説明

X線異物検出方法及びX線異物検出装置

【課題】 X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別し得る高異物検出感度のX線異物検出方法及び装置を提供する。
【解決手段】 X線画像内の任意の注目画素に対してその近傍画素を含む単位処理範囲を設定し、複数の注目画素について各単位処理範囲ごとに注目画素及び近傍画素の画像濃度レベルを平均化する平滑化処理段階と、平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較してそれを超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理段階と、異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるようにその画像領域を縮小した後に縮小画像領域内の有効画素数を増加させるように縮小画像領域を拡大する収縮・膨張処理段階と、を含み、収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に有効画素が所定数以上集まった孤立領域が形成されるか否かで検出すべき異物の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物のX線画像を処理して被検査物への混入異物の有無を検出するX線異物検出方法及びX線異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品その他工業製品等の製造ラインにおいては、製品中への混入異物の有無を検出するためにX線検査方式の異物検出システムが多用されている。このような異物検出システムでは、被検査物(製品)を搬送しながらその搬送経路中で被検査物にX線を透過させ、被検査物各部のX線吸収量の相違(X線強度の2次元分布に対応)から被検査物への異物の混入の有無を判定するといった検査が実行される。また、被検査物の相対位置毎のX線透過量に基づいてX線画像の画像データを作成し、そのX線画像データを処理して混入異物の有無を判定するようになっている場合が多い。
【0003】
この種のX線異物検出方法及び装置としては、例えば次のようなものがある。
特許文献1(WO98/011456号明細書)には、X線検出器により検出された透過画像の画像データを入力画像として記憶部に記憶させ、この入力画像データの処理対象画素毎に該画素を含む複数画素分の局所領域につき濃度値(X線強度に対応する)の平均値を算出するとともに、その処理対象画素の濃度値と算出された局所領域の濃度平均値との差分を算出し、その差分値と予め定めた判定基準値とを比較することで被検査物中への混入異物の有無を判定するものが記載されており、このX線異物検出方法及び装置では、擬似異物信号の効果的な抑制をはかることができるようになっている。
【0004】
また、特許文献2(特開2001−307069号公報)には、入力画像データについて、その入力画像を略等分割した小領域毎に正方形カーネルを用いた差分形の画像フィルタ等によって異物らしさを評価する処理を実行し、該小領域毎に異物らしさを画素値とする収縮画像データを生成して、その収縮画像データを基に異物強調処理や閾値判定処理を行なうものが記載されており、このX線異物検出方法及び装置では、画像処理能力に依存することなく、X線検出画像における検出異物の空間分解能を高めたり測定範囲を広げたりすることができるようになっている。
【0005】
さらに、特許文献3(特開平11−289457号公報)には、画像データ中の孤立領域を強調するフィルタ処理に際して不要なノイズ成分まで強調されてしまうという問題(例えば移動平均フィルタでは被検査物のエッジが、メディアンフィルタではスパイク状のノイズが強調されるという問題)に対し、平滑化特性の異なる2種類の平滑化フィルタと両者の差分をとる減算回路とで構成された帯域通過フィルタを採用し、被検査物のエッジではゼロに近い出力信号を出力し、異物に対しては大きな値を出力するようにしたフィルタ回路が記載されており、このフィルタ回路では孤立領域のみを選択的に強調処理できるようになっている。
【0006】
【特許文献1】WO98/011456号明細書
【特許文献2】特開2001−307069号公報
【特許文献3】特開平11−289457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のX線異物検出方法及び装置にあっては、特に線状異物の検出を行ないたい場合に、低コントラストの異物と被検査物のエッジとの分別が容易でないために、検出感度を高めることが困難となることがあった。
【0008】
すなわち、低コントラストの異物が混入すると、通常よりも閾値を下げて異物候補の連続画素領域をラベリング処理することになるが、低コントラストの異物が細線状であると、そのような異物と被検査物のエッジとの分別が容易でないために、検出画像中に被検査物のエッジが残ってしまうという問題が生じていた。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するためになされたもので、X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別し得る高異物検出感度のX線異物検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のため、本発明のX線異物検出方法は、(1)被検査物を透過したX線の透過量に対応する所定のX線画像の画像データを原画像データとして処理し、前記被検査物への異物の混入を検出するX線異物検出方法であって、前記X線画像内の異なる複数の注目画素に対し各注目画素ごとの近傍画素を含む単位処理範囲を設定して、各注目画素について対応する単位処理範囲内の前記原画像データの濃度レベルを平均し該注目画素の画像データに割り当てる平滑化処理段階と、前記単位処理範囲を特定する画素の数を検出すべき異物に対応する前記画像データの濃度値が所定濃度レベル以上に維持される範囲内に制限して設定する平滑化レベル設定段階と、前記平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して該閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理段階と、前記抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるように該画像領域を縮小した後に該縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるように該縮小した画像領域を拡大する収縮・膨張処理段階と、を含み、前記収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に前記有効画素が所定数以上集まった孤立領域が形成されるか否かで検出すべき異物の有無を判定するようにしたことを特徴とする。
【0011】
この方法では、被検査物を透過したX線の透過量の2次元分布に対応する原画像データを平滑化処理することで細かいノイズ成分を除去し(平滑化処理段階)、平滑化処理後の画像データの濃度レベルを異物候補抽出用の閾値と比較して異物候補の画像領域を抽出し(抽出処理段階)、ここで抽出した異物候補の画像領域をその周縁部の有効画素を減じるよう収縮した後、その縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるよう該画像領域を拡大する(収縮・膨張処理段階)。これにより、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成される画像中において、前記有効画素が所定数以上集まった孤立領域が検出すべき異物を示すものとなり、被検査物のエッジ部分は異物候補の画像領域の収縮・膨張処理によって分別除去することが可能となる。
【0012】
本発明のX線異物検出方法においては、好ましくは、(2)前記収縮・膨張処理により前記異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、前記検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、前記被検査物のエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、前記抽出処理段階での閾値と前記収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定する。したがって、被検査物のエッジ部分は異物候補の画像領域の収縮・膨張処理によって容易にかつ確実に分別除去される。
【0013】
本発明のX線異物検出方法は、前記異物判定段階において、(3)前記収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて、所定数以上の連続する有効画素が集まった異物画像領域を特定する異物特定処理を実行するのが好ましく、これにより、異物の自動検出が可能となる。
【0014】
本発明のX線異物検出装置は、(4)被検査物を透過したX線の透過量データに対応する所定のX線画像の画像データを原画像データとして処理し、前記被検査物への混入異物を検出するX線異物検出装置であって、前記X線画像の画素ごとの画像データを画素位置と関連付けて記憶する画像データ記憶手段と、前記X線画像内の任意の注目画素及び該画像領域に隣接する近傍画素を単位処理範囲の画像領域として、各注目画素について対応する単位処理範囲内の前記原画像データの濃度レベルを平均し該注目画素の画像データに割り当てる平滑化処理手段と、前記平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して該閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理手段と、前記抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるように該画像領域を縮小した後に該縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるように該縮小した画像領域を拡大する収縮・膨張処理手段と、前記収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて所定数以上の複数の画素が集まった孤立画像領域を表示する表示手段と、を備えたものである。
【0015】
この装置では、被検査物を透過したX線の透過量の2次元分布に対応する原画像データが平滑化処理されて、その原画像中の細かいノイズ成分が除去され、平滑化処理後の画像データの濃度レベルを異物候補抽出用の閾値と比較することで異物候補の画像領域が抽出され、ここで抽出された異物候補の画像領域はその周縁部の有効画素を減じるよう収縮された後、その縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるよう更に膨張される。これにより、被検査物のエッジ部分は異物候補の画像領域の収縮・膨張処理によって分別除去され易くなり、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成され、表示されるX線画像中において、前記有効画素が所定数以上集まった孤立画像領域は被検査物エッジを排除して検出すべき異物を明確に示すものとなり、異物混入の目視判定が容易にできる。
【0016】
また、本発明のX線異物検出装置は、(5)前記収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中に前記有効画素が所定数以上集まった孤立領域が形成されるか否かで、検出すべき異物の有無を判定する異物判定手段を更に備えたものであるのがよい。これにより、異物の自動検出が可能となる。
【0017】
本発明のX線異物検出装置は、さらに好ましくは、(6)前記収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に所定数以上の連続する画素が集まった画像領域を特定するラベリング処理手段を設け、前記異物判定手段が、前記ラベリング処理手段により特定された孤立画像領域の形態上の特徴量を所定の異物判定用の閾値と比較して、検出すべき異物の有無を判定する。これにより、異物検出感度がより向上する。
【0018】
本発明のX線異物検出装置においては、また、(7)前記収縮・膨張処理により前記異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、前記検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、前記被検査物のエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、前記抽出処理段階での閾値と前記収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定する収縮膨張幅調整手段を設けるのが望ましい。これにより、被検査物や検査条件に応じて収縮・膨張処理の程度を好適なレベルに調節可能となる。
【0019】
本発明のX線異物検出装置においては、さらに、(8)前記平滑化処理手段の前記単位処理範囲を特定する画素の数を可変設定する平滑化設定手段を設けるのがよく、この構成により、平滑化処理の条件を被検査物の種類に応じて最適に設定できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、原画像データを平滑化処理した後の画像データからその濃度レベルを閾値と比較して異物候補の画像領域を抽出し、抽出した異物候補画像領域を収縮後に膨張するようにしているので、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中において、有効画素が所定数以上集まった孤立領域を特定することで異物を検出することができ、それに際して、被検査物のエッジ部分を収縮・膨張処理に伴って効果的に分別除去することができる。その結果、X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別し得る高異物検出感度のX線異物検出方法及び装置を提供することができる。
【0021】
すなわち、請求項1記載の発明のX線異物検出方法によれば、X線画像内の異なる複数の注目画素に対し各注目画素ごとの近傍画素を含む単位処理範囲を設定して、各注目画素について対応する単位処理範囲内の前記原画像データの濃度レベルを平均し該注目画素の画像データに割り当てる平滑化処理段階と、前記単位処理範囲を特定する画素の数を検出すべき異物に対応する前記画像データの濃度値が所定濃度レベル以上に維持される範囲内に制限して設定する平滑化レベル設定段階と、前記平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して該閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理段階と、前記抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるように該画像領域を縮小した後に該縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるように該縮小した画像領域を拡大する収縮・膨張処理段階とを含み、前記収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に前記有効画素が所定数以上集まった孤立領域が形成されるか否かで検出すべき異物の有無を判定する。これにより、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中において、有効画素が所定数以上集まった孤立領域を特定することで異物を検出することができ、それに際して、被検査物のエッジ部分を収縮・膨張処理に伴って効果的に分別除去することができ、X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別し得る高異物検出感度のX線異物検出方法を実現することができる。
【0022】
また、請求項2記載の発明のX線異物検出方法によれば、前記収縮・膨張処理により前記異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、前記検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、前記被検査物のエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、前記抽出処理段階での閾値と前記収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定する。これにより、被検査物のエッジ部分を異物候補の画像領域の収縮・膨張処理によって容易にかつ確実に分別除去することができる。
【0023】
また、請求項3記載の発明のX線異物検出方法によれば、前記異物判定段階において、前記収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて、所定数以上の連続する有効画素が集まった異物画像領域を特定する異物特定処理を実行する。これにより、異物の自動検出を行なうことができる。
【0024】
一方、請求項4記載の発明のX線異物検出装置によれば、X線画像の画素ごとの画像データを画素位置と関連付けて記憶する画像データ記憶手段と、前記X線画像内の任意の注目画素及び該画像領域に隣接する近傍画素を単位処理範囲の画像領域として、各注目画素について対応する単位処理範囲内の前記原画像データの濃度レベルを平均し該注目画素の画像データに割り当てる平滑化処理手段と、前記平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して該閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理手段と、前記抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるように該画像領域を縮小した後に該縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるように該縮小した画像領域を拡大する収縮・膨張処理手段と、前記収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて所定数以上の複数の画素が集まった孤立画像領域を表示する表示手段とを備える。これにより、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中において、有効画素が所定数以上集まった孤立領域を特定することで異物を検出することができ、それに際して、被検査物のエッジ部分を収縮・膨張処理に伴って効果的に分別除去することができ、X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別し得る高異物検出感度のX線異物検出装置を提供することができる。
【0025】
また、請求項5記載の発明のX線異物検出装置によれば、前記収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中に前記有効画素が所定数以上集まった孤立領域が形成されるか否かで、検出すべき異物の有無を判定する異物判定手段を更に備える。これにより、異物の自動検出ができる。
【0026】
さらに、請求項6記載の発明のX線異物検出装置によれば、前記収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に所定数以上の連続する画素が集まった画像領域を特定するラベリング処理手段を設け、前記異物判定手段が、前記ラベリング処理手段により特定された孤立画像領域の形態上の特徴量を所定の異物判定用の閾値と比較して、検出すべき異物の有無を判定する。これにより、異物検出感度をより向上させることができる。
【0027】
請求項7記載の発明のX線異物検出装置によれば、前記収縮・膨張処理により前記異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、前記検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、前記被検査物のエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、前記抽出処理段階での閾値と前記収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定する収縮膨張幅調整手段を設ける。これにより、被検査物や検査条件に応じて収縮・膨張処理の程度を好適なレベルに調節することができる。
【0028】
請求項8記載の発明のX線異物検出装置によれば、前記平滑化処理手段の前記単位処理範囲を特定する画素の数を可変設定する平滑化設定手段を設ける。これにより、平滑化処理の条件を被検査物の種類に応じて最適に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1から図4は本発明に係るX線異物検出装置の第1の実施の形態を示す図であり、図1はその概略構成図、図2はその表示部の概略正面図である。
【0031】
まず、その構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態のX線異物検査装置は、被検査物であるワークWを搬送するベルトコンべアからなる搬送路1と、搬送中のワークWに所定の検査空間内でX線を照射するX線源2と、検査空間内へのワークWの進入を検知する例えば投受光器からなる進入検知センサ3と、検査空間内で搬送方向と直交する方向(以下、搬送路幅員方向ともいう)に隣り合う複数の画素領域のそれぞれについてワークWを透過したX線を検出し各画素領域における所定時間毎の累積透過量のデータを検出情報として出力することができるX線検出部4と、X線検出部4からの検出データを取り込んで各画素領域の透過量データを画素位置(座標情報)と関連付けて読み出しできるよう各画素位置に対応するメモリ領域に記憶格納する画像入力ユニット5と、画像入力ユニット5に記憶された入力画像データ(原画像データ)を処理して異物判定用及び表示用のX線画像データを生成するデータ処理ユニット6と、データ処理ユニット6からの表示データを取り込んで画面表示する表示部7(表示手段)とを含んで構成されている。
【0033】
搬送路1は、例えば食品や医薬品その他の製品となる個体(定形のものでも柔軟な不定形のものでもよい)のワークWをその品種に対応する所定の一定搬送速度で搬送するとともに、その搬送途中でワークWを図示しない装置筐体内の前記所定の検査空間に通してX線源2とX線検出部4の間を通過させるようになっている。
【0034】
X線源2は、例えば陰極フィラメントからの熱電子をその陰極と陽極の間の高電圧により陽極ターゲットに衝突させてX線を発生させるX線管を有しており、発生したX線を下方のX線検出部4に向けて不図示のスリットにより搬送路1の幅員方向に広がる扇形のビームに整形して照射するようになっている。すなわち、X線源2は、X線検出部4と共に、いわゆるX線ファンビーム光学系を構成している。
【0035】
なお、搬送路1及びX線源2は、図示しない搬送及びX線照射制御ユニットによってそれぞれ所定のタイミングで動作するよう制御される。
【0036】
X線検出部4は例えば図示しないX線ラインセンサを含んでおり、このX線ラインセンサは例えば蛍光体であるシンチレータとフォトダイオード若しくは電荷結合素子とからなる検出素子を搬送路1の幅員方向にアレイ状に所定ピッチで配設したもので、所定解像度でのX線検出を行なうことができる。また、X線検出部4は、ワークWが搬送路1上に無いときベルト面のみでの各画素領域でのX線の透過量が等しい値になるよう各部検出感度が調整されている。すなわち、本実施形態で採用するようなX線ファンビーム光学系においては、例えばシンチレータ型CCDラインセンサからなるX線ラインセンサの焦点仰角(90°−θ)の範囲における各画素分の受光量Iは、各画素領域におけるX線照射強度に応じた値I(θ)={1/(1+tanθ)}・I(0°)となるが、ワークWの搬送前の搬送ベルト面でこの受光量I(θ)がフラットな受光量特性となるように受光感度補正が行なわれる。
【0037】
また、画像入力ユニット5は、X線検出部4の複数の検出素子からのX線検出信号をそれぞれA/D変換するとともに、それら検出素子の配設ピッチに対応する所定の単位搬送時間毎に、搬送路幅員方向の全n個(例えば640個)の画素領域について、その単位時間内の累積の透過X線量(以下、単に透過量という)のデータを、例えば0から1023までの階調を表す透過量レベルのデータとして書き込む動作を実行することができ、そのためのメモリであるデータ記憶部5a(画像データ記憶手段)と、図示しないA/D変換器やプログラムを有している。なお、画像濃度データは、各ワークWに対してライン走査がなされるときデータ記憶部5aに書き込まれた透過量データに対応して、ワークWが無くX線透過量の値が最大でワークWによるX線吸収量がゼロとなるときに最小濃度値となり、X線透過量の値が最小でワークWによるX線吸収量が最大となるときに最大濃度値となるように、この画像入力ユニット5で生成される。
【0038】
データ処理ユニット6は、具体的なハードウェア構成を図示していないが、例えばCPU、ROM、RAM及びI/Oインターフェースを有するマイクロコンピュータと、後述する複数の処理機能部の各機能を発揮させるための処理プログラムをROMと協働して読み出し可能に記憶した補助記憶装置と、タイマー回路等とを含んで構成されており、ROMに格納された制御プログラムに従ってCPUがRAM等との間でデータを授受しながら所定の演算処理を実行するとともに各機能処理部の処理プログラムを実行するようになっている。
【0039】
このデータ処理ユニット6は、複数の処理機能部として、平滑化処理部61、平滑化設定部62、異物候補抽出部63、異物候補抽出用の閾値設定部64、収縮・膨張処理部65、収縮・膨張の処理回数設定部66、異物検出部67及び特徴量閾値設定部68を含んでおり、X線検出部4からの検出情報を基に、後述する平滑化処理、収縮・膨張処理、閾値判定による異物候補領域の抽出処理、異物有無判定処理等をそれぞれ実行する。
【0040】
平滑化処理部61は、入力X線画像内の複数の注目画素に対し、各画素の近傍画素を含む単位処理範囲(例えば3×3画素の近傍領域内)を予め設定して、各注目画素に対応する単位処理範囲内の原画像データに基づき、その注目画素及び近傍画素の画像濃度レベルを平均化して当該注目画素の画像データに割り当てる処理、すなわち平滑化処理を実行する平滑化処理手段となっている。この平滑化処理部61は、具体的には、移動平均フィルタ等の線形フィルタの処理プログラムで構成され、原画像内で順次選択される注目画素についての処理値を決定する際にその近傍画素、例えば前後に処理する画素データの濃度値との平均の濃度値を、その注目画素の濃度データとする。
【0041】
平滑化設定部62は、平滑化処理部61での平滑化処理の単位処理範囲を、例えば3×3画素あるいはこれと異なる範囲に設定する平滑化設定手段となっており、操作キーその他の公知の入力デバイスを有している。
【0042】
異物候補抽出部63は、平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して、その閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理手段となっており、その閾値判定プログラムと、抽出した画像領域を有効画素とする二値化画像を作成する二値化プログラムと、作業メモリとを有している。
【0043】
閾値設定部64は、異物候補抽出部63で異物候補抽出用に使用される濃度レベルの閾値を任意の値に設定することができる設定器で構成されている。ここでの閾値は、少なくとも搬送路1のベルト面のみでのノイズレベルより高い値である。
【0044】
収縮・膨張処理部65は、異物候補抽出部63で抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるよう抽出画像領域を画像面内の所定方向に縮小(収縮)した後に、縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるようその画像領域を画像面内の所定方向に拡大(膨張)する収縮・膨張処理手段となっており、その収縮・膨張処理のプログラム及び作業メモリを有している。
【0045】
ここでの具体的な収縮や膨張の方法自体については公知であり詳述しないが、概ね、収縮(縮小)の処理では、2値化された画像中の任意の注目画素について、その近傍領域(注目画素からの4近傍距離又は8近傍距離が所定値以下となる画素群の領域、例えば注目画像を中心とする3×3画素の近傍領域内)に少なくとも1つ「0」があればその注目画素の値を0とするものである。また、膨張(拡大)の処理では、2値化された画像の注目画素について、その近傍領域内に少なくとも1つ「1」があればその注目画素の値を1とするものである。なお、収縮・膨張処理を行なう前記所定方向は少なくとも一方向であり、好ましくは4近傍又は8近傍の方向である。
【0046】
処理回数設定部66は、収縮・膨張処理部65で異物候補画像に対し実行される収縮・膨張処理の回数(例えば1回、2回若しくはそれ以上)を設定するようになっている。この処理回数設定部66は、閾値設定部64と共に、収縮・膨張処理部65での収縮・膨張処理中に異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅(例えば細糸状異物の太さに対応する幅)より小さく、かつ、ワークWのエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、異物候補抽出部63での閾値と収縮・膨張処理部65での収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定する収縮膨張幅調整手段を構成している。
【0047】
閾値設定部64および処理回数設定部66からなるこの収縮膨張幅調整手段は、具体的には、例えば図2にその第1実施例を示すように、表示部7(表示手段)の表示画面71上にX線画像と共に表示される調節操作部81のような加減操作ツールとして構成される。この場合、例えば高濃度(X線吸収量大)となる基準異物や基準となるワークWの画像を基に調節操作部81の指示部81aを左右への操作キー部81b,81cの何れかを押下操作することで移動させると、高濃度部分の太さが加減される。
【0048】
また、異物候補抽出部63での閾値と収縮・膨張処理部65での収縮・膨張処理の回数とは、基本的には異物候補抽出部63での閾値が下がると収縮・膨張処理部65での収縮・膨張処理の回数が増えるように設定されるが、予め好適な組合せを選定し、例えば異物候補抽出部63での閾値の変化の割合と収縮・膨張処理部65での収縮・膨張処理回数の変化の割合とのうち一方の影響が大きく出るように設定される。また、異物候補抽出部63での閾値変化の影響が大きい場合、収縮・膨張の回数は、収縮・膨張処理により線異物の太さがゼロにならない程度に、すなわち線幅を基準として処理回数設定部66で内部固定してもよい。
【0049】
閾値設定部64および処理回数設定部66からなる収縮膨張幅調整手段は、図2に例示するようなものに限らず、例えば図5〜図7にそれぞれ示す第2〜第4実施例のような態様とすることができる。
【0050】
図5に示す第2実施例では、表示画面71上にX線画像と共に表示される濃度しきい値調節操作部83のような加減操作ツールとして構成される。この場合、例えば左右への操作キー部83b,83cの何れかを押下操作することで調節操作部83のしきい値表示部83aの表示内容を変化させると、それに追従する形で高濃度部分の太さを加減操作できる。このときの収縮・膨張の回数は、収縮・膨張処理により線異物の太さがゼロにならず線異物が消えない程度の値(例えば5回)として、すなわち線幅を基準として処理回数設定部66の内部で固定されている。
【0051】
また、図6に示す第3実施例では、上述の濃度しきい値調節操作部83のような加減操作ツールはマニュアル調節用に付加されてはいるが、表示画面71上に表示される異物指定スイッチボタン86の操作とその押下後の表示画面71のX線画像ウィンドウ71a内に表示された異物の領域指定とに応じて、濃度しきい値が自動調節されるようになっている。例えば、異物指定スイッチボタン86が操作されたら、タッチパネル形の入力デバイスとして構成されたX線画像ウィンドウ71a内で異物像を指で触れる等して指定された異物指定位置の近傍の画素平均濃度を基準として、その基準値より多少低いしきい値(背景(ベルト面)の濃度値以上)を設定する。勿論、平均値に限らず、特定された異物指定位置の近傍領域中の最高濃度値と最低濃度値の中間値等を基準値としてもよい。また、X線画像全体の濃度ヒストグラムにおいて前記基準値から低濃度(X線吸収量小)側に向かって最初に谷となる濃度値を検出して、その濃度値をしきい値として設定してもよい。
【0052】
さらに、図7に示す第4実施例では、上述の濃度しきい値調節操作部83のような加減操作ツールはマニュアル調節用に付加されてはいるが、表示画面71上に表示される中間画像スイッチ87の操作により、表示画面71のX線画像ウィンドウ71a内に現在の濃度しきい値で2値化された画像が中間画像として表示されるようになっている。
【0053】
異物検出部67は、収縮・膨張処理部65で収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に画素値「1」の有効画素が所定数以上連続して集まった孤立領域が形成されるか否かで、検出すべき異物の有無を判定する異物判定手段となっており、収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に所定数以上の連続する画素が集まった孤立画像領域を特定するラベリング処理部67a(ラベリング処理手段)と、このラベリング処理部67aにより特定された孤立画像領域の形態上の特徴量を所定の異物判定用の閾値と比較して検出すべき異物の有無を判定する閾値判定処理部67bとを有している。
【0054】
ここにいう孤立画像領域の形態上の特徴量とは、収縮・膨張処理部65で収縮・膨張処理された処理済み画像中におけるブロブ領域(連続した複数の画素領域からなり他から独立した孤立画像領域)の形態的な特徴を示す量、例えば面積若しくは体積の値であり、この特徴量を検出すべき異物に対応する閾値を用いて閾値判定することで、異物の有無を判定することができる。
【0055】
特徴量の閾値設定部68は、その孤立画像領域の形態上の特徴量である面積(孤立領域内の画素数の和)又は体積(孤立領域内の画素の原画像濃度値の総和)の閾値を設定する特徴量閾値設定手段となっており、例えば図2に第1実施例として示すように、表示部7の表示画面71上にX線画像と共に表示されるラベリングパラメータ調節操作部82のような加減操作ツールとして構成される。この調節操作部82は、左右への操作キー部82b,82cの何れかを押下操作することで指示スライダ部82aを移動させるもので、これに応じて表示すべきブロブの持つ特徴量の最低レベルに相当する閾値が加減される。
【0056】
特徴量の閾値設定部68は、図2に示す第1実施例に限らず、例えば図5〜図7にそれぞれ示す第2〜第4実施例のような態様とすることができる。
【0057】
図5に示す第2実施例では、表示画面71上にX線画像と共に表示されるラベリングパラメータ調節操作部84のような加減操作ツールとして構成される。この場合、例えば左右への操作キー部84b,84cの何れかを押下操作することで調節操作部84のしきい値表示部84aの表示内容を変化させると、それに追従する形で高濃度部分の太さを加減操作できる。
【0058】
図6に示す第3実施例では、上述のラベリングパラメータ調節操作部84のような加減操作ツールはマニュアル調節用に付加されてはいるが、表示画面71上に表示される異物指定スイッチボタン86の操作とその押下後の表示画面71のX線画像ウィンドウ71a内に表示された異物の領域指定とに応じて、ラベリングパラメータが自動調節されるようになっている。例えば、異物指定スイッチボタン86が操作されたら、X線画像ウィンドウ71a内で異物像を指で触れる等して指定された異物指定位置を含む2値化画像上のブロブ(連続した画素のかたまり)の面積を基準に、例えばその1/2の面積の値をラベリングのためのしきい値として設定する。
【0059】
さらに、図7に示す第3実施例では、上述のラベリングパラメータ調節操作部84のような加減操作ツールがマニュアル調節用に付加されている。また、表示画面71上に表示される中間画像スイッチ88を操作すると、表示画面71のX線画像ウィンドウ71a内に、2値化された後更に収縮・膨張処理され、現在のラベリングパラメータ(特徴量のしきい値)でラベリング処理された画像が中間画像として表示されるようになっている。
【0060】
異物検出部67は、更に、各ワークWの全域分の透過量データに対応するX線画像であって、ワークWが無くX線の透過量の値が最大でワークWによるX線吸収量がゼロとなる部位で最小濃度値となり、X線の透過量の値が最小でワークWによるX線吸収量が最大となる部位で最大濃度となる各ワークWの(ディジタルの)X線画像を生成し、表示部7に出力するようになっている。
【0061】
次に、その動作と共に、本発明のX線異物検出方法の一実施形態について説明する。
【0062】
図3は本実施形態における画像処理の流れを画像の変化として模式的に示す説明図であり、図4はその処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
まず、原画像データを取得する際には、搬送路1によって各ワークWがその品種に対応する一定の搬送速度で搬送され、その途中でX線源2とX線検出部4の間を通過する。そして、X線源2から照射されてワークWを透過したX線がX線検出部4で検出される。また、進入検知センサ3でのワーク検知情報を基にしたライン走査に従って、ワークWの先頭側からX線検出部4で検出される単位時間当りのX線の透過量が順次、画像入力ユニット5のデータ記憶部5aに蓄積され、画像データが入力される。
【0064】
具体的には、例えば図示しないメニュー画面上で測定対象のワークWの品種を指定する入力がなされると、図4に示す制御プログラムが開始され、まず、最初に設定済みの各設定パラメータが品種パラメータファイル等から読み出され(ステップS1)、次いで、測定開始を指示する操作入力があると(ステップS2)、搬送路1によるワークWの搬送が開始される(ステップS3)。
【0065】
次いで、ワークWの検査空間への進入が進入検知センサ3で検知されると(ステップS4)、進入検知センサ3の検知状態の変化からワークWの長さに相当する搬送区間と、搬送方向前後に隣り合うワークWの間隔(無搬送区間)とがそれぞれ特定され(ステップS5)、X線検出部4の繰り返し走査を行なうサンプリング期間が決定される。次いで、進入検知後の所定のタイミングでX線検出部4からの検出信号の画像入力ユニット5への取り込みが開始され、ワークWの長さ分だけ単位搬送時間毎のライン走査が繰り返されるとともに、画像入力ユニット5のデータ記憶部5aにn個の透過量の濃度レベル値が順次格納され、一方、画像入力ユニット5から、毎回の走査で得られたスライスデータとしてのX線画像の濃度データが入力画像データとしてデータ処理ユニット6に取り込まれ、画像処理が開始される(ステップS6)。
【0066】
このデータ処理ユニット6での処理は、まず、被検査物を透過したX線の透過量の2次元分布に対応する原画像データを平滑化処理することで細かいノイズ成分を除去する(ステップS7:平滑化処理段階)。すなわち、入力画像内の任意の注目画素に対し、その画素の近傍画素を含む単位処理範囲(例えば3×3画素の近傍領域内)を設定して、各注目画素に対応する単位処理範囲内の前記画像データに基づき注目画素及びその近傍画素の画像濃度レベルを平均化する。例えば、各画素についての平滑化した濃度値を決定する際に、その画素の近傍画素である前後に処理する画素データとの平均の値を、その注目画素の濃度データとする。
【0067】
このとき、例えば図3に模式的に図示するように、図3(a)に示すように原画像の一部に異物Fや被検査物エッジその他のノイズ成分n1,n2が含まれていた場合、平滑化処理により、図3(b)に示すように、各画像部分の画素領域が広がるとともに高濃度部分が拡散されて均される。
【0068】
次いで、平滑化処理後の画像データの濃度レベルを異物候補抽出用の濃度レベル閾値と比較して異物候補の画像領域を抽出し(ステップS8:抽出処理段階)、この抽出画像領域を有効画素領域(「1」の部分)とする二値化処理を行なう。このとき、図3(b)に示される平滑化処理済みの画像データから、図3(c)に示すような二値化画像となる。
【0069】
次いで、抽出した異物候補の画像領域をその周縁部の有効画素を減じるよう収縮する(ステップS9)。すなわち、2値化された画像中の任意の注目画素について、その近傍領域(例えば注目画像を中心とする3×3画素の近傍領域内)に少なくとも1つ「0」があればその注目画素の値を0とする。
【0070】
このような収縮処理により、図3(c)に示すような二値化画像は図3(d)に示すようにその周縁部の有効画素を1回の収縮処理で1画素分の変動幅だけ減じることになり、全体として細くなる。また、このとき抽出画像に含まれていた被検査物エッジ等の高濃度ノイズ成分n1の影響部分が分別除去される。
【0071】
さらに、この収縮処理後、縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるようその画像領域を拡大する(ステップS10)。すなわち、2値化された画像の注目画素について、その近傍領域内に少なくとも1つ「1」があればその注目画素の値を1とする。このとき、収縮により全体として細くなっていた細線状異物等のような高濃度部分は元の太さ及び形状のレベルまで面積(画素数の和)が拡大される。例えば、図3(d)に示す状態から、図3(e)に示す状態に拡大される。
【0072】
以上のように、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成される画像中においては、検出すべき異物が存在する場合、有効画素が連続して集まった孤立領域が異物を示すものとなる。このとき、ワークWに混入した細線状の異物(例えば金属からなる)はその長さや太さに応じた画像上の形態的特徴である面積(画素の総数)若しくは面積(濃度値の総和)を有しているので、検出すべき異物サイズに応じて異物検出用の閾値を設定・調節することで、所定数以上の有効画素が連続して集まった異物画像領域が閾値判定によりラベリング処理されて取り出され(ステップS11)、検出すべき異物が検出されることになる。
【0073】
そして、異物検出部67では、異物の有無(OK/NG)の判定結果に応じて、異物が無いことを表わすOK表示をするためのOK表示信号、若しくは、異物が検出されたことを表わすNG表示をするためのNG表示信号を表示部7に出力し、いずれかの表示がなされ(ステップS16又はS14)、NG判定時には搬送停止される(ステップS15)。
【0074】
このように、本実施形態においては、原画像データを所定の単位処理範囲で平滑化処理した後の画像データからその濃度レベルを閾値と比較して異物候補の画像領域を抽出して二値化し、抽出した異物候補画像領域を収縮処理して細めながら平滑処理のみでは除去できないワークWのエッジ等の不要なノイズ成分を除去した後、収縮した画像を元の画像領域の太さまで膨張処理するようにしているので、収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中において、有効画素が所定数以上集まった孤立領域を特定することで異物を検出することができる。また、ワークWのエッジ部分を収縮・膨張処理に伴って効果的に分別除去することができるので、X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別することができる高異物検出感度のX線異物検出方法が実現でき、その方法を実施可能な及び高異物検出感度のX線異物検出装置を提供することができる。
【0075】
しかも、本実施形態のX線異物検出方法においては、収縮・膨張処理で図3(c)〜図3(e)に模式的に示すように異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、検出すべき異物Fに対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、ワークWのエッジ領域に相当する擬似異物候補n1の画像領域ne1の幅に近くなるように、収縮膨張幅調整手段としての閾値設定部64及び処理回数設定部66を用いて、抽出処理段階での閾値と収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定することができるので、ワークWのエッジ部分を異物候補の画像領域の収縮・膨張処理によって容易にかつ確実に分別除去することができる。
【0076】
また、本実施形態では、異物判定段階において、収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて、所定数以上の連続する有効画素が集まった異物画像領域を特定する異物特定処理を実行するので、異物の自動検出が可能となる。
【0077】
さらに、本実施形態では、表示部7で表示されるX線画像中において、有効画素が所定数以上集まった孤立画像領域はワークWのエッジを排除して検出すべき異物を明確に示すものとなるので、異物混入の目視判定が非常に容易にできる。
【0078】
また、本実施形態のX線異物検出装置は、異物検出部67が内蔵するラベリング処理部67aによって孤立画像領域の形態上の特徴量を所定の異物判定用の閾値と比較して検出すべき異物の有無を判定するので、異物検出感度がより向上する。
【0079】
以上に加えて、本実施形態のX線異物検出装置においては、平滑化処理部61の単位処理範囲を特定する画素の数を可変設定する平滑化設定部62を設けているので、平滑化処理の条件をワークWの被種類に応じて最適に設定することもできる。
【0080】
また、図5に示すように、表示画面71上に濃度しきい値調節操作部83およびラベリングパラメータ調節操作部84のような加減操作ツールを構成し、濃度しきい値やラベリングパラメータを任意に加減できるようにすれば、画面上のX線画像を参照しながら異物等の高濃度部分の太さを加減し、類似の高濃度領域となり易いノイズ成分とX線画像中における異物とを確実に分別することができる。
【0081】
さらに、図6に示すように、異物指定スイッチボタン86の操作とX線画像ウィンドウ71a内に表示された異物の領域指定とに応じて、濃度しきい値およびラベリングパラメータが自動調節されるようにすれば、しきい値調整のための操作入力が簡易化され、しかも、視覚的に把握され部分的に特定された実際の異物画像領域およびそれと同等の異物候補を確実に抽出することができる。
【0082】
加えて、図7に示すように、中間画像スイッチ87,88の操作により、現在の濃度しきい値で2値化された中間画像や2値化された後更に収縮・膨張処理されて現在のラベリングパラメータ(特徴量のしきい値)でラベリング処理された中間画像を表示するようにすれば、しきい値調整の効果を即座に目視確認することができ、調整作業を適確に行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明は、原画像データを平滑化処理した後の画像データからその濃度レベルを閾値と比較して異物候補の画像領域を抽出し、抽出した異物候補画像領域を収縮後に膨張するようにしているので、平滑化した画像濃度レベルが異物候補抽出用の閾値を超えて抽出され、かつ収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中において、有効画素が所定数以上集まった孤立領域を特定することで異物を検出することができ、それに際して、被検査物のエッジ部分を収縮・膨張処理に伴って効果的に分別除去することができ、X線画像中における異物をノイズ成分と確実に分別し得る高異物検出感度のX線異物検出方法及び装置を提供することができるという効果を奏するものであり、被検査物のX線画像を処理して被検査物への混入異物の有無を検出するX線異物検出方法及びX線異物検出装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の表示部及び調節操作部の第1実施例を示すその概略正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像処理の流れを画像の変化として模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の表示部及び調節操作部の第2実施例を示すその概略正面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の表示部及び調節操作部の第3実施例を示すその概略正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の表示部及び調節操作部の第4実施例を示すその概略正面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 搬送路
2 X線源
3 進入検知センサ
4 X線検出部
5 画像入力ユニット
5a データ記憶部(画像データ記憶手段)
6 データ処理ユニット
7 表示部(表示手段)
61 平滑化処理部(平滑化処理手段)
62 平滑化設定部(平滑化設定手段)
63 異物候補抽出部(抽出処理手段)
64 閾値設定部(収縮膨張幅調整手段)
65 収縮・膨張処理部(収縮・膨張処理手段)
66 処理回数設定部(収縮膨張幅調整手段)
67 異物検出部(異物判定手段)
67a ラベリング処理部(ラベリング処理手段)
67b 閾値判定処理部
68 特徴量閾値設定部
71 表示画面
81,83 濃度しきい値調節操作部(収縮膨張幅調整手段)
82,84 ラベリングパラメータ調節操作部
86 異物指定スイッチボタン
87,88 中間画像スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を透過したX線の透過量に対応する所定のX線画像の画像データを原画像データとして処理し、前記被検査物への異物の混入を検出するX線異物検出方法であって、
前記X線画像内の異なる複数の注目画素に対し各注目画素ごとの近傍画素を含む単位処理範囲を設定して、各注目画素について対応する単位処理範囲内の前記原画像データの濃度レベルを平均し該注目画素の画像データに割り当てる平滑化処理段階と、
前記平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して該閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理段階と、
前記抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるように該画像領域を縮小した後に該縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるように該縮小した画像領域を拡大する収縮・膨張処理段階と、を含み、
前記収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に前記有効画素が所定数以上集まった孤立領域が形成されるか否かで検出すべき異物の有無を判定するようにしたことを特徴とするX線異物検出方法。
【請求項2】
前記収縮・膨張処理により前記異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、前記検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、前記被検査物のエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、前記抽出処理段階での閾値と前記収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定することを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出方法。
【請求項3】
前記異物判定段階において、前記収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて、所定数以上の連続する有効画素が集まった異物画像領域を特定する異物特定処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線異物検出方法。
【請求項4】
被検査物を透過したX線の透過量データに対応する所定のX線画像の画像データを原画像データとして処理し、前記被検査物への混入異物を検出するX線異物検出装置であって、
前記X線画像の画素ごとの画像データを画素位置と関連付けて記憶する画像データ記憶手段(5a)と、
前記X線画像内の任意の注目画素及び該画像領域に隣接する近傍画素を単位処理範囲の画像領域として、各注目画素について対応する単位処理範囲内の前記原画像データの濃度レベルを平均し該注目画素の画像データに割り当てる平滑化処理手段(61)と、
前記平滑化処理がなされた画像データの濃度レベルを所定の異物候補抽出用の閾値と比較して該閾値を超える異物候補の画像領域を抽出する抽出処理手段(63)と、
前記抽出された異物候補の画像領域についてその周縁部の有効画素を減じるように該画像領域を縮小した後に該縮小した画像領域内の有効画素数を増加させるように該縮小した画像領域を拡大する収縮・膨張処理手段(65)と、
前記収縮・膨張処理がなされた複数の画像領域の画像データに基づいて所定数以上の複数の画素が集まった孤立画像領域を表示する表示手段(7)と、を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項5】
前記収縮・膨張処理がなされた画像データによって生成されるX線画像中に前記有効画素が集まった画像領域が形成されるか否かで、検出すべき異物の有無を判定する異物判定手段(67)を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のX線異物検出装置。
【請求項6】
前記収縮・膨張処理された画像データによって生成される画像領域中に所定数以上の連続する画素が集まった画像領域を特定するラベリング処理手段(67a)を設け、
前記異物判定手段が、前記ラベリング処理手段により特定された孤立画像領域の形態上の特徴量を所定の異物判定用の閾値と比較して、検出すべき異物の有無を判定することを特徴とする請求項5に記載のX線異物検出装置。
【請求項7】
前記収縮・膨張処理により前記異物候補の画像領域ごとに変動する変動幅が、前記検出すべき異物に対応する異物画像領域の幅より小さく、かつ、前記被検査物のエッジ領域に相当する擬似異物候補の画像領域の幅に近くなるよう、前記抽出処理段階での閾値と前記収縮・膨張処理の回数とのうち少なくとも一方を可変設定する収縮膨張幅調整手段(64,66)を設けたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1つに記載のX線異物検出装置。
【請求項8】
前記平滑化処理手段の前記単位処理範囲を特定する画素の数を可変設定する平滑化設定手段(62)を設けたことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1つに記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24835(P2007−24835A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211393(P2005−211393)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】