説明

Z軸専用電動アクチュエーター

【課題】高負荷に対抗でき、高スピード化を実現でき、コンパクト化できるZ軸専用電動アクチュエーターを提供する。
【解決手段】ボールネジ15と、モーター3と、ナット16を有するボールネジナットハウジング17と、スプラインロッド20と、シリンダーハウジング11とを備え、ボールネジ15、ボールネジナットハウジング17、スプラインロッド20およびシリンダーハウジング11を同一鉛直線上に配置し、シリンダーハウジング11とボールネジナットハウジング17との間をシールするシール部材30、31、32をボールネジナットハウジング17の外周に設けて、ボールネジナットハウジング17にピストン機能を付与し、ボールネジ15を正転、逆転させてスプラインロッド20を昇降させ、かつ、シリンダーハウジング11内に加圧用エアを供給してボールネジナットハウジング17を上方に向けて加圧するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク(負荷)を昇降させ、所定の位置で保持するためのZ軸専用電動アクチュエーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のZ軸専用電動アクチュエーターでは、Z軸は、XY軸とは異なり、ワークの重量による鉛直方向の作用を常に受けるため、ワークの重力に抗して十分にワークを保持することができる構造にしなければならない。
【0003】
ワークを保持するための方法としては、モーターブレーキが使われるのが一般的である。しかし、モーターブレーキがワーク停止時の保持に用いられるため、ワークの移動時には、ワークの重量に見合った容量のモーターを選定しなければならない。ワークの重量変動が大きい場合などには、最大負荷量を見越した設計をしなければならない。
【0004】
また、電動アクチュエーターの内部に配置されているボールネジのリードを小さくして鉛直方向の力を軽減し、モーター容量を小さくすることも可能であるが、動作スピードが遅くなるという問題が生じる。さらに、減速機を配置してモーター容量を小さくすることも可能であるが、装置全体が大きくなるため、コンパクトな設計ができなくなるという問題が生じる。
【0005】
また、間接的な方法として、バランスウエイトを使用することもよく行われているが、ロボットハンドの利用分野に用いるのは現実的ではない。
【0006】
さらに、ワークを昇降させる場合、イナーシャに比例した制動抵抗がモーターに発生するため、ワークの荷重変動が大きくなれば、最大負荷量を勘案したモーターの選定が求められる。また、高スピード化に対してもイナーシャを勘案する必要がある。このため、高負荷と高スピード化の要求に対しては、大容量のモーターを選定せざるを得ないという問題があった。
【0007】
また、電動アクチュエーターの小型化と高速化のためにモーターとエアシリンダーを組み合わせた装置が提案されている(例えば特許文献1)。しかし、モーターとエアシリンダーを併設しているため、装置全体が大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−305405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、高負荷に対抗することができ、また、高スピード化を実現することができ、しかも、コンパクト化することができるZ軸専用電動アクチュエーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るZ軸専用電動アクチュエーターは、
ボールネジと、
前記ボールネジを正転、逆転させるモーターと、
前記ボールネジが螺合されるナットを有し、非回転状態で昇降可能に配置されるボールネジナットハウジングと、
前記ボールネジナットハウジングに取り付けられるスプラインロッドと、
前記ボールネジナットハウジングおよび前記スプラインロッドを収容するシリンダーハウジングと
を備えており、
前記ボールネジ、前記ボールネジナットハウジング、前記スプラインロッドおよび前記シリンダーハウジングを同一鉛直線上に配置し、
前記シリンダーハウジングと前記ボールネジナットハウジングとの間をシールするシール部材を前記ボールネジナットハウジングの外周に設けることにより、前記ボールネジナットハウジングにピストン機能を付与し、
前記ボールネジを正転、逆転させてスプラインロッドを昇降させ、かつ、前記シリンダーハウジング内に加圧用エアを適宜供給して前記ボールネジナットハウジングを上方に向けて加圧して前記モーターのトルクを低減させるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記のZ軸専用電動アクチュエーターは、
前記スプラインロッドに鉛直方向に長い中空部を形成し、前記中空部に前記ボールネジを収容していることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記のZ軸専用電動アクチュエーターは、
前記モーターがサーボモーターであり、
前記モーターの負荷を検出し、前記モーターがオーバーロードにならない様に、検出された前記モーターの負荷に見合った加圧エアが供給されるように制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高負荷に対抗することができ、また、高スピード化を実現することができ、しかも、コンパクト化することができるZ軸専用電動アクチュエーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るZ軸専用電動アクチュエーターの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るZ軸専用電動アクチュエーターの動作を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
1.Z軸専用電動アクチュエーターの構成
(1)全体構成
図1は、本発明の実施の形態に係るZ軸専用電動アクチュエーター1の正面図である。図1に示すように、本発明に係るZ軸専用電動アクチュエーター1は、ボールネジ15と、ボールネジ15を正転、逆転させるモーター3と、ボールネジナットハウジング17と、スプラインロッド20と、ボールネジナットハウジング17およびスプラインロッド20を収容するシリンダーハウジング11と、モーター3のトルクを軽減するための補助手段Aとを備えている。
【0017】
また、ボールネジ15、ボールネジナットハウジング17、スプラインロッド20およびシリンダーハウジング11は、同一鉛直線上に配置されている。
【0018】
(2)モーター3
モーター3は、サーボモーターであり、モーター3の駆動軸13には、カップリング14を介してボールネジ15が連結されている。このように、モーター3をボールネジ15にカップリング14で直結させることにより、プーリーやベルトなどの部品が不要になり、コストダウンが図ることができる。
【0019】
(3)ボールネジナットハウジング17
ボールネジナットハウジング17は、ボールネジナット16、上側筒部材18および下側筒部材19を備えている。
【0020】
ボールネジナットハウジング17は、ピストンを兼ねている。すなわち、ボールネジナットハウジング17の上側筒部材18の上フランジ部18aの外周面にOリング(シール部材)30を設け、このOリング(シール部材)30をシリンダーハウジング11の内周面にスライド自在に密着させている。
【0021】
(4)ボールネジ15
ボールネジ15は、ボールネジナットハウジング17のボールネジナット16に螺合され、また、ボールネジナットハウジング17の上側筒部材18および下側筒部材19に挿通されている。
【0022】
(5)スプラインロッド20
スプラインロッド20の外周には、軸心方向に沿った軌道溝が形成されている。
【0023】
スプラインロッド20の下部は、シリンダーハウジング11の下部カバー21に配置された筒状部材21a、22を挿通している。スプラインロッド20には、軸心に沿って中空部20aが設けられ、中空部20a内にボールネジ15が収容されている。これにより、装置の小型化が図れる。
【0024】
スプラインロッド20の上端は、パワーロック23によりボールネジナットハウジング17に取付けられている。
【0025】
(6)シリンダーハウジング11
シリンダーハウジング11の上端および下端には、上部フランジ12および下部フランジ11aが形成され、シリンダーハイジング11の一部には密閉室Bが形成されている。
【0026】
密閉室Bは、次のようにして形成されている。すなわち、前記のようにボールネジナットハウジング17の上側筒部材18の上フランジ部18aにOリング30を設け、また、下側筒部材19の上端部19aと、上側筒部材18の上フランジ部18aとの間にOリング31を介在させている。また、下側筒部材19の貫通孔19bにスプラインロッド20を挿入し、貫通孔19bとスプラインロッド20との間にはOリング32を介在させている。さらに、シリンダーハウジング11の下部に設けられた下部フランジ11aにパッキン33を設け、パッキン33はスプラインロッド20と下部フランジ11aとの間に設けられている。すなわち、真円タイプのスプラインロッド20の軌道溝にパッキン33を配置し、グランド部をエアシールできるようにしている。
【0027】
また、シリンダーハウジング11の下端には、下部カバー21が配置され、下部カバー21には、多数のボール(図示略)を有する筒状部材21a、22が固定されている。
【0028】
筒状部材21a、22にはスプラインロッド20が挿入され、筒状部材21a、22の前記ボールは、スプラインロッド20の軌道溝に嵌め込まれている。
【0029】
前記の通りシリンダーハウジング11の上端側には、上部フランジ12が設けられ、上部フランジ12には、モーター3が配置されている。
【0030】
図2は本発明の実施の形態に係るZ軸専用電動アクチュエーターの動作を説明する正面図である。そして、図2に示すように、スプラインロッド20は、ボールネジ15の正転、逆転により、ボールネジ15に沿って昇降してワーク2の昇降および所定位置での保持が可能になる。なお、ワーク2はスプラインロッド20の下端部に設けられた把持手段(図示略)により把持される。
【0031】
(7)補助手段A
補助手段Aは、シリンダーハウジング11の密閉室B内に加圧用エアを供給してボールネジナットハウジング17を上方に向けて加圧してモーター3のトルクを低減させるものである。
【0032】
補助手段Aは、前記のようにピストン機能が付与されたボールネジナットハウジング17と、密閉室Bと、密閉室B内に加圧エアを供給するエア供給源の供給口6と、密閉室Bと供給口6とを繋ぐエア配管7とを備えている。
【0033】
そして、密閉室Bに加圧エアを供給することにより、ピストン機能を有するボールネジナットハウジング17を上方に持ち上げる力が発生してモーター3のトルクを軽減させる。
【0034】
(8)制御手段
制御手段は、モーター3をコントロールするサーボコントローラ5と、補助手段Aのエアの圧力制御を行う電空レギュレータ8と、電空レギュレータ8およびサーボコントローラ5をコントロールするシーケンサー9を備えている。
【0035】
そして、モーター3からの回転トルクを検出し、ワーク2を持ち上げるために必要な推力をシーケンサー9のCPUで計算した後、アナログ信号を電空レギュレータ8(例えば、DC4〜20mmA)に送り、モーター3がオーバーロードにならない様に、補助手段Aで補助する。これにより、ワーク2の荷重が変更された場合であっても、モーター3は適正な回転トルクで運転できることになる。
【0036】
すなわち、シリンダーハウジング11の密閉室Bに送られたエアの圧力により、ボールネジナットハウジング17が持ち上げられる方向に力が発生することにより、その分、モーター3の負担が軽減されて必要推力を減少させることができる。このため、高負荷に対抗でき、高スピード化を実現できる。
【0037】
なお、本実施の形態では、50kgや100kg程度の重量のワーク2を持ち上げて保持できるように設計されており、例えば、モーター3の容量選定は、ワーク2の最大重量を低速で1秒間持ち上げ可能なことを条件とし、その後モーター3がオーバーロードで停止する前にエアが供給されるように、シーケンサー9で電空レギュレータ8を制御する。
【0038】
2.実施の形態に係るZ軸専用電動アクチュエーターおよび制御方法の効果
(1)シリンダーハウジング11とボールネジナットハウジング17との間をシールするOリング30をボールネジナットハウジング17の外周に設けることにより、ボールネジナットハウジング17にピストン機能を付与し、シリンダーハウジング11内に加圧用エアを適宜供給してボールネジナットハウジング17を上方に向けて加圧するため、ボールネジナットハウジング17を上方に持ち上げる力が発生する分だけモーター3のトルクを軽減させることができる。このため、高負荷に対抗でき、高スピード化を実現することができる。
【0039】
(2)ボールネジナットハウジング17にピストン機能を付与したため、別途ピストンを設けることなく、装置の大型化を防止できる。
【0040】
(3)また、ボールネジ15、ボールネジナットハウジング17、スプラインロッド20およびシリンダーハウジング11を同一鉛直線上に配置したため、装置全体の寸法が横に広がることを防ぐことができる。
【0041】
(4)さらに、スプラインロッド20に鉛直方向に長い中空部20aを形成し、中空部20aにボールネジ15を収容しているため、ボールネジ15がスプラインロッド20の中空部に収容される分だけ、装置の縦方向の寸法も小さくすることができ、装置のコンパクト化が可能になる。
【0042】
(5)サーボモーターのモーター3がオーバーロードにならない様に、検出された前記モーターの負荷に見合った加圧エアが供給されるように制御する制御手段を備えているため、モーター容量を小さくでき、モーター3がオーバーロードで停止することを防止でき、モーター3に過度のストレスがかかるのを防止できる。また、サーボモーター3により、モーター3自体がトルクをワークの重さにより認識できる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではない。以上の実施の形態と同一および均等の範囲内において、前記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 Z軸専用電動アクチュエーター
2 ワーク(負荷)
3 モーター
5 サーボコントローラ
6 エア供給源の供給口
7 エア配管
8 電空レギュラーター
9 シーケンサー
11 シリンダーハウジング
11a 下部フランジ
12 上部フランジ
13 駆動軸
14 カップリング
15 ボールネジ
16 ボールネジナット
17 ボールネジナットハウジング
18 上側筒部材
18a 上フランジ部
19 下側筒部材
19a 下側筒部材の上端部
19b 貫通部
20 スプラインロッド
20a 中空部
21 下部カバー
21a 筒状部材
22 筒状部材
23 パワーロック
30〜32 Oリング(シール部材)
33 パッキン
A 補助手段
B 密閉室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールネジと、
前記ボールネジを正転、逆転させるモーターと、
前記ボールネジが螺合されるナットを有し、非回転状態で昇降可能に配置されるボールネジナットハウジングと、
前記ボールネジナットハウジングに取り付けられるスプラインロッドと、
前記ボールネジナットハウジングおよび前記スプラインロッドを収容するシリンダーハウジングと
を備えており、
前記ボールネジ、前記ボールネジナットハウジング、前記スプラインロッドおよび前記シリンダーハウジングを同一鉛直線上に配置し、
前記シリンダーハウジングと前記ボールネジナットハウジングとの間をシールするシール部材を前記ボールネジナットハウジングの外周に設けることにより、前記ボールネジナットハウジングにピストン機能を付与し、
前記ボールネジを正転、逆転させてスプラインロッドを昇降させ、かつ、前記シリンダーハウジング内に加圧用エアを適宜供給して前記ボールネジナットハウジングを上方に向けて加圧して前記モーターのトルクを低減させるように構成されていることを特徴とするZ軸専用電動アクチュエーター。
【請求項2】
前記スプラインロッドに鉛直方向に長い中空部を形成し、前記中空部に前記ボールネジを収容していることを特徴とする請求項1に記載のZ軸専用電動アクチュエーター。
【請求項3】
前記モーターはサーボモーターであり、
前記モーターの負荷を検出し、前記モーターがオーバーロードにならない様に、検出された前記モーターの負荷に見合った加圧エアが供給されるように制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のZ軸専用電動アクチュエーター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−60725(P2012−60725A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199567(P2010−199567)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】