説明

アデノシン受容体アンタゴニストとしての置換ピリミジン

式(I)の化合物(その薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、およびステレオイソマーを含む)であって、R、R、およびRは本明細書で定める通りである。構造(I)の化合物を含有する医薬組成物、ならびにその使用に関する方法も開示される。本発明の化合物は、一般的に、様々な疾患または状態、特に、アデノシン(特にA2A)受容体の阻害から利益を受ける疾患または状態を治療するために用いられてよい。従って、別の実施形態では、虚血、上室性不整脈、急性腎不全、心筋再かん流傷害、自己免疫疾患、炎症性大腸炎、喘息、糖尿病、肥満、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニア、およびジスキネジアが含まれる(しかし、これらに限定されない)1つ以上の様々な病気または状態を治療するための方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年12月4日に出願された米国仮出願第60/868,517号(この出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、アデノシン受容体の新しいアンタゴニストに関し、具体的に、A2Aアデノシン受容体のサブタイプのアンタゴニスト、アデノシン受容体の拮抗作用によって改善可能な病気および疾患の治療における前記化合物の使用、ならびに前記化合物を含む医薬組成物に関する。A2Aアデノシン受容体のアンタゴニストの使用によって改善することが知られている中枢神経系の疾患には、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、レストレスレッグス症候群、およびジスキネジアが含まれる。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
アデノシンの作用は、Gタンパク質共役受容体ファミリーに属する、受容体A、A2A、A2B、およびAとしてこれまでに同定され、分類されている少なくとも4つの特異的な細胞膜受容体を介して仲介される。AおよびA受容体は、それらがGタンパク質と共役することによって細胞のcAMPレベルをダウンレギュレートし、アデニル酸シクラーゼを阻害する。その一方でA2AおよびA2B受容体は、アデニル酸シクラーゼを活性化するGタンパク質と共役し、cAMPの細胞内レベルを上昇させる。これらの受容体を介して、アデノシンは幅広い種類の生理学的機能を調節する。
【0004】
故に心臓血管系において、A受容体の活性化は、虚血および低酸素の影響から心臓組織を保護する。A受容体によって誘発される抗アドレナリン反応を高める、A2A受容体の拮抗作用によっても同様の保護作用がもたらされ、急性心筋虚血および上室性不整脈の治療においても有用であり得る(非特許文献1;非特許文献2)。さらに、A2Bアデノシン受容体サブタイプ(非特許文献3)は、血管緊張の制御および血管平滑筋の成長の調節に関与するようである。
【0005】
腎臓においてはアデノシンは二相性作用を発揮し、これには高濃度における血管拡張および低濃度における血管収縮が含まれる。従って、A受容体アンタゴニストによって改善される可能性がある、ある種の急性腎不全の発症機序においてアデノシンが役割を果たしている(非特許文献4;非特許文献5)。
【0006】
アデノシンは、免疫系の生理病理学にも関与する。アデノシンは、A2Bおよび/またはA受容体を介して、活性化ヒト肥満細胞の脱顆粒を誘発し得る。故に、A2Bおよび/またはAアンタゴニストは肥満細胞の脱顆粒を防ぎ、従ってA2Bおよび/またはA受容体の活性化および肥満細胞の脱顆粒によって誘発される病的状態の治療、予防、または抑制に有用である。これらの病的状態には、喘息、心筋再かん流傷害、鼻炎、じんましんを含むがこれらに限定されないアレルギー性反応、強皮症、関節炎(scleroderm arthritis)、その他の自己免疫疾患、および炎症性大腸炎が含まれるがこれらに限定されない。
【0007】
さらに呼吸器系において、アデノシンは気管支収縮を誘発し、気道の炎症を調節し、好中球の走化性を促進する。従って、アデノシンアンタゴニストは、喘息の治療に特に有用であろう。
【0008】
胃腸系および代謝系では、A2Bアデノシン受容体サブタイプ(非特許文献3)は、肝臓のグルコース産生の調節、腸管緊張の調節だけでなく腸内分泌に関与しているようである。故に、A2Bアンタゴニストは、糖尿病および肥満の治療に有用であるかもしれない。
【0009】
中枢神経系においては、アデノシンは強力な内性神経調節物質であり、多くの神経伝達物質のシナプス前放出を制御し、従って運動機能、睡眠、不安、痛み、および精神運動活動に関与している。全てのアデノシン受容体サブタイプが脳に存在し、AおよびA2Aサブタイプは分布が異なる。前者が海馬および皮質に主に認められる一方、後者は線条体に主に認められる。アデノシンA2A受容体は線条体におけるGABAの放出を調節し、これによって中型有棘神経細胞の活性を調節している可能性がある。
【0010】
故に、A2A受容体アンタゴニストは、神経変性運動性疾患、例えばパーキンソン病およびハンチントン病(非特許文献6;非特許文献7)、レストレスレッグス症候群のようなジストニア(非特許文献8)、ならびに神経遮断薬およびドーパミン作用薬の長期使用が原因となるもののようなジスキネジア(非特許文献9)に対する有用な治療となる可能性がある。
【0011】
パーキンソン病の治療において、A2Aアンタゴニストは単剤治療としてだけでなく、L−DOPAおよび/または次の薬:ドーパミンアゴニスト、ドーパミンデカルボキシラーゼの阻害物質、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害物質、およびモノアミンオキシダーゼの阻害物質のうちの1つ以上と併用して投与する場合にも有用であり得る。
【0012】
さらに、A2Aアンタゴニストは、神経保護物質として(非特許文献10)、および睡眠障害の治療(非特許文献11)において治療可能性を有し得る。
【0013】
現在では、ある4−アミノピリミジン誘導体がA2Aアデノシン受容体の新しい強力なアンタゴニストであり、従ってアデノシン受容体の拮抗作用による改善が可能な病気の治療または予防に使用され得ることが見出されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Norton GRら、Am J Physiol.(1999)276(2 Pt 2):H341−9
【非特許文献2】Auchampach JA, Bolli R. Am J Physiol.(1999)276(3 Pt 2): H1113−6
【非特許文献3】Feoktistov, I.ら、Pharmacol. Rev(1997)49,381−402
【非特許文献4】Costello−Boerrigter LC,ら、Med Clin North Am.(2003)Mar;87(2):475−91
【非特許文献5】Gottlieb SS., Drugs.(2001)61(10):1387−93
【非特許文献6】Tuite P,ら、J. Expert Opin Investig Drugs.(2003)12:1335−52
【非特許文献7】Popoli P.ら、J Neurosci.(2002)22:1967−75
【非特許文献8】Happe S,ら、Neuropsychobiology.(2003)48: 82−6
【非特許文献9】Jenner P. J Neurol.(2000)247 Suppl2: II43−50
【非特許文献10】Stone TW.ら、Drug. Dev. Res.(2001)52: 323−330
【非特許文献11】Dunwiddie TVら、Ann. Rev. Neurosci.(2001)24: 31−55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明のさらなる目的は、前記化合物を調製するための方法と、効果的な量の前記化合物を含む医薬組成物と、アデノシン受容体の拮抗作用によって、特にA2Aアデノシン受容体の拮抗作用によって改善可能な病態または病気の治療のための薬剤の製造における化合物の使用と、治療を必要とする対象への、本発明の化合物ならびに次の薬:L−DOPA、ドーパミンアゴニスト、ドーパミンデカルボキシラーゼの阻害物質、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害物質、およびモノアミンオキシダーゼの阻害物質のうちの1つ以上と前記化合物の組み合わせの投与を含む、アデノシン受容体の拮抗作用による、特にA2Aアデノシン受容体の拮抗作用による改善が可能な病態または病気の治療法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
簡潔にいえば、本発明は、全般的にはアデノシン受容体アンタゴニストだけでなくそれらの調製および使用のための方法、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。より具体的には、本発明のアデノシン受容体アンタゴニストは、下記の一般的構造(I):
【0017】
【化1】

【0018】
を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、ならびにステレオイソマーであって、R、R、およびRは以下に定める通りである。
【0019】
本発明の化合物は、一般的に、様々な疾患または状態、特に、アデノシン(特にA2A)受容体の阻害から利益を受ける疾患または状態を治療するために用いられてよい。従って、別の実施形態では、虚血、上室性不整脈、急性腎不全、心筋再かん流傷害、自己免疫疾患、炎症性大腸炎、喘息、糖尿病、肥満、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニア、およびジスキネジアが含まれる(しかし、これらに限定されない)1つ以上の様々な病気または状態を治療するための方法が開示される。
【0020】
本発明の方法は、一般的に、それを必要とする動物(本明細書では、“患者”とも呼ばれ、ヒトを含む)への、典型的には医薬組成物の状態の効果的な量の本発明の1つ以上の化合物の投与を含む。従って、さらに別の実施形態では、本発明の1つ以上の化合物ならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含有する組成物が開示される。
【0021】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、下記の詳細な説明を参照することで明らかになるであろう。そのために、ある手段、化合物、および/または組成物をより詳しく説明する様々な参考文献を本明細書に記載しており、それら開示内容全体は、参考として本明細書で援用される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
上述のように本発明は、一般的には、アデノシン受容体アンタゴニストとして有用な化合物に関する。本発明の化合物は下記の構造(I):
【0023】
【化2】

【0024】
およびその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、ならびにステレオイソマーを有し、式中、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、およびシアノの群から選択される1つ以上のメンバーによって場合により置換されているヘテロ環であり、
は、NRまたはヘテロ環であって、ヘテロ環は0〜4つのR基で置換されており、
は、H、R、OR、COR、CONR、COOR、または少なくとも1つの窒素を有するヘテロアリールであって、ヘテロアリールは0〜4つのRで場合により置換されており、
は、それぞれ生じるときに、低級アルキル、低級アルコキシ、アルコキシアルキル、オキソ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、−C(O)−アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロ環、およびヘテロ環アルキルの群から選択され、低級アルキル、低級アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロ環、およびヘテロ環アルキル基は、1つ以上の低級アルキル、ハロゲン、低級アルコキシ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、および−C(O)−アルキルによって場合により置換されており、
は、それぞれ生じるときに、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、およびアルコキシアルキルの群から選択され、
は、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロ環アルキルであって、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロ環アルキル基は、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノの群から選択される1つ以上のメンバーで場合により置換されており、ならびに、
は、水素または低級アルキルであって、低級アルキル基は、アルコキシ、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノの群から選択される1つ以上のメンバーで場合により置換されている。
【0025】
本発明のその他の態様は、a)医薬的に効果的な量の本発明の化合物を含有する医薬組成物、b)アデノシン受容体の拮抗作用によって、特にA2Aアデノシン受容体の拮抗作用によって改善可能な病気の治療のための薬剤の製造における本発明の化合物の使用、およびc)アデノシン受容体の拮抗作用による、特にA2Aアデノシン受容体の拮抗作用による改善が可能な病気の治療の方法であって、本方法は、治療を必要とする対象への本発明の化合物の投与を含む。本発明は、次の薬:L−DOPA、ドーパミンアゴニスト、ドーパミンデカルボキシラーゼの阻害物質、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害物質、およびモノアミンオキシダーゼの阻害物質のうちの1つ以上と組み合わせた、本発明の化合物のそれを必要とする対象への投与も含む。
【0026】
本明細書で用いられるように、用語低級アルキルは、場合により置換された、1個〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルラジカルを包含する。典型的には、低級アルキル基は1個〜6個、または1個〜4個の炭素原子を有する。前記アルキル基における置換基の典型例は、ハロゲン、ヒドロキシ、およびアミノである。
【0027】
低級アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、イソペンチル、1−エチルプロピル。1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、およびiso−ヘキシルラジカルが含まれる。
【0028】
本明細書で用いられるように、用語低級アルコキシは、場合により置換された、1個〜8個の、典型的には1個〜6個の、より典型的には1個〜4個の炭素原子のアルキル部分をそれぞれ有する、直鎖または分岐のオキシ含有ラジカルを包含する。前記アルコキシ基における置換基の典型例は、ハロゲン、ヒドロキシ、およびアミノである。
【0029】
低級アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、ヒドロキシメトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、または2−ヒドロキシプロポキシが含まれる。
【0030】
本明細書で用いられるように、用語低級アルキルチオは、場合により置換された、1個〜8個の、典型的には1個〜6個の、より典型的には1個〜4個の炭素原子の直鎖または分岐アルキルラジカルを含有するラジカルを包含する。前記アルコキシ基における置換基の典型例は、ハロゲン、ヒドロキシ、およびアミノである。
【0031】
場合により置換された低級アルキルチオラジカルの例には、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、t−ブチルチオ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチルチオ、ヒドロキシメチルチオ、2−ヒドロキシエチルチオ、または2−ヒドロキシプロピルチオが含まれる。
【0032】
本明細書で用いられるように、“アシル”という用語は、式、アルキル−C(=O)−によって表される基を意味し、式中、アルキル基は置換されていてよいまたは置換されていなくてよい。
【0033】
本明細書で用いられるように、用語環式基は、別段の記載がない限り、炭素環およびヘテロ環式ラジカルを包含する。環式ラジカルは、1つ以上の環を含有し得る。炭素環式ラジカルは、芳香族または脂環式のもの、例えばシクロアルキルラジカルであってよい。ヘテロ環式ラジカルには、ヘテロアリールラジカルも含まれる。
【0034】
本明細書で用いられるように、用語芳香族基は、典型的には、O、S、およびNから選択される1つ以上のヘテロ原子を包含してよい、5員〜14員の芳香族環系、例えば5員または6員環を含む。ヘテロ原子が存在しない場合、ラジカルはアリールラジカルと名付けられ、少なくとも1つのヘテロ原子が存在する場合、ラジカルはヘテロアリールラジカルと名付けられる。芳香族ラジカルは単環式または多環式であってよく、例えばフェニルまたはナフチルであってよい。芳香族ラジカルまたは部分が2つ以上の置換基を有する場合、置換基は同一または異なっていてよい。
【0035】
本明細書で用いられるように、用語アリールラジカルは、典型的には、C〜C14の単環式または多環式アリールラジカル、例えばフェニル、ナフチル、アントラニル、またはフェナントリルを包含する。アリールラジカルが2つ以上の置換基を有する場合、置換基は同一または異なっていてよい。
【0036】
本明細書で用いられるように、用語ヘテロアリールラジカルは、典型的には、少なくとも1つのヘテロ芳香族環を含み、O、S、およびNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5〜14員の環系を包含。ヘテロアリールラジカルは、単一環または2つ以上の融合環であってよく、少なくとも1つの環がヘテロ原子を含有する。
【0037】
ヘテロアリールの例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、ピロリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、キノリジニル、シンノリニル、トリアゾリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、イソインドリル、イミダゾリジニル、プテリジニル、およびピラゾリルが含まれる。ヘテロアリールラジカルが2つ以上の置換基を有する場合、置換基は同一または異なっていてよい。
【0038】
本明細書で用いられるように、ヘテロ環ラジカルは、典型的には、少なくとも1つのヘテロ環を含み、O、S、およびNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5〜14員の環系を包含する。ヘテロ環ラジカルは、単一環または2つ以上の融合環であってよく、少なくとも1つの環がヘテロ原子を含有する。ヘテロ環ラジカルは、芳香族であってよく、その場合これはヘテロアリールラジカルであり、またはこれは芳香族以外のものであってよい。
【0039】
芳香族へテロ環(すなわち、ヘテロアリール)の例は上記に記載している。非芳香族へテロ環の例には、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリジニル、チオモルホリニル、オキサゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、アゼパニル、[1,4]ジアゼパニル、[1,4]オキサゼパニル、およびチアゼパニルが含まれる。
【0040】
本明細書で用いられるように、用語シクロアルキルは、飽和した、場合により置換された炭素環式ラジカルを含み、別段の記載がない限り、シクロアルキルラジカルは典型的に3個〜7個の炭素原子を有する。前記シクロアルキル基における好ましい置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、およびアミノ基から選択される。
【0041】
例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが含まれる。これは、好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。シクロアルキルラジカルが2つ以上の置換基を有する場合、置換基は同一または異なっていてよい。
【0042】
本明細書で用いられるように、本発明の一般的構造中に存在する原子、ラジカル、部分、鎖、または環のいくつかは、“場合により置換されている”。これは、これらの原子、ラジカル、部分、鎖、または環は置換されていない、あるいは1つ以上の、例えば1、2、3、または4つの置換基によって任意の位置で置換されている状態のいずれかであってよく、それによって、置換されていない原子、ラジカル、部分、鎖、または環に結合している水素原子は、化学的に許容可能な原子、ラジカル、部分、鎖、または環で置き換わっていることを意味する。2つ以上の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は同一または異なっていてよい。
【0043】
“場合により置換された”構造の置換基には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、シクロアルキル、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミド(例えば、CONH2、CONHアルキル、およびCONHジアルキル、ならびにリバースのNCOHまたはNCOアルキル)、F、Cl、Br、I、CN、NO、NH、NHCH、NHCHCH、N(CH、N(CHCH、SH、SCH、OH、OCH、OCF、CH、およびCFの置換基の1つ以上、典型的には1つ〜4つ、より典型的には1つ〜2つが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で用いられるように、用語ハロゲン原子は、塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素原子、典型的にはフッ素、塩素、または臭素原子、最も好ましくは塩素またはフッ素を包含する。接頭辞として使用される場合の用語ハロは同様の意味を有する。
【0045】
本明細書で用いられるように、用語薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸または塩基との塩を包含する。薬学的に許容される酸には、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、および硝酸、ならびに有機酸、例えばクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはp−トルエンスルホン酸が含まれる。薬学的に許容される塩基には、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)、およびアルカリ土類金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)の水酸化物、および有機塩基、例えばアルキルアミン、アリールアルキルアミン、およびヘテロ環アミンが含まれる。
【0046】
本発明によるその他の好ましい塩は、1当量のアニオン(X)がN原子の陽性電荷と結合している第4級アンモニウム化合物である。Xは、様々な鉱酸のアニオン、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、硝酸、リン酸などのアニオン、または有機酸のアニオン、例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸などのアニオンであってよい。Xは好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、硝酸、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、またはトリフルオロ酢酸のアニオンから選択されるアニオンである。より好ましくは、Xは塩化物、臭化物、トリフルオロ酢酸、またはメタンスルホン酸のアニオンである。
【0047】
本明細書で用いられるように、N−オキシドは、便利な酸化剤を使用して、分子中に存在する3級塩基性アミンまたはイミンから形成される。
【0048】
本発明の一実施形態において、式(I)の化合物中では、Rは、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、およびシアノの群から選択される1つ以上のメンバーによって場合により置換されているヘテロ環を表す。
【0049】
本発明の一実施形態によると、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、場合により置換されている低級アルコキシ、および場合により置換されている低級アルキルの群から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されている、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、オキサゾール、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、およびオキサジアゾリル基の群から選択されるヘテロアリール基を表す。
【0050】
本発明の一実施形態では、Rは、下記:
【0051】
【化3】

【0052】
から選択されるヘテロアリール基を表す。
【0053】
式(I)の化合物における本発明の一実施形態では、Rは、0〜4つのR基によって場合により置換されているヘテロ環を表す。
【0054】
がヘテロ環である本発明の一実施形態では、Rは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ベンジルオキシ、フェノキシアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミド、−C(O)O−アルキル、およびモルホリニルの群から選択される1つ以上の置換基によって場合により置換されているピロリジニルを表す。
【0055】
がヘテロ環である本発明の別の実施形態では、Rは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ベンジルオキシ、フェノキシアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミド、−C(O)O−アルキル、およびモルホリニルの群から選択される1つ以上の置換基によって場合により置換されているピペリジニルを表す。
【0056】
がヘテロ環である本発明の別の実施形態では、Rは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、およびシアノの群から選択される1つ以上の置換基によって場合により置換されているインドリルまたはイソインドリルを表す。
【0057】
がヘテロ環である本発明の別の実施形態では、Rは、1つ以上のアルキルまたはシクロアルキル基によって場合により置換されている単環式または二環式のラクトンを表す。
【0058】
がNRである本発明の別の実施形態では、Rは、アルコキシおよびハロゲンの群から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されているN−アルコキシアミノ、アニリニル、またはアミノピリジニル、ラクタミル、フェニルで場合により置換されているテトラヒドロピリジニル、フェニル、ベンジル、またはピリジニルで場合により置換されているピペラジニル、アジリジニル、1つ以上のアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールの群から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されているアルキルアミノ、ならびにアルコキシ、ヒドロキシル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールの群から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されているジアルキルアミノで場合により置換されているモルホリニルを表す。
【0059】
式(I)の化合物における本発明のさらに別の実施形態によれば、Rは、少なくとも1つの窒素原子を有するヘテロ環を表し、ヘテロ環は、1つ以上の低級アルキル基で任意に置換されている。かかるヘテロ環には、例えば、場合により置換されたピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イソキノリニル、ジアゼパニル、ジヒドロピロリル、アゼパニル、オキサゼパニル、およびピロロピラジニルが含まれる。
【0060】
式(I)の化合物における本発明のさらに別の実施形態によれば、Rは、水素、アシル、ヘテロ環アルキル、アリールアルキル、アルコキシル、アルキルオキシカルボキシル、ジアルキルアミド、アルキルアミド、またはヘテロアリールを表す。
【0061】
本発明の一実施形態では、Rは、下記:
【0062】
【化4】

【0063】
から選択される基を表す。
【0064】
本発明の別の実施形態では、Rは、下記:
【0065】
【化5】

【0066】
から選択される基を表す。
【0067】
本発明の化合物は、下記で説明するプロセスのうちの1つによって調製されてよい。
【0068】
式(I)の化合物、特に、Rが、炭素原子を介してピリミジン環と連結している単環式または多環式のヘテロアリール基であり、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式のヘテロアリール基である、式(VIII)または(IX)の化合物は、スキーム1で示すように得ることができる。
【0069】
【化6】

【0070】
が、炭素原子を介してカルボキシアミジン基に連結している単環式または多環式のヘテロアリール基である、式(II)のカルボキシアミジンは、ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような溶媒中、80℃〜120℃の温度で式(XI)のニトリルをトリメチルアルミニウムおよび塩化アンモニウムと反応させることによって得ることができる。これはまた、室温におけるメタノール中での式(XI)のニトリルのナトリウムメトキシドとの反応、続いて同じ温度での塩化アンモニウムとの反応によって得ることもできる。
【0071】
式(II)のカルボキシアミジンを、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、またはテトラヒドロフランのような溶媒中、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、またはカリウムtert−ブトキシドのような塩基の存在下、室温〜溶媒の沸点の温度においてマロン酸ジエチルと反応させて、式(III)のピリミジン−4,6−ジオールを得られる。
【0072】
得られた式(III)のピリミジン−4,6−ジオールを、オキシ塩化リン、ベンゼン、またはトルエンのような溶媒中、室温〜溶媒の沸点の温度において、オキシ塩化リン、五塩化リン、またはこれらのミクスチャーのような塩素化剤と反応させて、式(IV)の4,6−ジクロロピリミジン化合物を得られる。場合により、ジメチルアミノアニリン、トリエチルアミン、またはジイソプロピル−エチルアミンのような塩基の存在がこの反応ステップに必要となり得る。
【0073】
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランのような溶媒中での、80℃〜140℃の温度における式(IV)の4,6−ジクロロピリミジン化合物の水酸化アンモニウムとの反応は、式(V)の6−クロロピリミジン−4−アミンを産生する。
【0074】
得られる式(V)の6−クロロピリミジン−4−アミンを、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物と反応させて、本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(VIII)の化合物を得る。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0075】
式(VIII)の化合物は、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンによってアシル化されて、本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(IX)の化合物を得られる。式(IX)の化合物は、80℃〜160℃の温度における、アミン(VIII)の無水物との反応によっても調製され得る。
【0076】
式(IV)の4,6−ジクロロピリミジン化合物はまた、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物との反応によって、式(X)の4−クロロピリミジンに変換され得る。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0077】
次に、得られる式(X)の4−クロロピリミジンは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランのような溶媒中で、80℃〜140℃の温度での水酸化アンモニウムとの反応によって、本発明による式(VIII)の化合物に変換され得る。
【0078】
あるいは、本発明による式(VIII)の化合物は、水、メタノール、エタノール、またはイソプロピルアルコールのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度における、鉱酸、例えば塩酸または硫酸との反応によって、式(IX)の化合物から得ることができる。
【0079】
本発明による式(IX)の化合物は、Rが、本明細書において既に定めた通りである式RHの化合物との式(VII)の化合物の反応によって得ることができる。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0080】
式(VII)の化合物は、オキシ塩化リン、五塩化リン、または塩化チオニルのような塩素化剤の存在下、60℃〜120℃の温度における、Rが本明細書でこれまでに定めた通りである式RCOOHのカルボン酸との反応によって、式(VI)の6−アミノピリミジン−4−オール化合物から得ることができる。
【0081】
式(VI)の6−アミノピリミジン−4−オール化合物は、式(II)のカルボキシアミジンのエチルシアノアセタートとの反応によって得られる。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、またはテトラヒドロフランのような溶媒中で、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、またはカリウムtert−ブトキシドのような塩基の存在下、室温〜溶媒の沸点の温度で反応を行う。
【0082】
得られる式(VI)の6−アミノピリミジン−4−オールを、オキシ塩化リン、ベンゼン、またはトルエンのような溶媒中、室温〜溶媒の沸点の温度で、オキシ塩化リン、五塩化リン、またはこれらのミクスチャーのような塩素化剤と反応させて、式(V)の4−アミノ−6−クロロピリミジン化合物を得ることができる。場合により、ジメチルアミノアニリン、トリエチルアミン、またはジイソプロピル−エチルアミンのような塩基の存在がこの反応ステップに必要となり得る。
【0083】
式(VII)の化合物は、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンでのアシル化によって、式(V)の6−クロロピリミジン−4−アミン化合物から得ることができる。式(VII)の化合物は、80℃〜160℃の温度における無水物とのアミン(V)の反応によっても調製され得る。
【0084】
式(I)の化合物および特に、R1’およびR1’’がH、小さいアルキル、またはハロゲンであって、XがNまたは小さいアルキル、ハロゲンで場合により置換された炭素であって、Rが、窒素原子によってピリミジン環に連結している非環式、単環式、または多環式の基である式(XV)の化合物は、スキーム2で示すように得ることができる。
【0085】
【化7】

【0086】
式(XII)の化合物を、NMPのような溶媒の存在下における60℃の温度での無水ヒドラジンとの反応によって、次に、室温〜60℃の温度において中間体を適切なジケトンと反応させることによって、2,4−ジクロロ6−アミノピリミジンから得ることができる。
【0087】
テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンでのアシル化によって、式(XII)の6−クロロピリミジン−4−アミン化合物から式(XIV)の化合物を得ることができる。式(XIV)の化合物は、80℃〜160℃の温度における無水物とのアミン(XII)の反応によっても調製され得る。
【0088】
得られる式(XIV)の6−クロロピリミジン−4−アミンを、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物と反応させて、本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(XV)の化合物を得る。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0089】
式(XII)の6−クロロピリミジン−4−アミンを、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物と反応させて、式(XIII)の化合物を得る。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0090】
本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(XV)の化合物は、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンでのアシル化によって、式(XIII)の4−アミノピリミジン化合物から得ることができる。式(XV)の化合物は、80℃〜160℃における無水物とのアミン(XVI)の反応によっても調製され得る。
【0091】
式(I)の化合物および特に、R1’およびR1’’がH、小さいアルキル、ハロゲンであって、Xが窒素またはH、小さいアルキル、またはハロゲンで場合により置換されている炭素であって、Rが、窒素原子を介してピリミジン環に連結している非環式、単環式、または多環式の基であって、Rが、COR、OR、COR、またはCOORである式(XVIII)の化合物は、スキーム3で示すように得ることができる。
【0092】
【化8】

【0093】
がアルコキシである場合、式(XVI)の化合物は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、またはジオキサンのような溶媒中での、室温〜溶媒の沸点の温度における、N−アルコキシアミンの塩および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンの反応によって、4,6−ジクロロ−2−(メチルチオ)ピリミジンから得ることができる。RがCORである場合、式(XVI)の化合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランのような溶媒中での、80℃〜140℃の温度での4,6−ジクロロ−2−(メチルチオ)ピリミジンの水酸化アンモニウムとの反応に続いて、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンでのアシル化によって調製され得る。式(XVI)の化合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランのような溶媒中で、80℃〜140℃の温度での4,6−ジクロロ−2−メチルチオピリミジンの水酸化アンモニウムとの反応に続いて、80℃〜160℃の温度での無水物との反応によっても調製され得る。
【0094】
式(XVII)の化合物は、OXONE(登録商標)、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、または過ホウ酸ナトリウムのような酸化試薬の存在下での、メチルチオールのスルホンへの酸化によって得ることができる。次いでスルホン中間体を、NMPのような溶媒の存在下で、60℃の温度において無水ヒドラジンと反応させ、室温〜60℃の温度において適切なジケトンと反応させる。
【0095】
得られる式(XVII)の6−クロロピリミジンを、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物と反応させて、本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(XVIII)の化合物を得る。
【0096】
ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0097】
式(I)の化合物および特に、R1’およびR1’’がH、小さいアルキル、またはハロゲンであって、Rが窒素原子を介してピリミジン環に連結している非環式、単環式、または多環式の基である式(XXI)の化合物は、スキーム4で示すように得ることができる。
【0098】
【化9】

【0099】
式(XIX)の化合物は、4−アミノ−2,6−ジクロロピリミジンを、場合により置換されているピラゾールと反応させることによって得ることができる。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0100】
得られる式(XIX)の6−クロロピリミジン−4−アミンを、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物と反応させて、式(XX)の化合物を得る。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0101】
式(XXI)の化合物は、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンでのアシル化によって式(XX)の2−ピラゾロピリミジン−4−アミン化合物から得ることができる。Rがヘテロ環のとき、カップリングには通例のBuchwald条件が用いられる。本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(XXI)の化合物は、80℃〜160℃の温度における、無水物とアミン(XX)の反応によっても調製され得る。
【0102】
式(XXII)の化合物は、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、またはピリジンのような溶媒中で、室温〜溶媒の沸点の温度において、酸塩化物および塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンでのアシル化によって式(XIX)の6−クロロピリミジン−4−アミン化合物から得ることができる。式(XXII)の化合物は、80℃〜160℃の温度における無水物とのアミン(XX)の反応によっても調製され得る。
【0103】
得られる式(XXII)の6−クロロ−2−ピラゾロピリミジンを、Rが、窒素原子を介してピリミジン環と連結している非環式、単環式、または多環式の基である式R−Hの化合物と反応させて、本発明による式(I)の化合物の具体的な例である式(XXI)の化合物を得る。ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドのような溶媒中で、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムのような塩基の存在下、60℃〜140℃の温度で反応を行う。
【0104】
式(XXIII)および(XXIV)のアミドの合成は、スキーム5に従って調製され得る。
【0105】
【化10】

【0106】
式(XXIII)のアミドは、ジクロロメタンのような溶媒および塩基(例えば、ピリジン)中での、式(VIII)の化合物の塩化クロロアセチルとの反応によって得られる。得られる式(XXIII)の化合物を、炭酸カリウムおよびDMFの存在下で所望のアミン(例えば、NHR)と反応させて、所望の式(XXIV)のアミドを得る。V、VI、XII、XIII、4,6−ジクロロ−2−メチルチオピリミジン、XIX、またはXXから出発して、同じ配列のステップが使用され得る。
【0107】
【化11】

【0108】
Zが離脱基、例えばハロゲン原子、好ましくは塩素、またはエトキシ、メトキシ、p−ニトロフェノキシ、およびイミダゾリルから選択される基を表す式Z−COORの化合物との式(VIII)の化合物の反応によって、式(XXV)のカルバマートが得られる。テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、またはジメチルホルムアミドのような溶媒中で、塩基、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、または水酸化ナトリウムの存在下で、−70℃〜100℃の温度において反応が行われる。
【0109】
式(XXV)のカルバマートは、トリホスゲン、ホスゲン、および式HO−Rのアルコールとの式(VIII)の化合物の反応によって得られる。テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、またはジメチルホルムアミドのような溶媒中で、塩基、好ましくはピリジンの存在下で−5℃〜50℃の温度において反応が行われる。
【0110】
式(VIII)の化合物は、ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような溶媒中での、室温〜140℃における、式R−N=C=Oのイソシアナートとの反応によって、Rが水素原子である式(XXVI)の尿素にも変換され得る。
【0111】
式(XXVI)の尿素は、トリホスゲン、ホスゲン、および式HNRのアミンとの式(VIII)の化合物の反応によって得られる。テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、またはジメチルホルムアミドのような溶媒中で、塩基、好ましくはピリジンの存在下で−5℃〜50℃において反応が行われる。
【0112】
V、VI、XII、XIII、4,6−ジクロロ−2−メチルチオピリミジン、XIX、またはXXから出発して、同じ配列のステップが使用され得る。
【0113】
定義された基R〜Rが、本明細書でこれまでに説明したプロセスの条件下での化学反応の影響を受けやすい場合、または前記プロセスと適合しない場合、標準的習慣に従って従来の保護基が用いられてよく、例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts in ‘Protective Groups in Organic Chemistry’,3rd Editioon,John Wiley&Sons(1999)を参照。脱保護は式(I)の化合物の合成における最後のステップとなり得る。
【0114】
薬理学的活性
アデノシンA2A受容体結合アッセイ
受容体のクローニング
ヒトA2A受容体のコード化配列を、ポリメラーゼ連鎖反応によってヒト脳のcDNAライブラリから増幅した。アンプリコンを、pcDNA5/FRT/V5−His−TOPO発現ベクター(インビトロジェン)にクローニングし、ABI3100自動シーケンサー(Applied Biosystems)を使用して配列を確認した。発現構築物を、Lipofectamine 2000(インビトロジェン)を使用してFlp−In HEK細胞(インビトロジェン)にトランスフェクトした。1mg/mlのハイグロマイシンを含む完全DMEMを使用して、ヒトA2A受容体を安定して発現する細胞を選択した。
【0115】
メンブレンの調製
細胞を溶解バッファー(50mMトリス−HCl pH7.4、5mM EDTA、10mM MgCl)に再懸濁し、900psiの圧のN下(パール細胞粉砕器、カタログ番号4639)において氷上で30分間破砕した後で分画遠心法を行うことによって、ヒトA2A受容体をトランスフェクトしたFlp−In HEK細胞から粗製のメンブレンを調製した。得られる粗製メンブレンペレットを、アッセイバッファー(50mMトリスHCl pH7.4、1mM EDTA、10mM MgCl)に再懸濁した。メンブレンタンパク質濃度をBradfordアッセイで決定し、アリコートを−80℃で保存した。
【0116】
結合アッセイ
メンブレンのアリコート(5〜10μgのタンパク質)を、10μg/mlのアデノシンデアミナーゼ(タイプIV 子牛の脾臓、シグマ)の存在下、室温で30分間プレインキュベートした。次いでメンブレンを様々な濃度の競合リガンドの存在下で、1.0nM[H]−ZM241385(27.40Ci/mmol Tocris R1036)と90分間インキュベートした。過剰(1μM)のCGS15943の存在下で、非特異的結合を判定した。0.5%ポリエチレンイミンで前処理したUniFilter GF/Cフィルタープレート(PerkinElmer)に対してPackard96ウェル型細胞ハーベスターを使用して、急速真空ろ過によって結合リガンドおよび遊離リガンドを分離した。次いで、フィルタープレートを50mMトリスHCl、50mM NaCl pH7.4を使用して3×200μlで洗浄した。結合した放射性リガンドを、TopCount−NXT(Packard)を使用してシンチレーション計数によって判定した。結合データを、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.カリフォルニア州サンディエゴ)またはActivityBase(IDBS,Guildford,英国サリー)を使用して、非線形の最小二乗曲線適合アルゴリズムで解析した。Cheng−Prusoff方程式(Cheng,Y,Prusoff,W.H.Biochem.Pharm.22:3099〜3108,1973)を使用して、IC50値からK値を計算した。
【0117】
2Aメンブレンアッセイについては:
Scatchard解析によって、ZM241385で測定したKd=0.3±0.2nM、Bmax=33±8pmol/mgであった。
結合Ki=0.25±0.04nM。
【0118】
2A受容体結合親和力を参照すると、本発明のA2A受容体アンタゴニストは、10μM未満のKiを有していてよい。本発明の一実施形態では、A2A受容体アンタゴニストは、1μM未満のKiを有する。別の実施形態では、A2A受容体アンタゴニストは、100nM未満のKiを有し、さらに別の実施形態では、A2A受容体アンタゴニストは10nM未満のKiを有する。
【0119】
本発明のピリミジン−4−アミン誘導体は、アデノシン受容体のアンタゴニストでの治療による改善が可能である病気、特に、A2Aアデノシン受容体のアンタゴニストでの治療による改善が可能である病気の治療または予防に有用である。かかる病気は、例えば、虚血、上室性不整脈、急性腎不全、心筋再かん流傷害、鼻炎、じんましんを含むがこれらに限定されないアレルギー反応、強皮症、関節炎(scleroderm arthritis)、その他の自己免疫疾患、炎症性大腸炎、喘息、糖尿病、肥満、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニア、例えばレストレスレッグス症候群、ジスキネジア、例えば神経遮断薬およびドーパミン作用薬の長期使用が原因となるもの、または睡眠障害である。
【0120】
従って、本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩、ならびにかかる化合物および/またはその塩を含む医薬組成物は、人体の疾患の治療の方法において用いられてよく、この方法は、かかる治療を必要とする対象に、効果的な量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【0121】
本発明は、薬学的に許容される賦形剤、例えば担体または希釈剤と組み合わせた式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物も提供する。製剤の性質に応じて、および適用前にさらなる希釈が行われるかどうかに応じて、有効成分は、組成物の重量で0.001%〜99%、好ましくは重量で0.01%〜90%を構成してよい。好ましくは、組成物は、経口、局所、鼻腔内、直腸内、経皮的、または注射用投与に適した形態に構成される。
【0122】
本発明の組成物を形成するために、活性化合物、またはかかる化合物の塩と混合される薬学的に許容される賦形剤は、それ自体がよく知られており、用いられる実際の賦形剤は意図される組成物の投与方法にとりわけ依存する。
【0123】
本発明の組成物は、好ましくは注射用および経口投与用に適合される。この場合、経口投与用の組成物は、錠剤、遅延性錠剤、舌下錠、カプセル剤、吸入用エアゾール剤、吸入液、粉末吸入剤、または液体製剤、例えばミクスチャー、エリキシル剤、シロップ剤、または懸濁剤の形態をとってよく、全てが本発明の化合物を含有する。かかる製剤は、当業界で周知の方法によって作製されてよい。
【0124】
組成物の調製において用いられてよい希釈剤には有効成分と適合する液体および固体の希釈剤が含まれ、所望であれば着色剤または着香剤が一緒に使用される。錠剤またはカプセル剤は、便宜上、2〜500mgの有効成分または同等の量のその塩を含有してよい。
【0125】
経口使用のために適合された液体組成物は、溶液または懸濁液の形態であってよい。溶液は、シロップ剤を形成するために、例えば、白糖と組み合わせた活性化合物の水溶性の塩またはその他の誘導体の水溶液であってよい。懸濁液は、水と組み合わせた本発明の不溶性の活性化合物またはその薬学的に許容される塩を、懸濁化剤または着香剤とともに含んでよい。
【0126】
非経口注射用の組成物は、可溶性の塩から調製されてよく、これは凍結乾燥されてよい、または凍結乾燥されなくてもよく、パイロジェンフリーの水性媒体またはその他の適切な非経口注射用の液体に溶解されてよい。
【0127】
効果的な用量は通常、1日につき2〜2000mgの有効成分の範囲である。1日投与量は、1日につき、1つ以上の治療において、好ましくは1〜4つの治療において投与されてよい。
【0128】
本発明は、下記の実施例によってさらに説明される。実施例は説明のためのものにすぎず、限定するものとして見なされるべきではない。
【0129】
試薬、出発原料、および溶媒を供給業者より購入し、受領したままの状態で使用した。濃縮は、Buchi回転式蒸発器を使用した真空下での蒸発を意味する。必要であれば、指定された溶媒系を使用して、シリカゲル(40〜63μm)でのフラッシュクロマトグラフィーによって反応産物を精製した。分光分析データを、Varian Mercury 300MHz分光計およびBruker Avance500MHz分光計で記録した。
【0130】
解析用HPLC−MS 方法1
プラットフォーム:Agilent 1100シリーズ:オートサンプラー、UV検出器(220nMおよび254nM)、MS検出器(APCI)を装備、
HPLCカラム:Phenomenex Synergi−Max RP、2.0×50mmカラム、
HPLCグラジエント:1.0mL/分、13.5分間で5%アセトニトリルを含む水〜95%アセトニトリルを含む水、95%を2分間維持。アセトニトリルおよび水はともに0.025%のTFAを含む。
【0131】
解析用HPLC−MS 方法2
プラットフォーム:Dionex:オートサンプラー、UV検出器(220nMおよび254nM)、MS検出器(APCI)を装備、
HPLCカラム:Phenomenex CX18 4.6×150mm、
HPLCグラジエント:9.86分間で95%の0.04%NHOH/H2O〜90%の0.04%NHOH/ACN、12.30分間ランする。
【0132】
解析用HPLC−MS 方法3
プラットフォーム:Agilent 1100シリーズ:オートサンプラー、UV検出器(220nMおよび254nM)、MS検出器(APCI)を装備、
HPLCカラム:Phenomenex Synergi−Max RP、2.0×50mmカラム、
HPLCグラジエント:1.0mL/分、2.5分間で10%アセトニトリルを含む水〜90%アセトニトリルを含む水、90%を1分間維持。アセトニトリルおよび水はともに0.025%のTFAを含む。
【0133】
解析用HPLC−MS 方法4
プラットフォーム:Agilent 1100シリーズ:オートサンプラー、UV検出器(230nMおよび254nM)、MS検出器(APCI)を装備、
HPLCカラム:Phenomenex Synergi−Max RP、2.0×50mmカラム、
HPLCグラジエント:溶媒Cは6mMギ酸アンモニウムを含む水、溶媒Dは25%アセトニトリルを含むメタノール。グラジエントを、6.43分間で5%D(95%C)〜95%D(5%C)で流し、95%Dで1.02分間保持し、次いで5%Dに戻して1.52分間保持。
【0134】
中間体1:6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0135】
【化12】

【0136】
40.0g(0.24モル、1当量)の4−アミノ−2,6−ジクロロピリミジンを、200mLのN−メチルピロリジノンに溶解した。スラリーを60℃に加温して、19.14mL(0.61モル、2.5当量)の無水ヒドラジンをゆっくりと加えた。1.5時間後、添加が終了した。反応を室温まで冷却し、反応温度を50℃未満に保ちながら、62.6mL(0.61モル、2.5当量)の2,4−ペンタンジオンをゆっくりと加えた。1時間後、反応を再度50℃に加熱し、200mLのエチルアルコールを加え、次いで400mLの水を加えた。水の添加が終わったら、反応ミクスチャーを室温まで冷却し、ろ紙上でろ過した。ケークをアルコール/水で洗浄し(3×200mL)、真空下、60℃で一晩乾燥させた。回収された褐色の固体は、所望の位置異性体(43.2g、254nmにて面積純度85%)と4−ジメチルピラゾール位置異性体のミクスチャーであった。生成物を、加熱したTHF/i−PrOAcから再結晶させて、白色固体を得た(収率66%)。LCMS(方法3)m/z 223.9[MH+]、Tr=1.97分。
【0137】
中間体2.6−クロロ−2−(3,4,5−トリメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0138】
【化13】

【0139】
中間体1に関して上記で説明したものと同じ手段を使用して、3−メチル−2,4−ペンタンジオンを2,4−ペンタンジオンの代わりに使用して中間体2を生成させた。LCMS(方法3)m/z 237.9[MH+]、Tr=2.38分。
【0140】
中間体3.6−クロロ−2−(4−クロロ−3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0141】
【化14】

【0142】
中間体1に関して上記で説明したものと同じ手段を使用して、3−クロロ−2,4−ペンタンジオンを2,4−ペンタンジオンの代わりに使用して中間体3を生成させた。LCMS(方法3)m/z 257.7[MH+]、Tr=2.61分。
【0143】
中間体4.6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−[1,2,4]トリアゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0144】
【化15】

【0145】
中間体1に関して上記で説明したものと同じ手段を使用して、ジアセトアミドを2,4−ペンタンジオンの代わりに使用して中間体4を生成させた。LCMS(方法3)m/z 224.8[MH+]、Tr=1.96分。
【0146】
中間体5.N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]アセトアミド
【0147】
【化16】

【0148】
40.0g(0.18モル、1当量)の6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミンを200mL(0.9モル、5当量)の酢酸に溶解して室温で攪拌し、80mL(0.8モル、4.7当量)の無水酢酸を加えて、ミクスチャーを90℃で一晩加熱した。反応が終了したら室温まで冷却し、16mLの水を30分間で加えた。次いで、ミクスチャーをろ紙でろ過し、ケークを水で洗浄した(4×75mL)。真空オーブン内で50℃において固体を一晩乾燥させた。AcOH溶媒和物(48.2g、0.15モル、83%収率)は、オフホワイトの結晶性固体であった。LCMS(方法3)m/z 265.9[MH+]、Tr=2.11分。
【0149】
中間体6.N−[6−クロロ−2−(3,4,5−トリメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0150】
【化17】

【0151】
中間体5において説明した手段に従って、中間体2を6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミンの代わりに使用して中間体6を調製した。LCMS(方法3)m/z 279.8[MH+]、Tr=2.55分。
【0152】
中間体7.N−[6−クロロ−2−(4−クロロ−3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0153】
【化18】

【0154】
中間体5において説明した手段に従って、中間体3を6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミンの代わりに使用して中間体7を調製した。LCMS(方法3)m/z 299.8[MH+]、Tr=2.71分。
【0155】
中間体8.N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−[1,2,4]トリアゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0156】
【化19】

【0157】
中間体5において説明した手段に従って、中間体4を6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミンの代わりに使用して中間体7を調製した。LCMS(方法3)m/z 266.8[MH+]、Tr=2.18分。
【0158】
中間体9:N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−プロピオンアミド
【0159】
【化20】

【0160】
1.4mL(16.3ミリモル、1.2当量)の塩化プロピオニルを、1.3mL(16.3ミリモル、1.2当量)の無水ピリジンおよび3.0g(13.6ミリモル、1当量)の中間体1の冷DMF溶液(30mL)にゆっくりと加えた。ミクスチャーを室温で一晩攪拌した。反応終了後、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液を使用して反応ミクスチャーをpH7の中性にして、生成物をジクロロメタンで抽出した(3×50mL)。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。塩化メチレンと2%メタノールを溶離液として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製で、3.4g(75%収率)の淡褐色の固体を得た。LCMS(方法1)m/z 280.0[MH+]、Tr=6.08分。
【0161】
中間体10:N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−3−メチル−ブチルアミド
【0162】
【化21】

【0163】
中間体9と同様の方法で、中間体1を塩化イソブチリルと反応させることによって中間体1を調製した。残渣を、1対1の酢酸エチル/ヘキサンのミクスチャーを使用して液体クロマトグラフィーで精製して、同様の収率で白色固体を得た。LCMS(方法1)m/z 308.1[MH+]、Tr=7.44分。
【0164】
中間体11:2−クロロ−N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0165】
【化22】

【0166】
中間体1(1.9g、8.7ミリモル、1当量)のジクロロメタン(100mL)の溶液に、ピリジン(0.9mL、11.7ミリモル、1.3当量)を加えた後、塩化クロロアセチル(1.1mL、13.5ミリモル、1.5当量)を0℃で滴下しながら加えた。ミクスチャーを攪拌しながら一晩室温まで加温した。反応終了後、溶液を氷浴で0℃に冷却し、25mLのNaHCOの飽和水溶液で注意深くクエンチした。反応をジクロロメタンで抽出した(3×25mL)。集めた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残渣を、ジクロロメタンと10%メタノールを使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、2−クロロ−N−[4−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミドを、92%の収率で黄色の固体として得た。LCMS(方法3)m/z 300.0[MH+]、Tr=2.69分。
【0167】
中間体12:N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド
【0168】
【化23】

【0169】
中間体11(3.0g、13ミリモル、1当量)をジクロロメタン(25mL)に溶解した。モルホリン(1.2mL、14ミリモル、1.1当量)およびジイソプロピルアミン(4.6mL、26ミリモル、2.0当量)を室温で滴下しながら加えた。一晩攪拌後、溶液を水で分配し、ジクロロメタンで抽出した(3×25mL)。集めた有機層を食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣を、塩化メチレンを溶離液としてメタノールのグラジエント(2〜5%)と使用してシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1.5g(33%収率)の中間体12を得た。LCMS(方法3)m/z 300.0[MH+]、Tr=2.69分。
【0170】
中間体13:N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミド
【0171】
【化24】

【0172】
中間体12と同様の方法で、中間体11をN−メチルピペリジンと反応させることによって中間体13を調製した。LCMS(方法2)m/z 363.6[MH+]、Tr=7.34分。
【0173】
中間体14:N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−(ピロリジン−1−イル)−アセトアミド
【0174】
【化25】

【0175】
中間体12と同様の方法で、中間体11をピロリジンと反応させることによって中間体14を調製した。
【0176】
化合物1−3:N−[2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−(2−(R)−メトキシメチル)ピロリジン−1−イル−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0177】
【化26】

【0178】
中間体5(50mg、0.19ミリモル、1当量)を無水ジオキサン(2mL)に溶解した。1.2当量(26mg、0.23ミリモル)の(R)−2−メトキシメチルピロリジンを加えた。ミクスチャーを80℃で2時間加熱し、室温まで冷却し、ろ過してHPLCで精製した。LCMS(方法2)m/z 345.0[MH+]、Tr=6.23分。
【0179】
化合物1−14:N−[2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0180】
【化27】

【0181】
中間体4(50mg、0.19ミリモル、1当量)、ラクタム(81mg、0.95ミリモル、5当量)、酢酸パラジウム(5mg、0.02ミリモル、0.1当量)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(17mg、0.03ミリモル、0.15当量)、炭酸セシウム(68mg、0.21ミリモル、1.1当量)のミクスチャーを、無水トルエン(2mL)中で100℃で一晩加熱した。
室温に戻してろ過した後、ミクスチャーをHPLCで精製した。LCMS(方法2)m/z 315.2[MH+]、Tr=5.31分。
【0182】
化合物1−51:N−[2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−ピロリジン−1−イル−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0183】
【化28】

【0184】
中間体5(50mg、0.19ミリモル、1当量)を無水ジオキサン(2mL)に溶解した。1.1当量(68mg、0.21ミリモル)の炭酸セシウムと1.1当量(15mg、0.21ミリモル)のピロリジンを加えた。終了するまでミクスチャーを80℃で加熱し、室温まで冷却し、ろ過してHPLCで精製した。LCMS(方法1)m/z 301.1[MH+]、Tr=4.88分。
【0185】
上述の適切な中間体を、R置換基を表す適切なアミンと反応させることによって、表1Aの化合物を調製した。
【0186】
【表1−1】

【0187】
【表1−2】

【0188】
【表1−3】

【0189】
【表1−4】

【0190】
【表1−5】

【0191】
【表1−6】

【0192】
【表1−7】

【0193】
上述の適切な中間体を、R置換基を表す適切なアミンと反応させることによって、表1Bの化合物を作製する。
【0194】
【表1−8】

【0195】
化合物−1−96:2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−((R)−2−メトキシメチル−ピロリジン−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0196】
【化29】

【0197】
中間体1(25mg、0.11ミリモル、1当量)および(R)−2−メトキシメチル−ピロリジン(23mg、0.27ミリモル、2.5当量)を、エタノール(1.5mL)中、80℃で3時間加熱した。室温へ戻した後、溶液をろ過し、HPLCで精製した。LCMS(方法2)m/z 302.9[MH+]、Tr=6.98分。
【0198】
化合物1−118:[2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−((R)−2−メトキシメチル−ピロリジン−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−カルバミン酸エチルエステル
【0199】
【化30】

【0200】
75mgのトリホスゲン(0.25ミリモル、1当量)を、75mg(0.25ミリモル、1当量)の化合物1−96および0.02mL(0.25ミリモル、1当量)の無水ピリジンを含む1mlの無水ジクロロメタンに0℃で加えた。30分後、無水エタノールを加えて、溶液を室温で一晩攪拌した。反応終了後、溶媒を蒸発させ、残渣を1mLのメタノールに溶解してHPLCで精製した。LCMS(方法1)m/z 375.1[MH+]、Tr=5.93分。
【0201】
化合物1−96を、適切なアミンまたはアルコールと反応させることによって、表1Cの化合物を調製した。
【0202】
【表1−9】

【0203】
化合物1−121:[2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−((R)−2−メトキシメチル−ピロリジン−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−ピラジン−2−イル−アミン
【0204】
【化31】

【0205】
化合物1−96(300mg、1.0ミリモル、1当量)、(+/−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン(187mg、0.3ミリモル、0.3当量)、酢酸パラジウム(II)(67mg、0.3ミリモル、0.3当量)、炭酸セシウム(490mg、1.5ミリモル、1.5当量)、およびトルエン(10ml)のミクスチャーを、窒素ガスで10分間スパージした。2−クロロピラジン(148mg、1.3ミリモル、1.3当量)を加えた後、ミクスチャーを攪拌し100℃で21時間加熱した。水を加え、次いでミクスチャーを酢酸エチルで抽出した。集めた抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を50mlの1:1のジクロロメタン/メタノールに取り、濾過して白色固体を除いてこの固体を廃棄した。ろ液を濃縮し、シリカゲルでクロマトグラフィー(5%メタノールを含むジクロロメタン溶離液)を行って、黄色の固体を得た。トリチュレーション(1:2のヘキサン/酢酸エチル)によって、表題化合物(50mg)をオフホワイトの固体として得た。LCMS(方法1)m/z 381.0[MH+]、Tr=5.80分。
【0206】
化合物1−96を、R置換基を表す適切なクロロと反応させることによって、表1Dの化合物を調製した。
【0207】
【表1−10】

【0208】
上述の適切な中間体を、R置換基を表す適切なクロロ、ブロモ、またはヨード置換型ヘテロ環と反応させることによって、表1Eの化合物を作製する。
【0209】
【表1−11】

【0210】
中間体15:N−(6−クロロ−2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−O−メチル−ヒドロキシルアミン
【0211】
【化32】

【0212】
1g(5.1ミリモル、1当量)の4,6−ジクロロ−2−メチルチオピリミジン、0.43g(5.1ミリモル、1当量)のメトキシアミン塩酸塩、および1.8mLのジイソプロピルアミン(10.2ミリモル、2当量)を、密閉したバイアル内で50℃で一晩、20mLのジメチルホルムアミド中で加熱した。溶媒の蒸発後、残渣をシリカゲルでの液体クロマトグラフィーで、ヘキサンおよび酢酸エチルのグラジエント(0〜20%)を溶離液として使用して精製して、0.7g(67%収率)の生成物を得た。LCMS(方法3)m/z 205.8[MH+]、Tr=2.52分。
【0213】
中間体16:N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−O−メチル−ヒドロキシルアミン
【0214】
【化33】

【0215】
0.5g(2.4ミリモル、1当量)の中間体15を、THF/MeOH/水(3/10/10)に溶解した。2.9g(4.8ミリモル、2当量)のOXONE(登録商標)を加えて、ミクスチャーを室温で攪拌した。3時間後、反応が終了した。水(10mL)および酢酸エチル(50mL)を加えた。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した(2×50mL)。有機層を集めて、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させて、N−[6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−O−メチル−ヒドロキシルアミンを油として得た。これを5mLのエタノールに溶解し、0.2mL(6.2ミリモル、2.6当量)の無水ヒドラジンを加えた。室温で2時間攪拌後、0.3mL(3.0ミリモル、1.2当量)の2,4−ペンタンジオンを加えて、溶液を50℃で一晩加熱した。室温に戻した後、溶媒を蒸発させ、ジクロロメタン(200mL)を加えて、水(50mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物を、95:5のジクロロメタン/メタノールを溶離液系として使用して、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。0.5g(40%収率)の中間体14を黄色の固体として得た。LCMS(方法3)m/z 253.8[MH+]、Tr=2.52分。
【0216】
化合物1−122:N−[2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−6−((R)−2−メトキシメチル−ピロリジン−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−O−メチル−ヒドロキシルアミン
【0217】
【化34】

【0218】
50mg(0.2ミリモル、1当量)の中間体16および50mg(0.4ミリモル、2当量)の(R)−2−メトキシメチルピロリジンを、密閉したバイアル内で、1mLのジオキサン中で80℃一晩加熱した。冷却および溶媒の蒸発後、残渣をDCMに溶解し、シリカゲルでのPTLCで、ジクロロメタン/アセトンの60/40の割合のミクスチャーと1%水酸化アンモニウムを使用して精製した。LCMS(方法1)m/z 332.9[MH+]、Tr=4.92分。
【0219】
【表1−12】

【0220】
中間体17:2−フランカルボキサミジン(HCl)
ナトリウムメトキシド(5.55ミリモル)を含むメタノール(50mL)の溶液に、2−フロニトリル(5.0g、53.2ミリモル、1当量)を加えた。ミクスチャーを室温で3時間攪拌した。得られた溶液に、塩化アンモニウム(3.14g、58.7ミリモル、1.1当量)をゆっくりと加えて、ミクスチャーを室温で68時間攪拌した。得られた懸濁液をろ過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた固体をエチルエーテルで洗浄して(3×25mL)、7.5g(96%収率)の2−フランカルボキサミジン(HCl)を得た。
【0221】
【化35】

【0222】
中間体18:2−(2−フリル)ピリミジン−4,6−ジオール
ナトリウムエトキシド(0.191ミリモル)を含むエタノール(90mL)の溶液に、フランカルボキサミジンHCl 17(5.6g、38.2ミリモル、1当量)をゆっくりと加えた。ミクスチャーを室温で30分間攪拌した後で、マロン酸ジエチル(4.87g、30.4ミリモル、0.8当量)を加えた。懸濁液を32時間還流した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を水(100mL)に懸濁し、5Nの塩酸を使用してpH=6の酸性にした。得られた固体をろ過し、水(50mL)、エタノール/エチルエーテル(4:1、25mL)、エチルエーテル(2×25mL)で洗浄した。2−(2−フリル)ピリミジン−4,6−ジオールを淡黄色の個体として得た(4.2g、78%)。
【0223】
【化36】

【0224】
中間体19:4,6−ジクロロ−2−(2−フリル)ピリミジン
中間体18(3.0g、16.8ミリモル、1当量)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.85g、29.8ミリモル、1.8当量)を含むオキシ塩化リン(17mL)の懸濁液を、3時間還流した。溶媒を圧力下で除去し、塩化メチレン(50mL)および氷をゆっくりと加えた。有機層を、水(2×25mL)、重炭酸ナトリウムの飽和溶液(2×25mL)、食塩水で洗浄し、乾燥させた(NaSO)。溶媒を減圧下で除去して、4,6−ジクロロ−2−(2−フリル)ピリミジン(3.15g、87%)を灰色の固体として得た。
【0225】
【化37】

【0226】
中間体20:6−クロロ−2−(2−フリル)ピリミジン−4−アミン
【0227】
【化38】

【0228】
中間体19(2.0g、9.3ミリモル)を含むメタノール(14mL)の懸濁液および30%の水酸化アンモニウム(27mL)を、圧力反応器内で20時間加熱した。溶媒を減圧下で部分的に除去した。得られた固体をろ過し、水(25mL)、エチルエーテル(25mL)で洗浄し、乾燥させた。6−クロロ−2−(2−フリル)ピリミジン−4−アミン(1.48g、76%)をオフホワイトの固体として得た。
【0229】
【化39】

【0230】
中間体21:6−クロロ−2−(5−メチル−フラン−2−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0231】
【化40】

【0232】
5−メチル−2−フロニトリルから出発して、中間体20で説明した手段によって表題化合物を得た。
【0233】
中間体22:6−クロロ−2−チオフェン−2−イル−ピリミジン−4−イルアミン
【0234】
【化41】

【0235】
チオフェン−2−カルボニトリルから出発して、中間体20で説明した手段によって表題化合物を得た。
【0236】
中間体23:6−クロロ−2−チアゾール−2−イル−ピリミジン−4−イルアミン
【0237】
【化42】

【0238】
チアゾル−2−カルボニトリルから出発して、中間体20で説明した手段によって表題化合物を得た。
【0239】
中間体24:6−クロロ−2−ピリジン−2−イル−ピリミジン−4−イルアミン
【0240】
【化43】

【0241】
2−シアノピリジンから出発して、中間体20で説明した手段によって表題化合物を得た。
【0242】
中間体25:N−(6−クロロ−2−フラン−2−イル−ピリミジン−4−イル)−アセトアミド
【0243】
【化44】

【0244】
中間体5の手段に従って、中間体20をアシル化することによって中間体25を得た。
【0245】
中間体26:N−[6−クロロ−2−(5−メチル−フラン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0246】
【化45】

【0247】
中間体5の手段に従って、中間体21をアシル化することによって中間体26を得た。
【0248】
中間体27:N−(6−クロロ−2−チオフェン−2−イル−ピリミジン−4−イル)−アセトアミド
【0249】
【化46】

【0250】
中間体5の手段に従って、中間体22をアシル化することによって中間体27を得た。
【0251】
中間体28:N−(6−クロロ−2−チアゾール−2−イル−ピリミジン−4−イル)−アセトアミド
【0252】
【化47】

【0253】
中間体5の手段に従って、中間体23をアシル化することによって中間体28を得た。
【0254】
中間体29:N−(6−クロロ−2−ピリジン−2−イル−ピリミジン−4−イル)−アセトアミド
【0255】
【化48】

【0256】
中間体5の手段に従って、中間体24をアシル化することによって中間体29を得た。
【0257】
中間体30:N−[6−クロロ−2−(5−メチル−フラン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−(4−メトキシ−フェニル)−アセトアミド
【0258】
【化49】

【0259】
中間体11の手段に従って、塩化クロロアセチルの代わりにp−メトキシフェニルアセチルクロライドを使用して、中間体21をアシル化することによって中間体30を得た。
【0260】
上述の適切な中間体を、R置換基を表す適切なアミンと反応させることによって、表2Aの化合物を調製した。
【0261】
【表2−1】

【0262】
【表2−2】

【0263】
【表2−3】

【0264】
上述の適切な中間体を、R置換基を表す適切なアミンと反応させることによって、表2Bの化合物を調製する。
【0265】
【表2−4】

【0266】
中間体31:6−クロロ−2−(3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イルアミン
【0267】
【化50】

【0268】
6−アミノ−2,4−ジクロロピリミジン(25.0g、164ミリモル、1当量)、ピラゾール(15.5g、228ミリモル、1.5当量)、および炭酸セシウム(16.4g、228ミリモル、1.5当量)を、ジオキサン(150mL)中で還流しながら3日間加熱した。反応を室温まで冷却し、セライトで濾過した。セライトをジオキサン(300mL)で洗浄し、ろ液を真空下で濃縮した。残渣をジクロロメタンで16時間スラリーにし、ろ過して、8.1gの中間体24をオフホワイトの固体として得た。この操作を母液で繰り返して、2回目の生成物(3.6g)(39%全収率)を得た。LCMS(方法3)m/z 196.0[MH+]、Tr=1.99分。
【0269】
中間体32:N−(6−クロロ−2−ピラゾール−1−イル−ピリミジン−4−イル)−アセトアミド
【0270】
【化51】

【0271】
中間体5で説明した手段によって中間体31をアシル化して、中間体32を同様の収率で得た。LCMS(方法3)m/z 238.2[MH+]、Tr=2.28分。
【0272】
中間体33:N−[6−クロロ−2−(ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−3−メチル−ブチルアミド
【0273】
【化52】

【0274】
中間体31を、中間体10のものと同様の方法で塩化イソブチリルと反応させることによって、中間体33を調製した。残渣を、1対1の酢酸エチル/ヘキサンのミクスチャーを使用する液体クロマトグラフィーによって精製して、同様の収率で白色の固体を得た。LCMS(方法3)m/z 280.0[MH+]、Tr=2.69分。
【0275】
中間体34:2−クロロ−N−[6−クロロ−2−(ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−アセトアミド
【0276】
【化53】

【0277】
中間体31を、中間体11のものと同様の方法で塩化クロロアセチルと反応させることによって、中間体34を調製した。
【0278】
中間体35:N−[6−クロロ−2−(ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミド
【0279】
【化54】

【0280】
中間体34を、中間体12のものと同様の方法でN−メチルピペリジンと反応させることによって、中間体35を調製した。
【0281】
上述の適切な中間体を、R置換基を表す適切なアミンと反応させることによって、表3の化合物を調製した。
【0282】
【表3】

【0283】
説明の目的のために本発明の具体的な実施形態を本明細書に記載したが、本発明の趣旨および適用範囲から逸脱することなく、各種の修飾が行われてよいことが理解されるであろう。従って、添付の請求項によるものを除き、本発明は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化55】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、もしくはステレオイソマーであって、式中、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、およびシアノの群から選択される1つ以上のメンバーによって場合により置換されているヘテロ環であり、
は、NRまたはヘテロ環であって、該ヘテロ環は0〜4つのR基で置換されており、
は、H、R、OR、COR、CONR、COOR、または少なくとも1つの窒素を有するヘテロアリールであって、該ヘテロアリールは0〜4つのRで場合により置換されており、
は、それぞれ生じるときに、低級アルキル、低級アルコキシ、アルコキシアルキル、オキソ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、−C(O)−アルキル、低級アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロ環、およびヘテロ環アルキルの群から選択され、該低級アルキル、低級アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロ環、およびヘテロ環アルキル基は、1つ以上の低級アルキル、ハロゲン、低級アルコキシ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、および−C(O)−アルキルによって場合により置換されており、
は、それぞれ生じるときに、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、およびアルコキシアルキルの群から選択され、
は、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロ環アルキルであって、該低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロ環アルキル基は、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノの群から選択される1つ以上のメンバーで場合により置換されており、ならびに、
は、水素または低級アルキルであって、該低級アルキル基は、アルコキシ、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノの群から選択される1つ以上のメンバーで場合により置換されている、
化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、もしくはステレオイソマー。
【請求項2】
は、ピラゾリル、トリアゾリル、フラニル、チアゾリル、およびピリジニルの群から選択され、該ピラゾリル、トリアゾリル、フラニル、チアゾリル、およびピリジニル基は、低級アルキルおよびハロゲンの群から選択される1つ以上のメンバーによって場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、2つの低級アルキル基によって場合により置換されているピラゾリル、または1つの低級アルキル基によって場合により置換されているフラニルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
は、ピラゾール−1−イル、3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イル、フラン−2−イル、および5−メチル−フラン−2−イルの群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
は、3,5−ジメチル−ピラゾール−1−イルまたは5−メチル−フラン−2−イルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
は、ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、イソインドリル、テトラヒドロキノリル、ラクトニル、およびピペラジニルの群から選択されるヘテロ環であって、該ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、イソインドリル、テトラヒドロキノリル、ラクトニル、ラクタミル、テトラヒドロピリジニル、およびピペラジニル基は、0〜4つのR基によって場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
は、ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、イソインドリル、テトラヒドロキノリル、ラクトニル、およびピペラジニルの群から選択されるヘテロ環であって、該ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、イソインドリル、テトラヒドロキノリル、ラクトニル、ラクタミル、テトラヒドロピリジニル、およびピペラジニル基は、0〜2つのR基によって場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
は、ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、またはイソインドリルであって、該ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、またはイソインドリルは、0〜2つのR基によって場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
は、ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、またはイソインドリルであって、該ピロリジニル、ピペリジニル、インドリル、またはイソインドリルは、1〜2つのR基によって場合により置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
は、CORである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
は、低級アルキルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
は、メチル、エチル、またはイソプロピルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
は、メチルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項3に記載の化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項7に記載の化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項11に記載の化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
2Aアデノシン受容体の拮抗作用による改善が可能な状態を有する対象を治療するための方法であって、請求項1に記載の医薬組成物を該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記状態は、虚血、上室性不整脈、急性腎不全、心筋再かん流傷害、自己免疫疾患、炎症性大腸炎、喘息、糖尿病、肥満、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニア、またはジスキネジアである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記状態は、虚血、上室性不整脈、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニア、またはジスキネジアである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記状態は、パーキンソン病である、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−511727(P2010−511727A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540422(P2009−540422)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/086380
【国際公開番号】WO2008/070661
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(398005054)ニューロクライン バイオサイエンシーズ,インコーポレイテッド (5)
【出願人】(509156354)
【Fターム(参考)】