説明

アモルファスカーボン膜の成膜方法、それを用いた半導体装置の製造方法、およびコンピュータ読取可能な記憶媒体

【課題】耐プラズマ性が高く、低温成膜が可能なアモルファスカーボン膜の成膜方法、およびそのようなアモルファスカーボン膜の成膜方法を適用した、半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】処理容器1内に基板Wを配置し、処理容器内に炭素と水素と酸素とを含む処理ガスを供給し、処理容器内の基板を加熱して処理ガスを分解して、基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する。この方法を半導体製造装置のエッチングマスクの形成に適用して半導体装置を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する際のマスク等として好適なアモルファスカーボン膜、それを用いた半導体装置の製造方法、およびコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、回路パターン形成のために、フォトリソグラフィー技術を用いてパターン形成されたレジストをマスクとしてプラズマエッチングを行っている。CDが45nmの世代では、微細化に対応してArFレジストが使用されるが、プラズマ耐性が弱いという問題がある。この問題を克服する技術として、ArFレジストの下にSiO膜とプラズマ耐性のあるレジストを積層したマスク(多層レジスト)を用いたドライ現像という方法も採用されているが、45nm以降の微細化世代ではArFレジストの膜厚が200nmと薄くなっており、この厚さがドライ現像の基準となる。すなわち、このレジスト膜厚でプラズマエッチングできるSiO膜厚と、さらにこのSiO膜厚でプラズマエッチングできる下層レジストの膜厚の限界が300nmであり、被エッチング膜の膜厚に対して、十分なプラズマ耐性を確保することができず、高精度のエッチングを達成することができない。そのため、下層のレジスト膜の代わりに、より耐エッチング性の高い膜が求められている。
【0003】
ところで、特許文献1には、多層レジストに用いられるSiO膜の代わりや、反射防止層として、炭化水素ガスと不活性ガスを用いたCVDにより堆積したアモルファスカーボン膜を適用する技術が開示されており、このようなアモルファスカーボン膜を上記用途に適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−12972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、アモルファスカーボン膜の成膜温度として100〜500℃が記載されているが、そのような温度で成膜したアモルファスカーボン膜を上記用途に適用した場合には、エッチング耐性が十分でないことが判明した。特許文献1の技術によりこのような用途に十分な耐エッチング性を有するアモルファスカーボン膜を得ようとすると600℃近い高温が必要となり、Cu配線を有するバックエンドプロセスには適用することができない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、耐プラズマ性が高く、低温成膜が可能なアモルファスカーボン膜の成膜方法、およびそのようなアモルファスカーボン膜の成膜方法を適用した、半導体装置の製造方法、ならびに、コンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、処理容器内に基板を配置する工程と、前記処理容器内に炭素と水素と酸素とを含む処理ガスを供給する工程と、前記処理容器内の基板を加熱して前記処理ガスを分解し、基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する工程とを有することを特徴とするアモルファスカーボン膜の成膜方法を提供する。
【0008】
上記第1の観点に係るアモルファスカーボン膜の成膜方法において、処理ガス中のCとOとの原子数比C:Oが3:1〜5:1であることが好ましく、また、処理ガス中のCとHとの原子数比C:Hが1:1〜1:2であることが好ましい。
【0009】
炭素と水素と酸素とを含む処理ガスとしては、炭化水素ガスと酸素含有ガスとの混合ガスを含むものを用いることができ、この場合に、炭化水素ガスとしては、C、C、Cの少なくとも1種を用いることができる。
【0010】
炭素と水素と酸素とを含む処理ガスとしては、分子内に炭素と水素と酸素を有するガスを含むものを用いることもでき、この場合に、分子内に炭素と水素と酸素を有するガスとしては、CO、COの少なくとも1種を用いることができる。
【0011】
さらに、基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する際の基板の温度は400℃以下であることが好ましい。基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する際に、処理ガスをプラズマ化してもよい。
【0012】
本発明の第2の観点では、基板上にエッチング対象膜を形成する工程と、前記エッチング対象膜の上に上記第1の観点に係る方法でアモルファスカーボン膜を成膜する工程と、前記アモルファスカーボン膜にエッチングパターンを形成する工程と、前記アモルファスカーボン膜をエッチングマスクとして前記エッチング対象膜をエッチングして所定の構造を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第3の観点では、基板上にエッチング対象膜を形成する工程と、前記エッチング対象膜の上に上記第1の観点に係る方法でアモルファスカーボン膜を成膜する工程と、前記アモルファスカーボン膜の上にSi系薄膜を形成する工程と、前記Si系薄膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、前記フォトレジスト膜をパターニングする工程と、前記フォトレジスト膜をエッチングマスクとして前記Si系薄膜をエッチングする工程と、前記Si系薄膜をマスクとして前記アモルファスカーボン膜をエッチングして前記フォトレジスト膜のパターンを転写する工程と、前記アモルファスカーボン膜をマスクとして前記エッチング対象膜をエッチングする工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の第4の観点では、コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウエアが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第1の観点に係る方法が行われるように成膜装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成膜の際に、処理ガスとして炭素および水素の他に酸素を含有させるので、反応性が高く、比較的低温であっても強固なカーボンネットワークを形成することができ、耐エッチング性の高いアモルファスカーボン膜を成膜することができる。また、この方法により成膜したアモルファスカーボン膜をエッチングマスクとして用いてエッチング対象膜をエッチングすることによりエッチング形状が良好で下地に対して選択比を高くすることができる。特に、従来の多層レジストの下層レジストの代わりに本発明の方法で形成したアモルファスカーボン膜を用いてエッチング対象膜をエッチングして半導体装置を製造することにより大きな効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るアモルファスカーボン膜の成膜方法に適用可能な成膜装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るアモルファスカーボン膜の製造方法を適用して得られたアモルファスカーボン膜を用いた半導体装置を製造するための構造体を示す断面図である。
【図3】図2の構造体において、パターニングされたArFレジストをマスクとしてその下のSiO膜をエッチングした状態を示す断面図である。
【図4】図3の構造体において、パターニングされたSiO膜をマスクとしてその下のアモルファスカーボン膜をエッチングした状態を示す断面図である。
【図5】図4の構造体において、パターニングされたアモルファスカーボン膜をマスクとして下地のエッチング対象膜をエッチングした状態を示す断面図である。
【図6】実施例で得られたアモルファスカーボン膜の電子回折像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るアモルファスカーボン膜の成膜方法に適用可能な成膜装置の一例を示す断面図である。この成膜装置100は、略円筒状のチャンバ1を有している。
【0018】
このチャンバ1の内部には、被処理体であるウエハWを水平に支持するためのサセプタ2がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材3により支持された状態で配置されている。サセプタ2の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング4が設けられている。また、サセプタ2にはヒータ5が埋め込まれており、このヒータ5はヒータ電源6から給電されることにより被処理基板であるウエハWを所定の温度に加熱する。サセプタ2には熱電対7が埋設されており、この検出信号によりヒータ5の出力が制御されるようになっている。サセプタ2の表面近傍には電極8が埋設されており、この電極8は接地されている。さらに、サセプタ2には、ウエハWを支持して昇降させるための3本のウエハ支持ピン(図示せず)がサセプタ2の表面に対して突没可能に設けられている。
【0019】
チャンバ1の天壁1aには、絶縁部材9を介してシャワーヘッド10が設けられている。このシャワーヘッド10は、内部にガス拡散空間20を有する円筒状をなしており、上面に処理ガスを導入するガス導入口11、下面に多数のガス吐出口12を有している。シャワーヘッド10のガス導入口11には、ガス配管13を介して、アモルファスカーボン膜を形成するための処理ガスを供給するガス供給機構14が接続されている。
【0020】
シャワーヘッド10には、整合器15を介して高周波電源16が接続されており、この高周波電源16からシャワーヘッド10に高周波電力が供給されるようになっている。高周波電源16から高周波電力を供給することにより、シャワーヘッド10を介してチャンバ1内に供給されたガスをプラズマ化することができる。
【0021】
チャンバ1の底壁1bには排気管17が接続されており、この排気管17には真空ポンプを含む排気装置18が接続されている。そしてこの排気装置18を作動させることによりチャンバ1内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。チャンバ1の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口21と、この搬入出口21を開閉するゲートバルブ22とが設けられている。
【0022】
成膜装置100の構成部、例えば、ヒータ電源6、ガス供給機構14,高周波電源16、排気装置18等は、CPUおよびその周辺回路を含むプロセスコントローラ30に接続されて制御される構成となっている。また、プロセスコントローラ30には、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース31が接続されている。さらに、プロセスコントローラ30には、成膜装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ30の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部32が接続されている。レシピはハードディスクや半導体メモリーに記憶されていてもよいし、CDROM、DVD等の可搬性の記憶媒体に収容された状態で記憶部32の所定位置にセットするようになっていてもよい。さらに、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース31からの指示等にて任意のレシピを記憶部32から呼び出してプロセスコントローラ30に実行させることで、プロセスコントローラ30の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0023】
次に、以上のように構成された成膜装置100を用いて実施される本実施形態のアモルファスカーボン膜の成膜方法について説明する。
まず、ウエハWをチャンバ1内に搬入し、サセプタ2上に載置する。そして、ガス供給機構14からガス配管13およびシャワーヘッド10を介してプラズマ生成ガスとして例えばArガスを流しながら、排気装置18によりチャンバ1内を排気して、チャンバ1内を所定の減圧状態に維持するとともに、ヒータ5によりサセプタ2を400℃以下の所定温度に加熱する。そして、高周波電源16からシャワーヘッド10に高周波電力を印加することにより、シャワーヘッド10と電極8との間に高周波電界が生じ、処理ガスがプラズマ化される。
【0024】
その状態で、ガス供給機構14からアモルファスカーボン膜を成膜するための炭素、水素、および酸素を含む処理ガスをガス配管13およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内に導入する。
【0025】
これにより、処理ガスがチャンバ1内に形成されていたプラズマにより励起されるとともに、ウエハW上で加熱されて分解され、ウエハWの表面に強固なネットワーク構造を有するアモルファスカーボン膜が堆積される。
【0026】
上記特許文献1に記載された技術では、アモルファスカーボン形成用の処理ガスとして炭化水素ガスと不活性ガスを用いてアモルファスカーボンを成膜しているが、この場合にはカーボンのネットワーク化の進行が遅く、400℃以下の低温では構造的に弱い部分が多く残存して、耐エッチング性の低い膜となってしまう。成膜温度を上昇させればある程度構造を強化できエッチング耐性が向上するが、それではバックエンドプロセスへの適用は困難となる。
【0027】
これに対し、本発明では、炭化水素ガスを構成する炭素と水素以外に酸素を導入する。これにより反応性を向上させることができ、400℃以下の低い温度でも膜の弱い構造部分を消失させて強固なカーボンネットワークを有するアモルファスカーボン膜を得ることができる。
【0028】
炭素、水素、および酸素を含む処理ガスとしては、処理ガス中のCとOとの原子数比C:Oが3:1〜5:1であることが好ましい。この間であれば、反応性を適度に制御することができ、より好ましい膜を得ることができる。
【0029】
また、処理ガス中のCとHとの原子数比C:Hが1:1〜1:2であることが好ましい。これよりもCが少ない実用的なガスは化合物としては存在せず、またこの範囲よりもHが多いと強固なカーボンネットワークが得難くなる。
【0030】
炭素と水素と酸素とを含む処理ガスとしては、典型的には炭化水素ガスと酸素含有ガスとの混合ガスを挙げることができる。この場合に、炭化水素ガスとしては、C(アセチレン)、C(ブチン(1−ブチン、2−ブチンの両方を含む))、C(ベンゼン)を好適に用いることができ、これら単独またはこれらを複合して用いることができる。また、酸素含有ガスとしては、Oガスを好適に用いることができる。他の酸素含有ガスとしては、CH−O−CH(ジメチルエーテル)等のエーテル化合物を用いることもできる。
【0031】
炭素と水素と酸素とを含む処理ガスの他の例としては、分子内に炭素と水素と酸素を有するガスを含むガスを挙げることができる。このようなガスとしてはCO(フラン)、CO(テトラヒドロフラン)を好適に用いることができ、これら単独またはこれらを複合して用いることができる。
【0032】
処理ガスとしては、炭素と水素と酸素とを含むガスの他に、Arガス等の不活性ガスが含まれていてもよい。300mmウエハを用いる場合には、Arガスの流量は、炭素と水素と酸素とを含むガスに対して20〜100%程度が好ましい。また、炭素と水素と酸素と不活性ガスを含むガスの流量は、ガス種にもよるが、250〜350mL/mim(sccm)程度が好ましい。さらに、成膜の際のチャンバ内圧力は、6.65Pa(50mTorr)以下が好ましい。
【0033】
アモルファスカーボン膜を成膜する際のウエハ温度(成膜温度)は、400℃以下が好ましく、100〜300℃がより好ましく。最も好ましいのは200℃近傍である。上述したように400℃以下であれば、Cu配線を含むバックエンドプロセスに適用可能である。そして、このような比較的低い温度でも多層レジストの最下層が要求される高いエッチング耐性を有するアモルファスカーボン膜を得ることができる。
【0034】
シャワーヘッド10に印加される高周波電力の周波数およびパワーは、必要な反応性に応じて適宜設定すればよい。このように高周波電力を印加することにより、チャンバ1内に高周波電界を形成して処理ガスをプラズマ化することができ、プラズマCVDによるアモルファスカーボン膜の成膜を実現することができる。プラズマ化されたガスは反応性が高いため、成膜温度をより低下させることが可能である。なお、プラズマ源としては、このような高周波電力による容量結合型のものに限らず、誘導結合型のプラズマでもよいし、マイクロ波を導波管およびアンテナを介してチャンバ1内に導入してプラズマを形成するものであってもよい。また、プラズマ生成は必須ではなく、反応性が十分な場合には、熱CVDによる成膜であってもよい。
【0035】
以上のようにして成膜されたアモルファスカーボン膜は、上述したように強固なカーボンネットワークを有し、耐エッチング性が高いため、多層レジストの最下層として好適であるとともに、250nm程度以下の波長で0.1〜1.0程度の光吸収係数を有するものであるので、反射防止膜としても適用可能である。
【0036】
次に、以上のように製造したアモルファスカーボン膜を適用した半導体装置の製造方法について説明する。
【0037】
図2に示すように、半導体ウエハ(Si基板)W上に、エッチング対象膜として、SiC膜101、SiOC膜(Low−k膜)102、SiC膜103、SiO膜104、SiN膜105からなる積層膜を成膜し、その上に、上述した方法でアモルファスカーボン(α−C)膜106、SiO膜107、BARC(反射防止膜)108、ArFレジスト膜109を順次形成し、フォトリソグラフィによりArFレジスト膜109をパターニングして、多層のエッチングマスクを形成する。
【0038】
この際の、ArFレジスト膜109の厚さは200nm以下、例えば180nmであり、BARC108の厚さは30〜100nm、例えば70nmであり、SiO膜107の厚さは10〜100nm、例えば50nmであり、アモルファスカーボン膜106の厚さは100〜800nm、例えば280nmである。なお、エッチング対象膜の膜厚としては、SiC膜101:30nm、SiOC膜(Low−k膜)102:150nm、SiC膜103:30nm、SiO膜104:150nm、SiN膜105:70nmが例示される。なお、SiO膜107の代わりにSiOC、SiOH、SiCN、SiCNH等の他のSi系薄膜を用いることもできる。
【0039】
この状態で、まず、図3に示すように、ArFレジスト膜109をマスクとしてBARC108およびSiO膜107をプラズマエッチングし、SiO膜107にArFレジスト膜109のパターンを転写する。このとき、ArFレジスト膜109は耐エッチング性が低いため、エッチングにより消失しており、BARC108もエッチングされている。
【0040】
次に、図4に示すように、SiO膜107をエッチングマスクとしてアモルファスカーボン膜106をエッチングする。これにより、ArFレジスト膜109のパターンがアモルファスカーボン膜106に転写される。このとき、上述した方法で成膜されたアモルファスカーボン膜106は耐エッチング性が高いため、良好な形状性をもってエッチングされ、ArFレジスト膜109のパターンが正確に転写される。
【0041】
その後、図5に示すように、アモルファスカーボン膜106をエッチングマスクとして用いて、SiN膜105、SiO膜104、SiC膜103、SiOC膜102、SiC膜101をプラズマエッチングにより順次エッチングする。このとき、上述の方法で成膜されたアモルファスカーボン膜106は、耐エッチング性が高いため、下地のエッチング対象膜に対して高選択比でエッチングすることができる。したがって、被エッチング膜をエッチングしている間十分にエッチングマスクとして残存し、パターン変形のない良好なエッチング形状が得られる。
【0042】
エッチングが終了した時点では、SiO膜107は既に消失しており、残存したアモルファスカーボン膜106も、Hガス/Nガスによるアッシングにより比較的容易に除去可能である。
【0043】
次に、実際に本発明の方法でアモルファスカーボン膜を成膜してその物性とエッチング耐性を評価した。
まず、炭素と水素と酸素とを含むガスとしてCO(フラン)ガスを用い、基板温度を200℃としてプラズマCVDによりウエハ上に膜を堆積した。得られた膜の中央部の電子回折像は図6のようになった。この図に示すように、結晶性を示す回折斑点が見られないことから、得られた膜がアモルファスカーボンであることが確認された。
【0044】
次に、このようにして得られたアモルファスカーボン膜の耐エッチング性を熱酸化膜(SiO)および下層レジストとして用いられているg線用のフォトレジスト膜のエッチング耐性と比較した。エッチングは、平行平板型プラズマエッチング装置にてエッチングガスとしてCガス、Arガス、Oガスを用いて行った。
【0045】
その結果、各膜のエッチングレートは、
SiO膜:336.9nm/min
フォトレジスト膜:53.3nm
アモルファスカーボン膜:46.4nm/min
となり、フォトレジスト膜およびアモルファスカーボン膜のSiO膜に対する選択比は、それぞれ6.3および7.3となり、本発明の方法で得られたアモルファスカーボン膜のフォトレジストに対する優位性が確認された。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、アモルファスカーボン膜の処理ガスとして炭化水素ガスおよび酸素含有ガスの混合ガス、および分子中に炭素と水素と酸素とを含むガスについて示したが、これに限るものではない。また、上記実施形態では、本発明のアモルファスカーボン膜をドライ現像技術における多層レジストの下層に適用した場合について示したが、これに限るものではなく、通常のフォトレジスト膜の直下に形成して反射防止膜機能を有するエッチングマスクとして用いる等、他の種々の用途に用いることができる。
【0047】
さらにまた、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例示したが、これに限らず、液晶表示装置(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等、他の基板にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るアモルファスカーボン膜は、ドライ現像技術における多層レジストの下層等、耐エッチング性が要求される部分のエッチングマスクとして好適である。
【符号の説明】
【0049】
1;チャンバ
2;サセプタ
5;ヒータ
6;ヒータ電源
7;熱電対
10;シャワーヘッド
14;ガス供給機構
16;高周波電源
18;排気装置
30;プロセスコントローラ
32;記憶部
100;成膜装置
101;SiC膜
102;SiOC膜
103;SiC膜
104;SiO
105;SiN膜
106;アモルファスカーボン膜
107;SiO
108;BARC
109;ArFレジスト膜
W;半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に基板を配置する工程と、
前記処理容器内に炭素と水素と酸素とを含む処理ガスを供給する工程と、
前記処理容器内の基板を加熱して前記処理ガスを分解し、基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する工程と
を有することを特徴とするアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項2】
処理ガス中のCとOとの原子数比C:Oが3:1〜5:1であることを特徴とする請求項1に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項3】
処理ガス中のCとHとの原子数比C:Hが1:1〜1:2であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項4】
前記炭素と水素と酸素とを含む処理ガスは炭化水素ガスと酸素含有ガスとの混合ガスを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項5】
前記炭化水素ガスは、C、C、Cの少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項6】
前記炭素と水素と酸素とを含む処理ガスは、分子内に炭素と水素と酸素を有するガスを含むことを特徴とする請求項1に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項7】
前記分子内に炭素と水素と酸素を有するガスは、CO、COの少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項8】
基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する際の基板の温度が400℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項9】
基板上にアモルファスカーボン膜を堆積する際に、前記処理ガスをプラズマ化することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアモルファスカーボン膜の成膜方法。
【請求項10】
基板上にエッチング対象膜を形成する工程と、
前記エッチング対象膜の上に請求項1から請求項9のいずれかの方法でアモルファスカーボンを成膜する工程と、
前記アモルファスカーボン膜にエッチングパターンを形成する工程と、
前記アモルファスカーボン膜をエッチングマスクとして前記エッチング対象膜をエッチングして所定の構造を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板上にエッチング対象膜を形成する工程と、
前記エッチング対象膜の上に請求項1から請求項9のいずれかの方法でアモルファスカーボン膜を成膜する工程と、
前記アモルファスカーボン膜の上にSi系薄膜を形成する工程と、
前記Si系薄膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜をパターニングする工程と、
前記フォトレジスト膜をエッチングマスクとして前記Si系薄膜をエッチングする工程と、
前記Si系薄膜をマスクとして前記アモルファスカーボン膜をエッチングして前記フォトレジスト膜のパターンを転写する工程と、
前記アモルファスカーボン膜をマスクとして前記エッチング対象膜をエッチングする工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウエアが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、請求項1から請求項9のいずれかの方法が行われるように成膜装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−233259(P2012−233259A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141653(P2012−141653)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2006−48312(P2006−48312)の分割
【原出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「マイクロ波励起高密度プラズマ技術を用いた省エネ型半導体製造装置の技術開発」委託研究,産業技術力強化法第19条の適用をうけるもの)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】