完全には除去できない。従って、測位解の精度も悪くなる。特に、マルチパスの影響により生じる誤差は、100m程度と非常に大きくなる場合がある。
【0025】
(GNSS受信装置)
本実施例に係るGNSS受信装置100は、GNSS衛星からの電波により得られる観測データ以外のデータから当該GNSS受信装置100の位置・速度を推定する。そして、本GNSS受信装置100は、該位置・速度の推定値と、GNSS衛星からの測位信号から得られた該GNSS衛星の位置・速度からGNSS衛星からの観測データを推定する。そして、本GNSS受信装置100は、観測データと観測データの推定値から、観測データの精度を判定する。
【0026】
本GNSS受信装置100は、観測データの精度を判定する際に、GNSS受信装置100が有する特性上必ず含まれる誤差(以下、共通誤差と呼ぶ)自体を推定する。共通誤差を推定することにより、観測データの誤差の推定精度を向上させることができる。
【0027】
本GNSS受信装置100は、精度の悪い観測データに対応するGNSS衛星以外のGNSS衛星を用いて測位演算を行う。精度の悪い観測データに対応するGNSS衛星以外のGNSS衛星により測位演算を行うことにより、測位解の精度を向上させる。
【0028】
観測データには、例えば、擬似距離と、ドップラー周波数と、ADR(Accumulated Doppler Range)とが含まれる。擬似距離、ドップラー周波数、ADR(Accumulated Doppler Range)は、当該GNSS受信装置が捕捉しているGNSS衛星毎に観測できる。他のデータが含まれるようにしてもよい。
【0029】
図1は、本実施例に係るGNSS受信装置を示す。
【0030】
本GNSS受信装置100は、アンテナ102と、測位信号受信部104と、観測データ精度判定部106と、衛星の位置・速度算出部108と、センサ110と、受信機の位置・速度推定部112と、観測データ推定部114と、測位演算部116と、受信機時計誤差推定部118とを有する。
【0031】
アンテナ102は、GNSS衛星50(50、50)からの電波を受信する。図1には2のGNSS衛星が描かれているが、通常4以上のGNSS衛星からの測位信号に基づいて、測位演算が行われる。
【0032】
測位信号受信部104は、アンテナ102と接続される。測位信号受信部104は、GNSS衛星50からの測位信号を、アンテナ102を介して受信する。測位信号受信部104は、内部で発生させたC/Aコードを用いて、L1帯のC/Aコードに対して、C/Aコードのレプリカ信号の位相をずらすことによりC/Aコード同期を行い、航法メッセージを取り出す。測位信号受信部104は、航法メッセージに含まれる衛星の軌道情報を取り出す。C/Aコード同期の方法は、例えば、DDL(Delay-Locked Loop)を用いて、受信したC/Aコードに対するレプリカC/Aコードの相関値がピークとなる位相を追尾する方法であってもよい。測位信号受信部104は、取り出した軌道情報を衛星の位置・速度算出部108に入力する。
【0033】
また、測位信号受信部104は、観測データを観測データ精度判定部106に入力する。例えば、観測データには、擬似距離、ドップラー周波数、ADRが含まれてよい。測位信号受信部104は、C/Aコードに対するC/Aコードのレプリカ信号の相関値がピークとなるコード位相を追尾することにより、捕捉した同一のGNSS衛星からの電波を追尾する。測位信号受信部104は、相関処理の結果に基づいて、擬似距離を計算する。測位信号受信部104は、C/Aコードに対するC/Aコードのレプリカ信号の相関値がピークとなるコード位相を、擬似距離として出力するようにしてもよい。
【0034】
また、測位信号受信部104は、擬似距離の変化率を測定する。該擬似距離変化率は、測位信号を運ぶ搬送波のドップラー周波数に該当する。該擬似距離変化率は、当該GNSS受信装置100の移動速度の計算に使用される。
【0035】
また、測位信号受信部104は、ADR(Accumulated Doppler Range)を計算する。測位信号受信部104は、擬似距離の変化量を求めることによりADRを計算してもよいし、ドップラー周波数を積分することによりADRを計算するようにしてもよい。ADRは、擬似距離のスムージングと移動量の計算に主に使用される。測位信号受信部104は、観測データ精度判定部106に、擬似距離、擬似距離変化率、ADRを入力する。
【0036】
衛星の位置・速度算出部108は、測位信号受信部104と接続される。衛星の位置・速度算出部108は、測位信号受信部104により入力された軌道情報に基づいて、当該GNSS受信装置100の、ワールド座標系での現在位置を計算する。尚、GNSS衛星は、人工衛星の1つであるので、その運動は、地球重心を含む一定面内(軌道面)に限定される。また、GNSS衛星の軌道は地球重心を1つの焦点とする楕円運動であり、ケプラーの方程式を逐次数値計算することで、軌道面上でのGNSS衛星の位置を計算できる。また、GNSS衛星の位置は、GNSS衛星の軌道面とワールド座標系の赤道面が回転関係にあることを考慮して、軌道面上でのGNSS衛星の位置を3次元的な回転座標変換することで得られる。尚、ワールド座標系とは、地球重心を原点として、赤道面内で互いに直交するX軸及びY軸、並びに、この両軸に直交するZ軸により定義される。衛星の位置・速度算出部108は、GNSS衛星の位置に基づいて、GNSS衛星の移動速度を導出する。衛星の位置・速度算出部108は、GNSS衛星の位置及び移動速度を、観測データ推定部114に入力する。
【0037】
センサ110は、受信機の位置・速度推定部112に、GNSS以外から得られる情報を入力する。センサ110には、例えば、加速度センサ、角加速度センサ、地磁気センサ(方位センサ)などが含まれる。センサ110は、GNSS衛星50からの電波を使用することなく当該GNSS受信装置100の位置を求めるためのデータが得られるセンサであるのが好ましい。例えば、センサ110は、受信機の位置・速度推定部112に、加速度センサにより検出された加速度、角加速度センサにより検出された角加速度、地磁気センサにより検出された方位を入力する。
【0038】
受信機の位置・速度推定部112は、センサにより入力された情報に基づいて、当該GNSS受信装置100の位置・速度を推定する。受信機の位置・速度推定部112は、加速度センサにより検出された加速度を積分することにより速度を求め、該速度を積分することにより当該GNSS受信装置100の移動距離を求めるようにしてもよい。受信機の位置・速度推定部112は、慣性航法装置であってもよい。また、受信機の位置・速度推定部112は、移動速度と、地磁気センサにより検出された方位とを用いて、マップマッチングを行うようにしてもよい。マップマッチングが行われる場合には、受信機の位置・速度推定部112には、地図データが入力される。受信機の位置・速度推定部112は、観測データ推定部114に、当該GNSS受信装置100の位置・速度の推定値を入力する。
【0039】
観測データ推定部114は、衛星の位置・速度算出部108及び受信機の位置・速度推定部112と接続される。観測データ推定部114は、衛星の位置・速度算出部108により入力された衛星の位置・速度と、受信機の位置・速度推定部112により推定された当該GNSS受信装置100の位置・速度の推定値に基づいて、観測データを推定する。
【0040】
観測データ推定部114は、GNSS衛星50の位置と当該GNSS受信装置100の位置に基づいて、擬似距離を推定する。また、観測データ推定部114は、擬似距離変化率を計算する。また、観測データ推定部114は、擬似距離変化率を積分することにより、ADRを計算する。観測データ推定部114は、観測データの推定値を観測データ精度判定部106に入力する。
【0041】
観測データ精度判定部106は、測位信号受信部104及び観測データ推定部114と接続される。観測データ精度判定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データと、観測データ推定部114により入力された観測データ推定値に基づいて、観測データの精度を判定する。具体的には、観測データ精度判定部106は、観測データの誤差を推定する。観測データ精度判定部106は、観測データから、観測データ推定値と共通誤差を除くことにより観測データの誤差を推定するようにしてもよい。該共通誤差は、当該GNSS受信装置100の時計誤差に起因する観測データに共通に含まれる誤差であってもよい。観測データ精度判定部106は、観測データの誤差が所定の閾値未満である場合に、該観測データを測位演算部116に入力する。一方、観測データ精度判定部106は、観測データの誤差が所定の閾値以上である場合に、該観測データを測位演算部116に入力しない。
【0042】
測位演算部116は、観測データ精度判定部106と接続される。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された観測データを用いて測位演算を行う。例えば、観測データ精度判定部106から精度のよい擬似距離が入力される。測位演算部116は、3つのGNSS衛星50に対応する擬似距離及び衛星位置を用いて、三角測量の原理で、当該GNSS受信装置100の位置を導出してもよい。この場合、4つ目のGNSS衛星100に対応する擬似距離及び衛星位置を用いて、時計誤差成分が除去されてもよい。測位演算部116は、導出された当該GNSS受信装置100の位置から、該位置の変化率を求めることにより当該GNSS受信装置100の移動速度を導出する。測位演算部116は、導出した当該GNSS受信装置100の位置及び移動速度を出力する。また、測位演算部116は、受信機時計誤差推定部106に、導出した当該GNSS受信装置100の位置及び移動速度を入力する。
【0043】
尚、GNSS受信装置100の位置の測位方法としては、このような単独測位に限られず、干渉測位(既知の点に設置された固定局での受信データを併用する方式)であってもよい。干渉測位の場合、固定局及び当該GNSS受信装置100にてそれぞれ得られる擬似距離の1重位相差や2重位相差等を用いて当該GNSS受信装置100の位置が測定される。
【0044】
受信機時計誤差推定部118は、測位演算部116及び観測データ精度判定部106と接続される。受信機時計誤差推定部118は、当該GNSS受信装置100の時計誤差を予測する。例えば、受信機時計誤差推定部118は、前回測定した時計誤差を用いて、カルマンフィルタにより、当該GNSS受信装置100の時計誤差と該時計誤差の微分値を予測する。GNSS受信機100によっては、バイアス項を足す必要がある場合もある。カルマンフィルタは、受信機時計誤差の微分値の一次マルコフモデルを使用することができる。受信機時計誤差推定部118は、受信機時計誤差の推定値を観測データ精度判定部106に入力する。
【0045】
本GNSS受信装置100では、観測データの精度を判定する際に、GNSS受信装置100が有する特性上必ず含まれる共通誤差の一例として時計誤差を推定する場合について説明するが、他の誤差を推定するようにしてもよい。
【0046】
(測位方法)
図2は、本実施例に係るGNSS受信装置100における測位方法を示す。
【0047】
GNSS受信装置100は、モデルと前回の時計誤差から、受信機時計誤差を予測する(ステップS202)。受信機時計誤差推定部118は、前回の受信機時計誤差を用い、カルマンフィルタを使用することにより、受信機時計誤差と受信機時計誤差の微分値とを推定する。受信機時計誤差推定部118は、受信機時計誤差の推定値を観測データ精度判定部106に入力する。
【0048】
GNSS受信装置100は、位置演算を行う(ステップS204)。観測データ精度判定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差の推定値に基づいて、該受信機時計誤差に起因する擬似距離の共通誤差を求める。そして、観測データ精度判定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離から、観測データ推定部114により入力された観測データの推定値に含まれる擬似距離の推定値と受信機時計誤差に起因する擬似距離の共通誤差とを除くことにより擬似距離誤差を推定する。観測データ精度判定部106は、擬似距離誤差の推定値が所定の閾値未満である場合に、該擬似距離が測位演算に使用できると判定する。観測データ精度判定部106は、測位演算に使用できると判定された擬似距離を測位演算部116に入力する。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された擬似距離を用いて位置演算を行う。
【0049】
GNSS受信装置100は、速度演算を行う(ステップS206)。観測データ精度判定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差の推定値に基づいて、該受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差を求める。そして、観測データ精度判定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離変化率から、観測データ推定部114により入力された観測データの推定値に含まれる擬似距離変化率の推定値と受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差とを除くことにより擬似距離変化率の誤差を推定する。観測データ精度判定部106は、擬似距離変化率の誤差の推定値が所定の閾値未満である場合に、擬似距離変化率を速度演算に使用できると判定する。観測データ精度判定部106は、測位演算に使用できると判定された擬似距離変化率を測位演算部116に入力する。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された擬似距離変化率を用いて速度演算を行う。
【0050】
GNSS受信装置100は、モデルと前回の時計誤差から、受信機時計誤差を予測する(ステップS208)。受信機時計誤差推定部118は、測位演算部116により測位された位置及び速度に基づいて、受信機時計誤差を修正する。
【0051】
図3は、本実施例に係るGNSS受信装置100における位置演算方法を示す。
【0052】
ステップS304からステップS310は、捕捉しているGNSS衛星毎に行われる(ステップS302、S312)。
【0053】
GNSS受信装置100は、擬似距離誤差を推定する(ステップS304)。観測データ精度推定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差推定値から、該受信機時計誤差に起因する擬似距離の共通誤差sを求める。観測データ精度推定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離ρと、観測データ推定部114により入力された観測データの推定値に含まれる擬似距離の推定値rと、受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差sに基づいて、擬似距離誤差ερを推定する。例えば、擬似距離誤差ερは、ερ=ρ-r-sにより推定される。
【0054】
GNSS受信装置100は、ステップS304により推定された擬似距離誤差ερが所定の閾値未満であるか判定する(ステップS306)。観測データ精度判定部106は、擬似距離誤差ερがερ<閾値であるかを判定する。
【0055】
擬似距離誤差ερ<閾値である場合(ステップS306:YES)、該擬似距離に対する使用フラグをオンにする(ステップS308)。観測データ精度判定部106は、擬似距離誤差ερ<閾値である場合、該擬似距離誤差ερに対応する擬似距離ρの使用フラグをオンにする。
【0056】
一方、擬似距離誤差ερ<閾値でない場合(ステップS306:NO)、該擬似距離に対する使用フラグをオフにする(ステップS310)。観測データ精度判定部106は、擬似距離誤差ερ<閾値でない場合、該擬似距離誤差ερに対応する擬似距離ρの使用フラグをオフにする。
【0057】
GNSS受信装置100は、ステップS308により使用フラグがオンにされた擬似距離を用いて当該GNSS受信装置100の位置を演算する(ステップS314)。測位演算部116には、観測データ精度判定部106から使用フラグがオンにされた擬似距離が入力される。測位演算部116は、入力された擬似距離を用いて、当該GNSS受信装置100の位置を演算する。
【0058】
図4は、本実施例に係るGNSS受信装置100における速度演算方法を示す。
【0059】
ステップS404からステップS410は、捕捉しているGNSS衛星毎に行われる(ステップS402、S412)。
【0060】
GNSS受信装置100は、擬似距離変化率誤差(ドップラー周波数誤差)s_dotを推定する(ステップS404)。観測データ精度推定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差推定値に基づいて、該受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差を求める。観測データ精度推定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離変化率dと、観測データ推定部114により入力された観測データの推定値に含まれる擬似距離変化率の推定値r_dotと、受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差s_dotに基づいて、擬似距離変化率誤差を推定する。例えば、擬似距離変化率誤差εは、ε=d-r_dot-s_dotにより推定される。
【0061】
GNSS受信装置100は、ステップS404により推定された擬似距離変化率誤差εが所定の閾値未満であるか判定する(ステップS406)。観測データ精度判定部106は、擬似距離変化率誤差εがε<閾値であるかを判定する。
【0062】
擬似距離変化率誤差ε<閾値である場合(ステップS406:YES)、使用フラグをオンにする(ステップS408)。観測データ精度判定部106は、擬似距離変化率誤差ε<閾値である場合、該擬似距離変化率誤差εに対応する擬似距離変化率dの使用フラグをオンにする。
【0063】
一方、擬似距離変化率誤差ε<閾値でない場合(ステップS406:NO)、使用フラグをオフにする(ステップS410)。観測データ精度判定部106は、擬似距離変化率誤差ε<閾値でない場合、該擬似距離変化率誤差εに対応する擬似距離変化率dの使用フラグをオフにする。
【0064】
GNSS受信装置100は、ステップS408により使用フラグがオンにされた擬似距離変化率を用いて当該GNSS受信装置100の速度を演算する(ステップS414)。測位演算部116には、観測データ精度判定部106から使用フラグがオンにされた擬似距離変化率が入力される。測位演算部116は、入力された擬似距離変化率を用いて、当該GNSS受信装置100の速度を演算する。
【0065】
本実施例によれば、擬似距離誤差が閾値未満である擬似距離を用いて位置演算が行われるので、位置演算精度を向上させることができる。受信機時計誤差に起因する擬似距離の共通誤差を含めて、擬似距離誤差が求められるため、該擬似距離誤差をより正確に見積もることができる。
【0066】
本実施例によれば、擬似距離変化率誤差が閾値未満である擬似距離変化率を用いて速度演算が行われるので、速度演算精度を向上させることができる。受信機時計誤差に起因する擬似距離の共通誤差を含めて、擬似距離変化率誤差が求められるため、該擬似距離変化率誤差をより正確に見積もることができる。
【0067】
(第2の実施例)
本実施例に係るGNSS受信装置について説明する。
【0068】
本実施例に係るGNSS受信装置100は、上述したGNSS受信装置と測位演算に使用する擬似距離及び擬似距離変化率を選択する方法が異なる。本GNSS受信装置100は、観測データの誤差と、GNSS衛星の配置から、捕捉している全GNSS受信装置の組み合わせのうち、可能な組み合わせについて、測位誤差を推定する。そして、測位誤差が最小となる組み合わせについて測位演算を行う。
【0069】
観測データ推定部114は、観測データ精度判定部106に、観測データの推定値と共に、GNSS衛星の位置・速度を入力する。
【0070】
観測データ精度判定部106は、上述した方法により観測データの誤差(擬似距離誤差、擬似距離変化率誤差)を求め、該観測データの誤差とGNSS衛星の位置に基づいて、捕捉しているGNSS衛星の可能な組み合わせについて位置・速度演算を行った場合の測定誤差を推定する。全組み合わせについて測位演算を行うようにしてもよい。そして、観測データ精度判定部106は、推定した測定誤差が最小となる擬似距離、擬似距離変化率を用いて位置・速度演算を行うと判断する。観測データ精度判定部106は、測位演算に使用する擬似距離、擬似距離変化率を測位演算部116に入力する。
【0071】
図5は、本実施例に係るGNSS受信装置100における測位方法を示す。
【0072】
GNSS受信装置100は、モデルと前回の時計誤差から、受信機時計誤差を予測する(ステップS502)。観測データ精度判定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差の推定値に基づいて、該受信機時計誤差に起因する擬似距離の共通誤差を求める。受信機時計誤差推定部118は、前回の受信機時計誤差を用い、カルマンフィルタを使用することにより、受信機時計誤差と受信機時計誤差の微分値とを推定する。受信機時計誤差推定部118は、受信機時計誤差の推定値を観測データ精度判定部106に入力する。
【0073】
GNSS受信装置100は、擬似距離誤差を推定する(ステップS504)。観測データ精度判定部106は、受信機時計誤差の推定値に基づいて、共通誤差を推定する。そして、観測データ精度判定部106は、擬似距離から、擬似距離の推定値と共通誤差とを除くことにより擬似距離誤差を推定する。
【0074】
GNSS受信装置100は、擬似距離誤差変化率を推定する(ステップS506)。観測データ精度判定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差の推定値に基づいて、該受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差を求める。観測データ精度判定部106は、擬似距離誤差変化率から、擬似距離誤差変化率の推定値と共通誤差とを除くことにより擬似距離誤差変化率の誤差を推定する。
【0075】
GNSS受信装置100は、位置演算を行う(ステップS508)。観測データ精度判定部106は、GNSS衛星の可能な組み合わせについて、GNSS衛星の位置と擬似距離の誤差とから測位誤差ε(i)を推定する。ここで、iはi=1,2,・・・,N(Nは、N>0の整数)であり、GNSS衛星の組み合わせの識別子を示す。例えば、観測データ精度判定部106は、式(1)により、測位誤差を求めるようにしてもよい。
【0076】
ε(i)=(HH)−1ερ (1)
式(1)において、Hは測位演算の観測方程式の計画行列であり、ερは擬似距離誤差の推定値のベクトルである。ερは、式(2)により示される。
【0077】
ερ=[ερ1 ερ2 ・・・ ερm (2)
式(2)において、mは測位演算に使用するGNSS衛星の数である。また、Tは転置行列であることを示す。
【0078】
観測データ精度判定部106は、GNSS衛星の組み合わせに対応する測位誤差の内、最小の測位誤差に対応する擬似距離を測位演算部116に入力する。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された擬似距離を用いて測位演算を行う。
【0079】
GNSS受信装置100は、速度演算を行う(ステップS510)。観測データ精度判定部106は、GNSS衛星の可能な組み合わせについて、GNSS衛星の位置と擬似距離変化率の誤差とから測位誤差ε(i)を推定する。ここで、iはi=1,2,・・・,N(Nは、N>0の整数)であり、GNSS衛星の組み合わせの識別子を示す。例えば、観測データ精度判定部106は、式(3)により、測位誤差を求めるようにしてもよい。
【0080】
ε(i)=(HH)−1ε (3)
式(3)において、Hは測位演算の観測方程式の計画行列であり、εは擬似距離変化率誤差の推定値のベクトルである。εは、式(4)により示される。
【0081】
ε=[εd1 εd2 ・・・ εdm (4)
式(4)において、mは速度演算に使用するGNSS衛星の数である。また、Tは転置行列であることを示す。
【0082】
観測データ精度判定部106は、GNSS衛星の組み合わせに対応する測位誤差の内、最小の測位誤差に対応する擬似距離変化率を測位演算部116に入力する。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された擬似距離変化率を用いて速度演算を行う。
【0083】
GNSS受信装置100は、受信機時計誤差をモデルと前回の時計誤差から予測する(ステップS512)。受信機時計誤差推定部118は、測位演算部116により測位された位置及び速度に基づいて、受信機時計誤差を修正する。
【0084】
図6は、本実施例に係るGNSS受信装置100における擬似距離誤差の推定方法を示す。
【0085】
ステップS604は、捕捉しているGNSS衛星毎に行われる(ステップS602、S606)。
【0086】
GNSS受信装置100は、擬似距離誤差を推定する(ステップS604)。観測データ精度推定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差推定値に基づいて、共通誤差を求める。例えば、受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差sを求める。観測データ精度推定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離ρと、観測データ推定部114により入力された観測データの推定値に含まれる擬似距離の推定値rと、受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差sに基づいて、擬似距離誤差ερを推定する。例えば、擬似距離誤差ερは、ερ=ρ-r-sにより推定される。
【0087】
図7は、本実施例に係るGNSS受信装置100における擬似距離誤差の推定方法を示す。
【0088】
ステップS704は、捕捉しているGNSS衛星毎に行われる(ステップS702、S706)。
【0089】
GNSS受信装置100は、擬似距離誤差変化率を推定する(ステップS704)。観測データ精度推定部106は、受信機時計誤差推定部118により入力された受信機時計誤差推定値に基づいて、共通誤差を求める。例えば、受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差s_dotを求める。観測データ精度推定部106は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離変化率dと、観測データ推定部114により入力された観測データの推定値に含まれる擬似距離変化率の推定値r_dotと、受信機時計誤差に起因する擬似距離変化率の共通誤差s_dotに基づいて、擬似距離誤差εを推定する。例えば、擬似距離誤差εは、ε=d-r_dot-s_dotにより推定される。
【0090】
図8は、本実施例に係るGNSS受信装置100における位置・速度演算方法を示す。
【0091】
GNSS受信装置100は、捕捉しているGNSS衛星のうち、測位演算に使用するGNSS衛星の組み合わせの候補を抽出する(ステップS802)。観測データ精度判定部106は、観測データの誤差とGNSS衛星の位置に基づいて、捕捉しているGNSS受信装置100の可能な組み合わせについて測位演算を行った場合の測定誤差を推定する。全組み合わせについて測位演算を行うようにしてもよい。ここで、抽出されたGNSS衛星の組み合わせ毎に識別子iが付される。
【0092】
ステップS806は、GNSS衛星の組み合わせi毎に行われる(ステップS804、S808)。
【0093】
GNSS受信装置100は、測位演算を行う(ステップS806)。該測位演算には、位置演算、速度演算が含まれる。観測データ精度判定部106は、GNSS衛星の組み合わせiについて、GNSS衛星の位置と測位データの誤差とから測位誤差ε(i)を推定する。測位データには、擬似距離、擬似距離変化率が含まれてもよい。ここで、iはi=1,2,・・・,N(Nは、N>0の整数)であり、GNSS衛星の組み合わせの識別子を示す。例えば、観測データ精度判定部106は、上述した式(1)により、位置の測位誤差を求めるようにしてもよい。また、例えば、観測データ精度判定部106は、上述した式(3)により、速度の測位誤差を求めるようにしてもよい。
【0094】
GNSS受信装置100は、測位誤差が最小となるGNSS衛星の組み合わせを使用して測位演算を行う(ステップS810)。観測データ精度判定部106は、全測位誤差の内、最小となる測位誤差に対応する観測データを測位演算部116に入力する。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された観測データを用いて位置及び/又は速度演算を行う。
【0095】
本実施例によれば、可能なGNSS衛星の組み合わせについて、観測誤差が推定される。観測誤差の推定値が最小となる組み合わせにより測位演算が行われるので、位置演算及び速度演算の精度を向上させることができる。
【0096】
(第3の実施例)
本実施例に係るGNSS受信装置について説明する。
【0097】
本GNSS受信装置100は、上述したGNSS受信装置と測位演算に使用する擬似距離及び擬似距離変化率を選択する方法が異なる。本GNSS受信装置100は、観測データの誤差のばらつきが小さいGNSS衛星の組み合わせを選択する。そして、選択したGNSS衛星の組み合わせについて、観測データの誤差と、GNSS衛星の配置から、測位誤差を推定する。そして、該測位誤差が最小となるGNSS受信装置に対応する擬似距離を用いて測位演算を行う。
【0098】
観測データ推定部114は、観測データ精度判定部106に、観測データの推定値と共に、GNSS衛星の位置・速度を入力する。
【0099】
観測データ精度判定部106は、観測データの誤差を上述した方法により求める。該観測データには、擬似距離誤差、擬似距離変化率誤差が含まれる。観測データ精度判定部106は、観測データの誤差のばらつきが所定の閾値以下となる観測データの組み合わせを選択する。そして、該組み合わせに対応する観測データの誤差とGNSS衛星の位置に基づいて、測位演算を行った場合の測位誤差を推定する。そして、観測データ精度判定部106は、測定誤差の推定値が最小となる観測データを用いて測位演算を行うと判断する。観測データ精度判定部106は、測位演算に使用する観測データを測位演算部116に入力する。
【0100】
本実施例に係るGNSS受信装置100における測位方法は、図5−図8を参照して説明した測位方法において、ステップS802の処理が異なる。
【0101】
ステップS802では、GNSS受信装置100は、観測データの誤差から、該観測データの誤差のばらつきが小さい観測データの組み合わせを選択する。そして、GNSS受信装置100は、選択した観測データの組み合わせに対応する観測データの誤差と、GNSS衛星の配置から、測位誤差を推定する。例えば、当該GNSS受信装置100が8個の衛星を捕捉している場合には、測位演算に使用するGNSS衛星の数を4、5、・・・、8と変化させた場合について、観測データの誤差の推定値のばらつきが最も小さくなる組み合わせを抽出する。
【0102】
本実施例によれば、観測データの誤差のばらつきが小さい観測データの組み合わせについて測位誤差が推定されるので、測位誤差を推定するための演算量を減少させることができる。
【0103】
(第4の実施例)
本実施例に係るGNSS受信装置について説明する。
【0104】
本実施例に係るGNSS受信装置100は、上述した第1−第3の実施例に係るGNSS受信装置と同様であるが、測位演算に使用するGNSS衛星が選択された後の処理が異なる。本GNSS受信装置100は、捕捉しているGNSS衛星の対応する観測データの誤差の推定値の全てが所定の閾値以上である場合に、該全GNSS衛星を測位演算に使用する。すなわち、観測データの誤差の推定値の全てが所定の閾値以上である場合に、測位演算に使用するGNSS衛星の選択をリセットする。
【0105】
本GNSS受信装置100における測位方法は、図5を参照して説明した測位方法と同様である。
【0106】
本GNSS受信装置100における擬似距離誤差の推定方法は、図6を参照して説明した擬似距離誤差の推定方法と同様である。
【0107】
本GNSS受信装置100における擬似距離誤差の推定方法は、図7を参照して説明した擬似距離誤差の推定方法と同様である。
【0108】
図9は、本実施例に係るGNSS受信装置100における位置・速度演算方法を示す。
【0109】
GNSS受信装置100は、捕捉している全GNSS衛星のうち、測位演算に使用するGNSS衛星の組み合わせの候補を抽出する(ステップS902)。例えば、観測データの誤差とGNSS衛星の位置に基づいて、捕捉しているGNSS衛星の可能な組み合わせについて測位演算を行った場合の測位誤差を推定する。捕捉している全GNSS衛星の組み合わせについて測位演算を行った場合の測定誤差を推定するようにしてもよい。また、例えば、観測データの誤差のばらつきが小さいGNSS衛星の組み合わせを選択する。そして、選択したGNSS衛星の組み合わせについて、観測データの誤差と、GNSS衛星の配置から、測位誤差を推定するようにしてもよい。ここで、抽出されたGNSS衛星の組み合わせ毎に識別子iが付される。
【0110】
ステップS906は、GNSS衛星の組み合わせi毎に行われる(ステップS904、S908)。
【0111】
GNSS受信装置100は、測位演算を行う(ステップS906)。該測位演算には、位置演算、速度演算が含まれる。観測データ精度判定部106は、GNSS衛星の組み合わせiについて、該GNSS衛星の位置と測位データの誤差とから測位誤差ε(i)を推定する。測位データには、擬似距離、擬似距離変化率が含まれる。ここで、iはi=1,2,・・・,N(Nは、N>0の整数)であり、GNSS衛星の組み合わせの識別子を示す。
【0112】
GNSS受信装置100は、GNSS衛星の組み合わせをリセットするかを判断する(ステップS910)。GNSS受信装置100は、捕捉しているGNSS衛星の対応する観測データの誤差の推定値の全てが所定の閾値以上であるかを判断し、観測データの誤差の推定値の全てが所定の閾値以上である場合に、GNSS衛星の組み合わせをリセットすると判断する。
【0113】
GNSS衛星の組み合わせをリセットすると判断した場合(ステップS910:YES)、GNSS受信装置100は、捕捉している全GNSS衛星を使用して測位演算を行うと判断する(ステップS912)。観測データ精度判定部106は、全測位誤差に対応する観測データを測位演算部116に入力する。一方、GNSS衛星の組み合わせをリセットしないと判断した場合(ステップS910:NO)、GNSS受信装置100は、測位誤差予測値が最小となるGNSS衛星の組み合わせを使用して測位演算を行うと判断する(ステップS914)。観測データ精度判定部106は、全測位誤差の内、最小となる測位誤差に対応する観測データを測位演算部116に入力する。
【0114】
GNSS受信装置100は、位置若しくは速度を演算する(ステップS916)。測位演算部116は、観測データ精度判定部106により入力された観測データを用いて速度演算を行う。
【0115】
本実施例によれば、観測データの誤差がある閾値以上であるか否かに応じて、観測データの誤差がある閾値以上である場合に捕捉している全GNSS衛星を使用し、観測データの誤差がある閾値未満である場合に測位誤差が最小となるGNSS衛星の組み合わせを使用する。観測データの誤差に基づいて、測位演算に使用するGNSS衛星の数を変更することにより、観測データの誤差がある閾値未満のGNSS衛星を使用して測位演算が行われるため、位置演算及び速度演算の精度を向上させることができる。
【0116】
(第5の実施例)
本実施例に係るGNSS受信装置について説明する。
【0117】
本実施例に係るGNSS受信装置100は、上述した第1−第3の実施例に係るGNSS受信装置と同様であるが、測位演算に使用するGNSS衛星が選択された後の処理が異なる。本GNSS受信装置100は、捕捉しているGNSS衛星に対応する観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値が所定の閾値以上である場合に、該全GNSS衛星を測位演算に使用する。すなわち、観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値が所定の閾値以上である場合に、測位演算に使用するGNSS衛星の選択をリセットする。
【0118】
本GNSS受信装置100における測位方法は、図5を参照して説明した測位方法と同様である。
【0119】
本GNSS受信装置100における擬似距離誤差の推定方法は、図6を参照して説明した擬似距離誤差の推定方法と同様である。
【0120】
本GNSS受信装置100における擬似距離誤差の推定方法は、図7を参照して説明した擬似距離誤差の推定方法と同様である。
【0121】
本GNSS受信装置100における位置・速度演算方法は、図9を参照して説明した位置・速度演算方法において、ステップS910の処理が異なる。
【0122】
ステップS910では、GNSS受信装置100は、GNSS衛星の組み合わせをリセットするかを判断するが、GNSS受信装置100は、捕捉しているGNSS衛星に対応する観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値が所定の閾値以上であるかを判断し、観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値が所定の閾値以上である場合に、GNSS衛星の組み合わせをリセットすると判断する。観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値が所定の閾値未満である場合には、GNSS衛星の組み合わせをリセットすると判断しない。
【0123】
本実施例によれば、観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値がある閾値以上であるか否かに応じて、観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値がある閾値以上である場合に捕捉している全GNSS衛星を使用し、観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値がある閾値未満である場合に測位誤差が最小となるGNSS衛星の組み合わせを使用する。観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値に基づいて、測位演算に使用するGNSS衛星の数を変更することにより、観測データの誤差の推定値の絶対値の平均値がある閾値未満のGNSS衛星を使用して測位演算が行われるため、位置演算及び速度演算の精度を向上させることができる。
【0124】
(第6の実施例)
本実施例に係るGNSS受信装置について説明する。
【0125】
図10は、本GNSS受信装置100の機能ブロック図を示す。本GNSS受信装置100は、上述した第1−第5の実施例に係るGNSS受信装置と、受信機時計誤差推定部118を有さない点で異なる。
【0126】
図11は、図10に示される本GNSS受信装置100の観測データ推定部114及び観測データ精度判定部106の詳細を示す。観測データ推定部114は、擬似距離推定部1142、ドップラー周波数推定部1144、及びADR推定部1146が含まれる。観測データ精度判定部106は、擬似距離精度判定部1062、ドップラー周波数精度判定部1064、ADR精度判定部1066、DOP(Dilution of Precision)算出部1068(1068、1068、1068)、及びデータ選択部1070を有する。
【0127】
擬似距離推定部1142は、衛星の位置・速度算出部108及び受信機の位置・速度推定部112と接続される。擬似距離推定部1142は、衛星の位置・速度算出部108により入力された衛星の位置・速度と、受信機の位置・速度推定部112により入力された受信機の位置・速度の推定値に基づいて、擬似距離を推定する。擬似距離推定部1142は、擬似距離の推定値を擬似距離精度判定部1062に入力する。
【0128】
ドップラー周波数推定部1144は、衛星の位置・速度算出部108及び受信機の位置・速度推定部112と接続される。ドップラー周波数推定部1144は、衛星の位置・速度算出部108により入力された衛星の位置・速度と、受信機の位置・速度推定部112により入力された受信機の位置・速度の推定値に基づいて、ドップラー周波数を推定する。ドップラー周波数推定部1144は、ドップラー周波数の推定値をドップラー周波数精度判定部1064に入力する。
【0129】
ADR推定部1146は、衛星の位置・速度算出部108及び受信機の位置・速度推定部112と接続される。ADR推定部1146は、衛星の位置・速度算出部108により入力された衛星の位置・速度と、受信機の位置・速度推定部112により入力された受信機の位置・速度の推定値に基づいて、ADRを推定する。ドップラー周波数推定部1146は、ADRの推定値をADR精度判定部1066に入力する。
【0130】
擬似距離精度判定部1062は、測位信号受信部104及び擬似距離推定部1142と接続される。擬似距離精度判定部1062は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれる擬似距離と、擬似距離推定部1142により入力された擬似距離推定値に基づいて、擬似距離の推定値の精度を判定する。擬似距離精度判定部1062は、擬似距離の推定値の精度が所定の閾値以上である擬似距離の推定値をDOP算出部1068に入力する。該閾値は、擬似距離の精度がよいと判定できる閾値である。
【0131】
ドップラー周波数精度判定部1064は、測位信号受信部104及びドップラー周波数推定部1144と接続される。ドップラー周波数精度判定部1064は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれるドップラー周波数と、ドップラー周波数推定部1144により入力されたドップラー周波数推定値に基づいて、ドップラー周波数の推定値の精度を判定する。ドップラー周波数精度判定部1064は、ドップラー周波数の推定値の精度が所定の閾値以上であるドップラー周波数の推定値をDOP算出部1068に入力する。該閾値は、ドップラー周波数の精度がよいと判定できる閾値である。
【0132】
ADR精度判定部1066は、測位信号受信部104及びADR推定部1146と接続される。ADR精度判定部1066は、測位信号受信部104により入力された観測データに含まれるADRと、ADR推定部1146により入力されたADR推定値に基づいて、ADR推定値の精度を判定する。ADR精度判定部1066は、ADR推定値の精度が所定の閾値以上であるADR推定値をDOP算出部1068に入力する。該閾値は、ADRの精度がよいと判定できる閾値である。
【0133】
DOP算出部1068は、擬似距離精度判定部1062と接続される。DOP算出部1068は、擬似距離精度判定部1062により入力された精度のよい擬似距離に基づいて、擬似距離の可能な組み合わせについてDOPを算出する。DOP算出部1068は、DOPが最小となる擬似距離の組み合わせと、該擬似距離の組み合わせについてHDOP(Horizontal Dilution of Precision)と、VDOP(Vertical Dilution of Precision)とを求める。DOP算出部1068は、DOPが最小となる擬似距離の組み合わせ、HDOP、及びVDOPをデータ選択部1070に入力する。
【0134】
DOP算出部1068は、ドップラー周波数精度判定部1064と接続される。DOP算出部1068は、ドップラー周波数精度判定部1064により入力された精度のよいドップラー周波数に基づいて、ドップラー周波数の可能な組み合わせについてDOPを算出する。DOP算出部1068は、DOPが最小となるドップラー周波数の組み合わせと、該ドップラー周波数の組み合わせについてHDOPと、VDOPとを求める。DOP算出部1068は、DOPが最小となるドップラー周波数の組み合わせ、HDOP、及びVDOPをデータ選択部1070に入力する。
【0135】
DOP算出部1068は、ADR精度判定部1066と接続される。DOP算出部1068は、ADR精度判定部1066により入力された精度のよいADRに基づいて、ADRの可能な組み合わせについてDOPを算出する。DOP算出部1068は、DOPが最小となるADRの組み合わせと、該ADRの組み合わせについてHDOPと、VDOPとを求める。DOP算出部1068は、DOPが最小となるADRの組み合わせ、HDOP、及びVDOPをデータ選択部1070に入力する。
【0136】
データ選択部1070は、DOP算出部1068、1068、及び1068と接続される。データ選択部1070には、DOP算出部1068によりDOPが最小となる擬似距離の組み合わせ、HDOP、及びVDOPが入力され、DOP算出部1068によりDOPが最小となるドップラー周波数の組み合わせ、HDOP、及びVDOPが入力され、DOP算出部1068によりDOPが最小となるドップラー周波数の組み合わせ、HDOP、及びVDOPが入力される。データ選択部1070は、DOP算出部1068により入力されたHDOPのうち、最小となるHDOPを選択する。データ選択部1070は、該選択されたHDOPが所定の閾値以下であるかを判定する。データ選択部1070は、該選択されたHDOPが所定の閾値以下である場合には、3D測位を行うと判断する。一方、データ選択部1070は、該選択されたHDOPが所定の閾値未満である場合には、2D測位を行うと判断する。データ選択部1070は、選択されたHDOPに対応する擬似距離と、2D又は3Dを指定するための信号を測位演算部116に入力する。
【0137】
また、データ選択部1070は、DOP算出部1068により入力されたHDOPのうち、最小となるHDOPを選択するようにしてもよいし、DOP算出部1068により入力されたHDOPのうち、最小となるHDOPを選択するようにしてもよい。データ選択部1070は、該選択されたHDOPが所定の閾値以下であるかを判定する。データ選択部1070は、該選択されたHDOPが所定の閾値以下である場合には、3D測位を行うと判断する。一方、データ選択部1070は、該選択されたHDOPが所定の閾値未満である場合には、2D測位を行うと判断する。データ選択部1070は、選択されたHDOPに対応する擬似距離と、2D又は3Dを指定するための信号を測位演算部116に入力する。
【0138】
測位演算部116は、データ選択部1070により入力された擬似距離と、2D/3Dを指定する信号に基づいて、2Dにおける測位又は3Dにおける測位を行う。
【0139】
図12は、本GNSS受信装置100のDOP算出部1068における処理の一部を示す。
【0140】
ステップS1204からステップS1206は、捕捉しているGNSS衛星に対して行われる(ステップS1202、S1208)。
【0141】
GNSS受信装置100は、精度の良い擬似距離を選出する(ステップS1204)。DOP算出部1068は、擬似距離精度判定部1062により入力された精度の良い擬似距離を選出する。
【0142】
GNSS受信装置100は、ステップS1204により選出された擬似距離のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する(ステップS1206)。DOP算出部1068は、選出した擬似距離のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する。
【0143】
図13は、本GNSS受信装置100のDOP算出部1068における処理の一部を示す。
【0144】
ステップS1304からステップS1306は、捕捉しているGNSS衛星に対して行われる(ステップS1302、S1308)。
【0145】
GNSS受信装置100は、精度の良いドップラー周波数を選出する(ステップS1304)。DOP算出部1068は、ドップラー周波数精度判定部1064により入力された精度の良いドップラー周波数を選出する。
【0146】
GNSS受信装置100は、ステップS1304により選出されたドップラー周波数のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する(ステップS1306)。DOP算出部1068は、選出したドップラー周波数のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する。
【0147】
図14は、本GNSS受信装置100のDOP算出部1068における処理の一部を示す。
【0148】
ステップS1404からステップS1406は、捕捉しているGNSS衛星に対して行われる(ステップS1402、S1408)。
【0149】
GNSS受信装置100は、精度の良いADRを選出する(ステップS1404)。DOP算出部1068は、ADR精度判定部1066により入力された精度の良いADRを選出する。
【0150】
GNSS受信装置100は、ステップS1404により選出されたADRのうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する(ステップS1406)。DOP算出部1068は、選出したADRのうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する。
【0151】
図15及び図16は、本GNSS受信装置100のDOP算出部1068における処理の一部を示す。
【0152】
図15では、DOP算出部1068は、捕捉しているGNSS衛星のうち4以上のGNSS衛星についての可能な組み合わせについて、精度の良い擬似距離を選出し、該擬似距離からDOPを算出し、算出したDOPに基づいて、最適な組み合わせを選択する。
【0153】
ステップS1504からステップS1508は、捕捉しているGNSS衛星に対して行われる(ステップS1502、S1510)。
【0154】
GNSS受信装置100は、精度の良い擬似距離を選出する(ステップS1504)。DOP算出部1068は、擬似距離精度判定部1062により入力された精度の良い擬似距離を選出する。
【0155】
GNSS受信装置100は、ステップS1504により選出された擬似距離のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する(ステップS1506)。DOP算出部1068は、選出した擬似距離のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する。
【0156】
GNSS受信装置100は、DOPの残差とDOPを保存する(ステップS1508)。DOP算出部1068は、算出したDOPの平均値を求め、該平均値からの残差を求める。そして、DOP算出部1068は、残差とDOPとを一時的に記憶する。
【0157】
GNSS受信装置100は、ステップS1510により記憶された残差とDOPとに基づいて、残差×DOPが最小となる組み合わせを選出する(ステップS1512)。DOP算出部1068は、一時的に記憶した残差とDOPとに基づいて、残差×DOPを算出する。そして、DOP算出部1068は、残差×DOPが最小となる組み合わせを選択する。
【0158】
図16では、DOP算出部1068は、捕捉しているGNSS衛星のうち、GNSS衛星の組み合わせについて、最初に4のGNSS衛星についての可能な組み合わせについて、精度の良い擬似距離を選出し、該擬似距離からDOPを算出し、該DOPが所定の閾値以下である場合に、該4のGNSS衛星を選択する。該DOPが所定の閾値より大きい場合には、他の組み合わせについて同様の処理を行う。所定の閾値以下のDOPが得られない場合には、衛星の数を増加させる。
【0159】
ステップS1604からステップS1608は、捕捉しているGNSS衛星に対して行われる(ステップS1602、S1610)。
【0160】
GNSS受信装置100は、精度の良い擬似距離を選出する(ステップS1604)。DOP算出部1068は、擬似距離精度判定部1062により入力された精度の良い擬似距離を選出する。
【0161】
GNSS受信装置100は、ステップS1604により選出された擬似距離のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する(ステップS1606)。DOP算出部1068は、選出した擬似距離のうち、可能な組み合わせについてDOPを算出する。
【0162】
GNSS受信装置100は、算出したDOPの平均値を求め、該平均値からの残差を求める。そして、GNSS受信装置100は、残差×DOPが所定の閾値以下であるかを判断する(ステップS1608)。DOP算出部1068は、算出したDOPの平均値を求め、該平均値からの残差を求める。DOP算出部1068は、残差×DOPが所定の閾値以下であるかを判断する(ステップS1608)。
【0163】
残差×DOPが所定の閾値以下である場合(ステップS1608:YES)、GNSS受信装置100は、該DOPに対応するGNSS衛星の組み合わせを測位演算に使用すると判断する。DOP算出部1068は、残差×DOPが所定の閾値以下である場合、該DOPに対応する擬似距離の組み合わせを測位演算に使用すると判断する。DOP算出部1068は、擬似距離の組み合わせをデータ選択部1070に入力する。
【0164】
残差×DOPが所定の閾値より大きい場合(ステップS1608:NO)、GNSS受信装置100は、他の組み合わせについて、ステップS1604−S1608の処理を行う。
【0165】
図17は、本GNSS受信装置100のデータ選択部1070における処理の一部を示す。
【0166】
GNSS受信装置100は、擬似距離の組み合わせについてのHDOPのうち、HDOPが最小となる擬似距離の組み合わせを選択する(ステップS1702)。データ選択部1070は、DOP算出部1068により入力されたHDOPに基づいて、該HDOPが最小となるHDOPに対応する擬似距離を選択する。
【0167】
GNSS受信装置100は、ステップS1702により選択された擬似距離に対応するVDOPが所定の閾値以下であるかを判断する(ステップS1704)。データ選択部1070は、選択した擬似距離に対応するHDOPが所定の閾値以下であるかを判断する。
【0168】
HDOPが所定の閾値以下である場合(ステップS1704:YES)、GNSS受信装置1000は、3D測位を行うと判断する(ステップS1706)。データ選択部1070は、選択した擬似距離に対応するHDOPが所定の閾値以下である場合には、3D測位を行うと判断する。
【0169】
一方、HDOPが所定の閾値より大きい場合(ステップS1704:NO)、GNSS受信装置1000は、2D測位を行うと判断する(ステップS1708)。データ選択部1070は、選択した擬似距離に対応するHDOPが所定の閾値より大きい場合には、2D測位を行うと判断する。
【0170】
本実施例によれば、測位演算が可能であるGNSS衛星の数(4衛星)から、当該GNSS受信装置により捕捉しているGNSS衛星数の中で、DOPが最も良いGNSS衛星の組み合わせにより測位演算が行われるので、位置・速度演算精度を向上させることができる。
【0171】
本実施例によれば、測位演算が可能であるGNSS衛星の数(4衛星)から順に、該GNSS衛星の組み合わせについてDOPを求め、該DOPが所定の特性を満たす場合に該GNSS衛星の組み合わせより測位演算を行うようにすることにより、位置・速度演算精度を満足しつつ、処理速度を向上させることができる。
【0172】
説明の便宜上、発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明されるが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてよい。
【0173】
以上、本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、各実施例は単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウエアで、ソフトウエアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が包含される。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】一実施例に係るGNSS受信装置の機能ブロック図である。
【図2】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図3】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図4】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図5】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図6】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図7】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図8】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図9】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図10】一実施例に係るGNSS受信装置の機能ブロック図である。
【図11】一実施例に係るGNSS受信装置の機能ブロック図である。
【図12】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図13】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図14】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図15】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図16】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【図17】一実施例に係るGNSS受信装置の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0175】
50(50、50) GNSS衛星
100 GNSS受信装置
102 アンテナ
104 測位信号受信部
106 観測データ精度判定部
1062 擬似距離精度判定部
1064 ドップラー周波数精度判定部
1066 ADR精度判定部
1068(1068、1068、1068) DOP算出部
1070 データ選択部
108 衛星の位置・速度算出部
110 センサ
112 受信機の位置・速度推定部
114 観測データ推定部
1142 擬似距離推定部
1144 ドップラー周波数推定部
1146 ADR推定部
116 測位演算部
118 受信機時計誤差推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS衛星から送信される測位信号に基づいて測位演算を行うGNSS受信装置であって、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれるコードを用いて、当該GNSS受信装置により観測すべきデータを求める観測データ演算部と、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれる軌道情報に基づいて、GNSS衛星の位置を算出する位置算出部と、
前記測位信号以外の情報に基づいて、当該GNSS受信装置の位置を推定する位置推定部と、
前記位置算出部により算出されたGNSS衛星の位置と、前記位置推定部により推定された当該GNSS受信装置の位置とに基づいて、GNSS衛星と当該GNSS受信装置との間で観測すべきデータを推定する観測データ推定部と、
当該GNSS受信装置の有する誤差に起因する観測データの誤差を推定する受信装置誤差推定部と、
前記観測データ演算部により求められた観測データと、前記観測データ推定部により推定された観測データ推定値と、前記受信装置誤差推定部により求められた受信装置誤差推定値に基づいて、前記観測データに含まれる誤差を推定する観測データ誤差推定部と、
前記観測データ誤差推定部により推定された観測データ誤差が所定の閾値以下である観測データを用いて測位演算を行う測位演算部と
を有することを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のGNSS受信装置において、
前記観測すべきデータには、擬似距離、擬似距離変化率、及び擬似距離変化量のうち、少なくとも1つが含まれることを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のGNSS受信装置において、
前記受信装置誤差推定部は、前回の観測データの誤差から観測データの誤差を推定し、前記測位演算部による測位演算結果に基づいて該観測データの誤差を修正することを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載のGNSS受信装置において、
前記受信装置誤差推定部は、前記測位演算部による位置及び速度演算結果から算出される誤差及び誤差の微分値に基づいて、前記観測データの誤差を修正することを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項5】
請求項1に記載のGNSS受信装置において、
当該GNSS受信装置の有する誤差には、時計誤差が含まれることを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項6】
請求項1に記載のGNSS受信装置において、
前記測位信号以外の情報には、加速度センサ、角加速度センサ、及び地磁気センサのうち、少なくとも1つのセンサからの情報が含まれ、
前記位置推定部は、慣性航法により、当該GNSS受信装置の位置を推定することを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項7】
請求項1に記載のGNSS受信装置において、
地図データベース
を有し、
前記位置推定部は、前記地図データベースとマップマッチングにより、当該GNSS受信装置の位置を推定することを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項8】
GNSS衛星から送信される測位信号に基づいて測位演算を行うGNSS受信装置における測位方法であって、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれるコードを用いて、当該GNSS受信装置により観測すべきデータを求める観測データ演算ステップと、
前記GNSS衛星からの測位信号に含まれる軌道情報に基づいて、GNSS衛星の位置を算出する位置算出ステップと、
前記測位信号以外の情報に基づいて、当該GNSS受信装置の位置を推定する位置推定ステップと、
前記位置算出ステップにより算出されたGNSS衛星の位置と、前記位置推定ステップにより推定された当該GNSS受信装置の位置とに基づいて、GNSS衛星と当該GNSS受信装置との間で観測すべきデータを推定する観測データ推定ステップと、
当該GNSS受信装置の有する誤差に起因する観測データの誤差を推定する受信装置誤差推定ステップと、
前記観測データ演算ステップにより求められた観測データと、前記観測データ推定ステップにより推定された観測データ推定値と、前記受信装置誤差推定ステップにより求められた受信装置誤差推定値に基づいて、前記観測データに含まれる誤差を推定する観測データ誤差推定ステップと、
前記観測データ誤差推定ステップにより推定された観測データ誤差が所定の閾値以下である観測データを用いて測位演算を行う測位演算ステップと
を有することを特徴とする測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−151725(P2010−151725A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332125(P2008−332125)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】