説明

PLL回路

【課題】同期信号の位相が大きく変化する場合にも、短時間で位相を同期させる。
【解決手段】本PLL回路における位相比較器10は、映像信号に含まれる同期信号SYNと位相比較信号BLKとの位相誤差を示す比較出力信号PDPを出力し、VCO30は、比較出力信号PDPを積分するLPF20から与えられる直流電圧に応じた周波数のクロック信号CKを出力する。カウンタ40は、クロック信号CKを分周した位相比較信号BLKを出力する。ロック確認回路50は、位相比較信号BLKと同期信号SYNとの位相が同期すべきロック状態であるか否かを確認し、ロック状態でない場合にはリセット信号RSTを出力し、カウンタ40をリセットすることにより強制的にロック状態にすることができる。よって、短時間で位相を同期させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示装置などに使用されるPLL(Phase-locked loop)回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョン放送における映像信号や各種映像出力装置から与えられる映像信号を表示するため、液晶表示装置などの表示装置が使用されることが多い。この表示装置には、映像信号に含まれる例えば水平同期信号に同期し、その周波数が多少変動しても予め定められる周波数の同期パルスを発生させるための回路が必要である。この回路としてフェーズロックトループ(PLL:Phase-locked loop)回路が使用されることが多い。このようなPLL回路の構成は、例えば特許文献1などに開示されている。
【0003】
図11は、このような従来のPLL回路の構成を示すブロック図である。図11に示されるように、このPLL回路900は、位相比較器91と、ローパスフィルタ(以下「LPF」と略称する)92と、電圧制御発振器(以下「VCO」と略称する)93と、分周器94とを備える。
【0004】
位相比較器10は、外部から与えられる映像信号に含まれる同期信号SYNの位相と、後述する位相比較信号BLKの位相とを比較し、比較した結果を位相誤差を示す比較出力信号PDPとして出力する。LPF20は、上記位相比較器10からの比較出力信号PDPを積分し、得られる直流電圧をVCO30に与える。VCO30は、上記LPF20から与えられる直流電圧に応じた周波数のクロック信号CKを出力する。分周器40は、VCO30から与えられるクロック信号CKを分周した位相比較信号BLKを出力する。このような構成により、位相比較信号BLKの位相が同期信号SYNの位相に合致するようVCO30の発振周波数が変化するので、この従来のPLL回路は入力される同期信号SYNに対して位相比較信号BLKの位相を同期させることができる。
【特許文献1】特開平3−64126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、テレビジョン放送におけるチャンネルが切り替えられたり、映像出力装置が切り替えられたりすることにより、上記従来のPLL回路に与えられる映像信号が変更されることがある。この場合、変更後の映像信号の周波数が変更前と同一であっても、当該映像信号に含まれる同期信号の位相は大きく変化することがある。
【0006】
しかし、従来のPLL回路は、このような位相の変化についても、周波数が変化した場合と同様の引き込み動作(ロックアップ動作)を行う。このロックアップ動作は、VCOの発振周波数を変化させることにより行われる。そのため、最終的に位相が同期し、VCOの発振周波数が安定するまでには長い時間がかかる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、例えば与えられる映像信号が変更される場合などにより、同期信号の位相が大きく変化する場合にも、非常に短い時間で位相を同期させることができるPLL回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、外部から与えられる入力信号に対して位相が同期する信号を出力するPLL(フェーズロックトループ)回路であって、
制御電圧によって発振周波数が変化する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力信号をクロックとしてカウントし、カウントすることにより得られるカウント数が所定数に達したときに前記カウント数をゼロに戻すとともに、レベルが変化する分周信号を出力するカウンタと、
前記分周信号と前記入力信号とを比較することにより得られる位相誤差を示す位相誤差信号を出力する位相比較器と、
前記位相誤差信号に応じた電圧を前記制御電圧として前記電圧制御発振器に与えるローパスフィルタと、
前記分周信号に基づき、位相が同期すべきロック状態でないと確認した場合には、直後の前記入力信号のレベルが変化する時点近傍で、前記カウンタへリセット信号を出力するロック確認回路とを備え、
前記カウンタは、前記リセット信号を受け取るときに前記カウント数をゼロに戻し、前記分周信号のレベルを変化させることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記位相比較器は、前記入力信号がアクティブになる時点から前記入力信号のアクティブ期間内で所定時間だけ遅れて前記分周信号がアクティブになる時点において前記位相誤差がゼロになる位相誤差信号を出力し、
前記ロック確認回路は、
前記分周信号および前記入力信号に基づき、ロック状態でないことを確認する第1の論理回路と、
前記第1の論理回路によりロック状態でないと確認された直後の前記入力信号のアクティブ期間内でアクティブになるリセット信号を生成する第2の論理回路とを含むことを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記分周信号を遅延させる遅延回路をさらに備え、
前記位相比較器は、前記遅延回路により遅延された分周信号と前記入力信号とを比較することにより前記位相誤差信号を出力し、
前記ロック確認回路は、前記遅延回路により遅延された分周信号に基づき、前記リセット信号を出力することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、
前記遅延回路は、前記入力信号がアクティブになる時点と、前記カウンタから出力される分周信号がアクティブになる時点とが合致するよう、前記分周信号を遅延させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、例えば外部から与えられる入力信号が変更される場合など、入力信号の位相が大きく変化してロック状態でなくなる場合にも、ロック確認回路からリセット信号をカウンタに出力することにより強制的にロック状態にする、または少なくともロック状態に近づけることができる。よって、非常に短い時間で位相を同期させることができる。
【0013】
第2の発明によれば、入力信号のアクティブ期間内でリセット信号がアクティブになるので、位相誤差をゼロにするまたは少なくともゼロに近づけることができる。よって、非常に短い時間で位相を同期させることができる。
【0014】
第3の発明によれば、遅延回路により分周信号の遅延時間を適宜に設定することにより、分周信号の位相が変化する時点を入力信号の立ち上がり時点を含む任意の時点に設定することが可能となる。このことにより、本PLL回路を備える装置の各種動作タイミング(典型的には表示装置の表示タイミング)を任意の時点に合わせることが容易に実現できる。
【0015】
第4の発明によれば、入力信号と分周信号のアクティブになる時点がそれぞれ合致するので、本PLL回路を備える装置の各種動作タイミング(典型的には表示装置の表示タイミング)を任意の時点に合わせることが非常に容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<1. 第1の実施形態>
<1.1 PLL回路の全体的な構成および動作>
以下、本発明の第1の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るPLL回路のブロック図である。図1に示されるように、本PLL回路100は、位相比較器10と、ローパスフィルタ(以下「LPF」と略称する)20と、電圧制御発振器(以下「VCO」と略称する)30と、分周器として機能するプログラマブルカウンタ(以下「カウンタ」と略称する)40と、位相が同期すべきロック状態であるか否かを確認するロック確認回路50とを備える。
【0017】
位相比較器10は、外部から与えられる映像信号に含まれる同期信号SYNの位相と、後述する位相比較信号BLKの位相とを比較し、比較した結果を位相誤差を示す信号である比較出力信号PDPとして出力する。なお、上記同期信号SYNは、例えばテレビジョン放送用のコンポジット映像信号から分離される水平同期信号である。以下、この位相比較器10について、図2および図3を参照して詳しく説明する。
【0018】
図2は、位相比較器10の構成を示す回路図である。図2に示されるように、この位相比較器10は、同期信号SYNおよび位相比較信号BLKを入力信号とし、比較出力信号PDPを出力信号とする、スリーステートバッファであり、図3に示す真理値表に従って動作する。
【0019】
図3は、位相比較器10の動作を表す真理値表である。この図3に示されるように、位相比較器10は、同期信号SYNがLレベルであるときには、位相比較信号BLKのレベルにかかわらず、ハイインピーダンス出力の状態となる。また、位相比較器10は、同期信号SYNがHレベルであるとき、位相比較信号BLKがHレベルの場合にはHレベルの比較出力信号PDPを出力し、位相比較信号BLKがLレベルの場合にはLレベルの比較出力信号PDPを出力する。
【0020】
また、このような位相比較器10に代えて、チャージポンプを含む位相周波数比較器を使用する構成も考えられる。しかし、この構成において使用されるエッジトリガ型のスリーステート位相周波数比較器は、エッジ動作であることから入力ノイズに弱い。また、ロック期間中は常にハイインピーダンス出力の状態が持続することから出力側でもノイズに弱くなる。よって、上記位相比較器10を使用する本PLL回路100の構成はノイズに強い点で好適である。
【0021】
次に、LPF20は、上記位相比較器10からの比較出力信号PDPを積分し、得られる直流電圧をVCO30に与える。したがって、比較出力信号PDPに含まれるHレベルの期間が長くなるほど、VCO30に与える電圧が高くなり、比較出力信号PDPに含まれるLレベルの期間が長くなるほど、VCO30に与える電圧が低くなる。なお、実際には比較出力信号PDPは、抵抗分圧回路からなる図示されないレベルシフタによってレベル変換された後にLPF20に与えられる。また、前述したハイインピーダンス出力の状態では、LPF20には、比較出力信号PDPに含まれるHレベルの電位とLレベルの電位との中間電位に対応する上記レベルシフタの中点電圧が与えられる。
【0022】
VCO30は、上記LPF20から与えられる直流電圧に応じた周波数のクロック信号CKを出力する。このVCO30は、例えば印加電圧の平方根にほぼ反比例するようにアノード・カソード間の容量が変化する可変容量ダイオードと、水晶振動子とを含む。VCO30は、この可変容量ダイオードの容量を変化させることにより水晶振動子の負荷容量を変化させ、このことにより発振周波数を変更する。したがって、このVCO30は、上記印加電圧が大きくなるほど発振周波数が低くなる。このような動作については後述する。また、VCO30から出力されるクロック信号CKは、本PLL回路100から外部へ(例えば表示制御回路へ)出力される。
【0023】
カウンタ40は、VCO30から与えられるクロック信号CKを分周した位相比較信号BLKを出力する。具体的には、カウンタ40は、最初のクロック信号CKの立ち上がりに合わせて出力信号を立ち上げ、その後クロック信号CKの立ち上がり毎にその数を計数(カウント)する。そしてその計数値が典型的には所定数Nの半分に達したときに出力信号を立ち下げる。その後もカウンタ40は、クロック信号CKの立ち上がり毎にその数を計数し、その計数値が所定数Nに達したときに計数値をゼロに戻して(リセットして)出力信号を立ち上げる。この動作を繰り返すことにより、クロック信号CKをN倍の周期に分周した位相比較信号BLKを出力する。なお、このNは外部より所定の範囲内で自由に設定(プログラム)できるが、ここでは位相比較信号BLKの周波数が予め定められた同期信号SYNの周波数に合致するよう適宜の値が設定されているものとする。
【0024】
ロック確認回路50は、位相比較信号BLKと同期信号SYNとの位相が同期すべきロック状態(ロックアップ状態)であるか否かを確認し、ロック状態でない場合にはリセット信号RSTを出力する。ここで、このロック状態には、完全なロック状態と不完全なロック状態とが含まれるものとする。完全ロック状態とは、同期信号SYNの位相に位相比較信号BLKの位相が合致している状態を指す。不完全ロック状態とは、完全ロック状態を除き、位相比較信号BLKの立ち上がり時点が同期信号SYNがHレベル期間内(すなわちアクティブ期間内)にある状態を指す。この不完全ロック状態では、これらの信号の位相が合致するよう変化する。PLL回路100では、上記完全ロック状態で安定するようフィードバック制御が行われる。このロック状態を確認するためのロック確認回路50の詳細な構成および動作について、図4および図5を参照して説明する。
【0025】
<1.2 ロック確認回路の構成および動作>
図4は、完全ロック状態にあるときの各信号の波形図である。図4に示されるように、時刻t1において、同期信号SYNがLレベルからHレベルに変化すると、比較出力信号PDPがLレベルに変化している。この変化は、位相比較器10が従って動作する図3に示される真理値表のとおりである。続いて、時刻t2において、位相比較信号BLKがLレベルからHレベルに変化すると、比較出力信号PDPがHレベルに変化する。その後、時刻t3において、同期信号SYNがHレベルからLレベルに変化すると、比較出力信号PDPがハイインピーダンス出力の状態に変化する。これらも図3に示される真理値表のとおりである。
【0026】
ここで、図4に示されるように、時刻t1から時刻t2までの時間と、時刻t2から時刻t3までの時間とが同じ長さである場合、比較出力信号PDPのHレベル期間とLレベル期間との長さも同一となる。したがって、比較出力信号PDPの電位の平均値は、Hレベルの電位とLレベルの電位との中間の電位となるので、LPF20からVCO30に与えられる直流電圧の平均値もまた上記中間の電位となる。そして、上記VCO30は、上記中間の電位が与えられるときに、その発振周波数が予定されている同期信号SYNの周波数のN倍となるように予め設定されているものとする。そうすれば、ちょうど図4に示される状態の時に、同期信号SYNの周波数と比較出力信号PDPの周波数とが合致し、これらの信号の位相関係も(時刻t1から時刻t2までの期間の差を維持した状態で)合致する。
【0027】
そして、もし時刻t1から時刻t2までの時間が、時刻t2から時刻t3までの時間よりも短い場合、比較出力信号PDPのHレベル期間がLレベル期間より長くなる。このとき、VCO30に与えられる直流電流の平均値はより大きくなる。そうすれば、VCO30の発振周波数が低くなり、位相比較信号BLKの周波数も低くなるので、比較出力信号PDPにおけるLレベルからHレベルへの立ち上がり時刻も遅くなる。その結果、時刻t1から時刻t2までの時間が長くなっていき、結局時刻t1から時刻t2までの時間と、時刻t2から時刻t3までの時間とが同じ長さである図4の状態で完全ロック状態となる。このことは時刻t1から時刻t2までの時間が、時刻t2から時刻t3までの時間よりも長い場合であっても同様である。
【0028】
また、このような不完全ロック状態は、VCO30の発振周波数が同期信号SYNの周波数のN倍より大きい場合や小さい場合、すなわち同期信号SYNの周波数が予定されている周波数より大きい場合や小さい場合であっても同様に生じる。例えば、同期信号SYNの周波数が予定されている周波数より大きい場合であっても、VCO30の発振周波数をより大きくすれば、同期信号SYNの周波数と比較出力信号PDPの周波数とを合致させることができる。このVCO30の発振周波数は、LPF20から与えられる直流電圧により定まる。よって、この直流電圧がより小さくなるよう、比較出力信号PDPの電位の平均値をより小さくすれば上記周波数を合致させることができる。この平均値は、比較出力信号PDPにおけるHレベルの期間とLレベルの期間との割合により定まる。ここで例えば、Hレベルの期間がLレベルの期間の3分の1である場合にちょうど比較出力信号PDPの電位の平均値が上記周波数を合致させるための適切な値となるものとする。この状態は、図4に示される比較出力信号PDPのLレベルからHレベルへの立ち上がり時刻が、時刻t2と時刻t3との中間の時点となるときに実現する。よって、この状態のときに同期信号SYNの周波数と比較出力信号PDPの周波数とが合致し、これらの信号の位相関係も合致するので、完全ロック状態となる。
【0029】
このように、位相比較信号BLKと同期信号SYNとの位相が同期すべきロック状態であるか否かを判定するため、(不完全なまたは完全な)ロック状態でない場合にはリセット信号RSTを出力するような論理回路は、例えば図5に示すような構成が考えられる。。
【0030】
図5は、このようなロック確認回路50の回路構成例を示す図である。この図5に示されるように、このロック確認回路50は、ANDゲート51と、NANDゲート52と、2つのD型フリップフロップ(以下「D−FF」と略称する)53,54,55とを備えた順序回路である。また図6は、このロック確認回路50の各信号の波形図である。これら図5および図6を参照して、以下、ロック確認回路50の動作を説明する。
【0031】
図5に示されるように、D−FF54のクロック入力端子CLKには位相比較信号BLKが入力され、D端子には同期信号SYNが入力される。したがって、図6に示されるように、位相比較信号BLKの立ち上がり時に同期信号SYNがLレベルであるとき、D−FF54におけるQ端子の否定信号はHレベルとなる。
【0032】
したがって、ANDゲート51からの出力信号であるD−FF53のD端子へ入力される信号は、図6に示されるように、同期信号SYNがLレベルからHレベルに立ち上がる時刻taの時点で、LレベルからHレベルに立ち上がる。
【0033】
ここで、このD−FF53は、クロック信号CKが立ち上がる毎にD端子の入力信号が変化していればQ端子の信号を変化させる。よって、そのQ端子から出力される信号は、図6に示されるように時刻taの時点では変化せず、その直後にクロック信号CKが立ち上がる時点でLレベルからHレベルに立ち上がる。この図6では、時刻taにおいてクロック信号CKが立ち下がっているので、結果的にD−FF53は、D端子の入力信号を0.5クロック分遅延させた信号をQ端子から出力する。
【0034】
次に図5に示されるように、上記D−FF53のQ端子から出力される信号は、D−FF55のD端子に入力されるので、そのQ端子の否定信号は、図6に示されるように、その直後にクロック信号CKが立ち上がる時点である時刻tbでHレベルからLレベルに立ち下がる。したがって、結果的にD−FF55は、そのD端子の入力信号を1クロック分遅延させた信号の否定信号をQ端子の否定信号として出力する。
【0035】
したがって、図5に示されるようにD−FF55のQ端子の否定信号と上記ANDゲート51から出力信号とを受け取るNANDゲート52は、同期信号SYNの立ち上がり時点である時刻taから上記否定信号の立ち下がり時点である時刻tbまで、結果的に1.5クロック分の期間だけLレベルとなるリセット信号RSTを出力する。このようにD−FF55を設けることにより、リセット信号RSTのアクティブ期間であるLレベル期間を1クロック分以上の長さにすることができ、さらに2クロック分を超える長さにならないようにすることができる。
【0036】
なお、D−FF53のクロック入力端子CLKには、クロック信号CKではなく、同期信号SYNを所定期間(ただしそのHレベル期間より短い期間)だけ遅延させた信号を入力する構成であってもよい。そうすれば、リセット信号RSTの立ち下がり時点を同期信号SYNのHレベル期間内で適宜の位置に設定することができる。またその場合にはD−FF55を省略することができる。
【0037】
このように、位相比較信号BLKの立ち上がり時に同期信号SYNがLレベルであるときには、ロック確認回路50からは(同期信号SYNの立ち上がり時点で)リセット信号RSTが出力される。
【0038】
このリセット信号RSTを受け取ると、カウンタ40は、その計数値(カウント値)が所定値Nに達していない場合であっても強制的にゼロに戻され(リセットされ)、その直後の最初のクロック信号CKの立ち上がりに合わせて出力信号である位相比較信号BLKを立ち上げる。したがって、カウンタ40がリセット信号RSTを受け取った後の位相比較信号BLKの立ち上がり時点は、常に同期信号SYNがHレベルである期間内となる。したがって、必ず不完全ロック状態(具体的には比較出力信号PDPのHレベル期間がLレベル期間より長い状態)となるので、ロック状態でない場合よりもはるかに短い時間で前述したように完全ロック状態へ移行することができる。
【0039】
<1.3 第1の実施形態の効果>
以上のように、本実施形態におけるPLL回路100は、例えば与えられる映像信号が変更される場合など、映像信号に含まれる同期信号SYNの位相が大きく変化する場合にも、ロック確認回路50からリセット信号RSTをカウンタ40に出力することにより強制的に(不完全な)ロック状態にすることができる。よって、非常に短い時間で位相を同期させることができる。
【0040】
<2 . 第2の実施形態>
<2.1 PLL回路の全体的な構成および動作>
図7は、本発明の第2の実施形態に係るPLL回路のブロック図である。図2に示されるように、本PLL回路200は、第1の実施形態におけるPLL回路100に対してさらに位相比較信号BLKを遅延させた遅延位相比較信号BLK2を生成する遅延回路60をさらに備える点を除いて、第1の実施形態と同様の構成要素を備えている。したがって、同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付してその説明を省略し、以下では遅延回路60の動作について詳述する。なお、本PLL回路200に備えられるカウンタ40の計数値(カウント値)は、本PLL回路200から出力され、典型的には表示装置における表示タイミングを合わせるために使用される。詳しくは後述する。
【0041】
<2.2 遅延回路の動作>
遅延回路60は、カウンタ40から出力される位相比較信号BLKを受け取り、これに対して予め定められた時間だけ遅延させた遅延位相比較信号BLK2を生成し、位相比較器10およびロック確認回路50に与える。以下、このように位相比較信号BLKが遅延される場合、どのようにロック状態となるかについて、図8から図10までを参照して説明する。
【0042】
図8は、ロックが完全に外れた状態にあるときの各信号の波形図である。なお、図8に示される点線は、図4に示される完全ロック状態にあったときの同期信号SYNおよび比較出力信号PDPを示している。したがって、図8に示される同期信号SYNは、例えば与えられる映像信号が変更されたため、図4に示される時点とは異なる時点で立ち上がっている。また、遅延位相比較信号BLK2は、位相比較信号BLKに対して同期信号SYNのHレベル期間の半分の時間だけ遅延されている。この遅延時間は、同期信号SYNのHレベル期間が予め定められていることから、この期間に基づき定められている。
【0043】
したがって、図8に示される状態では、ロック確認回路50に与えられる遅延位相比較信号BLK2の立ち上がり時点は、同期信号SYNのLレベル期間であるので、前述したようにリセット信号RSTが出力される。したがって、図8に示されるロックが外れた状態は直ちに前述したような不完全ロック状態へ移行する。
【0044】
図9は、この不完全ロック状態にあるときの各信号の波形図である。なお、図9に示される点線は、図8に示されるロックが外れた状態にあったときの遅延位相比較信号BLK2および位相比較信号BLKを示している。この図9に示されるように、ロック確認回路50に与えられる遅延位相比較信号BLK2の立ち上がり時点は、同期信号SYNの立ち上がり時点の直後となっている。また、位相比較器10は、与えられる遅延位相比較信号BLK2に基づき、図3に示される真理値表に従って、Hレベル期間がLレベル期間より相当長い状態の比較出力信号PDPを出力する。その後、前述したようにこの不完全ロック状態は完全ロック状態へ移行する。
【0045】
図10は、完全ロック状態にあるときの各信号の波形図である。なお、図10に示される点線は、図9に示される不完全ロック状態にあったときの遅延位相比較信号BLK2および位相比較信号BLKを示している。この図10に示されるように、遅延位相比較信号BLK2の立ち上がり位置が同期信号SYNのHレベル期間の半分(中央)の位置に来ることから、比較出力信号PDPのHレベル期間とLレベル期間との長さが同一となって完全ロック状態となっている。
【0046】
ここで、位相比較信号BLKの立ち上がり位置(アクティブになる時点)と、同期信号SYNの立ち上がり位置(アクティブになる時点)とは同一時点となっている。これは、遅延位相比較信号BLK2が位相比較信号BLKに対して同期信号SYNのHレベル期間の半分の時間だけ遅延されていることからの当然の結果である。したがって、完全ロック状態の時にカウンタ40の計数値(カウント値)がゼロの時点は、同期信号SYNの立ち上がり時点に合致することになる。このように構成すれば、或る時点におけるカウンタ40の計数値(カウント値)を取得することにより、当該時点が同期信号SYNの立ち上がり時点から何クロック分経過した時点であるか容易に判断することが可能となる。
【0047】
このことは、本PLL回路200が表示装置(例えば液晶テレビジョンなど)に内蔵される場合に特に有用である。すなわち、表示装置における表示タイミングを同期信号SYNに同期させる場合、カウンタ40の計数値(カウント値)を取得することにより、同期信号SYNに対して任意のタイミングで表示装置における表示タイミングを設定することが可能となる。もちろん、本PLL回路200は外部から同期信号を取得する表示装置以外の各種装置に使用可能であり、この場合にも当該装置における各種動作タイミングを同期信号SYNに対して任意に設定することが可能となる。
【0048】
なお、以上ではHレベルである期間をアクティブ期間とした信号を例に説明したが、Lレベルである期間をアクティブ期間とした信号(定常状態がHレベルである信号)を使用する場合であっても同様に考えることができる。
【0049】
<2.3 第2の実施形態の効果>
以上のように、本実施形態におけるPLL回路200は、第1の実施形態の場合と同様、同期信号SYNの位相が大きく変化する場合にも、非常に短い時間で位相を同期させることができるとともに、遅延回路60による位相比較信号BLKに対する遅延位相比較信号BLK2の遅延時間を適宜に設定することにより、位相比較信号BLKの立ち上がり時点を同期信号SYNの立ち上がり時点を含む任意の時点に設定することが可能となる。このことにより、例えば本PLL回路200が表示装置(に備えられる表示制御回路)に内蔵される場合、同期信号SYNに対する任意の時点に表示タイミングを合わせることを容易に実現することができる。特に、カウンタ40の計数値(カウント値)を利用する場合には、表示タイミングを非常に容易に合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るPLL回路の構成を示すブロック図である。
【図2】上記実施形態における位相比較器の構成を示す回路図である。
【図3】上記実施形態における位相比較器の動作を表す真理値表である。
【図4】上記実施形態において、完全ロック状態にあるときの各信号の波形図である。
【図5】上記実施形態におけるロック確認回路の回路構成例を示す図である。
【図6】上記実施形態におけるロック確認回路の各信号の波形図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るPLL回路のブロック図である。
【図8】上記実施形態において、ロックが完全に外れた状態にあるときの各信号の波形図である。
【図9】上記実施形態において、不完全ロック状態にあるときの各信号の波形図である。
【図10】上記実施形態において、完全ロック状態にあるときの各信号の波形図である。
【図11】従来のPLL回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
100,200 …PLL回路
10 …位相比較器
20 …ローパスフィルタ(LPF)
30 …電圧制御発振器(VCO)
40 …プログラマブルカウンタ(カウンタ)
50 …ロック確認回路
60 …遅延回路
SYN …同期信号
PDP …比較出力信号
BLK …位相比較信号
BLK2 …遅延位相比較信号
RST …リセット信号
CK …クロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられる入力信号に対して位相が同期する信号を出力するPLL(フェーズロックトループ)回路であって、
制御電圧によって発振周波数が変化する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力信号をクロックとしてカウントし、カウントすることにより得られるカウント数が所定数に達したときに前記カウント数をゼロに戻すとともに、レベルが変化する分周信号を出力するカウンタと、
前記分周信号と前記入力信号とを比較することにより得られる位相誤差を示す位相誤差信号を出力する位相比較器と、
前記位相誤差信号に応じた電圧を前記制御電圧として前記電圧制御発振器に与えるローパスフィルタと、
前記分周信号に基づき、位相が同期すべきロック状態でないと確認した場合には、直後の前記入力信号のレベルが変化する時点近傍で、前記カウンタへリセット信号を出力するロック確認回路とを備え、
前記カウンタは、前記リセット信号を受け取るときに前記カウント数をゼロに戻し、前記分周信号のレベルを変化させることを特徴とする、PLL回路。
【請求項2】
前記位相比較器は、前記入力信号がアクティブになる時点から前記入力信号のアクティブ期間内で所定時間だけ遅れて前記分周信号がアクティブになる時点において前記位相誤差がゼロになる位相誤差信号を出力し、
前記ロック確認回路は、
前記分周信号および前記入力信号に基づき、ロック状態でないことを確認する第1の論理回路と、
前記第1の論理回路によりロック状態でないと確認された直後の前記入力信号のアクティブ期間内でアクティブになるリセット信号を生成する第2の論理回路とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記分周信号を遅延させる遅延回路をさらに備え、
前記位相比較器は、前記遅延回路により遅延された分周信号と前記入力信号とを比較することにより前記位相誤差信号を出力し、
前記ロック確認回路は、前記遅延回路により遅延された分周信号に基づき、前記リセット信号を出力することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のPLL回路。
【請求項4】
前記遅延回路は、前記入力信号がアクティブになる時点と、前記カウンタから出力される分周信号がアクティブになる時点とが合致するよう、前記分周信号を遅延させることを特徴とする、請求項3に記載のPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−260866(P2009−260866A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109888(P2008−109888)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】