説明

アクセスコントロール装置

【課題】長時間電源が落ちて電源投入した際の時刻情報の異常を判別して容易に調整可能とする。
【解決手段】RTCクロック回路部72は、専用電源74によりバックアップされ、年月日時分秒の時刻情報を生成する。時刻情報判定部114は電源投入による起動時にRTCクロック発生部72で生成している時刻情報が所定の正常範囲に入っているか否か判定し、時刻異常処理部116は時刻異常と判定された際に、時刻情報を初期化すると共に時刻異常を外部に報知し、使用者に正しい時刻情報を登録させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードなどの識別情報を用いた認証により電気錠を解錠又は施錠すると共に入退出情報を管理するアクセスコントロール装置に関し、特に、電気錠を備えた扉に対応して設置可能なスタンドアローン型のアクセスコントロール装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビル等の各種施設において、セキュリティを確保するため、室内への人の出入りを管理する入退室管理システムが利用されている。この入退室管理システムは、一般に、管理室等に配置されるウェブサーバ機能を備えたコントロール装置、各部屋の近傍等に配置される制御盤、各部屋の扉の近傍に配置されるカードリーダ、および、各扉に配置される電気錠等で構成されている。
【0003】
システムの運用に際しては、各部屋に出入りすることが許される利用者の識別情報をアクセスコントロール装置に設定し、この識別情報を制御盤にアップロードする。利用者が各部屋に出入りする際、自己の識別情報を記録したカードをカードリーダに通すと、カードリーダで読み取られた識別情報が制御盤に送信され、この制御盤で識別情報の照合が行われる。識別情報が合致した場合には、電気錠が解錠されて利用者が入退室することができ、識別情報が合致しない場合には、電気錠が施錠状態のまま保持されて利用者の入退室が拒否される。
【0004】
また入退出管理情報の参照や閲覧については、イーサネット(R)などにより接続したクライアントマシンからウェブサーバにアクセスしてできるようにしている。
【0005】
また入退出管理システムにあっては、運用履歴の日付情報や時間帯による解錠施錠管理などのために年月日時分秒の時刻情報を生成する時計機能を備えている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−298182号公報
【特許文献2】特開2001−020574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の入退出管理システムにあっては、運用履歴の日付情報や時間帯による解錠施錠管理などのために年月日時分秒の時刻情報を内部的に生成するため時計機能を設ける。
【0008】
時計機能はカレンダークロックIC等を実装することにより実現され、電源を一時的に落とした場合の時計機能の喪失を回避するため、スーパーキャパシタや釦電池などの専用電源によりバックアップするのが一般的である。
【0009】
しかし、アクセスコントロール装置の電源が長時間落とされ後に電源が投入された場合、内部時刻が実時刻に対し大きくずれたり、不適切な日時となっている場合がある。この場合、時刻表示器を設けていれば時刻異常を認識して対応可能であるが、装置の低コスト化や小型化の要求に伴い時刻表示器の設置がスペース等の問題から省略されていると、時刻情報に誤差が生じていても簡単に判定することができない。
【0010】
このように時刻ずれを起こした状態で運用されると、履歴情報に含まれる時刻が実時刻とずれたり、時間帯による解錠施錠管理を行っている場合に意図しない時間帯に施錠が解除されるといった問題が発生する。
【0011】
本発明は、電源投入時の時刻異常を認識して時刻ずれを容易に調整可能とするアクセスコントロール装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電気錠を備えた扉に対応して設置され、識別情報の認証により電気錠を解錠又は施錠すると共に、時刻情報を含む入退出情報を管理するアクセスコントロール装置に於いて、
装置電源部とは別に設けられた専用電源によりバックアップされ、時刻情報を生成する時計回路部と、
電源投入による起動時に、記時計回路部で生成している時刻情報が所定の正常範囲に入っているか否か判定する時刻情報判定部と、
時刻情報判定部で時刻異常と判定された際に、時刻異常を外部に報知する時刻異常処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のアクセスコントロール装置は、更に、時刻情報判定部で時刻正常と判定された際に、専用電源によりバックアップされているメモリデバイスの保持データを解析し、保持データの異常が判別された場合に時刻異常と看做して時刻異常処理部に処理させる時刻異常推定部を設ける。
【0014】
本発明のアクセスコントロール装置は、更に、
所定の設定時刻情報を予め記憶した着脱自在な可搬型メモリデバイスの接続を検出するメモリデバイス検出部と、
時刻登録操作を検出した際に、可搬型メモリデバイスの設定時刻情報を時計回路部に登録して時計動作を開始させる時刻登録部と、
を備えたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、専用電源によりバックアップされている時計回路部が長時間にわたり電源が落ちていることでバックアップ電圧が低下して時計回路部の動作が不安定になったり停止した後に電源が投入された場合、電源投入後に生成している時刻情報が所定の範囲に収まっているか否かで異常の有無を判定し、時刻異常を判定した場合いには表示灯やブザーなどにより時刻異常を報知し、時刻情報の再設定が必要であることを知らせ、正しい時刻情報に再設定させることができる。
【0016】
また、バックアップ電圧が低下して時計回路部が動作停止直前の不安定な状態になった場合、電源投入後の時刻情報は所定の正常範囲に収まっているが実時刻に対し大きくずれている場合が想定され、このような時計回路部で生成している時刻情報の異常を、同じバックアップ電圧を受けて動作している不揮発メモリの保持データを解析し、もし不揮発メモリでデータ保持が不能となっていたような場合には、時計回路部も正しい時刻情報の生成を行っていなかったものと推定して時刻異常と看做し、表示灯やブザーなどにより時刻異常を報知し、時刻情報の再設定が必要であることを知らせ、正しい時刻情報に再設定させる。
【0017】
また時刻異常が報知された時には、可搬型メモリデバイスに未来に到来する所定の設定時刻情報、例えば当日の「12時00分00秒」を予め記憶し、装置に挿入した状態で、正午の時報に合わせて時刻設定スイッチなどによる登録操作を行うと、この登録操作が検出されて、可搬型メモリデバイスの時刻が時計回路部に登録され、正しい時刻登録を簡単な操作で確実に行うことができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるアクセスコントロール装置の外観を示した説明図
【図2】本発明によるアクセスコントロール装置の正面、断面及び底面を示した説明図
【図3】図1のカバーを外して本体内部の構造を示した説明図
【図4】本発明によるアクセスコントロール装置の回路構成を示したブロック図
【図5】電源投入時に時刻異常の有無を判定手する本発明によるアクセスコントロール装置の実施形態を示した機能ブロック図
【図6】図5の実施形態における時刻管理処理を示したフローチャート
【図7】図6のステップS2における時刻登録処理の詳細を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明によるアクセスコントロール装置の外観を示した説明図である。図1において、アクセスコントロール装置10は、電気錠を備えた各部屋の扉に対応して扉近傍の壁面などに設置されている。
【0020】
アクセスコントロール装置10はカバー12の上部に非接触カードリーダ部18を設けており、ここにユーザが保有している非接触カードをかざすことで、カードに格納されている利用者情報が読み取られ、予め登録している利用者情報との比較照合により照合一致が得られたとき電気錠を開錠し、ドアを開いて入室し、ドアを閉じたことを検出した時に電気錠を施錠する。
【0021】
非接触カードリーダ部18の下側にはアクセスコントロールに必要な各種の表示及びスイッチが配置されている。カバー12のパネル面には表示灯として、カード読取状態表示灯20、電気錠開表示灯22、戸締表示灯24、警戒表示灯26、火災表示灯32、警報表示灯34、障害表示灯36及び電源灯40が設けられ、また操作スイッチとして、警戒モード設定スイッチ28、警戒モード解除スイッチ30及び復旧スイッチ38が設けられている。
【0022】
カード読取状態表示灯20はカードを読み取って、有効なカードであれば緑で点灯し、無効なカードであれば赤で点滅する。電気錠開表示灯22は電気錠が解錠されているときに点灯する。戸締表示灯24はアクセスコントロール装置10に接続している人感センサやシャッターセンサにより侵入者を検出したときや戸締まりが完了していないときに、その状態を表示する。警戒表示灯26はアクセスコントロール装置10に接続されている防犯設備(防犯センサ)の警戒状態を表示する。
【0023】
警戒モード設定スイッチ28は防犯センサを警戒モードに移行するときに操作する。警戒モード設定は、警戒モード設定スイッチ28を押すと警戒表示灯26が点滅し、所定時間以内に警戒スイッチ専用のカードを非接触カードリーダ部18に接近させ、有効なカードであれば、警戒モードに移行し、警戒表示灯26が点灯する。なお、人感センサやシャッターセンサなどのセンサが通常監視状態にないと警戒セットはできず、その場合は戸締まりがされているか確認した後に警戒開始設定を行う。
【0024】
警戒モード解除スイッチ30は防犯センサの警戒モードを解除するときに操作する。警戒モード解除は、警戒モード解除スイッチ30を押すと警戒表示灯26が点滅し、所定時間以内に警戒スイッチ専用のカードを非接触カードリーダ部18に接近させ、有効なカードであれば、警戒モードを解除し、警戒表示灯26が消灯する。
【0025】
火災表示灯32は火災受信機から火災代表移報としての火災信号を受けたときに点灯する。なお、設定により火災信号を受けたときに電気錠を自動解錠することもできる。
【0026】
警報表示灯34は侵入者、火災、接点情報など各種警報状態が発生した際に点灯する。障害表示灯36は装置自体、システム状態あるいは通信状態などで障害が発生した場合に点灯する。復旧スイッチ38は火災、警戒、障害など警報状態が発生した場合の警報停止、警報状態ラッチの解除を行うために操作する。
【0027】
またアクセスコントロール装置10には年月日時分秒の時刻情報を生成する時計回路部として例えばリアルタイムクロック発生部(RTC回路部)が内蔵されているが、カバー12には内部時刻を表示するための表示器は設けられていない。また本実施形態にあっては、電源投入時に内部の時計回路部により生成している時刻情報が異常な場合にも障害表示灯36が点灯する。
【0028】
図2は図1に示したアクセスコントロール装置10の正面、断面及び底面を示した説明図である。即ち図2(A)が正面、図2(B)が断面、図2(C)が底面を示している。
【0029】
図2において、本実施形態のアクセスコントロール装置10は、本体14と、本体14の表側に着脱自在に設けられたカバー12で構成されている。本体14の底部にはシリンダー錠16が設けられ、鍵を使用してシリンダー錠16を開錠することで、カバー12を本体14から外すことができる。
【0030】
図3は図1のカバーを外して本体内部の構造を示した説明図である。図3において、アクセスコントロール装置10の本体14の内部には回路基板42が配置されており、回路基板42の下側に操作スイッチとして、USBメモリ取外スイッチ50、履歴データ書出スイッチ52、設備データ読込スイッチ54及び時刻設定スイッチ56を設けている。
【0031】
また回路基板42には、ブザー48、カバー12の開放を検出するタンパースイッチ46を設けている。回路基板42上の右側にはUSBコネクタ60が配置され、ここにデータ管理をオフラインで行うため可搬型メモリデバイスであるUSBメモリを本体14の右側面から接続して、入退室履歴情報、利用者情報、設備管理情報などの読出し及び書込みを行うことになる。
【0032】
回路基板42の左側には破線で示すように、必要に応じてLANコネクタを接続することができ、必要に応じて本発明のアクセスコントロール装置10をネットワークを介して上位装置に接続することができる。
【0033】
USBコネクタ60の下側にはメモリカードとして知られたCFカード(コンパクトフラッシュ(R)カード)64が配置され、アクセスコントロール装置10の動作に必要なOSイメージ、および必要な各種のデータを事前に格納した上で、図示のように本体14の回路基板42にセットすることで、アクセスコントロール装置の制御処理が行えるようにしている。
【0034】
図2及び図3に示したアクセスコントロール装置10の構造から明らかなように、USBメモリを挿入接続するUSBコネクタ60は、カバー12により閉鎖された本体14内の回路基板42上に設けられており、USBコネクタ60にUSBメモリを接続するためにはシリンダー錠16を開錠してカバー12を外さなければならず、このようなシリンダー錠16による施錠により鍵を持たない関係者以外の人が不正にUSBメモリを使用して、アクセスコントロール装置10のデータ取得、閲覧、改竄、更には時刻設定などができないようにしている。
【0035】
また、USBコネクタ60を本体14の右側面付近に設け、USBメモリを本体14の右側面から接続する構成にしたことで、USBメモリを差し込んだとき、USBメモリが本体14の右側面より外側にはみ出すように接続される。これによりUSBメモリを取り外さないとカバー12を本体14に閉めることができず、USBメモリの取り忘れを防止している。
【0036】
図4は本発明によるアクセスコントロール装置の回路構成を示したブロック図である。図4において、アクセスコントロール装置10にはCPU70が設けられ、CPU70に対しては時計回路部として機能するリアルタイムクロック回路部(RTC回路部)72が設けられる。
【0037】
リアルタイムクロック回路部72はカレンダークロックとも呼ばれており、年月日時分秒の時刻データを生成し、時刻情報を付加した履歴情報の記憶や設定した時間帯に対応した電気錠108の解錠施錠制御ができるようにしている。
【0038】
なお、以下の説明では、リアルタイムクロック回路部72により生成する時刻情報の抽象的な表現として、「yyyy年mm月dd日HH時MM分SS秒」を用いるものとする。
【0039】
また、リアルタイムクロック回路部72に対しては釦型電池やスーパーキャパシタなどの専用電源74がバックアップ電源として設けられており、アクセスコントロール装置10の電源が落ちても時計機能は継続して動作できるようにしている。
【0040】
またCPU70に対しては、RS485インタフェース80を介して外付けカードリーダ82を取り付けることができる。またCPU70に対しては内蔵カードリーダモジュール84が設けられており、非接触カードをかざすことで、内部カードリーダモジュール84により、利用者の保有するカードの利用者情報を取得して電気錠108の開錠や施錠などを制御できる。
【0041】
USBインタフェース86は、USBコネクタ60に対するUSBメモリ11の接続に対し、後の説明で明らかにするUSBメモリ11の認証処理に基づいて入退室情報のデータ処理を可能とする。
【0042】
CPU70の外部バスインタフェース71に対しては、揮発メモリとして使用されるSDRAM76、一時バックアップメモリとして使用されるSRAM78、CFカードインタフェース88、LANコントローラ90、更に状態表示や電気錠の施解錠などを行う制御回路部94が設けられている。
【0043】
ここでSRAM78に対してはリアルタイムクロック回路部72と同じく専用電源74からバックアップ電源の供給を受けている。
【0044】
CFカードインタフェース88は、図3に示したように、CFカード64の接続に対する入出力インタフェースを実行する。LANコントローラ90は必要に応じてネットワーク92に接続し、例えば上位のウェブサーバによるアクセスコントロール装置10で管理しているデータの取得や閲覧などを可能とする。
【0045】
制御回路部94に対しては操作部96が設けられ、ここにはUSBメモリ取出スイッチ50、履歴データ書出しスイッチ52、設備データ読込スイッチ54、日時設定スイッチ56が設けられている。また制御回路部94に対しては、表示灯98、ブザー100、タンパースイッチ46が設けられている。
【0046】
更に制御回路部94に対しては電気錠駆動回路106が設けられ、近傍に設置されたドアの電気錠108の施錠と解錠を制御する。更にまた、制御回路部94に対し接点信号入出力回路部110が設けられ、接点信号の入出力により外部機器112に対する移報出力や外部機器112からの移報入力が行われる。外部機器112としては例えば火災報知設備による火災検出接点信号、防犯監視システムによる侵入者検出接点信号の入力などが行われる。
【0047】
図5は時刻登録、時報、時刻アジャスト、時刻吐出しを行う本発明によるアクセスコントロール装置の実施形態を示した機能ブロック図である。
【0048】
図5において、アクセスコントロール装置に設けたCPU70は、プログラムの実行により実現される機能として、時刻異常判定部114、時刻異常推定部115、時刻異常処理部116、USBメモリ検出部118、時刻登録部120及び入退出制御処理部122が設けられている。
【0049】
CPU70に対して設けたリアルタイムクロック回路部72は、年月日時分秒となる時刻情報124を生成し、必要に応じてCPU70が時刻情報124を取得することができる。
【0050】
本実施形態における時刻登録や時刻合せの操作には、時刻設定スイッチ56が使用される。またCPU70に接続したSRAM78はリアルタイムクロック回路部72と同じ専用電源74によりバックアップされて不揮発メモリとして機能し、USBメモリ11の認証に使用する管理用シリアルID126が予め記憶され、更に、運用中には内部ステータス128が保持されている。
【0051】
更にCPU70に対しては、図4に示したSRAM78などのメモリ領域、及びCFカード64を使用して情報管理ファイル130が設けられ、情報管理ファイル130には利用者情報や設備設定情報が格納されている。
【0052】
一方、USBメモリ11にはUSBメモリに固有なシリアルID132が設定されており、本実施形態にあっては、USBメモリ11のシリアルID132を利用して、アクセスコントロール装置10のCPU70に設けたCPUメモリ検出部118で認証処理を実行し、不正なデータアクセスを防ぐようにしている。
【0053】
USBメモリ11には、時刻登録の際には支援用のパーソナルコンピュータなどを使用して設定時刻情報134が予め記憶されている。この設定時刻情報134としては、時刻登録を行いたい未来の日時例えば当日の正午に時刻登録を行いたい場合には、午前中の当日の「12時00分00秒」を登録しておく。
【0054】
ここでCPU70に設けた各部の機能を説明すると次のようになる。まず時刻異常判定部114は、電源投入による起動時に、リアルタイムクロック回路部72で生成している時刻情報が所定の正常範囲に入っているか否か判定する。
【0055】
時刻情報の正常範囲とは例えば次の範囲とする。
(1)2000年01月01日00時00分00秒〜2036年12月31日23時59分59秒の範囲内であること。
(2)月が1月〜12月の範囲内であること。
(3)月の大小、閏月に従って、日が適切な値内にあること。
(4)時が0時〜23時の範囲内にあること。
(5)分が0分〜59分の範囲内にあること。
(6)秒が0秒〜59秒の範囲内にあること。
【0056】
時刻異常処理部116は時刻情報判定部114により前記(1)〜(6)の範囲から外れて時刻異常と判定された際に、時刻情報を「2000年01月01日00時00分00秒」に初期化すると共に、時刻異常を外部に報知するため例えば図1の障害表示灯36を点灯し、また、ブザー48により時刻異常の警報音を出すようにする。
【0057】
時刻異常推定部115は、時刻情報判定部114で時刻正常と判定された際に、専用電源74によりバックアップされているSRAM78に保持されているデータである内部ステータス128を解析し、保持データである内部ステータス128の異常が判別された場合、時刻異常と看做して時刻異常処理部116に時刻情報を「2000年01月01日00時00分00秒」に初期化させると共に、時刻異常を外部に報知するため例えば図1の障害表示灯36を点灯させ、また、ブザー48により時刻異常の警報音を出させるようにする。
【0058】
この時刻異常の推定は、長時間に亘り電源が落ちている間に専用電源74の電圧が低下していくと、リアルタイムクロック回路部72の時計動作は停止するが、時刻情報が保持されている期間があり、この状態で電源が回復すると、前記(1)〜(6)の範囲に入ることで時刻正常と判定される。
【0059】
しかし、電源投入後に生成している時刻情報は実時刻とは大きくずれており、そのまま使用すると時間帯による電気錠の制御や履歴情報に付加する時刻情報に問題がおきる。そこでSRAM78の保持データに異常がある場合には、リアルタイムクロック回路部72の時計機能も保証できないことから、前記(1)〜(6)の範囲に入っていても時刻異常と看做し、時刻異常処理部116に時刻情報を「2000年01月01日00時00分00秒」に初期化すると共に、時刻異常を外部に報知するため例えば図1の障害表示灯36を点灯し、また、ブザー48により時刻異常の警報音を出す処理を行わせる。
【0060】
時刻登録部120は、時刻異常処理部116により時刻異常が報知された後、使用者の時刻登録操作を検出した際に、USBメモリ11の設定時刻情報134リアルタイムクロック回路部72に登録して時計動作を開始させることで正しい時刻情報をセットする。
【0061】
具体的には、未来の時刻となる例えば当日の「12時00分00秒」を設定時刻情報134として予め記憶したUSBメモリ11を、図3に示したカバー12を開いた本体14のUSBコネクタ60に挿入接続した状態で、例えば当日のテレビ、ラジオあるいは電話サービスで提供される時報を聞きながら、正午の時報と同時に時刻設定スイッチ56を操作すると、USBメモリ11に記憶している時刻設定情報134を読み出して、リアルタイムクロック回路部72に設定時刻情報134を登録して時計動作を開始することで、アクセスコントロール装置10の時刻情報を正しい時刻情報にセットする。
【0062】
この時刻登録の際のUSBメモリ11の検出については、USBメモリ検出部118がUSBメモリ11の挿入を検出すると同時に、正しいUSBメモリ11が接続されたか否かの認証処理を実行し、認証成功で有効なUSBメモリ11と判断して、時刻登録部120によりUSBメモリ11の設定時刻情報134による登録処理を実行させる。
【0063】
USBメモリ検出部118によるUSBメモリ11の認証処理としては、次の3つの手法のいずれかを行うことができる。
【0064】
(1)管理用として定めたUSBメモリ11のシリアルID132を管理用シリアルID126としてSRAM78に予め登録しておき、USBメモリ11を接続した際にUSBメモリから読み出したシリアルID132が、SRAM78に登録した管理用のシリアルID126と比較して一致したときに、認証成功とする。
【0065】
(2)管理用として定めたUSBメモリ11のシリアルID132をSRAM78に管理用シリアルID126として予め登録しておき、USBメモリ11を接続した際にUSBメモリ11から暗号化したシリアルIDを読み出して復号し、SRAM78に登録した管理用シリアルID126と比較して一致したときに、認証成功とする。
【0066】
(3)管理用シリアルID126をSRAM78に登録せず、USBメモリ11を接続した際にUSBメモリ11からシリアルID134を読み出すと共に、予めUSBメモリ11に記憶している暗号化シリアルIDを読み出して復号し、両者を比較して一致したときに、認証成功とする。
【0067】
時刻登録部120による正しい時刻セットがリアルタイムクロック回路部72に対し行われると、正しい時刻情報124が生成されるようになり、これによってアクセスコントロール装置10は入退室制御処理部122による運用を開始することになる。
【0068】
入退出制御処理部122は、利用者が保有するカードを読み取ることにより得られたカード読取情報と、情報管理ファイル130に格納している利用者情報との照合を行い、照合一致が得られると電気錠を開錠し、利用者の入室を可能とし、利用者がドアを開いて入室したときのドアの開の検出とその後の閉検出に基づき、電気錠を再び施錠する。この際に、運用履歴情報132に利用者の入室時刻を格納し、これに基づき在室利用者の状況が管理できるようにする。
【0069】
また時間帯による電気錠の開錠、施錠管理が設定されている場合には、リアルタイムクロック回路部72で生成している時刻情報128が開錠設定時刻に達したら電気錠を開錠し、その後、施錠設定時刻に達したら電気錠を施錠することになる。
【0070】
更に本実施形態の時刻登録部120にあっては、時報報知、簡易時刻合せ、絶対時刻合せ及び時刻情報吐出しを行うことができる。
【0071】
時報報知は、リアルタイムクロック回路72で生成している時刻情報124が、1日24時間について予め定めた所定の標準時刻、例えば「12時00分00秒」に達したことを判別し、ブザー48の鳴動により時報を出力する。
【0072】
このような時報出力により、アクセスコントロール装置10に時刻表示器が設けられていなくとも、時報が出力される正午前にアクセスコントロール装置10の近くに行き、アクセスコントロール装置10から時報が出されたときのみ時計を見ることで、アクセスコントロール装置10における内部の時刻情報が実際の時刻に一致しているか、それともどの程度ずれているかを簡単に知ることができる。
【0073】
時報出力を聞いて内部の時刻情報124のずれを知った場合には、必要に応じて時刻合せの調整作業を行うことになる。本実施形態にあっては、簡易時刻合せと強制時刻合せの2つの時刻合せを行うことができる。
【0074】
簡易時刻合せは、図3に示すように、カバー12を外した状態で本体14の下側に設けている時刻設定スイッチ56を例えば長押し操作することで時刻合せ待ち受け状態となり、この状態で時刻設定スイッチ50を操作すると、そのときリアルタイムクロック回路部72で生成している現在の時刻情報のずれを30分以内の遅れまたは30分未満の進みと見なして、0分0秒の時刻に時刻合せする。
【0075】
例えばリアルタイムクロック回路部72の時刻情報128が「11時29分59秒」のときにスイッチ操作を行うと、「11時00分00秒」に設定される。また時刻情報128が「11時30分00秒」に操作を行うと、「11時00分00秒」に設定される。
【0076】
このように簡易時刻合せ部120にあっては、実時刻とのずれが30分以内であれば、各時刻の「00分00秒」に時刻をアジャストすることができる。
【0077】
ここで、実時刻とのずれが30分以上となる場合には、簡易時刻合せでは1時間のずれとなってしまう。例えば実時刻「11時00分00秒」に対し内部の時刻情報が45分進んだ「11時45分00秒」のときに簡易時刻合せを行うと、30分以内の時刻ずれと看做して「12時00分00秒」に時刻合せし、1時間のずれを生じてしまう。そこで30分を越える時刻ずれについては次の強制時刻合せを行う。
【0078】
強制時刻合せは、図3に示すように、カバー12を外した状態で本体14の下側に設けている時刻設定スイッチ56と設備データ読込スイッチ54を同時操作すると時刻合せ待ち受け状態となり、この状態で時刻設定スイッチ50を操作すると時刻情報の強制時刻合せを行うことができる。
【0079】
即ち、強制時刻合せは、リアルタイムクロック回路部72で生成している時刻情報124を標準時刻として定めた当日の「12時00分00秒」に強制的に設定する。これによって、実時刻に対する時刻ずれが30分以上に及ぶ場合にあっても、正しい実時刻に時刻合せすることができる。
【0080】
この簡易時刻合せ部及び強制時刻合せ部による時刻合わせをした際は、時刻合わせをしたことを履歴として保存し、そのときの調整時間幅、調整前後の時刻情報も記憶させる。これにより、時刻調整履歴を可搬性メモリデバイスに書き込んでパソコン等で履歴を確認する際に、時刻調整前に発生した各種履歴情報の正確な発生時刻を把握することができる。
【0081】
更に簡易時刻合せあるいは強制時刻合せで時刻合せを実行した際に実時刻とのずれの度合が分かることから、その際にブザー48の音響出力を利用して、どの程度の時刻ずれが発生しているかを報知するようにする。
【0082】
例えば15分以内の時刻ずれであれば「ピッ」と鳴動し、15〜30分の時刻ずれであれば「ピッピッ」と鳴動し、30分〜45分の時刻ずれであれば「ピッピッピッ」と鳴動し、45分〜60分の時刻ずれであれば「ピッピッピッピッ」と鳴動し、更に1時間を越える時刻ずれであれば連続鳴動音「ピー」とすればよい。もちろん、ずれ時刻とブザーによる音響出力との関係は必要に応じて適宜に定めることができる。
【0083】
このような簡易時刻合せあるいは強制時刻合せの際の時刻ずれを示すブザーによる音響出力により、どの程度の時刻ずれが発生したかを簡単に把握し、簡易時刻合せをするか、強制時刻合せをするかを判断することができる。
【0084】
更に、アクセスコントロール装置10にUSBメモリ11を挿入接続した状態で、図3の本体14内に設けている履歴データ書出スイッチ52を操作すると、このスイッチ操作が判別されて、そのとき生成しているリアルタイムクロック回路部72の時刻情報124がUSBメモリ11に書き込まれる。
【0085】
このようなUSBメモリ11に対する吐出し時刻情報の書込みができたならば、USBメモリ11を外して管理用のパーソナルコンピュータにセットすることで、USBメモリ11に格納した吐出し時刻情報をディスプレイ上に表示することができ、時刻吐出し時の実時刻とUSBメモリの時刻と比較することで、実際にどの程度の時刻ずれが生じているかを簡単に知ることができる。
【0086】
USBメモリ11に吐き出した時刻情報を見て実時刻との時刻ずれを認識することで、それまでUSBメモリ11を用いて取得した運用履歴情報の時刻情報に時刻ずれが発生していることが分かり、吐出し時刻情報から認識した時刻ずれを用いて運用履歴情報の正しい発生時刻に修正するなどの作業が可能となる。
【0087】
またUSBメモリ11に吐き出した吐出し時刻情報を見て、あまりにも実時刻とのずれが大きい場合には、再度、USBメモリ11に設定時刻情報134を登録してアクセスコントロール装置10に挿入し、時刻登録部120による登録操作で再度、正しい時刻セットを行う。
【0088】
図6は図5の実施形態における時刻管理処理を示したフローチャートである。図6において、時刻管理処理は、アクセスコントロール装置10の電源投入による動作に伴い、ステップS1で初期化処理を行った後、ステップS2でリアルタイムクロック回路部72の時刻情報124を取得し、ステップS3で前記(1)〜(6)の範囲内にあるか否かの時刻情報判定処理を行う。
【0089】
ステップS4で時刻情報が前記(1)〜(6)の少なくともいずれかひとつの範囲外にあった場合は、時刻異常と判定され、ステップS5に進んでリアルタイムクロック回路部72の時刻情報124を「2000年01月01日00時00分00秒」に初期化すると共に、ステップS8で時刻異常を外部に報知するため例えば図1の障害表示灯36を点灯し、また、ブザー48により時刻異常の警報音を出す時刻登録要求を報知する。
【0090】
一方、ステップS4で時刻情報が正常と判定された場合には、ステップS6に進み、同じ専用電源74でバックアップされているSRAM78の内部ステータス128を解析し、例えば複数の内部ステータス128の時刻情報が特定の時刻に固定されていたり、内部ステータスの保持が途中で中断していたような場合には、その時点でリアルタイムクロック回路部72がバックアップ電圧の低下で時計動作を止めていると推定でき、従って、電源投入後の時刻情報を異常と看做して時刻情報の初期化と再登録を要求するための報知を行う。
【0091】
ステップS8による時刻登録要求の報知を受けると、USBメモリ11に未来の設定時刻情報134を登録してアクセスコントロール装置10に挿入し、時刻設定スイッチ56を時報に合わせて操作することで、時刻登録部120により正しい時刻セットを行う。
【0092】
時刻登録処理が済むと、アクセスコントロール装置10は運用状態に入り、ステップS10で時刻情報124が各時刻の「00分00秒」に達するごとに、ブザー48から時刻を示す音響出力を行う時報報知処理が実行される。
【0093】
また運用中にあっては、必要に応じてステップS11の簡易時刻合せ処理、ステップS12の強制時刻合せ処理が、ステップS10における時刻報知処理に基づく時刻ずれの度合に応じて実行される。またステップS14で必要があれば、リアルタイムクロック回路部72で生成している時刻情報124をUSBメモリ11に吐き出して確認する時刻情報吐出し処理が実行される。
【0094】
図7は図6のステップS9における時刻登録処理の詳細を示したフローチャートである。図7において、時刻登録処理は、ステップS21でUSBメモリ11の挿入検出の有無をチェックしており、挿入を検出するとステップS22に進み、USBメモリ認証処理を実行する。この認証処理は、前記(1)〜(3)に示したいずれかの手法をとればよい。
【0095】
ステップS23でUSBメモリの認証処理の結果につき認証成功を判別すると、ステップS24に進み、USBメモリ11から設定時刻情報134を読み出して、ワークメモリとして使用している例えばSDRAM76に記憶する。
【0096】
USBメモリ11には時刻登録を行う未来の設定時刻情報134が記憶されていることから、この設定時刻情報134の時刻例えば当日の正午に達したときに時刻設定スイッチ56をオンすると、ステップ25で時刻設定スイッチ56のオンが判別され、ステップS26でワークメモリに記憶しているUSBメモリ11から読み出した時刻設定情報をリアルタイムクロック回路部72の時刻情報にセットし、これによって実時刻に内部の時刻情報124を時刻合せする。
【0097】
続いてステップS27でUSBメモリ11を取り外す際に操作するUSBメモリ取外しスイッチ50の操作を判別すると、一連の時刻登録処理を終了して、図5のメインルーチンにリターンする。
【0098】
一方、ステップS23でUSBメモリ11の認証不成功となった場合には、管理者が保有しているUSBメモリ11以外のUSBメモリの挿入であり、権限のない者によるアクセスであることから、ステップS18でエラー警報を出して時刻設定処理を終了する。
【0099】
なお、上記の実施形態は可搬型メモリデバイスとしてUSBメモリを例に取るものであったが、これ以外に可搬型のメモリデバイスであれば適宜のメモリデバイスを使用することができる。
【0100】
また、SRAM78で解析する内部情報としては、上述した内部ステータス126や管理用シリアルコード126などの通常時使用する情報以外に、時刻異常を判定する特定のコードを予め記憶しておき、給電時に特定のコードが正しく記憶保持されているかどうかで時刻異常を判定するようにしても良い。
【0101】
また、上記の実施形態において時刻登録、簡易時刻合せ、強制時刻合せ、或いは時刻情報吐出しなどの処理が行われた場合には、情報管理ファイル130の運用履歴情報132に、各処理がイベントとして時刻情報と共に記憶する。
【0102】
また、各利用者の識別情報としては、カードに格納された識別情報に限らず、携帯電話などに格納したり、人体の特定部位によって利用者が識別できるものを利用してもよい。
【0103】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0104】
10:アクセスコントロール装置
11:USBメモリ
12:カバー
14:本体
16:シリンダー錠
18:非接触カードリーダ部
50:USBメモリ取出スイッチ
60:USBコネクタ
70:CPU
72:RTCクロック回路部
74:専用電源
78:SRAM
94:制御回路部
106:電気錠駆動回路
108:電気錠
114:時刻異常判定部
116:時刻異常処理部
118:USBメモリ検出部
120:時刻登録部
122:入退出制御部
124:時刻情報
126:管理用シリアルID
128:内部ステータス
130:情報管理ファイル
132:シリアルID
134:設定時刻情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気錠を備えた扉に対応して設置され、識別情報の認証により前記電気錠を解錠又は施錠すると共に、時刻情報を含む入退出情報を管理するアクセスコントロール装置に於いて、
装置電源部とは別に設けられた専用電源によりバックアップされ、時刻情報を生成する時計回路部と、
電源投入による起動時に、前記時計回路部で生成している時刻情報が所定の正常範囲に入っているか否か判定する時刻情報判定部と、
前記時刻情報判定部で時刻異常と判定された際に、時刻異常を外部に報知する時刻異常処理部と、
を備えたことを特徴とするアクセスコントロール装置。

【請求項2】
請求項1記載のアクセスコントロール装置に於いて、更に、前記時刻情報判定部で時刻正常と判定された際に、前記専用電源によりバックアップされているメモリデバイスの保持データを解析し、保持データの異常が判別された場合に時刻異常と看做して前記時刻異常処理部に処理させる時刻異常推定部を設けたことを特徴とするアクセスコントロール装置。

【請求項3】
請求項1記載のアクセスコントロール装置に於いて、更に、
所定の設定時刻情報を予め記憶した着脱自在な可搬型メモリデバイスの接続を検出するメモリデバイス検出部と、
時刻登録操作を検出した際に、前記可搬型メモリデバイスの設定時刻情報を前記時計回路部に登録して時計動作を開始させる時刻登録部と、
を備えたことを特徴とするアクセスコントロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−160728(P2010−160728A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3408(P2009−3408)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】