説明

SMCの製造方法及びSMCの製造装置

【課題】経済的、資源節約の面で有効であり低コストでSMCの製造が可能なSMCの製造方法及びSMCの製造装置を提供する。
【解決手段】離型フィルム6上に樹脂組成物5,5’とガラス繊維7とを含むSMC材料を供給して得られた離型フィルム6とSMC材料からなるシート状の積層物9を搬送しつつ積層物9の上面側及び下面側から加圧してガラス繊維7間に樹脂組成物5,5’を含浸させる含浸工程と、含浸した積層物9を重ねる工程を含むSMCの製造方法であって、前記含浸工程における積層物9の上面側からの加圧は、加圧面がSMC材料に対して離型性を有する加圧手段4によってSMC材料を直接加圧して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SMCの製造方法及びSMCの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不飽和ポリエステル等の樹脂、充填材、低収縮剤、硬化剤、内部離型剤等を配合した樹脂組成物と、ガラス繊維とを含むシートモールディングコンパウンド(Sheet Molding Compound:SMC)の製造方法として、例えば、図3に示すようなSMCの製造装置20を用いる方法が知られている。図3では、SMC材料を構成する樹脂組成物25,25’及びガラス繊維27を上下2枚の離型フィルム26,26’で挟み込み、搬送ベルト21Aよりなる搬送装置21により搬送しつつ含浸機22によってガラス繊維27間に樹脂組成物25,25’を含浸させ、上下2枚の離型フィルム26,26’とその間に挟まれたSMC材料とからなる積層物29を回収手段32でロール状(またはつづら折れ状)に重ねて梱包している。梱包した積層物29は、以後、熟成され、図4に示すように、裁断機33によって所定の大きさにカットされ、次いで上下2枚の離型フィルム26,26’がSMC材料28から剥がされて成形される。なお、図3においては、2つの巻出ロール34,34’から供給される各離型フィルム26,26’上に、ペースト状の樹脂組成物25,25’を別個に塗布して搬送し、ガラスロービング30のガラス糸をロービングカッター31で一定の長さに切断したガラス繊維27を、樹脂組成物25が塗布された下側の離型フィルム26上に散布する形で供給し、その上に樹脂組成物25’が塗布された上側の離型フィルム26’を重ね、上下2枚の離型フィルム26,26’で樹脂組成物25,25’及びガラス繊維27を含むSMC材料を挟み込んだ状態で含浸機22まで搬送し、含浸機22の上側及び下側の押圧ロール23,24で押圧含浸を行い、含浸機22を通過後、含浸した積層物29が回収手段32により回収されている。
【0003】
この種のSMCの製造方法においては依然としてSMCの生産性向上が課題としてあり、これまでにも数多くの改良が試みられている。その一つとして、本出願人は、離型フィルム間に挟み込んだ状態のSMC材料を押圧するとともにSMC材料への押圧力をSMC材料の材質に応じて連続的に強弱変動させることが可能な予備押えロールを含浸機の前に配置することを提案している(例えば、特許文献1参照)。図3のSMCの製造方法では含浸機入口においてSMC材料を構成する樹脂組成物とガラス繊維との間にすべりが発生して含浸機の前にガラス繊維が残り詰まりトラブルが発生することがあったが、特許文献1の技術はこの詰まりトラブルを抑制してSMC材料の生産性を向上させている。
【0004】
SMCの生産性向上のための改良は、上記のようにSMC製造中の詰まりトラブルを抑制すること以外にも製造工程の簡略化やSMC製造に使用する材料費節約等の経済的、資源節約によってSMC製造の効率化を図ることが考えられ、今後もSMCの生産性向上のための改良をさらに発展させてSMCを低コストで製造することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−66956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、経済的、資源節約の面で有効であり低コストでSMCの製造が可能なSMCの製造方法及びSMCの製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のことを特徴としている。
【0008】
第1には、離型フィルム上に樹脂組成物とガラス繊維とを含むSMC材料を供給して得られた離型フィルムとSMC材料からなるシート状の積層物を搬送しつつ積層物の上面側及び下面側から加圧してガラス繊維間に樹脂組成物を含浸させる含浸工程と、含浸した積層物を重ねる工程を含むSMCの製造方法であって、前記含浸工程における積層物の上面側からの加圧は、加圧面がSMC材料に対して離型性を有する加圧手段によってSMC材料を直接加圧して行う。
【0009】
第2には、上記第1の発明において、含浸工程の後、含浸した積層物を重ねる工程の前に、積層物の下面側にSMC材料に対して離型性を有する離型剤を塗布する。
【0010】
第3には、搬送装置と含浸機を備え、搬送装置により離型フィルム上に樹脂組成物とガラス繊維とを含むSMC材料を供給して得られた離型フィルムとSMC材料からなるシート状の積層物を搬送しつつ含浸機により加圧含浸した後、含浸した積層物を重ねるSMCの製造装置であって、含浸機は、少なくとも積層物の上面側から積層物を直接加圧する加圧手段を備えており、積層物を加圧する加圧手段の加圧面がSMC材料に対して離型性を有する。
【0011】
第4には、上記第3の発明において、加圧手段の加圧面は、SMC材料に対して離型性を有するフィルムの表面であり、前記フィルムは、積層物の搬送方向に対して順次配置された積層物を加圧する複数の加圧ロールに架け渡されて加圧ロールの回転により回転走行する無端状のフィルムである。
【0012】
第5には、上記第3または第4の発明において、加圧手段の加圧面に付着したSMC材料を除去する除去手段を加圧手段に備えている。
【0013】
第6には、上記第3から第5のいずれかの発明において、含浸機により加圧含浸された積層物の下面側にSMC材料に対して離型性を有する離型剤を塗布する離型剤供給手段を含浸機の下流に備えている。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、SMCの上側の離型フィルムが不要となり、その離型フィルムの供給工程や剥離工程も省略することができるので、経済的、資源節約の面で有効でありSMCを低コストで製造することが可能となる。
【0015】
第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加えて、ロール状またはつづら折れ状等、重ねて回収したSMCを容易に取り出すことができ、作業性を向上させることが可能になる。
【0016】
第3および第4の発明によれば、SMCの上側の離型フィルムが不要となり、その離型フィルムの供給工程や剥離工程も省略することができるので、経済的、資源節約の面で有効でありSMCを低コストで製造することが可能となる。
【0017】
第5の発明によれば、上記第3または第4の発明の効果に加えて、無端状のフィルム上のSMC材料を確実に取り除くことができる。
【0018】
第6の発明によれば、上記第3から第5の発明の効果に加えて、ロール状またはつづら折れ状等、重ねて回収したSMCを容易に取り出すことができ、作業性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るSMCの製造装置の一実施形態を示した概要構成図である。
【図2】本発明に係るSMCの製造装置で回収したSMCの成形までの工程を説明するための模式図である。
【図3】従来のSMCの製造装置の一実施形態を示した概要構成図である。
【図4】従来のSMCの製造装置で回収したSMCの成形までの工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に図面に沿って実施形態を示し、本発明のSMCの製造方法及びSMCの製造装置についてさらに詳しく説明する。
【0021】
本発明のSMCの製造方法は、例えば、図1に示すSMCの製造装置1を用いて行う方法であり、離型フィルム6上に樹脂組成物5,5’とガラス繊維7とを含むSMC材料を供給して得られた離型フィルム6とSMC材料からなるシート状の積層物9を搬送しつつ積層物9の上面側及び下面側から加圧してガラス繊維7間に樹脂組成物5,5’を含浸させる含浸工程と、含浸した積層物9を重ねる工程を含む。本発明は、特に、前記含浸工程における積層物9のSMC材料を上面側から加圧手段4で直接加圧するものであり、その加圧手段4の加圧面がSMC材料に対して離型性を有することを特徴としている。
【0022】
図1のSMCの製造装置1は、巻出ロール10から連続的に供給されるポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる離型フィルム6を搬送ベルト2Aよりなる搬送装置2で搬送し、離型フィルム6上に、不飽和ポリエステル等の樹脂、充填材、低収縮剤、硬化剤、内部離型剤等を配合したペースト状の樹脂組成物5をディップパン11にて塗布し、その上にガラス繊維7を散布している。ガラス繊維7は、ガラスロービング12から送り出されたガラス糸をロービングカッター13で一定の大きさに裁断して得ている。ガラス繊維7を散布した後、さらにその上に、別に設けたディップパン11’にてペースト状の樹脂組成物5’を後述する加圧手段4を利用して供給し、下から順に離型フィルム6、樹脂組成物5、ガラス繊維7、樹脂組成物5’の層構造を有するシート状の積層物9を形成して含浸機3に搬送している。
【0023】
含浸機3は搬送装置2の下流に配設されており、シート状の積層物9の上面側及び下面側から各々加圧してSMC材料を構成するガラス繊維7間に、同じくSMC材料を構成する樹脂組成物5,5’を含浸させている。含浸機3は、無端状のフィルム43を有する上側の加圧ロール41と下側の加圧ロール42とで加圧手段4を構成し、上側の加圧ロール41と下側の加圧ロール42は積層物9の搬送方向に並列に5本ずつ順次配置されている。無端状のフィルム43は上側の加圧ロール41の入口側(上流側)と出口側(下流側)のロールとの間にシート状フィルムが架け渡されたものであり、上側の加圧ロール41の回転により回転走行可能とされており、上側の加圧ロール41の加圧によって無端状のフィルム43を積層物9のSMC材料に直接接触させて加圧している。このため、無端状のフィルム43を、例えば、フッ素系やシリコン系のシート状樹脂フィルム等、SMC材料に対して離型性を有する材料で構成することとし、SMC材料と加圧接触しても無端状のフィルム43上にSMC材料が残らないようにしている。このような無端状のフィルム43は積層物9のSMC材料との接触面(加圧面)が離型性を有していればよく、例えば、フィルムの表層をフッ素樹脂で複層化したものや、ゴムのような離型性の悪いシートの表面にフッ素系やシリコン系の離型剤を塗布したものであってもよい。
【0024】
搬送装置2で含浸機3に搬送された積層物9は、その上面側及び下面側からそれぞれ加圧されるが、上述したように、上面側からの加圧は含浸機3の上側の加圧ロール41によって無端状のフィルム43を介して加圧され、下面側からの加圧は含浸機3の下側の加圧ロール42によって加圧される。
【0025】
なお、図1のSMCの製造装置1では、無端状のフィルム43上にペースト状の樹脂組成物5’をディップパン11’で塗布し、離型フィルム6上の樹脂組成物5に散布したガラス繊維7のさらにその上に無端状のフィルム43の回転走行を利用して樹脂組成物5’を供給して積層物9を形成し、これを含浸機3で加圧している。
【0026】
含浸機3で積層物9を加圧含浸すると無端状のフィルム43表面に積層物9のSMC材料が付着する場合がある。そこで本実施形態では、上側の加圧ロール41の出口側のロールにSMC材料をこしとるブレード14Aを備えた除去手段14を配設し、除去手段14のブレード14Aを回転走行する無端状のフィルム43の表面にあててその回転走行を利用して無端状のフィルム43表面に付着したSMC材料を除去している。
【0027】
含浸機3を通過した積層物9は、巻き取りロール等の回収手段16によってロール状に回収されたり、またはつづら折れ状に重ねて回収される。重ねて回収した積層物9は、その積層物9の離型フィルム6の下面が積層物9のSMC材料の上面に接触して密着した状態になっており、この状態から成形のために積層物9を引き出そうとすると、引き出そうとする積層物9の離型フィルム6とSMC材料とが、残留する積層物9との密着によって互いに剥離してしまい積層物9を一体化した状態で引き出すことができない場合がある。そこで本実施形態では、積層物9の離型フィルム6の下面側(裏面側)にフッ素系やシリコン系の離型剤を塗布するスプレー等を備えた離型剤塗布手段15を含浸機3と回収手段16との間に配設している。積層物9の離型フィルム6の下面側に離型剤を塗布することにより、積層物9の離型フィルム6の下面が積層物9のSMC材料の上面に接触して互いに密着するように積層物を重ねて回収した場合であっても、積層物9のSMC材料の上面から積層物9の離型フィルム6の下面を容易に引き剥がすことができ、積層物9を離型フィルム6とSMC材料とを一体化した状態で容易に引き出すことが可能になる。なお、積層物9の離型フィルム6の下面側に離型剤を塗布する代わりに、離型フィルム6の下面側の表層をフッ素樹脂等、SMC材料に対して離型性に優れた材料で複層化した離型フィルム6を用いてもよい。
【0028】
回収した積層物9は熟成室で所定の粘度に増粘するまで熟成される。その後、図2に示すように、ロール状またはつづら折れ状に重ねた状態から積層物9を引き出し、裁断機17で所定の長さにカットし、離型フィルム6を剥がした後、SMC材料8を所定量計量し、120℃〜150℃の温度で金型で熱プレスして成形品を得る。
【0029】
以上のSMCの製造装置を用いたSMCの製造方法では、従来の方法では必要とされていたSMC材料の上側の離型フィルムが不要になり、それに伴って上側の離型フィルムの巻出ロールや上側の離型フィルムの剥離工程を省略することができるほか、従来のSMCの製造装置の含浸機を利用できるため、経済的、資源節約の面で有効でありSMCを低コストで製造することが可能となる。
【0030】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、本実施形態では上側の加圧ロールと下側の加圧ロールを各々5本ずつ配置しているが、その本数は特に制限されない。また上側の加圧ロール及び下側の加圧ロールを積層物の搬送方向に対してそれぞれ交互に配置するようにしてもよく、加圧ロールの配置も特に制限されない。また、上記の実施形態は、樹脂組成物5’を加圧手段4を利用して供給しているが、離型フィルム6側にのみ樹脂組成物5を供給し、加圧手段4側は樹脂組成物5’を供給しなくても良く、また、加圧手段4に代えてカーテンコーター等で樹脂組成物5’を供給するようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 SMCの製造装置
2 搬送装置
3 含浸機
4 加圧手段
41 上側の加圧ロール
42 下側の加圧ロール
43 無端状のフィルム
5,5’ 樹脂組成物
6 離型フィルム
7 ガラス繊維
8 SMC材料
9 積層物
10 巻出ロール
14 除去手段
14A ブレード
15 離型剤供給手段
16 回収手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型フィルム上に樹脂組成物とガラス繊維とを含むSMC材料を供給して得られた離型フィルムとSMC材料からなるシート状の積層物を搬送しつつ積層物の上面側及び下面側から加圧してガラス繊維間に樹脂組成物を含浸させる含浸工程と、含浸した積層物を重ねる工程を含むSMCの製造方法であって、
前記含浸工程における積層物の上面側からの加圧は、加圧面がSMC材料に対して離型性を有する加圧手段によってSMC材料を直接加圧して行うことを特徴とするSMCの製造方法。
【請求項2】
含浸工程の後、含浸した積層物を重ねる工程の前に、積層物の下面側にSMC材料に対して離型性を有する離型剤を塗布することを特徴とする請求項1に記載のSMCの製造方法。
【請求項3】
搬送装置と含浸機を備え、搬送装置により離型フィルム上に樹脂組成物とガラス繊維とを含むSMC材料を供給して得られた離型フィルムとSMC材料からなるシート状の積層物を搬送しつつ含浸機により加圧含浸した後、含浸した積層物を重ねるSMCの製造装置であって、
含浸機は、少なくとも積層物の上面側から積層物を直接加圧する加圧手段を備えており、積層物を加圧する加圧手段の加圧面がSMC材料に対して離型性を有することを特徴とするSMCの製造装置。
【請求項4】
加圧手段の加圧面は、SMC材料に対して離型性を有するフィルムの表面であり、前記フィルムは、積層物の搬送方向に対して順次配置された積層物を加圧する複数の加圧ロールに架け渡されて加圧ロールの回転により回転走行する無端状のフィルムであることを特徴とする請求項4に記載のSMCの製造装置。
【請求項5】
加圧手段の加圧面に付着したSMC材料を除去する除去手段を加圧手段に備えたことを特徴とする請求項3または4に記載のSMCの製造装置。
【請求項6】
含浸機により加圧含浸された積層物の下面側にSMC材料に対して離型性を有する離型剤を塗布する離型剤供給手段を含浸機の下流に備えたことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のSMCの製造装置。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−194828(P2010−194828A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41455(P2009−41455)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】