説明

O−GlcNAc転移酵素阻害剤およびその使用

本発明は、O−GlcNAc転移酵素の阻害剤を提供する。典型的には、当該阻害剤は、キノリノン−6−スルホンアミドである。本発明はまた、その医薬組成物、ならびに糖尿病およびその合併症、神経変性疾患、癌、自己免疫疾患および炎症性疾患においてそれを用いる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、2009年6月1日に出願された米国仮特許出願USSN 61/217,514、に対して、35 U.S.C. § 119(e)の下に優先権を主張し、それは参照によって本明細書に組込まれる。
【背景技術】
【0002】
ヘキソサミンの生合成経路(HSP)は、解糖経路の主要でない分岐部であり、細胞グルコースの3〜5%をUDP−GlcNAcの合成に転用し、ゴルジに輸送されて、複雑なグリカンの合成において用いられるか、または細胞質中に残留し、その場合は、O−GlcNAc転移酵素(OGT)のための基質となる。OGTは、多くの核タンパク質および細胞質タンパク質上のセリンおよびトレオニン残基の糖鎖付加(O−GlcNアシル化(O-GlcNAcylation)と呼称される)を触媒するための唯一の既知の酵素である。この翻訳後修飾は動的であり、シグナル伝達のタンパク質リン酸化のような一般的な機構である。
【0003】
HSPを通しての過剰な流れは、真性糖尿病の初期段階(インスリン抵抗性)および後期段階(腎症、微小血管の障害)段階の両方において、インビボおよびインビトロの両方で関与していた。糖尿病は、インスリンの有効性および/または利用における欠乏を伴う。インスリンは、膵臓によって産生されたホルモンであり、細胞がグルコースを利用するために必要である。インスリン抵抗性は、筋肉、脂肪および肝細胞がインスリンを適切に使用しない状態である。その結果、膵臓はより多くのインスリンを産生し、これもまた適切に使用されない。最終的に、膵臓は、身体からのインスリンに関する要求に対応することができず、過剰のグルコースが血流中で増大する。したがって、インスリン抵抗性において、血流中を循環する高いレベルの血糖および高いレベルのインスリンが存在し得る。
【0004】
実験によって、増大したヘキソサミンの流れによるインスリン抵抗性が過O−GlcNアシル化(hyper O-GlcNAcylation)によって生じることが示された。糖尿病患者は、血管損傷、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子−1(PAI−1)および形質転換増殖因子β1(TGF−β1)に直接的に起因する2種のアディポカインの増大した産生を有する。細胞培養物でのこれらのタンパク質の両方の転写は、O−GlcNアシル化のレベルが低下する場合、低減される。この分子的機構は知られている;増大した転写が、転写因子Sp1のO−GlcNアシル化状態によって媒介される。
【0005】
OGT活性およびO−GlcNアシル化は、他の疾患状態、例えば神経変性疾患、癌、自己免疫疾患および炎症性疾患にも関与していた。したがって、治療薬として有用なOGT阻害剤を見出す必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、部分的に、O−GlcNAc転移酵素(OGT)活性を阻害する化合物に関する。本発明の化合物は、1200種を超える化合物を、OGT阻害能についてスクリーニングした際に同定したヒットに基づく。本発明の化合物は、OGTによるO−GlcNアシル化を阻害する。O−GlcNアシル化とは、OGTによって触媒される核タンパク質および細胞質タンパク質上にあるセリンおよび/またはトレオニン残基の糖鎖付加である。本発明の化合物は、過O−GlcNアシル化に関連した疾患および障害(例えば糖尿病およびその合併症、癌、神経変性疾患、自己免疫疾患および炎症性疾患)の処置のために有用である。
【0007】
1つの観点において、本発明の化合物は、一般的に式(I):
【化1】

またはその薬学的に許容し得る塩で表され、
式中:
【化2】

は、単結合または二重結合を示し;
は、環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基(heteroaliphatic);置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換の分枝状もしくは非分枝状アリールアルキル;または置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリールアルキルであり;
【0008】
およびRは、独立して水素;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリールアルキル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリールアルキル;−C(=O)R;−SOR;−SO;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール;ヘテロアリール;ヒドロキシ;アルコキシ;アリールオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;またはヘテロアリールオキシであり;あるいは
およびRは、随意に、介在する窒素と一緒になって、飽和の、または不飽和の、置換されているか、または非置換の複素環部分を形成してもよく;
【0009】
は、水素、C1〜6脂肪族または保護基であり;
は、水素、C1〜6脂肪族または保護基であり;
は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−C(=O)N(R;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(O)R;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール部分;ヘテロアリール;ヒドロキシ;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオキシ;アリールチオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオキシであり;また
nは、0、1、2または3である。
【0010】
他の観点において、本発明は、本発明の化合物を対象に投与することを含む処置の方法を提供する。本発明の化合物またはその医薬組成物を用いて、糖尿病およびその合併症、インスリン抵抗性、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、癌、自己免疫疾患および炎症性疾患を含む任意の疾患を処置してもよい。本発明の化合物を、ヒトおよび家畜または実験動物を含む他の動物における疾患を処置するのに用いてもよい。本発明の化合物をまた、生物学的経路のプローブとして用いてもよい。
【0011】
尚他の観点において、本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。当該組成物は、典型的には、OGTを阻害し、かつ/または糖尿病およびその合併症、インスリン抵抗性、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、癌、自己免疫疾患および炎症性疾患を処置するのに治療的に有効な量の本発明の化合物を含む。当該医薬組成物は、随意に薬学的に許容し得る賦形剤を含んでいてもよい。本発明の化合物またはその医薬組成物の、経口、非経口および局所的投与を含む投与の任意の様式を、用いてもよい。
【0012】
本出願において引用した参考文献は、参照によって本明細書に組込まれる。
【0013】
定義
特定の官能基および化学的用語の定義を、以下により詳細に記載する。本発明の目的のために、化学元素を、元素の周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、内表紙に従って識別し、特定の官能基を、一般的には、当該個所に記載されているように定義する。さらに、有機化学の一般的原理ならびに特定の官能性部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999;Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001;Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis、第3版、Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。
【0014】
本発明の化合物は、特定の幾何学的または立体異性体形態で存在してもよい。本発明は、シスおよびトランス異性体、RおよびS対掌体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、そのラセミ混合物およびその他の混合物を含むすべてのそのような化合物を、本発明の範囲内にあるものと予期する。
【0015】
異性体/対掌体が好ましい場合には、それを、いくつかの態様において、対応する対掌体を実質的に含まずに提供してもよく、また「光学的に濃縮された」として参照され得る。「光学的に濃縮された」とは、本明細書中で用いるように、当該化合物が顕著により大きな比率の1種の対掌体から構成されることを意味する。特定の態様において、本発明の化合物は、少なくとも約90重量%の好ましい対掌体から構成される。他の態様において、当該化合物は、少なくとも約95重量%、98重量%または99重量%の好ましい対掌体から構成される。
【0016】
好ましい対掌体を、ラセミ混合物から、キラルな高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラルな塩の生成および結晶を含む、当業者に知られている任意の方法によって単離するか、または不斉合成によって調製してもよい。例えば、Jacques et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981);Wilen et al., Tetrahedron 33:2725 (1977);Eliel, Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962);Wilen, Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照。
【0017】
本発明の化合物が、本明細書中に記載したように、任意の数の置換基または官能性部分で置換されていてもよいことが、認識される。一般的に、用語「随意に(optionally)」が先行するか否かとは無関係に、用語「置換されている」および本発明の式中に含まれる置換基は、所定の構造中の水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルでの置換を指す。任意の所定の構造中の1つよりも多い箇所が、特定の群から選択された1つよりも多い置換基で置換されていてもよい場合には、すべての箇所の置換基が同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
本明細書中で用いる用語「置換された」は、安定な部分の形成をもたらす、有機化合物のすべての許容される置換基、本明細書中に記載した任意の置換基(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式基、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、チオール、ハロなど)、およびその任意の組み合わせ(例えば脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど)での置換を含むことを予期する。
【0019】
本発明は、安定な置換基/部分に到達するための任意の、およびすべてのそのような組み合わせを予期する。一般的に適用可能な置換基の追加の例を、本明細書中に記載した例中に示す特定の態様によって例示する。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、そのヘテロ原子の原子価を満たし、安定な部分の形成をもたらす、水素置換基および/または本明細書中に記載した任意の好適な置換基を有していてもよい。
【0020】
本明細書中で用いる、接尾辞「−エン」で終了する置換基名は、置換基から水素原子を2個除去することに由来するビラジカルを指す。したがって、例えば、アシルはアシレンであり;アルキルはアルキレンであり;アルケニルはアルケニレンであり;アルキニルはアルキニレンであり;ヘテロアルキルはヘテロアルキレンであり、ヘテロアルケニルはヘテロアルケニレンであり、ヘテロアルキニルはヘテロアルキニレンであり、アリールはアリーレンであり、ヘテロアリールはヘテロアリーレンである。
【0021】
本明細書中で用いる用語「アシル」は、一般式−C(=O)RX1、−C(=O)ORX1、−C(=O)−O−C(=O)RX1、−C(=O)SRX1、−C(=O)N(RX1、−C(=S)RX1、−C(=S)N(RX1および−C(=S)S(RX1)、−C(=NRX1)RX1、−C(=NRX1)ORX1、−C(=NRX1)SRX1および−C(=NRX1)N(RX1を有する基を指し、
【0022】
ここでRX1は、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換のヒドロキシル;置換もしくは非置換のチオール;置換もしくは非置換のアミノ;置換もしくは非置換のアシル、環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアルキル;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアルケニル;置換もしくは非置換のアルキニル;
【0023】
置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、モノもしくはジ脂肪族アミノ、モノもしくはジヘテロ脂肪族アミノ、モノもしくはジアルキルアミノ、モノもしくはジヘテロアルキルアミノ、モノもしくはジアリールアミノ、またはモノもしくはジヘテロアリールアミノであり;あるいは2つのRX1基は、一緒になって5員環〜6員環の複素環式環を形成する。
【0024】
例示的なアシル基は、アルデヒド(−CHO)、カルボン酸(−COH)、ケトン、ハロゲン化アシル、エステル、アミド、イミン、カーボネート、カルバメートおよび尿素を含む。アシル置換基は、安定な部分(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0025】
用語「アシルオキシ」は、式(−OR)で表される「置換されたヒドロキシル」を指し、式中、Rは、本明細書中で定義するように随意に置換されたアシル基であり、酸素部分は、親分子に直接結合している。
【0026】
本明細書中で用いる用語「脂肪族」は、飽和の、および不飽和の、直鎖状の(即ち非分枝状の)、分枝状の、非環式の、および環式の(即ち炭素環式の)炭化水素を含み、それは、随意に1つまたは2つ以上の官能基で置換されている。通常の当業者が認識するように、「脂肪族」は、本明細書中で、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を含むが、それらには限定されないことを意図する。したがって、本明細書中で用いる用語「アルキル」は、直鎖状、分枝状および環式のアルキル基を含む。同様の慣例が、他の一般的用語、例えば「アルケニル」、「アルキニル」などに該当する。さらに、本明細書中で用いる用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などは、置換された基および非置換の基を共に包含する。
【0027】
特定の態様において、本明細書中で用いる「脂肪族」を用いて、1〜20個の炭素原子を有する当該脂肪族基(環式の、非環式の、置換されている、非置換の、分枝状または非分枝状の)を示す。脂肪族基置換基は、安定な部分(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0028】
本明細書中で用いる用語「アルキル」は、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素部分から単一の水素原子の除去によって誘導される、飽和の直鎖状または分枝状炭化水素ラジカルを指す。いくつかの態様において、本発明において用いるアルキル基は、1〜20個の炭素原子を含む。他の態様において、用いるアルキル基は、1〜15個の炭素原子を含む。他の態様において、用いるアルキル基は、1〜10個の炭素原子を含む。他の態様において、用いるアルキル基は、1〜8個の炭素原子を含む。他の態様において、用いるアルキル基は、1〜5個の炭素原子を含む。
【0029】
アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、ドデシルなどを含むが、それらには限定されず、それは、1つまたは2つ以上の置換基を保有していてもよい。
【0030】
アルキル基置換基は、安定な部分(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0031】
本明細書中で用いる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖状または分枝状炭化水素部分から、単一の水素原子の除去によって誘導される1価の基を示す。特定の態様において、本発明において用いるアルケニル基は、2〜20個の炭素原子を含む。いくつかの態様において、本発明において用いるアルケニル基は、2〜15個の炭素原子を含む。他の態様において、用いるアルケニル基は、2〜10個の炭素原子を含む。尚他の態様において、アルケニル基は、2〜8個の炭素原子を含む。尚他の態様において、アルケニル基は、2〜5個の炭素を含む。
【0032】
アルケニル基は、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどを含み、それは、1つまたは2つ以上の置換基を保有していてもよい。アルケニル基置換基は、安定な部分(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0033】
本明細書中で用いる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖状または分枝状炭化水素から、単一の水素原子の除去によって誘導される1価の基を指す。特定の態様において、本発明において用いるアルキニル基は、2〜20個の炭素原子を含む。いくつかの態様において、本発明において用いるアルキニル基は、2〜15個の炭素原子を含む。他の態様において、用いるアルキニル基は、2〜10個の炭素原子を含む。尚他の態様において、アルキニル基は、2〜8個の炭素原子を含む。尚他の態様において、アルキニル基は、2〜5個の炭素原子を含む。
【0034】
代表的なアルキニル基は、限定されるものではないが、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどを含み、1つまたは2つ以上の置換基を保有していてもよい。アルキニル基置換基は、安定な部分(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0035】
本明細書中で用いる用語「アミノ」は、式(−NH)で表される基を指す。「置換アミノ」は、単置換アミン(−NHR)または二置換アミン(−NR)のいずれかを指し、ここでR置換基は、安定な部分(例えば好適なアミノ保護基;脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基である。特定の態様において、二置換されているアミノ基(−NR)のR置換基は、5員環〜6員環の複素環を形成する。
【0036】
用語「アルコキシ」は、式(−OR)で表される「置換ヒドロキシル」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように、随意に置換されているアルキル基であり、酸素部分は、親分子に直接結合している。
【0037】
用語「アルキルチオキシ」は、式(−SR)で表される「置換チオール」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように、随意に置換されているアルキル基であり、硫黄部分は、親分子に直接結合している。
【0038】
用語「アルキルアミノ」は、式(−NR)で表される「置換アミノ」を指し、ここでRは、独立して、本明細書中で定義するように、水素または随意に置換されているアルキル基であり、窒素部分は、親分子に直接結合している。
【0039】
本明細書中で用いる用語「アリール」は、3〜20個の環原子を有する安定な芳香族の単環式または多環式環系を指し、その中で、すべての環原子は炭素であり、それは置換されていても非置換であってもよい。本発明の特定の態様において、「アリール」は、1つ、2つまたは3つの芳香環を有する単環式、二環式または三環式のC〜C20芳香族環系を指し、それは、限定するものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど含み、1つまたは2つ以上の置換基を保有していてもよい。
【0040】
アリール置換基は、安定な部分(例えば脂肪族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族基、複素環式環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基のを含むが、それらには限定されない。
【0041】
本明細書中で用いる用語「アリールアルキル」は、アリール置換されたアルキル基を指し、ここで用語「アリール」および「アルキル」は、本明細書中で定義されており、ここでアリール基は、アルキル基に結合しており、それは次に、親分子に結合している。例示的なアリールアルキル基は、ベンジルを含む。
【0042】
用語「アリールオキシ」は、式(−OR)で表される「置換ヒドロキシル」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように、随意に置換されたアリール基であり、酸素部分は、親分子に直接結合している。
【0043】
用語「アリールアミノ」は、式(−NR)で表される「置換アミノ」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように、独立して水素または随意に置換されたアリール基であり、窒素部分は、親分子に直接結合している。
【0044】
用語「アリールチオキシ」は、式(−SR)で表される「置換チオール」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように、随意に置換されたアリール基であり、硫黄部分は、親分子に直接結合している。
【0045】
本明細書中で用いる用語「アジド」は、式(−N)で表される基を指す。
本明細書中で用いる用語「シアノ」は、式(−CN)で表される基を指す。
本明細書中で用いる用語「ハロ」および「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、−F)、塩素(クロロ、−Cl)、臭素(ブロモ、−Br)およびヨウ素(ヨード、−I)から選択された原子を指す。
【0046】
本明細書中で用いる用語「ヘテロ脂肪族」は、本明細書中で定義する脂肪族部分を指し、それは、飽和の、および不飽和の、非芳香族の直鎖状(即ち非分枝状)、分枝状、非環式、環式(即ち複素環式)または多環式炭化水素を共に含み、それは、随意に1つまたは2つ以上の官能基で置換されており、またそれは、1個または2個以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を、例えば炭素原子の代わりに含む。特定の態様において、ヘテロ脂肪族部分は、その上の水素原子の1個または2個以上の1つまたは2つ以上の置換基での独立した置き換えによって置換されている。
【0047】
通常の当業者によって認識されるように、「ヘテロ脂肪族」は、本明細書中でヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニルおよびヘテロシクロアルキニル部分を含むことを意図するが、それらには限定されない。したがって、用語「ヘテロ脂肪族」は、用語「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」などを含む。さらに、本明細書中で用いる用語「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」などは、置換および非置換の基を共に包含する。特定の態様において、本明細書中で用いる「ヘテロ脂肪族」を用いて、1〜20個の炭素原子を有する当該ヘテロ脂肪族基(環式、非環式、置換、非置換、分枝状または非分枝状)を示す。
【0048】
ヘテロ脂肪族基置換基は、安定な部分(例えば脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環、アリール、ヘテロアリール、アシル、スルフィニル、スルホニル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0049】
本明細書中で用いる用語「ヘテロアルキル」は、例えば炭素原子の代わりに、1個または2個以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含む、本明細書中で定義するアルキル部分を指す。
本明細書中で用いる用語「ヘテロアルケニル」は、例えば炭素原子の代わりに、1個または2個以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含む、本明細書中で定義するアルケニル部分を指す。
本明細書中で用いる用語「ヘテロアルキニル」は、1個または2個以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を例えば炭素原子の代わりに含む、本明細書中で定義するアルキニル部分を指す。
【0050】
用語「ヘテロアルキルアミノ」は、式(−NR)で表される「置換アミノ」を指し、ここでRは、独立して、本明細書中で定義するように水素または随意に置換されているヘテロアルキル基であり、窒素部分は、親分子に直接結合している。
【0051】
用語「ヘテロアルキルオキシ」は、式(−OR)で表される「置換ヒドロキシル」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように随意に置換されているヘテロアルキル基であり、酸素部分は、親分子に直接結合している。
【0052】
用語「ヘテロアルキルチオキシ」は、式(−SR)で表される「置換チオール」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように随意に置換されているヘテロアルキル基であり、硫黄部分は、親分子に直接結合している。
【0053】
本明細書中で用いる用語「複素環式」、「複素環」または「ヘテロシクリル」は、環式のヘテロ脂肪族基を指す。複素環式基は、非芳香族の部分的に不飽和であるかまたは完全に飽和の3〜10員環の環系を指し、それは、大きさが3〜8個の原子の単環式環、ならびに非芳香族環に融合した芳香族の5員環または6員環のアリールまたはヘテロアリール基を含んでいてもよい、二環式および三環式の環系を含む。これらの複素環式環は、独立して酸素、硫黄および窒素から選択された1〜3個のヘテロ原子を有するものを含み、ここで窒素および硫黄ヘテロ原子は、随意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、随意に四級化されていてもよい。特定の態様において、複素環式の用語は、非芳香族の5員環、6員環または7員環の環または多環式基を指し、ここで少なくとも1個の環原子は、O、SおよびNから選択されたヘテロ原子であり(ここで窒素および硫黄ヘテロ原子は、随意に酸化されていてもよく)、残余の環原子は炭素であり、ラジカルは、分子の残部に任意の環原子を介して結合している。
【0054】
ヘテロシクリル基は、独立して酸素、硫黄および窒素から選択された1〜3個のヘテロ原子を有する、融合した5員環、6員環または7員環の環を含む、二環式または三環式環を含むが、それらには限定されず、ここで(i)各々の5員環は、0〜2個の二重結合を有し、各々の6員環は、0〜2個の二重結合を有し、各々の7員環は、0〜3個の二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子は、随意に酸化されていてもよく、(iii)窒素ヘテロ原子は、随意に四級化されていてもよく、また(iv)上記の複素環式環のいずれも、アリールまたはヘテロアリール環に融合していてもよい。
【0055】
例示的な複素環は、アザシクロプロパニル、アザシクロブタニル、1,3−ジアザチジニル(diazatidinyl)、ピペリジニル、ピペラジニル、アゾカニル(azocanyl)、チアラニル(thiaranyl)、チエタニル(thietanyl)、テトラヒドロチオフェニル、ジチオラニル、チアシクロヘキサニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロプラニル、ジオキサニル、オキサチオラニル、モルホリニル、チオキサニル、テトラヒドロナフチルなどを含み、それは、1つまたは2つ以上の置換基を保有していてもよい。置換基は、安定な部分(例えば脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環、アリール、ヘテロアリール、アシル、スルフィニル、スルホニル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0056】
本明細書中で用いる用語「ヘテロアリール」は、3〜20個の環原子を有し、その中で1個の環原子が、S、OおよびNから選択され;0個、1個または2個の環原子が、独立してS、OおよびNから選択された付加的なヘテロ原子であり;また、残余の環原子が炭素であり、ラジカルが、分子の残部に任意の環原子を介して結合している、安定な芳香族の単環式または多環式環系を指す。
【0057】
例示的なヘテロアリールは、限定されるものではないが、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、ピロリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、チオフェニル、チアナフテニル、フラニル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、チアジアゾリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリルなどを含み、1つまたは2つ以上の置換基を保有していてもよい。
【0058】
ヘテロアリール置換基は、安定な部分(例えば脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環、アリール、ヘテロアリール、アシル、スルフィニル、スルホニル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0059】
本明細書中で用いる用語「ヘテロアリーレン」は、本明細書中で定義するように、ヘテロアリール基から2個の水素原子の除去によって誘導されるビラジカルを指す。ヘテロアリーレン基は、置換されていても置換されていなくてもよい。さらに、ヘテロアリーレン基は、本明細書中で定義するように、リンカー基としてアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンまたはヘテロアルキニレン基中に包含されていてもよい。
【0060】
ヘテロアリーレン基置換基は、安定な部分(例えば脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす、本明細書中に記載した任意の置換基を含むが、それらには限定されない。
【0061】
用語「ヘテロアリールアミノ」は、(−NR)で表される「置換アミノ」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように、独立して水素または随意に置換されたヘテロアリール基であり、窒素部分は、親分子に直接結合している。
【0062】
用語「ヘテロアリールオキシ」は、式(−OR)で表される「置換ヒドロキシル」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように随意に置換されたヘテロアリール基であり、酸素部分は、親分子に直接結合している。
【0063】
用語「ヘテロアリールチオキシ」は、式(−SR)で表される「置換チオール」を指し、ここでRは、本明細書中で定義するように随意に置換されたヘテロアリール基であり、硫黄部分は、親分子に直接結合している。
【0064】
本明細書中で用いる用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、式(−OH)で表される基を指す。「置換ヒドロキシル」は、式(−OR)で表される基を指し、ここでRは、安定な部分(例えば好適なヒドロキシル保護基;脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、ニトロ、アルキルアリール、アリールアルキルなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)を生成する任意の置換基であり得る。
【0065】
本明細書中で用いる用語「イミノ」は、式(=NR)で表される基を指し、ここでRは、水素または本明細書中に記載した任意の置換基に相当し、それは、安定な部分(例えば好適なアミノ保護基;脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、アミノ、ヒドロキシル、アルキルアリール、アリールアルキルなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の生成をもたらす。特定の態様において、イミノは、=NHを指し、ここでRは、水素である。
【0066】
本明細書中で用いる用語「イソシアノ」は、式(−NC)で表される基を指す。
本明細書中で用いる用語「ニトロ」は、式(−NO)で表される基を指す。
本明細書中で用いる用語「オキソ」は、式(=O)で表される基を指す。
本明細書中で用いる用語「安定な部分」は、好ましくは、製造を可能にするのに十分な安定性を所有し、本明細書中に詳述した目的のために有用であるのに十分な期間にわたってその完全性を維持する部分を指す。
【0067】
本明細書中で用いる「好適なアミノ保護基」は、当業者に周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 第3版、John Wiley & Sons, 1999に詳細に記載されているものを含み、その全体は、参照によって本明細書に組込まれる。
【0068】
好適なアミノ保護基は、メチルカルバメート、エチルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、9−(2−スルホ)フルオレニルメチルカルバメート、9−(2,7−ジブロモ)フルオレニルメチルカルバメート、2,7−ジ−t−ブチル−[9−(10,10−ジオキソ−10,10,10,10−テトラヒドロチオキサンチル)]メチルカルバメート(DBD−Tmoc)、4−メトキシフェナシルカルバメート(Phenoc)、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、2−フェニルエチルカルバメート(hZ)、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルカルバメート(Adpoc)、1,1−ジメチル−2−ハロエチルカルバメート、1,1−ジメチル−2,2−ジブロモエチルカルバメート(DB−t−BOC)、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルカルバメート(TCBOC)、1−メチル−1−(4−ビフェニリル)エチルカルバメート(Bpoc)、1−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−1−メチルエチルカルバメート(t−Bumeoc)、2−(2’−および4’−ピリジル)エチルカルバメート(Pyoc)、
【0069】
2−(N,N−ジシクロヘキシルカルボキサミド)エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート(BOC)、1−アダマンチルカルバメート(Adoc)、ビニルカルバメート(Voc)、アリルカルバメート(Alloc)、1−イソプロピルアリルカルバメート(Ipaoc)、シンナミルカルバメート(Coc)、4−ニトロシンナミルカルバメート(Noc)、8−キノリルカルバメート、N−ヒドロキシピペリジニルカルバメート、アルキルジチオカルバメート、ベンジルカルバメート(Cbz)、p−メトキシベンジルカルバメート(Moz)、p−ニトロベンジルカルバメート、p−ブロモベンジルカルバメート、p−クロロベンジルカルバメート、2,4−ジクロロベンジルカルバメート、4−メチルスルフィニルベンジルカルバメート(Msz)、9−アントリルメチルカルバメート、ジフェニルメチルカルバメート、2−メチルチオエチルカルバメート、2−メチルスルホニルエチルカルバメート、2−(p−トルエンスルホニル)エチルカルバメート、[2−(1,3−ジチアニル)]メチルカルバメート(Dmoc)、
【0070】
4−メチルチオフェニルカルバメート(Mtpc)、2,4−ジメチルチオフェニルカルバメート(Bmpc)、2−ホスホニオエチルカルバメート(Peoc)、2−トリフェニルホスホニオイソプロピルカルバメート(Ppoc)、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバメート、m−クロロ−p−アシルオキシベンジルカルバメート、p−(ジヒドロキシボリル)ベンジルカルバメート、5−ベンズイソキサゾリルメチルカルバメート、2−(トリフルオロメチル)−6−クロモニルメチルカルバメート(Tcroc)、m−ニトロフェニルカルバメート、3,5−ジメトキシベンジルカルバメート、o−ニトロベンジルカルバメート、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルカルバメート、フェニル(o−ニトロフェニル)メチルカルバメート、フェノチアジニル−(10)−カルボニル誘導体、N’−p−トルエンスルホニルアミノカルボニル誘導体、N’−フェニルアミノチオカルボニル誘導体、t−アミルカルバメート、S−ベンジルチオカルバメート、p−シアノベンジルカルバメート、シクロブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、
【0071】
シクロペンチルカルバメート、シクロプロピルメチルカルバメート、p−デシルオキシベンジルカルバメート、2,2−ジメトキシカルボニルビニルカルバメート、o−(N,N−ジメチルカルボキサミド)ベンジルカルバメート、1,1−ジメチル−3−(N,N−ジメチルカルボキサミド)プロピルカルバメート、1,1−ジメチルプロピニルカルバメート、ジ(2−ピリジル)メチルカルバメート、2−フラニルメチルカルバメート、2−ヨードエチルカルバメート、イソボルニルカルバメート、イソブチルカルバメート、イソニコチニルカルバメート、p−(p’−メトキシフェニルアゾ)ベンジルカルバメート、1−メチルシクロブチルカルバメート、1−メチルシクロヘキシルカルバメート、1−メチル−1−シクロプロピルメチルカルバメート、1−メチル−1−(3,5−ジメトキシフェニル)エチルカルバメート、1−メチル−1−(p−フェニルアゾフェニル)エチルカルバメート、
【0072】
1−メチル−1−フェニルエチルカルバメート、1−メチル−1−(4−ピリジル)エチルカルバメート、フェニルカルバメート、p−(フェニルアゾ)ベンジルカルバメート、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルカルバメート、4−(トリメチルアンモニウム)ベンジルカルバメート、2,4,6−トリメチルベンジルカルバメート、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3−フェニルプロパンアミド、ピコリンアミド、3−ピリジルカルボキサミド、N−ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、ベンズアミド、p−フェニルベンズアミド、o−ニトロフェニルアセトアミド、o−ニトロフェノキシアセトアミド、アセトアセトアミド、(N’−ジチオベンジルオキシカルボニルアミノ)アセトアミド、3−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、3−(o−ニトロフェニル)プロパンアミド、2−メチル−2−(o−ニトロフェノキシ)プロパンアミド、
【0073】
2−メチル−2−(o−フェニルアゾフェノキシ)プロパンアミド、4−クロロブタンアミド、3−メチル−3−ニトロブタンアミド、o−ニトロシンナミド、N−アセチルメチオニン誘導体、o−ニトロベンズアミド、o−(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミド、4,5−ジフェニル−3−オキサゾリン−2−オン、N−フタルイミド、N−ジチアスクシンイミド(Dts)、N−2,3−ジフェニルマレイミド、N−2,5−ジメチルピロール、N−1,1,4,4−テトラメチルジシリルアザシクロペンタン付加物(STABASE)、5−置換1,3−ジメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン−2−オン、5−置換1,3−ジベンジル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン−2−オン、1−置換3,5−ジニトロ−4−ピリドン、N−メチルアミン、N−アリルアミン、N−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアミン(SEM)、N−3−アセトキシプロピルアミン、N−(1−イソプロピル−4−ニトロ−2−オキソ−3−ピロリン−3−イル)アミン、四級アンモニウム塩、N−ベンジルアミン、N−ジ(4−メトキシフェニル)メチルアミン、N−5−ジベンゾスベリルアミン、
【0074】
N−トリフェニルメチルアミン(Tr)、N−[(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル]アミン(MMTr)、N−9−フェニルフルオレニルアミン(PhF)、N−2,7−ジクロロ−9−フルオレニルメチレンアミン、N−フェロセニルメチルアミノ(Fcm)、N−2−ピコリルアミノN’−オキシド、N−1,1−ジメチルチオメチレンアミン、N−ベンジリデンアミン、N−p−メトキシベンジリデンアミン、N−ジフェニルメチレンアミン、N−[(2−ピリジル)メシチル]メチレンアミン、N−(N’,N’−ジメチルアミノメチレン)アミン、N,N’−イソプロピリデンジアミン、N−p−ニトロベンジリデンアミン、N−サリチリデンアミン、N−5−クロロサリチリデンアミン、N−(5−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)フェニルメチレンアミン、N−シクロヘキシリデンアミン、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)アミン、
【0075】
N−ボラン誘導体、N−ジフェニルボリニック酸(borinic acid)誘導体、N−[フェニル(ペンタカルボニルクロムまたはタングステン)カルボニル]アミン、N−銅キレート、N−亜鉛キレート、N−ニトロアミン、N−ニトロソアミン、アミンN−オキシド、ジフェニルホスフィンアミド(Dpp)、ジメチルチオホスフィンアミド(Mpt)、ジフェニルチオホスフィンアミド(Ppt)、ジアルキルホスホロアミダート、ジベンジルホスホロアミダート、ジフェニルホスホロアミダート、ベンゼンスルフェンアミド、o−ニトロベンゼンスルフェンアミド(Nps)、2,4−ジニトロベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2−ニトロ−4−メトキシベンゼンスルフェンアミド、トリフェニルメチルスルフェンアミド、3−ニトロピリジンスルフェンアミド(Npys)、p−トルエンスルホンアミド(Ts)、
【0076】
ベンゼンスルホンアミド、2,3,6,−トリメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mtr)、2,4,6−トリメトキシベンゼンスルホンアミド(Mtb)、2,6−ジメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Pme)、2,3,5,6−テトラメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mte)、4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mbs)、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホンアミド(Mts)、2,6−ジメトキシ−4−メチルベンゼンスルホンアミド(iMds)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホンアミド(Pmc)、メタンスルホンアミド(Ms)、β−トリメチルシリルエタンスルホンアミド(SES)、9−アントラセンスルホンアミド、4−(4’,8’−ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルホンアミド(DNMBS)、ベンジルスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミドおよびフェナシルスルホンアミドを含む。
【0077】
本明細書中で用いる「好適なカルボン酸保護基」または「保護されたカルボン酸」は、当該分野において周知であり、Greene (1999)において詳細に記載されているものを含む。好適に保護されたカルボン酸の例は、さらに、シリル、アルキル、アルケニル、アリールおよびアリールアルキル保護カルボン酸を含むが、それらには限定されない。好適なシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリルなどを含む。好適なアルキル基の例は、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチル、テトラヒドロピラン−2−イルを含む。好適なアルケニル基の例は、アリルを含む。好適なアリール基の例は、随意に置換されたフェニル、ビフェニルまたはナフチルを含む。好適なアリールアルキル基の例は、随意に置換されたベンジル(例えばp−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル)ならびに2−および4−ピコリルを含む。
【0078】
本明細書中で用いる「好適なヒドロキシル保護基」は、当該分野において周知であり、Greene (1999)において詳細に記載されているものを含む。好適なヒドロキシル保護基は、メチル、メトキシルメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t−ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p−メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4−メトキシフェノキシ)メチル(p−AOM)、グアイアコールメチル(GUM)、t−ブトキシメチル、4−ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2−メトキシエトキシメチル(MEM)、
【0079】
2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3−ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S−ジオキシド、1−[(2−クロロ−4−メチル)フェニル]−4−メトキシピペリジン−4−イル(CTMP)、1,4−ジオキサン−2−イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−7,8,8−トリメチル−4,7−メタノベンゾフラン−2−イル、1−エトキシエチル、1−(2−クロロエトキシ)エチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−(フェニルセレニル)エチル、
【0080】
t−ブチル、アリル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、2,4−ジニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、p−フェニルベンジル、2−ピコリル、4−ピコリル、3−メチル−2−ピコリルN−オキシド、ジフェニルメチル、p,p’−ジニトロベンズヒドリル、5−ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、p−メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p−メトキシフェニル)メチル、4−(4’−ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル、
【0081】
4,4’,4’’−トリス(4,5−ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4’,4’’−トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4,4’,4’’−トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3−(イミダゾール−1−イル)ビス(4’,4’’−ジメトキシフェニル)メチル、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−1’−ピレニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンテニル、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル、ベンズイソチアゾリルS,S−ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルセキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ−p−キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t−ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、ホルメート、ベンゾイルホルメート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、
【0082】
メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p−クロロフェノキシアセテート、3−フェニルプロピオネート、4−オキソペンタノエート(レブリネート)、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノエート(レブリノイルジチオアセタール)、ピバロエート、アダマントエート、クロトネート、4−メトキシクロトネート、ベンゾエート、p−フェニルベンゾエート、2,4,6−トリメチルベンゾエート(メシトエート(mesitoate))、アルキルメチルカーボネート、9−フルオレニルメチルカーボネート(Fmoc)、アルキルエチルカーボネート、アルキル2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2−(トリメチルシリル)エチルカーボネート(TMSEC)、2−(フェニルスルホニル)エチルカーボネート(Psec)、2−(トリフェニルホスホニオ)エチルカーボネート(Peoc)、アルキルイソブチルカーボネート、アルキルビニルカーボネートアルキルアリルカーボネート、アルキルp−ニトロフェニルカーボネート、アルキルベンジルカーボネート、アルキルp−メトキシベンジルカーボネート、アルキル3,4−ジメトキシベンジルカーボネート、アルキルo−ニトロベンジルカーボネート、
【0083】
アルキルp−ニトロベンジルカーボネート、アルキルS−ベンジルチオカーボネート、4−エトキシ−1−ナフチルカーボネート、メチルジチオカーボネート、2−ヨードベンゾエート、4−アジドブチレート、4−ニトロ−4−メチルペンタノエート、o−(ジブロモメチル)ベンゾエート、2−ホルミルベンゼンスルホネート、2−(メチルチオメトキシ)エチル、4−(メチルチオメトキシ)ブチレート、2−(メチルチオメトキシメチル)ベンゾエート、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノキシアセテート、2,6−ジクロロ−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、イソブチレート、モノスクシノエート、(E)−2−メチル−2−ブテノエート、o−(メトキシカルボニル)ベンゾエート、α−ナフトエート、ニトレート、アルキルN,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミダート、アルキルN−フェニルカルバメート、ボレート、ジメチルホスフィノチオイル、アルキル2,4−ジニトロフェニルスルフェネート、サルフェート、メタンスルホネート(メシレート)、ベンジルスルホネートおよびトシレート(Ts)を含む。
【0084】
1,2−または1,3−ジオールを保護するために、保護基は、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、1−t−ブチルエチリデンケタール、1−フェニルエチリデンケタール、(4−メトキシフェニル)エチリデンアセタール、2,2,2−トリクロロエチリデンアセタール、アセトニド、シクロペンチリデンケタール、シクロヘキシリデンケタール、シクロヘプチリデンケタール、ベンジリデンアセタール、p−メトキシベンジリデンアセタール、2,4−ジメトキシベンジリデンケタール、3,4−ジメトキシベンジリデンアセタール、2−ニトロベンジリデンアセタール、メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、ジメトキシメチレンオルトエステル、1−メトキシエチリデンオルトエステル、1−エトキシエチリジンオルトエステル、1,2−ジメトキシエチリデンオルトエステル、α−メトキシベンジリデンオルトエステル、1−(N,N−ジメチルアミノ)エチリデン誘導体、α−(N,N’−ジメチルアミノ)ベンジリデン誘導体、2−オキサシクロペンチリデンオルトエステル、ジ−t−ブチルシリレン基(DTBS)、1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサニリデン)誘導体(TIPDS)、テトラ−t−ブトキシジシロキサン−1,3−ジイリデン誘導体(TBDS)、環式カーボネート、環式ボロネート、エチルボロネートおよびフェニルボロネートを含む。
【0085】
本明細書中で用いる「好適なチオール保護基」は、当該分野において周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 第3版、John Wiley & Sons, 1999に詳細に記載されているものを含み、その全体は、参照によって本明細書に組込まれる。好適に保護されたチオール基の例は、さらにチオエステル、カーボネート、スルホネートアリルチオエーテル、チオエーテル、シリルチオエーテル、アルキルチオエーテル、アリールアルキルチオエーテルおよびアルキルオキシアルキルチオエーテルを含むが、それらには限定されない。好適なエステル基の例は、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ペンタノエート、クロトネートおよびベンゾエートを含む。
【0086】
好適なエステル基の特定の例は、ホルメート、ベンゾイルホルメート、クロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、p−クロロフェノキシアセテート、3−フェニルプロピオネート、4−オキソペンタノエート、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノエート、ピバロエート(トリメチルアセテート)、クロトネート、4−メトキシ−クロトネート、ベンゾエート、p−ベニルベンゾエート、2,4,6−トリメチルベンゾエートを含む。好適なカーボネートの例は、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリルおよびp−ニトロベンジルカーボネートを含む。
【0087】
好適なシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリルエーテルおよび他のトリアルキルシリルエーテルを含む。好適なアルキル基の例は、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチルおよびアリルエーテルまたはその誘導体を含む。好適なアリールアルキル基の例は、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、2−および4−ピコリルエーテルを含む。
【0088】
本明細書中で用いる用語「チオ」または「チオール」は、式(−SH)で表される基を指す。「置換チオール」は、式(−SR)で表される基を指し、ここでRは、安定な部分(例えば好適なチオール保護基;脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アルキルアリール、アリールアルキルなど、その各々は、さらに置換されていても置換されていなくてもよい)の生成をもたらす任意の置換基であり得る。
本明細書中で用いる用語「チオオキソ」は、式(=S)で表される基を指す。
【0089】
本明細書中で用いる用語「薬学的に許容し得る塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、適切でない毒性、刺激、免疫応答などを伴わずにヒトおよび下等動物の組織と接触させて用いるのに適し、合理的なリスク・ベネフィット比と相応である当該塩を指す。薬学的に許容し得る塩は、当該分野において周知である。例えば、Berge et al.は、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において薬学的に許容し得る塩を詳細に記載しており、それは、参照によって本明細書に組込まれる。
【0090】
本発明の化合物の薬学的に許容し得る塩は、好適な無機および有機酸および塩基から誘導されるものを含む。薬学的に許容し得る無毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸と共に、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸と共に、または当該分野において用いられる他の方法、例えばイオン交換を用いることによって生成したアミノ基の塩である。
【0091】
他の薬学的に許容し得る塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。
【0092】
好適な塩基から誘導された塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1〜4アルキル)塩を含む。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。他の薬学的に許容し得る塩は、適切な場合には無毒性のアンモニウム、四級アンモニウムならびに、対イオン、例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、低級アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸を用いて生成したアミンカチオンを含む。
【0093】
本明細書中で用いる用語「対象」は、任意の動物を指す。特定の態様において、対象は哺乳類動物である。特定の態様において、本明細書中で用いる用語「対象」は、ヒト(例えば男性、女性、成人または小児)を指す。対象は、任意の発達ステージにあり得る。
【0094】
本明細書中で用いる用語「投与する」、「投与すること」または「投与」は、本発明の化合物を移植し、吸収させ、摂取し、注入し、または吸入させることを指す。
【0095】
本明細書中で用いる用語「阻害する」は、OGT活性および/またはO−GlcNアシル化の量を、OGT活性および/またはO−GlcNアシル化の基準レベルであり得る初期レベルよりも統計的に有意に低いレベルまたは量に低減させることを意味する。
【0096】
本明細書中で用いる用語「処置」、「処置する」および「処置すること」は、本明細書中に記載した疾患もしくは障害、またはその1種もしくは2種以上の症状の発症を逆転させ、緩和し、遅延させ、またはその進行を抑制することを指す。いくつかの態様において、処置を、1種または2種以上の症状が発生した後に施してもよい。他の態様において、処置を、症状の不存在下で施してもよい。例えば、処置を、症状の発症の前に、感受性の個体に施してもよい(例えば症状の履歴の観点において、および/または遺伝的もしくは他の感受性要因の観点において)。処置をまた、症状が回復して、例えばそれらの再発が防止されたかまたは遅延された後に継続してもよい。
【0097】
本明細書中で用いる用語「有効な量」および「治療的に有効な量」は、対象に投与した場合に、対象が罹患している状態を少なくとも部分的に処置するのに有効である、本発明の化合物の量または濃度を指す。
【0098】
本明細書中で用いる用語「O−GlcNアシル化関連疾患または障害」および「OGT関連疾患または障害」は、異常なOGT活性および/または異常なレベルのO−GlcNアシル化が存在する疾患および障害を含むが、それらには限定されない。本明細書中で用いる用語「OGT活性」は、OGTで媒介されたO−GlcNアシル化を意味する。異常なレベルのOGT活性および/またはO−GlcNアシル化は、正常なレベルより高いレベルであり得るか、または正常なレベルより低いレベルであり得、ここで「正常な」レベルは、OGT活性またはO−GlcNアシル化と関連する疾患または障害を有していない対象におけるレベルである。OGT活性および/またはO−GlcNアシル化レベルと関連する疾患および障害の例は、神経変性障害、例えばアルツハイマー病;癌;真性糖尿病、インスリン抵抗性、ならびに糖尿病または他のOGT関連疾患の合併症を含むが、それらには限定されない。
【0099】
本明細書中で用いる用語「糖尿病の合併症」を用いて、糖尿病と関連する障害を意味する。糖尿病の合併症の非限定的な例は、微小血管障害、インスリン抵抗性、血管障害、腎症、皮膚潰瘍、循環の障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、大血管性疾患、微小血管障害、心機能不全および糖尿病性神経障害を含む。
【0100】
本明細書中で用いる用語「糖尿病患者」は、試料を採取する時点においてインスリンの原発性の欠乏を有する対象を意味する。糖尿病患者の用語は、若年性糖尿病(1型糖尿病)、成人発症型糖尿病(2型糖尿病)、妊娠糖尿病およびインスリン欠乏の任意の他の状態を有する個体を含むが、それらには限定されない。用語「糖尿病患者」および「糖尿病」は、当該分野の用語であり、医療界において開業する当業者によって知られており、理解されており、その正式な定義を、Harrison’s Principles of Medicine (Harrisons, Vol 14, Principles of Internal Medicine, Fauci, A.S., E. Braunwald, K.J. Isselbacher, J.D. Wilson, J.B. Martin, D.L. Kasper, S.L. Hauser, D.L. Longo編、McGraw-Hill, New York, 1999)において見出すことができる。
【0101】
正常よりも高いが、糖尿病の診断にかかる範囲内にはない血糖レベルを有する対象は、「糖尿病前症」を有すると考えられ得る。糖尿病前症はまた、当該分野において「空腹時血糖異常」(IFG)または「耐糖能障害」(IGT)として知られている。糖尿病前症を有する対象は、また成人発症型糖尿病またはインスリン非依存性糖尿病として知られている2型糖尿病を発生する、より高い危険を有する。
【0102】
本明細書中で用いる「インスリン抵抗性」は、身体の組織がインスリンに対して正常に応答しない状態である。DeFronzo, R. A. J. Cardiomuscular Pharmacology 20 (Suppl. 11): S1-S16 (1992)。インスリン抵抗性は、病理学的に高められた内在性インスリンおよびグルコースレベルにおいて出現し、異常のクラスターの発生に対する前記抵抗を有する対象について疾患を生じやすくし、それは、ある程度の耐糖能障害、血漿トリグリセリドおよび低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)レベルの増大、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)レベルの低下、高血圧、高尿酸血症、血漿線維素溶解活性の低下、心血管疾患およびアテローム性動脈硬化症の増大を含む。Reaven, G. M. Physiol-Rev. 75(3): 473-86 (1995)。
【0103】
本明細書中で用いる「癌」は、身体の器官および系が正常に機能するのを妨げる細胞の制御されない増殖を指す。それらの最初の位置および種となる重要臓器から移動する癌は、最終的には罹患した器官の機能的な悪化によって対象の死をもたらし得る。癌腫は、上皮細胞から発生する悪性の癌であり、腺癌および扁平上皮癌を含む。肉腫は、結合組織または支持組織の癌であり、骨肉腫、軟骨肉腫および消化管間質性腫瘍を含む。造血の癌、例えば白血病は、対象における正常な造血区画を打ち負かすことが可能であり、それによって造血不全(貧血、血小板減少症および好中球減少症の形態における)をもたらし、最終的には死を生じる。通常の当業者は、癌を、肉腫、癌腫または造血の癌として分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1。N−(フラン−2−イルメチル)−2−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−6−スルホンアミド)−2−フェニル−N−(チオフェン−2−イルメチル)アセトアミド(阻害剤N08)は、グルコサミン誘発細胞規模(cellular-wide)O−GlcNアシル化変化をHEK細胞における正常なレベルに低減する。
【0105】
本発明の特定の態様の詳細な記載
本発明は、O−GlcNAc転移酵素の阻害剤を提供する。本発明の化合物は、典型的には本明細書中に示したキノリノンまたはジヒドロキノリノン核を含む。本発明の化合物は、OGT関連疾患または障害の処置において有用である。具体的には、当該化合物は、糖尿病およびその合併症、神経疾患、癌および自己免疫疾患ならびに炎症性疾患の処置において有用である。本発明はまた、医薬組成物および本発明の化合物を種々の疾患の処置のために用いる方法を提供する。
【0106】
化合物
本発明の化合物は、OGTの阻害剤を含む。特定の態様において、当該化合物は、約100μMより低い、例えば約10μMより低い、例えば約1μMより低い、例えば約0.1μMより低い、または例えば約0.01μMより低いIC50を有する。本発明の化合物は、種々の疾患の処置において有用であり得る。特定の態様において、当該化合物は、糖尿病およびその合併症ならびにインスリン抵抗性の処置において有用である。特定の化合物はまた、神経疾患、例えば神経変性疾患を処置するにあたり有用である。特定の態様において、当該化合物は、特定のタイプの癌の処置において有用である。他の態様において、当該化合物は、自己免疫疾患または炎症性疾患を処置するにあたり有用である。
【0107】
特定の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩を提供し:
【化3】

【0108】
式中:
【化4】

は、単結合または二重結合を示し;
は、環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換の分枝状もしくは非分枝状アリールアルキル;または置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリールアルキルであり;
【0109】
およびRは、独立して水素;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリールアルキル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリールアルキル;−C(=O)R;−SOR;−SO;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;またはヘテロアリールオキシであり;あるいは
およびRは、随意に、介在する窒素と一緒になって、飽和の、または不飽和の、置換されているか、または非置換の複素環部分を形成してもよく;
【0110】
は、水素、C1〜6脂肪族または保護基であり;
は、水素、C1〜6脂肪族または保護基であり;
は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−C(=O)N(R;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(O)R;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール部分;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオキシ;アリールチオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオキシであり;また
nは、0、1、2または3である。
【0111】
特定の態様において、式Iで表される化合物は、以下の化合物の1種ではない:
【化5】

【0112】
【化6】

【0113】
【化7】

【0114】
【化8】

【0115】
【化9】

【0116】
【化10】

【0117】
【化11】

【0118】
【化12】

【0119】
【化13】

【0120】
特定の態様において、式Iで表される化合物は、式IaまたはIbで表されるものである:
【化14】

【0121】
特定の態様において、
【化15】

は、二重結合である。特定の態様において、
【化16】

は、単結合である。他の態様において、
【化17】

は、単結合であり、Rは、フェニルまたはベンジルではない。
【0122】
いくつかの態様において、Rは、脂肪族基である。他の態様において、Rは、ヘテロ脂肪族基である。特定の態様において、Rは、アリールである。特定の他の態様において、Rは、ヘテロアリールである。いくつかの態様において、Rは、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである。特定の態様において、Rは、フェニルである。尚他の態様において、Rは、ベンジルである。いくつかの態様において、Rは、(R)立体化学のものである。他の態様において、Rは、(S)立体化学のものである。
【0123】
いくつかの態様において、Rは、アミノ酸側鎖である。特定の態様において、Rは、イソプロピルである。特定の他の態様において、Rは、イソブチルである。いくつかの態様において、Rは、sec−ブチルである。いくつかの態様において、Rは、メチルである。他の態様において、Rは、シクロヘキシルである。特定の態様において、Rは、チエニルである。特定の他の態様において、Rは、ピリジル、ピリミジルまたはピリダジルである。尚他の態様において、Rは、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリルまたはイソキサゾリルである。
【0124】
いくつかの態様において、Rは、水素である。いくつかの態様において、Rは、脂肪族基である。他の態様において、Rは、ヘテロ脂肪族基である。特定の態様において、Rは、アリールである。特定の他の態様において、Rは、ヘテロアリールである。いくつかの態様において、Rは、アリールアルキルである。特定の態様において、Rは、ヘテロアリールアルキルである。他の態様において、Rは、置換フェニルである。いくつかの態様において、Rは、ピリジル、ピリミジルまたはピリダジルである。特定の態様において、Rは、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリルまたはイソキサゾリルである。尚他の態様において、Rは、ベンジルである。特定の態様において、Rは、イソプロピルである。他の態様において、Rは、メチルである。いくつかの態様において、Rは、エチルである。特定の態様において、Rは、以下の部分の1つである:
【化18】

【0125】
いくつかの態様において、Rは、水素である。いくつかの態様において、Rは、脂肪族基である。他の態様において、Rは、ヘテロ脂肪族基である。特定の態様において、Rは、アリールである。特定の他の態様において、Rは、ヘテロアリールである。いくつかの態様において、Rは、アリールアルキルである。特定の態様において、Rは、ヘテロアリールアルキルである。他の態様において、Rは、置換フェニルである。いくつかの態様において、Rは、ピリジル、ピリミジルまたはピリダジルである。特定の態様において、Rは、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリルまたはイソキサゾリルである。尚他の態様において、Rは、ベンジルである。特定の態様において、Rは、イソプロピルである。他の態様において、Rは、メチルである。いくつかの態様において、Rは、エチルである。特定の態様において、Rは、以下の部分の1つである:
【化19】

【0126】
いくつかの態様において、RおよびRの一方は、水素である。いくつかの態様において、RおよびRのいずれも、水素ではない。いくつかの態様において、RおよびRは、共に水素である。他の態様において、RおよびRの各々は、独立してC1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルから選択される。特定の態様において、RおよびRの少なくとも一方は、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである。特定の他の態様において、RおよびRは、共にアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである。尚他の態様において、RおよびRは、共にヘテロアリールアルキルである。
【0127】
いくつかの態様において、RおよびRは、介在する窒素と一緒になって複素環式部分を形成する。いくつかの態様において、RおよびRによって形成した環は、飽和されている。他の態様において、RおよびRによって形成した環は、不飽和である。いくつかの態様において、RおよびRは、一緒になって6員環の複素環式環を形成する。他の態様において、RおよびRは、一緒になって置換されているかまたは非置換のピロリジン、ピペリジンまたはホモピペリジン環を形成する。特定の態様において、RおよびRによって形成した環は、ピペリジン環である。特定の他の態様において、RおよびRによって形成した環は、ピペラジン環である。いくつかの態様において、RおよびRによって形成した環は、置換されている。特定の態様において、RおよびRによって形成した環は、他の部分に結合するかまたは融合して、二環式環系を形成する。特定の態様において、RおよびRは、一緒になって以下の複素環式部分の1つを形成する:
【化20】

【0128】
特定の態様において、Rは、水素である。特定の他の態様において、Rは、C1〜6脂肪族基である。いくつかの態様において、Rは、C1〜6アルキルである。いくつかの態様において、Rは、メチルである。他の態様において、Rは、エチルである。尚他の態様において、Rは、プロピルである。いくつかの態様において、Rは、窒素保護基である。
【0129】
特定の態様において、Rは、水素である。特定の他の態様において、Rは、C1〜6脂肪族基である。いくつかの態様において、Rは、C1〜6アルキルである。いくつかの態様において、Rは、メチルである。他の態様において、Rは、エチルである。尚他の態様において、Rは、プロピルである。いくつかの態様において、Rは、窒素保護基である。
【0130】
上記で一般的に定義したように、Rは、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式の、置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリール;置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−C(=O)N(R;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(O)R;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール部分;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオキシ;アリールチオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオキシである。特定の態様において、Rは、水素である。特定の他の態様において、Rは、ハロゲンである。
【0131】
特定の態様において、nは0である。他の態様において、nは1、2または3である。
特定の態様において、RおよびRは水素であり、nは0である。
【0132】
特定の態様において、本発明の化合物は、式:
【化21】

で表される。
【0133】
特定の態様において、本発明の化合物は、式:
【化22】

で表される。
【0134】
特定の態様において、本発明の化合物は、式:
【化23】

で表される。
【0135】
特定の態様において、本発明の化合物は、式:
【化24】

式中、
は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式の、置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリール;置換された、もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−COR;−C(=O)N(R);−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SOR;−NO;−N(R);−NHC(O)R;または−C(R)であり;ここでRの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール部分;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオキシ;アリールチオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオキシであり;mは、0〜5(両端を含む)である、
で表される。
【0136】
特定の態様において、本発明の化合物は、式:
【化25】

式中、Rおよびmは、上記で定義し、本明細書中に記載した通りである、
で表されるものである。
【0137】
特定の態様において、Rは、水素である。特定の他の態様において、Rは、ハロゲンである。特定の態様において、Rは、クロロである。特定の態様において、mは、1である。
【0138】
特定の態様において、本発明の化合物は、式:
【化26】

【0139】
【化27】

【0140】
【化28】

【0141】
【化29】

で表される。
【0142】
OGT阻害剤の合成
いくつかの態様において、本発明の化合物を、スキーム1に従って合成してもよい。キノリン−2(1H)−オンを、クロロスルホニル化(chlorosulfonylation)のための当業者に知られている方法、例えば熱の付加を伴う純クロロスルホン酸を用いてクロロスルホニル化してもよい。得られたクロロスルホニルキノリノンをアミノ酸と、例えば水性塩基性条件下で反応させてもよい。好適な水性塩基は、例えば水性水酸化ナトリウムである。アミノ酸は、天然または非天然アミノ酸であり得る。アミドを供給すべく、アミドカップリング条件下で、得られたカルボン酸をアミンとさらに反応させてもよい。かかるアミンは、第一アミンまたは第二アミンであり得る。好適なカップリング条件は、例えば塩基存在下でのカップリング剤である。好適なカップリング剤は、例えばHATUである。好適な塩基は、例えばヒューニッヒ塩基である。
【0143】
【化30】

【0144】
OGT阻害剤およびその医薬組成物の使用
本発明はさらに、本発明の化合物を用いる、疾患を処置する方法を提供する。本発明の方法は、治療的に有効な量の本発明の化合物の、それを必要としている対象(ヒトまたは他の動物を含むが、それらには限定されない)への投与を含む。
【0145】
本明細書中に記載した化合物および組成物は、一般的にO−GlcNAc転移酵素(OGT)またはその突然変異体の活性の阻害のために有用である。OGTは、糖尿病およびその合併症、癌、神経変性疾患、自己免疫疾患および炎症性疾患に関与していた (Golks, et al., EMBO Reports (2008) 9: 748-753;Liu, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2004) 101: 10804-10809;Jones, Circulation Research (2005) 96: 925-926;Golks, et al., EMBO J. (2007) 26: 4369-4379;Ohn, et al., Nature Cell Biol. (2008) 10: 1224-1231)。
【0146】
本発明の化合物および医薬組成物を、限定するものではないが、糖尿病およびその合併症、増殖性疾患(例えば癌、良性新生物、糖尿病性網膜症)、神経変性疾患、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ、ループス、多発性硬化症)ならびに炎症性疾患および障害を含む任意の疾患または症状を処置するかまたは予防するにあたり用いてもよい。本発明の化合物および医薬組成物を、動物、好ましくは哺乳類動物(例えば家畜、ネコ、イヌ、マウス、ラット)に、そしてより好ましくはヒトに投与してもよい。本発明の化合物または医薬組成物を動物に、任意の投与方法を用いて送達してもよい。特定の態様において、当該化合物または医薬組成物を、経口投与する。他の態様において、当該化合物または医薬組成物を、非経口投与する。
【0147】
特定の態様において、本発明は、限定するものではないが、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、インスリン抵抗性、血管疾患、皮膚潰瘍、循環障害、心機能不全、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、微小血管障害、大血管障害および糖尿病性神経障害を含む糖尿病およびその合併症の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明は、腫瘍形成(tumorogenesis)を処置する方法を提供する。
【0148】
特定の態様において、本発明の化合物は、増殖性疾患を処置するにあたり有用である。いくつかの態様において、本発明は、癌を処置する方法を提供する。
【0149】
本発明の化合物で処置される癌の例は、限定するものではないが、乳房;胆道系;膀胱;骨;神経膠芽腫および髄芽腫を含む脳;中枢および末梢神経系;子宮頸部;結腸;結合組織;内分泌腺(例えば甲状腺および副腎皮質);食道;子宮内膜;生殖細胞;胃腸管;頭頸部;腎臓;肝臓;肺;喉頭および下咽頭;中皮腫;筋肉;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉細胞から発生するものを含む卵巣;膵臓;前立腺;直腸;腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎臓、小腸;軟部組織;胚の腫瘍、例えば精上皮腫、非精巣上皮腫(奇形腫、絨毛癌)、間質性腫瘍および生殖細胞腫瘍を含む精巣;甲状腺の腺癌および髄様癌(medullar carcinoma)を含む甲状腺;
【0150】
胃;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌および扁平上皮癌を含む皮膚;尿管;膣;および外陰部;網膜芽細胞腫;白血病およびリンパ腫、即ち非ホジキン病、リンパ球性リンパ腫、慢性および急性骨髄性白血病(CML/AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ホジキン病、多発性骨髄腫ならびにT細胞リンパ腫;骨髄異形成症候群;形質細胞新生物;腫瘍随伴症候群;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;神経芽細胞腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫および骨肉腫を含む肉腫;未知の原発部位の癌;またAIDS関連の悪性病変の腫瘍を含む。他の癌は、通常の当業者に知られている。
【0151】
特定の態様において、本発明は、限定するものではないが、炎症性腸疾患、関節炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、スチル病、若年性関節炎、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、Ordの甲状腺炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、
【0152】
眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、強直性脊椎症、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、汎発性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自律神経障害、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、強皮症または外陰部痛を含む自己免疫疾患の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
【0153】
いくつかの態様において、本発明は、1種または2種以上の疾患および状態の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供し、ここで当該疾患または状態は、限定するものではないが、移植片対宿主病、移植、輸注、アナフィラキシー、アレルギー(例えば植物花粉、ラテックス、薬物、食物、昆虫毒、獣毛、動物の鱗屑、イエダニまたはゴキブリ杯に対するアレルギー)、I型過敏症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎およびアトピー性皮膚炎を含む免疫関連状態または疾患から選択される。
【0154】
いくつかの態様において、本発明は、限定するものではないが、喘息、虫垂炎、ブラウ症候群、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頸管炎、胆管炎、胆嚢炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、大腸炎、結膜炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、ドライアイ症候群、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、家族性低温誘発性自己炎症性症候群、家族性地中海熱(FMF)、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、喉頭炎、
【0155】
乳腺炎、髄膜炎、メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、マックル・ウェルズ症候群、脊髄炎心筋炎、筋炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、炎症性骨溶解症、耳炎、膵臓炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、肺線維症、腎盂腎炎、壊疽性膿皮症およびにきび症候群(PAPA)、化膿性無菌性関節炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、全身性若年性関節リウマチ、腱炎、TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、扁桃炎、未分化型脊椎関節症、未分化型関節症、ブドウ膜炎、腟炎、血管炎、外陰炎、慢性ウイルス性もしくは細菌性感染症から生じた慢性炎症、または乾癬(例えば尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、滴状乾癬もしくは逆乾癬(inverse psoriasis))を含む炎症性疾患の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
【0156】
特定の態様において、本発明は、限定するものではないが、関節リウマチ、骨関節炎、痛風、多発性関節炎および乾癬性関節炎を含む関節症および骨病理学的疾患(osteopathological disease)の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
【0157】
特定の態様において、本発明は、限定するものではないが、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、ドライアイ症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性気管支炎および喘息を含む急性および慢性炎症性疾患の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
【0158】
特定の態様において、本発明は、限定するものではないが、乾癬または、血管の増殖性障害、アテローム性動脈硬化症および再狭窄を含む平滑筋細胞増殖を含む過剰増殖性疾患の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。特定の態様において、本発明は、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮内膜増殖症および良性の前立腺肥大の重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
【0159】
特定の態様において、本発明は、限定するものではないが、神経変性障害および/または、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症、ピック病、パーキンソン病、レビー小体病または筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むタウオパチーの重篤度を処置するかまたは低下させる方法を提供する。
【0160】
本発明はさらに、前述の状態、病気、障害または疾患の1種に罹患した、ヒトを含む哺乳類動物の処置のための方法を含む。当該方法は、本発明の化合物またはその組成物の1種または2種以上の治療的に有効な量を、そのような処置を必要としている対象に投与することを含む。
【0161】
本発明はさらに、本発明の化合物を用いて細胞または組織におけるOGTを阻害する方法を含む。
本発明はさらに、本発明の化合物の、本明細書中で述べる疾患、障害、病気および/または状態の処置および/または予防および/または寛解のために用いる医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0162】
本発明はさらに、本発明の化合物の、OGTを阻害する医薬組成物の製造のための使用に関する。
本発明はさらに、本発明の化合物の、OGTを阻害することに対して応答性の疾患、例えば本明細書中で述べた任意の疾患、例えば糖尿病およびその合併症、神経変性疾患、癌、自己免疫疾患、および炎症性疾患を処置、予防または寛解するために用いることができる医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0163】
要求される正確な量は、対象の種、年齢および全身状態、特定の化合物、その投与方式、その活性方式などに依存して、対象ごとに変動する。本発明の化合物を、投与の容易性および投薬の均一性のために、好ましくは、用量単位形態において処方する。しかし、本発明のタンパク質および組成物の統計日用法は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることは、当然である。
【0164】
任意の特定の患者または生物のための治療的に有効な具体的な投与量レベルは、治療にかかる障害および当該障害の重篤度;用いる具体的なタンパク質の活性;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、健康状態、性別および食事;用いる具体的な化合物の投与時間、投与経路および排出速度;処置期間;用いる特定の化合物と組み合わせて、または同時に用いる薬物;ならびに医学分野において周知な同様の要因を含む、種々の要因に依存する。
【0165】
さらに、本発明の医薬組成物を、薬学的に許容し得る適切な担体と共に所望の用量において処方した後に、ヒトおよび他の動物に、経口的に、直腸内に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(例えば散剤、軟膏もしくはドロップによって)、頬側に、口腔スプレーまたは点鼻薬としてなどで投与することができる。
【0166】
特定の態様において、本発明の化合物を、所望の治療効果を得るために、対象の体重に対して1日あたり約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kgおよび約1mg/kg〜約25mg/kgを送達するのに十分な投薬レベルにて、1日1回または2回以上、経口的に、または非経口的に投与してもよい。
【0167】
所望の用量を、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日に1回、毎週、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回送達してもよい。特定の態様において、所望の投薬を、多重投与(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上の投与)を用いて送達してもよい。
【0168】
経口および非経口投与のための液体剤形は、限定するものではないが、薬学的に許容し得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は、当該分野において一般的に用いられる不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、塊根植物油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにその混合物を含んでいてもよい。
【0169】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、調味剤および芳香剤(perfuming agent)をもまた含むことができる。非経口投与のための特定の態様において、本発明の化合物を、可溶化剤、例えばポリエトキシル化ヒマシ油、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマーおよびその組み合わせと混合する。
【0170】
注射可能な調製物、例えば無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液を、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、既知の技術に従って処方できる。無菌の注射可能な調製物はまた、無毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば1,3−ブタンジオールに溶解した溶液であり得る。用いてもよい許容し得るビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩水がある。さらに、無菌の固定油が、溶媒または懸濁媒体として慣例的に用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を、用いることができる。さらに、脂肪酸、例えばオレイン酸を、注射可能物(injectable)の調製において用いる。
【0171】
注射可能な処方物を、例えば細菌保持フィルターを通しての濾過によって、または、使用前に無菌の水もしくは他の無菌の注射可能な媒体に溶解するか、もしくは分散させることができる、無菌固体組成物の形態の滅菌剤を包含させることによって、滅菌することができる。
【0172】
薬物の効果を延長するために、薬物の皮下注射または筋肉内注射からの吸収を遅延させることが、しばしば望ましい。これを、水溶性に乏しい結晶質または非結晶質物質の懸濁液の使用によって達成してもよい。そのため、薬物の吸収の速度は、その溶解速度に依存し、それはつまり、結晶のサイズおよび結晶の形態に依存し得る。
【0173】
あるいはまた、非経口的に投与された薬物形態の遅延された吸収を、薬物を油ビヒクルに溶解するかまたは懸濁させることにより達成する。注射可能なデポー形態を、薬物のマイクロカプセル封入(microencapsule)マトリックスを生分解性高分子、例えばポリ(ラクチド−コ−グリコリド)中に生成することにより作製する。薬物対ポリマーの比率および用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性高分子の例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注射可能処方物をまた、体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することにより調製する。
【0174】
直腸内または膣内投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物を好適な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ろうと混合することにより調製することができる坐剤であり、それは、周囲温度にて固体であるが、体温にて液体であるので、直腸または膣腔中で溶融し、活性化合物を放出する。
【0175】
経口投与のための固体剤形は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤および顆粒を含む。そのような固体剤形において、活性化合物を、少なくとも1種の不活性な、薬学的に許容し得る賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシアゴム、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム、e)溶液緩染剤(solution retarding agent)、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物と混合する。剤形が、カプセル、錠剤および丸剤の場合には、緩衝剤をまた含んでもよい。
【0176】
同様のタイプの固体組成物をまた、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いてもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体剤形を、コーティングおよび殻、例えば腸溶コーティングおよび医薬処方分野において周知の他のコーティングを伴って調製することができる。それらは、随意に乳白剤を含んでもよく、また、それらが活性成分(1種または2種以上)を単独で、または優先的に、腸管の特定の部分において、随意に遅延方式で放出する組成物であり得る。用いることができる埋封組成物の例には、ポリマー物質およびろうが含まれる。同様のタイプの固体組成物をまた、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いてもよい。
【0177】
当該活性化合物はまた、上記で注記した1種または2種以上の賦形剤とともにマイクロカプセル封入された形態であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体剤形を、コーティングおよび殻、例えば腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび医薬処方分野において周知の他のコーティングを伴って調製することができる。そのような固体剤形において、活性タンパク質を、少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトースまたはデンプンと混合してもよい。そのような剤形はまた、通常の慣行でそうであるように、不活性希釈剤以外の付加的な物質、例えば錠剤化潤滑剤および他の錠剤化補助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースを含んでもよい。
【0178】
当該剤形が、カプセル、錠剤および丸剤の場合には、緩衝剤をまた含んでもよい。それらは、随意に乳白剤を含んでもよく、また、それらが活性成分(1種または2種以上)を単独で、または優先的に、腸管の特定の部分において、随意に遅延方式で放出する組成物であり得る。用いることができる埋封組成物の例には、ポリマー物質およびろうが含まれる。
【0179】
局所的投与に適する処方物は、液体または半液体調製、例えば塗布薬、ローション、ゲル、適用剤(applicant)、水中油型もしくは油中水型エマルション、例えばクリーム、軟膏もしくはペースト;または溶液もしくは懸濁液、例えばドロップを含む。皮膚表面への局所的投与のための処方物を、皮膚科学的に許容し得る担体、例えばローション、クリーム、軟膏または石鹸を薬剤に分散させることにより調製することができる。有用な担体は、フィルムまたは層を皮膚上に形成して、適用を局所化し、除去を抑制することが可能である。内部組織表面への局所的投与のために、当該剤を、液体組織接着剤または組織表面への吸着を増強することが知られている他の物質中に分散させることができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液を、有利に用いることができる。あるいはまた、組織被覆溶液、例えばペクチン含有処方物を、用いることができる。
【0180】
眼科用組成物、点耳薬および点眼薬もまた、本発明の範囲内にあると予期される。さらに、本発明は、経皮的パッチの使用を予期し、それは、化合物の身体への制御された送達を提供するという追加の利点を有する。そのような剤形を、当該化合物を適切な媒体に溶解または分散することにより作製することができる。また、吸収促進薬を用いて、皮膚を横断する化合物の流量を増大させることができる。当該速度を、速度制御膜を提供することにより、または当該化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることにより制御することができる。
【0181】
さらに、局所的処方物用の担体を、含水アルコール系(例えば液体およびゲル)、無水油もしくはシリコーンベース系、または、水中油型、油中水型、水中油中水型およびシリコーン中水中油型エマルジョンを含むが、それらには限定されないエマルジョン系の形態とすることができる。エマルジョンは、希薄なローション(それはまた、噴霧またはエアゾール送達に適し得る)、クリーム状ローション、ライトクリーム、ヘビークリームなどを含む広範囲の稠度に及び得る。エマルジョンはまた、マイクロエマルジョン系を含むことができる。他の好適な局所的担体は、無水の固体および半固体物質(例えばゲルおよびスティック);ならびに水性ベースのムース系を含む。
【0182】
また、本発明の化合物および医薬組成物を、併用療法において用いることができると認識される、即ち、当該化合物および医薬組成物を、1または2以上の他の所望の治療法または医学的手順と同時に、その前に、またはその後に投与することができる。併用レジメンにおいて用いるための療法(治療法または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療法および/または手順ならびに達成するべき所望の治療効果との適合性を考慮する。また、用いる療法が、同一の障害について所望の結果を達成し得る(例えば、本発明の化合物を、他の抗癌剤と同時に投与してもよい)か、またはそれらが種々の効果(例えば、任意の有害反応の制御)を達成し得ることが、認識される。
【0183】
尚他の観点において、本発明はまた、本発明の医薬組成物の1種または2種以上の成分で満たされた1または2以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供し、特定の態様においては、併用療法として用いるための追加の承認治療薬を含む。そのような容器(1または2以上)と随意に関係するのは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関による処方箋であり得、これは、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の当該機関による承認を反映するものである。
【0184】
本発明のこれらのおよび他の観点を、以下の例の考慮によってさらに認識し、それは、本発明のある特定の態様を例示することを意図するが、特許請求の範囲によって定義するその範囲を限定することを意図しない。
【0185】

例1
キノリンスルホンアミドを合成するための一般的手順
本発明の化合物を、以下に記載するスキーム、ステップおよび中間体に従って調製する。
【化31】

A)クロロスルホン酸、65℃;B)NaOH、HO;C)HATU、DIEA、DMF。
【0186】
ステップ1
【化32】

5gのキノリン−2(1H)−オンの15mlのクロロスルホン酸中の混合物を、65℃にて3時間加熱した。室温(RT)に冷却した後、混合物を氷(〜150ml)上に注いだ。沈殿物を濾過し、フィルターケークを水で洗浄した。生成物を真空下で一晩乾燥して、薄茶色の固体(5.1g、61%)を得た。MSおよびH−NMRは、構造と整合している。
【0187】
ステップ2
【化33】

D,L−フェニルアラニン(149mg、0.98mmol)および水酸化ナトリウム(98mg、2.45mmol)を水(10ml)に溶解した、撹拌した溶液に、化合物2の一部(200mg、0.82mmol)を加えた。反応混合物を室温にて22時間撹拌し、残留する不溶性物質を濾別し(セライト)、水で洗浄した。混ぜ合わせた濾液および洗液を、数滴の濃HClでpH〜2に酸性化し、得られた沈殿物を採集し、水で洗浄し、乾燥して、明るい黄褐色の非結晶質固体を得、それを、さらに精製せずに用いた。収率=132mg(45%)。MS(APCI):(M+1)=359;H−NMRは、構造と整合している。
【0188】
ステップ3
【化34】

化合物2(1当量)、アミン(2当量)およびDIEA(5.3当量)のDMF(化合物1の150mgあたり5ml)中の混合物に、周囲温度にてHATU(1.5当量)を加え、反応混合物を1.5〜2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をEtOAcと水との間で分割した。有機層を、飽和NaHCO(aq.)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。
【0189】
例2
N−(2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−オキソ−1−フェニルエチル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−6−スルホンアミドの調製
【化35】

1−メチルピペラジンをアミンとして用いて、例1におけるスキーム、ステップおよび中間体に従って表題化合物を調製した。反応溶媒の除去の後、粗生成物を水およびEtOAcで洗浄して(一般操作からの変更点)、灰色の非結晶質固体を69%の収率で得た。MS(APCI):(M+1)=441;HPLC:99%の純度(C−18、RT=4.42分);H−NMRは、構造と整合している。
【0190】
例3
N−(フラン−2−イルメチル)−2−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−6−スルホンアミド)−2−フェニル−N−(チオフェン−2−イルメチル)アセトアミドの調製
【化36】

フラン−2−イルメチル−チオフェン−2−イルメチルアミンをアミンとして用いて、例1におけるスキーム、ステップおよび中間体に従って表題化合物を調製した。生成物を、EtOAcを溶離剤として用いて、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル60、230〜400メッシュ)によって精製した。精製した生成物を、オレンジ色油として単離し、それは、放置した際に凝固した。冷EtOAcでの粉砕によって、淡黄色固体が13%の収率で得られた。MS(APCI):(M+1)=534;HPLC:97.4%の純度(C−18、RT=5.00分);H−NMRは、構造と整合している。
【0191】
フラン−2−イルメチル−チオフェン−2−イルメチルアミンの調製:
【化37】

フルフリルアミン(2.0g、0.0206mol)および2−チオフェンカルボキサルデヒド(2.31g、0.0206mol)のジクロロメタン(60ml)中の混合物を、室温にて5分間撹拌し、その後ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(5.24g、0.0247mol)を分割して加えた。添加が完了した後に(約2分)、反応混合物を、室温にて3時間撹拌し、飽和NaHCO(aq.)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮した。生成物混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル60、230〜400メッシュ、4:1 ヘキサン:EtOAc〜1:1 ヘキサン:EtOAc)によって精製して、アミンを淡黄色油として得た。1.65g(41%)。MS(APCI):(M+1)=194;H−NMRは、構造と整合している。
【0192】
例4
OGT阻害についての1249種のキノリンスルホンアミドのライブラリーのスクリーニング
384ウェルプレート(Costar # 3654)に、液体取り扱いロボットを用いて、50nMのフルオレセイン結合UDP−GlcNAc類似体(Gross et al, 2003を参照)、1〜2μMのsOGTおよび緩衝液(500μMのトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィンを有する20mMのリン酸カリウム、pH=7.4)の混合物20μLを満たした。1249種の化合物のライブラリーを、4種の異なる濃度の化合物が調製されるように、DMSOで、5mg/mlのプレートから5倍に3回連続的に希釈した。
【0193】
複製された4種の濃度の化合物ライブラリーを、次に100nLのピンアレイを用いてアッセイプレートに移送し、4種の濃度の最高で25μg/mLまたは〜70μMの最終的な化合物濃度を得、それによって平均化合物MWが350であると推測された。Perkin Elmer Envision(登録商標)マイクロプレートリーダーを用いて、試料を、垂直平面において480nmにて励起し、鉛直および水平偏光面の同時の発光強度(535nm)を測定した。以下の方程式を用いて偏光を計算した:eq4:mP=1000*(V−G*H)/(V+G*H)、式中:mP=ミリ偏光単位、V=垂直に偏光した発光の強度(RFU)、H=水平に偏光した発光の強度(RFU)およびG=増幅率。化合物を、プローブの蛍光性偏光に影響するそれらの能力について評価し、大まかなK値を、プローブの偏光結果およびK値に基づいて決定した。
【0194】
【表1】

【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
【表4】

【0198】
【表5】

【0199】
例5
設計したキノリンスルホンアミドによるOGTの阻害
ヒットを、UDP−14C−GlcNAcのカゼインキナーゼIIから誘導されたペプチドへの移送を伴う二次アッセイにおいて試験し、それは、Hartらによって記載されているように(Manuscript、Reference4を参照)、既知のOGT糖鎖付加部位を含む。3つのリジンおよび1つのチロシンを、このペプチド基質(KKKYPGGSTPVSSANMM)のN末端に加えて、それぞれホスホセルロースディスクおよびUV検出における捕獲を可能にした。化合物をDMSOで、10mM〜9.7uMの範囲の濃度にまで、2倍に連続的に希釈し、次に500μMのペプチド、6.25μMのUDP−14C−GlcNAc、〜20〜40nMのsOGTならびに緩衝液(125mMのNaCl、1mMのEDTA、20mMのリン酸カリウム、pH=7.4および500μMのトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン)を含む反応混合物に1:100で加えた。反応物を、WhatmanP81ホスホセルロースディスク上に配置し、1%リン酸中で5分間3回洗浄し、液体シンチレーション計数によって計数した。IC50曲線を、反応の計数から決定し、IC50を決定した。
【0200】
N−(フラン−2−イルメチル)−2−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−6−スルホンアミド)−2−フェニル−N−(チオフェン−2−イルメチル)アセトアミド(例3)は、390nMのIC50でOGTを阻害する。
【0201】
例6
HEK細胞におけるグルコサミン誘発細胞規模O−GlcNアシル化変化
細胞培養物における阻害剤の効能を、化合物N08をHEK293細胞に加えることにより評価した。HEK293細胞を、10%FBSを有する低グルコース(5mM)DMEMを培地として用いて、6ウェルプレート中で成長させた。それらが約50〜60%コンフルーエントである際に、2mlの培地を各々のウェル中に含む別個の6ウェルプレートを、調製し、0.5%のDMSOを1つのウェルに、0.5%のDMSO+4mMのグルコサミンを他のウェルに、2つ1組で加え(全体的なGlcNアシル化変化についての負の、および正の対照として)、残余にN08を加えて、グルコサミンに加えて12.5μMの最終濃度とした。化合物を混合した後に、培地を、培養した細胞から除去し、阻害剤−培地溶液を、細胞に加えた。細胞を阻害剤と共に16時間(一晩)インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、細胞スクレーパーを用いて除去し、1.5mlの微量遠心管に移送し、遠心分離によってペレット化し、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤反応混液(SIGMA)を有する100μlのRIPA緩衝液に再縣濁させることにより溶解した。
【0202】
氷上でインキュベートした後に、残骸をペレット化し、上清を、全細胞溶解物として採集した。各々の試料の合計のタンパク質濃度を、Bradford Assayによって決定して、ゲル上に負荷させたタンパク質のレベルを標準化した。次に、2×SDS−PAGE試料緩衝液を各々の試料に加え、それらを10分間沸騰させ、変性ポリアクリルアミドゲル(4〜20%勾配)上に負荷させ、ニトロセルロース膜に移送し、1%BSAで1時間遮断し、モノクローナルO−GlcNAc抗体、CTD110.6(Covance)で調査し、1%BSAでの1:5000希釈にて一晩4℃にてインキュベートし、続いて抗マウスHRP二次抗体を加えた。Pierce SuperSignal West Pico Chemiluminescent基質を加えて、ウエスタンブロットを行った。図1は、N−(フラン−2−イルメチル)−2−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−6−スルホンアミド)−2−フェニル−N−(チオフェン−2−イルメチル)アセトアミド(阻害剤N08)がグルコサミン誘発細胞規模O−GlcNアシル化変化をHEK細胞における正常なレベルに低減することを示す。
【0203】
他の態様
前記のものは、本発明の特定の非限定的な好ましい態様の記載であった。通常の当業者は、この記載に対する種々の変更および修正が、以下の特許請求の範囲において定義する本発明の精神または範囲を逸脱せずになされ得ることを認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

式中:
【化2】

は、単結合または二重結合を示し;
は、環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換の分枝状もしくは非分枝状アリールアルキル;または置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリールアルキルであり;
およびRは、独立して水素;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリールアルキル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリールアルキル;−C(=O)R;−SOR;−SO;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール;ヘテロアリール;ヒドロキシル;アルコキシ;アリールオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;またはヘテロアリールオキシであり;あるいは
およびRは、随意に、介在する窒素と一緒になって、飽和の、または不飽和の、置換されているか、または非置換の複素環部分を形成してもよく;
は、水素、C1〜6脂肪族または保護基であり;
は、水素、C1〜6脂肪族または保護基であり;
は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−C(=O)N(R;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(O)R;または−C(Rであり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール部分;ヘテロアリール;ヒドロキシ;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオキシ;アリールチオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオキシであり;また
nは、0、1、2または3である、
で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
式(I)で表される化合物が、以下のもの
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

の1種ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化12】

が単結合であり、Rがフェニルまたはベンジルではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
【化13】

が二重結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が、式(Ia):
【化14】

で表される立体化学を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が、式(Ib):
【化15】

で表される立体化学を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式:
【化16】

で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化17】

で表される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式:
【化18】

で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式:
【化19】

で表される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式:
【化20】

で表される、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
式:
【化21】

で表される、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
式:
【化22】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
式:
【化23】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
式:
【化24】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項16】
式:
【化25】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
式:
【化26】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項18】
式:
【化27】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項19】
式:
【化28】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項20】
式:
【化29】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項21】
式:
【化30】

で表される、請求項12に記載の化合物。
【請求項22】
化合物が、式:
【化31】

で表される立体化学を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
化合物が、式:
【化32】

で表される立体化学を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
式:
【化33】

式中、
は、水素;ハロゲン;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状の脂肪族基;環式もしくは非環式の、置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロ脂肪族基;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアシル;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のアリール;置換もしくは非置換の、分枝状もしくは非分枝状のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−COR;−C(=O)N(R);−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SOR;−NO;−N(R);−NHC(O)R;または−C(R)であり;ここで、Rの各々の存在は、独立して水素;ハロゲン;保護基;脂肪族基;ヘテロ脂肪族基;アシル;アリール部分;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオキシ;アリールチオキシ;アミノ;アルキルアミノ;ジアルキルアミノ;ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオキシであり;また
mは、0〜5(両端を含む)である、
で表される、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
化合物が、式:
【化34】

で表される立体化学を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
化合物が、式:
【化35】

で表される立体化学を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
がハロゲンであり、mが1である、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
がクロロである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
およびRのいずれも水素ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
およびRの一方が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
およびRが一緒になって複素環式環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
およびRが一緒になって6員環の複素環式環を形成する、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
およびRが一緒になって、随意に置換されているピロリジン、ピペリジンまたはホモピペリジン環を形成する、請求項31に記載の化合物。
【請求項34】
およびRが一緒になって、随意に置換されているピペラジン環を形成する、請求項31に記載の化合物。
【請求項35】
ピペラジン環が、随意に置換されているアリールまたはヘテロアリール部分で置換されている、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
およびRの各々が、C1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項37】
およびRの一方が、C1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、他方が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項38】
およびRの少なくとも一方が、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項39】
およびRの各々がアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
およびRの各々がヘテロアリールアルキルである、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
およびRの少なくとも一方がアリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
以下の式:
【化36】

【化37】

【化38】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の治療的に有効な量;および薬学的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項44】
対象の体重に対して1日あたり約0.001mg/kg〜約100mg/kgを送達するのに十分な量において投与される、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
約0.01mg/kg〜約10mg/kgを送達するのに十分な量において投与される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
約0.1mg/kg〜約40mg/kgを送達するのに十分な量において投与される、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
約1mg/kg〜約25mg/kgを送達するのに十分な量において投与される、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
対象におけるOGT関連疾患または状態を処置する方法であって、そのような処置を必要としている対象に、請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物または請求項43に記載の組成物の治療的に有効な量を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
対象がヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
化合物または組成物を、OGT関連疾患または障害を処置するための付加的薬物と組み合わせて投与する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
OGT関連疾患または状態が、神経変性疾患、癌、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病の合併症、自己免疫疾患または炎症性疾患である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
糖尿病の合併症が、インスリン抵抗性、血管疾患、皮膚潰瘍、循環障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性角膜症、微小血管障害、大血管障害または糖尿病性神経障害である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症またはピック病である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
癌が、乳房;胆道系;膀胱;骨;神経膠芽腫および髄芽腫を含む脳;中枢および末梢神経系;子宮頸部;結腸;結合組織;内分泌腺(例えば甲状腺および副腎皮質);食道;子宮内膜;生殖細胞;胃腸管;頭頸部;腎臓;肝臓;肺;喉頭および下咽頭;中皮腫;筋肉;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉細胞から発生するものを含む卵巣;膵臓;前立腺;直腸;腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎臓、小腸;軟部組織;胚の腫瘍、例えば精上皮腫、非精巣上皮腫(奇形腫、絨毛癌)、間質性腫瘍および生殖細胞腫瘍を含む精巣;甲状腺の腺癌および髄様癌を含む甲状腺;胃;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌および扁平上皮癌を含む皮膚;尿管;膣;および外陰部;網膜芽細胞腫;白血病およびリンパ腫、即ち非ホジキン病、リンパ球性リンパ腫、慢性および急性骨髄性白血病(CML/AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ホジキン病、多発性骨髄腫ならびにT細胞リンパ腫;骨髄異形成症候群;形質細胞新生物;腫瘍随伴症候群;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;神経芽細胞腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫および骨肉腫を含む肉腫;未知の原発部位の癌;またAIDS関連の悪性病変のものである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
自己免疫疾患が、炎症性腸疾患、関節炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、スチル病、若年性関節炎、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、Ordの甲状腺炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、強直性脊椎症、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、汎発性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自律神経障害、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、強皮症または外陰部痛である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
炎症性疾患が、喘息、虫垂炎、ブラウ症候群、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頸管炎、胆管炎、胆嚢炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、大腸炎、結膜炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、ドライアイ症候群、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、家族性低温誘発性自己炎症性症候群、家族性地中海熱(FMF)、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、マックル・ウェルズ症候群、脊髄炎心筋炎、筋炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、炎症性骨溶解症、耳炎、膵臓炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、肺線維症、腎盂腎炎、壊疽性膿皮症およびにきび症候群(PAPA)、化膿性無菌性関節炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、全身性若年性関節リウマチ、腱炎、TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、扁桃炎、未分化型脊椎関節症、未分化型関節症、ブドウ膜炎、腟炎、血管炎、外陰炎または慢性ウイルス性もしくは細菌性感染症から生じた慢性炎症、または乾癬である、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
細胞におけるOGT活性を阻害する方法であって、細胞を請求項1〜42のいずれか一項に記載の化合物の有効な量と接触させて、OGTを阻害することを含む、前記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−528858(P2012−528858A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513932(P2012−513932)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/001596
【国際公開番号】WO2010/141074
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】