説明

MOSトランジスタ

【課題】 メタル配線の抵抗成分をさらに低減し、システム電源デバイスの高出力・高効率化を実現できるとともにさらなる素子面積の縮小を図ることができるMOSトランジスタを提供する。
【解決手段】 ソース領域とドレイン領域とが格子状に形成されたゲートを挟んで互いに隣接するように形成されたMOSトランジスタにおいて、MOSトランジスタを半導体チップ上の角部に配置し、半導体チップ上の1つの角部の第1のチップエッジに隣接する領域に、ソース領域に接続されたソース側メタル配線が接続される第1のソースボンディングパッドとドレイン領域に接続されたドレイン側メタル配線が接続される第1のドレインボンディングパッドとを設け、角部の第2のチップエッジに隣接する領域に、ソース側メタル配線が接続される第2のソースボンディングパッドとドレイン側メタル配線が接続される第2のドレインボンディングパッドとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMOSトランジスタに関し、より詳しくは、オン抵抗を低減できる格子状MOSトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、家電等の電子機器においては、その高性能化に伴い、多数のCPUを一つのセット基板上に配置するケースが増加している。また、一つのCPUに対する高速演算処理の要求が増加しているため、従来に比べてCPUの消費電流が増加する傾向にある。このため、CPUへ電源を供給するシステム電源デバイスの高出力化が求められている。特に携帯電話などの携帯機器では、バッテリを電源とするCPUを長時間駆動する必要があるため、システム電源デバイスの高効率化の要望が高まっている。
【0003】
システム電源デバイスの高出力・高効率化を図る技術としては、当技術分野では周知のDC−DCコンバータやLDO(低ドロップアウトレギュレータ)を用いる方法がある。しかしその場合、高出力化のためには出力段のMOSトランジスタの素子面積を大きくする必要がある。
【0004】
図7〜図10を用いて、従来例のMOSトランジスタを説明する。図7は、従来例のMOSトランジスタの要部拡大断面図(後述する図7のA−A’断面図)である。図7において、P基板71の表面上にはバックゲート拡散層72が形成されている。バックゲート拡散層72の表層部にはソース領域73及びドレイン領域74が形成されている。ソース領域73とドレイン領域74との間のチャンネル領域上には、ゲート酸化膜75を介してポリシリコンゲート76が形成されている。ソース領域73には、第1層メタル配線77が接続されている。ドレイン領域74には、第1層メタル配線77を通過して第2層メタル配線78が接続されている。
【0005】
図8は、第1層メタル配線77及び第2層メタル配線78を取り除いたときの従来例のMOSトランジスタの平面概略図を示している。ソース領域73とドレイン領域74とは、図8に示すように、格子状に形成されたポリシリコンゲート76を挟んでソース(Sと表示する)とドレイン(Dと表示する)とが市松格子状に互いに隣接するように形成されている。(以下、簡略化のため、ソース領域とドレイン領域とが、上記のようなパターンで配置されるMOSトランジスタを格子状MOSトランジスタという。)
【0006】
従来例の格子状MOSトランジスタは、上記のように構成されることにより、半導体チップ上で横方向と縦方向に電流を流せるので、単位面積あたりの電流能力を高くすることができる。
しかし、従来例の格子状MOSトランジスタにおいても、数百ミリアンペアの電流能力を確保するためには、数百マイクロ平方メートル以上の素子面積を必要とする。そのために素子面積を大きくすると、メタル配線の寄生抵抗が増加する。このメタル配線の寄生抵抗は、MOSトランジスタの出力抵抗に付加されるものであるので、設計時点に比べて電力効率の損失が増加することになる。以下にメタル配線の寄生抵抗について説明する。
【0007】
図9及び図10は、従来例の格子状MOSトランジスタを半導体チップ上に配置した一般的な例である。図9及び図10に示す従来例の格子状MOSトランジスタは、ソース領域とドレイン領域とがメタル配線でそれぞれに対応するボンディングパッドに接続される出力段のMOSトランジスタである。図9は、従来例の格子状MOSトランジスタを半導体チップ上に配置したときの第1層メタル配線を示す平面図である。図10は、第2層メタル配線を示す平面図である。(尚、半導体チップ上のMOSトランジスタを配置していない部分は図示を省略している。)
【0008】
図9に示すように、格子状MOSトランジスタの91は、バックゲート95の内部領域に、図8に示すようなパターンでソース領域、ドレイン領域及びポリシリコンゲートを配置したものである。格子状MOSトランジスタ91の第1層メタル配線は、ソース領域と接続されたソース側メタル配線92、ドレイン領域と接続されたドレイン側メタル配線93及びポリシリコンゲートと接続されたゲート電極メタル配線94から形成されている。チップエッジ98に隣接するチップエッジ領域98Aには、ドレインボンディングパッド96a、96b及びソースボンディングパッド97a、97bが配置されている。ソース側メタル配線92は、ソースボンディングパッド97a及び97bと接続されている。
【0009】
図10に示すように、格子状MOSトランジスタ91の第2層メタル配線は、ドレイン領域と接続されたドレイン側メタル配線93から形成されている。ドレイン側メタル配線93は、ドレインボンディングパッド96a及び96bと接続されている。
【0010】
上記のように構成される従来例の格子状MOSトランジスタにおいて、格子状MOSトランジスタ91の中心点からソースボンディングパッド97a、97bの中心点までのソース側メタル配線92の寄生抵抗Rsは、その距離Lsに比例する。また、ソース側ボンディングパッド97a、97bへのソース側メタル配線92の平均配線幅に反比例する。平均配線幅とはソースボンディングパッド97a、97bの配線幅Wsに比例するものであるので、ソース側メタル配線92の寄生抵抗Rsは、Rs∝Ls/Wsと表される。同様にして、格子状MOSトランジスタ91の中心点からドレインボンディングパッド96a、96bの中心点までのドレイン側メタル配線93の寄生抵抗Rdは、Rd∝Ld/Wdと表される。
従って、従来例の格子状MOSトランジスタの素子面積を大きくすると、Ls及びLdが共に増加するので、メタル配線の寄生抵抗Rs及びRdが増加することになる。
【0011】
一方、くし型のMOSトランジスタにおいて、メタル配線の寄生抵抗を小さくする技術が特開2003-282625号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1の発明は、CSP(チップ・サイズ・パッケージ)技術により半導体チップ内部にボンディングパッドを配置できることを利用して、くし型のMOSトランジスタの中心点からボンディングパッドまでのメタル配線の距離を短くし、メタル配線の寄生抵抗を小さくしたものである。
【特許文献1】特開2003-282625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の発明では、くし型のMOSトランジスタを利用しているため、電流の流れが一方向に制限され、メタル配線幅がMOSトランジスタの一辺の長さに制限される。つまり、単位面積あたりの電流能力が低く、電流能力を高くするために素子面積を大きくすると、メタル配線の寄生抵抗の増大が大きかった。
【0013】
また、システム電源デバイスの多機能化に伴い、大規模なデジタル制御回路をデバイスに内蔵するケースが増えており、チップ面積の縮小が重要な課題となっている。
前記課題の解決方法として、多層配線を特徴とする微細化プロセスを用いることが有効とされている。しかし、配線層を多くすればするほど、メタル配線の膜厚を薄くしなければならず、メタル配線のシート抵抗が増加する傾向にあった。このシート抵抗値は100mΩ/□程度になることも稀ではなくなってきている。このため、多層配線技術においては、素子面積の縮小に伴うメタル配線の抵抗成分の増加を無視できなくなってきており、これを低減することが重要な課題になってきている。
【0014】
本発明は、メタル配線の抵抗成分をさらに低減し、システム電源デバイスの高出力・高効率化を実現できるMOSトランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明の一つの観点によるMOSトランジスタは、ソース領域とドレイン領域とが格子状に形成されたゲートを挟んで互いに隣接するように形成されたMOSトランジスタにおいて、前記MOSトランジスタは半導体チップ上の角部に配置され、前記半導体チップ上の1つの角部の第1のチップエッジに隣接する領域に、前記ソース領域に接続されたソース側メタル配線が接続される第1のソースボンディングパッドと前記ドレイン領域に接続されたドレイン側メタル配線が接続される第1のドレインボンディングパッドとが設けられ、前記角部の第2のチップエッジに隣接する領域に、前記ソース側メタル配線が接続される第2のソースボンディングパッドと前記ドレイン側メタル配線が接続される第2のドレインボンディングパッドとが設けられたことを特徴とする。
【0016】
本発明の別の観点によるMOSトランジスタは、ソース領域と複数のドレイン領域とが格子状に形成されたゲートを挟んで互いに隣接するように形成された4辺形のMOSトランジスタにおいて、前記MOSトランジスタは、半導体チップ上の所望の位置に配置され、前記MOSトランジスタの周囲4辺に隣接する4つの領域の少なくとも2つの領域にそれぞれ、前記ソース領域に接続されたソース側メタル配線が接続される少なくとも1つのソースボンディングパッドが設けられ、前記MOSトランジスタの周囲4辺に隣接する4つの領域の少なくとも2つの領域にそれぞれ、前記ドレイン領域に接続されたドレイン側メタル配線が接続される少なくとも1つのドレインボンディングパッドが設けられたことを特徴とする。
【0017】
本発明の更に別の観点によるMOSトランジスタは、前記別の観点による発明のMOSトランジスタにおいて、前記4つの領域のすべてに、前記ソースボンディングパッド又は前記ドレインボンディングパッドのいずれかが設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、メタル配線の抵抗成分をさらに低減し、システム電源デバイスの高出力・高効率化を実現できるMOSトランジスタを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、格子状MOSトランジスタの少なくとも周囲2辺に隣接する領域に、少なくとも1つのソースボンディングパッド及びドレインボンディングパッドを設けることにより、電流の流れる経路を増やし、かつメタル配線の配線幅を広げることができる。これにより、メタル配線の抵抗成分をさらに低減することができるので、システム電源デバイスの高出力・高効率化を実現できるMOSトランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
《実施の形態1》
図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態1のMOSトランジスタについて説明する。実施の形態1のMOSトランジスタは、2層配線構造を有する出力段の格子状MOSトランジスタである。図1は実施の形態1のMOSトランジスタを半導体チップ上に配置したときの第1層メタル配線の平面図、図2は第2層メタル配線の平面図である。尚、半導体チップ上のMOSトランジスタを配置していない部分は図示を省略している。また、実施の形態1のMOSトランジスタの断面図は、図7に示す従来例のMOSトランジスタの断面図と同様であるので、図及び重複する説明を省略する。
【0022】
図1に示すように、格子状MOSトランジスタ1は、半導体チップ上の角部に配置されている。格子状MOSトランジスタ1の第1層メタル配線(P基板に近い側の配線層)は、ソース領域と接続されたソース側メタル配線2、ドレイン領域と接続されたドレイン側メタル配線3及びポリシリコンゲートと接続されたゲート電極メタル配線4から形成されている。半導体チップ上の角部の横方向のチップエッジ5に隣接するチップエッジ領域5Aには、ドレインボンディングパッド7a、7b及びソースボンディングパッド8a、8bが配置されている。半導体チップ上の角部の縦方向のチップエッジ6に隣接するチップエッジ領域6Aには、ソースボンディングパッド9a、9b及びドレインボンディングパッド10a、10bが配置されている。ソース側メタル配線2は、ドレイン側メタル配線3を第2層メタル配線に上げるためのスルーホール11を除いて格子状MOSトランジスタ1及びソースボンディングパッド8a、8b、9a、9bの全体を覆うように擬似プレーンな配線パターンで、ソースボンディングパッド8a、8b、9a、9bと接続されている。
【0023】
図2に示すように、格子状MOSトランジスタ1の第2層メタル配線は、ドレイン領域と接続されたドレイン側メタル配線3から形成されている。ドレイン側メタル配線3は、ドレインボンディングパッド7a、7b、10a、10bの全体を覆うようにプレーンな配線パターンで、ドレインボンディングパッド7a、7b、10a、10bと接続されている。
【0024】
次に、実施の形態1のMOSトランジスタのメタル配線の寄生抵抗について説明する。
格子状MOSトランジスタ1の中心点からソース側ボンディングパッド8a、8bの中心点までのソース側メタル配線2の寄生抵抗Rs1は、その距離Ls1に比例し、ソースボンディングパッド8a、8bのソース側メタル配線2の配線幅Ws1に反比例する。従って、ソース側メタル配線2の寄生抵抗Rs1は、Rs1∝Ls1/Ws1と表される。格子状MOSトランジスタ1の中心点からソースボンディングパッド9a、9bの中心点までのソース側メタル配線2の寄生抵抗Rs2は、その距離Ls2に比例し、ソースボンディングパッド9a、9bのソース側メタル配線2の配線幅Ws2に反比例する。従って、ソース側メタル配線3の寄生抵抗Rs2は、Rs2∝Ls2/Ws2と表される。同様にして、格子状MOSトランジスタ1の中心点からドレイン側ボンディングパッド7a、7bの中心点までのドレイン側メタル配線3の寄生抵抗Rd1は、Rd1∝Ld1/Wd1と表される。格子状MOSトランジスタ1の中心点からドレイン側ボンディングパッド10a、10bの中心点までのドレイン側メタル配線2の寄生抵抗Rd2は、Rd2∝Ld2/Wd2と表される。ここで説明を簡単にするため、配線幅Ws1と配線幅Ws2とを前述した配線幅Ws(図9)と等しく、距離Ls1と距離Ls2とを前述した距離Ls(図9)とそれぞれ等しいものとする。
【0025】
上記のように構成される格子状MOSトランジスタ1において、ソース電流は格子状MOSトランジスタ1の中心点からソース側ボンディングパッド8a、8b及び9a、9bの2方向に流れるので、ソース側メタル配線2の寄生抵抗Rs1とRs2とは並列関係になる。従って、ソース側メタル配線2の合成抵抗Rs12は、Rs12∝1/2×(Ls/Wd)と表される。これにより、ソース側メタル配線2の寄生抵抗は、従来例のMOSトランジスタのソース側メタル配線の寄生抵抗の半分になるものと予測される。同様に、配線幅Wd1と配線幅Wd2とを前述した配線幅Wd(図10)と等しく、距離Ld1と距離Ld2とを前述した距離Ld(図10)とそれぞれ等しいものとする。このとき、ドレイン側メタル配線3の寄生抵抗Rd12は、Rd12∝1/2×(Ld/Wd)と表され、従来例の格子状MOSトランジスタのドレイン側メタル配線の寄生抵抗の半分になるものと予測される。
【0026】
図3は、従来例及び実施の形態1の格子状MOSトランジスタの出力抵抗を測定するために等価的に示した回路図である。MOSトランジスタ31は、格子状MOSトランジスタ91(図9、10)、格子状MOSトランジスタ1(図1、2)に対応するものである。抵抗32は、ソース側メタル配線92の寄生抵抗Rs、ソース側メタル配線2の合成抵抗Rs12に対応するものである。抵抗33は、ドレイン側メタル配線93の寄生抵抗Rd、ドレイン側メタル配線3の合成抵抗Rd12に対応するものである。ソース側基準端子36、37は、それぞれソースボンディングパッド97a、97b、ソースボンディングパッド8a、8bに対応するものである。ドレイン側出力端子38、39は、それぞれドレインボンディングパッド96a、96b、ドレインボンディングパッド7a、7bに対応するものである。
【0027】
従来例及び実施の形態1の格子状MOSトランジスタの出力抵抗の測定方法について説明する。まず、ソース側基準端子37とドレイン側出力端子38との間に接続された電流源35から所定の電流を流す。これにより発生したソース側基準端子36とドレイン側出力端子39との間の差電圧を電圧計34で測定する。測定した差電圧を前記所定の電流で除算する。これにより、抵抗32、33及びMOSトランジスタ31のオン抵抗の合成抵抗が測定できる。つまり、従来例及び実施の形態1の格子状MOSトランジスタの、メタル配線の抵抗成分を含めた出力抵抗を測定できる。
【0028】
上記の測定方法を用いて、従来例の格子状MOSトランジスタの出力抵抗Routを測定した結果、出力抵抗Routは、0.42(Ω)であった。尚、格子状MOSトランジスタ自体のオン抵抗Ronのシミュレーション値は0.17(Ω)であった。Routは、オン抵抗Ronとソース側メタル配線92の寄生抵抗Rsとドレイン側メタル配線93の寄生抵抗Rdの合成抵抗から、Rout=Ron+Rs+Rdと表される。従って、合成抵抗(Rs+Rd)は0.25(Ω)と算出される。
【0029】
同様に、従来例の格子状MOSトランジスタと同じサイズの実施の形態1の格子状MOSトランジスタを用いて出力抵抗Rout1を測定した結果、出力抵抗Rout1は0.30(Ω)であった。従って、ソース側メタル配線2の寄生抵抗Rs1とドレイン側メタル配線3の寄生抵抗Rd1との合成抵抗(Rs1+Rd1)は、0.13(Ω)と算出される。
以上の測定結果より、実施の形態1の格子状MOSトランジスタが、従来例の格子状MOSトランジスタに比べてメタル配線の抵抗成分を約50%低減していることが確認された。
【0030】
実施の形態1の格子状MOSトランジスタは、半導体チップの角部に配置し、ボンディングパッドを周囲2辺に隣接するように配置することによって、電流を2方向に流すことができる。これにより、メタル配線の抵抗成分を従来例のMOSトランジスタの半分にまで低減することができる。従って、システム電源デバイスの高出力・高効率化を実現できる。
【0031】
尚、実施の形態1では、ソースボンディングパッド及びドレインボンディングパッドを、チップエッジ領域5A及び6Aにそれぞれ2つ設けたが、それぞれ1つ以上設ければよい。
また、ドレイン側メタル配線3の配線パターンは、プレーン配線が好ましいが、ソース側メタル配線2のようにスルーホールを設けたり、スリット等を設けたりした擬似プレーン配線でも構わない。
また、メタル配線層は、2層以上の配線構造とする。ソース側メタル配線、ドレイン側メタル配線をそれぞれ1つのメタル配線層で構成する場合は、メタル配線のシート抵抗の増加を抑制する観点から2層配線構造とすることが好ましい。
また、各チップエッジ領域に配置されるソースボンディングパッド及びドレインボンディングパッドの配置順序は、入れ替わっても構わない。
また、前述した格子状MOSトランジスタとは、図8に例示したものに限定されない。例えば、図4に示すようなものも考えられる。本発明の格子状MOSトランジスタとは、縦方向と横方向の2方向に電流を流すことが可能なものをいう。
また、MOSトランジスタの種類としては、NチャンネルMOSトランジスタ、PチャンネルMOSトランジスタの特定はない。
また、上記の説明中のソースとドレインは、入れ替えても構わない。
【0032】
《実施の形態2》
図5及び図6を用いて、本発明の実施の形態2のMOSトランジスタを説明する。実施の形態2のMOSトランジスタは、CSP技術を用いて半導体チップ上に格子状MOSトランジスタを配置し、その周囲にボンディングパッドを配置したものである。図5は、実施の形態2のMOSトランジスタを半導体チップ上に配置したときの第1層メタル配線の平面図、図6は、第2層メタル配線の平面図である。尚、半導体チップ上のMOSトランジスタを配置していない部分は図示を省略している。また、実施の形態1のMOSトランジスタの断面図は、図7に示す従来例のMOSトランジスタの断面図と同様であるので、図及び重複する説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、格子状MOSトランジスタ21は、半導体チップ上の所望の位置に配置されている。格子状MOSトランジスタ21の第1層メタル配線は、ソース領域と接続されたソース側メタル配線22、ドレイン領域と接続されたドレイン側メタル配線23及びポリシリコンゲートと接続されたゲート電極メタル配線24a〜24dから形成されている。格子状MOSトランジスタ21の第1の辺25に隣接する領域25Aには、ソースボンディングパッド25a〜25dが設けられている。格子状MOSトランジスタ21の第2の辺26に隣接する領域26Aには、ドレインボンディングパッド26a〜26dが設けられている。格子状MOSトランジスタ21の第3の辺27に隣接する領域27Aには、ソースボンディングパッド27a〜27dが設けられている。格子状MOSトランジスタ21の第4の辺28に隣接する領域28Aには、ドレインボンディングパッド28a〜28dが設けられている。
【0034】
ソース側メタル配線22は、ドレイン側メタル配線23を第2層メタル配線に上げるためのスルーホール29を除いて、格子状MOSトランジスタ21とソースボンディングパッド25a〜25d及び27a〜12dの全体を覆うように擬似プレーンな配線パターンで、ソースボンディングパッド25a〜25d及び27a〜12dと接続されている。
【0035】
図6に示すように、格子状MOSトランジスタ21の第2層メタル配線は、ドレイン領域と接続されたドレイン側メタル配線23から形成されている。ドレイン側メタル配線23は、ドレインボンディングパッド26a〜26d及び28a〜28dの全体を覆うようにプレーンな配線パターンで、ドレインボンディングパッド26a〜26d及び28a〜28dと接続されている。
【0036】
図5及び図6を用いて、実施の形態2のMOSトランジスタのメタル配線の寄生抵抗について説明する。まず、以下のように設定する。
格子状MOSトランジスタ21の中心点からソースボンディングパッド25a〜25dの中心点までの距離及び格子状MOSトランジスタ21の中心点からソースボンディングパッド27a〜27dの中心点までの距離をLs3と表す。ソースボンディングパッド25a〜25d及び27a〜27dのソース側メタル配線22の配線幅をWs3と表す。格子状MOSトランジスタ21の中心点からドレインボンディングパッド26a〜26dまでの距離及び格子状MOSトランジスタ21の中心点からドレインボンディングパッド28a〜28dまでの距離をLd3と表す。ドレインボンディングパッド26a〜26d及び28a〜28dのドレイン側メタル配線23の配線幅をWd3と表す。ここでは説明を簡単にするため、格子状MOSトランジスタ21の中心点から各ボンディングパッドの中心点までの距離Ls3及びLd3、各メタル配線の配線幅Ws3及びWd3をすべて同じものとする。
【0037】
上記のように構成される格子状MOSトランジスタ21において、ソース電流はMOSトランジスタ21の中心点からソースボンディングパッド25a〜25d及び27a、28aの2方向に流れるので、ソース側メタル配線抵抗Rs3は、Rs3∝1/2×Ls3/Ws3と表される。同様にして、ドレイン側メタル配線抵抗Rd3は、Rd3∝1/2×Ld3/Wd3と表される。
【0038】
ここで簡単のため、配線幅Ws3が図1に示す配線幅(Ws1+Ws2)と等しく、距離Ls3がLs1及びLs2と等しいものとする。前述の関係式Ws1=Ws2=Ws及びLs1=Ls2=Lsを用いて、Rs3は、Rs3∝1/4×Ls/Wsと表される。同様に、配線幅Wd3が、図1に示す配線幅(Wd1+Wd2)と等しく、距離Ld3がLd1及びLd2と等しいものとする。前述の関係式Wd1=Wd2=Wd及びLd1=Ld2=LdからRd3は、Rd3∝1/4×Ld/Wdと表される。つまり、実施の形態1の格子状MOSトランジスタと比べてメタル配線の抵抗成分を約1/2、従来例の格子状MOSトランジスタと比べてメタル配線の抵抗成分を約1/4にできることがわかる。
【0039】
実施の形態2の格子状MOSトランジスタは、CSP技術によって半導体チップ上に配置され、ボンディングパッドを周囲4辺に隣接するように配置されることによって、メタル配線の配線幅を実施の形態1より約2倍に広げることができる。これにより、メタル配線の抵抗成分を実施の形態1の約1/2、従来例の格子状MOSトランジスタの約1/4にまで低減することができる。従って、システム電源デバイスの高出力・高効率化を実現できる。
【0040】
尚、実施の形態2では、ソースボンディングパッド及びドレインボンディングパッドを、領域25A〜28Aにそれぞれ4つ設けたが、それぞれ1つ以上設ければよい。
また、ドレイン側メタル配線3の配線パターンは、プレーン配線が好ましいが、ソース側メタル配線2のようにスルーホールを設けたり、スリット等を設けたりした擬似プレーン配線でも構わない。
また、メタル配線層は、2層以上の配線構造とする。ソース側メタル配線、ドレイン側メタル配線をそれぞれ1つのメタル配線で構成する場合は、メタル配線のシート抵抗の増加を抑制する観点から2層配線構造とすることが好ましい。
また、各チップエッジ領域に配置されるソースボンディングパッド及びドレインボンディングパッドの配置順序は、入れ替わっても構わない。
また、前述した格子状MOSトランジスタとは、図8に例示したものに限定されない。例えば、図4に示すようなものも考えられる。本発明の格子状MOSトランジスタとは、縦方向と横方向の2方向に電流を流すことが可能なものをいう。
また、MOSトランジスタの種類としては、NチャンネルMOSトランジスタ、PチャンネルMOSトランジスタの特定はない。
また、上記の説明中のソースとドレインは、入れ替えても構わない。
また、ポリシリコンゲートに接続するゲート電極メタル配線は、実施の形態2では4つ設けたが、1つ以上あればよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、DC−DCコンバータやLDOに用いるMOSトランジスタ、特に携帯機器の電源用DC−DCコンバータや電源用LDOに用いるMOSトランジスタに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1のMOSトランジスタの第1層メタル配線の平面図
【図2】本発明の実施の形態1のMOSトランジスタの第2層メタル配線の平面図
【図3】MOSトランジスタの出力抵抗を測定するための回路図
【図4】格子状MOSトランジスタの別の配置パターンを示す図
【図5】本発明の実施の形態2のMOSトランジスタの第1層メタル配線の平面図
【図6】本発明の実施の形態2のMOSトランジスタの第2層メタル配線の平面図
【図7】従来例のMOSトランジスタの要部拡大断面図
【図8】図7の第1層メタル配線及び第2層メタル配線を取り除いた平面概略図
【図9】従来例のMOSトランジスタの第1層メタル配線の平面図
【図10】従来例のMOSトランジスタの第2層メタル配線の平面図
【符号の説明】
【0043】
1、21、31、91 格子状MOSトランジスタ
2、22、92 ソース側メタル配線
3、23、93 ドレイン側メタル配線
4、24a〜24d、94 ゲート電極メタル配線
5、6、98 チップエッジ
5A、6A、98A チップエッジ領域
7a、7b、10a、10b、25a〜25d、27a〜27d、96a、96b
ドレインボンディングパッド
8a、8b、9a、9b、26a〜26d、28a〜28d、97a、97b
ソースボンディングパッド
11 スルーホール
25〜28 辺
25A〜28A 領域
32、33、抵抗
34 電圧計
35 電流源
36、37 基準端子
38、39 出力端子
71 P基板
72 バックゲート拡散層
73 ソース領域
74 ドレイン領域
75 ゲート酸化膜
76 ポリシリコンゲート
77 第1層メタル配線
78 第2層メタル配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース領域とドレイン領域とが格子状に形成されたゲートを挟んで互いに隣接するように形成されたMOSトランジスタにおいて、
前記MOSトランジスタは半導体チップ上の角部に配置され、
前記半導体チップ上の1つの角部の第1のチップエッジに隣接する領域に、前記ソース領域に接続されたソース側メタル配線が接続される第1のソースボンディングパッドと前記ドレイン領域に接続されたドレイン側メタル配線が接続される第1のドレインボンディングパッドとが設けられ、
前記角部の第2のチップエッジに隣接する領域に、前記ソース側メタル配線が接続される第2のソースボンディングパッドと前記ドレイン側メタル配線が接続される第2のドレインボンディングパッドとが設けられた
ことを特徴とするMOSトランジスタ。
【請求項2】
ソース領域とドレイン領域とが格子状に形成されたゲートを挟んで互いに隣接するように形成された4辺形のMOSトランジスタにおいて、
前記MOSトランジスタは、半導体チップ上の所望の位置に配置され、
前記MOSトランジスタの周囲4辺に隣接する4つの領域の少なくとも2つの領域にそれぞれ、前記ソース領域に接続されたソース側メタル配線が接続される少なくとも1つのソースボンディングパッドが設けられ、
前記MOSトランジスタの周囲4辺に隣接する4つの領域の少なくとも2つの領域にそれぞれ、前記ドレイン領域に接続されたドレイン側メタル配線が接続される少なくとも1つのドレインボンディングパッドが設けられた
ことを特徴とするMOSトランジスタ。
【請求項3】
前記4つの領域のすべてに、前記ソースボンディングパッド又は前記ドレインボンディングパッドのいずれかが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のMOSトランジスタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−245040(P2006−245040A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54644(P2005−54644)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】