説明

pcLEDのための赤方偏移を有するドープされたガーネット蛍光物質

本発明は、式I、(Ya,Lub,Sec,Tbd,The,Irf,Sbg)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (I)、式中a+b+c+d+e+f+g+h+i=1、x=0.005〜0.1およびy=0〜4.0である、で表されるガーネット構造を有する蛍光物質に関する。本発明はさらに、前記蛍光物質の製造方法ならびに、LEDの青色または近紫外線発光を変換するための変換蛍光物質としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Th4+、Sb3+、Ir3+および/またはSe3+で同時ドープされた(co-doped)ガーネットからなる蛍光体、その調製、および暖白色LEDまたはいわゆるカラーオンデマンド(colour-on-demand)用途のためのLED変換蛍光体としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーオンデマンドの概念は、1種または2種以上の蛍光体を用いたpcLED(=蛍光体により変換されたLED、phosphor converted LED)によって特定のカラーポイント(color point)を有する光を生じさせることを意味するものと解釈される。例えば、例えば照明会社ロゴ、商標などのための特定のコーポレートデザインを作り出すために、この概念が用いられる。
【0003】
1990年代初頭における青色(In,Ga)N発光ダイオード(LED)の発明(S. Nakamura, Appl. Phys. Lett. 67 (1995) 1868)以来、青色InGaN半導体チップを基礎とした白色光源を製造するための多大な努力が、世界中でなされてきた。この目的のために、発光性粉末層または光スクリーンを用い、それをチップに直接適用し、青色LED放射線の一部を黄色光に変換する。このようにして、白色光は、LED中における加法混色によって作り出される。今日商業的に入手できる白色LEDは、事実上専ら、事実上その高い効率および安定性のために理想的な変換体であるYAl12:Ce(YAG:Ce)を黄色蛍光体として含む。その最も大きな欠点は、発光スペクトル中の赤色成分の欠如であり、それは、YAG:Ceを含む固体光源が、今日通常寒白色(T>5000K)を提供するに過ぎず、それによって一般的な照明、特に屋内の部門におけるそれらの用途の範囲が制限されることを意味する。
【0004】
多くの過去の調査の目的は、Ce3+活性剤の発光帯が赤色スペクトル領域にシフトするように、YAG:Ceを改変することにあった。照明産業(GE、フィリップス、オスラム、日亜、東芝、松下、シチズンなど)からの研究結果によると、必要な赤方偏移を以下の手段によって達成することが可能である:
1.希土類元素Gd3+、Tb3+またはDy3+の同時ドーピング
2.カチオン部位における電荷補償と同時の、酸化物アニオンの窒化物アニオンによる部分的な置換
3.Ce3+濃度の増加
【0005】
不都合なことに、これらの手段は、濃縮または温度消光のためにYAG:Ce蛍光体の量子収量を減少させ、これは、本場合において、これによってまた蛍光体輝度の低減がもたらされるため、光源において用いるには許容し得ない。蛍光体輝度は、光源において用いるための本質的な尺度である。その理由は、顧客が、所定の励起性および所定のカラーポイントについて、蛍光体の選択を、単にその輝度を基準として行うためである。蛍光体の価格は、これがLEDについての総価格と比較して無視できるため、重要な役割を果たさない。
【0006】
したがって、蛍光体の輝度を低減させることなくYAG:Ceの5d−4f遷移の発光帯を赤色スペクトル領域にシフトすることのできる解決法を見出すという大きな要求が、依然として存在する。
【0007】
CN 100999662には、実験式(R3−x−yCeLn)A12で表され、式中RがPr、Nd、Sm、Dy、Biからの少なくとも1種の元素を示し、AがB、Al、Ga、Si、Mn、Mgからの少なくとも1種の元素を示し、式中0.01≧x≦1.2であり、0≦y≦0.2である、同時ドープされたガーネットが記載されている。材料は、CO雰囲気中で酸化物から、当業者に知られている固体拡散法(混合および燃焼(mix & fire)としても知られている)によってか焼される。COは、活性炭を含む容器を出発物質が配置されるるつぼの周囲に配置することによって調製される。加熱する際に、Boudouard平衡が生じ、COガス雰囲気の形成がもたらされる。
【0008】
生成した材料は、相対輝度値で記載されているが、これによって、これらの材料が実際にどの程度明るいかを理解することが不可能になる。中国出願から、Boudouard平衡によって調製されるCOによる還元が好ましくないことは明らかである。CO分圧を設定することが不可能であることは別として、活性炭がか焼プロセスの間に消費されるか否かの制御が、存在しない。これが真実である場合には、炉材料は酸化され、これは、蛍光体特性が顕著に損なわれ得ることを意味する。この方法はまた、CN 100999662において述べられていることに反して、とりわけCOの生産の性質のために、継続的な生産に適さない。
【0009】
さらに、WO2008051486には、材料(Y,A)(Al,B)(O,C)12’:Ce3+が開示されており、ここでAは、Tb、Gd、Sm、La、Sr、Ba、Caからの元素であり、Aは、0.1〜100%の範囲内でYで置換されており、Bは、Si、Ge、B、P、Gaからの元素であり、Bは、0.1〜100%の範囲内でAlで置換されており、またここでCは、F、Cl、N、Sからの元素であり、Cは、0.1〜100%の範囲内でOで置換されている。200〜300nmの大きさを有する、当該出願中に開示されている蛍光体ナノ粒子によって、微小粒子より低いLEDにおける輝度がもたらされ、それは当業者によく知られている:そのような小さい粒子において、大部分のCe活性剤は、表面に位置しており、ここでこれらのイオンは、不均質な結晶場の下に置かれ、回避不能な表面の欠陥によって、発せられるべき光子の吸収がもたらされる。フッ素(フッ化物)は、電子部品(LED)中のROHSリストの構成要素として存在してはならないため、フッ素含有蛍光体を、LEDにおいて用いることはできない。記載されている蛍光体は、「540〜560」nmの範囲内で発光することができる。これらの波長は、YAG、LuAGまたはTAGを用いることによるより単純な方法で達成可能である。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点の1つまたは2つ以上を有せず、暖白色光を発生する、赤方偏移した、即ち560〜605nmの範囲内の蛍光である、白色LEDのための、またはカラーオンデマンド用途のための変換蛍光体を提供することにある。
【0011】
驚くべきことに、Al3+カチオンのいくつかがSi4+によって置換されており、同時に、電荷補償のために、同様の比率のAl3+カチオンがMg2+によって置換されている場合に、Se、Th、Ir、Sbの群からの1種または2種以上の元素を同時ドーパントとして用いる場合には、顕著な赤方偏移を有する明るく、高度に効率的なYAG:Ce蛍光体を達成することができることが見出された。これらの4種の同時ドーパントは、好ましくは各々、少なくとも100ppmの濃度で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、(Y,Lu)AlMgSi12:Ce,X(式中X=Th、Ir、Sb、Se)のX線粉末回折パターン、Cu Kα放射線を示す。
【図2】図2は、(Y0.99Lu1.95Ce0.66AlMgSi12の励起スペクトル(1)、発光スペクトル(2)および反射スペクトル(3)を示す。
【図3】図3は、作業例1a〜1eからの本発明の蛍光体の発光スペクトルを示す。
【図4】図4は、発光ピーク極大の改善された図示のための、図3からの詳細な拡大を示す。
【図5】図5は、X=Th、Ir、SeまたはSbである(Y,Lu)AlMgSiO12:Ce,XのX線粉末回折パターン(Cu Kα放射線)を示す。
【図6】図6は、(Y,Lu)AlMgSiO12:Ceの励起スペクトル(2)、発光スペクトル(3)および反射スペクトル(1)を示す。
【図7】図7は、作業例2a〜eからの本発明の蛍光体の発光スペクトルを示す。
【図8】図8は、ピーク極大をより良好に区別するための、図7からの詳細な拡大を示す。
【図9】図9は、蛍光体含有コーティングを有する発光ダイオードの描図を示す。
【図10】図10は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たす、InGaNタイプのCOB(チップオンボード)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;7=ボード)。
【図11】図11は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たす、InGaNタイプのCOB(チップオンボード)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;7=ボード)。
【図12】図12は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たすGolden Dragon(登録商標)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=凹部中に反射体を有する変換蛍光体)。
【図13】図13は、SMDパッケージ(表面実装型パッケージ)を示し、ここで1=ケーシング;2、3=電気的接続;4=変換層である。
【図14】図14は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで蛍光体は、バインダー中に最上部の球体として塗布されている。
【図15】図15は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで、蛍光体は、バインダー中に分散した薄層として塗布されている。
【図16】図16は、原則的にUS-B 6,700,322からすでに知られている、他の用途の例を示す。
【0013】
したがって、本発明は、式I
(Ya,Lub,Sec,Tbd,The,Irf,Sbg)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (I)
式中、
a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1、
x=0.005〜0.1および
y=0〜4.0
で表されるガーネット構造を有する蛍光体に関する。
【0014】
本明細書中のガーネット構造は、当然また、この結晶が典型的なガーネット構造を保持する限りは、ガーネットの理想的な場合とわずかに異なる欠陥または格子欠陥に基づく構造も意味するものと解釈される。典型的なガーネット構造は、一般的にA12:Dを意味するものと解釈され、式中、A=希土類元素(RE);B=Al、Ga;およびD=RE、例えばセリウムなどに代わる活性剤である。
【0015】
セリウムのドーピング濃度が0.5〜10重量%であるのが、好ましい。特に好ましくは2.0〜5.0重量%、および最も好ましくは3.0〜3.5重量%である。3.0〜3.5重量%のセリウム濃度にて、増加した吸収が、一般的に発生し、したがって蛍光体の増加した光収量またはより大きい輝度が生じる。より高いセリウム濃度によって、量子収量が減少し、したがって次に減少した光収量が得られる。
置換度yは、本質的に上記の組成物の発光極大の位置を決定する。YAl5−yMgy/2Siy/212:Ceについて、Ce3+発光帯の極大を、このように555から605nmにシフトさせることができる。同時ドーパントSb、Ir、Th、Seは、本発明の蛍光体の発光極大の位置またはカラーポイントに対する顕著な影響を有しない。
【0016】
見出された赤方偏移を、当業者に知られている理論によって以下のように説明することができる:Ce−O結合の共有結合特徴、即ちアニオンの有効な負電荷およびアニオンと活性剤軌道との間の重複は、YAG:Ce蛍光体の赤方偏移に関与する。一般的に、第1の励起状態[Xe]5dからの基底状態[Xe]4fのエネルギー分離がシュタルク効果の減少によって低下するため、[Xe]5d→[Xe]4f配位間遷移(interconfiguration transition)のCe3+発光帯が、増大する共有結合特徴を伴って赤色スペクトル領域中にシフトし、同時に減衰期間が減少することを指摘することができる。これはまた、すでに文献(A.A. Setlur, W.J. Heward, M.E. Hannah, U. Happek, Chem. Mater. 20 (2008) 6227)に記載されているO2−のN3−による置換が、なぜ同一の効果を有するかを説明する。
【0017】
本発明の式I〜Vで表される蛍光体の、同一の組成を有するが同時ドーパントSe、Th、Ir、Sbを有しないものと比較して大きい輝度を、これらのイオンが励起されたCe3+状態[Xe]5dの寿命に対して、当該寿命が短縮されるという点で影響を及ぼすという事実によって、当業者に知られている理論によって説明することができる。この場合において、[Xe]5d電子は、基底状態[Xe]4fに、蛍光放射線の放射を伴って、より迅速に戻る。当該個所から、電子は、直ちに再び励起され、その後再び放出さることができる。これらの前提条件下で、蛍光体は、同一の時間単位においてより多くの光を吸収し、より多くの光を発し、より大きい輝度をもたらすことが可能である。同時ドーピングは、顕著な赤方偏移をもたらさない。
【0018】
特に好ましくは、式Iで表される蛍光体であり、ここで式Iで表される化合物は、式II〜Vで表される化合物から選択される化合物である:
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Sbc)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (II)
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Thc)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (III)
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Sec)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (IV)
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Irc)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (V)
式中、式II〜Vについて
x=0.005〜0.1
y=0〜4.0
a+b+c=1およびa=0〜0.9995;b=0〜0.9995;c=0.0005〜0.1。
好ましくは、x=0.015〜0.05である。
【0019】
本発明の蛍光体の粒径は、50nm〜30μm、好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。
他の態様において、式Iで表される蛍光体は、さらに以下の蛍光体材料のさらに少なくとも1種を含んでいてもよい:
酸化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、III族窒化物、(オキシ)窒化物、各々の場合において、個別に、または1種もしくは2種以上の活性剤イオン、例えばCe、Eu、Mn、Crおよび/またはBiなどとのそれらの混合物。
これは、特定の色空間を設定するべき場合に特に有利である。
【0020】
他の好ましい態様において、蛍光体は、構造化(例えばピラミッド形の)表面をLEDチップの反対の側に有する(WO2008/058619, Merckを参照、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる)。したがって、可能な限り多くの光が、蛍光体から分離する(decoupled)ことができる。
【0021】
蛍光体上の構造化された表面は、すでに構造化されている好適な材料でその後コーティングすることによって、あるいは以降の段階において、(フォト)リソグラフィープロセス、エッチングプロセスによって、あるいはエネルギービームもしくは材料噴流を用いた書き込みプロセスまたは機械的力の作用によって作成される。
【0022】
他の好ましい態様において、本発明の蛍光体は、LEDチップの反対の側に、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの材料の組み合わせのナノ粒子、ならびに/あるいはCe、Th、Ir、Sbおよび/またはSeの系からのドーパントを有するかまたは有しない式Iで表される蛍光体組成を有する粒子を担持する粗面を有する。ここでの粗面は、数100nmまでの粗さを有する。被覆された表面は、全反射を低減するかまたは防止することができ、光が本発明の蛍光体からより良好に分離することができるという利点を有する(WO 2008/058619 (Merck)を参照。それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。)
【0023】
本発明の蛍光体が、チップから外方に向く表面上に一次放射線の結合および/または蛍光体素子によって発せられる放射線を単純化する整合された屈折率の層を有するのが、さらに好ましい。
【0024】
さらに好ましい態様において、蛍光体は、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物からなる、ならびに/あるいは活性剤セリウムを含まない式Iで表される蛍光体組成からなる連続的表面コーティングを有する。この表面コーティングは、コーティング材料の屈折率の好適な漸変よって、屈折率を環境と整合させるのが可能になるという利点を有する。この場合において、蛍光体の表面における光の散乱が低減され、より大きい比率の光が、蛍光体中に浸透し、そこで吸収され、変換されることができる。さらに、整合された屈折率を有する表面コーティングによって、内部の全反射が低減されるため、より多くの光が蛍光体から分離することが可能になる。
【0025】
さらに、蛍光体をカプセル封入しなければならない場合には、連続層は有利である。これは、蛍光体またはその一部の、水または他の材料が周辺の環境において拡散することについての感度に対抗するために必要であり得る。閉じた覆いを用いて封入する他の理由は、チップにおいて生じる熱からの実際の蛍光体の熱的分断である。この熱の結果、蛍光体の蛍光収率が低減し、また蛍光の色に影響し得る。最後に、このタイプのコーティングは、蛍光体において生じる格子振動が環境中に伝播することを防止することによって蛍光体の効率が上昇することを可能にする。
【0026】
さらに、蛍光体が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物からなる、ならびに/あるいはCe、Th、Ir、Sbおよび/またはSeの系からのドーパントを有するかまたは有しない式Iで表される蛍光体組成からなる多孔性表面コーティングを有するのが、好ましい。これらの多孔性コーティングは、単一の層の屈折率をさらに低減させる可能性を提供する。このタイプの多孔性コーティングを、WO 03/027015に記載されている3種の慣用の方法によって製造することができ、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる:ガラス(例えばソーダ石灰ガラス(US 4019884を参照))のエッチング、多孔質層の適用および多孔質層とエッチングプロセスとの組み合わせ。
【0027】
他の好ましい態様において、蛍光体は、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、環境への化学的または物理的結合を促進する官能基を担持する表面を有する。これらの官能基は、例えばエポキシドおよび/またはシリコーンをベースとする結合剤の構成要素への結合を形成することが可能であるオキソ基を介して結合した、エステルまたは他の誘導体であることができる。このタイプの表面は、蛍光体の結合剤中への均一な取り込みが促進されるという利点を有する。さらに、蛍光体/結合剤系の流動学的特性およびまたポットライフを、したがってある程度調整することができる。混合処理は、このように単純化される。この文脈に関して、環境への物理的結合は、電荷ゆらぎまたは部分電荷を介した系間の静電相互作用を意味するものと解釈される。
【0028】
LEDチップに適用される本発明の蛍光体層が、好ましくはシリコーンおよび均一な蛍光体粒子の混合物からなり、かつ、シリコーンが表面張力を有するため、この蛍光体層は、微視的レベルにて均一ではなく、または層の厚さは、完全に一定ではない。
【0029】
さらに、本発明の蛍光体は、0〜20重量%のアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばLi、Na、K、Ca、Sr、Baおよびハロゲン化物など、例えばFまたはClなどを含んでいてもよい。これらは、好ましくは蛍光体調製においてフラックス剤(fluxing agent)として用いられ、結晶品質を向上させ、粒径および粒子形態を大きく設定する役割を果たし、したがって蛍光体の効率を上昇させる高い可能性を有する。
【0030】
本発明はさらに、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、イットリウムおよびセリウム含有出発物質を少なくとも1種のアンチモン、セレン、イリジウムおよび/またはトリウム含有同時ドーパントと、固体拡散法およびその後の熱後処理によって混合することによって得られる、ガーネット構造を有する蛍光体であって、当該蛍光体が、アルカリもしくはアルカリ土類金属ハロゲン化物またはホウ酸塩化合物の系からのフラックス剤を含んでいてもよい、前記蛍光体に関する。
【0031】
蛍光体を調製するための出発物質は、上述のように、ベース材料(例えばアルミニウム、イットリウム、ケイ素、マグネシウムおよびセリウムの酸化物)ならびに少なくとも1種のSb、Se、IrまたはTh含有ドーパント、ならびに任意にさらにLuまたはTb含有物質からなる。酸化物に加えて、好適な出発物質はまた、さらに無機ならびに/または有機物質、例えば硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、アルコキシド、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、有機金属化合物、金属、半金属、遷移金属および/もしくは希土類元素水酸化物、であり、それを、無機および/または有機液体に溶解し、かつ/または懸濁させてもよい。好ましくは、対応する元素を必要なの理論混合比で含む酸化物を用いることである。
【0032】
本発明はさらに、以下のプロセス段階を有する、蛍光体の調製方法に関する:
a)Sb、Se、Irおよび/またはTh含有物質で同時ドープされたセリウム活性化蛍光体を、Y、Al、Mg、Si、Ce、Lu、Tb含有物質から選択される少なくとも5種の出発物質を混合することによって調製すること
b)Sb、Se、Irおよび/またはThで同時ドープされた蛍光体を熱的に後処理すること。
【0033】
好ましい固体拡散法による蛍光体の調製に加えて、以下の既知の湿式化学的方法もまた、用いることができる:
・NHHCO溶液での共同沈殿(例えば、Jander, Blasius Lehrbuch der analyt. u. praep. anorg. Chem. [Textbook of Analyt. and Prep. Inorg. Chem.] 2002を参照)
・クエン酸およびエチレングリコールの溶液を用いたPecchini法(例えば、Annual Review of Materials Research Vol. 36: 2006, 281-331を参照)
・尿素を用いた燃焼法
・水性または有機塩溶液(出発物質)の噴霧乾燥
・水性または有機塩溶液(出発物質)の噴霧熱分解
・硝酸塩溶液の蒸発および残留物の熱的変換
【0034】
上述の共同沈殿において、NHHCO溶液を、例えば対応する蛍光体出発物質の硝酸塩溶液に加え、蛍光体前駆体の生成をもたらす。
Pecchini法において、クエン酸およびエチレングリコールからなる沈殿試薬を、例えば対応する蛍光体出発物質の上述の硝酸塩溶液に、室温にて加え、混合物を、その後加熱する。粘性を増大させることによって、蛍光体前駆体の生成がもたらされる。
既知の燃焼方法において、対応する蛍光体出発物質の上述の硝酸塩溶液を、例えば水に溶解し、次に還流下で沸騰させ、尿素で処理し、蛍光体前駆体の遅い生成がもたらされる。
【0035】
噴霧熱分解は、エアゾール法の1つであり、それは、種々の方法で、溶液、懸濁液または分散体を加熱した反応空間(反応器)中に、噴霧し、固体粒子を形成し、堆積させることによって特徴づけられる。<200℃の高温ガス温度を用いた噴霧乾燥とは対照的に、用いた出発物質(例えば塩)の熱的分解および物質(例えば酸化物、混合酸化物)の再生成が、溶媒の蒸発に加えて、噴霧熱分解において高温プロセスとしてさらに起こる。
上述の6種の方法の変形は、WO2007/144060 (Merck)に詳細に記載されており、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。
【0036】
上述の熱的後処理において、か焼を、少なくとも部分的に、還元条件下で(例えば一酸化炭素、フォーミングガス、純粋な水素または少なくとも減圧もしくは酸素欠乏雰囲気を用いて)行うのが、好ましい。
上述の方法によって、蛍光体粒子のすべての所望の外形、例えば球状粒子、薄片または構造化された材料およびセラミックスを製造するのが可能になる。
【0037】
他の好ましい態様として、薄片形態の蛍光体を、対応する金属および/または希土類塩から慣用のプロセスによって調製する。調製プロセスは、EP 763573およびWO2008/058620に詳細に記載されており、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。これらの薄片形態の蛍光体は、例えば極めて大きいアスペクト比、原子的に平滑な表面および調整可能な厚さを有する雲母薄片、SiO薄片、Al薄片、ZrO薄片、ガラス薄片またはTiO薄片の天然の、または合成的に生成した、高度に安定な担体または支持体を、蛍光体層で、水分散体または懸濁液中で沈殿反応によって被覆することによって、調製することができる。
【0038】
雲母、ZrO、SiO、Al、ガラスもしくはTiOまたはそれらの混合物に加えて、薄片はまた、蛍光体材料自体からなるか、または材料から構築され得る。薄片自体が単に、蛍光体コーティングのための担体としての役割を果たす場合には、後者は、LEDからの一次放射線に対して透明であるか、または一次放射線を吸収し、このエネルギーを蛍光体層に伝達する材料からならなければならない。薄片形態の蛍光体を、樹脂(例えばシリコーンまたはエポキシ樹脂)中に分散させ、この分散体を、LEDチップに適用する。
【0039】
薄片形態の蛍光体を、工業的大規模に、50nm〜約20μm、好ましくは150nm〜5μmの厚さにおいて調製することができる。ここでの直径は、50nm〜20μmである。
これらは一般的に、1:1〜400:1、特に3:1〜100:1のアスペクト比(直径対粒子の厚さの比)を有する。
【0040】
薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。薄片はまた、特にそれらが特に小さい寸法を有する場合には、変換層内の散乱の中心として適する。
LEDチップに面する本発明の薄片形態の蛍光体の表面に、LEDチップによって発せられた一次放射線に関する反射低減作用を有するコーティングを設けることができる。この結果、一次放射線の後方散乱の低減がもたらされ、本発明の蛍光体素子中への後者の結合が促進される。
【0041】
この目的のために適するのは、例えば、以下の厚さd:d=[LEDチップからの一次放射線の波長/(4*蛍光体セラミックスの屈折率)]を有しなければならない、屈折率を整合させたコーティングである。例えばGerthsen, Physik [Physics], Springer Verlag, 第18版、1995を参照。このコーティングはまた、フォトニック結晶からなっていてもよく、それはまた、特定の機能を達成するために薄片形態の蛍光体の表面を構造化することを包含する。
【0042】
セラミックス素子の形態の本発明の蛍光体の調製は、WO 2008/017353 (Merck)に記載されているプロセスと同様にして行われ、それは、その全範囲において本出願の文脈に参考文献の形態によって組み込まれる。ここでの蛍光体は、対応する出発物質およびドーパントを混合することによって、湿式化学的方法によって調製され、その後アイソスタティックに圧縮されて、均一であり、薄く、かつ無孔の薄片の形態でチップの表面に直接適用される。励起および蛍光体の発光の位置依存の変化は、したがって発生せず、それを用いて提供されたLEDが恒常的な色の均一な光円錐を発して高い発光力を有することをもたらす。
【0043】
セラミックス蛍光体素子を、工業的大規模で、例えば数100nm〜約500μmの厚さにおける薄片として製造することができる。薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。チップに直接適用する場合において、薄片の寸法を、好適なチップ配置(例えばフリップチップ配置)の場合においてチップ表面の約10%〜30%の特定の過剰な寸法を有するチップの寸法(約100μm*100μm〜数mm)に従って、または相応に選択しなければならない。蛍光体薄片を完成したLEDの最上部上に設置する場合には、発せられた光円錐のすべては、薄片に達する。
【0044】
セラミックス蛍光体要素の側面を、軽金属または貴金属、好ましくはアルミニウムまたは銀で金属化することができる。金属化は、光が蛍光体要素から横方向に出ないという効果を有する。横方向に出る光は、LEDから分離する光束を低減し得る。セラミックス蛍光体要素の金属化を、棒または薄片を得るアイソスタティックに圧縮した後のプロセス段階において行ない、ここで、所望により、棒または薄片を、金属化の前に必要な大きさに切断することができる。このために、側面を、例えば硝酸銀およびグルコースの溶液で湿潤させ、その後アンモニア雰囲気に高温にて曝露する。この操作の間、銀コーティングが、例えば側面上で形成する。
【0045】
あるいはまた、無電解金属化処理が好適である。例えば、Hollemann-Wiberg, Lehrbuch der anorganischen Chemie [Textbook of Inorganic Chemistry], Walter de Gruyter VerlagまたはUllmanns Enzyklopaedie der chemischen Technologie [Ullmann’s Encyclopaedia of Chemical Technology]を参照。
セラミックス蛍光体要素を、必要に応じて、LEDチップの支持体に、水ガラス溶液を用いて固定することができる。
【0046】
他の態様において、セラミックス蛍光体要素は、LEDチップの反対の側上に構造化された(例えばピラミッド形の)表面を有する。これによって、可能な限り多くの光が蛍光体要素から分離するのが可能になる。蛍光体要素上の構造化された表面は、構造化されたプレスプレートを有する型を用いてアイソスタティック圧縮を行い、したがって構造を表面中にエンボス加工することによって、作成される。構造化された表面は、目的が最も薄い可能な蛍光体要素または薄片を製造することにある場合に所望される。圧縮条件は、当業者に知られている(J. Kriegsmann, Technische keramische Werkstoffe [Industrial Ceramic Materials], 第4章、Deutscher Wirtschaftsdienst, 1998を参照)。用いる圧縮温度が圧縮されるべき物質の融点の2/3〜5/6であるのが、重要である。
【0047】
さらに、本発明の蛍光体は、約410nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nmに及ぶ広範囲にわたり励起することができる。したがって、これらの蛍光体は、UVまたは青色発光一次光源、例えばLED、または慣用の放電ランプ(例えばHgをベースとする)による励起に適するのみならず、451nmにおける青色In3+線を利用するもののような光源にも適する。
【0048】
本発明はさらに、少なくとも1つの一次光源を有する照明単位であって、発光極大が、410nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nm、特に好ましくは440〜480nmの範囲内にあり、ここで一次放射線の全部または一部が、本発明の蛍光体によって、より長い波長の放射線に変換される、前記照明単位に関する。この照明単位は、好ましくは白色光を発するか、または特定のカラーポイントを有する光を発する(カラーオンデマンド原理)。本発明の照明単位の好ましい態様を、図9〜20に図示する。
【0049】
本発明の照明単位の好ましい態様において、光源は、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦kであり、i+j+k=1である、発光性窒化インジウムアルミニウムガリウムである。
このタイプの光源の可能な形態は、当業者に知られている。それらは、種々の構造を有する発光LEDチップであり得る。
【0050】
本発明の照明単位の他の好ましい態様において、光源は、ZnO、TCO(透明な導電性酸化物)、ZnSeもしくはSiCをベースとする発光配置、または有機発光層(OLED)をベースとする配置である。
本発明の照明単位の他の好ましい態様において、光源は、エレクトロルミネセンスおよび/またはフォトルミネセンスを示す源である。光源はさらにまた、プラズマ源または放電源であり得る。
【0051】
本発明の蛍光体は、樹脂(例えばエポキシもしくはシリコーン樹脂)中に分散するか、または好適な大きさの比率の場合には、一次光源上に直接配置されるか、または用途に依存して、そこから離れて配置されることができる(後者の配置はまた、「遠隔蛍光体技術」を含む)。遠隔蛍光体技術の利点は、当業者に知られており、例えば以下の刊行物中で公開されている:Japanese Journ. of Appl. Phys. Vol. 44, No. 21 (2005). L649-L651。
【0052】
他の態様において、蛍光体と一次光源との間の照明単位の光結合を、光伝導配置によって達成するのが好ましい。これによって、一次光源を中央の位置に設置し、蛍光体に光伝導性デバイス、例えば光伝導性繊維などによって光学的に結合させることが可能になる。このようにして、光スクリーンを形成するために配置され得る、照明の要請に適合し、単に1種または種々の蛍光体からなるランプ、および一次光源に結合する光伝導体を、達成することができる。このようにして、強力な一次光源を、電気的設置に好ましい位置に位置させ、光伝導体に結合した蛍光体を含むランプを、さらなる電気的配線を伴わずにしかし代わりに単に光伝導体を取り付けることによって、任意の所望の位置に設置することが、可能である。
【0053】
本発明はさらに、本発明の蛍光体の、発光ダイオードからの青色または近紫外線発光の部分的な、または完全な変換のための使用に関する。
本発明の蛍光体を、さらに好ましくは、青色または近紫外線発光を可視白色放射線に変換するために用いる。本発明の蛍光体を、さらに好ましくは、一次放射線を特定のカラーポイントに「カラーオンデマンド」概念によって変換するために用いる。
【0054】
本発明はさらに、本発明の蛍光体の、例えば硫化亜鉛またはMn2+、CuもしくはAgでドープされた硫化亜鉛がエミッタとして用いられ、黄緑色領域において発光するエレクトロルミネセント材料、例えばエレクトロルミネセントフィルム(発光フィルムまたは光フィルムとしても知られている)などにおける使用に関する。エレクトロルミネセントフィルムの適用の領域は、例えば広告、液晶ディスプレイスクリーン(LCディスプレイ)および薄膜トランジスタ(TFT)ディスプレイにおける表示背面照明、自己照射車両ナンバープレート、床の画像(圧壊耐性の、および滑り耐性の積層体と組み合わせて)、例えば自動車、列車、船舶および航空機における表示および/または制御要素において、またはまた屋内電気器具、庭設備、測定機器もしくはスポーツおよびレジャー設備においてである。
【0055】
以下の例は、本発明を例示することを意図する。しかし、それらを、いかなる方法においても限定的であると見なすべきではない。組成物において用いることができるすべての化合物または構成成分は、知られており、商業的に入手できるか、または既知の方法によって合成することができる。例において示す温度を、常に℃で示す。さらに、記載において、およびまた例において、組成物中の構成成分の添加量は常に、合計100%まで加えられることは、言うまでもない。示した百分率データは、常に示した関連性において考慮されるべきである。しかし、それらは通常常に、示した部分的量または合計量の重量に関する。
【0056】

例1a:組成(Y,Lu)AlMgSi12:Ceで表されるオレンジ色発光蛍光体の調製
出発物質4.4728gのY、15.5193gのLu、2.1207gのAl、0.4130gのCeO、8.0094gのMgCOおよび4.9067gのSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0057】
例1b:組成(Y,Lu,Sb)AlMgSi12:Ceで表され、式中Lu:Sb=92:8である、オレンジ色発光Sb同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.2778g(36mmol)のLu、0.9108g(3mmol)のSb、2.1207g(21mmol)のAl、0.4130g(2mmol)のCeO、8.0094g(95mmol)のMgCOおよび4.9067g(82mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0058】
例1c:組成(Y,Lu,Th)AlMgSi12:Ceで表され、式中Lu:Th=92:8である、オレンジ色発光Th同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.2778g(36mmol)のLu、1.5840g(6mmol)のThO、2.1207g(21mmol)のAl、0.4130gのCeO、8.0094g(95mmol)のMgCOおよび4.9067g(82mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0059】
例1d:組成(Y,Lu,Se)AlMgSi12:Ceで表され、式中Lu:Se=92:8である、オレンジ色発光Se同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.2778g(36mmol)のLu、0.6480g(6mmol)のSeO、2.1207g(21mmol)のAl、0.4130gのCeO、8.0094g(95mmol)のMgCOおよび4.9067g(82mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0060】
例1e:組成(Y,Lu,Ir)AlMgSi12:Ceで表され、式中Lu:Ir=92:8である、オレンジ色発光Ir同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.2778g(36mmol)のLu、1.2690g(3mmol)のIr、2.1207g(21mmol)のAl、0.4130gのCeO、8.0094g(95mmol)のMgCOおよび4.9067g(82mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0061】
例2a:組成(Y,Lu)AlMgSiO12:Ceで表されるオレンジ色発光蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、15.5193g(39mmol)のLu、6.3623g(62mmol)のAl、0.4130g(2mmol)のCeO、4.0471g(48mmol)のMgCOおよび2.4039g(40mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0062】
例2b:組成(Y,Lu,Th)AlMgSiO12:Ceで表され、式中Lu:Th=92:8であるオレンジ色発光Th同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.280g(36mmol)のLu、0.8237g(3mmol)のThO、6.3623g(62mmol)のAl、0.4130g(2mmol)のCeO、4.0471g(48mmol)のMgCOおよび2.4039g(40mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0063】
例2c:組成(Y,Lu,Se)AlMgSiO12:Ceで表され、式中Lu:Se=92:8であるオレンジ色発光Se同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.280g(36mmol)のLu、0.3241g(3mmol)のSeO、6.3623g(62mmol)のAl、0.4130g(2mmol)のCeO、4.0471g(48mmol)のMgCOおよび2.4039g(40mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0064】
例2d:組成(Y,Lu,Ir)AlMgSiO12:Ceで表され、式中Lu:Ir=92:8であるオレンジ色発光Ir同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.280g(36mmol)のLu、0.648g(1.5mmol)のIr、6.3623g(62mmol)のAl、0.4130g(2mmol)のCeO、4.0471g(48mmol)のMgCOおよび2.4039g(40mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0065】
例2e:組成(Y,Lu,Sb)AlMgSiO12:Ceで表され、式中Lu:Sb=92:8であるオレンジ色発光Sb同時ドープ蛍光体の調製
出発物質4.4728g(20mmol)のY、14.280g(36mmol)のLu、0.4382g(1.5mmol)のSb、6.3623g(62mmol)のAl、0.4130g(2mmol)のCeO、4.0471g(48mmol)のMgCOおよび2.4039g(40mmol)のSiOを、50mlのエタノール中で45分間粉砕する。得られたペーストを、次に乾燥キャビネット中で乾燥し、コランダムるつぼ中に配置する。ペーストを、その後1500℃にてCOの下で8時間焼結し、得られた焼結ケークを、めのう乳鉢中で粉末状にし、最後に粉末を、36μmふるいを通してふるい分けする。
【0066】
図面の説明
本発明を、多数の作業例を参照して以下にさらに詳細に説明する。図面は、以下のことを示す:
図1は、(Y,Lu)AlMgSi12:Ce,X(式中X=Th、Ir、Sb、Se)のX線粉末回折パターン、Cu Kα放射線を示す。
図2は、(Y0.99Lu1.95Ce0.66AlMgSi12の励起スペクトル(1)、発光スペクトル(2)および反射スペクトル(3)を示す。
図3は、作業例1a〜1eからの本発明の蛍光体の発光スペクトルを示す。ここで、同時ドーピング(スペクトルb、c、dおよびe)が同時ドープされていない蛍光体と比較して、輝度(発光強度)を増大させることが、明らかである。
【0067】
図4は、発光ピーク極大の改善された図示のための、図3からの詳細な拡大を示す。
図5は、X=Th、Ir、SeまたはSbである(Y,Lu)AlMgSiO12:Ce,XのX線粉末回折パターン(Cu Kα放射線)を示す。
図6は、(Y,Lu)AlMgSiO12:Ceの励起スペクトル(2)、発光スペクトル(3)および反射スペクトル(1)を示す。
図7は、作業例2a〜eからの本発明の蛍光体の発光スペクトルを示す。同時ドープされた蛍光体(b〜e)の同時ドープされていない蛍光体(a)と比較してのより大きい輝度が、明らかである。
【0068】
図8は、ピーク極大をより良好に区別するための、図7からの詳細な拡大を示す。
【0069】
図9は、蛍光体含有コーティングを有する発光ダイオードの描図を示す。当該素子は、チップ状LED1を放射線源として含む。LEDは、調整フレーム2によって保持されるカップ形状の反射体上に搭載されている。チップ1は、平坦なケーブル7を介して第1の接点6に、および直接第2の電気的接点6’に接続されている。本発明の変換蛍光体を含むコーティングは、反射体カップの内部の湾曲に塗布されている。蛍光体は、互いに別個に、または混合物として用いられる。(部分番号のリスト:1 発光ダイオード、2 反射体、3 樹脂、4 変換蛍光体、5 拡散器、6 電極、7 平坦なケーブル)
【0070】
図10は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たす、InGaNタイプのCOB(チップオンボード)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;7=ボード)。蛍光体は、バインダーレンズ中に分布しており、それは同時に、第2の光学素子を表し、レンズとしての光発光特徴に影響する。
【0071】
図11は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たす、InGaNタイプのCOB(チップオンボード)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;7=ボード)。蛍光体は、直接LEDチップ上の薄いバインダー層中に配置されている。透明な材料からなる二次的光学素子を、その上に配置することができる。
【0072】
図12は、白色光のための光源(LED)としての役割を果たすGolden Dragon(登録商標)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=凹部中に反射体を有する変換蛍光体)。変換蛍光体は、バインダー中に分散しており、ここで混合物は、凹部を満たす。
【0073】
図13は、SMDパッケージ(表面実装型パッケージ)を示し、ここで1=ケーシング;2、3=電気的接続;4=変換層である。半導体チップは、本発明の蛍光体で完全に覆われている。SMD設計は、それが小さい物理的形状を有し、したがって慣用のランプに適合するという利点を有する。
【0074】
図14は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで蛍光体は、バインダー中に最上部の球体として塗布されている。蛍光体/バインダー層のこの形態は、二次的光学素子としての役割を果たすことができ、例えば光伝播に影響し得る。
【0075】
図15は、発光ダイオードの描図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで、蛍光体は、バインダー中に分散した薄層として塗布されている。二次的光学素子、例えばレンズとしての役割を果たす他の部品を、この層に容易に適用することができる。
【0076】
図16は、原則的にUS-B 6,700,322からすでに知られている、他の用途の例を示す。本発明の蛍光体は、ここでOLEDと共に用いられる。光源は、存在する有機フィルム30および透明な支持体32からなる有機発光ダイオード31である。フィルム30は、例えばPVK:PBD:クマリン(PVK、ポリ(n−ビニルカルバゾール)の省略形;PBD、2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールの省略形)によって作成された、特に青色の一次光を発する。発光は、本発明の蛍光体の層33から形成する被覆層によって、黄色の二次的に発せられた光に部分的に変換され、したがって白色発光が、一次的に、および二次的に発せられた光の色混合によって全体的に達成される。
【0077】
OLEDは本質的に、自体公知の材料、例えばアノードとしてのITO(酸化インジウムスズの省略形)およびカソードとしての高度に反応性の金属、例えばBaまたはCaからなる2つの電極間の、発光ポリマーまたはいわゆる小分子の少なくとも1つの層からなる。小分子の領域において正孔輸送層としての、またはまた電子輸送層としてのいずれかの役割を果たす複数の層を、またしばしば電極間で用いる。用いる発光ポリマーは、例えばポリフルオレンまたはポリスピロ材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
(Ya,Lub,Sec,Tbd,The,Irf,Sbg)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (I)
式中、
a+b+c+d+e+f+g+h+i=1、
x=0.005〜0.1および
y=0〜4.0
で表される、ガーネット構造を有する蛍光体。
【請求項2】
式Iで表される化合物が、式II〜V:
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Sbc)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (II)
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Thc)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (III)
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Sec)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (IV)
(Y1-a-b-c,Lua,Tbb,Irc)3-x (Al5-yMgy/2Siy/2)O12:Cex (V)
式中、式II〜Vについて
x=0.005〜0.1
y=0〜4.0
a+b+c=1およびa=0〜0.9995;b=0〜0.9995;c=0.0005〜0.1である、
で表される化合物から選択される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物のナノ粒子、ならびに/あるいはCe、Th、Ir、Sbおよび/またはSeの系からのドーパントを有するかまたは有しない式(I)で表される蛍光体組成を有する粒子を担持する粗面を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物からなる、ならびに/あるいは活性剤Ceを有しない式(I)で表される蛍光体組成物からなる連続的表面コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項5】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物からなる、ならびに/あるいはCe、Th、Ir、Sbおよび/またはSeの系からのドーパント有するかまたは有しない式(I)で表される蛍光体組成物からなる多孔性の表面コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項6】
表面が、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、環境への化学的または物理的結合を促進する官能基を担持することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項7】
0〜20重量%のアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばLi、Na、K、Ca、Sr、Baなどおよびハロゲン化物、例えばFまたはClなどを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項8】
アルミニウム、イットリウム、ルテチウム、テルビウム、マグネシウム、ケイ素およびセリウム含有出発物質を少なくとも1種のアンチモン、セレン、イリジウムおよび/またはトリウム含有同時ドーパントと、固体拡散法および以降の熱的後処理によって混合することによって得られ、当該蛍光体が、アルカリもしくはアルカリ土類金属ハロゲン化物またはホウ酸塩化合物の系からのフラックス剤を含んでいてもよいことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項9】
式Iで表されるガーネット構造を有する蛍光体の製造方法であって、以下のプロセス段階:
a)アンチモン、セレン、イリジウムおよび/またはトリウム含有物質で同時ドープされたセリウム活性化蛍光体を、Y、Al、Tb、Ce、Lu、Mgおよび/またはSi含有物質から選択される少なくとも5種の出発物質を混合することによって調製すること、
b)アンチモン、セレン、イリジウムおよび/またはトリウムで同時ドープされた蛍光体を熱的に後処理すること
を有する、前記方法。
【請求項10】
蛍光体の表面を、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物のナノ粒子で、あるいはドーパントを有するかまたは有しない蛍光体組成物のナノ粒子で被覆することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
蛍光体の表面に、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物の、ならびに/あるいは活性剤セリウムを有しない式(I)で表される蛍光体組成物の連続的コーティングを設けることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
蛍光体の表面に、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはその混合酸化物の、あるいはCe、Th、Ir、Sbおよび/またはSeの系からのドーパントを有するかまたは有しない蛍光体組成物の多孔性コーティングを設けることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの一次光源を有する照明単位であって、発光極大が、410nm〜530nm、好ましくは430nm〜500nmの範囲内にあり、ここでこの放射線の全部または一部が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の蛍光体によって、より長い波長の放射線に変換される、前記照明単位。
【請求項14】
光源が、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦kであり、i+j+k=1である、発光性窒化インジウムアルミニウムガリウムであることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項15】
光源が、ZnO、TCO(透明な導電性酸化物)、ZnSeまたはSiCをベースとする発光性化合物であることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項16】
光源が有機発光層をベースとする材料であることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項17】
光源がエレクトロルミネセンスおよび/またはフォトルミネセンスを示す源であることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項18】
光源がプラズマまたは放電ランプであることを特徴とする、請求項13に記載の照明単位。
【請求項19】
蛍光体が一次光源上に直接、および/またはそこから離れて配置されていることを特徴とする、請求項13〜18のいずれか一項に記載の照明単位。
【請求項20】
蛍光体と一次光源との間の光結合が、光伝導配置によって達成されることを特徴とする、請求項13〜18のいずれか一項に記載の照明単位。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の式Iで表される少なくとも1種の蛍光体の、発光ダイオードからの青色または近紫外線発光の全部または一部を変換するための変換蛍光体としての使用。
【請求項22】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の式Iで表される少なくとも1種の蛍光体の、一次放射線を特定のカラーポイントに、カラーオンデマンド概念によって変換するための変換蛍光体としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−505269(P2012−505269A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530381(P2011−530381)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006356
【国際公開番号】WO2010/043287
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】