説明

アンダーフィル用液状樹脂組成物、それを用いた半導体装置、および半導体装置の製造方法

【課題】耐熱密着性に優れた液状樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)シアネートエステル化合物、(C)末端にビニル基を含有するアクリロニトリルとブタジエンの共重合体、および、(D)フィラー、を含むことを特徴とするアンダーフィル用液状樹脂組成物ならびに前記アンダーフィル用液状樹脂組成物を用いて作製した半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル用液状樹脂組成物、それを用いた半導体装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの高集積化、高密度化と半導体パッケージの小型化という要求からフリップチップ実装方式が開発された。同実装方式はこれまでのワイヤーボンディングによる接続ではなく、半導体チップ表面とプリント配線基板とを半田バンプで接続することで小型、薄型化を可能としている。しかし半導体チップ、プリント配線基板、半田の熱膨張係数が異なるために冷熱衝撃試験時に熱ストレスが発生する。特に半導体チップ中央から遠いコーナー近辺の半田バンプには局所的に熱ストレスが集中する。このため半田バンプにクラックが生じ、回路の作動信頼性は大きく低下する。そこで、熱ストレスを緩和する目的から液状注入封止アンダーフィル材による封止が行われる。具体的には半導体チップとプリント配線基板との隙間(30〜150μm)に液状注入封止アンダーフィル材を注入、硬化して、封止する方法が用いられる。(例えば、特許文献1参照。)
液状注入封止アンダーフィル材が前述の半田バンプへの熱ストレスを緩和、吸収するためには物理化学的特性として、
(1)液状注入封止アンダーフィル材のガラス転移温度以下の熱膨張係数(α1)を半田バンプの熱膨張係数に合わせること。
(2)液状注入封止アンダーフィル材のガラス転移温度(Tg)が高いこと。すなわちガラス転移温度以下の熱膨張係数(α1)の温度領域が広いこと。
(3)液状注入封止アンダーフィル材−半導体チップまたは液状注入封止アンダーフィル材−プリント配線基板界面での密着性が良好なこと。
などが必要となる。これらの要件を満たす液状注入封止アンダーフィル材では、外部の温度変化に対して隙間に充填した封止樹脂が半田と同様に膨張収縮し、且つ各界面は強固に結合されているために、熱ストレスが半導体パッケージ全体に分散され、接続信頼性が保たれる。このほか、液状注入封止アンダーフィル材は外部環境から半導体チップの回路面と半田バンプとを保護する役割も果たす。以上のようにフリップチップ実装の信頼性は液状注入封止アンダーフィル材に大きく依存する近年のフリップチップ実装の急速な普及に伴い、より信頼性の高い液状注入封止アンダーフィル材が望まれている(具体的にはJEDECレベル3、4などの条件で吸湿処理を行い、IRリフロー試験および温度サイクル試験を行う)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−233351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在実用レベルにある液状注入封止アンダーフィル材に用いられるアンダーフィル用液状樹脂組成物の多くは、吸湿処理を行うと信頼性は著しく低下する、または、ガラス転移温度を高くするに伴って液状樹脂組成物はその充填性を著しく低下してしまう、という欠点があった。更に、耐湿信頼性を満たすには前述の(1)から(3)以外の特性として
(4)上記(3)の密着性が吸湿処理によって、できる限り変化しないこと。
(5)アンダーフィル用液状樹脂組成物としての注入性、充填性が確保されていること。が重要となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より信頼性
の高いアンダーフィル用液状樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の別な目的はアンダーフィル用液状樹脂組成物としての注入性や充填性などの流動特性に優れ、吸湿処理により半導体チップとの密着性を損なわず、ガラス転移温度の高い硬化物を与え、耐熱密着性に優れた液状樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記[1]〜[6]の本発明により達成される。
[1](A)式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)シアネートエステル化合物、(C)末端に少なくとも1つのビニル基を含有する共重合体、および、(D)フィラー、を含むことを特徴とするアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【0006】
【化1】

【0007】
[2]前記(C)末端の少なくとも1つにビニル基を含有する共重合体が、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸の共重合体であることを特徴とする前記[1]項記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
[3]前記シアネートエステル化合物(B)が下記式(2)で表される前記[1]または[2]項に記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【0008】
【化2】

(R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、CF3基、ハロゲン原子のいず
れかを表わす。)
【0009】
[4]更に、(E)下記式(3)で表されるビスフェノール化合物を含む前記[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【0010】
【化3】

(R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、CF3基、ハロゲン原子のいず
れかを表わす。)
【0011】
[5]回路基板と、当該回路基板上に配置された半導体チップ、およびこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備える半導体装置であって、
当該アンダーフィルが上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする半導体装置。
[6]回路基板と、当該回路基板上に配置された半導体チップ、およびこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備える半導体装置の製造方法であって、
回路基板と半導体チップの間隙に上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を充填する工程、
充填されたアンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化させてアンダーフィルとする工程、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の液状樹脂組成物を用いることにより、信頼性の高いアンダーフィル用液状樹脂組成物を提供することにあり、注入性や充填性の流動特性に優れ、吸湿処理により半導体チップとの密着性を損なわず、ガラス転移温度の高い硬化物を与え、耐熱密着性に優れた液状樹脂組成物を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)シアネートエステル化合物、(C)末端に少なくとも1つのビニル基を含有する共重合体、および、(D)フィラー
、を含むアンダーフィル用液状樹脂組成物に関するものである。
なお下記は例示であり、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
以下に本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0014】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂は、高耐熱性、耐吸湿密着性を発現させるために式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)の(2−[4−(
2,3−エポキシプロポキシ)−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロ
ポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン])である。
さらに、必要に応じてフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフト
ールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシ樹脂、などと適宜混合して使用しても良い。
この場合、芳香族環にグリシジル構造が結合したものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点から好ましく、特にビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応で得られるポリグリシジルエーテルで25℃において液状を呈する物を併用すると樹脂組成物の作業性やポットライフが優れることから好ましい。また、グリシジルアミン構造が結合したものはポットライフの低下がおこり、脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性の低下する、ということからこれらは使用する量を制限するほうが好ましい。また、半導体装置の信頼性を確保する観点から、使用するエポキシ樹脂はNa+、Cl-などのイオン性不純物はできるだけ少ないものが好ましい。
(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂と式(1)以外のエポキシ樹脂の配合量は、(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂100重量部に対して20〜300重量部が好ましく、30〜200重量部がさらに好ましい。この範囲とすることにより、耐熱性、機械特性、耐湿性に優れるものとなる。また、本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として最終的に常温(25℃)で液状であることが好ましく、常温で固形のエポキシ樹脂は常温で液状のエポキシ樹脂に溶解させて、液状となっていれば、特に制限されるものではない。
【0015】
本発明に用いられるシアネートエステル化合物(B)は、1分子中にシアネートエステル(−O−C≡N)基を2個以上含まれるものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。この場合、芳香族環にシアネートエステル(−O−C≡N)基が結合した構造を含むものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点から好ましく、脂肪族炭素骨格にシアネートエステル(−O−C≡N)基が結合した構造は信頼性、特に接着性という観点から使用量を制限することが好ましい。芳香族環にシアネートエステル(−O−C≡N)基が結合した構造を含むものとしては式(2)で表される分子構造のものがある。
具体的な例としては、4,4'−エチリデンジフェニルジシアネート、4,4'−メチリデンビス[2,6−ジメチルフェニレンシアネート]、4,4'−(1−メチルエチリデ
ン)ビス[2−メチルフェニレンシアネート]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビ
ス[2,6−ジメチルフェニレンシアネート]、4,4'−メチレンビス[2−メチルフ
ェニレンシアネート]、4,4'−(1−メチル-エチリデン)ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)フェニレンシアネート]などが挙げられ、これらを必要に応じて単独または複数用いることができる。これらの中でも25℃で液状を呈する4,4'−エチリデンジ
フェニルジシアネートが樹脂組成物の作業性の観点から好ましい。
本発明に用いるシアネートエステル化合物(B)の配合量は、特に制限は無いが、好ましくは、シアネートエステル化合物100重量部に対して、エポキシ樹脂が20〜80重量部、さらに好ましくは30〜70重量部である。この範囲とすることにより、耐熱性、機械特性、耐湿性に優れる樹脂組成物とすることが可能である。
【0016】
本発明に用いられる末端に少なくとも1つのビニル基を含有する共重合体(C)は、注入性や充填性に優れたアンダーフィル用液状樹脂組成物を得るために用いられる。上記共重合体(C)は、例えば、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸の共重合体などが挙げられ、分子中に1,3−ブタジエンモノマー、アクリルニトリルモノマー、およびアクリル酸モノマーを繰り返し単位として含む共重合体であり、かつ分子の末端部に少なくとも1つの炭素二重結合基(C=C)を含むものであれば、分子量や結合構造は特に限定されるものではない。共重合体の数平均分子量は2000以上5000以下の範囲が好ましく、より好ましい範囲は3000以上4000以下である。これらの範囲よりも低分子量の場合は、耐熱性が低く、高分子量の場合は、液状樹脂組成物の粘性が高くなることにより作業性に問題が生ずる。ここでの数平均分子量とはGPC法によるスチレン換算分子量である。この場合、共重合体中のアクリロニトリルユニットの含有率は、10〜30モル%が好ましい。10モル%未満では樹脂成分との相溶性が乏しいために分離し、30モ
ル%を越えると液状樹脂組成物の粘性が高く作業性に問題が生ずるため好ましくない。
ビニル基の導入部位はアクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸の共重合体の片末端または両末端、側鎖のいずれでも良く、両者が共存していても良い。ビニル基の導入手法の一例としては、共重合体末端にアクリル酸モノマーを導入することによりカルボキシル基を付与した後にグリシジルアクリレートまたはグリシジルアクリレートなどを付加させる方法などが挙げられる。この場合の炭素二重結合(C=C)は(メタ)アクリレート由来の炭素二重結合(C=C)であるが差し支えない。上記(C)の例としては宇部興産(株)製HYCAR VTポリマーVTBNx1300x33などが市販品として入手が可
能である。
本発明に用いられる(C)末端の少なくとも1つにビニル基を含有する共重合体の配合量は、液状樹脂組成物からフィラーを除いた成分100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲であり、より好ましくは2〜4重量部の範囲である。ここで下限値未満の場合、注入性や充填性付与効果が小さく、上限値を超える場合には液状樹脂組成物の粘度が著しく高くなるため好ましくない。
【0017】
本発明に用いられる(D)フィラーは、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカなどのシリカ粉末などの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物などを用いることができる。これらのフィラーは、単独でも混合して使用しても良い。
これらの中でも液状樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度などを向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましく、低放射線性であればより好ましい。
前記フィラーの形状は、特に限定されないが、粘度・流動特性の観点から形状は球状であることが好ましい。半導体装置の組立の場合、フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上30μm以下であり、特に好ましくは0.2μm以上8μm以下である。平均粒子径が前記範囲に満たない場合は液状樹脂組成物の粘度が著しく高くなるため流動性が損なわれ、前記範囲を超える場合は液状樹脂組成物が半導体装置への流動する際にフィラー詰まりによる部分的な未充填や充填不良が発生するため好ましくない。全液状樹脂組成物100重量部に対するフィラーの含有量は30重量部以上80重量部以下の範囲であり、より好ましくは40重量部以上70重量部以下である。含有量が、前記範囲に%に満たない場合は液状樹脂組成物の熱膨張係数が大きいために半導体装置の信頼性を低下させるために好ましくなく、前記範囲を超える場合には半導体装置作製時に半導体チップとプリント配線基板の隙間に流動する際に詰まりが発生するため好ましくない。また、フィラーは上記の範囲で有れば単独で用いても、混合して粒度分布に多峰性を持たせたものでも差し支えない。
【0018】
本発明には、(E)下記式(3)で表されるビスフェノール化合物を含むものも使用可能である。式中のR1〜R6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、CF3基、アリ
ル基、ハロゲン原子のいずれかの構造を有しており、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールE、アリルフェノールとホルムアルデヒドの重縮合物で2核体のものなどがある。これらの中でも良好な触媒活性と保存安定性を示すテトラメチルビスフェノールAおよびテトラメチルビスフェノールFが特に好ましい。
本発明に用いられる(E)ビスフェノール化合物の配合量は、液状樹脂組成物からフィラーを除いた成分100重量部に対して0.5重量部以上5.0重量部以下の範囲が好ましく、より好ましくは2重量部以上4重量部以下の範囲である。ここで、下限値未満の場
合、密着性付与効果が小さく、上限値を超える場合には液状樹脂組成物の流動特性が悪化するため好ましくない。
【0019】
【化3】

(R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、CF3基、アリル基、ハロゲン
原子のいずれかを表わす。)
【0020】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物には、必要に応じて反応を促進するための触媒を用いても良い。触媒としては、分子中に活性水素を有するものや金属化合物であれば分子量や結合構造は特に制限されるものではない。活性水素を有する触媒の例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類があり、金属化合物触媒の例としてはコバルト、亜鉛、鉄、銅、クロム、マンガン、ニッケル、チタンなどの金属ナフテン酸塩、アセチルアセトナート、またはその誘導体の塩、各種カルボン酸塩アルコキシドなどの有機金属錯体触媒があり、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。特に2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、コバルトアセチルアセトナートは、良好な保存安定性と硬化特性を示すことから好ましい。なお、触媒は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.3重量部から2重量部含まれる。ここで、触媒がエポキシ樹脂100重量部に対して0.3重量部未満で有れば硬化時間が長くかかり、2重量部以上で有ればポットライフが短く作業性が低下する問題が生じる。
【0021】
本発明のアンダーフィル用液状樹脂組成物には、前記成分の他に必要に応じて他の樹脂やエポキシシランなどのカップリング剤、希釈剤、顔料、難燃剤、レベリング剤、消泡剤などの添加物を用いても差し支えない。アンダーフィル用液状樹脂組成物は、例えば各成分、添加物などを三本ロール、二本熱ロール、真空混合機にて分散混練し、真空下脱泡処理して製造することができる。
【0022】
本発明の液状樹脂組成物の最も好適な用途は、フリップチップ型半導体装置 HYPERLINK
"http://www8.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=235&N0500=4E#N/;>9<;9=<=///&N0001=187&N0552=9&N0553=000010" \t "tjitemdrw" である。フリップチップ半導体装置とは、半導体チップと回路基板とを半田バンプを介して電気接続されたものである。半田バンプには錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが多く、電気接続の方法としては、フリップチップボンダーなどを用いて回路基板上の金属パッドと半導体チップ上の半田バンプの位置合わせを行った後に、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、回路基板上の金属パッドと半田バンプとが溶融接合によりなされる。このとき、回路基板上の金属パッド部には半田ペーストや比較的融点の低い半田の層を形成しておいても良い。電気接続された半導体装置は半導体チップと回路基板の平行な隙間に金属バンプが柱状に存在するような形態となる。
本発明の液状樹脂組成物の使用方法は、半導体チップと回路基板の平行な隙間に本発明の液状樹脂組成物を毛細管現象、圧力差などを利用して流動、注入、充填させた後に硬化することによって封止する方法、予め回路基板または半導体チップに印刷やニードルドロ
ーニングなどにより液状樹脂組成物を塗布し、相対する半導体チップまたは回路基板を接合し、半田バンプの融点以上に加熱することにより、電気接続と液状樹脂組成物の硬化とを一括して行う方法とがあるが、いずれの方法を用いても良い。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
原料としては、式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)として、NC6000(日本化薬(株)製)を、式(1)以外のエポキシ樹脂としてEXA−830LVP(大日本インキ化学工業(株)製)を、シアネートエステル化合物(B)としてL−10(ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ(株)製)を、末端にビニル基を含有する共重合体(C)としてVTBNx1300x33(宇部興産(株)製)を、末端にカルボキシル基を含有するアクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸の共重合体としてCTBN1300x1300x31(宇部興産(株)製)を、ビスフェノール化合物(E)としてBIS26−X−A(本州化学工業(株)製)を、イミダゾール触媒としてC11ZZ(四国化成工業(株)製)を、金属触媒として、CoAA(ナカライテスク(株)製)を、カップリング剤としてKBM−403(信越化学工業(株)製)を、顔料として、MA100Rを、フィラー(D)として、SE6200、SO−E2(アドマテクス(株)製)をプラネタリーミキサーと三本ロールを用いて充分混合したのち、真空脱泡処理することによりアンダーフィル用液状樹脂組成物を作製した。以下の方法により評価した。
【0024】
粘度測定の方法は、ブルックフィールド型粘度計にCP−51型コーンを装着し25℃で5rpmの条件で測定を実施した。実施例1で得られた液状樹脂組成物の粘度測定結果は、11Pa・sであった。液状樹脂組成物の粘度は半導体装置への定量供給安定性、半導体装置への塗布供給性および隙間への流動特性を考慮すると35Pa・s以下であることが好ましい。
【0025】
ポットライフの評価方法として、アンダーフィル用液状樹脂組成物作製し25℃24時間後の粘度を測定し、前記記載の方法で粘度を測定し、下式より25℃24時間後の粘度上昇率を算出した。
25℃24時間後の粘度上昇率(%)=25℃24時間後の粘度/25℃24時間放置
前の粘度×100
実施例1で得られた液状樹脂組成物の25℃24時間後の粘度上昇率は、11%であった。半導体装置の生産サイクルを考慮すると200%以下であることが好ましい。
【0026】
ガラス転移温度(Tg)の測定方法は、以下の通りである。まず、実施例1で得られた液状樹脂組成物を165℃×120分で硬化後、切削により5×5×10mmの試験片を得た。この試験片をセイコー製TMA/SS120を用いて圧縮荷重5g、−100℃から300℃の温度範囲を昇温速度10℃/分の条件で測定した。このTMA式測定装置により得られたTMAカーブの2接線の交点からガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0027】
(半導体装置の作製)
実施例1で得られた液状樹脂組成物を半田バンプで接続した半導体チップと回路基板との隙間に充填封止し、樹脂充填試験、実装リフロー試験、温度サイクル試験を実施した。試験と評価に使用した半導体装置の構成部材は以下のとおりである。
半導体チップとしては、日立超LSI社製PHASE−2TEGウエハーで、回路保護膜にポリイミドが、半田バンプにはSn/Ag/Cu組成の無鉛半田が形成されたものを15mm×15mm×0.8mmtに切断し使用した。
回路基板には、住友ベークライト(株)製FR5相当の0.8mmtのガラスエポキシ基板をベースとし、両面に太陽インキ製造(株)製ソルダーレジストPSR4000/AUS308を形成し、片面に上記の半田バンプ配列に相当する金メッキパッドを配したも
のを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。接続用のフラックスにはTSF−6502(Kester製、ロジン系フラックス)を使用した。
半導体装置の組立は、まず充分平滑な金属またはガラス板にドクターブレードを用いてフラックスを50μm厚程度に均一塗布し、次にフリップチップボンダーを用いてフラックス膜に半導体チップの回路面を軽く接触させたのちに離し、半田バンプにフラックスを転写させ、次に半導体チップを回路基板上に圧着させた。IRリフロー炉で加熱処理し半田バンプを溶融接合して作製した。溶融接合後に洗浄液を用いて情報により洗浄を実施した。液状樹脂組成物の充填封止方法は、半導体チップを回路基板上に接合したものを110℃の熱板上で加熱し、半導体チップの一辺に作製した液状樹脂組成物を塗布し注入充填させた後、150℃のオーブンで120分間樹脂を加熱硬化し、評価試験用の半導体装置を得た。
【0028】
樹脂充填試験としては、作製した半導体装置の硬化終了後、超音波探傷装置を用いてボイドの発生率を確認した。実施例1で得られた液状樹脂組成物を用いて作製した半導体装置においては、充填不良ボイドは観察されず良好な充填性を示した。
【0029】
実装リフロー試験の試験方法としては、上記の半導体装置をJEDECレベル4の吸湿処理(30℃相対湿度60%で92時間処理)を行った後、IRリフロー処理(ピーク温
度260℃)を3回行い、超音波探傷装置にて半導体装置内部の剥離の有無を確認し、さ
らに光学顕微鏡を用いて半導体チップ側面部の樹脂組成物表面を観察し亀裂の有無を観察した。実施例1で得られた液状樹脂組成物を用いて作製した半導体装置においては、剥離および亀裂は見られず、良好な信頼性を示した。
【0030】
温度サイクル試験としては、上記の実装リフロー試験を行った半導体装置に(−55℃
/30分)と(125℃/30分)の冷熱サイクル処理を行い、250サイクル毎に超音
波探傷装置にて半導体装置内部の半導体チップと樹脂組成物界面の剥離の有無を確認し、さらに光学顕微鏡を用いて半導体チップ側面部の樹脂組成物表面を観察し亀裂の有無を観察した。実施例1で得られた液状樹脂組成物を用いて作製した半導体装置においては、1000サイクル経過後も剥離および亀裂は見られず、良好な信頼性を示した。10個の半導体装置を用いて、1000サイクル経過後の不良数/10で表示し、1000サイクル経過前に10個全て剥離および亀裂がみられたものは×とした。以上の結果を表1に詳細にまとめた。
【0031】
(実施例2)
Bis26−X−Aを用いる代わりに、MEH−8000Hを用いた以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表1にまとめた。
【0032】
(実施例3)
C11Zを用いる代わりに、2PHZを用いた以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表1にまとめた。
【0033】
(実施例4)
EXA−830LVPを用いる代わりに、HP−4032Dを用いた以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表1にまとめた。
【0034】
(実施例5、6)
NC6000とその他のエポキシ樹脂の配合量を変えた以外は、実施例1と同様に、液
状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表1にまとめた。
【0035】
(実施例7、8)
VTBNの配合量を変えた以外は、実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表1にまとめた。
【0036】
(比較例1)
L10を用いない以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表2にまとめた。
(比較例2、3)
NC6000を用いずにEXA−830LVPとHP−4032Dに変えた以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表2にまとめた。
(比較例4)
フィラーを用いない以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表2にまとめた。
(比較例5)
VTBNを用いない以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表2にまとめた。
(比較例6)
VTBNとBis26−X−Aを用いない以外は実施例1と同様に、液状樹脂組成物を得た。得られた液状樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に評価し、さらに実施例1と同様に半導体装置を作製し評価し、評価結果を表2にまとめた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1中の原料の説明を以下に行う。
EXA−830LVP:大日本インキ化学工業(株)製、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量161
HP−4032D:大日本インキ化学工業(株)製、1,6―ビス(2,3―エポキシプロポキシ)ナフタレン エポキシ当量141
NC6000:日本化薬(株)製、2−[4−(2,4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパン
L−10:ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ(株)製、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート
VTBNx1300x33:宇部興産(株)製、末端にビニル基を含有するアクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸の共重合体
CTBN1300x1300x31:宇部興産(株)製、末端にカルボキシル基を含有するアクリロニトリルとブタジエンの共重合体
Bis26−X−A:本州化学工業(株)製、テトラメチルビスフェノールA
MEH−8000H:明和化成(株)製、アリルフェノールとホルムアルデヒドの重縮合物(水酸基当量141)
C11Z:四国化成工業(株)製、2―ウンデシルイミダゾール
2PHZ:四国化成工業(株)製、2―フェニル−4,5―ジヒドロキシメチルイミダゾール
CoAA:ナカライテスク(株)製、試薬、アセチルアセトン第二コバルト
KBM−403:信越化学工業(株)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
、分子量236.3、理論被覆面積330m2/g
MA100R:三菱化学(株)製、カーボンブラック
SE6200:アドマテクス(株)製、合成球状シリカ、平均粒径2.5μm
SO−E2:アドマテクス(株)製、合成球状シリカ、平均粒径0.5μm
【0040】
表1において、(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)シアネートエステル化合物、(C)末端にビニル基を含有する共重合体、および、(D)フィラーを組み合わせた実施例1〜8では、半導体装置の評価において良好な樹脂充填特性を示し、温度サイクル試験1000サイクル後にも剥離の無いことから優れた耐熱密着性と、亀裂の無いことから優れた応力吸収性、耐熱衝撃性とを兼ね備えていることが示された。
【0041】
次に(B)シアネートエステル化合物を用いない比較例1の場合には、硬化物のガラス転移温度低いので、実装リフロー試験、温度サイクル試験で密着性が非常に低く評価試験を中断した。
(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂を含まない比較例2の場合には、粘度が低く流動性は良好であるが、温度サイクル試験750サイクルで亀裂が観察され、1000サイクルでは亀裂から剥離が進展した。
比較例3の場合には、温度サイクル試験では、剥離が発生したため評価試験を中断した。
比較例4の場合には、半導体装置を用いた実装リフロー試験、温度サイクル試験では比較例2と同様に温度サイクル試験で亀裂が観察され、評価試験を中断した。
比較例5の場合には、未充填、ボイドが観測された。実装リフロー試験、温度サイクル試験では、未充填部とボイドにより、剥離が発生したため評価試験を中断した。
比較例6の場合には、充填性はよかったが、実装リフロー試験、温度サイクル試験では、剥離が発生したため評価試験を中断した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、優れた応力吸収性・耐熱衝撃性・耐熱密着性・流動特性と十分な可使用時間を兼ね備えた液状樹脂組成物、それを用いた半導体装置に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂、
(B)シアネートエステル化合物、
(C)末端の少なくとも1つにビニル基を含有する共重合体、および、(D)フィラー、を含むことを特徴とするアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記(C)末端の少なくとも1つにビニル基を含有する共重合体が、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)シアネートエステル化合物が、下記式(2)で表される請求項1または2記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【化2】

(R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、CF3基、ハロゲン原子のいず
れかを表わす。)
【請求項4】
さらに、(E)下記式(3)で表されるビスフェノール化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物。
【化3】

(R1〜R6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、CF3基、ハロゲン原子のいず
れかを表わす。)
【請求項5】
回路基板と、当該回路基板上に配置された半導体チップ、およびこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備える半導体装置であって、
当該アンダーフィルが請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
回路基板と、当該回路基板上に配置された半導体チップ、およびこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備える半導体装置の製造方法であって、
回路基板と半導体チップの間隙に請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンダーフィル用液状樹脂組成物を充填する工程、
充填されたアンダーフィル用液状樹脂組成物を硬化させてアンダーフィルとする工程、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2009−209191(P2009−209191A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50932(P2008−50932)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】