説明

はす歯歯車を用いた動力伝達装置と該動力伝達装置を備えた画像形成装置

【課題】 小径の駆動はす歯歯車と大径の被駆動はす歯歯車とが直接噛み合わされたはす歯歯車動力伝達装置において、きわめて簡素な装置でかつ簡単な手法で以って、被駆動はす歯歯車と軸との嵌合い部のクリアランスの形成に伴う噛み合い率の低下を回避して、噛み合い騒音を低減するとともに、噛み合い部の片当たりによる歯部の破損の発生及び動力伝達効率の低下を回避したはす歯歯車を用いた動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 被駆動はす歯歯車のねじれ角(β)を駆動はす歯歯車のねじれ角(β)よりも大きく形成し、該被駆動はす歯歯車のねじれ角(β)の駆動はす歯歯車のねじれ角(β)に対するねじれ角増加量(Δβ)を、前記被駆動はす歯歯車と軸との嵌合い部のクリアランスCの増加に従い、クリアランスの一定範囲内において大きくなるように設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はす歯歯車を用いた動力伝達装置と該動力伝達装置を備えた画像形成装置に係わり、特に、被駆動歯車を大径とし、その大径被駆動歯車を小径駆動歯車で駆動するようにすると共に、これら大径被駆動歯車と小径駆動歯車をはす歯歯車とした動力伝達装置と該動力伝達装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置においては、電子写真方式で形成されるトナー画像を担持する感光体に回転ムラがあると品質の良い画像形成ができないから、感光体軸に大径歯車(被駆動歯車)を設け、その大径歯車に減速比を大きくするため小径の歯車(駆動歯車)を噛み合わせて駆動するようにし、かつ、例えば特許文献1に示されているように、これら駆動歯車、被駆動歯車をはす歯歯車として、歯車同士の噛み合い率を大きくするようにした動力伝達装置が提案されている。
【0003】
すなわち、このように減速比を大きくすると共にはす歯歯車を用いて動力伝達装置を構成すると、はす歯歯車は歯車の歯が回転軸に対して斜めに切られているため、歯スジのねじれによる重なり分だけ噛み合い率が増加し、駆動力の伝達がきわめて円滑で振動騒音が少なく、しかも大きな駆動力を伝達することができる動力伝達装置を得ることができる。
【0004】
しかしながら、例えば画像形成装置における感光体軸に設けられる被駆動歯車は、摩耗などで交換する必要があるため、通常、キーなどを用いて歯車軸に対して回転不能でしかも交換可能に設けられていることが多い。また、この被駆動歯車の歯幅(すなわち軸との嵌め合い長さ)は、大きくすると画像形成装置そのものを小型にできないから、通常は可能な限り小さく形成される。
【0005】
ところが、このように大径の被駆動歯車を交換可能で歯幅を小さく形成し、しかもはす歯歯車とすると、被駆動はす歯歯車と軸の嵌め合い部におけるクリアランスと歯のねじれによる軸方向へのスラスト力で被駆動はす歯歯車が倒れ、せっかくはす歯歯車を用いて噛み合い率を増加させようとしたにもかかわらず片当たりが生じ、噛み合い騒音が増大したり、噛み合い精度低下による画像品質低下といった問題を生じてしまう。そのため、被駆動はす歯歯車の倒れ分だけ被駆動はす歯歯車の軸を傾けてもよいが、反対側にギヤを設けた場合はそのギヤも傾くため難しい。
【0006】
こういった、はす歯歯車で構成した被駆動歯車と駆動歯車の片当たりを防止する技術として特許文献2には、自動車のインジェクションポンプドライブ等に使用されているシザーズギヤを、はす歯歯車からなる本体ギヤにスプライン嵌合によって並設したはす歯歯車とし、本体ギヤにガタによって片当たりするのを防止するため、シザーズギヤにおけるはす歯歯車のねじれ角を本体ギヤのねじれ角よりも小さく形成して、該シザーズギヤのスプライン嵌合部のがたに起因するシザーズギヤと相手ギヤとの片当たりの発生を回避することが示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−228382号公報
【特許文献2】実開平7−34251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら前記特許文献1に示された技術は、単に駆動力伝達に複数のはす歯歯車を用い、かつ、はす歯歯車における歯のねじれによって生じる軸方向のスラスト力によって伝達トルクがロスするため、駆動手段(モータ)に近接するはす歯歯車のねじれ角を大きくしただけであり、片当たりの発生を防止することについては何ら示唆されていない。
【0009】
また、特許文献2に示された技術はシザーズギヤのねじれ角を、本体ギヤ及び相手側の被駆動はす歯ギヤのねじれ角よりも小さく形成し、シザーズギヤのスプライン嵌合部のがたに起因するシザーズギヤと相手側の被駆動はす歯ギヤとのねじれ角の差を小さくすることにより片当たりの発生を回避しており、本体ギヤにスプライン嵌合によって並設されたシザーズギヤを組み合わせた駆動側ギヤのねじれ角を調整して片当たりの発生を回避するものであって、前記した感光体への動力伝達装置のように、小径の駆動はす歯歯車と大径の被駆動はす歯歯車とが直接噛み合わされた駆動力伝達装置には、構造が複雑となってそのままでは適用できない。また、特許文献2の技術にあっては、単にシザーズギヤと相手ギヤとの噛み合い部における片当たりの発生を回避するのみで、該噛み合い部の噛み合い率を調整することについては開示されていない。
【0010】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、はす歯歯車で構成した小径の駆動歯車と大径の被駆動歯車とを直接噛み合わせた動力伝達装置において、被駆動はす歯歯車と軸との嵌合い部のクリアランスに伴う噛み合い率の低下を回避し、噛み合い騒音を低減するとともに、噛み合い部の片当たりによる歯部の破損の発生及び動力伝達効率の低下を回避した、はす歯歯車を用いた動力伝達装置と該動力伝達装置を備えた画像形成装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明になるはす歯歯車を用いた駆動力伝達装置は、
被駆動体軸に設けた大径の被駆動はす歯歯車と、駆動手段に設けられて前記被駆動はす歯歯車を駆動する小径の駆動はす歯歯車とからなり、前記駆動手段の駆動力を1段減速機構からなる駆動力伝達機構で前記被駆動体に伝えて駆動するはす歯歯車を用いた駆動力伝達装置であって、
前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βを、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸との嵌め合い長さLと、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸とのクリアランスCに対応させ、前記駆動はす歯歯車のねじれ角βよりも大きく形成したことを特徴とする。
また、この駆動力伝達装置を備えた画像形成装置は、
駆動手段に設けられた小径の駆動はす歯歯車と、感光体軸に設けられて前記駆動はす歯歯車によって駆動される大径の被駆動はす歯歯車とからなり、前記駆動手段の駆動力を1段減速機構からなる駆動力伝達機構で前記被駆動はす歯歯車に伝えて感光体を駆動するはす歯歯車を用いた駆動力伝達装置を備えた画像形成装置であって、
前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βを、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸との嵌め合い長さLと前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸とのクリアランスCに対応させ、前記駆動はす歯歯車のねじれ角βよりも大きく形成したことを特徴とする。
【0012】
そして、前記被駆動はす歯歯車は、被駆動体(感光体)軸に回転不能で交換可能に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、前記被駆動はす歯歯車の外径をAとしたとき、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体(感光体)軸との嵌め合い長さLとの比A/Lが、
(A/L)≧3
であり、前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βと前記駆動はす歯歯車のねじれ角βとの間に、
β=β+8C
の関係を持たせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように、被駆動はす歯歯車のねじれ角βを、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸との嵌め合い長さLと、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸とのクリアランスCに対応させ、前記駆動はす歯歯車のねじれ角βよりも大きく形成したことにより、被駆動はす歯歯車と軸の嵌め合い部におけるクリアランスと歯のねじれによる軸方向へのスラスト力による被駆動はす歯歯車の倒れが生じても、被駆動はす歯歯車のねじれ角βが増やされているから噛み合い率は低下せず、当然片当たりも生じないから、噛み合い騒音の増大や噛み合い精度低下による画像品質低下、噛み合い部の片当たりによる歯部の破損の発生及び動力伝達効率の低下といった問題を防止した、はす歯歯車を用いた動力伝達装置と該動力伝達装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0016】
図1は本発明に係る動力伝達装置における被駆動はす歯歯車を示し、(A)は周方向における歯の配置を示す展開図、(B)は歯の要部斜視図を示している。図2は本発明の実施例に係る動力伝達装置の要部断面図、図3は本発明になるはす歯歯車を用いた動力伝達装置を画像形成装置における感光体の動力伝達装置へ応用した場合の要部斜視図、図4は本発明のはす歯歯車を用いた動力伝達装置における被駆動はす歯歯車のねじれ角と噛み合い騒音レベルとの関係線図、図5は本発明のはす歯歯車を用いた動力伝達装置における被駆動体軸と被駆動はす歯歯車のクリアランスと、はす歯歯車の最適なねじれ角補正量を示した関係線図、図6は本発明に係わる動力伝達装置を組み込んだ一例としての画像形成装置における主要構成要素を説明するための概念図、図7は同じく画像形成装置に本発明になるはす歯歯車を用いた動力伝達装置を組み込んだ場合の組み込み状態を示した斜視図である。
【0017】
最初に図6を用い、本発明に係わる動力伝達装置を組み込んだ一例としての画像形成装置について説明する。なお、以下の説明では、本発明を画像形成装置の感光体ドラム9に駆動力を伝達する動力伝達装置の場合を例に説明するが、本発明は画像形成装置だけでなく、他の機器に用いても良いことは自明である。
【0018】
図中21は記録紙22を収容した給紙カセットで、この給紙カセット21に収容された記録紙22は給紙ローラ23で一枚ずつ取り出され、分離/フィードローラ24で1枚づつ分離されて搬送路25を通って中間ローラ26に運ばれる。またこの中間ローラ26には、手差し搬送路27から第2給紙ローラ28を介して手差し給紙された記録紙も送られて来るよう構成され、画像形成装置に与えられた指示に従って、記録紙22が選択的にこの中間ローラ26に送られてくる。
【0019】
29はこの中間ローラ26から送られてきた記録紙22の姿勢を正し、感光体9上のトナー画像形成タイミングに合わせて、感光体ドラム9と転写ローラ30で形成される転写位置に記録紙22を送り出すレジストローラであり、この転写位置で感光体ドラム9上に形成されているトナー画像を転写された記録紙22は、搬送路31を通って定着ローラ32に送られ、ここでトナー像が記録紙22に定着されて排出ローラ33で機外に排出される。なお、感光体ドラム9の周りには、帯電装置35、露光装置36、現像装置37、クリーニングブレード(クリーニング手段)38などが配されている。
【0020】
そして、本発明が適用される画像形成装置の感光体ドラム動力伝達装置の要部を示す図3、及び画像形成装置本体8に本発明を組み込んだ場合の組み込み状態を示した図7において、9は前記した被駆動ユニットとしての感光体ドラム、3は該被駆動ユニット9に固定される軸(回転軸)、1は該軸3の端部に固定される被駆動はす歯歯車、5は前記した感光体ドラムやその他のローラを他の歯車を介して駆動するためのモータ、2は該モータ5のモータ軸4(図2参照)に固定された駆動はす歯歯車で、前記被駆動はす歯歯車1に噛み合っている。
【0021】
本発明は、かかる感光体ドラム9へモータ5の駆動力を伝達するはす歯歯車を用いた動力伝達装置に係り、その実施例における要部断面図を示す図2において、前記被駆動ユニットたる感光体ドラム9(図3参照)の端部に連結される軸3(10は軸心を示す)の端部には、外周に沿って形成された歯1aを有するはす歯歯車からなる被駆動はす歯歯車1が、キー3bを介して相対回転不能に嵌合されてロックナット13によって締め付けられて固定され、このロックナット13を外すことで交換可能となっている。
【0022】
一方この被駆動はす歯歯車1には、感光体ドラム9の駆動用モータ5の出力軸4(12は軸心を示す)の端部に設けられ、外周に沿って形成された歯2aを有するはす歯歯車からなる駆動はす歯歯車2が噛み合い、モータ5からの駆動力を被駆動はす歯歯車1に伝えるようになっている。なお、図中、6は被駆動体9の軸3を画像形成装置本体8に回転自在に支持する軸受であり、7はモータ軸4を画像形成装置本体8に回転自在に支持する軸受である。
【0023】
そして、本発明になるはす歯歯車を用いた動力伝達装置においては、前記したように、感光体ドラム9に回転ムラがあると品質の良い画像形成ができないから、感光体ドラム9の端部に連結される軸3を駆動する被駆動はす歯歯車1を大径とし、その大径歯車に減速比を大きくするため駆動はす歯歯車2を小径としてある。また、この被駆動はす歯歯車1の歯幅L(すなわち軸3との嵌め合い長さ)を大きくすると、画像形成装置そのものを小型にできないから、例えば被駆動はす歯歯車1の外径Aと上記軸3との嵌め合い長さLとの外径比A/Lを、
(A/L)≧3 (1)
となるよう形成してある。
【0024】
すなわち、このように減速比を大きくしてはす歯歯車を用いて動力伝達装置を構成すると、はす歯歯車は歯車の歯が回転軸に対して斜めに切られているため、歯スジのねじれによる重なり分だけ噛み合い率が増加し、駆動力の伝達がきわめて円滑で振動騒音が少なく、しかも大きな駆動力を伝達することができる動力伝達装置を得ることができる。
【0025】
このように構成したはす歯歯車を用いた動力伝達装置において、図1(A)、(B)に示されるように、被駆動はす歯歯車1の歯1aにおける歯面1cのねじれ角βに対して駆動はす歯歯車2の歯2aにおける歯面2cのねじれ角βは、前記したように、被駆動はす歯歯車1における軸との嵌合い部のクリアランスCにより生じる倒れに起因する駆動はす歯歯車2との片当たりを補うため、βをβよりΔβだけ大きく形成する。
【0026】
すなわち、図2における被駆動はす歯歯車1のクリアランスCは、被駆動はす歯歯車1における嵌合孔の内周1b(内径D)と軸3の外周3a(外径d)との差(C=D―d)であり、このクリアランスCによって図1(A)に11で示したように、被駆動はす歯歯車1の軸心は、感光体ドラム9の軸心10に対する傾き角をα(度)とすると、
α=sin−1(C/L) (2)
だけ傾く。そのため、被駆動はす歯歯車1と駆動はす歯歯車2の噛み合い率は、それだけ減少して片当たりが発生する。
【0027】
そのため本発明においては、前記したように、被駆動はす歯歯車1の歯1aにおける歯面1cのねじれ角βに対して駆動はす歯歯車2の歯2aにおける歯面2cのねじれ角βを、被駆動はす歯歯車1における軸との嵌合い部のクリアランスCにより生じる倒れ角α(度)に起因する駆動はす歯歯車2との片当たりを補うため、βをβよりΔβだけ大きくし、噛み合い率を大きくできるようにしたものである。
【0028】
しかしながらこのΔβは、前記(2)式で算出した被駆動はす歯歯車1における軸心11の、感光体ドラム9の軸心10に対する傾き角α(度)とは異なった値となる。これは、前記(1)式で示したように、被駆動はす歯歯車1の外径Aと上記軸3との嵌め合い長さLとの外径比A/Lを3以上としたため、駆動はす歯歯車2から加わる力によって、被駆動はす歯歯車1が計算値以上に傾くためと考えられる。
【0029】
そのため一例として3台の型画像形成装置において、前記被駆動はす歯歯車1の外径Aを120mm、軸3との嵌め合い長さLを30mm、駆動はす歯歯車2におけるねじれ角βを20度とし、被駆動はす歯歯車1と軸3とのクリアランスCが、0.05mmの場合における駆動はす歯歯車2に対する被駆動はす歯歯車1の片当たりにより生じる騒音レベル(db)を、被駆動はす歯歯車1におけるねじれ角β(度)を変化させて調べた。その結果を示したのが図4の関係線図であり、図中、横軸は被駆動はす歯歯車1におけるねじれ角β(度)、縦軸は噛み合い騒音レベル(db)であり、□は第1の画像形成装置、△は第2の画像形成装置、×は第3の画像形成装置における測定結果を表している。
【0030】
この図4から明らかなように、クリアランスCが0.05mmの場合、被駆動はす歯歯車1におけるねじれ角β(度)が20.4(度)、すなわちΔβが0.4(度)のときに最も騒音レベルが低く、駆動はす歯歯車2に対する被駆動はす歯歯車1の噛み合い率が高くなったと考えられる。それに対し、前記(2)式で計算されるαは、0.1(度)であり、最適なΔβはαより大きくなっている。
【0031】
図5は、このような考え方に従い、上記被駆動はす歯歯車1の外径Aを120mm、軸3との嵌め合い長さLを30mm、駆動はす歯歯車2におけるねじれ角βを20度としたときの、クリアランスCと被駆動はす歯歯車1におけるねじれ角βの最適な増加量Δβを調べた結果を表したグラフである。この図5において、横軸はクリアランスC、縦軸は被駆動はす歯歯車1におけるねじれ角βの最適な増加量Δβ(度)を示している。
【0032】
すなわち、この図5の線図から明らかなように、被駆動はす歯歯車1のクリアランスCの増加に対し、被駆動はす歯歯車1のねじれ角βの最適な増加量Δβはほぼ直線的に増加しており、クリアランスCが0のときに0.0度である被駆動はす歯歯車1のねじれ角βの最適な増加量Δβは、クリアランスCが0.1となったときに0.8度となっているので、クリアランスCに対する被駆動はす歯歯車1のねじれ角βの増加量Δβは、
Δβ=8C (3)
とすることができ、従って被駆動はす歯歯車1のねじれ角β1の駆動はす歯歯車2のねじれ角β2との関係は、
β=β+8C (4)
と記述することができる。
【0033】
そのため本発明においては、被駆動はす歯歯車1のねじれ角βの駆動はす歯歯車2のねじれ角βに対するねじれ角増加量Δβを、
Δβ=8C
とし、従って、被駆動はす歯歯車1のねじれ角βを、駆動はす歯歯車2のねじれ角βに対して8Cだけ増加させることで、噛み合い騒音の増大や噛み合い精度低下による画像品質低下、噛み合い部の片当たりによる歯部の破損の発生及び動力伝達効率の低下といった問題を防止するようにしたものである。
【0034】
以上種々述べてきたように本発明によれば、被駆動はす歯歯車1が、被駆動体軸3に回転不能で交換可能に設けられている動力伝達装置において、被駆動はす歯歯車1のねじれ角βを、被駆動はす歯歯車1における被駆動体軸3との嵌め合い長さLと、被駆動はす歯歯車1における被駆動体軸3とのクリアランスCに対応させ、駆動はす歯歯車2のねじれ角βよりも大きく形成したことにより、被駆動はす歯歯車1と軸3の嵌め合い部におけるクリアランスCと歯のねじれによる軸方向へのスラスト力による被駆動はす歯歯車1の倒れが生じても、被駆動はす歯歯車1のねじれ角βが増やされているから噛み合い率は低下せず、当然片当たりも生じないから、噛み合い騒音の増大や噛み合い精度低下による画像品質低下、噛み合い部の片当たりによる歯部の破損の発生及び動力伝達効率の低下といった問題を防止した、はす歯歯車を用いた動力伝達装置と該動力伝達装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、小径の駆動はす歯歯車と大径の被駆動はす歯歯車とが直接噛み合わされたはす歯歯車動力伝達装置において、きわめて簡素な装置でかつ簡単な手法で以って、被駆動はす歯歯車と軸との嵌合い部のクリアランスの形成に伴う噛み合い率の低下を回避して、噛み合い騒音を低減でき、噛み合い部の片当たりによる歯部の破損の発生及び動力伝達効率の低下を回避したはす歯歯車を用いた動力伝達装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る動力伝達装置における被駆動はす歯歯車を示し、(A)は周方向における歯の配置を示す展開図、(B)は歯の要部斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る動力伝達装置の要部断面図である。
【図3】本発明になるはす歯歯車を用いた動力伝達装置を画像形成装置における感光体の動力伝達装置へ応用した場合の要部斜視図である。
【図4】本発明のはす歯歯車を用いた動力伝達装置における被駆動はす歯歯車のねじれ角と噛み合い騒音レベルとの関係線図である。
【図5】本発明のはす歯歯車を用いた動力伝達装置における被駆動体軸と被駆動はす歯歯車のクリアランスと、はす歯歯車の最適なねじれ角補正量を示した関係線図である。
【図6】本発明に係わる動力伝達装置を組み込んだ一例としての画像形成装置における主要構成要素を説明するための概念図である。
【図7】画像形成装置に本発明になるはす歯歯車を用いた動力伝達装置を組み込んだ場合の組み込み状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 被駆動はす歯歯車
1a、2a 歯
1c、2c 歯面
2 駆動はす歯歯車
3 軸(回転軸)
9 感光体ドラム
β 被駆動はす歯歯車のねじれ角
β 駆動はす歯歯車のねじれ角
Δβ ねじれ角増加量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体軸に設けた大径の被駆動はす歯歯車と、駆動手段に設けられて前記被駆動はす歯歯車を駆動する小径の駆動はす歯歯車とからなり、前記駆動手段の駆動力を1段減速機構からなる駆動力伝達機構で前記被駆動体に伝えて駆動するはす歯歯車を用いた駆動力伝達装置であって、
前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βを、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸との嵌め合い長さLと、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸とのクリアランスCに対応させ、前記駆動はす歯歯車のねじれ角βよりも大きく形成したことを特徴とするはす歯歯車を用いた動力伝達装置。
【請求項2】
前記被駆動はす歯歯車は、被駆動体軸に回転不能で交換可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載したはす歯歯車を用いた動力伝達装置。
【請求項3】
前記被駆動はす歯歯車の外径をAとしたとき、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸との嵌め合い長さLとの比A/Lが、
(A/L)≧3
であり、前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βと前記駆動はす歯歯車のねじれ角βとの間に、
β=β+8C
の関係を持たせたことを特徴とする請求項1に記載したはす歯歯車を用いた動力伝達装置。
【請求項4】
駆動手段に設けられた小径の駆動はす歯歯車と、感光体軸に設けられて前記駆動はす歯歯車によって駆動される大径の被駆動はす歯歯車とからなり、前記駆動手段の駆動力を1段減速機構からなる駆動力伝達機構で前記被駆動はす歯歯車に伝えて感光体を駆動するはす歯歯車を用いた駆動力伝達装置を備えた画像形成装置であって、
前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βを、前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸との嵌め合い長さLと前記被駆動はす歯歯車における被駆動体軸とのクリアランスCに対応させ、前記駆動はす歯歯車のねじれ角βよりも大きく形成したことを特徴とするはす歯歯車を用いた動力伝達装置を備えた画像形成装置。
【請求項5】
前記被駆動はす歯歯車は、感光体軸に回転不能で交換可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載したはす歯歯車を用いた動力伝達装置を備えた画像形成装置。
【請求項6】
前記被駆動はす歯歯車の外径をAとしたとき、前記被駆動はす歯歯車における感光体軸との嵌め合い長さLとの比A/Lが、
(A/L)≧3
であり、前記被駆動はす歯歯車のねじれ角βと前記駆動はす歯歯車のねじれ角βとの間に、
β=β+8C
の関係を持たせたことを特徴とする請求項4に記載したはす歯歯車を用いた動力伝達装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−9971(P2006−9971A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188910(P2004−188910)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】