アルミニウム膜被着方法
【課題】薄い基材上に厚いアルミニウムを被着させても基材が撓むことのない被着方法を提供する。
【解決手段】基材を静電チャック上に配置し、静電チャックにバイアスを印加しない状態でアルミニウムの第1層を被着させ、次に静電チャックにバイアスを印加して基材を支持体に密着し、そして第1層より厚いアルミニウムの第2層を22℃未満の基材温度で第1層に連続して被着させる。
【解決手段】基材を静電チャック上に配置し、静電チャックにバイアスを印加しない状態でアルミニウムの第1層を被着させ、次に静電チャックにバイアスを印加して基材を支持体に密着し、そして第1層より厚いアルミニウムの第2層を22℃未満の基材温度で第1層に連続して被着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い基材上にアルミニウムの層又は膜を被着させることに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、シリコンウエハはそれらの上に被着されるべき厚いアルミニウム層を必要とする。例えば、ウエハから製作されるデバイスに高出力のトランジスタが含まれる場合、これらのデバイスに固有の非常に高い電流密度に対処するために、コンタクト層として厚いアルミニウム層が必要になることがある。
【0003】
一般に、このようなデバイスは、厚さが1〜20μmの1以上のアルミニウム層を含むソースコンタクトを備えた垂直構造を有する。これらは、厚さの完全なウエハに組み込まれた半導体デバイス(例えばMOSFET.IGBTバイポーラ)上に被着される。一般に、ドレインコンタクトはウエハの裏面に形成される。しかし、大半の厚さはデバイスの性能にとって有効ではなく、どちらかと言えば電力を浪費する直列抵抗に寄与するので、ウエハはドレインコンタクトの被着前に一般に720μmから<200μmまで研磨して薄くされる。このような薄いウエハはかなり曲がりやすく、様々な被着層によって誘起される応力にさらされたときに相当の反り又は撓みを受ける。約20℃未満の温度でスパッタリングにより被着したアルミニウム層は、膜とその下にある基材との熱膨張の不一致のため伸張する。例えば、8μmのスパッタアルミニウム膜は一般に、約60MPaの応力を有する。下記の表1は、いろいろな厚さのウエハにおいて誘起される反りを示している。200μmのSiウエハの場合で、およそ約2mmの反りが誘発されることがあることが分かる。このような反りは、ウエハをその後の工程で処理するのを困難にする。
【0004】
【表1】
【0005】
冷却した静電チャックでウエハを固定して低温で膜をスパッタリングすることにより、応力をほぼゼロまで減らすことができることが知られている。定盤にRFバイアスをかけていないときの8μmの膜についての応力と定盤又はチャック温度との関係を、図1に示す。更に、RFバイアスを加えることにより応力を圧縮応力にすることができることが知られており、これを図2に示している。
【0006】
しかし、出願人らは、固定した低温のアルミニウムはかなり大きな間隙で隔てられた非常に小さな柱状結晶粒を含む好ましくない結晶粒組織を示すことを確認した。この組織は、異なる2つの被着速度(それぞれ1.8μm/min及び0.6μm/min)にて静電チャック(ESC)上で−15℃で被着させた8μmのアルミニウム膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である図3、4で、はっきりと見ることができる。この粗くて間隙のある結晶粒組織は、デバイスの電気機械的特性を低下させてデバイスの性能低下を招きかねないことが容易に理解される。従って、他の不都合に混じって、抵抗率が増大しデバイスの寿命が短くなりかねない。
【0007】
図5は、固定していない8μmのアルミニウム膜のより一般的な結晶粒組織を示している。間隙のない全体に大きくて平らな六方晶系の粒子のあることが分かる。Alの被着を行う直前に別のモジュールでウエハを予熱することにより、結晶粒組織をある程度まで回復することを試みた。しかし、これが有効であるためには、ウエハの出発温度は約400℃である必要があることが研究から示された。これは、図6、7に示した2つの処理により説明される。ウエハは間隙を実質的になくすために約400℃に加熱する必要があることが分かる.この温度は、下層の構造体の安定した処理を可能とするのには高すぎる。初期のウエハ温度を上昇させても、Al膜の引張応力が増大することになり、従ってバイアスによって補償するのがより困難になる。それゆえに、出願人らは、このアプローチはアルミニウム結晶粒組織を改善し同時に低応力を保持するという問題を現実的に解決することにはならないことを突き止めた。
【0008】
図8、9は、RFバイアスを加えるとある程度まで膜を緻密にすることを説明している。これは、図2に示したように膜を圧縮性にする。しかし、これは結晶粒組織を有意には改善しないことが分かる。表面粗さと間隙ができる問題は非常に高いバイアスに至るまで存続する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
出願人らは、そのようなアルミニウム膜及びアルミニウム合金膜を被着させる方法であって過度の応力及び不十分な結晶粒組織の上記問題を克服し、あるいは少なくとも軽減する方法を見いだした。
【0011】
本発明は、薄い基材上にアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜を被着させる方法であって、
a)基材を支持体上に配置すること、
b)前記基材を固定していない状態で前記基材上にアルミニウム又はアルミニウム合金の第1層を被着させること、
c)前記基材を前記支持体に固定し、そして前記第1層より厚いアルミニウム又はアルミニウム合金の第2層を約22℃未満、好ましくは20℃未満の基材温度で、前記第1層に連続して被着させること、
を含む方法にある。
【0012】
この方法は、好ましくは、当該方法の固定を行う部分を実施している間、支持体にRFバイアスをかけることを含む。RF出力は、例えば100Wと500Wの間でよい。
【0013】
第1層は、約0.5μm〜約2μm(好ましくは約1μm)の厚さでよく、第2層の厚さは約7μmでよいが、用途によってはもっと大きい厚さが求められることもある。好ましくは、第1層の第2層に対する厚さの比は1:3と1:15の間である。
【0014】
被着工程は、異なる基材上で(例えば異なる被着を行って又は異なるモジュールで)行ってもよいが、同一の基材上で被着工程を行うのが好ましく、その場合は第2の被着工程は第1の被着工程と連続して行い、基材を固定することで開始することができる。これは、支持体が静電チャックである場合には特に簡単に行うことができる。
【0015】
既に示したように、基材は「薄い」基材であり、一般的にこれはその厚さが250μm未満であることを意味する。基材はシリコンウエハでよい。
【0016】
アルミニウム合金は、好ましくはAl(Cu,Si(@<5%))、すなわち合計量で5%未満の銅とケイ素を含有するアルミニウム合金である。
【0017】
本発明は上に明示されてはいるが、それは上に記載した又は以下で説明する特徴のいずれの独創的組み合わせをも含むものと解されるべきである。
【0018】
本発明はいろいろなやり方で実施することができ、次に一例として具体的な実施形態を、添付の図面を参照して説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】定盤にRFバイアスをかけていないときの8μmの膜についての応力と定盤又はチャック温度との関係を示すグラフである。
【図2】RFバイアスを加えることにより応力を圧縮応力にすることができることを示す図である。
【図3】1.8μm/minにて静電チャック上で−15℃で被着させた8μmのアルミニウム膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】0.6μm/minにて静電チャック上で−15℃で被着させた8μmのアルミニウム膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】固定していない8μmのアルミニウム膜のより一般的な結晶粒組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】直前に別のモジュールでウエハを予熱して被着したAl膜の結晶粒組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】直前に別のモジュールでウエハを予熱して被着したAl膜の結晶粒組織を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図8】RFバイアスを加えて被着したAl膜の結晶粒組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】RFバイアスを加えて被着したAl膜の結晶粒組織を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施形態により作製した膜の断面と表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施形態により作製した膜の断面と表面を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明の実施形態により作製した膜の断面と表面を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図13】1.8μm/minでアルミニウムを被着した場合の被着膜厚に対しウエハ温度をプロットしたグラフである。
【図14】ウエハにバイアスをかける本発明の実施形態の断面及び表面のSEM写真である。
【図15】バイアスなしでの本発明の実施形態の断面及び表面のSEM写真である。
【図16】異なる被着プロセスについて定盤バイアスに対し膜の反射率をプロットしたグラフである。
【図17】本発明の実施形態についての応力−バイアス曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来技術の被着プロセスによって提起された課題に鑑み、発明者らは、低温でも応力の調節が可能な緻密で平滑な間隙なしのアルミニウム膜を被着するアプローチを追求してきた。概して言えば、発明者らは、厚さが0.5〜2μmの固定していないアルミニウムのシード層を被着させてから、その膜を固定して低い静電チャック(ESC)定盤温度で被着を完了させると、満足できる膜が得られることを見いだした。この技術を使用すると、非常に小さな柱状結晶粒の形成を抑えアルミニウム膜の構造を改善する一方で、低い引張応力を維持することが可能であるということが判明した。これは、図10と11で説明される。固定していない薄いアルミニウム層は膜の残りの部分の成長のためのテンプレートとして働き、標準的な固定した低温(<20℃)での被着において普通である非常に小さい強固な柱状結晶粒構造の形成を抑制する。固定していないシード層の厚さをほぼ0.5μm未満まで減少させると、柱状結晶粒の組織が再び幅をきかせ始めて、図12に見られるように膜はもう一度粗くて間隙も持つようになる、ということが分かった。なお、この図のアルミニウムシード層の厚さは0.2μmである。
【0021】
シード層は、別個のモジュールで被着させてもよく、あるいは静電チャックのスイッチを切って同じモジュールで被着させてもよい。固定していないシード層を被着させる定盤温度は、構造上の変化に対する推進因子ではない。これは、固定していない被着の場合、プラズマの熱と被着の潜熱の両方のために、ウエハ温度は定盤よりもずっと高い温度まで上昇することができるからである。図13は、1.8μm/minでアルミニウム膜を被着させた際の固定していない厚さの完全なSiウエハの温度を示している。ウエハ温度は、1μmの被着の終了時には200℃より高い温度まで上昇し、そして8μmの被着の終了時には約350℃に接近することがある。ウエハを同じモジュールで処理する場合には、静電チャックはその前の冷却のために冷たくなっていることもある。
【0022】
しかしながら、被着によって発生する固有の熱は、通常は、ウエハが定盤と熱的に良好に接触していて(すなわち固定されていて)系から熱エネルギーを除去するための何らかの有効な冷却源がある場合に除去されるだけである。これを実現することによって、発明者らは、厚いアルミニウム膜の残りの部分と同じ低い温度の定盤上にシード層を被着させることができた。図7に関連して理解されるように、予熱ステーションを使って初期のウエハ温度を上昇させることが、より良好な品質を得るのに有効であるが、必要なウエハ温度は一般には更に高い。それはまた、結果として費用と時間とが密接に関係する、もう一つの処理工程である。
【0023】
上述の基本的プロセスを使用すると、固定している間にRFバイアスを適用することによって応力を約100MPaの圧縮応力まで更に抑制することができ、そして同時に緻密で平滑な膜を得ることができる。バイアスの作用を図14と15に示す。
【0024】
膜の構造の改善は、膜の反射率によって示すこともできる。これは固定されていないシード層の厚さとともに増加することが、図16で理解される。反射率の測定値は、アルミニウム膜の表面粗さの指標である。低温の固定膜は本質的に非常に粗く、固定されていないより平滑なシード層と比べてずっと低い反射率を示すことが注目される。
【0025】
図17は、本発明の方法の一実施形態を使用して被着させた8μmのAl膜、すなわち固定しない1μmのシード層と固定した7μmの膜について、定盤のRFバイアスに対する応力を示している。固定していないシード層を用いるこの新しい方法の場合の調節可能な応力範囲は、標準的な固定した低温のAl膜について得られるそれに匹敵する。とは言え、先に検討したように、間隙のないより緻密な結晶粒組織がその応力範囲全体にわたり保持されて、この方法を実用的な半導体デバイスの製作に非常に適したものにする。
【0026】
従って、本発明は、低い引張応力から圧縮応力へと応力を調節することが可能な平滑で緻密な間隙なしの膜を形成するやり方でもって、低温でアルミニウムを被着させるための簡単な方法を提供する。この方法は、0℃未満の被着温度で実施してもよい。応力の調節は、固定して被着を行う工程を実施している間にRFバイアスを適用しながら約100MPaの圧縮応力に至るまでの範囲にわたってなされる。その応力範囲全体にわたり、且つ厚さが最小で0.5μmまでのシード層を用いて、デバイスの製作にとって好適な結晶粒組織が保持される。この基本的方法を使って改善される膜の利益は、応力の調節が必要されようとされまいと、有利であることが理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い基材上にアルミニウムの層又は膜を被着させることに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、シリコンウエハはそれらの上に被着されるべき厚いアルミニウム層を必要とする。例えば、ウエハから製作されるデバイスに高出力のトランジスタが含まれる場合、これらのデバイスに固有の非常に高い電流密度に対処するために、コンタクト層として厚いアルミニウム層が必要になることがある。
【0003】
一般に、このようなデバイスは、厚さが1〜20μmの1以上のアルミニウム層を含むソースコンタクトを備えた垂直構造を有する。これらは、厚さの完全なウエハに組み込まれた半導体デバイス(例えばMOSFET.IGBTバイポーラ)上に被着される。一般に、ドレインコンタクトはウエハの裏面に形成される。しかし、大半の厚さはデバイスの性能にとって有効ではなく、どちらかと言えば電力を浪費する直列抵抗に寄与するので、ウエハはドレインコンタクトの被着前に一般に720μmから<200μmまで研磨して薄くされる。このような薄いウエハはかなり曲がりやすく、様々な被着層によって誘起される応力にさらされたときに相当の反り又は撓みを受ける。約20℃未満の温度でスパッタリングにより被着したアルミニウム層は、膜とその下にある基材との熱膨張の不一致のため伸張する。例えば、8μmのスパッタアルミニウム膜は一般に、約60MPaの応力を有する。下記の表1は、いろいろな厚さのウエハにおいて誘起される反りを示している。200μmのSiウエハの場合で、およそ約2mmの反りが誘発されることがあることが分かる。このような反りは、ウエハをその後の工程で処理するのを困難にする。
【0004】
【表1】
【0005】
冷却した静電チャックでウエハを固定して低温で膜をスパッタリングすることにより、応力をほぼゼロまで減らすことができることが知られている。定盤にRFバイアスをかけていないときの8μmの膜についての応力と定盤又はチャック温度との関係を、図1に示す。更に、RFバイアスを加えることにより応力を圧縮応力にすることができることが知られており、これを図2に示している。
【0006】
しかし、出願人らは、固定した低温のアルミニウムはかなり大きな間隙で隔てられた非常に小さな柱状結晶粒を含む好ましくない結晶粒組織を示すことを確認した。この組織は、異なる2つの被着速度(それぞれ1.8μm/min及び0.6μm/min)にて静電チャック(ESC)上で−15℃で被着させた8μmのアルミニウム膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である図3、4で、はっきりと見ることができる。この粗くて間隙のある結晶粒組織は、デバイスの電気機械的特性を低下させてデバイスの性能低下を招きかねないことが容易に理解される。従って、他の不都合に混じって、抵抗率が増大しデバイスの寿命が短くなりかねない。
【0007】
図5は、固定していない8μmのアルミニウム膜のより一般的な結晶粒組織を示している。間隙のない全体に大きくて平らな六方晶系の粒子のあることが分かる。Alの被着を行う直前に別のモジュールでウエハを予熱することにより、結晶粒組織をある程度まで回復することを試みた。しかし、これが有効であるためには、ウエハの出発温度は約400℃である必要があることが研究から示された。これは、図6、7に示した2つの処理により説明される。ウエハは間隙を実質的になくすために約400℃に加熱する必要があることが分かる.この温度は、下層の構造体の安定した処理を可能とするのには高すぎる。初期のウエハ温度を上昇させても、Al膜の引張応力が増大することになり、従ってバイアスによって補償するのがより困難になる。それゆえに、出願人らは、このアプローチはアルミニウム結晶粒組織を改善し同時に低応力を保持するという問題を現実的に解決することにはならないことを突き止めた。
【0008】
図8、9は、RFバイアスを加えるとある程度まで膜を緻密にすることを説明している。これは、図2に示したように膜を圧縮性にする。しかし、これは結晶粒組織を有意には改善しないことが分かる。表面粗さと間隙ができる問題は非常に高いバイアスに至るまで存続する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
出願人らは、そのようなアルミニウム膜及びアルミニウム合金膜を被着させる方法であって過度の応力及び不十分な結晶粒組織の上記問題を克服し、あるいは少なくとも軽減する方法を見いだした。
【0011】
本発明は、薄い基材上にアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜を被着させる方法であって、
a)基材を支持体上に配置すること、
b)前記基材を固定していない状態で前記基材上にアルミニウム又はアルミニウム合金の第1層を被着させること、
c)前記基材を前記支持体に固定し、そして前記第1層より厚いアルミニウム又はアルミニウム合金の第2層を約22℃未満、好ましくは20℃未満の基材温度で、前記第1層に連続して被着させること、
を含む方法にある。
【0012】
この方法は、好ましくは、当該方法の固定を行う部分を実施している間、支持体にRFバイアスをかけることを含む。RF出力は、例えば100Wと500Wの間でよい。
【0013】
第1層は、約0.5μm〜約2μm(好ましくは約1μm)の厚さでよく、第2層の厚さは約7μmでよいが、用途によってはもっと大きい厚さが求められることもある。好ましくは、第1層の第2層に対する厚さの比は1:3と1:15の間である。
【0014】
被着工程は、異なる基材上で(例えば異なる被着を行って又は異なるモジュールで)行ってもよいが、同一の基材上で被着工程を行うのが好ましく、その場合は第2の被着工程は第1の被着工程と連続して行い、基材を固定することで開始することができる。これは、支持体が静電チャックである場合には特に簡単に行うことができる。
【0015】
既に示したように、基材は「薄い」基材であり、一般的にこれはその厚さが250μm未満であることを意味する。基材はシリコンウエハでよい。
【0016】
アルミニウム合金は、好ましくはAl(Cu,Si(@<5%))、すなわち合計量で5%未満の銅とケイ素を含有するアルミニウム合金である。
【0017】
本発明は上に明示されてはいるが、それは上に記載した又は以下で説明する特徴のいずれの独創的組み合わせをも含むものと解されるべきである。
【0018】
本発明はいろいろなやり方で実施することができ、次に一例として具体的な実施形態を、添付の図面を参照して説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】定盤にRFバイアスをかけていないときの8μmの膜についての応力と定盤又はチャック温度との関係を示すグラフである。
【図2】RFバイアスを加えることにより応力を圧縮応力にすることができることを示す図である。
【図3】1.8μm/minにて静電チャック上で−15℃で被着させた8μmのアルミニウム膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】0.6μm/minにて静電チャック上で−15℃で被着させた8μmのアルミニウム膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】固定していない8μmのアルミニウム膜のより一般的な結晶粒組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】直前に別のモジュールでウエハを予熱して被着したAl膜の結晶粒組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】直前に別のモジュールでウエハを予熱して被着したAl膜の結晶粒組織を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図8】RFバイアスを加えて被着したAl膜の結晶粒組織を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】RFバイアスを加えて被着したAl膜の結晶粒組織を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施形態により作製した膜の断面と表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施形態により作製した膜の断面と表面を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明の実施形態により作製した膜の断面と表面を示す別の電子顕微鏡写真である。
【図13】1.8μm/minでアルミニウムを被着した場合の被着膜厚に対しウエハ温度をプロットしたグラフである。
【図14】ウエハにバイアスをかける本発明の実施形態の断面及び表面のSEM写真である。
【図15】バイアスなしでの本発明の実施形態の断面及び表面のSEM写真である。
【図16】異なる被着プロセスについて定盤バイアスに対し膜の反射率をプロットしたグラフである。
【図17】本発明の実施形態についての応力−バイアス曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来技術の被着プロセスによって提起された課題に鑑み、発明者らは、低温でも応力の調節が可能な緻密で平滑な間隙なしのアルミニウム膜を被着するアプローチを追求してきた。概して言えば、発明者らは、厚さが0.5〜2μmの固定していないアルミニウムのシード層を被着させてから、その膜を固定して低い静電チャック(ESC)定盤温度で被着を完了させると、満足できる膜が得られることを見いだした。この技術を使用すると、非常に小さな柱状結晶粒の形成を抑えアルミニウム膜の構造を改善する一方で、低い引張応力を維持することが可能であるということが判明した。これは、図10と11で説明される。固定していない薄いアルミニウム層は膜の残りの部分の成長のためのテンプレートとして働き、標準的な固定した低温(<20℃)での被着において普通である非常に小さい強固な柱状結晶粒構造の形成を抑制する。固定していないシード層の厚さをほぼ0.5μm未満まで減少させると、柱状結晶粒の組織が再び幅をきかせ始めて、図12に見られるように膜はもう一度粗くて間隙も持つようになる、ということが分かった。なお、この図のアルミニウムシード層の厚さは0.2μmである。
【0021】
シード層は、別個のモジュールで被着させてもよく、あるいは静電チャックのスイッチを切って同じモジュールで被着させてもよい。固定していないシード層を被着させる定盤温度は、構造上の変化に対する推進因子ではない。これは、固定していない被着の場合、プラズマの熱と被着の潜熱の両方のために、ウエハ温度は定盤よりもずっと高い温度まで上昇することができるからである。図13は、1.8μm/minでアルミニウム膜を被着させた際の固定していない厚さの完全なSiウエハの温度を示している。ウエハ温度は、1μmの被着の終了時には200℃より高い温度まで上昇し、そして8μmの被着の終了時には約350℃に接近することがある。ウエハを同じモジュールで処理する場合には、静電チャックはその前の冷却のために冷たくなっていることもある。
【0022】
しかしながら、被着によって発生する固有の熱は、通常は、ウエハが定盤と熱的に良好に接触していて(すなわち固定されていて)系から熱エネルギーを除去するための何らかの有効な冷却源がある場合に除去されるだけである。これを実現することによって、発明者らは、厚いアルミニウム膜の残りの部分と同じ低い温度の定盤上にシード層を被着させることができた。図7に関連して理解されるように、予熱ステーションを使って初期のウエハ温度を上昇させることが、より良好な品質を得るのに有効であるが、必要なウエハ温度は一般には更に高い。それはまた、結果として費用と時間とが密接に関係する、もう一つの処理工程である。
【0023】
上述の基本的プロセスを使用すると、固定している間にRFバイアスを適用することによって応力を約100MPaの圧縮応力まで更に抑制することができ、そして同時に緻密で平滑な膜を得ることができる。バイアスの作用を図14と15に示す。
【0024】
膜の構造の改善は、膜の反射率によって示すこともできる。これは固定されていないシード層の厚さとともに増加することが、図16で理解される。反射率の測定値は、アルミニウム膜の表面粗さの指標である。低温の固定膜は本質的に非常に粗く、固定されていないより平滑なシード層と比べてずっと低い反射率を示すことが注目される。
【0025】
図17は、本発明の方法の一実施形態を使用して被着させた8μmのAl膜、すなわち固定しない1μmのシード層と固定した7μmの膜について、定盤のRFバイアスに対する応力を示している。固定していないシード層を用いるこの新しい方法の場合の調節可能な応力範囲は、標準的な固定した低温のAl膜について得られるそれに匹敵する。とは言え、先に検討したように、間隙のないより緻密な結晶粒組織がその応力範囲全体にわたり保持されて、この方法を実用的な半導体デバイスの製作に非常に適したものにする。
【0026】
従って、本発明は、低い引張応力から圧縮応力へと応力を調節することが可能な平滑で緻密な間隙なしの膜を形成するやり方でもって、低温でアルミニウムを被着させるための簡単な方法を提供する。この方法は、0℃未満の被着温度で実施してもよい。応力の調節は、固定して被着を行う工程を実施している間にRFバイアスを適用しながら約100MPaの圧縮応力に至るまでの範囲にわたってなされる。その応力範囲全体にわたり、且つ厚さが最小で0.5μmまでのシード層を用いて、デバイスの製作にとって好適な結晶粒組織が保持される。この基本的方法を使って改善される膜の利益は、応力の調節が必要されようとされまいと、有利であることが理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄い基材上にアルミニウム膜を被着させる方法であって、
(a)基材を支持体上に配置すること、
(b)前記基材を固定していない状態で前記基材上にアルミニウムの第1層を被着させること、
(c)前記基材を前記支持体に固定し、そして前記第1層より厚いアルミニウムの第2層を約22℃未満の基材温度で、前記第1層に連続して被着させること、
を含むアルミニウム膜被着方法。
【請求項2】
固定している間、前記支持体にRFバイアスを供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
RF出力が100Wと500Wの間である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1層が約0.5〜2μmの厚さである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記第2層が約7μmの厚さである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1層の前記第2層に対する厚さの比が1:3と1:15の間である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記被着の工程を異なる支持体上で行う、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記被着の工程を同じ支持体上で行う、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
2番目の被着の工程が1番目の被着の工程に続くものであり、前記基材を固定することにより開始される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記基材が250μm未満の厚さである、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記基材がシリコンウエハである、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記基材の温度が約20℃未満である、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記アルミニウム合金が合計量で5%未満の銅とケイ素を含有するアルミニウム合金である、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項1】
薄い基材上にアルミニウム膜を被着させる方法であって、
(a)基材を支持体上に配置すること、
(b)前記基材を固定していない状態で前記基材上にアルミニウムの第1層を被着させること、
(c)前記基材を前記支持体に固定し、そして前記第1層より厚いアルミニウムの第2層を約22℃未満の基材温度で、前記第1層に連続して被着させること、
を含むアルミニウム膜被着方法。
【請求項2】
固定している間、前記支持体にRFバイアスを供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
RF出力が100Wと500Wの間である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1層が約0.5〜2μmの厚さである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記第2層が約7μmの厚さである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1層の前記第2層に対する厚さの比が1:3と1:15の間である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記被着の工程を異なる支持体上で行う、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記被着の工程を同じ支持体上で行う、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
2番目の被着の工程が1番目の被着の工程に続くものであり、前記基材を固定することにより開始される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記基材が250μm未満の厚さである、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記基材がシリコンウエハである、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記基材の温度が約20℃未満である、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記アルミニウム合金が合計量で5%未満の銅とケイ素を含有するアルミニウム合金である、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図13】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図2】
【図13】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−167370(P2012−167370A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30825(P2012−30825)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(512035033)エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(512035033)エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】
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