説明

{F−19}標識L−グルタミン酸及びL−グルタミン誘導体(III)、それらの使用並びにそれらを得る方法

本発明は、フッ素原子が19Fであるフッ素化されたグルタミン酸(グルタメート)及びグルタミン誘導体に関する。このグルタミン酸(グルタメート)及びグルタミン誘導体は一般式Iの1又は複数の化合物であり、全ての可能なジアステレオマー及び/又は鏡像体誘導体又はそれらの混合物を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化されたグルタミン酸(グルタメート)及びグルタミン誘導体であってフッ素原子が19Fである誘導体に関する。グルタミン酸(グルタメート)及びグルタミン誘導体は一般式Iにより示される(1又は複数の)化合物であり、それには全ての可能なジアステレオマー及び/又は鏡像体の誘導体又はそれらの混合物が包含される。本発明の化合物は、グルタミン異化に関連する疾病の治療に有用であり、更に本発明は、フッ素−19核磁気共鳴画像診断法(19F MRI)に有用であり、且つ各々の〔F−18〕誘導体の同定のための参照化合物として有用である改良された画像診断剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
グルタメートは細胞代謝において鍵となる分子である。ヒトでは、食事のタンパク質はアミノ酸への消化により分解されて、それが体内での他の機能的役割のための代謝の燃料として働く。アミノ酸消化の重要な過程はアミノ基転位であり、そこではアミノ酸のアミノ基が典型的にはトランスアミナーゼにより触媒されてα−ケト酸に転位される。グルタミンは以下のものをはじめとする様々な生化学的機能を有する:
【0003】
DNA合成のための基質、
タンパク質合成における重要な役割、
腸細胞(小腸の内側に沿って存在する細胞)の燃料の主要な入手源、
免疫細胞を急速に分解し、それによって免疫機能に役立つ前駆体、
アンモニアを合成することによる腎臓での酸−塩基平衡の調節。
【0004】
http://en.wikipedia.org/wiki/Glutamine 及びDaniel Larraya他、Nutrients Department. 2002 11月−12月、“Glutamine; This amino acid promises much - for mind, muscle and imunity. Can taking glutamine really help you ?”を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Medina他(Molecular and Cellular Biochemistry 113:1-15, 1992)は、グルタミン類似体であるL−グルタミン酸ガンマ−モノヒドロキサメートに関し、それらが培養物での腫瘍細胞に対して、及び白血病とB16黒色腫に対して「生体内で」高い毒性を有すると証明した。Medina他は、グルタミナーゼが治療用途に使用できること、又は腫瘍細胞によるグルタミン輸送の選択的阻害が腫瘍増殖の減少に使用できる可能性のあることを示唆している。腫瘍や癌といった増殖性疾患の治療に係わる別のグルタミン類似体が明らかに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本発明の化合物がMRI画像診断に並びに治療用途に有用であることが発見された。
【0007】
本発明は、19Fが取り込まれているフッ素化されたグルタミン酸(グルタメート)及びグルタミン誘導体に関する。本発明の化合物は、MRI画像診断と増殖性疾患の治療に有用である。本発明の化合物を含んで成る組成物も開示される。
【0008】
本発明は、新規のフッ素化されたグルタミン酸(グルタメート)及びグルタミン誘導体を含んで成るキットにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第一の観点では、本発明は一般式Iにより示される1又は複数の化合物:
【0010】
【化1】

【0011】
〔ここで
Aは
a) ヒドロキシル、
b) 分枝状もしくは非分枝状(直鎖状)C1〜C5アルコキシ、
c) 分枝状もしくは非分枝状ヒドロキシC1〜C5アルコキシ、
d) 分枝状もしくは非分枝状O−C1〜C5アルキル−(O−C1〜C4アルキル)n−O−C1〜C4アルキル、
e) N(C1〜C5アルキル)2
f) NH2
g) N(H)−L、
h) O−L、又は
i) O−Z
であり、
【0012】
Gは
a) ヒドロキシル、
b) O−Z、
b) 分枝状もしくは非分枝状O−C1〜C5アルキル、
c) 分枝状もしくは非分枝状O−C2〜C5アルケニル、
d) 分枝状もしくは非分枝状O−C1〜C5アルキル−(O−C1〜C4アルキル)n−O−C1〜C4アルキル、又は
e) 分枝状もしくは非分枝状O−C2〜C5アルキニル
であり、
【0013】
そしてR1及び/又はR2は互いに独立に、
a) 水素、
b) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C10アルコキシ、
c) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C10アルキル、
d) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C10アルケニル、
e) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C10アルキニル、
f) 置換もしくは非置換19F−C6〜C10単環式もしくは二環式アリール、
g) 置換もしくは非置換19F−アルキル−C6〜C10単環式もしくは二環式アリール、
h) 置換もしくは非置換19F−C5〜C10単環式もしくは二環式ヘテロアリール、
i) 置換もしくは非置換19F−アルキル−C5〜C10単環式もしくは二環式ヘテロアリール、
j) 置換もしくは非置換19F−C3〜C6シクロアルキル、
k) 置換もしくは非置換19F−アルキル−C3〜C6シクロアルキル、
l) ヒドロキシル、
m) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル、又は
n) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルコキシ
であり、ここでアルキルは随意にO,SもしくはNにより中断されているか又は置き換えられており、
ただし置換基R1又はR2のうちの一方は19F原子を含みそして他方は19F原子を1つも含まず、
【0014】
Lは
a) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル、
b) 分枝状もしくは非分枝状C2〜C5アルケニル、
c) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル−(O−C1〜C4アルキル)n−O−C1〜C4アルキル、又は
d) 分枝状もしくは非分枝状C2〜C5アルキニル
であり、
【0015】
Zは金属イオン等価体であり、
nは0,1,2又は3である〕並びに
医薬上許容されるそれの塩、ジアステレオマー及び鏡像体に向けられる。
【0016】
7.4の生理学的pHでは、本発明の式(I)の化合物は両性イオン及び/又は塩の形であるか又はその可能性があることは、当業者に周知である。
【0017】
式Iの化合物の好ましい態様では、Aはヒドロキシル、分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルコキシ又はNH2である。
より好ましい態様では、Aはエトキシである。
【0018】
式Iの化合物の好ましい態様では、Gはヒドロキシル又は分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルコキシである。
より好ましい態様では、Gはメトキシである。
【0019】
式Iの化合物の好ましい態様では、R1及び/又はR2は互いに独立に、
a) 水素、
b) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C10アルコキシ、
c) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C10アルキル、
d) 分枝状もしくは非分枝状19F−C3〜C10アルケニル、
e) 分枝状もしくは非分枝状19F−C3〜C10アルキニル、
f) 置換もしくは非置換19F−C6〜C10単環式もしくは二環式アリール、
g) 置換もしくは非置換19F−C5〜C10単環式もしくは二環式ヘテロアリール、
h) 置換もしくは非置換19F−C3〜C6シクロアルキル、
i) ヒドロキシル、
j) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル、又は
k) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルコキシ
であり、
ただし置換基R1又はR2のうちの一方は19F原子を含みそして他方は19F原子を1つも含まない。
【0020】
式Iの化合物の好ましい態様では、R1又はR2
a) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C10アルコキシ、
a) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C10アルキル、
b) 分枝状もしくは非分枝状19F−C3〜C10アルケニル、
c) 分枝状もしくは非分枝状19F−C3〜C10アルキニル
である。
【0021】
式Iの化合物の好ましい態様では、R1又はR2
a) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C5アルコキシ、より好ましくは19F−C3アルコキシ、
b) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C5アルキル、より好ましくは19F−C3アルキル、
c) 分枝状もしくは非分枝状19F−C3〜C5アルケニル、より好ましくは19F−C3アルケニル、又は
d) 分枝状もしくは非分枝状19F−C3〜C5アルキニル、より好ましくは19F−C3アルキニル
である。
【0022】
式Iの化合物のより好ましい態様では、R1又はR2
a) 分枝状もしくは非分枝状19F−C6〜C10アルコキシ、より好ましくは19F−C6アルコキシ、
b) 分枝状もしくは非分枝状19F−C6〜C10アルキル、より好ましくは19F−C6アルキル、
c) 分枝状もしくは非分枝状19F−C6〜C10アルケニル、より好ましくは19F−C6アルケニル、又は
d) 分枝状もしくは非分枝状19F−C6〜C10アルキニル、より好ましくは19F−C6アルキニル
である。
【0023】
式Iの化合物の更に好ましい態様では、R1又はR2
a) 置換もしくは非置換19F−C6〜C12単環式もしくは二環式アリール、
b) 置換もしくは非置換19F−C5〜C12単環式もしくは二環式ヘテロアリール、又は
c) 置換もしくは非置換19F−C3〜C6シクロアルキル
である。
【0024】
該化合物の更に好ましい態様では、R119FでありそしてR2が水素である。
【0025】
好ましい態様では、ZがMg2+、Ca2+、Na+及びK+から選択される。
更に好ましい態様では、ZがNa+である。
【0026】
好ましい態様では、n=0、1又は2である。
更に好ましい態様では、n=0又は1である。
【0027】
本発明の化合物はD−又はL−グルタミン酸/グルタミンの誘導体(C2位)であり、そしてC4位がR−又はS−配置を有する。
好ましい態様では、式Iの化合物はL−グルタミン酸/グルタミンの誘導体であり、そしてC4位がS配置を有する。
【0028】
この群のうち、化合物のより好ましい亜群は次のものから選択される:
【0029】
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0030】
式Iの化合物の好ましい態様では、次の化合物が除外される:
4−〔F−19〕フルオロ−グルタメート
4−〔F−19〕フルオロエトキシ−グルタメート、
4−〔F−19〕フルオロプロピル−グルタメート、及び
4−〔F−19〕フルオロブチル−グルタメート。
【0031】
第二の観点では、本発明は、一般式Iにより示される1もしくは複数の化合物と医薬上許容される担体に向けられる。
【0032】
第三の観点では、本発明は、式Iの非フッ素化化合物をフッ素と又はフッ素含有成分と反応させることにより式Iの化合物を得る方法に向けられる。
【0033】
第四の観点では、本発明は薬剤として使用される式Iの化合物に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸と非置換L−グルタメートの細胞毒性の比較。Alamar Blue製造業者のプロトコルに従って、A549細胞を試験化合物と共にインキュベートし調査した。
【0035】
【図2】A549細胞における(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸の細胞毒性能の用量依存性。
【0036】
好ましい態様では、増殖性疾患の阻害剤として使用される薬剤の製造のための式Iの化合物の使用に関する。好ましくは、増殖性疾患は転移又は腫瘍により特徴付けられる。
【0037】
より好ましくは、増殖性疾患が悪性リンパ腫、食道癌、肺癌、肝癌、膀胱癌腫、直腸癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍及び悪性黒色腫から選択された悪性腫瘍を発生する疾患である。
更に式Iの化合物は、経口、非経口、直腸内又は局所的に投与することができる。
更に好ましい態様では、薬剤は増殖性疾患の進行を治療し、予防し、又は軽減させるためである。
【0038】
好ましい態様では、本発明は、増殖性疾患の治療方法であって、治療を必要とする個体に、上記で定義した式Iの化合物の治療有効量を投与することを含んで成る方法に関する。
【0039】
第五の観点では、本発明は画像診断剤として使用される式Iの化合物に向けられる。
好ましい態様では、本発明は、増殖性疾患を画像診断するための画像診断剤の製造のための式Iの化合物の使用に関する。
【0040】
好ましくは、増殖性疾患は転移又は腫瘍により特徴づけられる。
より好ましくは、増殖性疾患が悪性リンパ腫、食道癌、肺癌、肝癌、膀胱癌腫、直腸癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍及び悪性黒色腫から選択された悪性腫瘍を発生する疾患である。
【0041】
更に式Iの化合物は、経口、非経口、直腸内又は局所的に投与することができる。
【0042】
より好ましい態様では、画像診断剤が核磁気共鳴画像診断(MRI)剤である。
より好ましい態様では、本発明は、増殖性疾患、より好ましくは転移癌と腫瘍の画像診断方法であって、それを必要とする個体に、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含んで成る方法に関する。
【0043】
第六の観点では、F−18−PET−トレーサーの同定のための上記で定義した式Iの化合物の使用に向けられる。式Iの化合物は新規F−18−PET−トレーサーを同定するための競争剤(competition agent)として有用である。
実施例
【0044】
異なって定義されない限り、ここで使用する全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。ここに記載のものと類似の又は同等のいずれの方法と材料でも本発明の実施や試験において使用できるけれども、より好ましい方法と材料が下記に記載される。以下の概略例は式Iによる化合物の調整に関する。下記に与えられる実施例は、ここに例示される方法に本発明を限定するものであると解釈してはならない。
定義
【0045】
本明細書中で使用される「治療有効量」という用語は、それを必要とする個体に投与した時、下記に定義される通り、転移癌の治療を果たすのに十分である本発明の化合物の量を言う。「治療有効量」を構成する量は、化合物、疾病及びそれの重症度、並びに治療すべきヒトの年齢に依存して異なるであろうが、いずれかの当業者自身の知識と本開示に関連を有する当業者により日常的に決定することができる。
【0046】
本明細書中で使用する「治療する」又は「治療」とは、増殖性疾患の治療を言い、次のものを含む:
(i) 個体、特に事前の手術又は薬剤治療の後に更なる薬剤治療を必要とする時に、そのような個体を疾病の再発から予防すること、
(ii) 疾病を阻害すること、即ちそれの発達を抑制すること、又は
(iii) 疾病を軽減すること、即ち疾病の退行を引き起こすこと。
【0047】
本明細書中で使用する「アルキル」という用語は、C1〜C10直鎖状又は分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、ヘプチル又はデシルを指して言う。アルキル基はペルフルオロ化(過フッ素化)されるか又はハロゲン、ヒドロキシル、C1〜C4アルコキシ及びC6〜C12アリール(1〜3個のハロゲン原子により置換されてもよい)から成る群より選択された1〜5個の置換基により置換されてもよい。より好ましくは、アルキルはC1〜C5又はC5〜C10アルキルである。
アルキルがO、S又はNにより中断される場合、アルキルはC1〜C20直鎖状又は分枝状アルキル基である。
【0048】
本明細書中で用いる「アルケニル」という語は、直鎖状もしくは分枝鎖状の一価又は二価の基であり、少なくとも1つの二重結合を含有し、且つ2〜10個の炭素原子を有する基、例えばエテニル、プロパ−2−エン−1−イル、ブタ−1−エニル、ペンタ−1−エニル、ペンタ−1,4−ジエニル等を指して言う。
【0049】
本明細書中で用いる「アルキニル」という語は、置換されたもしくは非置換の直鎖状もしくは分枝鎖状の一価又は二価の基であり、少なくとも1つの三重結合を含み、且つ2〜10個の炭素原子を有する基、例えばエチニル、プロパ−1−イニル、ブタ−1−イニル、ペンタ−1−イニル、ペンタ−3−イニル等を指して言う。
【0050】
アルケニル基とアルキニル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、−CO2H、−CO2アルキル、−NH2、−NO2、−N3、−CN、C1〜C20アシル及びC1〜C20アシルオキシから成る群より選択された1又は複数の置換基により置換され得る。
【0051】
本明細書中で用いる「アリール」という語は、5〜10個の環原子を含む芳香族炭素環又は複素環成分、例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、ピラゾリル、ピリミジニル、オキサゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル又はチアゾリルを指して言う。アリール基はハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、−CO2H、−CO2アルキル、−NH2、アルキル−NH2、C1〜C20アルキル−チオラニル、−NO2、−N3、−CN、C1〜C20アルキル、C1〜C20アシル及びC1〜C20アシルオキシから成る群より選択された1又は複数の置換基により置換され得る。芳香族特性の損失を引き起こさないのであれば、ヘテロ原子は酸化されてもよく、例えばピリジン成分が酸化されてピリジン−N−オキシドを与えることができる。
【0052】
用語「置換された」を使用するときは常に、この表現の中で指摘された原子上の1又は複数個の水素が、指摘された基からの選択によって置換され、ただし、指摘された原子の原子価を超えず、またこの置換が化学的に安定な化合物、即ち、反応混合物から有用な純度への単離や医薬組成物への製剤化に耐えられるほどに十分に強固である化合物をもたらすことを前提とする。置換基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ、(C1〜C6)カルボニル、シアノ、ニトリル、トリフルオロメチル、(C1〜C6)スルホニル、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ及び(C1〜C6)スルファニルから選択することができる。
【0053】
当業者は、適当であれば、本発明の化合物が7.4の生理的pHで両性イオン及び/又は塩の形であるか又はあり得ることを十分知っている。
【0054】
典型的には、F核磁気共鳴画像診断剤と医薬上許容される担体とを含んで成る画像診断剤製剤の有効量が患者に投与され、そして患者又は患者の一部分が画像診断される。ここで使用される「有効量」という語は、得られたMRI画像を増強又は改善するのに十分な非毒性の量、より具体的には、画像診断する予定の臓器及び/又は組織の一層鮮明な視覚化を可能にする量を表す。
【0055】
好ましくは、患者が哺乳類であり、最も好ましくは患者がヒトである。
【0056】
本発明の19F核磁気共鳴画像診断剤は、任意の適当な経路により様々に投与することができ、例えば上部胃腸管の画像診断には経口的に;結腸を含む下部胃腸管の画像診断には直腸内に;鼻と連絡通路の画像診断には鼻腔内に;ファローピウス管と連絡通路の画像診断には膣内に;内臓、組織、腫瘍等の画像診断には非経口的に(皮下、筋肉内、静脈内、皮内及び肺を含む)等投与することができる。好ましい経路は画像診断する予定の臓器又は組織によって異なることは理解されよう。好ましい投与経路としては非経口と経口、より好ましくは静脈内が挙げられる。
【0057】
画像診断剤を単独で投与することが可能である一方、1又は複数の医薬上許容される担体、例えば希釈剤又は賦形剤、例えば投与の性質と投与形態並びに剤形に依存して充填剤、増量剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤又は滑剤と共に、少なくとも1つの画像診断剤化合物を含んで成る医薬製剤としてそれを提供することが好ましい。各担体は製剤の他の成分と相溶性があり且つ患者に害がないという意味において「許容され」なければならない。医薬製剤は任意に別の診断薬又は治療薬を含むことがある。技術及び製剤化は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences. Mack Publishing Co., Easton, PA (最新版)中に見つけることができる。
【0058】
経口投与に適する本発明の製剤は、水溶液として提供されてもよい。あるいは、各々が予め決められた量の画像診断剤を含有するカプセル、カシェー又は錠剤として;粉末、顆粒又はペーストとして投与することができる。
【0059】
非経口投与に適する製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図する患者の血液と等張にする溶質、を含有してよい水性等張無菌注射液;懸濁化剤と増量剤を含有してもよい水性無菌懸濁液;並びに化合物を1又は複数の組織又は臓器に標的指向せしめるようデザインされたリポソーム又は他の微粒子系が挙げられる。製剤は1回用量又は複数用量の密閉容器、例えばアンプルやバイアルに提供することができ、そして使用直前に無菌液体担体、例えば注射用蒸留水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。無菌の粉剤、粒剤又は錠剤から即時の注射液や懸濁液を調製することもできる。上記に具体的に言及した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の種類に関係する技術分野で常用される他の剤を含んでもよく、例えば、経口投与に適当なものは甘味剤、増粘剤及び矯味矯臭剤のような追加の剤を含んでもよいと理解すべきである。
本発明のF核磁気共鳴画像診断剤は獣医学製剤の形での使用に向けて提供されてもよく、例えば、その技術分野で常用される方法により、調製してもよい。
【0060】
効果的なF−MRIのためには、19F−核磁気共鳴画像診断剤は、スピン密度、流量(拡散とかん流)、画像診断剤の磁化率と緩和能(T1とT2)に依存するだろう。F含有画像診断剤の用量は、便宜上、患者1キログラム当たり19Fのミリグラム(mg F/kgと略記される)として計算される。例えば、非経口投与には、典型的用量は約50〜約1000 mg F/kg、より好ましくは約100〜約500 mg F/kgであろう。
【0061】
連続投与(例えば静脈内)の方法には、適当な投与速度は当業界で既知である。典型的な投与量は1秒あたり約0.5〜5 mL製剤であり、より好ましくは1〜3 mL/sである。画像診断は投与開始前又は後に始めることができ、投与中連続することができ、そして投与後も続行することができる。投与量、投与容積、製剤濃度、投与速度及び画像診断プロトコルは、特定の患者及び求められる実験ごとに個別化され、そして熟練した実施者により決定されるだろう。そのようなパラメーターを選択するためのガイドラインは当業界で既知である(特にKatzberg, 1992, 前掲を参照のこと)。
【0062】
造影剤としての薬用化合物の有用性及び効果は、それらが推定可能で且つ望ましい生体内分布と生体内代謝を示す能力に依存するだろう。生体内でのそれらの挙動は、分子量、電荷、浸透圧、疎水性、分配係数、代謝分解に対する感受性、及び組織又は臓器標的能力といったパラメーターに依存する。それらの溶解性及び/又は生体内分布を改善するために、多くの造影剤は乳剤、リポソーム及び微粒子のような送達システムと組み合わせて使用される。
【実施例】
【0063】
実施例1
(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸
a) (2S,4S)−4−アリル−2−tert−ブトキシカルボニルアミノペンタン二酸ジメチルエステル
【0064】
【化7】

【0065】
11.01 g(40ミリモル)のBoc−グルタミン酸ジメチルエステル(Advanced Chemtech)を160 mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、−70℃に冷却した。THF中1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液 88 mL(88ミリモル)を−70℃にて1時間に渡り滴下添加し、−70℃で更に2時間攪拌した。次いで、14.52 g(120ミリモル)の臭化アリルを2時間に渡り滴下添加し、次いで氷浴を取り外し、200 mLの2N塩酸と400 mLの酢酸エチルを加えた。有機相を分離し、水で中性洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発により量を減らした。粗製物質をヘキサン/酢酸エチルを用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけた。得られた生成物の画分を合わせ、溶媒を蒸発乾固せしめた。
【0066】
収量:3.3 g(26%)
元素分析:
計算値:C 57.13 H 7.99 N 4.44
実測値:C 56.97 H 8.12 N 4.30
【0067】
b) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(3−ヒドロキシプロピル)ペンタン二酸ジメチルエステル
【0068】
【化8】

【0069】
3.15 g (10ミリモル)の生成物1aを50 mLのTHFに溶かし、氷浴中で冷却した。THF中1Mジボラン/THF錯体13.3 mLを、窒素流と氷冷のもとで20分間に渡り滴下添加した。混合物を氷上で1時間、次いで室温で一晩攪拌した。次いで、15 mLの1N水酸化ナトリウムに続いて13.3 mLの30%水性過酸化水素溶液を滴下添加した。反応混合物を30分後に水で希釈し、THFを留去せしめ、水性残留物を酢酸エチルで抽出した。有機相を分離し、水で中性洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、エバポレーター上での蒸発により量を減らした。粗生成物をヘキサン/酢酸エチルの勾配を使ったシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物画分を合わせ、溶媒を蒸発乾固せしめた。
収量:0.6 g(18%)
【0070】
元素分析:
計算値:C 54.04 H 8.16 N 4.20
実測値:C 53.88 H 8.25 N 4.39
【0071】
c) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸ジメチルエステル
【0072】
【化9】

【0073】
0.33 g(1ミリモル)のヒドロキシル化合物1bを15 mLのジクロロメタンに溶かし、氷浴中で冷却した。0.32 g(2ミリモル)の三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)を添加した後、反応混合物を氷浴上で1時間攪拌した。次いで混合物を水で洗浄し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、エバポレーター上での蒸発により量を減らした。粗製物質をヘキサン/酢酸エチルを用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけた。生成物画分を合わせ、溶媒を蒸発乾固せしめた。
収量:25 mg(8%)
【0074】
元素分析:
計算値:C 53.72 H 7.81 F 5.66 N 4.18
実測値:C 53.55 H 7.94 F 5.21 N 4.37
【0075】
d) (2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸
【0076】
【化10】

【0077】
23.5 mg(0.07ミリモル)のフッ化化合物1dを2 mLのTHFに溶かし、1 mLの1N水酸化ナトリウムを補足し、そして室温で4時間攪拌した。続いて、反応混合物の容量を減らして乾固せしめた。残留分を20 mLの3N HCl/ジエチルエーテル中に再溶解し、一晩攪拌し、蒸発により量を減らし、ジエチルエーテルを用いて繰り返し再蒸留した。粗製物質を水/メタノール勾配を用いたC18シリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけた。生成物画分を合わせ、量を減らして蒸発乾固せしめた。
収量:4 mg(27%)
【0078】
元素分析(水を含まない化合物について計算)
計算値:C 46.37 H 6.81 F 9.17 N 6.76
実測値:C 46.11 H 7.02 F 8.87 N 6.93
【0079】
実施例2
(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸の中性ナトリウム塩
a) (2S,4S)−4−アリル−2−tert−ブトキシカルボニルアミノペンタン二酸ジ−tert−ブチルエステル
【0080】
【化11】

【0081】
26.96 g(75ミリモル)のBoc−グルタミン酸ジ−t−ブチルエステル(Journal of Peptide Research (2001), 58, 338)を220 mLのTHFに溶かし、−70℃に冷却した。165 mL(165ミリモル)のTHF中1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液を−70℃で2時間に渡り滴下添加し、−70℃で更に2時間攪拌した。次いで27.22 g (225ミリモル)の臭化アリルを滴下添加し、そして−70℃で2時間後、冷却浴を取り外し、375 mLの2N塩酸と1.25 Lの酢酸エチルを加えた。有機相を分離し、水で中性洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発により量を減らした。得られた粗製物質をシリカゲル上でのヘキサン/酢酸エチルを用いたクロマトグラフィーにかけた。生成物画分を合わせ、溶媒を蒸発乾固せしめた。
収量:15.9 g (53.1%)
【0082】
MS(ESIpos): m/z=400 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, クロロホルム−d)δppm 1.32-1.58 (m,27H), 1.81-1.92 (m,2H), 2.25-2.39 (m,2H), 2.40-2.48 (m,1H), 4.10-4.18 (m,1H), 4.85-4.92 (d,1H),5.02-5.11 (m,2H), 5.68-5.77 (m,1H)。
【0083】
b) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(3−ヒドロキシプロピル)ペンタン二酸ジ−tert−ブチルエステル
【0084】
【化12】

【0085】
15.58 g (39ミリモル)の実施例2aに記載の化合物を200 mLのTHFに溶かし、氷浴中で冷却した。54.6 mL(54.6ミリモル)のTHF中1Mジボラン/THF錯体を窒素流の下で氷冷しながら20分間に渡り滴下添加した。混合物を氷上で2時間攪拌しそして室温で一晩攪拌した。58.5 mL(58.5ミリモル)の1N水酸化ナトリウムに続いて58.5 mLの30%水性過酸化水素溶液を0℃で再び滴下添加した。この温度で1時間後、反応混合物を水で希釈し、THFを留去せしめ、水性残留物を酢酸エチルで抽出した。有機相を分離し、水で中性洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を蒸発乾固せしめた。得られた粗製物質をシリカゲル上でのヘキサン/酢酸エチルを用いたクロマトグラフィーにかけた。生成物画分を合わせ、溶媒を蒸発乾固せしめた。
収量:8.5 g (52.2%)
【0086】
MS(ESIpos): m/z=418 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, クロロホルム−d)δppm 1.32-1.58 (m,27H), 1.60-1.70 (m,2H), 1.73-1.94 (m,4H), 2.05-2.12 (m,1H), 2.33-2.40 (m,1H), 3.58-3.68 (m,2H), 4.15-4.22 (m,1H), 4.95-5.03 (d,1H)。
【0087】
c) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸ジ−t−ブチルエステル
【0088】
【化13】

【0089】
29.22 g(70ミリモル)の実施例2bに記載のヒドロキシル化合物を700 mLのTHFに溶かし、次いで42.5 g(420ミリモル)のトリエチルアミンを添加した。25.14 mL(140ミリモル)のパーフルオロブタンスルホニルフルオリド(Aldrich)と22.57 g(140ミリモル)のトリエチルアミン/フッ化水素(Aldrich)の添加後、反応混合物を室温で65時間攪拌し、蒸発により量を減らし、生じた粗生成物をシリカゲル上でのヘキサン/酢酸エチルを用いるクロマトグラフィーにかけた。生成物画分を合わせ、蒸発により量を減らし乾固せしめた。
収量:15.9 g(54.1%)
【0090】
MS(ESIpos): m/z=420 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, クロロホルム−d)δppm 1.40-1.55 (m,27H), 1.60-1.95 (m,6H), 2.33-2.42 (m,1H), 4.15-4.22 (m,1H), 4.30-4.40 (m,1H), 4.48-4.55 (m,1H), 4.85-4.90 (d,1H)。
【0091】
d) (2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸の中性ナトリウム塩
【0092】
【化14】

【0093】
15.52 g(37ミリモル)の実施例2cに記載の化合物を注意深く110 mLのトリフルオロ酢酸に溶かし(発泡!)そして室温で3日間攪拌した。次いで反応混合物を蒸発乾固せしめ、生じた粗生成物をジエチルエーテルと共に3回再蒸留し、残渣を約200 mLの水に溶かし、20 mLの1N塩酸を用いてpH 2に調整し、次いでジクロロメタンと酢酸エチルを用いて連続的に洗浄し、水性溶液を1N水酸化ナトリウム(約65 mL)でpH 7.4に調整した。その溶液を凍結乾燥し、次いでC18シリカゲル上で水/メタノールを用いてクロマトグラフィー処理し、生じた生成物画分を合わせ、蒸発により量を減らした。
収量:7.5 g(88%)
【0094】
MS(ESIpos): m/z=208 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, メタノール−d)δppm 1.62-1.87 (m,5H), 2.11 (m,1H), 2.47-2.52 (m,1H), 3.45 (m,1H), 4.41 (m,2H)。
【0095】
実施例3
生物学的データ
(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸、(2S,4S)−2−アミノ−4−〔2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンジル〕ペンタン二酸及びL−グルタメートの生物学的効果を、標準AlamarBlue アッセイ(Invitrogen #DAL1025)を使ってA549細胞(ヒト非小細胞肺癌)に対する細胞毒性アッセイにおいて調べた。グルタミンと10%ウシ胎児血清(FCS)が補足されたダルベッコ改良イーグル培地(Sigma D0422)をインキュベーション緩衝液として使用した。細胞を試験化合物と共に48時間インキュベートし、製造業者のプロトコルに従って調査した。
【0096】
対照細胞と2 mMのL−グルタメートと共にインキュベートした細胞は、細胞の生存度に何ら変化を示さなかった。しかしながら、(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸及び(2S,4S)−2−アミノ−4−〔2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンジル〕ペンタン二酸と共にインキュベートした細胞は共に、細胞生存度の大幅な減少を示した。この効果は(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸で最も顕著であった。
【0097】
用量依存性の測定用には、A549細胞を、4μMから2mMまでの範囲で増加する濃度の
(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸と共にインキュベートした。その後、上記に記載した通りにAlamar Blueアッセイキットを用いて細胞生存度を測定した。
【0098】
試験化合物(2S,4S)−2−アミノ−4−(3−フルオロプロピル)ペンタン二酸とのインキュベーションにより用量依存方式で細胞生存度が阻害されるようである。EC50は約38μMである。
【0099】
実施例4
2−アミノ−4−(6−フルオロヘキシル)ペンタン二酸
a) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(6−ヨードヘキシル)ペンタン二酸ジメチルエステル
【0100】
【化15】

【0101】
5.51 g(20ミリモル)のBoc−L−グルタミン酸ジメチルエステル(Advanced Chemtech)を60 mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、−70℃に冷却した。−70℃において44 mL(44ミリモル)のTHF中1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液を1時間に渡り滴下添加し、−70℃で2時間以上攪拌を続けた。次いで20.28 g(60ミリモル)の1,6−ジヨードヘキサンを滴下添加し、そして−70℃で2時間後、冷却浴を取り外し、100 mLの2N塩酸と300 mLの酢酸エチルを添加した。有機相を分離し、水で中性洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を蒸発により濃縮した。生じた粗生成物をシリカゲル上でのヘキサン/酢酸エチルを用いるクロマトグラフィーにかけた。得られた画分を合わせ、蒸発により量を減らした。
収量:0.2 g(2.1%)
【0102】
MS(ESIpos): m/z=486 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, クロロホルム−d)δppm 1.20-1.70 (m,29H), 1.75-2.10 (m,5H), 2.40-2.50 (m,1H), 3.14-3.20 (m,2H), 3.50-3.75 (m,3H), 4.15-4.25 (2H), 4.32-4.42 (m,1H), 5.00-5.10 (d,1H)。
【0103】
b) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(6−フルオロヘキシル)ペンタン二酸ジメチルエステル
【0104】
【化16】

【0105】
1.5 mLの水中の152 mg(1.12ミリモル)のフッ化銀の溶液を、30 mLのアセトン中の0.49 g(1ミリモル)の実施例3aに記載の化合物に添加し、40℃で一晩攪拌した。生じた懸濁液を濾過し、溶液を蒸発乾固せしめ、得られた粗生成物をシリカゲル上でのヘキサン/酢酸エチルを用いるクロマトグラフィーにかけた。得られた画分を合わせ、蒸発により濃縮して量を減らした。
収量:132 mg(35%)
【0106】
MS(ESIpos): m/z=378 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, クロロホルム−d)δppm 1.20-1.70 (m,29H), 1.75-2.10 (m,5H), 2.40-2.50 (m,1H), 3.14-3.20 (m,2H), 3.50-3.75 (m,3H), 4.15-4.25 (2H), 4.32-4.42 (m,1H), 5.00-5.10 (d,1H)。
【0107】
c) (2S,4S)−2−アミノ−4−(6−フルオロヘキシル)ペンタン二酸
【0108】
【化17】

【0109】
26.4 mg(0.07ミリモル)の実施例3bに記載の化合物を2 mLのTHFに溶かし、次いで1mLの1N水酸化ナトリウムの添加後、室温で4時間攪拌した。次いで反応混合物を蒸発乾固せしめ、生じた粗生成物をジメチルエーテル中3N塩化水素約20 mL中に溶かし、一晩攪拌し、蒸発乾固せしめ、ジエチルエーテルを用いて数回再蒸留した。生じた粗生成物をC18シリカゲル上で水/メタノールを用いてクロマトグラフィー処理した。得られた画分を合わせ、蒸発により容量を減らした。
収量:5.8 mg(33%)
MS(ESIpos): m/z=250 [M+H]+
【0110】
実施例5
a) (2S,4S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンジル)ペンタン二酸ジ−tert−ブチルエステル
【0111】
【化18】

【0112】
2.7 g(7.5ミリモル)のBoc−グルタミン酸ジ−tert−ブチルエステル(Journal of Peptide Research (2001), 58, 338)を30 mLのTHFに溶かし、−70℃に冷却した。16.5 mL(16.5ミリモル)のTHF中1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液を−70℃で40分間に渡り添加し、−70℃で更に2時間攪拌した。次いで7mLのTHF中の1.93 g(7.5ミリモル)の2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンジルブロミドを滴下添加し、そして−70℃で2時間後、冷却浴を取り外し、37.5 mLの2N塩酸と100 mLのジクロロメタンを加えた。有機相を分離し、水で中性洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発により量を減らした。得られた粗製物質をシリカゲル上でのヘキサン/酢酸エチルを用いたクロマトグラフィーにかけた。得られた生成物画分を合わせ、溶媒を蒸発乾固せしめた。
収量:2.3 g(57.3%)
【0113】
MS(ESIpos): m/z=536 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, クロロホルム−d)δppm 1.03-1.50 (m,27H), 1.80-2.00 (m,2H), 2.60-3.10 (m,3H), 4.05-4.30 (m,1H), 4.85-4.95 (d,1H), 7.05-7.15 (m,1H), 7.40-7.55 (m,2H)。
【0114】
b) (2S,4S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンジル)ペンタン二酸の中性ナトリウム塩
【0115】
【化19】

【0116】
2.14 g(4ミリモル)の実施例5aに記載の化合物を10 mLのTHFに溶かした。ジエチルエーテル中2N塩酸 50 mLを加え、混合物を室温で2日間攪拌した。次いで反応混合物を蒸発乾固し、得られた粗生成物をジエチルエーテルと共に3回再蒸留し、残渣を約10 mLの水に溶かし、水溶液を1N水酸化ナトリウムでpH 7.4に調整した。この溶液を凍結乾燥し、次いでC18シリカゲル上での水/メタノールを用いたクロマトグラフィーにかけ、得られた画分を合わせ、蒸発により濃縮して量を減らした。
収量:1.25 g(97%)
【0117】
MS(ESIpos): m/z=324 [M+H]+
1H−NMR(300 MHz, D2O)δppm 1.97-2.20 (m,2H), 3.02-3.08 (m,3H), 3.72-3.78 (m,1H), 7.25-7.32 (m,1H), 7.62-7.68 (m,2H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iにより示される化合物
【化1】

〔ここで
Aは
a) ヒドロキシル、
b) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルコキシ、
c) 分枝状もしくは非分枝状ヒドロキシC1〜C5アルコキシ、
d) 分枝状もしくは非分枝状O−C1〜C5アルキル−(O−C1〜C4アルキル)n−O−C1〜C4アルキル、
e) N(C1〜C5アルキル)2
f) NH2
g) N(H)−L、
h) O−L、又は
i) O−Z
であり、
Gは
a) ヒドロキシル、
b) O−Z、
c) 分枝状もしくは非分枝状O−C1〜C5アルキル、
d) 分枝状もしくは非分枝状O−C2〜C5アルケニル、
e) 分枝状もしくは非分枝状O−C1〜C5アルキル−(O−C1〜C4アルキル)n−O−C1〜C4アルキル、又は
f) 分枝状もしくは非分枝状O−C2〜C5アルキニル
であり、
そしてR1及び/又はR2は互いに独立に、
a) 水素、
b) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C10アルコキシ、
c) 分枝状もしくは非分枝状19F−C1〜C10アルキル、
d) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C10アルケニル、
e) 分枝状もしくは非分枝状19F−C2〜C10アルキニル、
f) 置換もしくは非置換19F−C6〜C10単環式もしくは二環式アリール、
g) 置換もしくは非置換19F−アルキル−C6〜C10単環式もしくは二環式アリール、
h) 置換もしくは非置換19F−C5〜C10単環式もしくは二環式ヘテロアリール、
i) 置換もしくは非置換19F−アルキル−C5〜C10単環式もしくは二環式ヘテロアリール、
j) 置換もしくは非置換19F−C3〜C6シクロアルキル、
k) 置換もしくは非置換19F−アルキル−C3〜C6シクロアルキル、
l) ヒドロキシル、
m) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル、又は
n) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルコキシ
であり、ここでアルキルは随意にO,SもしくはNにより中断されているか又は置き換えられており、
ただし置換基R1又はR2のうちの一方は19F原子を含みそして他方は19F原子を1つも含まず、
そしてLは
a) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル、
b) 分枝状もしくは非分枝状C2〜C5アルケニル、
c) 分枝状もしくは非分枝状C1〜C5アルキル−(O−C1〜C4アルキル)n−O−C1〜C4アルキル、
d) 分枝状もしくは非分枝状C2〜C5アルキニル
であり、
そしてZは金属イオン等価体であり、
nの意味は0,1,2又は3であり、
ここで全ての可能なジアステレオマー及び/又は鏡像体の混合物、並びに鏡像体として純粋な化合物及び医薬上許容されるそれの塩を包含する〕。
【請求項2】
119FでありそしてR2が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下式
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

を有する化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
一般式Iの1又は複数の化合物と医薬上許容される担体とを含んで成る医薬組成物。
【請求項5】
式Iの非フッ素化化合物をフッ素原子又はフッ素誘導体と反応させることによる、請求項1に記載の一般式Iの1又は複数の化合物を得る方法。
【請求項6】
薬剤として使用される請求項1〜3に記載の一般式Iの1又は複数の化合物。
【請求項7】
患者における増殖性疾患の阻害剤として使用される薬剤の調製のための、請求項1〜3に記載の一般式Iの1又は複数の化合物の使用。
【請求項8】
前記薬剤が増殖性疾患を治療、予防又は軽減するためである、請求項7の使用。
【請求項9】
増殖性疾患を治療する方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に定義された一般式Iの1又は複数の化合物の治療有効量を、治療の必要な患者に投与することを含んで成る方法。
【請求項10】
前記式Iの化合物が経口、非経口、直腸内又は局所的に投与される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項11】
画像診断剤として使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の一般式Iの1又は複数の化合物。
【請求項12】
患者において増殖性疾患を画像診断するための画像診断剤を製造するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の一般式Iの1又は複数の化合物の使用。
【請求項13】
前記画像診断剤が核磁気共鳴画像診断(MRI)剤である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
増殖性疾患を画像診断する方法であって、それを必要とする個体に、請求項1〜3のいずれか一項に定義された一般式Iの1又は複数の化合物の治療有効量を投与することを含んで成る方法。
【請求項15】
前記式Iの化合物が経口、非経口、直腸内又は局所的に投与される、請求項6〜14のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか一項に定義された一般式Iの1又は複数の化合物を含んで成るキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−520931(P2011−520931A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509883(P2011−509883)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003419
【国際公開番号】WO2009/141090
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】