説明

アシストグリップ

【課題】従来の後輪フェンダー部に設けられたアシストグリップでは、操縦部への乗降時、同時にアシストグリップとハンドルを握る場合が多いため、身体の体重をかけたりするとハンドルが回転し、姿勢を乱すことがあった。また、オープン仕様のトラクタにはルーフや側壁等が設けられていないため、晴れた日中では太陽光の照射により、表示パネルの視界が悪化することがあった。そこで本発明では、オペレータが容易に操縦部へ乗降できるアシストグリップの提供と、表示パネルの視認性向上を狙ったサンバイザーの提供を課題とする。
【解決手段】トラクタ1のステアリングハンドル11前方において、表示パネル12の上方を跨ぐようにしてダッシュボード10上に配置するアシストグリップ35であって、該グリップ35上にサンバイザー21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のアシストグリップに関し、特に、トラクタ等のボンネット後部の操縦部に配設される、アシストグリップの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からトラクタ等の作業車両においては、オペレータがステップに足を載せて操縦部へ搭乗する際に、或いは、操縦部から降りる際に、身体を安定させ、容易に乗降できるように握る補助グリップとして、後輪のフェンダー上部に設けられたアシストグリップが公知となっている。(例えば特許文献1を参照。)
【特許文献1】実公平7−34781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のアシストグリップは操縦部の座席シートの両サイドに配設されるため、例えば、オペレータは座った状態から一旦腰を上げることも無く、自然に掴むことができる。従って、トラクタが不意に姿勢を崩した場合等に、自身の身を守るべく姿勢を保持するためのグリップとしても有効である。
しかし操縦部への乗車、または降車に際しては、片手で前記アシストグリップを握り、他方の手でハンドルを握る場合が多い。この時ハンドルは固定されていないために、乗降時に身体の体重をかけたり、力を入れたりするとハンドルが回転してしまい、思わぬ方向へ身体が倒れたり、急に捩じられたりすることがあった。
【0004】
また、2柱式ロプス仕様(キャビンやキャノピーなし仕様)のトラクタの場合、例えば、晴れた日中での作業時に、太陽光が直接表示パネルに当たり、ガラス面で反射して計器類が見えなくなることがあった。
【0005】
そこで本発明においては、オペレータが、容易に操縦部へ乗車、または降車するための、アシストグリップの提供とともに、表示パネルの視認性を向上させるべく、容易に着脱自在なサンバイザーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、請求項1においては、トラクタのステアリングハンドル前方において、表示パネルの上方を跨ぐようにしてダッシュボード上に配置するアシストグリップであって、該アシストグリップ上にサンバイザーを設けるものである。
【0008】
請求項2においては、前記サンバイザーは取付部材を備え、アシストグリップに着脱可能とするものである。
【0009】
請求項3においては、前記サンバイザーは取付部を備え、該取付部には角度変更手段を設けて、角度変更可能に取り付けるものである。
【0010】
請求項4においては、トラクタのステアリングハンドル前方において、表示パネルの上方を跨ぐようしてダッシュボード上面に配置するアシストグリップであって、該アシストグリップの外側表面に沿って、サンバイザーを設けるものである。
【0011】
請求項5においては、前記サンバイザーの左右両側面の前端における上下略中央部には、前方を開放する開口部を設けるものである。
【0012】
請求項6においては、前記サンバイザーは、前記ダッシュボードに配置したカップホルダーを覆うように後方へ延出するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、トラクタのステアリングハンドル前方において、表示パネルの上方を跨ぐようにしてダッシュボード上に配置するアシストグリップであって、該アシストグリップ上にサンバイザーを設けるので、晴れた日中の作業時においても該サンバイザーにより日差しは遮断され、表示パネル12の視認性は向上する。
【0015】
請求項2においては、前記サンバイザーは取付部材を備え、アシストグリップに着脱可能とするので、あらためてアシストグリップ35の構造を変更したり、別途取付部材を設けることも無く、容易にサンバイザーの着脱が可能であり、また、組み立てが容易であって、不要な場合には容易に外すことができるため、経済的にも優れている。
【0016】
請求項3においては、前記サンバイザーは取付部を備え、該取付部には角度変更手段を設けて、角度変更可能に取り付けるので、光の入る方向に合わせてサンバイザーの角度を変更することができるため、表示パネルの視認性を向上でき、また、前方へ回動することで風を遮ることもできる。
【0017】
請求項4においては、トラクタのステアリングハンドル前方において、表示パネルの上方を跨ぐようしてダッシュボード上面に配置するアシストグリップであって、該アシストグリップの外側表面に沿って、サンバイザーを設けるのでサンバイザー31はアシストグリップ35にしっかりと保持することができる。また、上方及び側方からの光を遮ることができ、表示パネルの視認性を向上できる。
【0018】
請求項5においては、前記サンバイザーの左右両側面の前端における上下略中央部には、前方を開放する開口部を設けるので、該サンバイザー31をアシストグリップ35に装着した場合でも、該アシストグリップ35の左右両側の握る部分が切欠により露出し、オペレータはサンバイザー31を装着した状態でもアシストグリップ35を握ることができる。
【0019】
請求項6においては、前記サンバイザーは、前記ダッシュボードに配置したカップホルダーを覆うように後方へ延出するので、該カップホルダーに缶やボトルやコップ等を収納した場合には、埃等が缶やボトルやコップ等に入り難くなる。また、日光が直接当たることがなく、缶やボトルやコップ等が温められることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る、トラクタの全体的な構成を示した側面図、図2は実施例1におけるアシストグリップに装着するサンバイザーの平面図、図3は同じく正面図、図4は同じく側面図である。また、図5はサンバイザーと取付部材との連結部を示す詳細図、図6は実施例2におけるアシストグリップに装着するサンバイザーの平面図である。さらに、図7は同じく側面図、図8は実施例3におけるキャビン仕様のダッシュボード周辺を示す平面図、図9は同じく正面図、図10は同じく側面図である。
【0021】
[全体構成]
まず図1により、トラクタ1の全体構造について説明する。
トラクタ1は、その下部においてエンジンフレーム2が具備されており、該エンジンフレーム2の上部前側にはエンジン部3が配設され、その後部には操縦部4が配設されている。前記エンジンフレーム2の前下部には、フロントアクスルケース5が左右揺動自在に配設され、該フロントアクスルケース5に軸支された前車軸(図示せず。)の両端には、前輪6・6が軸支されている。一方、前記エンジンフレーム2の後部には、ミッションケースが配設され、該ミッションケースの後部両側には、リアクスルケースに軸止された後車軸が設けられている。そして、該後車軸の両端部には、後輪7・7が軸支されている。
【0022】
前記エンジン部3において、エンジンフレーム2上には、エンジン8やラジエータやバッテリ等が搭載されており、これらはボンネット9により覆われている。該エンジン8からの動力が、前記ミッションケース内の変速装置や駆動伝達機構等を介して、前輪6・6や後輪7・7やPTO軸等に伝達される。
【0023】
前記操縦部4はエンジン部3の後方に位置し、トラクタ1の略中央部から後部にかけて配設される。
前記ボンネット9の後方には、ダッシュボード10が配設され、その内部には、燃料タンク等が収納されている。また、ダッシュボード10の上後部には、ハンドル軸を挿通するための開口部が設けられ、該ハンドル軸の上端にステアリングハンドル11が固設されている。また、該ステアリングハンドル11の前方には、回転数計や燃料計等の計器類や警報ランプ等を配備した表示パネル12が配設され、該表示パネル12の前方、すなわち、前記ダッシュボード10の上前部には、本発明に係るアシストグリップ(前アシストグリップ)35が固設されている。また、前記ダッシュボード10の後方には、座席シート13が配設され、該座席シート13の両側部には、アシストグリップ(横アシストグリップ)16・16が配置されている。該座席シート13とダッシュボード10の間の下部には、ステップ14が設けられており、これらステアリングハンドル11、座席シート13等により、操縦部4が構成されている。
なお、座席シート13の後方には、安全フレーム15が立設されている。
【0024】
ボンネット9内後方には、エンジンフレーム2から上方に、ラジエータブラケット17が立設されており、該ラジエータブラケット17の上部より機体後方に向かって、固定部材となるステー18が固設されている。該ステー18の左右両側には前記アシストグリップ35の基部下面より突出する螺子部を挿通するための孔が開口されている。
【実施例1】
【0025】
[アシストグリップ]
次に、本発明に係るアシストグリップ35について、図2、乃至、図4を用いて説明する。
トラクタ1の操縦部4に配置した、ステアリングハンドル11前方のダッシュボード10にはアシストグリップ35が配置されている。前記アシストグリップ35は、樹脂製素材(ダッシュボード10と同素材。)で成形され、主に左右方向に延出して設けられる水平部と、該水平部の左右両端部から各々垂下して設けられる左右両側下部と、からなる一体型の正面視「門型」形状に構成され、ダッシュボード10の上面部に配設される。すなわち、前記アシストグリップ35の左右両側下部(基部)はステアリングハンドル11の前方に取り付けられており、ダッシュボード10(またはボンネット後部)の上面部(または上側面部)に設けた開口部にアシストグリップ35の基部を挿入し、前記基部下面より突出する螺子部を介して、前記ステー18に取付けられる。
【0026】
そして、この固定された前記基部より緩やかに操縦部4側へ傾倒しながら、上方向へと(斜め上後方)延出される。つまり、アシストグリップ35は側面視においてダッシュボード10上で上後方へ傾斜させている。このアシストグリップ35の傾斜は前記表示パネル12の上部カバーの傾斜に合わせることで違和感なく意匠性を向上させている。こうして、操縦部4へ左右両側から乗車する場合に、ステアリングハンドル11の前方に位置するアシストグリップ35の側部を容易に握れるようにしている。
【0027】
そして、アシストグリップ35の上側部はステアリングハンドル11の最上端部と、略同一高さの位置まで達した後、左右両側から中央へ緩やかに上方に変化させ、継ぎ目無く連結され、正面視略逆U字状に形成される。換言すると、ステアリングハンドル11の上端の略前方にアシストグリップ35の上端が位置するように構成している。こうして、アシストグリップ35の左右中央部の上端はステアリングハンドル11の上端よりも高くなるように配置し、また、アシストグリップ35の左右幅はステアリングハンドル11の左右幅より長くダッシュボード10の左右幅と略同じ、或いは、短く構成して、アシストグリップ35を上方や側方より容易に握れるようにするとともに、該アシストグリップ35と安全フレーム15により操縦者の安全空間を形成している。
【0028】
また、アシストグリップ35は表示パネル12上方を跨いで左右方向に配置され、図3に示すように、正面視において、アシストグリップ35の内側と表示パネル12の外周との間に所定の空間41を形成して、該空間41に指が入り、確実に握れるようにしている。
【0029】
また、アシストグリップ35の上部は平面視において、前方に向かって凸とする緩やかな円弧状に構成しており、ステアリングハンドル11と略同心円状として、アシストグリップ35とステアリングハンドル11との間に所定の間隔X1(図2参照)を形成して、ハンドル操作の邪魔にならないようにし、かつ、アシストグリップ35の上部を上から容易に握れるようにしている。
【0030】
アシストグリップ35の断面形状は略矩形の形状とし、鋭角部を排除した、曲線による構成を基本とするが、これに限定されるものでは無く、例えば、部材の剛性や、オペレータの握り易さ等の理由から、円形、多角形、または独特の形状にて構成しても良い。
【0031】
なお、アシストグリップ35の素材については、本実施例の如く樹脂製素材に限定されるものでは無く、例えば、金属素材等を用いて形成しても良い。また、構成部品についても、本実施例の如く一体型に限定されるものでは無く、例えば、両側部と水平部を別部品で構成し、組立性の容易化を図る構成としても良い。
【0032】
[サンバイザー21]
次に、本発明の実施例1に係る、アシストグリップ35に着脱可能に取り付けるサンバイザー21について、図2、乃至、図5を用いて説明する。
サンバイザー21はサンバイザー本体22や、角度変更手段を備える取付部材23・23等により構成される。
前記サンバイザー本体22は平面視略矩形状の平板で半透明または光を通さない部材で構成され、ダッシュボード10やアシストグリップ35等と同じく樹脂製素材で形成され軽量化を図っている。但し、サンバイザー本体22は後述する第二実施例の如く正面視門形に形成することも可能である。
【0033】
サンバイザー本体22は長手方向を左右方向として、アシストグリップ35の上面において左右方向中央部に配置され、その外形については、前端辺22bを該アシストグリップ35の平面視形状に沿って、また、後端辺22cはサンバイザー21を水平に保持した状態で、ステアリングハンドル11と略同心円状として、各々、前方に向かって凸とする緩やかな円弧状に構成し、サンバイザー本体22の後部とステアリングハンドル11の前部との間には所定の間隔X2(図2参照)を形成し、ハンドル操作時に手が十分入るようにしている。
【0034】
このように、前記サンバイザー本体22は平面視にて左右方向に伸びる略矩形状の平面形状からなり、該サンバイザー本体22の後端辺22cの平面形状は、後方に配設するステアリングハンドル11の外形状に沿って、前方に向かって凸とする緩やかな円弧状の構成とするため、該本体22の後方とステアリングハンドル11の前方との間には十分な間隔X2を確保でき、該ステアリングハンドル11を回動操作する時に握った手を持ち替えることなく、サンバイザー本体22に当たらずにハンドル操作することができる。
【0035】
サンバイザー本体22の前端左右両側部には、平面視矩形状の凹部22a・22aが形成されており、該凹部22a・22aの開口側前部には回動支点となる軸24・24が各々左右方向に横架して設けられている。
ここで、前記凹部22aの形状は後述の保持部23aの平面視形状と比べて幾分大きく形成されており、たとえサンバイザー本体22が水平状態に配置されたとしても、突起物である該保持部23aとは干渉することはない。
【0036】
[取付部材23]
取付部材23は下面にスリットを設けた側面視「C字」形状の嵌合部23bと、該嵌合部23b上部に設けた角度変更手段となる保持部23aを備えている。嵌合部23bの内側形状は、アシストグリップ35の断面形状にほぼ一致して形成されており、前記嵌合部23b内側にアシストグリップ35がはまり込み挟持されて、取付部材23はアシストグリップ35に取付け固定される。すなわち、取付部材23をアシストグリップ35に取付けるには該取付部材23をアシストグリップ35の上方から接近させて、前記「C字」形状の嵌合部23bを押し広げながら、アシストグリップ35を嵌合部23bの内側に嵌合させることにより行い、また逆に、取付部材23をアシストグリップ35から取外すときは該取付部材23をアシストグリップ35の上方に向かって引き抜くだけでよいため、簡単に着脱できる。
但し、取付部材23のアシストグリップ35への固定構造は限定するものではなく、螺子等で直接固定する構成であっても良く、アシストグリップ35を挟んでボルト等で挟持固定することも可能である。
【0037】
前記保持部23aは前記軸24を回動可能に保持するものであり、サンバイザー21を任意の角度に回動して調節できるようにしている。具体的には、前記軸24を多角形に構成し、保持部23aは板バネで構成して、軸24の両側を保持部23aで挟むように構成し、面と面が圧接する位置で保持する構造となっている。
ここで、前記保持部23aにおいては一対の半円状の板材で構成して、左右方向に横架する棒状の軸24の前後両側面を保持部で挟み、ボルト等で締め付けて任意の角度で軸24を固定する構造としてもよく、或いは、保持部23aをパイプ状して軸24を挿入して回転自在に枢支し、保持部23aの側面にボルトまたは螺子等の螺子部材を軸心方向に螺装して、任意角度に回動した後に螺子部材を軸24外周に押し付けて締付固定する構造としてもよい。
【0038】
このような構成により、サンバイザー21はアシストグリップ35に着脱自在に装着される。すなわち、アシストグリップ35上部の左右方向に伸びる水平部において、所定の間隔を隔てて複数(本実施例では2個)の取付部材23・23を、アシストグリップ35の斜め前上方より斜め後下方に向かって差し込むことによりサンバイザー21を取り付けることができ、工具等がなくても容易に着脱できる。そして、サンバイザー本体22は軸24を中心に上下または前後回動可能として、保持部23aにより保持され、任意の角度に保持することができる。
【0039】
従って、前記サンバイザー21は取付部(取付部材23)を備え、該取付部には角度変更手段を設けて、角度変更可能に取り付けるので、例えば、図4に示すように、斜め前下方に突出するようにサンバイザー本体22を(P1)の位置まで前方へ回動して保持すると、カウルとなって前方からの風を防ぐことができる。また、略鉛直方向に向くようにサンバイザー本体22を(P2)の位置まで回動して保持すると、前方からの風を防ぐとともに、ボンネットからの光の反射も防ぐことができる。さらに、サンバイザー本体22を斜め後下方に向けて(ステアリングハンドル11のホイルと側面視で略平行に)突出するように(P3)の位置まで回動して保持することで、表示パネル12に直接太陽光が当たることを防止することができるため、光が表示パネル12の表面のガラスで反射して見にくくなることもなく、表示パネル12を見て計器類やモニタ等の表示を視認することができる。
【0040】
このように、トラクタ1のステアリングハンドル11前方において、表示パネル12の上方を跨ぐようにしてダッシュボード10上面に配置する正面視「門型」形状のアシストグリップ35であって、該アシストグリップ35上にサンバイザー(サンバイザー本体22)を設けるので、晴れた日中の作業時においても該サンバイザー本体22により日差しは遮断され、表示パネル12の視認性が向上し、また、作業の都合により、車体前方の下方の視界をより確保する場合や、メンテナンス時等の場合には、容易に前方側(図4に示す矢印B)に傾倒させることができる。
【0041】
また、前記サンバイザー本体22は取付部材23を備え、該取付部材23は側面視C字状に構成した嵌合部23bにより、アシストグリップ35に着脱可能とするので、あらためてアシストグリップ35の構造を変更することも無く、経済的にも優れ、かつ、サンバイザーが不要な場合には、工具等がなくても容易に着脱できる。
【実施例2】
【0042】
[サンバイザー31]
次に、本発明の実施例2に係る、アシストグリップ35に一体的に取り付け固定するサンバイザー31について、図6、および、図7を用いて説明する。
サンバイザー31はダッシュボード10等と同じく樹脂製素材の板材で構成され、アシストグリップ35の外形に沿って前記サンバイザー31の下面(内面側)を緩やかに湾曲させた、正面視略「門型」の形状に形成される。
【0043】
すなわち、サンバイザー31は板材を正面視略「門型」に折曲形成され、サンバイザー31の前部がアシストグリップ35の外周に螺子等で固定され、後方へ所定長さ延出して取付けられる。つまり、サンバイザー31は前部を該アシストグリップ35の前形状に略合わせた形状とし、水平部の後端辺31bについてはステアリングハンドル11と略同心円状に構成することで、サンバイザー31後部とステアリングハンドル11の前部との間において、所定の間隔X3(図6参照)を形成し、ハンドル操作時に手が十分入るようにしている。
側面は後部を略垂直として上面の後端と一致させ、前部はアシストグリップ35の前面形状に合わせるとともに、上下中途部に前方に開放する凹部31aを設けている。該凹部31aは手が入る大きさとし、本実施例では矩形状に形成しているが、半円状や三角形状等でもよく、特に限定するものではない。
【0044】
このように、前記サンバイザー31の左右両側面において、前面部の上下略中央部には前方に開放する凹部31aを設けるので、該サンバイザー31をアシストグリップ35に装着した場合でも、凹部31aの部分ではアシストグリップ35が露出し、左右両側からアシストグリップ35を握ることができる。
【0045】
また、本実施例2においては、表示パネル12の左右一側、もしくは両側の近傍にカップホルダー26が設けられており、該カップホルダー26に缶ジュースやペットボトル等を収納した状態で、その上方や側方を前記サンバイザー31で覆う構成としている。
即ち、ダッシュボード10の上面には表示パネル12とカップホルダー26が設けられ、該表示パネル12とカップホルダー26の前上方を跨ぐようにアシストグリップ35が設けられ、該アシストグリップ35の上面及び側面から後方にサンバイザー31が延設され、該サンバイザー31により表示パネル12とカップホルダー26を覆うように構成している。
【0046】
このように構成することにより、表示パネル12に直接太陽光が当たることを防止でき、表示パネル12が見にくくなることを防止でき、雨で濡れて見にくくなることも防止でき、紫外線等で劣化することを抑えることができる。また、カップホルダー26の上方及び側方がサンバイザーにより覆われるので、埃等が付着しにくく、カップホルダー26に収納した缶やボトルやコップ等が日光に当たり温められることを防止できる。
【0047】
また、トラクタ1のステアリングハンドル11前方において、表示パネル12の上方を跨ぐようしてダッシュボード10上面に配置する正面視略「門型」のアシストグリップ35であって、該アシストグリップ35の外側表面に沿って、正面視門型のサンバイザー31を設けるので、該サンバイザー31はアシストグリップ35の外周面において面接触し、しっかりと保持することができ、かつ、表示パネル12の上部、および、左右両側部からの日差しや、巻き上げられた藁等に対して、効果的に該表示パネル12を保護することができる。
【実施例3】
【0048】
[キャビン仕様]
本発明に係るアシストグリップ35は、主にオープン仕様に適用されるが、キャビン仕様の場合には空調の通路として利用して部品の共通化することも可能である。キャビン仕様の実施例3について、図8、乃至、図10を用いて説明する。
【0049】
キャビン仕様のトラクタ1では、乗降の際に身体を支えるためのアシストグリップはキャビンフレームの外側に取り付けられるので、前述のダッシュボード10前方のアシストグリップは不要となるが、身体を支えるためではなく、空調用の冷媒または温水または風の通路として前記アシストグリップの代替部品が設けられている。
すなわち、キャビンの前面ガラス27とステアリングハンドル11の間のダッシュボード10上に正面視略門形状の空調配管32と、該空調配管32の外周を間隙を介して覆うパイプケース29が表示パネル12を跨いで設けられる。
【0050】
[空調配管32とパイプケース29]
ダッシュボード10上面の前方左右両側部において、空調配管32と、該空調配管32を覆う筒状のパイプケース29が各々上方に向かって延出し、ステアリングハンドル11の前方上端部と略同一高さにおいて、水平左右方向に横架される。
このように、パイプケース29は表示パネル12の前方を跨いで左右方向に配置され、同時に、前面ガラス27の後方近傍に僅かな隙間X4(図10参照。)を空けて設けられる。
【0051】
すなわち、パイプケース29の内部には、同じく正面視「門型」に形成される空調配管32が配設されており、該パイプケース29の外周面(本実施例では前面部、および、上面部)には複数の通風孔30・30・・・が所定間隔をあけて開口されている。
そして、前記空調配管32の一側はラジエーターの吸入側(冷却水ポンプの吸入側)にバルブを介して接続され、空調配管32の他端はエンジンの冷却後の冷却水通路とバルブを介して接続されている。但し、空調配管32はエアコンの熱交換器と接続して、冷房用に利用することも可能である。
【0052】
つまり、エンジンを冷却した後の冷却水は高温となっており、冬季などキャビン内を温めたいときには、バルブを開けてこの温水が空調配管32に導かれ、パイプケース29内の空調配管32を通った後にラジエーターへと導かれて冷却される。そして、冷却された冷却水は、再びエンジン部3へ導かれて冷却する。一方、夏季などキャビン内を温めないときには、バルブを閉じておく。
【0053】
また、筒状に構成したパイプケース29の一端は、切換手段を介してボンネット9内のエンジンルームと連通され、他端は機外に開放されている。すなわち、パイプケース29の一端は、エンジンに付設される冷却ファンの風下側のエンジンルームに連通するように配置して、エンジン冷却後の熱風を導入可能とし、この入口にシャッターや風向板等より構成した切換手段を設けて、冬季などキャビン内を温めたいときには、切換手段を開けてパイプケース29内に熱風を導くようにし、夏季などでは切換手段を閉じてパイプケース29内に熱気が入らないようにしている。
そして、パイプケース29内に導かれた熱風は、空調配管32の外周部で温められて冷えないようにして、パイプケース29に設けられる複数の通風孔30・30・・・よりキャビン内へと噴出される。
【0054】
該通風孔30はパイプケース29の前面、および、上面に設けられ、前面の通風孔30より噴出した熱風はキャビン内の前面ガラス27に直接吹付け、主に、ガラス面の「曇り止」としての機能を果たし、一方、上面の通風孔30より噴出される熱風はキャビン内を温めるようにしている。
【0055】
パイプケース29の外周上には、前記同様にサンバイザー33を設ける構成としてもよい。該サンバイザー33は正面視にてパイプケース29の外周形状に沿った「門型」に形成され、かつ、平面視において、その後端部をステアリングハンドル11と略同一とし、前方に凸とする、緩やかな湾曲形状に形成される。また、サンバイザー33の上面前端には複数の切欠(または孔)33a・33a・・・が前記パイプケース29上面の通風孔30・30・・・の位置に合わせて設けられており、該サンバイザー33をパイプケース29に取付ける際に、通風孔30・30・・・を塞がないようにしている。
【0056】
このような形状からなるサンバイザー33は、パイプケース29の外側面において、ボルト等の締結部品を介して取付けられており、この際、各々の締結箇所において両部材29・33の間隙に断熱材34・34・・・を設け、パイプケース29からの熱によりサンバイザー33が変形しないようにしている。
【0057】
このような構成により、キャビン仕様のトラクタ1については、既存のエンジン設備を利用して、前面ガラス27の「曇り止め」や室内暖房を行うことができ、かつ、従来のアシストグリップ35の組付け部を利用して前記パイプケース29を設けることから、あえて設計変更等を行う必要もなく、経済的にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例に係る、トラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】実施例1におけるアシストグリップに装着するサンバイザーの平面図。
【図3】同じく正面図。
【図4】同じく側面図。
【図5】サンバイザーと取付部材との連結部を示す詳細図。
【図6】実施例2におけるアシストグリップに装着するサンバイザーの平面図。
【図7】同じく側面図。
【図8】実施例3におけるキャビン仕様のダッシュボード周辺を示す平面図。
【図9】同じく正面図。
【図10】同じく側面図。
【符号の説明】
【0059】
1 トラクタ
10 ダッシュボード
11 ステアリングハンドル
12 表示パネル
21 サンバイザー
22 サンバイザー本体
22a 凹部
23 取付部材
24 軸
35 アシストグリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタのステアリングハンドル前方において、表示パネルの上方を跨ぐようにしてダッシュボード上に配置するアシストグリップであって、該アシストグリップ上にサンバイザーを設ける、ことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記サンバイザーは取付部材を備え、アシストグリップに着脱可能とする、ことを特徴とする、請求項1に記載のトラクタのアシストグリップ。
【請求項3】
前記サンバイザーは取付部を備え、該取付部には角度変更手段を設けて、角度変更可能に取り付ける、ことを特徴とする、請求項1、または、請求項2に記載のアシストグリップ。
【請求項4】
トラクタのステアリングハンドル前方において、表示パネルの上方を跨ぐようしてダッシュボード上面に配置するアシストグリップであって、該アシストグリップの外側表面に沿って、サンバイザーを設ける、ことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項5】
前記サンバイザーの左右両側面の前端における上下略中央部には、前方を開放する開口部を設ける、ことを特徴とする請求項4に記載のアシストグリップ。
【請求項6】
前記サンバイザーは、前記ダッシュボードに配置したカップホルダーを覆うように後方へ延出する、ことを特徴とする請求項4、または、請求項5に記載のアシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35134(P2009−35134A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201166(P2007−201166)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】