説明

PWM制御回路及びこれを備えた電動機

【課題】PWM信号の周期を規定するPWM周期信号の周波数を維持したまま、PWM周期信号の一周期内における分解能を変更することのできる技術を提供する。
【解決手段】PWM制御回路は、PWM信号の周期を規定するPWM周期信号SDCとPWM周期信号SDCの一周期内における分解能を定めるPWM分解能信号PCLとを生成するPWM制御信号生成部600と、PWM周期信号SDCとPWM分解能信号PCLとに基づいてPWM信号を生成するPWM部530と、を備える。PWM制御信号生成部600は、PWM周期信号SDCの周波数を維持したまま、PWM分解能信号PCLの周波数を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PWM制御に関する技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−364366号公報
【0004】
この従来技術では、所定の周波数の基本周波数信号からPWM基本波を形成し、さらに、このPWM基本波を分周することによりPWM周期信号を形成している。そしてPWM基本波は、PWM周期信号内の一周期内においてデューティを形成するための分解能を定めている。
【0005】
このような構成において、PWM制御の精度を変更するためにPWM基本波の周波数を変更すると、それに伴ってPWM周期信号の周波数も変化する。したがって、例えば、変化後のPWM周期信号の周波数と、PWM制御が行われている負荷構造物(例えば、モータ本体)の共振周波数とが一致してしまう場合には、振動や騒音が発生するといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、PWM信号の周期を規定するPWM周期信号の周波数を維持したまま、PWM周期信号の一周期内における分解能を変更することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0008】
[適用例1]
PWM制御回路であって、
PWM信号の周期を規定するPWM周期信号と、前記PWM周期信号の一周期内における分解能を定めるPWM分解能信号と、を生成するPWM制御信号生成部と、
前記PWM周期信号と、前記PWM分解能信号と、に基づいて前記PWM信号を生成するPWM部と、
を備え、
前記PWM制御信号生成部は、前記PWM周期信号の周波数を維持したまま、前記PWM分解能信号の周波数を変更する、回路。
【0009】
適用例1のPWM制御回路によれば、PWM周期信号の周波数を維持したまま、PWM周期信号の一周期内における分解能を変更することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の回路であって、
前記PWM制御信号生成部は、位相比較器と、ループフィルタと、電圧制御発振器と、分周器とを有するPLL回路を備え、
前記PWM周期信号は、前記PLL回路の分周器から出力され、前記位相比較器に入力される帰還信号であり、
前記PWM分解能信号は、前記PLL回路の電圧制御発振器から出力される信号である、回路。
【0011】
適用例2のPWM制御回路によれば、PLL回路における帰還信号と、電圧制御発振器から出力される信号を利用するので、PWM周期信号の周波数を維持したまま、PWM周期信号の一周期内における分解能を変更することができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1記載の回路であって、
前記PWM制御信号生成部は、位相比較器と、ループフィルタと、電圧制御発振器と、分周器とを有するPLL回路を備え、
前記PWM周期信号は、前記PLL回路の位相比較器に入力される基準信号であり、
前記PWM分解能信号は、前記PLL回路の電圧制御発振器から出力される信号である、回路。
【0013】
適用例3のPWM制御回路によれば、PLL回路に入力される基準信号と、電圧制御発振器から出力される信号を利用するので、PWM周期信号の周波数を維持したまま、PWM周期信号の一周期内における分解能を変更することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載の回路を備えた電動機。
【0015】
[適用例5]
適用例4記載の電動機と、
前記電動機によって駆動される被駆動部材と、
を備える装置。
【0016】
[適用例6]
適用例5記載の装置であって、
前記装置はプロジェクタである、装置。
【0017】
[適用例7]
適用例5記載の装置であって、
前記装置は携帯機器である、装置。
【0018】
[適用例8]
適用例5記載の装置であって、
前記装置は移動体である、装置。
【0019】
[適用例9]
適用例5記載の装置であって、
前記装置はロボットである、装置。
【0020】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、PWM制御方法および装置、PWM制御システム、それらの方法または装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A1.モータ構成と動作の概要:
A2.駆動回路ユニットの構成:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0022】
A.第1実施例:
A1.モータ構成と動作の概要:
図1(A)〜(D)は、本発明の第1実施例としてのブラシレスモータのモータ本体の構成を示す断面図である。このモータ本体は、ステータ部10と、上部ロータ部30Uと、下部ロータ部30Lとを有している。これらの部材10,30U,30Lは、それぞれ略円盤状の形状を有している。図1(B)は、下部ロータ部30Lの水平断面図である。下部ロータ部30Lは、それぞれ略扇状の形状を有する4つの永久磁石32Lを有している。上部ロータ部30Uも、下部ロータ部30Lと同じ構成を有しているので図示を省略する。上部ロータ部30Uと下部ロータ部30Lは、中心軸64に固定されており、同時に回転する。各磁石32U,32Lの磁化方向は、回転軸64と平行な方向である。
【0023】
図1(C)は、ステータ部10の水平断面図である。ステータ部10は、図1(A)に示すように、複数のA相コイル12Aと、複数のB相コイル12Bと、これらのコイル12A,12Bを支持する支持部材14とを有している。図1(C)は、このB相コイル12Bの側を示している。この例では、B相コイル12Bは4つ設けられており、それぞれ略扇状の形状に巻かれている。A相コイル12Aも同じである。ステータ部10には、さらに、駆動回路ユニット500が設置されている。図1(A)に示すように、ステータ部10は、ケーシング62に固定されている。
【0024】
図1(D)は、ステータ部10と2つのロータ部30U,30Lの関係を示す概念図である。ステータ部10の支持部材14上には、A相用の磁気センサ40AとB相用の磁気センサ40Bとが設けられている。磁気センサ40A,40Bは、ロータ部30U,30Lの位置(すなわちモータの位相)を検出するためのものである。なお、これらのセンサを以下では「A相センサ」及び「B相センサ」とも呼ぶ。A相センサ40Aは、2つのA相コイル12Aの中間の中央位置に配置されている。B相センサ40Bも、同様に、2つのB相コイル12Bの中間の中央位置に配置されている。この例では、A相センサ40Aが支持部材14の下側の面においてB相コイル12Bとともに配置されているが、この代わりに、支持部材14の上側の面に配置されていても良い。B相センサ40Bも同様である。なお、図1(C)からも理解できるように、この実施例ではA相センサ40AをB相コイル12Bの内部に配置するので、センサ40Aを配置する空間を確保しやすいという利点がある。
【0025】
図1(D)に示すように、磁石32U,32Lは、それぞれ一定の磁極ピッチPmで配置されており、隣接する磁石同士は逆方向に磁化されている。A相コイル12Aは、一定のピッチPcで配置されており、隣接するコイル同士が逆向きに励磁される。B相コイル12Bも同様である。本実施例では、磁極ピッチPmはコイルピッチPcに等しく、電気角でπに相当する。なお、電気角の2πは、駆動信号の位相が2πだけ変化したときに移動する機械的な角度又は距離に対応づけられる。本実施例では、駆動信号の位相が2πだけ変化すると、ロータ部30U,30Lが磁極ピッチPmの2倍だけ移動する。また、A相コイル12Aと、B相コイル12Bは、位相がπ/2だけずれた位置に配置されている。
【0026】
上部ロータ部30Uの磁石32Uと、下部ロータ部30Lの磁石32Lは、ステータ部10に向かう磁極が互いに異なる極性(S極とN極)となるように配置されている。換言すれば、上部ロータ部30Uの磁石32Uと、下部ロータ部30Lの磁石32Lは、互いに反対の極が向き合うように配置されている。この結果、図1(D)の右端に示すように、これらの磁石32U,32Lの間の磁場は、ほぼ直線状の磁力線で表されるものとなり、これらの磁石32U,32Lの間で閉じたものとなる。このような閉じた磁場は、前述した図26に示した開放された磁場に比べて強いことが理解できる。この結果、磁場の利用効率が高まり、モータ効率を向上させることが可能である。なお、磁石32U,32Lの外側の面には、強磁性体製の磁気ヨーク34U,34Lがそれぞれ設けられていることが好ましい。磁気ヨーク34U,34Lは、コイルにおける磁場をより強めることが可能である。但し、磁気ヨーク34U,34Lは省略してもよい。
【0027】
図2は、センサ出力とコイルの逆起電力波形との関係を示す説明図である。図2(A)は、図1(D)と同じものである。図2(B)は、A相コイル12Aに発生する逆起電力の波形の例を示しており、図2(C),(D)は、A相センサ40AとB相センサ40Bのセンサ出力SSA,SSBの波形の例を示している。これらのセンサ40A,40Bは、モータ運転時のコイルの逆起電力とほぼ相似形状のセンサ出力SSA,SSBを発生することができる。図2(B)に示すコイル12Aの逆起電力は、モータの回転数とともに上昇する傾向にあるが、波形形状(正弦波)はほぼ相似形状に保たれる。センサ40A,40Bとしては、例えばホール効果を利用したホールICを採用することができる。この例では、センサ出力SSAと逆起電力Ecは、いずれも正弦波か、正弦波に近い波形である。後述するように、このモータの駆動制御回路は、センサ出力SSA,SSBを利用して、逆起電力Ecとほぼ相似波形の電圧をそれぞれのコイル12A,12Bに印加する。
【0028】
ところで、電動モータは、機械的エネルギと電気的エネルギとを相互に変換するエネルギ変換装置として機能するものである。そして、コイルの逆起電力は、電動モータの機械的エネルギが電気的エネルギに変換されたものである。従って、コイルに印加する電気的エネルギを機械的エネルギに変換する場合(すなわちモータを駆動する場合)には、逆起電力と相似波形の電圧を印加することによって、最も効率良くモータを駆動することが可能である。なお、以下に説明するように、「逆起電力と相似波形の電圧」は、逆起電力と逆向きの電流を発生する電圧を意味している。
【0029】
図3(A)は、コイルの印加電圧と逆起電力との関係を示す模式図である。ここで、コイルは交流の逆起電力Ecと抵抗Rcとで模擬されている。また、この回路では、交流印加電圧Ei及びコイルと並列に電圧計Vが接続されている。なお、逆起電力Ecを「誘起電圧Ec」とも呼び、また、印加電圧Eiを「励磁電圧Ei」とも呼ぶ。コイルに交流電圧Eiを印加してモータを駆動すると、印加電圧Eiと逆の電流を流す方向に逆起電力Ecが発生する。モータが回転している状態でスイッチSWを開放すると、電圧計Vで逆起電力Ecを測定することができる。スイッチSWを開放した状態で測定される逆起電力Ecの極性は、スイッチSWを閉じた状態で測定される印加電圧Eiと同じ極性である。上述の説明において「逆起電力とほぼ相似波形の電圧を印加する」という文言は、このような電圧計Vで測定された逆起電力Ecと同じ極性を有するほぼ相似形状の波形を有する電圧を印加することを意味している。
【0030】
図3(B)は、本実施例で採用している駆動方法の概要を示している。ここでは、モータを、A相コイル12Aと、永久磁石32Uと、A相センサ40Aとで模擬している。永久磁石32Uを有するロータ部30が回転すると、センサ40Aに交流電圧Es(「センサ電圧Es」とも呼ぶ)が発生する。このセンサ電圧Esは、コイル12Aの誘起電圧Ecと相似な波形形状を有している。そこで、センサ電圧Esの模擬したPWM信号を生成してスイッチSWをオン/オフ制御することによって、誘起電圧Ecとほぼ相似波形の励磁電圧Eiをコイル12Aに印加することが可能となる。この時の励磁電流Iiは、Ii=(Ei−Ec)/Rcで与えられる。
【0031】
上述したように、モータを駆動する場合には、逆起電力と相似波形の電圧を印加することによって、最も効率良くモータを駆動することが可能である。なお、正弦波状の逆起電力波形の中位点近傍(電圧0の近傍)ではエネルギ変換効率が比較的低く、反対に、逆起電力波形のピーク近傍ではエネルギ変換効率が比較的高いことが理解できる。逆起電力と相似波形の電圧を印加してモータを駆動すると、エネルギ変換効率の高い期間において比較的高い電圧を印加することになるので、モータ効率が向上する。一方、例えば単純な矩形波でモータを駆動すると、逆起電力がほぼ0となる位置(中位点)の近傍においてもかなりの電圧が印加されるので、モータ効率が低下する。また、このようにエネルギ変換効率の低い期間において電圧を印加すると、渦電流により回転方向以外の方向の振動が生じ、これによって騒音が発生するという問題も生じる。
【0032】
上述の説明から理解できるように、逆起電力と相似波形の電圧を印加してモータを駆動すると、モータ効率を向上させることができ、また、振動や騒音を低減することができるという利点がある。
【0033】
図4(A)〜(D)は、本実施例のブラシレスモータの正転動作の様子を示す説明図である。図4(A)は、位相が0の直前における状態を示している。A相コイル12AとB相コイル12Bの位置に記載されている「N」,「S」の文字は、これらのコイル12A,12Bの励磁方向を示している。コイル12A,12Bが励磁されると、コイル12A,12Bと磁石32U,32Lとの間に吸引力と反発力が生じる。この結果、ロータ部30U,30Lは、正転方向(図の右方向)に回転する。なお、位相が0となるタイミングで、A相コイル12Aの励磁方向が反転する(図2参照)。図4(B)は、位相がπ/2の直前まで進んだ状態を示している。位相がπ/2となるタイミングでは、B相コイル12Bの励磁方向が反転する。図4(C)は、位相がπの直前まで進んだ状態を示している。位相がπとなるタイミングでは、A相コイル12Aの励磁方向が再び逆転する。図4(D)は、位相が3π/2の直前まで進んだ状態を示している。位相が3π/2となるタイミングでは、B相コイル12Bの励磁方向が再び逆転する。
【0034】
なお、図2(C)、(D)からも理解できるように、位相がπ/2の整数倍となるタイミングでは、センサ出力SSA,SSBがゼロとなるので、2相のコイル12A,12Bのうちの一方のみから駆動力を発生する。しかし、位相がπ/2の整数倍となるタイミングを除く他のすべての期間において、2相のコイル12A,12Bの両方が同時に駆動力を発生することが可能である。従って、2相のコイル12A,12Bの両方を用いて大きなトルクを発生することができる。
【0035】
ところで、図4(A)から理解できるように、A相センサ40Aは、A相コイル12Aの中心が永久磁石32Uの中心と対向する位置においてそのセンサ出力の極性が切り替わる位置に配置されている。同様に、B相センサ40Bは、B相コイル12Bの中心が永久磁石32Lの中心と対向する位置においてそのセンサ出力の極性が切り替わる位置に配置されている。このような位置にセンサ40A,40Bを配置すれば、センサ40A,40Bから、コイルの逆起電力とほぼ相似形状のセンサ出力SSA,SSB(図2)を発生することが可能である。
【0036】
図5(A)〜(D)は、本実施例のブラシレスモータの逆転動作の様子を示す説明図である。図5(A)〜(D)は、位相が0,π/2,π,3π/2の直前となる状態をそれぞれ示している。この逆転動作は、例えば、コイル12A,12Bの駆動電圧の極性(すなわち正負)を、正転動作の駆動電圧からそれぞれ反転させることによって実現することができる。
【0037】
A2.駆動回路ユニットの構成:
図6は、実施例における駆動回路ユニットの内部構成を示すブロック図である。この駆動回路ユニット500は、CPU110と、駆動制御部100と、回生制御部200と、ドライバ回路150と、整流回路250と、電源ユニット300とを備えている。2つの制御部100,200は、バス102を介してCPU110と接続されている。駆動制御部100とドライバ回路150は、電動モータに駆動力を発生させる場合の制御を行う回路である。また、回生制御部200と整流回路250は、電動モータから電力を回生する場合の制御を行う回路である。回生制御部200と整流回路250とをまとめて「回生回路」とも呼ぶ。また、駆動制御部100を「駆動信号生成回路」とも呼ぶ。電源ユニット300は、駆動回路ユニット500内の他の回路に各種の電源電圧を供給するための回路である。図6では、図示の便宜上、電源ユニット300から駆動制御部100及びドライバ回路150に向かう電源配線のみが描かれており、他の回路に向かう電源配線は省略されている。
【0038】
図7は、ドライバ回路150(図6)に含まれるA相ドライバ回路120AとB相ドライバ回路120Bの構成を示している。A相ドライバ回路120Aは、A相コイル12Aに、交流駆動信号DRVA1,DRVA2を供給するためのH型ブリッジ回路である。なお、駆動信号を示すブロックの端子部分に付されている白丸は、負論理であり信号が反転していることを示している。また、符号IA1,IA2が付された矢印は、A1駆動信号DRVA1とA2駆動信号DRVA2によって流れる電流方向をそれぞれ示している。B相ドライバ回路120Bの構成もA相ドライバ回路120Aの構成と同じである。なお、信号を反転させる負論理をなくし、H側のPチャネルMOS−FETを、L側と同様のNチャネルMOS−FETに変更すれば、周波数特性に優れた駆動を実現することもできる。
【0039】
図8は、駆動制御部100(図6)の内部構成と動作を示す説明図である。駆動制御部100は、PWM制御信号生成部600と、PWM部530と、正逆方向指示値レジスタ540と、乗算器550と、符号化部560と、AD変換部570と、電圧指令値レジスタ580と、励磁区間設定部590とを備えている。なお、駆動制御部100は、A相用の駆動信号とB相用の駆動信号の両方を生成する回路であり、PWM制御信号生成部600と、正逆方向指示値レジスタ540は、A相とB相とで共通で用いられている。A相用とB相用とでそれぞれに存在するその他の構成要素は、図8(A)では図示の便宜上、A相用の回路構成のみとして描かれているが、B相用についても、A相用と同じ構成要素が駆動制御部100内に設けられている。
【0040】
PWM制御信号生成部600は、所定の周波数を有するクロック信号SDCと、このクロック信号SDCのN倍の周波数を有するクロック信号PCLを発生する。このNの値は、予めCPU110によって設定される。なお、PWM制御信号生成部600の内部構成については、後述する。PWM部530は、クロック信号PCL,SDCと、乗算器550から供給される乗算値Maと、正逆方向指示値レジスタ540から供給される正逆方向指示値RIと、符号化部560から供給される正負符号信号Paと、励磁区間設定部590から供給される励磁区間信号Eaとに応じて、交流駆動信号DRVA1,DRVA2(図7)を生成する。この動作については後述する。
【0041】
正逆方向指示値レジスタ540内には、モータの回転方向を示す値RIがCPU110によって設定される。本実施例では、正逆方向指示値RIがLレベルのときにモータが正転し、Hレベルのときに逆転する。PWM部530に供給される他の信号Ma,Pa,Eaは以下のように決定される。
【0042】
磁気センサ40Aの出力SSAは、AD変換部570に供給される。このセンサ出力SSAのレンジは、例えばGND(接地電位)からVDD(電源電圧)までであり、その中位点(=VDD/2)が出力波形の中位点(正弦波の原点を通る点)である。AD変換部570は、このセンサ出力SSAをAD変換して、センサ出力のデジタル値を生成する。AD変換部570の出力のレンジは、例えばFFh〜0h(語尾の"h"は16進数であることを示す)であり、中央値80hがセンサ波形の中位点に相当する。
【0043】
符号化部560は、AD変換後のセンサ出力値のレンジを変換するとともに、センサ出力値の中位点の値を0に設定する。この結果、符号化部560で生成されるセンサ出力値Xaは、正側の所定の範囲(例えば+127〜0)と負側の所定の範囲(例えば0〜−127)の値を取る。但し、符号化部560から乗算器550に供給されるのは、センサ出力値Xaの絶対値であり、その正負符号は正負符号信号PaとしてPWM部530に供給される。
【0044】
電圧指令値レジスタ580は、CPU110によって設定された電圧指令値Yaを格納する。この電圧指令値Yaは、後述する励磁区間信号Eaとともに、モータの印加電圧を設定する値として機能するものであり、例えば0〜1.0の値を取る。仮に、非励磁区間を設けずに全区間を励磁区間とするように励磁区間信号Eaを設定した場合には、Ya=0は印加電圧をゼロとすることを意味し、Ya=1.0は印加電圧を最大値とすることを意味する。乗算器550は、符号化部560から出力されたセンサ出力値Xaと、電圧指令値Yaとを乗算して整数化し、その乗算値MaをPWM部530に供給する。
【0045】
図8(B)〜(E)は、乗算値Maが種々の値を取る場合におけるPWM部530の動作を示している。ここでは、全期間が励磁区間であり非励磁区間が無いものと仮定している。PWM部530は、クロック信号SDCの1周期の間に、デューティがMa/Nであるパルスを1つ発生させる回路である。すなわち、図8(B)〜(E)に示すように、乗算値Maが増加するに従って、駆動信号DRVA1,DRVA2のパルスのデューティが増加する。なお、第1の駆動信号DRVA1は、センサ出力SSAが正のときにのみパルスを発生する信号であり、第2の駆動信号DRVA2はセンサ出力SSAが負のときにのみパルスを発生する信号であるが、図8(B)〜(E)ではこれらを合わせて記載している。また、便宜上、第2の駆動信号DRVA2を負側のパルスとして描いている。
【0046】
図9は、PWM制御信号生成部600の内部構成を示すブロック図である。このPWM制御信号生成部600は、固定発振部602と、分周器604と、PLL回路606と、分周値R記憶部608と、分周値N記憶部610とを備えている。固定発振部602は、一定の周波数の固定クロック信号FCLKを発生する回路であり、例えば、水晶振動子やセラミック発振子で構成することができる。分周器604は、固定クロック信号FCLKを1/Rに分周し、分周クロック信号RCLKとして出力する。PLL回路606は、分周クロック信号RCLKに同期したクロック信号SDCと、このクロック信号SDCのN倍の周波数であるクロック信号PCLとを生成する。この「N倍」とは、後述するように、PLL回路606内に設けられた分周器の分周値Nを意味する。そして、この分周値Nは、分周値N記憶部610に記憶されているものであり、CPU110によって任意に書き換えることが可能である。同様に、分周値R記憶部608に記憶されている分周値RもCPU110によって任意に書き換えることが可能である。
【0047】
図10は、PLL回路606の内部構成を示すブロック図である。このPLL回路606は、位相比較器620と、ループフィルタ622と、電圧制御発振器624と、分周器626とを備えている。分周器604(図9)から出力された分周クロック信号RCLKは、位相比較器620に基準信号として供給される。分周器626によって分周されて出力されるクロック信号SDCは、位相比較器620に帰還信号として入力される。位相比較器620は、これら2つの信号RCLK,SDCの位相差を示す誤差信号CPSを生成する。この誤差信号CPSは、チャ−ジポンプ回路を内蔵するループフィルタ622に送られる。ループフィルタ622内のチャージポンプ回路は、誤差信号CPSのパルスレベルとパルス数とに応じた電圧レベルを有する電圧制御信号LPSを生成して出力する。
【0048】
電圧制御発振器624は、電圧制御信号LPSの電圧レベルに応じた発振周波数を有するクロック信号PCLを出力する。このクロック信号PCLは、分周値N記憶部610に記憶された分周値Nに基づいて、分周器626で1/Nに分周される。分周器626で生成されたクロック信号SDCは、前述したように、位相比較器620に送られて分周クロック信号RCLKと位相比較される。そして、2つの信号RCLK,SDCの位相差が0になるように、クロック信号PCLの周波数が収束していく。収束後のクロック信号PCLの周波数fPCLは、分周クロック信号RCLKの周波数fRCLKに分周値Nを乗じた値となる。同様に、収束後のクロック信号PCLの周波数fPCLは、クロック信号SDCの周波数fSDCに分周値Nを乗じた値でもある。
【0049】
固定クロック信号FCLKの周波数fFCLKと、分周クロック信号RCLKの周波数fRCLKと、クロック信号SDCの周波数fSDCと、クロック信号PCLの周波数fPCLとの関係は次の通りである。
fFCLK/R=fRCLK …(1)
fRCLK=fSDC …(2)
fSDC×N=fPCL …(3)
【0050】
以上のような構成として、分周値Nを書き換えれば、クロック信号SDCの周波数を維持したまま、クロック信号PCLの周波数のみを変更することが可能となる。クロック信号SDCの周波数を維持したまま、クロック信号PCLの周波数を大きくすれば、デューティをより細かく設定することが可能となる。また、モータ本体等の負荷構造体(以下では、単に「負荷構造体」とも呼ぶ。)の共振周波数と、クロック信号SDCの周波数とが一致しないように、あらかじめクロック信号SDCの周波数を設定しておけば、クロック信号PCLの周波数を変更した場合であっても、モータ本体等の負荷構造体から振動や騒音が発生するのを抑制することが可能となる。また、クロック信号SDCの周波数は、人間の可聴周波数帯域に含まれないようにすることが好ましい。
【0051】
さらに、分周値R記憶部608に(図9)記憶されている分周値Rの値を書き換えれば、分周クロック信号RCLKと、クロック信号SDCの周波数を変更することも可能である。クロック信号SDCの周波数を大きくすれば、より小さい時間幅の周期に刻んでPWM制御をすることができ、高い精度で制御をすること(例えば、姿勢制御等)も可能となる。この場合であっても、クロック信号SDCの周波数fSDCとクロック信号PCLの周波数fPCLとの関係は、上記(3)式の関係のまま維持される。なお、既に述べたように、クロック信号SDCの周波数は、負荷構造体の共振周波数とは一致しないように変更することが好ましい。
【0052】
図11は、各種信号の動作を示すタイミングチャートである。この図11には、固定クロック信号FCLKと、分周クロック信号RCLKと、クロック信号SDCと、クロック信号PCLとが描かれている。図11(A)は、分周値N=7の場合を示している。この場合、クロック信号SDCの一周期の間に、クロック信号PCLのパルスは7個発生することが理解できる。同様に、分周値N=14の場合は、クロック信号SDCの一周期の間に、クロック信号PCLのパルスは14個発生することが理解できる(図11(B))。
【0053】
図12(A)〜(C)は、センサ出力の波形とPWM部530で生成される駆動信号の波形の対応関係を示す説明図である。図中、「Hiz」は電磁コイルを未励磁状態としたハイインピーダンス状態を意味している。図8で説明したように、駆動信号DRVA1,DRVA2はセンサ出力SSAのアナログ波形をそのまま利用したPWM制御によって生成される。従って、これらの駆動信号DRVA1,DRVA2を用いて、各コイルに、センサ出力SSAの変化と対応するレベル変化を示す実効電圧を供給することが可能である。
【0054】
PWM部530は、さらに、励磁区間設定部590から供給される励磁区間信号Eaで示される励磁区間のみに駆動信号を出力し、励磁区間以外の区間(非励磁区間)では駆動信号を出力しないように構成されている。図12(C)は、励磁区間信号Eaによって励磁区間EPと非励磁区間NEPを設定した場合の駆動信号波形を示している。励磁区間EPでは図12(B)の駆動信号パルスがそのまま発生し、非励磁区間NEPでは駆動信号パルスが発生しない。このように、励磁区間EPと非励磁区間NEPを設定するようにすれば、逆起電力波形の中位点近傍(すなわち、センサ出力の中位点近傍)においてコイルに電圧を印加しないので、モータの効率をさらに向上させることが可能である。なお、励磁区間EPは、逆起電力波形のピークを中心とする対称な区間に設定されることが好ましく、非励磁区間NEPは、逆起電力波形の中位点(中心点)を中心とする対称な区間に設定されることが好ましい。
【0055】
なお、前述したように、電圧指令値Yaを1未満の値に設定すれば、乗算値Maが電圧指令値Yaに比例して小さくなる。従って、電圧指令値Yaによっても、実効的な印加電圧を調整することが可能である。
【0056】
上述の説明から理解できるように、本実施例のモータでは、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaとの両方を利用して印加電圧を調整することが可能である。望ましい印加電圧と、電圧指令値Ya及び励磁区間信号Eaとの関係は、予め駆動回路ユニット500(図6)内のメモリにテーブルとして格納されていることが望ましい。こうすれば、駆動回路ユニット500が、外部から望ましい印加電圧の目標値を受信したときに、CPU110がその目標値に応じて、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaとを駆動制御部100に設定することが可能である。なお、印加電圧の調整には、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaの両方を利用する必要はなく、いずれか一方のみを利用するようにしてもよい。
【0057】
図13は、PWM部530(図8)の内部構成の一例を示すブロック図である。PWM部530は、カウンタ531と、EXOR回路533と、駆動波形形成部535とを備えている。これらは以下のように動作する。
【0058】
図14は、モータ正転時のPWM部530の動作を示すタイミングチャートである。この図には、2つのクロック信号PCL,SDCと、正逆方向指示値RIと、励磁区間信号Eaと、乗算値Maと、正負符号信号Paと、カウンタ531内のカウント値CM1と、カウンタ531の出力S1と、EXOR回路533の出力S2と、駆動波形形成部535の出力信号DRVA1,DRVA2とが示されている。カウンタ531は、クロック信号SDCの1期間毎に、クロック信号PCLに同期してカウント値CM1を0までダウンカウントする動作を繰り返す。カウント値CM1の初期値は乗算値Maに設定される。なお、図14では、図示の便宜上、乗算値Maとして負の値も描かれているが、カウンタ531で使用されるのはその絶対値|Ma|である。カウンタ531の出力S1は、カウント値CM1が0で無い場合にはHレベルに設定され、カウント値CM1が0になるとLレベルに立ち下がる。
【0059】
EXOR回路533は、正負符号信号Paと正逆方向指示値RIとの排他的論理和を示す信号S2を出力する。モータが正転する場合には、正逆方向指示値RIがLレベルである。従って、EXOR回路533の出力S2は、正負符号信号Paと同じ信号となる。駆動波形形成部535は、カウンタ531の出力S1と、EXOR回路533の出力S2から、駆動信号DRVA1,DRVA2を生成する。すなわち、カウンタ531の出力S1のうち、EXOR回路533の出力S2がLレベルの期間の信号を第1の駆動信号DRVA1として出力し、出力S2がHレベルの期間の信号を第2の駆動信号DRVA2として出力する。なお、図14の右端部付近では、励磁区間信号EaがLレベルに立ち下がり、これによって非励磁区間NEPが設定されている。従って、この非励磁区間NEPでは、いずれの駆動信号DRVA1,DRVA2も出力されず、ハイインピーダンス状態に維持される。
【0060】
図15は、モータ逆転時のPWM部530の動作を示すタイミングチャートである。モータ逆転時には、正逆方向指示値RIがHレベルに設定される。この結果、2つの駆動信号DRVA1,DRVA2が図14から入れ替わっており、この結果、モータが逆転することが理解できる。
【0061】
図16は、励磁区間設定部590の内部構成と動作を示す説明図である。励磁区間設定部590は、電子可変抵抗器592と、電圧比較器594,596と、OR回路598とを有している。電子可変抵抗器592の抵抗値Rvは、CPU110によって設定される。電子可変抵抗器592の両端の電圧V1,V2は、電圧比較器594,596の一方の入力端子に与えられている。電圧比較器594,596の他方の入力端子には、センサ出力SSAが供給されている。電圧比較器594,596の出力信号Sp,Snは、OR回路598に入力されている。OR回路598の出力は、励磁区間と非励磁区間とを区別するための励磁区間信号Eaである。
【0062】
図16(B)は、励磁区間設定部590の動作を示している。電子可変抵抗器592の両端電圧V1,V2は、抵抗値Rvを調整することによって変更される。具体的には、両端電圧V1,V2は、電圧レンジの中央値(=VDD/2)からの差分が等しい値に設定される。センサ出力SSAが第1の電圧V1よりも高い場合には第1の電圧比較器594の出力SpがHレベルとなり、一方、センサ出力SSAが第2の電圧V2よりも低い場合には第2の電圧比較器596の出力SnがHレベルとなる。励磁区間信号Eaは、これらの出力信号Sp,Snの論理和を取った信号である。従って、図16(B)の下部に示すように、励磁区間信号Eaは、励磁区間EPと非励磁区間NEPとを示す信号として使用することができる。励磁区間EPと非励磁区間NEPの設定は、CPU110が可変抵抗値Rvを調整することによって行なわれる。
【0063】
図17は、上述した本実施例のモータを矩形波で駆動した場合と、正弦波(説明のため、逆起電力波形を正弦波とも呼ぶ)で駆動した場合の各種の信号波形を比較して示している。矩形波駆動の場合には、矩形波の駆動電圧がコイルに与えられる。駆動電流は、始動時には矩形波に近いが、回転速度が上昇すると減少する。これは、回転速度の上昇に応じて逆起電力が増加するからである(図2)。但し、矩形波駆動では、回転速度が上昇しても、駆動電圧が切り替わるタイミング(位相=nπ)の近傍における電流値はあまり減少せず、かなり大きな電流が流れる傾向にある。
【0064】
一方、正弦波で駆動する場合には、駆動電圧の実効値が正弦波形状となるように駆動電圧がPWM制御される。駆動電流は、始動時には正弦波に近いが、回転速度が上昇すると逆起電力の影響で駆動電流が減少する。正弦波駆動では、駆動電圧の極性が切り替わるタイミング(位相=nπ)の近傍において電流値が大幅に減少している。図2に即して説明したように、一般に、駆動電圧の極性が切り替わるタイミングの近傍では、モータのエネルギ変換効率が低い。正弦波駆動では、効率の低い期間における電流値が、矩形波駆動よりも小さくなるので、より高効率でモータを駆動することが可能である。
【0065】
図18は、ドライバ回路150(図6)に含まれるA相ドライバ回路120AとB相ドライバ回路120Bの他の構成例を示している。このドライバ回路120A,120Bは、図7に示したドライバ回路120A,120Bを構成するトランジスタのゲート電極の前に、増幅回路122を設けたものである。なお、トランジスタのタイプも図7とは異なっているが、各トランジスタとしては任意のタイプのものを使用することができる。本実施例のモータを、トルクと回転数に関して広い動作範囲で駆動させるためには、ドライバ回路120A,120Bの電源電圧VDDを可変に設定できることが好ましい。電源電圧VDDを変更した場合には、各トランジスタのゲート電圧に与える駆動信号DRVA1,DRVA2,DRVB1,DRVB2のレベルもこれに比例して変更される。こうすれば、広い範囲の電源電圧VDDを用いてモータを駆動することができる。増幅回路122は、駆動信号DRVA1,DRVA2,DRVB1,DRVB2のレベルを変更するための回路である。なお、図6に示した駆動回路ユニット500の電源ユニット300は、可変の電源電圧VDDをドライバ回路150に供給するものとすることが好ましい。
【0066】
図19は、本実施例のモータの無負荷時の回転数を示している。このグラフから理解できるように、本実施例のモータは無負荷時に極く低回転数まで極めて安定した回転数で回転する。この理由は、磁性体のコアが無いのでコギングが発生しないからである。
【0067】
図20は、図6に示した回生制御部200と整流回路250の内部構成を示す図である。回生制御部200は、バス102に接続されたA相充電切換部202と、B相充電切換部204と、電子可変抵抗器206とを有している。2つの充電切換部202,204の出力信号は、2つのAND回路211,212の入力端子に与えられている。
【0068】
A相充電切換部202は、A相コイル12Aからの回生電力を回収する場合には「1」レベルの信号を出力し、回収しない場合には「0」レベルの信号を出力する。B相充電切換部204も同様である。なお、これらの信号レベルの切換えは、CPU110によって行われる。また、A相コイル12Aからの回生の有無と、B相コイル12Bからの回生の有無とは、独立に設定することができる。従って、例えばA相コイル12Aを用いてモータに駆動力を発生させつつ、B相コイル12Bから電力を回生することも可能である。
【0069】
なお、図6に示した駆動制御部100も、同様に、A相コイル12Aを用いて駆動力を発生するか否かと、B相コイル12Bを用いて駆動力を発生するか否かとを、独立に設定できるように構成してもよい。このようにすれば、2相のコイル12A,12Bのうちの任意の一方で駆動力を発生させつつ、他方で電力を回生する運転モードでモータを運転することが可能である。
【0070】
電子可変抵抗器206の両端の電圧は、4つの電圧比較器221〜224の2つの入力端子の一方に与えられている。電圧比較器221〜224の他方の入力端子には、A相センサ信号SSAとB相センサ信号SSBが供給されている。4つの電圧比較器221〜224の出力信号TPA,BTA,TPB,BTBは、「マスク信号」または「許可信号」と呼ぶことができる。
【0071】
A相コイル用のマスク信号TPA,BTAはOR回路231に入力されており、B相用のマスク信号TPB,BTBは他のOR回路232に入力されている。これらのOR回路231,232の出力は、上述した2つのAND回路211,212の入力端子に与えられている。これらのAND回路211,212の出力信号MSKA,MSKBも、「マスク信号」または「許可信号」と呼ぶ。
【0072】
ところで、4つの電圧比較器221〜224とOR回路231,232の構成は、図16に示した励磁区間設定部590内の電圧比較器594,596とOR回路598を2つ並べたものと同じである。従って、A相コイル用のOR回路231の出力信号は、図16(B)に示した励磁区間信号Eaと同様な波形を有する。また、A相充電切換部202の出力信号が「1」レベルの場合には、A相コイル用のAND回路211から出力されるマスク信号MSKAはOR回路231の出力信号と同じものとなる。これらの動作はB相についても同様である。
【0073】
整流回路250は、A相コイル用の回路として、複数のダイオードを含む全波整流回路252と、2つのゲートトランジスタ261,262と、バッファ回路271と、インバータ回路272(NOT回路)とを有している。なお、B相用にも同じ回路が設けられている。ゲートトランジスタ261,262は、回生用の電源配線280に接続されている。また、複数のダイオードとしては、低Vf特性に優れたショットキーダイオードを用いることが好ましい。
【0074】
電力回生時にA相コイル12Aで発生した交流電力は、全波整流回路252で整流される。ゲートトランジスタ261,262のゲートには、A相コイル用のマスク信号MSKAとその反転信号が与えられており、これに応じてゲートトランジスタ261,262がオン/オフ制御される。従って、電圧比較器221,222から出力されたマスク信号TPA,BTAの少なくとも一方がHレベルの期間では回生電力が電源配線280に出力され、一方、マスク信号TPA,BTAの双方がLレベルの期間では電力の回生が禁止される。
【0075】
以上の説明から理解できるように、回生制御部200と整流回路250を用いて、回生電力を回収することが可能である。また、回生制御部200と整流回路250は、A相コイル用のマスク信号MSKA及びB相コイル用のマスク信号MSKBに応じて、A相コイル12AとB相コイル12Bからの回生電力を回収する期間を制限し、これによって回生電力の量を調整することが可能である。
【0076】
以上のように、第1実施例のPWM制御信号生成部では、分周値Nを書き換えることにより、クロック信号SDCの周波数を維持したまま、クロック信号PCLの周波数のみを変更することが可能となる。なお、PWM制御信号生成部600(図8)とPWM部530(図8)は、本発明における「PWM制御回路」に相当する。クロック信号SDCは、本発明における「PWM周期信号」に相当し、クロック信号PCLは、本発明における「PWM分解能信号」に相当する。カウンタ531の出力S1、または、駆動信号DRVA1,2は、本発明における「PWM信号」に相当する。
【0077】
B.第2実施例:
図21は、第2実施例におけるPWM制御信号生成部600bの構成を示す説明図である。図9に示した第1実施例におけるPWM制御信号生成部600との違いは、分周クロック信号RCLKを、そのままクロック信号SDCとして利用しているという点だけであり、他の構成は第1実施例と同じである。
【0078】
分周クロック信号RCLKとクロック信号SDCの周波数は同じであるため、分周クロック信号RCLKの立ち上がりエッジ間をPWM制御の一周期として捉えれば、分周クロック信号RCLKをそのままクロック信号SDCとして利用することができる。このようにしても、第1実施例と同様に、クロック信号SDCの周波数を維持したまま、クロック信号PCLの周波数のみを変更することが可能である。なお、分周クロック信号RCLKは、本発明における「基準信号」に相当する。
【0079】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0080】
C1.変形例1:
本発明は、各種の装置に適用可能である。例えば、本発明は、ファンモータ、時計(針駆動)、ドラム式洗濯機(単一回転)、ジェットコースタ、振動モータなどの種々の装置のモータに適用可能である。本発明をファンモータに適用した場合には、上述した種々の効果(低消費電力、低振動、低騒音、低回転ムラ、低発熱、高寿命)が特に顕著である。このようなファンモータは、例えば、デジタル表示装置や、車載機器、燃料電池式パソコン、燃料電池式デジタルカメラ、燃料電池式ビデオカメラ、燃料電池式携帯電話などの燃料電池使用機器、プロジェクタ等の各種装置のファンモータとして使用することができる。本発明のモータは、さらに、各種の家電機器や電子機器のモータとしても利用可能である。例えば、光記憶装置や、磁気記憶装置、ポリゴンミラー駆動装置等において、本発明によるモータをスピンドルモータとして使用することが可能である。また、本発明によるモータは、移動体やロボット用のモータとしても利用可能である。
【0081】
図22は、本発明の実施例によるモータを利用したプロジェクタを示す説明図である。このプロジェクタ800は、赤、緑、青の3色の色光を発光する3つの光源810R、810G、810Bと、これらの3色の色光をそれぞれ変調する3つの液晶ライトバルブ840R、840G、840Bと、変調された3色の色光を合成するクロスダイクロイックプリズム850と、合成された3色の色光をスクリーンSCに投写する投写レンズ系860と、プロジェクタ内部を冷却するための冷却ファン870と、プロジェクタ800の全体を制御する制御部880と、を備えている。冷却ファン870を駆動するモータとしては、上述した各種のブラシレスモータを利用することができる。
【0082】
図23(A)〜(C)は、本発明の実施例によるモータを利用した燃料電池式携帯電話を示す説明図である。図23(A)は携帯電話900の外観を示しており、図23(B)は、内部構成の例を示している。携帯電話900は、携帯電話900の動作を制御するMPU910と、ファン920と、燃料電池930とを備えている。燃料電池930は、MPU910やファン920に電源を供給する。ファン920は、燃料電池930への空気供給のために携帯電話900の外から内部へ送風するため、或いは、燃料電池930で生成される水分を携帯電話900の内部から外に排出するためのものである。なお、ファン920を図23(C)のようにMPU910の上に配置して、MPU910を冷却するようにしてもよい。ファン920を駆動するモータとしては、上述した各種のブラシレスモータを利用することができる。
【0083】
図24は、本発明の実施例によるモータ/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車1000は、前輪にモータ1010が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路1020と充電池1030とが設けられている。モータ1010は、充電池1030からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモータ1010で回生された電力が充電池1030に充電される。制御回路1020は、モータの駆動と回生とを制御する回路である。このモータ1010としては、上述した各種のブラシレスモータを利用することが可能である。
【0084】
図25は、本発明の実施例によるモータを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット1100は、第1と第2のアーム1110,1120と、モータ1130とを有している。このモータ1130は、被駆動部材としての第2のアーム1120を水平回転させる際に使用される。このモータ1130としては、上述した各種のブラシレスモータを利用することが可能である。
【0085】
C2.変形例2:
本発明におけるPWM制御回路は、上記実施例のブラシレスモータの他にも、PWM制御を行う種々の装置に搭載することが可能である。
【0086】
C3.変形例3:
上記実施例では、アナログのPLL回路606(図10)を用いて本発明を実現しているが、この代わりに、デジタルPLL回路や、複数のデジタルカウンタの組み合わせであって、デジタルPLL回路と同一の機能を有するものを用いても、本発明を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1実施例における電動モータのモータ本体の構成を示す断面図である。
【図2】磁気センサ出力とコイルの逆起電力波形との関係を示す説明図である。
【図3】コイルの印加電圧と逆起電力との関係を示す模式図である。
【図4】第1実施例のモータの正転動作の様子を示す説明図である。
【図5】第1実施例のモータの逆転動作の様子を示す説明図である。
【図6】モータの駆動回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】ドライバ回路の内部構成を示す図である。
【図8】駆動制御部の内部構成と動作を示す説明図である。
【図9】PWM制御信号生成部の内部構成を示すブロック図である。
【図10】PLL回路の内部構成を示すブロック図である。
【図11】各種信号の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】センサ出力波形と駆動信号波形の対応関係を示す説明図である。
【図13】PWM部の内部構成を示すブロック図である。
【図14】モータ正転時のPWM部の動作を示すタイミングチャートである。
【図15】モータ逆転時のPWM部の動作を示すタイミングチャートである。
【図16】励磁区間設定部の内部構成と動作を示す説明図である。
【図17】第1実施例のモータを矩形波で駆動した場合と、正弦波で駆動した場合の各種の信号波形を比較して示す説明図である。
【図18】ドライバ回路の他の構成を示す図である。
【図19】実施例のモータの無負荷時の回転数を示すグラフである。
【図20】回生制御部と整流回路の内部構成を示す図である。
【図21】第2実施例におけるPWM制御信号生成部の構成を示す説明図である。
【図22】本発明の実施例によるモータを利用したプロジェクタを示す説明図である。
【図23】本発明の実施例によるモータを利用した燃料電池式携帯電話を示す説明図である。
【図24】本発明の実施例によるモータ/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図25】本発明の実施例によるモータを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
10…ステータ部
12A,12B…電磁コイル
14…支持部材
30…ロータ部
30U…上部ロータ部
30L…下部ロータ部
31U…上部回転ケーシング部
31L…下部回転ケーシング部
32…永久磁石
32L…永久磁石
32U…永久磁石
34U,34L…磁気ヨーク
40A,40B…磁気センサ
50…固定ねじ部
64…軸部(中心軸)
64a…軸固定部
64e…軸端部固定部材
65U,65L…軸受け部
70…ホイール部
70c…密閉キャップ
71…車輪部
71b…歯車
71c…プーリー
71d…羽根
100…駆動制御部
102…バス
110…CPU
120A,120B…ドライバ回路
122…増幅回路
150…ドライバ回路
200…回生制御部
202,204…充電切換部
206…電子可変抵抗器
211,212…AND回路
221〜224…電圧比較器
231,232…OR回路
250…整流回路
252…全波整流回路
261,262…ゲートトランジスタ
271…バッファ回路
272…インバータ回路
278…駆動用電力線
279…制御線
280…電源配線
500…駆動回路ユニット
530…PWM部
531…カウンタ
533…EXOR回路
535…駆動波形形成部
540…レジスタ
550…乗算器
560…符号化部
570…AD変換部
580…指令値レジスタ
590…励磁区間設定部
592…電子可変抵抗器
594,596…電圧比較器
598…OR回路
600…PWM制御信号生成部
600b…PWM制御信号生成部
602…固定発振部
604…分周器
606…PLL回路
620…位相比較器
622…ループフィルタ
624…電圧制御発振器
626…分周器
800…プロジェクタ
810R,810G,810B…光源
840R,840G,840B…液晶ライトバルブ
850…クロスダイクロイックプリズム
860…投写レンズ系
870…冷却ファン
880…制御部
900…携帯電話
910…MPU
920…ファン
930…燃料電池
1000…自転車
1010…モータ
1020…制御回路
1030…充電池
1100…ロボット
1110…第2のアーム
1120…第2のアーム
1130…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM制御回路であって、
PWM信号の周期を規定するPWM周期信号と、前記PWM周期信号の一周期内における分解能を定めるPWM分解能信号と、を生成するPWM制御信号生成部と、
前記PWM周期信号と、前記PWM分解能信号と、に基づいて前記PWM信号を生成するPWM部と、
を備え、
前記PWM制御信号生成部は、前記PWM周期信号の周波数を維持したまま、前記PWM分解能信号の周波数を変更する、回路。
【請求項2】
請求項1記載の回路であって、
前記PWM制御信号生成部は、位相比較器と、ループフィルタと、電圧制御発振器と、分周器とを有するPLL回路を備え、
前記PWM周期信号は、前記PLL回路の分周器から出力され、前記位相比較器に入力される帰還信号であり、
前記PWM分解能信号は、前記PLL回路の電圧制御発振器から出力される信号である、回路。
【請求項3】
請求項1記載の回路であって、
前記PWM制御信号生成部は、位相比較器と、ループフィルタと、電圧制御発振器と、分周器とを有するPLL回路を備え、
前記PWM周期信号は、前記PLL回路の位相比較器に入力される基準信号であり、
前記PWM分解能信号は、前記PLL回路の電圧制御発振器から出力される信号である、回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の回路を備えた電動機。
【請求項5】
請求項4記載の電動機と、
前記電動機によって駆動される被駆動部材と、
を備える装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置であって、
前記装置はプロジェクタである、装置。
【請求項7】
請求項5記載の装置であって、
前記装置は携帯機器である、装置。
【請求項8】
請求項5記載の装置であって、
前記装置は移動体である、装置。
【請求項9】
請求項5記載の装置であって、
前記装置はロボットである、装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2009−118647(P2009−118647A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289222(P2007−289222)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】