説明

アルカリ電池用ニッケル極

【課題】不織布表面に導電性を付与した後ニッケルの電解めっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の活物質を保持させる集電体のニッケル量を320〜100g/m好ましくは250〜150g/mになるよう減らした集電体の溶接による端子取出しを容易にして、優れた放電特性を確保する。
【解決手段】不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部を残し、その部分を端子取付け部とする。なお、タブレス方式ではニッケル極の断面部に直接端子を取付ける。この場合、ニッケル量は320〜200g/mになるようにめっきされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布にニッケルめっきして得られる集電体(電極基材)を用いた特にアルカリ電池用ニッケル極に関するものである。これを用いた代表的な電池はニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池である。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯用、移動用、産業用などに用いる二次電池として、アルカリ二次電池が広く使われている。その理由としては、高信頼性が高く、長寿命、安価、小型軽量化が可能などの点があげられる。
【0003】
用途として、電動アシスト自転車、掃除機、電動工具用などがあり、ハイブリッド車が注目を集めている。その他、デジタルカメラ、ビデオカメラ、小型オーディオ、シェーバー、電動歯ブラシ、ノート型パソコン、各種玩具、メモリーバックアップ用などがあげられる。
【0004】
アルカリ二次電池には、ほとんどの場合、正極としてニッケル極が使用される。ニッケル極は、集電機能が必要な集電体に、電池的酸化還元反応を生起させるための正極活物質を担持させた構造になっている。その場合の集電体として、ニッケル粉末を焼結した焼結体、発泡状ニッケル多孔体が使われている。
【0005】
発泡状ニッケルを利用した製法としては、集電体の端子(タブという)を溶接して取付ける部分をあらかじめ加圧しておいてから活物質ペーストを充填し、その後、加圧する。あらかじめ加圧した部分には、活物質が充填されていないので、この加圧部にニッケル板を溶接することによりニッケル極を製造する。発泡状ニッケルの多孔度は、92〜96%で非常に大きく、したがって単位当りの活物質が多く充填されていることで高容量化が可能になった。
【0006】
残る問題点は、低廉化であり、製造工程の簡易化とめっきするニッケル量を減らすことである。つまり、発泡状ニッケルではニッケルのみで高多孔度を保持させていることから、ニッケル量を減らすと、とくに強度の低下は避けられない。そこで、450〜360g/m程度になっている。
【0007】
発泡状ニッケルの代わりに主にポリオレフィン系繊維の不織布にニッケルめっきを施し、不織布をそのまま残し、不織布の保持したままの三次元構造の集電材に注目が集まり、多くの提案がなされている。不織布を骨格とする三次元の集電体は、発泡状ニッケルが実用化される以前から注目されていた。しかし、これに適した不織布が無かったこともあって実用化された例はなく、また、金属繊維で不織布状に加工した集電体もコストや短絡の問題があり、広くは使われなかった。
【0008】
特開昭55−30180号公報(特許文献1)、特開平3−17957号公報(特許文献2)にウレタン樹脂の発泡体シートやポリオレフィン系繊維の不織布にニッケルめっきを施し、これら有機物質の骨格部分を熱分解除去することなく、骨格部分の表面のみが導電性を発揮できる三次元網状構造体が開示されている。しかし、この集電体を用いてニッケル極を製造した場合、十分な集電機能が得られないこと、電極に端子を取付けるに際し、取付け部を加圧した際に表面のニッケル層が壊れて支持体の骨格部分が露出し、ニッケルリード板の溶接時に十分な溶接強度が得られず、また、この部分の電気抵抗が増し、活物質利用率低下などの問題が発生すると述べられている。
【0009】
そこで特開平8−329956号公報(特許文献3)では、強度特性が優れ、柔軟性も良好で、活物質合剤ペーストの高密度充填が可能であって、製造した電極の集電性を向上させることにより活物質の利用率を高めることができ、同時に端子の取付け作業も容易に行うことができるとした電極用集電体が提案されている。改良点は、ニッケル量に注目したことで、その値として350g/m以上を提案している。この集電材では、骨格部分を熱分解除去しないので、製造工程が比較的単純で、熱分解する従来の発泡状ニッケル集電体に比較して柔軟性がありかつ強度が比較的高くなる。この結果、円筒体又は角形電極に入れるためにこの集電材を用いた電極をセパレータと一緒に捲回しても亀裂や毛羽立ちなどの突起の発生を防止でき、充放電特性を向上して近年の軽量化及びコンパクト化の要求に十分対応し得るとしている。
【0010】
不織布にニッケルめっきして得られる集電体は、例えば先に述べた特開平8−329956号公報(特許文献3)に示されているようにめっき後に骨格の樹脂を焼却除去するよりも製造法の簡易化、強度の向上には寄与するが、ニッケル量の目付け重量は、350g/m以上が必要でそれを特徴としている。ニッケル量については現在実用化されている発泡状ニッケルが、360g/m程度までに減少させている点からみるとほぼ同等のニッケル量を要することになる。また、この出願では、これよりニッケル量を減少させるとめっきを行っても、集電材をニッケル水素電池のニッケル極に使用した場合には、電極に端子を取付けるに際し、取付け部を加圧した際に表面のニッケル層が壊れて支持体の骨格部分が露出し、ニッケルリード板の溶接時に十分な溶接強度が得られず、また、この部分の電気抵抗が増し、活物質利用率低下などの問題が発生するとしている。
【0011】
また、逆に特願2005−347177の明細書では、その請求項4にニッケルめっき量が80〜150g/mであることが記載されている。この出願の主な目的は、高出力化であり、発泡状ニッケル極は、高出力化に限界があるとしている。それをニッケル膜の表面積、ペースト粘度、ニッケル量を規制することで活物質の充填量が増すことで高出力を可能にしたとしている。なお、高出力には、ニッケル量は多いほうが好ましいが、この出願では150g/m以下であれば集電体の孔径が小さくなりすぎず、活物質の充填性が劣ることなく、高出力が可能であるとしている。なお、端子の取出しについては、集電用外部端子は、溶接(例えばシーム溶接、スポット溶接等)すると記されている。しかし、ニッケル量を減らすことによる端子取出し工程や溶接上の強度などについて触れられていない。
【特許文献1】特開昭55−30180号公報
【特許文献2】特開平3−17957号公報
【特許文献3】特開平8−329956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、不織布を骨格とするニッケル集電体の活物質保持層のニッケル量を減らして、端子の取出しを容易にして、現在広く普及している発泡状ニッケル集電体を用いたニッケル極より低廉化を可能にして、同等かそれ以上の充放電特性及び寿命を発揮するニッケル極を用いた電池の工業化を可能にすることにある。
【0013】
一般に電池を構成する際の端子(タブ)の取出しは、ニッケル極に1本或いは2本端子板を溶接し、これを電槽蓋に溶接する方法が採用されている。この方式は、おもに一般用途や高容量を指向した電池に用いられる。
【0014】
一方、高出力が必要な用途に対しては、ニッケル極の上周辺部を一枚の集電端子板で一括溶接し、ここから端子板を取出して電槽蓋に溶接するいわゆるタブレス方式が採用されている。負極も同様な端子の取り出し法が採用されることがある。
【0015】
以上、このように電極のリード端子板を電槽蓋に溶接する方法とタブレス方式の2通りの端子取出し法が広く知られている。
【0016】
いずれにしても、ニッケル極の集電体とニッケル板をスポット溶接或いは超音波溶接する必要があり、溶接のためには、端子取出し部分のニッケル量はきわめて重要であることがわかった。つまり、リード端子取出し部のニッケル量が少ないと溶接が困難となり、一応、端子部分の溶接が可能であっても溶接強度が小さく簡単に外れる、或いは、溶接時に部分的に集電体が破損する、溶接部分の電気抵抗か大きいなどの問題が生ずる。つまりニッケル量を減らすと溶接強度が保てなくなる。従って、活物質を保持する集電体のニッケル量は減らすことができても、端子取出し部のニッケル量は減らすことには問題がある。
【0017】
通常、焼結式を初めパンチングメタル、エキスパンドメタル、スクリーンなどの機械加工の金属板を電極内に用いる電極の場合は、金属板を露出させておけば、端子板は、スポット、超音波いずれの方法でも容易に取付けることができる。しかし、金属板を有していない汎用の発泡状ニッケル集電体でも、溶接部分のニッケル量が450〜360g/m程度であるので、リード板を溶接することは可能である。しかし、それでも十分な強度を保つために溶接個所に金属箔、例えばニッケル薄板をあらかじめ溶接しておく、この部分の発泡状ニッケル集電体を重ねて加圧して金属層の密度を高めるなどの手段を採られることがある。
【0018】
ところが、本発明の場合は低廉化を目的に、汎用の発泡状ニッケルよりもニッケル量を減らすのでリード端子の溶接部の強度保持は一層困難になる。端子は電極と電源としての正極端子や負極端子とを繋ぐ重要な役目を果たしており、この部分の接触強度が十分でないと、結果としての電気抵抗が増大する。したがって、放電特性や寿命に大きな悪影響を及ぼす。
【0019】
つまり樹脂繊維を用いた不織布にニッケルめっきで得られる集電体の場合に、ニッケル量は320〜150g/mのように目付け重量を減らしても、集電体としての強度は、不織布を残しているので問題が少ないことが明らかである。しかし、ニッケル量を減らした場合に、端子の取付けが、溶接法の如何にかかわらず困難となり、溶接されてもニッケル量が少ないために端子と電極間の溶接強度が小さいことが課題として残った。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0021】
本発明は、下記のアルカリ電池用ニッケル極に関するものである。
1. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部を残し、その部分(周辺部)を端子取付け部とした集電体に、活物質を充填して得られるアルカリ電池用ニッケル極。
2. 前記周辺部は、集電体の端部から6mmまでの領域である、上記項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
3. 不織布がポリオレフィン系樹脂からなる上記項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
4. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の活物質を充填させる部分(周辺部以外の部分)のニッケル量が320〜100g/mになるようにめっきされている上記項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
5. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部のニッケル量が平均で700〜250g/mである上記項4記載のアルカリ電池用ニッケル極。
6. 多孔性ニッケル集電体の全体(周辺部及びそれ以外の部分)のニッケル量が平均で320g〜160/mである上記項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
7. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部が、周辺部以外に活物質を充填する前に加圧されている上記項1記載のアルカリ電池ニッケル極。
8. 端子取付け部に三次元多孔性ニッケル体が圧着されている上記項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
9. 三次元多孔性ニッケル体が発泡状ニッケル又はニッケルめっきされた不織布である上記項8記載のアルカリ電池用ニッケル極。
10. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部にスポット溶接又は超音波溶接により端子を取付けた集電体が用いられている上記項1記載のアルカリ電池ニッケル極。
11. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体を用いたニッケル極の断面部(周辺部の端部)に直接端子を取付けた構造を有するタブレス方式の上記項1記載のアルカリ電池ニッケル極。
12. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体を用いたニッケル極の断面部(周辺部の端部)に直接端子を取付けた構造を有するタブレス方式において、断面が研磨されてから端子が溶接されている上記項11記載のアルカリ電池ニッケル極。
13. 不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の活物質を充填させる部分(周辺部以外の部分)のニッケル量が320〜200g/mになるようにめっきされている上記項11記載のアルカリ電池用ニッケル極。

以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明では、ポリオレフィンを主とする不織布の表面に導電性を付与した後ニッケルの電解めっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部を残し、その部分(周辺部)を端子取付け部とし、これに活物質を充填(活物質は周辺部以外の部分に充填される)してアルカリ電池用ニッケル極を得る。ここで周辺部とは、リード板取出し方式の場合は4〜6mm程度の幅、タブレス方式では、2〜4mm程度の幅を指す。
【0023】
本発明では、不織布の材料として耐酸化性、耐アルカリ性に優れ、安価であるポリオレフィン系を採用する。ニッケル電解めっきの前に不織布表面に付与する導電性については、ニッケルの無電解めっきやニッケルのスパッタ法など、公知の方法が採用できる。
【0024】
ここで不織布上に形成している活物質保持層(周辺部以外であり、中央部とも言う)のニッケル量は、主に低コスト化を目的として、発泡状ニッケルの360g/m以上に対して320g/m以下にする(導電性付与のためのニッケル量も含む)。
【0025】
帯状の被めっき体をニッケルめっき浴槽で移動させながら電解めっきする通常の方式でめっきを行ったところ、例えば活物質保持層(周辺部以外の部分)のニッケルめっき量を上限に近い300g/mにすると、周辺部の平均ニッケル量は、端子取出し式に必要な5mm幅程度で540g/m、タブレス方式で必要な2mm幅では900g/m程度、1mm幅にすると1350g/m以上になる。従って、断面部(周辺部の端部)は1800g/m程度に相当すると推定される。
【0026】
また、活物質保持層のニッケル目付重量を150g/mにまで減少させても周辺部は、端子取出し方式に必要な6mm幅程度で350g/m程度になることがわかった。
【0027】
このように、不織布である被めっき体をシート状にして連続的に電解めっきを行うと、周辺部は中央部よりもめっき量が多い。つまり、周辺部はめっき液の拡散も容易でめっき効率が高いのがその原因である。当然、実用化されている発泡状ニッケルの場合もこの方式でめっきが行われるので周辺部のめっき量は多い。しかし、電極間のばらつきを減らすために周辺部は裁断除去して残りを集電体として利用している。したがって周辺部を減らすために幅の広い被めっき体(導電性を付与した発泡ウレタン樹脂)を用いることが有効であった。
【0028】
本発明は、不織布にニッケルめっきして得られる集電体において、活物質保持層でのニッケル量がニッケル極の充放電特性に与える影響が少ないことに着目してなされるものである。例えば、電気化学会第73会大会p293(2006)で420g/mの発泡状ニッケルを用いたニッケル極と200g/mの不織布ニッケルめっき集電体を用いたニッケル極が同等の高放電特性を示すことを明らかにしている。
【0029】
本発明は、不織布表面に導電性を付与した後ニッケルの電解めっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部を端子取出し部として利用する。さらに有効なのは、中央部に活物質を充填する前に、周辺部を加圧するか又は周辺部にニッケル箔を溶接しておく。溶接はスポット溶接でも超音波溶接でもよいが、量産性では後者が望ましい。
【0030】
なお、通常、端子板は活物質ペーストを充填した後で溶接するので、この部分に活物質が付着していると溶接が困難になるので、活物質充填前にあらかじめテープなどを貼っておいて活物質充填後に剥がす、あるいは、その部分に充填された活物質を洗浄除去する、あるいは研磨などにより除去するなど公知の方法を採用すればよい。
【0031】
本発明では、活物質が充填されている集電体(周辺部以外の部分)の好ましいニッケル量として320〜100g/m(より好ましくは320〜150g/m)の範囲としているので、充てんされる活物質は、導電性に優れた水酸化ニッケルにコバルト化合物を含み、とくに公知の表面にコバルト酸化物を被覆した球状の水酸化ニッケルが導電性に優れていて最適である。
【0032】
本発明の活物質充填部分は集電体のニッケル量を、低コスト化のために320〜100g/mの範囲で製造し、結果として生ずる周辺部(ニッケル量が700〜250g/m)を端子取付け部とする方法は、電池内の電極群がタブ方式、タブレス方式のいずれにおいても優れた結果をもたらす。
【0033】
用いる不織布の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、混合物、中心部がポリプロピレンで周辺部がポリエチレン繊維など耐アルカリ性、耐酸化性の繊維からなる不織布が好ましい。
【0034】
本発明では、不織布の嵩を高くして空隙体積を大きくすることが必要であり、従来の発泡状ニッケルと同様に高容量をもたらす要因になる。不織布が占める目付け重量は、20〜100g/m程度で、多孔度は87〜98%が好ましい。平均孔径は、汎用の発泡状ニッケルよりも小さいことが好ましい。不織布の構造上孔径の範囲を小さくすることは困難であるが、20〜200μmの範囲、好ましくは30〜150μmがよい。逆に20μmよりも小さい孔径を多くすると、活物質である水酸化ニッケル粒子が通常15〜25μmにして用いられるので、さらに微粉化しないと充填性に劣ることになる。
【0035】
また、ニッケル極の厚さは、通常、加圧後、高出力用は350〜550μm程度、高容量用は550〜800μm程度が使われるので、ニッケルめっき後の集電体の厚さよりも30〜80%程度厚い不織布を用いることが好ましい。これにめっきを施し、活物質ペーストを充填後に加圧して所望の厚さのニッケル極とする。
【0036】
不織布の製法は、本発明では限定しない。乾式法と湿式法が知られていて、湿式法により得られた不織布は乾式法により得られた不織布と比較してその目付重量及び厚さのばらつきが小さいので、均一な集電材を得ることができるといわれる。しかし、製法に限定されるものではない。また、不織布は、そのまま使用してもよいが、交絡処理を行って強度特性を高めた後に用いることが好ましい。
【0037】
つぎの工程は、ニッケルの電解めっきを行うために公知のようにこの不織布に導電性を付与する。そのためには、無電解めっき、スパッタリングによる方法がある。
【0038】
その後のニッケルの電解めっきも公知の方法でよい。つまり、めっき浴としては、ワット浴が良く知られ、他に塩化浴、スルファミン酸浴も知られている。これに、pH緩衝剤、界面緩衝剤等の添加剤が使用される場合もある。この浴に導電性付与した不織布を陰極に、ニッケル板を対極として、めっきしてニッケル多孔体とする。
【0039】
ところで、このように導電性を付与した不織布にめっき浴中でニッケルめっきを工業的に連続的に行うと、周辺部はめっき浴中のニッケルイオンの供給が容易に生じ、中央部よりもニッケルの付着量が多くなる。従来、ポリウレタンの発泡多孔体にニッケルめっきして得られる発泡状ニッケルの場合も当然同じ現象生じていたが、通常はこの端部を裁断除去して、使用していた。
【0040】
本発明は、このような被めっき体の周辺部に多量のニッケルがめっきされる現象に注目し、この端部を残して、その部分に端子板を溶接する。その溶接法にはスポット、超音波による方法がある。なお、短部に凹凸を生じる場合には、1〜2mm程度裁断除去しても活物質保持層よりもはるかにニッケル量が多いので、ここを端子取出し部としてもよい。
【0041】
なお、活物質ペーストを充填するのであるが、活物質充填後に端子板を取付けるのが通常であるので、この端子部にペーストが付着するのを防ぐために粘着テープを付け、ペースト塗着後に剥がす手段やペースト充填後、端子取出し部のペーストを除去する等の手段を採用する。即ち、活物質ペーストが周辺部ではなく、中央部に充填されるようにする。
【0042】
具体的な電極の構造例を示す。まず携帯用機器など通常の用途に用いる集電体へ端子を取付けたニッケル極を示す。図1は、端子1枚を取付けた1端子構造である。1が集電体に充填されている活物質層を示し、2が端子である。図2は図1よりは出力を大きく取出せるように、活物質を含む電極層3の両端に端子4、5を取付けた2本の端子を取付けた構造である。
【0043】
例えば、図1を製造するためには、この集電体の2倍の幅を持つ不織布のフープを用い、これにめっきして得られる集電体に活物質を充填し、中央で裁断したのち反対側に端子を取付ければよい。図2を製造するためには、この幅の不織布のフープを用い、同じくめっき、活物質充填後に、両端に端子を取付ければよい。いずれも、端子取付け部は活物質ペースト充填前に加圧しておくことが好ましい。また、端子取付け部は、活物質充填後に付着する活物質を洗浄除去する工程や研磨工程が入ることが好ましい。
【0044】
ところで工業的には、幅が600〜1000mmのように広い不織布を用いるのが効率的であり、このような場合、集電体の端部は限られてしまう。そこで1つの解決策として、電解ニッケルめっきまでの工程は、このまま幅広い状態の不織布に対して行い、不織布を所定の幅に裁断し、電解ニッケルめっきを行うことで、活物質を保持している電極部分のニッケル量は減らし、端部のニッケル量を自動的に増すことができる。
【0045】
また、幅の広い不織布を端子取付け部に相当する部分に切り込みを入れておけば、その周辺には他の部分よりも多くのニッケルがめっきされるのでこの部分に端子を取付けてもよい。図4は一例で8が活物質保持のための集電体であり、9で示すのが切り込み(スリット)である。したがって斜線で示す部分が被めっき体の周辺部となり、活物質充填後に点線で示すように裁断すれば、後で詳述するタブレス用の電極が得られる。図4の例では、24個(3×8)のタブレス用の電極が得られる。
【0046】
このようにして得られたニッケル極は、ニッケル−水素次電池では、よく知られるように例えば親水性処理したポリオレフィン不織布セパレータ、水素吸蔵合金負極を一体にして電極群とし、円筒形では捲回して電槽に挿入する。ニッケル極の端子は、電解液注入後、蓋に溶接し、封口を行って電池が構成される。角形の場合は通常は1端子形でニッケル極を製造しセパレータを介して負極と重ねて電槽に挿入する。
【0047】
つぎに、いわゆるタブレス方式のニッケル極を図3に示す。6は活物質保持層で7の上の断面に端子を溶接する。
【0048】
この場合もニッケル極は、セパレータ、負極一体にして電極群とし、円筒形電池では捲回して電槽に挿入する。この捲回したニッケル極の上に円形に加工したニッケル板を当てて溶接する。この円形のニッケル板はニッケル極の断面部分と直角に溶接することになる。したがって、この断面部のニッケル量が多いことが溶接を容易にすることになる。また、溶接前にこの断面を研磨することは溶接強度の向上をもたらす。
【0049】
この端子板を蓋に溶接することで電槽蓋が正極端子となる。電池は電解液注入、絶縁リングを介して封口を行うことで完成する。
【0050】
角形の場合も同様でニッケル極を製造しセパレータを介して負極と重ね、電槽に挿入する。電極の上部全体を、一枚の端子板で溶接し、これを正極端子とする。このように公知のタブレス方式では、一枚の端子板で電極全体から端子を取出す形になるので、電気抵抗が小さくなり、高出力が可能になる。
【0051】
以上、円筒型、角型、いずれも一枚の端子板はニッケル極と直角に溶接される、つまり断面と溶接することになるので、この断面に存在するニッケル量が多いことが必要である。
【0052】
パンチングメタルのような金属板が電極中に存在する場合は、断面のパンチングメタルを露出させておけば、ニッケル板との溶接は容易である。しかし、汎用の発泡状ニッケルの場合、集電体のニッケル量を例えば400g/mにすると断面も同じ量であり、この量のニッケルでは、ニッケル板との溶接が容易ではない。かりに出来ても溶接強度が小さく、接触抵抗が大きく、放電時に電圧降下が大きくなる。そこでニッケル箔やニッケル多孔体などを溶接しておいて、断面のニッケル量を増すことで溶接強度をあげている。不織布状ニッケル集電体についても、従来のように集電体全体を例えば300g/mとした場合には、溶接のために周辺のニッケル量を増す手段を採用することが好ましい。
【0053】
このように、発泡状ニッケル集電体の場合に採用されているように、端子取付け部にニッケル箔を溶接、あるいは多孔体を重ねて加圧一体化しておくなど、集電体を取付ける部分のニッケル量を増しておくことが溶接強度を上げるために好ましい。
【0054】
ところが、本発明のように端部のニッケル量が多い部分を残した場合に、断面部のニッケル量は周辺部よりもさらに多く、例えば集電体部を200g/mとした場合に、幅2mmの部分の平均が700g/m以上であるので断面は900g/m以上存在することになり、タブレス方式ではそのまま容易に端子板を溶接することが出来ることが明らかになった。なお、この場合は端子取付け部のニッケル量を増す手段を講じないので、活物質を保持させる集電体のニッケル量も多く320〜200g/m程度になるようにめっきされていることが必要である。このように本発明は、とくにタブレス方式の端子取出しにおいて、一層有効であることが分かった。
【0055】
なお、本発明では、活物質保持層のニッケル量をさらに減らして例えば150g/m程度にした場合は、従来のようにニッケル量を増すことが好ましい。しかし、その場合でも端部のニッケル量が多いので、ニッケル板やニッケル多孔体の溶接は容易であるという長所がある。
【発明の効果】
【0056】
不織布表面に導電性を付与した後ニッケルの電解めっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の活物質を保持させる中央部のニッケル量を320〜100g/m好ましくは250〜150g/mになるようにした集電体の溶接による端子取出しを容易にして、優れた放電特性を確保する。
【0057】
すなわち、フープ状の不織布に導電処理を行い、電解ニッケルめっき浴中で連続的に電解ニッケルめっきを行って得られた不織布状多孔性ニッケル集電体の周辺部を残し、その部分を端子取付け部とする。この手段により、集電体部のニッケル量を減らしても、優れた放電特性が得られる。
【0058】
とくにタブレス方式では、集電体の活物質保持層(中央部)のニッケル量が320〜200g/mの場合は、断面のニッケル量を増す手段を講じなくても端子の溶接が可能となり、工程の簡易化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0060】
実施例1
一般の端子取付け法(図2に示す2端子方式)による実施例を述べる。
【0061】
不織布の材料として、ポリプロピレンを中心部にポリエチレンを周囲に被覆した繊維を用いた。繊維の直径は約15μmであり、ポリプロピレンとポリエチレンの重量比を6:4とした。不織布は湿式法を用いて、製造し、公知の繊維の交差部分を融着させる交絡処理を行った。
【0062】
得られる不織布が繊維の目付け重量50g/m、平均厚さ1.3mm、多孔度95%、孔径20〜200μmになるように製造した。これを幅600mmに裁断した。これを集電体用の骨格とした。
【0063】
つぎに、この不織布に導電性を付与した。無電解ニッケルめっき法で導電性を有する層を形成した。すなわち、日本カニゼン製の洗浄液に浸漬、活性化液に浸漬後めっき浴に浸漬した。よく知られているように、還元によって生成したニッケルの自己触媒作用によりめっきが継続進行することが利用されていて、ニッケル量として8g/m添加した。なお、無電解めっきの代わりにスパッタリング法を採用しても良い。
【0064】
その後、この導電付与した不織布を幅200mmになるように3分割して、10mm離した状態でニッケル電解めっき浴中に浸漬した。
【0065】
めっき浴として公知のワット浴を用い電解ニッケルめっきを行った。なお、硫酸ニッケル240g/リットル、塩化ニッケル45g/リットル、硼酸30g/リットルとし、pHを4〜5に、温度を45〜55℃に調節した。また、陰極電流密度は2A/dmとした。なお、対極としては、ニッケル製のバスケットにニッケル片を注入して用いた。
【0066】
ここで集電体のニッケル量が平均で210g/mになるように電気量を調整した。この条件で端部のニッケル量は、両端の最端部1mm幅では550g/mであった。5mm内部までの平均で300g/mであった。
【0067】
両端の幅5mmを100kg/cmで加圧後に、この部分に粘着テープを貼って、後述の活物質充填時での活物質ペーストの浸入を防いだ。なお、この集電体の活物質保持層のニッケル量は平均195g/mであった。
【0068】
活物質ペーストとして正極活物質としてコバルトとして4重量%相当のオキシ水酸化コバルトで表面を被覆した水酸化ニッケル粉末と、この活物質94重量部に、水酸化コバルト粉末2重量部、カルボキシメチルセルロース水溶液0.19重量部、25%のポリプロピレンエマルジョンをポリプロピレン量として0.8重量部、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)0.1重量部になるように加えて活物質ペーストを作製した。
【0069】
この活物質ペーストを、発泡状ニッケル用に採用されているポンプで一方から加圧しながらペーストを集電体中に充填する公知の圧入法で充填した。その後100℃で30分間乾燥し、テープをはずした後、ローラープレスで加圧して厚さを平均0.65mmとした。
【0070】
このようにして得られたニッケル極を32mmに裁断して、長さ200mmのニッケル極を作製した。これをaとする。このニッケル極の大きさで水酸化ニッケルの充填量から求めた計算容量は3.2Ahであった。
【0071】
一方、比較のために、幅660mmの不織布にaと同様に電解ニッケルめっきして両端部を各々15mm裁断除去して集電体とした。すなわち、活物質保持層のニッケル量は平均で200g/mになるようにニッケルめっきを施して集電体を作製した。これを32mmに裁断して、長さ200mmのニッケル極を作製した。同様に周辺部の幅5mmを100kg/cmで加圧後に、この部分をテープで保護した後に活物質ペーストを充填した。これをニッケル極bとする。
【0072】
さらに比較のために、bと同様にして両端部を裁断除去した後の活物質保持層のニッケル量が発泡状ニッケルと同程度の平均で400g/mになるように、前記と同じ不織布にニッケルめっきを施して集電体を作製した。同様に周辺部を加圧、テープで保護した後に活物質ペーストを充填した。これをニッケル極cとする。なお、比較のb、cいずれもニッケル極の計算容量は3.2Ahである。
【0073】
本発明は集電体部分のニッケル量を少なくしても、リード端子を容易に、しかも強固にニッケル極に溶接が可能になることを目的としているので、まず、ニッケル極a、b、cの溶接の状態について述べる。
【0074】
この実施例では、この両端部に幅5mm、厚さ120μmのニッケル板をスポット溶接により取付けることにした。その結果、ニッケル極a及びcは溶接が可能であったが、ニッケル極bでは、スポット溶接が困難で、溶接部が発熱によって破損部分が生じた。超音波溶接では可能であったが、溶接強度が小さく、電池を構成することは困難であった。
【0075】
溶接強度を定量的に正確に測定することは困難であるので、電池を構成して、放電での電圧を比較して、汎用の発泡状ニッケルを集電体としたニッケル極を用いた電池と同じ放電電圧を示すかで判定した。ここでは、さらに比較例としてニッケルの目付重量400g/m、多孔度96%、厚さ1.3mmの発泡状ニッケルに実施例と同様な活物質を充填し、同じ650μmに加圧したニッケル極を用いた。リード板の取付けも同様にして電池とした。
【0076】
ニッケル極a、c、及び発泡状ニッケルを用い、負極には水素吸蔵合金を用いた。合金としてAB系合金、すなわちMmNi系合金(Mmはミッシュメタル)にAl、Mn及びCoを加えた公知の5元系水素吸蔵合金であるMmNiAlMnCo合金を用いた。集電体としてパンチングメタルを用い、合金粉末をペースト状にして集電体に塗着後、乾燥、加圧により公知のペースト式負極として使用した。
【0077】
セパレータとして公知の厚さ125μmの親水性処理したポリプロピレン不織布を用い、電解液として20g/リットルの水酸化リチウムを溶解した28重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。電池形式は円筒型のSubCである。ニッケル極a、c、発泡状ニッケルを用いた各電池をそれぞれ電池A、C、Dとした。
【0078】
各ニッケル極を用いて構成した電池について、0.1Cで容量の130%充電、0.2Cで終止電圧0.9Vまでの放電、0.2Cで120%の充電、0.2Cで終止電圧0.9Vまでの放電、0.5Cで115%の充電、0.5Cで0.9Vまでの放電を各1回繰り返して化成とした。
【0079】
その後、各電池を0.5Cで−ΔV(3mV)方式の電流で充電、0.5Cで0.9Vまでの放電を常温(25℃)で20サイクル繰り返した。その後に終止電圧を0.8Vとして1C及び2C連続放電を行った。表1に各電池の中間電圧の値を示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1で明らかなように各電池の放電電圧は、ほぼ等しく、本発明のようにニッケルめっき後の端部を残し、そこに端子を溶接することによって、活物質保持層のニッケル量を半減しても、放電電圧が低くなることはなかった。
【0082】
なお、比較のニッケル極bは、ニッケル板の溶接が困難であったので、あらかじめ集電体と同じ不織布状ニッケル材料を長さ32mm、幅5mmに裁断して、このニッケル板溶接部にあてて加圧一体化した。この手段で溶接部分のニッケル量は400g/mとなり、ニッケル板のスポット溶接が可能となった。
【0083】
なお、この場合に集電体に対してたとえばニッケル板のような二次元構造では、加圧しても一体化できない。発泡状ニッケルや不織布状ニッケルのような三次元多孔体を加圧することで、圧縮と同時に多孔体間の絡みが生じて一体化が可能になる。
【0084】
本発明のニッケル極aやcに関しても同じ手段で不織布状ニッケル片を当てて加圧一体化したニッケル極を作製した。ニッケル板の溶接はさらに容易になった。各電池をそれぞれA´、B´、C´とする。
【0085】
各電池の放電電圧は、A´とC´は、ほぼ表1と同じであり、B´はこのように端子接続部のニッケル量を増す手段を講ずることで放電が可能になった。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例2
図3は、汎用の高出力用の用途に好ましいタブレス方式のニッケル極の例である。この図の7の部分を通常は、発泡状ニッケルを2重するか又はニッケル片(ニッケルリボン)を溶接する。その上面の断面にニッケル板(正極集電板)を取付ける。
【0088】
実施例1同様に溶接強度を定量的に正確に測定することは困難であるので、電池を構成して、実用上最も必要な高率放電での電圧を比較した。
【0089】
不織布の材料として、ポリプロピレンを中心部にポリエチレンを周囲に被覆した繊維を用いた。繊維の直径は約15μmであり、ポリプロピレンとポリエチレンの重量比を7:3とした。不織布は湿式法を用いて、製造し、公知の繊維の交差部分を融着させる交絡処理を行った。
【0090】
得られる不織布は、繊維の目付け重量45g/m、平均厚さ0.95mm、多孔度95%、孔径15〜200μmになるように製造した。これを幅600mmに裁断した。これを集電体の骨格とした。
【0091】
つぎに、この不織布に導電性を付与した。実施例1同様に無電解ニッケルめっきにより導電性層を形成した。ニッケルの量は9g/mとした。
【0092】
その後、この導電付与した不織布にスリットを設けて電解ニッケルめっきを行った。スリットは幅64mm、長さ270mmとし、スリット間は10mmとした。
【0093】
スリットに面した部分が電極周辺部になる。幅64mmとしたので2分することで、幅32mm、長さ270mmの集電体が得られる。スリット側の端部に端子を取付けることになる。
【0094】
本実施例では、ここに直接、円板状のニッケル板を溶接する場合と比較例と同様に端部をニッケル板やニッケル多孔体で補強して断面のニッケル量を増した場合の両方について示す(図3)。この場合、端部は3mm幅とした。
【0095】
めっき浴として実施例1と同様で、硫酸ニッケル240g/L、塩化ニッケル45g/L、硼酸30g/Lとし、pHを4〜5に、温度を45〜55℃に調節した。陰極電流密度も2A/dmとした。対極も、ニッケル製のバスケットにニッケル片を注入して用いた。ここで集電体のニッケル量が平均で270g/mになるように電気量を調整した。この条件で端部のニッケル量は、両端の最端部1mm幅では750g/mであった。3mm内部までの平均で550g/mである。これらの値から推定すると断面には900g/m以上に相当するニッケルが存在すると思われる。
【0096】
両端の幅3mmに粘着テープを貼って、後述の活物質充填時での活物質ペーストの浸入を防いだ。なお、この集電体の活物質保持層のニッケル量は平均250g/mであった。
【0097】
活物質ペーストとして正極活物質としてコバルトとして3重量%相当のオキシ水酸化コバルトで表面を被覆した水酸化ニッケル粉末と、この活物質94重量部に、水酸化コバルト粉末2.5重量部、カルボキシメチルセルロース水溶液0.19重量部、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)0.1重量部になるように加えて活物質ペーストを作製した。
【0098】
この活物質ペーストを、発泡状ニッケル用に採用されているポンプで一方から加圧しながらペーストを集電体に充填する公知の圧入法でペーストを充填した。その後100℃で20分間乾燥し、テープをはずした後、ローラープレスで加圧して厚さを平均0.48mmとした。
【0099】
このようにして得られたニッケル極を横方向に32mmに裁断した。したがってニッケル極の大きさは、幅32mm、長さ270mmである。これをiとする。このニッケル極の大きさで水酸化ニッケルの充填量から求めた計算容量は3.2Ahであった。
【0100】
一方、比較のために、両端部を裁断除去した後の活物質保持層のニッケル量が平均250g/mになるようにニッケルめっきを施して集電体を作製した。同様に周辺部に幅3mmのテープで保護した後に活物質ペーストを充填した。これをニッケル極iiとする。
【0101】
さらに比較のために、両端部を裁断除去した後の活物質保持層のニッケル量が平均400g/mになるように、前記と同じ不織布にニッケルめっきを施して集電体を作製した。同様に周辺部をテープで保護した後に活物質ペーストを充填した。これをニッケル極iiiとする。なお、比較のii、iiiいずれも計算容量は2.3Ahである。
【0102】
本発明は集電体部分のニッケル量を少なくしても、リード端子を容易に、しかも強固にニッケル極に溶接が可能になることを目的としている。まず、端部のニッケル量を増すことなく、そのまま用いたニッケル極をiとする。つぎに比較例と同じようにニッケル量を増した場合をiiとする。比較例としてiii及びivの4種の溶接の状態について述べる。
【0103】
ii、iii、ivでは、この周辺部に市販されている400g/mニッケルめっきされている発泡状ニッケルを幅3mm、長さ270mmに裁断し、これをあらかじめ集電体の端部に当てて100kg/cmの圧力で加圧して加圧一体化して後にスポット溶接した。これがニッケル極iiである。
【0104】
一方比較例iii及びivはiiと同じ補強では、一括端子板の溶接が不十分であったので2枚の発泡状ニッケルを集電体の端部の両側から当てて加圧し、その後スポット溶接した。
【0105】
負極にはパンチングメタルに水素吸蔵合金をペースト状にして塗着後乾燥、加圧により得られた公知のペースト電極を用いた。合金としてAB5系合金、すなわちMmNi系合金にAl、Mn及びCoを加えた公知の5元系水素吸蔵合金であるMmNiAlMnCo合金を用いた。
【0106】
セパレータとして公知の厚さ125μmの親水性処理したポリプロピレン不織布を用いた。電槽に挿入後に厚さ150μmの円板状ニッケルを当てて、i〜ivの各ニッケル極の上部に円板状ニッケル板をスポット溶接した。その後円板状ニッケル板と電槽蓋を端子板で溶接して公知の構造のタブレス方式の電池構造とした。
【0107】
なお、負極についても底部側の負極の合金を除いてパンチングメタルを露出させ、ここに正極同様に円板状のニッケル板を溶接しておき、これを電槽底部とスポット溶接してタブレス化した。電池形式は実施例1同様に円筒型のSubCである。
【0108】
電解液として20g/リットルの水酸化リチウムを溶解した28重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた後、封口して電池を完成させた。
ニッケル極i、ii、iii、ivを用いた各電池をそれぞれ電池i、ii、iii、ivとした。なお、さらに比較例として400g/mニッケルめっきした発泡状ニッケルを集電体とした場合も調べたが、ニッケル極iv、つまり電池ivと同じ放電特性を示したので表には記載していない。
【0109】
各ニッケル極を用いて構成した電池について、0.1Cで容量の150%充電、0.2Cで終止電圧0.9Vまでの放電、0.2Cで120%の充電、0.2Cで終止電圧0.9Vまでの放電、0.5Cで115%の充電、0.5Cで0.9Vまでの放電を各1回繰り返して化成とした。
【0110】
その後、各電池を1Cで−ΔV(5mV)方式の電流で充電、1Cで0.9Vまでの放電を常温(25℃)で繰り返した。20サイクル後に終止電圧0.7Vで10Cと15C放電を行った。
【0111】
表3に各電池の放電容量と中間電圧の値を示す。
【0112】
【表3】

【0113】
表3で明らかなように各電池の放電電圧は、ほぼ等しく、タブレス方式では、集電体断面のニッケル量が極めて多いことに注目して、端部のニッケル量を増さなくても優れた特性が得られた。また、ニッケルめっき後の端部を残すことで、端子を溶接する際に、比較例よりも少ないニッケル量で活物質保持層のニッケル量を汎用の発泡状ニッケルよりも大幅に減らしても、優れた放電電圧を示した。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】一端子構造を示す模式図である。
【図2】二端子構造を示す模式図である。
【図3】タブレス方式を示す模式図である。
【図4】不織布にスリットを入れた場合の模式図である(斜線部が集電体の周辺部であり、点線に沿って裁断することで24個のタブレス用電極が得られる)。
【符号の説明】
【0115】
1 集電体(活物資層)
2 集電体の周辺部に取付けられた端子
3 集電体(活物資層)
4 集電体の周辺部に取付けられた端子
5 集電体の周辺部に取付けられた端子
6 集電体(活物資層)
7 タブレス方式による端子溶接部位(周辺部)
8 集電体(活物資層)
9 スリット(スリット周囲の斜線部が集電体の周辺部となる)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部を残し、その部分を端子取付け部とした集電体に、活物質を充填して得られるアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項2】
前記周辺部は、集電体の端部から6mmまでの領域である、請求項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項3】
不織布がポリオレフィン系樹脂からなる請求項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項4】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の活物質を充填させる部分のニッケル量が320〜100g/mになるようにめっきされている請求項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項5】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部のニッケル量が平均で700〜250g/mである請求項4記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項6】
多孔性ニッケル集電体の全体のニッケル量が平均で320g〜160/mである請求項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項7】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部が、周辺部以外に活物質を充填する前に加圧されている請求項1記載のアルカリ電池ニッケル極。
【請求項8】
端子取付け部に三次元多孔性ニッケル体が圧着されている請求項1記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項9】
三次元多孔性ニッケル体が発泡状ニッケル又はニッケルめっきされた不織布である請求項8記載のアルカリ電池用ニッケル極。
【請求項10】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の周辺部にスポット溶接又は超音波溶接により端子を取付けた集電体が用いられている請求項1記載のアルカリ電池ニッケル極。
【請求項11】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体を用いたニッケル極の断面部に直接端子を取付けた構造を有するタブレス方式の請求項1記載のアルカリ電池ニッケル極。
【請求項12】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体を用いたニッケル極の断面部に直接端子を取付けた構造を有するタブレス方式において、断面が研磨されてから端子が溶接されている請求項11記載のアルカリ電池ニッケル極。
【請求項13】
不織布表面に導電性を付与した後、電解ニッケルめっきを行って得られた多孔性ニッケル集電体の活物質を充填させる部分のニッケル量が320〜200g/mになるようにめっきされている請求項11記載のアルカリ電池用ニッケル極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−181825(P2008−181825A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15749(P2007−15749)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】