説明

α−オレフィン重合体変性物及びその架橋体の製造方法

【課題】 ポリオレフィンの結晶性(立体規則性)を制御し、組成が均一で、かつ、高流動性を有し、低温塗工可能なポリオレフィン系組成物、及びその架橋体の製造方法を提供する。
【解決手段】 (i)特定のメタロセン触媒の存在下、炭素数3以上のα−オレフィンを単独重合、または共重合して得られ、(1)メソペンタッド分率(mmmm)が40〜75モル%、もしくは立体規則性の指標M4が75モル%以下、(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の分子量分布が3.0以下、(3)テトラリン溶媒中135℃にて測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0デシリットル/gであるα-オレフィン重合体と、(ii)ラジカル開始剤および(iii)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマー又はシランカップリング剤を反応させることにより得られるα-オレフィン重合体変性物、及びその架橋体の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融温度が低く、低温で塗布できるα-オレフィン重合体変性物及びその架橋体の製造方法に関するものであり、詳しくは、(反応性)ホットメルト接着剤、シーリング剤、樹脂・エラストマー改質剤、ワックスブレンド剤、フィラーブレンド剤、樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、潤滑油成分、蓄熱剤成分、高性能ワックス等に使用されるα-オレフィン重合体変性物及びその架橋体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での環境問題、作業者の作業環境、安全・健康に対する意識が高まりを見せている。かかる状況の中、例えば、ホットメルト接着剤の分野では、従来のホットメルト接着剤は、150℃以上の融点であり、加熱が必要であるので、低温塗工が可能な物質が求められている。ホットメルト接着剤で低温塗工が可能になれば、1)熱に弱い基材に対しても使用できる、2)作業者の作業環境良化、安全・健康の保持が図られる、3)接着剤が熱劣化しにくい、4)粘性変化が少ない等の利点が享受できるようになる、ことなどが期待されている。しかし、ホットメルト接着剤の分野では、低温塗工が可能な樹脂組成物は数少ないのが実情である。
【0003】
ホットメルト接着剤として、例えば、関西ポリマーの「タイフォース」という商品がある。これは、100〜120℃における低温塗工が可能であり、熱に弱い基材への適応が可能であるが、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤であるため、空気中の水分によって架橋させるので3〜5日の養生が必要であり、実用強度に到達するまでの保持時間が長いという欠点を有する。また、デグサ・ヒュルズ社の「Vestoplast」という商品がある。これは、ポリプロピレン系のシラン変性非晶質樹脂組成物であるが、接着性には優れるものの、APP(アクタチックポリプロピレン)を主体としているため、既に溶融している状態であり、低温塗工が不可能な基材である。更に非晶であるため、強度が弱いという欠点がある。このように、低温塗工に好適な樹脂組成物は存在せず、特に100℃未満の低温で塗工できる組成物はこれまで知られていない。環境に配慮する立場を重んじると、ポリオレフィン系で低温塗工可能な組成物が最も望ましい。
【0004】
また、ホットメルト接着剤などの用途には、これまでエチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、若しくはスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などが使用され、反応性ホットメルトにはポリエーテルポリオールなどが使用されており、近年、ポリオレフィン系材料への接着性に対する要求が増加している。しかしながら、上記材料はポリオレフィンへの接着性が劣っており、加熱安定性が低いために、塗布する時に高温にすると同材料が分解し、ガスが発生するなどの不具合があった。また、従来のポリオレフィンに反応性基を付与した材料も存在するが、これらの材料はポリオレフィンの結晶性が高いため、溶融温度が高く、低温塗布に向かないなどの不具合があった。
【0005】
一方、α−オレフィンの重合に関する検討は、主にチーグラーナッタ系触媒を用いて検討されている(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3参照)。しかしながら,これらの文献において得られるα-オレフィン重合体は、分子量が低い場合や、規則性が高いために融点が高く、又、融点が2つあるなど不均一であることが示されている。
【0006】
また、メタロセン系触媒と呼ばれる均一系触媒により高級α-オレフィン重合体が得られることが記載されている(例えば、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6及び非特許文献7参照)。しかしながら、不均一系触媒により得られた重合体と同様に、分子量が十分高いと言えなかったり、規則性が高いために融点が高く、又、融点が2つあるなど、不均一であることが示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−145205号公報
【非特許文献1】PolymerJ.,10,619(1978)
【非特許文献2】Macromol.Chem.,190,2683(1989)
【非特許文献3】Macromol.Chem.,RapidComm.,13,447(1992)
【非特許文献4】Macromol.Sci.PureAppl.Chem.,A35、473(1998)
【非特許文献5】J.Polym.Sci.A、38,233(2000)
【非特許文献6】Macromol.Mater.Eng.,286,350(2001)
【非特許文献7】Macromol.Mater.Eng.,286,480(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリオレフィンの結晶性(立体規則性)を制御し、組成が均一で、かつ、高流動性を有し、低温塗工可能なポリオレフィン系組成物および、その架橋体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、オレフィンの重合に特定のメタロセン系触媒を使用することで、ポリオレフィンの結晶性(立体規則性)を制御し、組成が均一で、かつ、高流動なポリオレフィンを製造することができ、このポリオレフィンに反応性を有するシラン基を付与した変性物は、分子量分布及び組成分布が適正で、溶融温度が低く、反応性ホットメルトに求められる低温塗布性が良好であり、ポリオレフィン基材であるために分解ガスの発生がなく、ポリオレフィンとの接着性も良好であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、
1.(i)(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、炭素数3以上のα−オレフィンを単独重合、または、炭素数3以上のα−オレフィンの二種以上を共重合して得られ、下記の(1)〜(3)を満足するα-オレフィン重合体と、
(1)メソペンタッド分率(mmmm)が20〜75モル%、もしくは立体規則性の指標([M4])が75モル%以下、
(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の分子量分布が3.0以下、
(3)テトラリン溶媒中135℃にて測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0デシリットル/g、
(ii)ラジカル開始剤および
(iii)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマー又はシランカップリング剤
を反応させることにより得られることを特徴とするα-オレフィン重合体変性物、
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E1及びE2はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。 Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E1,E2又はXと架橋していてもよく、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
【0013】
2.下記の(1)〜(4)を満足する上記1のα-オレフィン重合体変性物、
(1)メソペンタッド分率(mmmm)が20〜75モル%、又は立体規則性の指標M4が75モル%以下、
(2)GPC法により測定したポリスチレン換算分子量(Mw)が1000〜10,000,000で、Mw/Mnが1.5以上、
(3)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマーに由来する成分の含量が0.01〜50モル%および
(4)融点が40〜100℃の範囲
【0014】
3.(C)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマーが、アルコキシシラン基を有するモノマーである上記1又は2のα-オレフィン重合体変性物、
4.炭素数3以上のα−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン(C10)、1−ドデセン(C12)、1−テトラデセン(14)、1-ヘキサデセン(C16)、1−オクタデセン(C18)、1−エイコセン(C20)、1−ドコセン(C22)、1−テトラコセン(C24)、1−ヘキサコセン(C26)、1−オクタコセン(C28)、1−トリアコンテセン(C30)から選ばれる1種類以上である上記1〜3のいずれかのα-オレフィン重合体変性物、
【0015】
5.溶融混練および/または溶液変性により得られたものである(1)〜(4)のいずれかのα-オレフィン重合体変性物、
6.(反応性)ホットメルト剤、ガラス用中間膜、ガラス用接着剤、シーリング剤、樹脂・エラストマー改質剤、ワックスブレンド剤、フィラーブレンド剤、樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、潤滑油成分、蓄熱剤成分、高性能ワックス、セメント成分、医療用器具、フィルム、シート、剥離フィルム、コーキング材、ケーブル外被、電線被覆、絶縁材、パイプ、熱収縮テープ、分散材のいずれかに使用される(1)〜(5)のいずれかのα-オレフィン重合体変性物、
7.(1)〜(6)のいずれかのα-オレフィン重合体変性物を、シラノール縮合触媒の存在下、あるいは不存在下で、水分又は湿気と接触させて、加熱処理することを特徴とするα-オレフィン重合体変性物架橋体の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のα-オレフィン重合体変性物は、分子量分布及び組成分布が適正で、溶融温度が低いので反応性ホットメルトに求められる低温塗布性が良好であり、かつ、従来の未変性のα-オレフィン重合体に比べて、高い反応性、相溶性、接着性を有すると共に、ポリオレフィン基材であるために分解ガスの発生がなく、ポリオレフィンとの接着性も良好である。
従って、本発明のα-オレフィン重合体変性物は、反応性ホットメルト接着剤のみならず、シーリング剤、樹脂・エラストマー改質剤、ワックスブレンド剤、フィラーブレンド剤、樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、潤滑油成分、蓄熱剤成分および高性能ワックスとして好適に用いることができる。
また、本発明により、シランで変性により反応性を付与したα-オレフィン重合体変性物の架橋体を製造することが可能である。これにより、強固な接着性を発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明について詳細に説明する。
(i)α-オレフィン重合体
先ず、本発明のα-オレフィン重合体変性物は、炭素数3以上のα−オレフィンを単独重合、または、炭素数3以上のα−オレフィンの二種以上を共重合して得られたα-オレフィン重合体を変性したものである。
上記炭素数3以上のα−オレフィンとしては、次の一般式で表される直鎖状オレフィンから得られるポリオレフィンが利用できる。
CH2=CH−R (RはCn2n+1 nは1以上の整数)
【0018】
具体的には、α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン(C10)、1−ドデセン(C12)、1−テトラデセン(C14)、1-ヘキサデセン(C16)、1−オクタデセン(C18)、1−エイコセン(C20)、1−ドコセン(C22)、1−テトラコセン(C24)、1−ヘキサコセン(C26)、1−オクタコセン(C28)、1−トリアコンテセン(C30)が挙げられる。また、2種以上のα−オレフィンの混合物を用いて共重合してもよい。
【0019】
本発明のα−オレフィン共重合体変性物に用いられるα-オレフィン重合体(以下「本発明におけるα-オレフィン重合体」とも云う)は、メタロセン系触媒を用いて製造されたものである。
すなわち、本発明におけるα-オレフィン重合体は、(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、炭素数3以上のα−オレフィンを単独重合、または、炭素数3以上のα−オレフィンの二種以上を共重合することにより製造されたものである。
【0020】
【化2】

【0021】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属などが挙げられるが、これらの中ではオレフィン共重合活性などの点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適である。
1及びE2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及び珪素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A1及びA2を介して架橋構造を形成している。
また、E1及びE2は互いに同一でも異なっていてもよい。
このE1及びE2としては、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。
【0022】
また、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。
該Xの具体例としては、ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアミド基,炭素数1〜20の珪素含有基,炭素数1〜20のホスフィド基,炭素数1〜20のスルフィド基,炭素数1〜20のアシル基などが挙げられる。
一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1,E2又はXと架橋していてもよい。
該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類,チオエーテル類などを挙げることができる。
【0023】
次に、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
このような架橋基としては、例えば、一般式
【0024】
【化3】

【0025】
(Dは炭素、ケイ素又はスズ、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、又互いに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基などを挙げることができる。
これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。
qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)
【0026】
【化4】

【0027】
で表される二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物が好ましい。
上記一般式(II)において、M,A1,A2,q及びrは、一般式(I)と同じである。
1はσ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。
このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
1はルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。
このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
4〜R9はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基,珪素含有基又はヘテロ原子含有基を示すが、その少なくとも一つは水素原子でないことが必要である。
また、R4〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、隣接する基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。
なかでも、R6とR7は環を形成していること及びR8とR9は環を形成していることが好ましい。
4及びR5としては、酸素、ハロゲン、珪素などのヘテロ原子を含有する基が共重合活性が高くなり好ましい。
【0028】
この二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物は、配位子間の架橋基にケイ素を含むものが好ましい。
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,7−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジ−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1 ,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチル−4−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロ
ペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジイソブロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなど及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができる。
もちろん、重合用触媒に用いられる遷移金属化合物は、これらに限定されるものではない。
また、他の族又はランタノイド系列の金属元素の類似化合物であってもよい。
また、上記化合物において、(1,1’−)(2,2’−)が(1,2’−)(2,1’−)であってもよく、(1,2’−)(2,1’−)が(1,1’−)(2,2’−)であってもよい。
【0029】
次に、(B)成分のうちの(B−1)成分としては、上記(A)成分の遷移金属化合物と反応して、イオン性の錯体を形成しうる化合物であれば、いずれのものでも使用できるが、次の一般式(III),(IV)
(〔L1−R10k+a(〔Z〕-b ・・・(III)
(〔L2k+a(〔Z〕-b ・・・(IV)
(ただし、L2はM2、R11123、R133C又はR143である。)
〔(III),(IV)式中、L1はルイス塩基、〔Z〕-は、非配位性アニオン〔Z1-及び〔Z2-、ここで〔Z1-は複数の基が元素に結合したアニオン、即ち〔M112・・・Gf-(ここで、M1は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。G1〜Gfはそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1〜Gfのうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M1の原子価)+1〕の整数を示す。)、〔Z2-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、あるいは一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。また、R10は水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R11及びR12はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R13は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R14はテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニンなどの大環状配位子を示す。kは〔L1−R10〕,〔L2〕のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。M2は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M3は、周期律表第7〜12族元素を示す。〕
で表されるものを好適に使用することができる。
【0030】
ここで、L1の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニリン,ジフェニルアミン,N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン,ジフェニルホスフィンなどのホスフィン類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、安息香酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類などを挙げることができる。
【0031】
10の具体例としては水素,メチル基,エチル基,ベンジル基,トリチル基などを挙げることができ、R11,R12の具体例としては、シクロペンタジエニル基,メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基などを挙げることができる。
13の具体例としては、フェニル基,p−トリル基,p−メトキシフェニル基などを挙げることができ、R14の具体例としてはテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン,アリル,メタリルなどを挙げることができる。
また、M2の具体例としては、Li,Na,K,Ag,Cu,Br,I,I3などを挙げることができ、M3の具体例としては、Mn,Fe,Co,Ni,Znなどを挙げることができる。
【0032】
また、〔Z1-、即ち〔M112・・・Gf〕において、M1の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sbなど、好ましくはB及びAlが挙げられる。
また、G1,G2〜Gfの具体例としては、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基など、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基,フェノキシ基など、炭化水素基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,n−オクチル基,n−エイコシル基,フェニル基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基など、ハロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,ヨウ素,ヘテロ原子含有炭化水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基,ビス(トリメチルシリル)メチル基など、有機メタロイド基としてペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素などが挙げられる。
【0033】
また、非配位性のアニオン、即ちpKaが−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基〔Z2-の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3-,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド,過塩素酸アニオン(ClO4-,トリフルオロ酢酸アニオン(CF3CO2-,ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF6-,フルオロスルホン酸アニオン(FSO3-,クロロスルホン酸アニオン(ClSO3-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化アンチモン(FSO3/SbF5-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化砒素(FSO3/AsF5-,トリフルオロメタンスルホン酸/5−フッ化アンチモン(CF3SO3/SbF5-などを挙げることができる。
【0034】
このような前記(A)成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物、即ち(B−1)成分化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム,テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリチル,テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀,ヘキサフルオロ砒素酸銀,過塩素酸銀,トリフルオロ酢酸銀,トリフルオロメタンスルホン酸銀などを挙げることができる。
(B−1)は一種用いてもよく、又二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、(B−2)成分のアルミノキサンとしては、一般式(V)
【0035】
【化5】

【0036】
(式中、R15は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基などの炭化水素基あるいはハロゲン原子を示し、wは平均重合度を示し、通常2〜50、好ましくは2〜40の整数である。尚、各R15は同じでも異なっていてもよい。)
で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(VI)
【0037】
【化6】

【0038】
(式中、R15及びwは前記一般式(V)におけるものと同じである。)
で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
【0039】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。
例えば、(a)有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、(b)重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(c)金属塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、(d)テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、更に水を反応させる方法などがある。
尚、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。
これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(A)触媒成分と(B)触媒成分との使用割合は、(B)触媒成分として(B−1)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは2:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲にあれば、単位質量ポリマー当りの触媒コストがあまり高くならず、実用的である。
また、(B−2)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。
この範囲にあれば、単位質量ポリマー当りの触媒コストががあまり高くならず、実用的である。
また、触媒成分(B)としては(B−1),(B−2)を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0041】
また、本発明におけるα-オレフィン重合体を製造する際の重合用触媒は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。
ここで、(C)成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式(VII)
16vAlJ3-v ・・・(VII)
〔式中、R16は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
で示される化合物が用いられる。
前記一般式(VII)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリドなどが挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
前記(A)触媒成分と(C)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、更に好ましくは1:10ないし1:1000の範囲が望ましい。
該(C)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になると共に、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
本発明におけるα-オレフィン重合体の製造においては、触媒成分の少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。
該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ以外の無機担体が好ましい。
【0043】
本発明におけるα-オレフィン重合体の製造において、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法,気相重合法,塊状重合法,溶液重合法,懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、スラリー重合法,気相重合法が特に好ましい。
重合条件については、重合温度は通常−100〜250℃、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。
重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜20MPa(gauge)、更に好ましくは常圧〜10MPa(gauge)である。
【0044】
本発明におけるα-オレフィン重合体の製造において、水素を添加すると重合活性が向上するので好ましい。
水素を用いる場合は、通常、常圧〜5MPa(gauge)、好ましくは常圧〜3MPa(gauge)、更に好ましくは常圧〜2MPa(gauge)である。
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタンなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。
これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。
また、α−オレフィンなどのモノマーを溶媒として用いてもよい。
尚、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0045】
重合に際しては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。
予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、前記に例示したものと同様のもの、例えば、炭素数3〜20のオレフィン、あるいはこれらの混合物などを挙げることができるが、本重合において用いるオレフィンと同じオレフィンを用いることが有利である。
【0046】
予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。
予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,モノマーなどを用いることができる。
これらの中で特に好ましいのは脂肪族炭化水素である。
また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。
予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度〔η〕(135℃デカリン中で測定)が0.1デシリットル/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10000g、特に10〜1000gとなるように条件を調整することが望ましい。
また、重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類、使用量、重合温度の選択、更には水素存在下での共重合などがある。窒素などの不活性ガスを存在させても良い。
以上のように、特定の触媒を使用することで、ポリオレフィンの結晶性(立体規則性)を制御し、組成が均一で、かつ、高流動なポリオレフィンを製造することができる。
【0047】
本発明におけるα-オレフィン重合体は、下記の(1)〜(3)を要件とするものである。
(1)メソペンタッド分率(mmmm)が20〜75モル%、もしくは立体規則性の指標([M4])が75モル%以下
(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の分子量分布が3.0以下
(3)テトラリン溶媒中135℃にて測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0デシリットル/g、
【0048】
本発明において、(1)メソペンタッド分率(mmmm)は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により報告された「Macromolecules,6925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものである。
即ち、メソペンタッド分率(mmmm)は、13C核磁気共鳴スペクトルを用いてメチレン基、メチン基のシグナルを測定し、ポリ(プロピレン) 分子中のメソペンタッド分率を求めたものである。この値が大きくなると、立体規則性が高くなることを意味する。
13C核磁気共鳴スペクトルの測定は、下記の装置及び条件にて行う。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ミリリットル
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0049】
本発明において、立体規則性指数([M4])は、日本電子(株)製JNM−EX400型装置を用い、13C−NMRスペクトルを前記の条件と同様にして測定し、αオレフィン連鎖のメソトリアッド([M4])分率を測定して求めた値である。
立体規則性指数([M4])の値が大きいほど、立体規則性が高いことを意味する。
本発明におけるα-オレフィン重合体は、立体規則性指数([M4])が75モル%以下であり、好ましくは10〜70モル%、更に好ましくは20〜65モル%である。
立体規則性指数([M4])が20モル%未満では、べたつきが発生する恐れがあり、75モル%を超えると、二次加工性が低下する恐れがある。
本発明におけるα-オレフィン重合体のメソペンタッド分率(mmmm)は、20〜75%であり、30〜60%であると好ましく、40〜55%であると更に好ましい。
【0050】
また、本発明におけるα-オレフィン重合体は、(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以下であり、より好ましくは2.5以下である。分子量分布(Mw/Mn)が3.0を超えるとべたつきが発生することがある。
尚、上記Mw/Mnは、GPC法により、下記の装置及び条件で測定した重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
GPC測定装置
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
測定条件
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ミリリットル/分
試料濃度 :2.2mg/ミリリットル
注入量 :160マイクロリットル
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム :HT−GPC(Ver.1.0)
【0051】
本発明におけるα-オレフィン重合体は、(3)テトラリン溶媒中135℃にて測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0デシリットル/gのものであり、この極限粘度[η]は、好ましくは0.1〜5.0デシリットル/g、特に好ましくは0.2〜3.0デシリットル/gである。
極限粘度[η]が0.01デシリットル/g未満では、十分な接着強度が得られないことがある。また、5.0デシリットル/gを超えると、流動性が低下するため塗工性や塗布性が不良となることがある。
【0052】
さらに、本発明におけるα-オレフィン重合体は、
(4)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm)が0〜120℃の結晶性樹脂であることが好ましく、更に好ましくは0〜100℃である。
本発明において、結晶性樹脂とは、上記Tmが観測される樹脂のことをいう。
【0053】
(ii) ラジカル開始剤
本発明におけるα-オレフィン重合体を変性するために用いられるラジカル開始剤としては特に制限はなく、従来公知のラジカル開始剤、例えば各種有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ系化合物等の中から、適宜選択して用いることができるが、これらの中で、有機過酸化物が好適である。
ラジカル開始剤として用いられる有機過酸化物としては、例えばジベンゾイルパーオキシド,ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド,ジラウロイルパーオキシド,ジデカノイルパーオキシド,ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキシド類、t−ブチルヒドロパーオキシド,キュメンヒドロパーオキシド,ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド,2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシドなどのヒドロパーオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキシド,ジクミルパーオキシド,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,α,α’ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのジアルキルパーオキシド類、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシオクトエート,t−ブチルパーオキシピバレート,t−ブチルパーオキシネオデカノエート,t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーエステル類、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシカーボネート類などが挙げられる。これらの中ではジアルキルパーオキシド類が好ましい。また、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル開始剤の使用量としては特に制限はなく、目的とするα-オレフィン重合体変性物の所望物性に応じて適宜選定されるが、使用するα-オレフィン重合体100質量部に対し、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部の範囲で用いられる。
【0054】
(iii)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマー又はシランカップリング剤
本発明において、α-オレフィン重合体と反応させる「シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマー」は、一般式 RR’SiY で表すことができる。
該式におけるRは、脂肪族的に不飽和な炭化水素基であり、これはα-オレフィン重合体中に発生した遊離ラジカル部位と反応性である。このような基の例としては、ビニル、アリル、ブテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニル、(メタ)アクリロキシプロピルを挙げることができ、ビニル基、およびメタクリロキシ基、アクリロキシ基が好適である。
該式におけるYは、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基のようなアルコキシ基、例えばホルミロキシ基、アセトキシ基またはプロピオニルオキシ基のようなアシロキシ基、オキシム基、例えばアルキルアミノ基およびアリールアミノ基のような置換されたアミノ基など、任意の加水分解しうる有機基である。
該式におけるR’は基Rまたは基Yであることが出来る。
また、シランカップリング剤は、Y'〜CH2SiX'3の一般式をもつものである。X'はアルコキシ基やハロゲンなどの加水分解性の置換基で無機質と反応し,Y'は有機質と反応しやすいビニル基,エポキシ基,アミノ基などである。
本発明においては、これらのシラン系モノマーの中、加水分解しうる有機基であるアルコキシシラン基を有するモノマーが好ましく、特に3個のアルコキシシラン基を含有することが好適であり、最も好適なシラン系モノマーはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシランである。
使用するシラン系モノマーの割合は一部には反応条件に依存する。実際の割合は広範囲にわたって例えばα-オレフィン重合体の質量に基づいて0.1から50質量%にわたって変化する。しかし、一般にα-オレフィン重合体の質量を基準にして0.5〜10質量%を使用するのが好適である。
【0055】
(α-オレフィン重合体変性物)
α-オレフィン重合体変性物を製造する方法としては特に制限はないが、例えばα-オレフィン重合体と、前記のラジカル開始剤及びシラン系モノマーとを、ロールミル、バンバリーミキサー、押出機などを用いて、100〜300℃程度の温度で溶融混練して反応させる方法、あるいはブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカヒドロナフタリンなどの炭化水素系溶剤、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤や、液化α−オレフィンなどの適当な有機溶剤中において、−50〜300℃程度の温度で溶液変性により反応させる方法を用いることができる。
【0056】
本発明のα-オレフィン重合体変性物は、下記の(1)〜(4)を満足するものであることが好ましい。
(1)メソペンタッド分率(mmmm)が20〜75モル%、又は立体規則性の指標([M4])が75モル%以下、
(2)GPC法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上、
(3)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマーに由来する成分の含量が0.1〜50モル%および
(4)融点が40〜100℃の範囲
【0057】
上記の(1)メソペンタッド分率(mmmm)および立体規則性の指標([M4])については、(i)α-オレフィン重合体の(1)で述べたと同様である。
また、上記の(2)GPC法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)のGPC法による測定法についても、(i)α-オレフィン重合体の(1)で述べたと同様である。
GPC法により測定した分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.5〜3.0である。分子量分布(Mw/Mn)を1.5以上とすることにより、ポリマー鎖が揃っているため成形性が向上し、また、Mw/Mnが3.0を超えるとべたつきが発生することがある。
GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜10,000,000、より好ましくは2,000〜1,000,000である。Mwが1,000〜10,000,000であれば、べたつきが少なく、かつ適度の流動性を有し、成形性が良好である。
【0058】
本発明のα-オレフィン重合体変性物は、シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマーに由来する成分の含量が好ましくは0.01〜50モル%であり、より好ましくは0.05〜40モル%、さらに好ましくは0.1〜30モル%である。該成分の含量を0.01モル%以上とすることにより、架橋性能が十分に発揮できる。また、50モル%以下とすることにより、ポリオレフィンとの接着性を損なわない。
本発明のα-オレフィン重合体変性物の融点(Tm)は好ましくは40〜100℃の範囲であり、より好ましくは50〜90℃の範囲である。α-オレフィン重合体変性物の融点を40℃とすることにより、常温での取扱い性、作業性が向上できる。また、100℃以下とすることにより、低温での塗布性能を向上できる。
【0059】
本発明のα-オレフィン重合体変性物架橋体の製造方法は、α-オレフィン重合体変性物を、シラノール縮合触媒の存在下、あるいは不存在下で、水分又は湿気と接触させて加熱処理することにより、行うことができる。α-オレフィン重合体変性物に水分又は湿気を接触させるには、例えばα-オレフィン重合体変性物を空気中に放置してもよいし、水槽に浸漬、スチームを導入してもよい。また温度は常温でも良いが、高温にすると短時間で架橋させるので好ましい。さらには真空下にすることで、架橋時間を短縮できる。
シラノール縮合触媒は、α-オレフィン重合体変性物に添加混和して使用するのがよい。添加方法は予めシラノール縮合触媒の高濃度に入った触媒マスターバッチを調製しておき、触媒マスターバッチとα-オレフィン重合体変性物をブレンドし、混練もしくは溶融することが好ましい。
前記シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、などの有機錫金属化合物、または有機塩基、エチルアミン酸などの有機酸、脂肪酸などであり、特に好ましいのはジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテートである。これらの添加量はα-オレフィン重合体変性物に対して、0.005〜2.0質量%であり、好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0060】
本発明のα-オレフィン重合体変性物は、(反応性)ホットメルト剤、ガラス用中間膜(安全ガラス用など)、ガラス用接着剤、シーリング剤、樹脂・エラストマー改質剤、ワックスブレンド剤及びフィラーブレンド剤等の用途に好適なものである。また、これらの用途の他に、樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、潤滑油成分、蓄熱剤成分、高性能ワックス、セメント成分、医療用器具、フィルム、シート、剥離フィルム、コーキング材、ケーブル外被、電線被覆、絶縁材、パイプ、熱収縮テープ、分散材等にも使用される。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
まず、製造例で得られたα-オレフィン重合体、及び実施例で得られたα-オレフィン重合体変性物の樹脂特性及び物性の評価方法について説明する。
(1)メソペンタッド分率(mmmm)及び立体規則性指数([M4])の測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
(2)極限粘度[η]の測定
(株) 離合社のVMR−053型自動粘度計を用い、テトラリン溶媒中135℃において測定した。
(3)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定
明細書本文中に記載した方法により測定した。
(4)DSC測定(融点:Tmの測定)
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下、−10℃で5分間保持した後、−10℃まで、5℃/分で降温させ、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱量(ΔH)カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップの融点(Tm)を測定した。
【0062】
また、接着性試験は、実施例で合成したシラン変性材料および比較例で用いたシラン変性材料について次のように試験を行い評価した。
ベース材料:(1)ガラス板−ガラス板、(2)ガラス板−PP(ポリプロピレン)板、
(3)PP板−PP板
試験方法:2枚のガラス板(縦1cm、長さ5cm、厚さ1mm)の間に、シラン変性材料を挟みこみ、プレス機で100℃、60秒、1kg/cm2の条件で圧着した。その後冷却を行い、1日経過後、剥離試験を実施した。
評価方法:剥離試験において剥離不能の場合○、未接着で剥離可能の場合×とする。
【0063】
製造例1〔(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの製造〕
窒素気流下、200ミリリットルのシュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデン)2.5g(7.2ミリモル)とエーテル100ミリリットルを加えた。
−78℃に冷却しn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.6モル/リットル)を9.0ミリリットル(14.8ミリモル)加えた後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン20ミリリットルで洗浄し減圧乾燥することによりリチウム塩を白色固体として定量的に得た。
シュレンク瓶中、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデン)のリチウム塩(6.97ミリモル)をTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルに溶解し、室温でヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2ミリモル)をゆっくりと滴下し12時間攪拌した。
溶媒を留去し、エーテル50ミリリットル加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。
分液後、有機相を乾燥し、溶媒を除去することにより(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.9ミリモル)を得た。(収率84%)
【0064】
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に、上記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.9ミリモル)とエーテル50ミリリットルを加えた。 −78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.6モル/リットル)を7.4ミリリットル(11.8ミリモル)を加えた後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン40ミリリットルで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06gを得た。
このものの1H−NMRを求めたところ、次の結果が得られた。
1H−NMR(90MHz,THF−d8):δ0.04(s,−SiMe3,18H),0.48(s,−Me2Si−,12H),1.10(t,−CH3,6H),2.59(s,−CH2−,4H),3.38(q,−CH2−,4H),6.2−7.7(m,Ar−H,8H)
窒素気流下で上記で得られたリチウム塩3.06gをトルエン50ミリリットルに懸濁させた。これを−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下した。滴下後、室温で6時間攪拌した。この反応溶液の溶媒を留去後、得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化することにより(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの黄色微結晶0.9g(1.33ミリモル)を得た。(収率26%)
このものの1H−NMRを求めたところ、次の結果が得られた。
1H−NMR(90MHz,CDCl3):δ0.0(s,―SiMe3−,18H),1.02,1.12(s,−Me2Si−,12H),2.51(dd,−CH2−,4H),7.1−7.6(m,Ar−H,8H)
【0065】
製造例2(プロピレン(C3)重合体の合成)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモル、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.2マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.8マイクロモルを加え、さらに水素0.2MPa導入し、プロピレン0.6MPaを導入して全圧を0.8MPaとして、重合温度70℃にて60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、プロピレン重合体を110g得た。
得られたプロピレン重合体の極限粘度[η]は0.32デシリットル/g、GPC法により測定さたポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は32,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.8、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は43モル%、DSC測定による融点(Tm)は86℃であった。
【0066】
製造例3(ブテン(C4)重合体の合成)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン200ミリリットル、ブテン−1 200ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモル、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.2マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.8マイクロモルを加え、さらに水素0.3MPa導入し、重合温度70℃にて60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、ブテン重合体を84g得た。
得られたブテン重合体の極限粘度[η]は0.39デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は67,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.8、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は70.5モル%、融点(Tm)は72.3℃であった。
【0067】
製造例4(ポリC18の合成)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン18」400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモル、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート4マイクロモルを加え、さらに水素0.03MPa導入し、重合温度75℃にて240分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級αオレフィン(C18)重合体を250g得た。
得られた高級α-オレフィン重合体の極限粘度[η]は0.33デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は93,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.7、融点(Tm)は42℃、融解吸熱量(ΔH)は82J/g、立体規則性の指標([M4])は28モル%であった。
【0068】
実施例1
(プロピレン重合体のシラン変性)
製造例2で得られたプロピレン重合体30g、トルエン250ミリリットルを1000ミリリットル攪拌翼付セパラブル三つ口フラスコに入れ、110℃に昇温した後、過酸化ジ−t−ブチル0.2g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で約240分攪拌後、ビーカーに投入し、メタノールで洗浄・再沈することでシラン変性プロピレン重合体を28.5g得た。
得られたシラン変性プロピレン重合体の極限粘度[η]は0.29デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は33,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.68、融点(Tm)は74.4℃、融解吸熱量(ΔH)は15.6J/g、立体規則性(mmmm)は44.3モル%、シランモノマーに由来する成分の含量は0.04モル%であった。
【0069】
(接着性試験)
ベース材料として(1)ガラス板−ガラス板、(2)ガラス板−PP(ポリプロピレン)板および(3)PP板−PP板について、接着剤として上記のシラン変性プロピレン重合体を用い、100℃および80℃における接着性試験を行った。結果を第1表に示す。
(シラン変性プロピレン重合体の架橋反応)
100ミリリットルフラスコに上記シラン変性プロピレン重合体5g、トルエン20ミリリットルを入れ、室温で溶解した。溶解後、水を0.5ミリリットル、ジブチル錫オクテート0.3ミリリットルを滴下し、50℃の湯浴中で3時間攪拌した。反応終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、シラン変性プロピレン重合体架橋物を4.8g得た。
得られたシラン変性プロピレン重合体架橋物の極限粘度[η]は0.54デシリットル/gに上昇し、架橋反応が進行していることが示された。
【0070】
実施例2
(ブテン重合体のシラン変性)
製造例3で得られたブテン重合体60g、トルエン250ミリリットルを1000ミリリットル攪拌翼付セパラブル三つ口フラスコに入れ、110℃に昇温した後、過酸化ジ−t−ブチル0.2g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5gを1時間かけて滴下した。
滴下終了後、110℃で約240分攪拌後、ビーカーに投入し、メタノールで洗浄・再沈することでシラン変性ブテン重合体を57.6g得た。
得られたシラン変性ブテン重合体の極限粘度[η]は0.35デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は76,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.70、融点(Tm)および融解吸熱量(ΔH)は検出不可、立体規則性(mmmm)は71.0モル%、シランモノマーに由来する成分の含量は0.2モル%であった。
【0071】
(接着性試験)
得られたシラン変性ブテン重合体について、実施例1と同様にして、100℃および80℃における接着性試験を行った。結果を第1表に示す。
(シラン変性ブテン重合体の架橋反応)
100ミリリットルフラスコに上記シラン変性ブテン重合体5g、トルエン20ミリリットルを入れ、室温で溶解した。溶解後、水を0.5ミリリットル、ジブチル錫オクテート0.3ミリリットルを滴下し、50℃の湯浴中で3時間攪拌した。反応終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、シラン変性ブテン重合体架橋物を4.5g得た。
得られたシラン変性ブテン重合体架橋物の極限粘度[η]は、不溶のため測定不能であり、トルエン、ヘプタンなどの溶媒には不溶であった。
【0072】
実施例3
(オクタデセン(C18)重合体のシラン変性)
製造例4で得られたオクタデセン重合体60g、トルエン250ミリリットルを1000ミリリットル攪拌翼付セパラブル三つ口フラスコに入れ、110℃に昇温した後、過酸化ジ−t−ブチル0.2g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で約240分攪拌後、ビーカーに投入し、メタノールで洗浄・再沈することでシラン変性オクタデセン重合体を51g得た。
得られたシラン変性オクタデセン重合体の極限粘度[η]は0.26デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は107,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.70、融点(Tm)は40.8℃、融解吸熱量(ΔH)は85J/g、立体規則性指標([M4])は28.3モル%、シランモノマーに由来する成分の含量は0.7モル%であった。
【0073】
(接着性試験)
得られたシラン変性オクタデセン重合体について、実施例1と同様にして、100℃、80℃および40℃における接着性試験を行った。結果を第1表に示す。
(シラン変性オクタデセン重合体の架橋反応)
100ミリリットルフラスコに上記シラン変性オクタデセン重合体5g、トルエン20ミリリットルを入れ、室温で溶解した。溶解後、水を0.5ミリリットル、ジブチル錫オクテート0.3ミリリットルを滴下し、50℃の湯浴中で3時間攪拌した。反応終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、シラン変性オクタデセン重合体架橋物を4.5g得た。
得られたシラン変性オクタデセン重合体架橋物の極限粘度[η]は0.67デシリットル/gに上昇し、架橋反応が進行していることが示された。
【0074】
比較例1
(接着性試験)
シラン変性プロピレン重合体(三菱化学社製「リンクロンXPM800HM」)について、実施例1と同様にして、100℃、80℃および40℃における接着性試験を行った。結果を第1表に示す。使用したシラン変性プロピレン重合体は融点が高いため、各温度で溶融せず、接着しなかった。
(シラン変性プロピレン重合体の架橋反応)
100ミリリットルフラスコにシラン変性プロピレン重合体(三菱化学社製「リンクロンXPM800HM」[η]:1.36デシリットル/g)5g、p−キシレン20ミリリットルを入れ、100℃で攪拌した。スラリー中に、水を0.5ミリリットル、ジブチル錫オクテート0.3ミリリットルを滴下し、100℃のオイルバス中で3時間攪拌した。攪拌終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、シラン変性プロピレン重合体反応物を4.5g得た。
得られたシラン変性プロピレン重合体反応物の極限粘度[η]は1.36デシリットル/gであり、100℃ではシラン変性プロピレン重合体反応物が溶解せず、架橋反応が進行しなかった。
【0075】
比較例2
(シラン変性EVAの接着性試験)
シラン変性EVA(三菱化学社製「リンクロンXVN600F」)について、実施例1と同様にして、100℃、80℃および40℃における接着性試験を行った。結果を第1表に示す。使用したシラン変性EVAは融点が高いため、各温度で溶融せず、接着しなかった。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、炭素数3以上のα−オレフィンを単独重合、または、炭素数3以上のα−オレフィンの二種以上を共重合して得られ、下記の(1)〜(3)を満足するα-オレフィン重合体と、
(1)メソペンタッド分率(mmmm)が20〜75モル%、もしくは立体規則性の指標([M4])が75モル%以下、
(2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の分子量分布が3.0以下、
(3)テトラリン溶媒中135℃にて測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0デシリットル/g、
(ii)ラジカル開始剤および
(iii)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマー又はシランカップリング剤
を反応させることにより得られることを特徴とするα-オレフィン重合体変性物。
【化1】

〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E1及びE2はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。 Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E1,E2又はXと架橋していてもよく、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
【請求項2】
下記の(1)〜(4)を満足する請求項1に記載のα-オレフィン重合体変性物。
(1)メソペンタッド分率(mmmm)が20〜75モル%、又は立体規則性の指標M4が75モル%以下、
(2)GPC法により測定したポリスチレン換算分子量(Mw)が1,000〜10,000,000で、Mw/Mnが1.5以上、
(3)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマーに由来する成分の含量が0.01〜50モル%および
(4)融点が40〜100℃の範囲
【請求項3】
(C)シラン基およびエチレン性不飽和基を有するモノマーが、アルコキシシラン基を有するモノマーである請求項1又は2に記載のα-オレフィン重合体変性物。
【請求項4】
炭素数3以上のα−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン(C10)、1−ドデセン(C12)、1−テトラデセン(C14)、1-ヘキサデセン(C16)、1−オクタデセン(C18)、1−エイコセン(C20)、1−ドコセン(C22)、1−テトラコセン(C24)、1−ヘキサコセン(C26)、1−オクタコセン(C28)、1−トリアコンテセン(C30)から選ばれる1種類以上である請求項1〜3のいずれかに記載のα-オレフィン重合体変性物。
【請求項5】
溶融混練および/または溶液変性により得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載のα-オレフィン重合体変性物。
【請求項6】
(反応性)ホットメルト剤、ガラス用中間膜、ガラス用接着剤、シーリング剤、樹脂・エラストマー改質剤、ワックスブレンド剤、フィラーブレンド剤、樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、潤滑油成分、蓄熱剤成分、高性能ワックス、セメント成分、医療用器具、フィルム、シート、剥離フィルム、コーキング材、ケーブル外被、電線被覆、絶縁材、パイプ、熱収縮テープ、分散材のいずれかに使用される請求項1〜5のいずれかに記載のα-オレフィン重合体変性物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のα-オレフィン重合体変性物を、シラノール縮合触媒の存在下、あるいは不存在下で、水分又は湿気と接触させて、加熱処理することを特徴とするα-オレフィン重合体変性物架橋体の製造方法。

【公開番号】特開2006−348153(P2006−348153A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175429(P2005−175429)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】