説明

イオンビーム加工装置及び試料加工方法

【課題】共通のイオンビームカラムを用いて試料の加工とダメージ層の除去とを迅速に実行することができるイオンビーム加工装置及び試料加工方法を提供する。
【解決手段】ガスイオン源11から引き出されたイオンビーム12を試料31に導くイオンビーム光学系と、イオンビーム12を通過させてイオンビーム12の断面を成形する開口15a〜15cを有するマスク15と、ガスイオン源11に印加する加速電圧及びマスク15の動作を制御するイオンビームカラム制御部18とを備え、イオンビームカラム制御部18は、マスク15の開口15b,15cに通して断面成形した高速加工用のイオンビーム12を投射して試料31又は試料片50を加工する手順と、高速加工用のイオンビームに比較して加速電圧を下げ、加工後の試料31又は試料片50の観察面にイオンビーム12を投射して観察面のダメージ層を除去する手順とを実行可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の欠陥部をイオンビームで加工するイオンビーム加工装置及び試料加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリやマイクロプロセッサ等の半導体デバイスの製造にあって歩留りの高い生産を実現するためには、不良デバイスの発生原因を早期に解析し対策する必要がある。不良デバイスの発生原因の解析には、デバイスの断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察することが従来から有効な手段の1つであった。FIB(Focused Ion Beam)で試料に穴加工し、その断面をSEMで観察するデュアルビーム装置(FIB−SEM)も開発されている。
【0003】
ところが、近年、半導体デバイスの高密度化が進んで不良原因も微細になっており、数nm程度の膜厚の不良を判別する場合にSEMでは分解能が不足することがあり、SEMよりも分解能が高いTEM(Transmission Electron Microscope)やSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)が用いられることが多くなっている。TEMやSTEMを用いた解析では、試料に電子線を透過させる必要があるため、解析する試料片を試料から摘出して薄膜化する必要がある。
【0004】
また、現在、FIBのイオン源としては、Ga(ガリウム)等の液体金属を用いたLMIS(Liquid Metal Ion Source)を用いる方法が一般的である。LMISを使用したイオンビーム加工装置の場合、イオンビーム照射面の試料が金属汚染してしまう問題がある。金属汚染の生じた試料をそのまま製造プロセスに戻すと、その後の加熱プロセス等によって照射部分だけでなく試料全体に金属が拡がり、半導体デバイスの電気特性に影響を与える恐れがある。そのため、LMISのFIBで加工した試料は製造ラインに戻さずに廃棄していた。
【0005】
そこで、アルゴン(Ar)イオンビームを照射することにより、試料に注入されたイオンを除去する技術が提唱されている(特許文献1等参照)。また、LMISに代えて不活性ガスのイオン源を用い、金属汚染を伴うことなく解析対象部の試料片を試料から摘出する技術もある(特許文献2等参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3117836号公報
【特許文献2】特開2006−139917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の不活性ガスのイオン源を用いて試料片を試料から摘出する技術では、LMISをイオン源とする別のFIB装置で試料片を薄膜化する必要があり、TEMやSTEM等での観察による解析結果が出るまでに長時間を要していた。また、注入イオンをArイオンビームで除去する技術は、LMIS等の金属イオン源を用いたイオンビームカラムとArイオン源を用いたイオンビームカラムの2本のイオンビームカラムを要していた。複数のイオンビームカラムを要する場合、イオンビームの照射位置を合わせる作業は必ずしも容易ではなく、作業性に改善の余地が残る。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、共通のイオンビームカラムを用いて試料の加工とダメージ層の除去とを迅速に実行することができるイオンビーム加工装置及び試料加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ガスイオン源から引き出されたイオンビームをマスクの開口に通して断面成形し、断面成形したイオンビームを投射して試料又は試料片を加工する手順と、前記ガスイオン源に印加する加速電圧を下げ、加工後の試料又は試料片の観察面にイオンビームを投射して観察面のダメージ層を除去する手順とを実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共通のイオンビームカラムを用いて試料の加工とダメージ層の除去とを迅速に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
図1は本発明のイオンビーム加工装置の第1の実施の形態の概略図である。
図1に示したイオンビーム加工装置は、試料室30と、イオンビーム12を試料(ウェーハ等)31に照射するイオンビームカラム10と、イオンビーム12の照射により試料31から発生する二次電子や反射電子を検出する検出器41と、デポジションガスを噴出するデポガス源42と、試料31から試料片を摘出するプローブ装置と、イオンビームカラム10を制御するイオンビームカラム制御部18と、イオンビーム加工装置全体を制御する全体制御部74と、イオンビーム加工装置を操作するための操作部とを備えている。
【0013】
試料室30は、試料31を搭載する試料ホールダ32と、試料ホールダ32に保持されたカートリッジ51と、試料ホールダ32を搭載した試料ステージ33とを内部に収容している。試料ステージ33はx,y,z方向に移動可能な他、傾動及び回転が可能な構成である。また、試料室30には、試料室30の真空度を低下させることなく試料31とカートリッジ51を試料室30に搬入・搬出するための試料交換室35が隣接している。
【0014】
イオンビームカラム10は、ガスイオン源11と、ガスイオン源11から引き出されたイオンビーム12を試料ホールダ32上の試料31に導くイオンビーム光学系と、イオンビーム12を通過させてイオンビーム12の断面を成形する複数の開口15a〜15d(後の図3、図13等)を有する薄板であるマスク15とを備えており、内部は高真空に保持されている。イオンビーム光学系は、ガスイオン源11からイオンビーム12を引き出す引出し電極13、引き出されたイオンビーム12を集束する集束レンズ14、イオンビーム12を走査・偏向する偏向器16、及び、イオンビーム12を集束して試料表面に焦点を合わせる対物レンズ17を有している。ガスイオン源11は、不活性ガス(アルゴン、酸素等)をプラズマ化して幅の広いイオンビーム12を発生させる。
【0015】
イオンビームカラム制御部18は、特に図示していないが、イオンビーム12の各ビームモード、すなわち観察ビームモード、加工ビームモード(高速加工モード/低ダメージ加工モード)のビーム条件を記憶した記憶部18aと、ガスイオン源11に印加する加速電圧及びマスク15の動作を含むイオンビームカラム10の動作を制御する制御部とを備えている。制御部は、ガスイオン源11に印加する加速電圧を制御する加速電圧制御部18bと、マスク15の動作を制御するマスク制御部18cと、集束レンズ14・偏向器16・対物レンズ17等を制御するその他の制御部(図示せず)を備えている。加速電源制御部18bは、後述する表示装置70の画面上のビーム切り換えボタン81の操作に応じてコンピュータ71から出力される指令信号に従ってビームモードを切り換え、記憶部18aに記憶されたビーム条件を基にガスイオン源11に印加する加速電圧を制御する。マスク制御部18cは、ビームモードが高速加工モードに切り換えられた場合、ガスイオン源11から引き出されたイオンビーム12の光軸上に開口15a〜15dのうちの設定のものが位置するようにマスク15を移動させ、ビームモードが低ダメージ加工モードに切り換えられた場合、イオンビーム12からマスク15を退避させイオンビームの断面形状がマスク開口により制限されないようにする。
【0016】
検出器41は、検出信号を画像生成部75に出力する。画像生成部75は、イオンビームカラム制御部18から取り込むイオンビーム走査信号に同期して検出器41の信号を取り込み、SIM(Scanning Ion Microscope)像の画像データを生成する。
【0017】
プローブ装置は、試料31の表面に触針するプローブ45と、プローブ45をx,y,z方向に移動させるプローブ移動機構44とを備えており、マスク15の開口15b,15cを通過したイオンビーム(プロジェクションビーム)12で加工された試料片50(後の図4)を試料31から摘出したりする。
【0018】
全体制御部74は、イオンビームカラム制御部18、試料ステージ33、デポガス源42、プローブ移動機構44等の構成要素を制御する。操作部は、表示装置70、キーボード72、マウス73を有するコンピュータ71によって構成される。
【0019】
既述したように、イオンビームカラム制御部18は、イオンビーム12のビームモードを、前出の観察ビームモードと加工ビームモードとで切り換える機能を備えている。観察ビームモードは、加工位置を確定すべく試料31又は試料片50を観察するモードであり、加工ビームモードは、試料31又は試料片50を加工するモードである。さらに、加工ビームモードには、さらに高速加工モードと低ダメージ加工モードが用意されている。高速加工モードは、イオンビーム(プロジェクションイオンビーム:PJIB)12の投射により試料31又は試料片50(後の図4)を高速加工するモードであり、低ダメージ加工モードは、イオンビーム(PJIB)12を試料31又は試料片50の観察面に投射して試料31又は試料片50のダメージ層を除去するモードである。これら各ビームモードは、イオンビームカラム制御部18によりマスク15の移動とイオンビーム光学系の設定が切り換えられて実行される。
【0020】
図2及び図3は各ビームモードのイオンビームを示す図である。
【0021】
まず、図3に示したように、マスク15は、複数の開口15a〜15d(開口15dは図13等参照)を有している。これら開口15a〜15dは同じマスク15に並べて設けられていても良いし、マスク15自体が複数あって各開口15a〜15dが異なるマスクに設けてあっても良い。本実施の形態では、開口15aは他の開口に比して開口面積が小さく円形をしており、主に試料観察の際の走査ビームを成形するのに用いられる。開口15b,15cは、それぞれ長方形、コの字形の開口であり、試料31から試料片50を摘出するのに用いられる。後の図13に示された開口15dは、長方形の開口を2つ並べた形状をしており、試料片50の薄膜化加工に用いられる。開口15dの2つの長方形の開口の間を隔てる遮光部15daによりイオンビーム12の中央部が一文字状に遮られ、試料片50における遮光部15daに隠れた部分(欠陥を含む部分)が薄膜状に残される。次に各ビームモード時のイオンビームカラム10の挙動を説明する。
【0022】
観察ビームモード時には、イオンビームカラム制御装置18は、ビーム切り換えボタン81の操作に応じてコンピュータ71から出力される指令信号に応じ、記憶部18aから読み出たプログラムに従って、図2(a)及び図3(a)に示すように、マスク制御部18cによりイオンビーム12の光軸上に円形の開口15aが来るようにマスク15を移動させ、その他の制御部(前述)により集束レンズ14で開口15aと同じか僅かに大きいビーム径にイオンビーム12を絞り、絞ったイオンビーム12を開口15aに通過させた後、偏向器16で走査偏向して対物レンズ17によって観察点にフォーカスさせる。
【0023】
一方、加工ビームモード(高速加工モード)時には、イオンビームカラム制御装置18は、コンピュータ71からの指令信号に応じ、記憶部18aから読み出したプログラムに従って、図2(b)及び図3(b)に示すように、マスク制御部18cによりイオンビーム12の光軸上に開口15b又は15cが来るようにマスク15を移動させ、その他の制御部(前述)により開口15b又は15cがビーム径内に収まる範囲でイオンビーム12を絞り、マスク15を通過して開口15b又は15cの形状に断面が成形されたイオンビームを、偏向器16で位置補正した上で対物レンズ17により加工点に縮小投射する。加工ビームモード時における集束レンズ14によるイオンビーム12の絞り量は、観察ビームモード時に比較して小さい。加工ビームモードでは、集束レンズ14でイオンビーム12を絞る量を変化させることにより、マスク15の開口を通過するイオンビーム12のビーム電流の密度を制御し加工速度を調節することができる。
【0024】
また、加工ビームモード(低ダメージ加工モード)時には、イオンビームカラム制御装置18は、コンピュータ71からの指令信号に応じて記憶部18aから読み出したプログラムに従い、マスク制御部18cにより後の図16等に示すように、イオンビーム12からマスク15を退避させ、加速電圧制御部18bにより高速加工モード時に比較してガスイオン源11にかける加速電圧を下げ、その他の制御部により加工領域(例えば試料片50の欠陥部、或いは観察面)がビーム径内に収まる範囲でイオンビーム12を絞り、イオンビームを偏向器16で位置補正した上で対物レンズ17により加工点に縮小投射する(後の図16等参照)。
【0025】
これら各ビームモードのビーム条件やマスク15の位置は、前述したようにイオンビームカラム制御部18の記憶部18aに記憶されており、加速電圧制御部18b等は、コンピュータ71からの指令信号と記憶部14aに記憶されたビーム条件を基に、イオンビームカラム10の各制御要素の制御を実行する。これにより、ビームモードが切り換えられる。一般的なイオンビーム加工装置を用いて低ダメージ加工モードのビーム条件を設定する場合には、例えば加速電圧を設定可能範囲の最小値に設定することが考えられる。一般的なイオンビーム加工装置では、加速電圧値の設定可能範囲が1kV〜40kV程度であることが多い。
【0026】
イオンビーム12の加速電圧は加工速度に比例し、ビーム電流も加工速度に比例する。一方、イオンビームで試料を加工するとその部分に非晶質なダメージ層が発生する。そのダメージ層の厚さは、加速電圧が高いほど厚くなり、加工速度が速いほどダメージ層が厚くなる。例えば、加速電圧を30kVに設定し試料31にシリコンウェハーを用いた場合、ダメージ層の厚さは20〜30nmになる場合がある。試料片を100nm以下に薄膜化しても、表層の20〜30nmにダメージ層が存在していては、高分解能の電子顕微鏡像でも欠陥部をはっきりと観察できない場合が生じてくる。それに対し、例えば加速電圧を1kVに下げた場合、ダメージ層の厚さは数nm程度に減少し、高分解能の電子顕微鏡で鮮明な観察像を得る上で有利である。
【0027】
これらビームモードの切り換えは、先に述べた通り、表示装置70に表示されたビーム切り換えボタン81をマウス73で操作することにより行う(図27も参照)。ビーム切り換えボタン81がビームモードの切り換えを指示する操作手段の役割を果たし、ビーム切り換えボタン81の操作に基づく指令信号がコンピュータ71を介してイオンビームカラム制御部18に入力される。
【0028】
カートリッジ51は、図4に示すように試料31から取り出した試料片50を搭載し、搬送するための媒体となっており、一般的なTEMやSTEMの試料ホールダに装着できるような直径3mm程度の半円形状の板であるサンプルキャリア52を備えている。また、カートリッジ51は、図5に示すように試料ホールダ32に実装されたカートリッジ傾斜機構53に装着できるようになっている。カートリッジ傾斜機構53は、図6に示すように挿入したカートリッジ51を板バネで保持するソケット57とそれを回転させるモータ58を備えており、モータ58によりソケット57を回転させることでカートリッジ51をその軸心線周りに回転させ、試料片50を搭載するカートリッジ51のイオンビーム12に対する傾斜角度を調整することができる。更に、試料室30から搬出したカートリッジ51は、図7に示すようなTEMやSTEMなどの高分解能な電子顕微鏡のサイドエントリステージに挿入可能な試料ホールダ54の先端に装着することができる。
【0029】
図8は検査装置で検出した試料の欠陥部を本発明のイオンビーム加工装置で取り出して高分解能な電子顕微鏡で観察するための試料に加工する処理フローを示す。以下、このフローに従って説明する。
【0030】
半導体デバイス製造工程の試料検査において、検査装置で検査した試料31を試料ケース38(図1)に格納する。また、取り出した試料片50を搬送するためのカートリッジ51をカートリッジケース39に格納する。試料・カートリッジ搬入処理(S101)では、試料搬送ロボット36(図1)が試料ケース38に格納されている試料31を取り出して大気状態の試料交換室35内の試料ホールダ32上に搬送する。また、同時にカートリッジ搬送ロボット37がカートリッジケース39に格納したカートリッジ51を取り出して試料ホールダ32上のカートリッジ傾斜機構53に挿入する。試料31とカートリッジ51が搭載された試料ホールダ32は、試料交換室35を真空排気して試料室30内の試料ステージ33に搬入する。
【0031】
次にサンプリング位置である(検査装置で検出した欠陥部)がイオンビーム12のビームスポットに来るように試料ステージ33を移動する(S102)。欠陥部の位置を示す検査結果ファイルは、ネットワーク等を介して検査装置からコンピュータ71に転送される。欠陥部を確認するには、イオンビームカラム10を観察ビームモードに設定し、試料31上にイオンビーム12を走査する。画像生成部75は、イオンビーム12の走査信号に同期して検出器41の信号を取り込んで画像データを生成し、表示装置70の画像表示エリア80にSIM像を表示する。
【0032】
サンプリング位置をSIM像で確認した後、イオンビームカラム10を加工ビームモード(高速加工モード)に設定し、マスク15の開口はコの字形の開口15cを選択し設定する。図9に示すように、イオンビーム12に対して試料ステージ33を傾斜させ、開口15cの形状に断面成形されたイオンビーム12を投射して試料31にコの字形の溝を加工する(S103)。
【0033】
次に、図10に示すように試料ステージ33を180°回転させて、加工位置に移動し(S104)、試料片50にプローブ45を接触させる(S105)。そして、マスク15の開口は長方形の開口15bを選択し、その形状に従って長方形の溝を加工することで、欠陥部を含む試料片50を切断して試料31から分離する(S106)。次に、図11に示すように、溝加工によってくさび形に加工された試料片50をプローブ45によって引き上げ摘出する(S107)。この時の試料片50はプローブ45に静電力で吸着するが、静電力による吸着力が弱い場合には、デポガス源42からデポガス43の供給とイオンビーム12の照射によりデポジション膜を形成し、デポジション膜により試料片50とプローブ45とを接着する。
【0034】
プローブ45により試料片50を摘出したら、試料ステージ33及びプローブ移動機構44を駆動して、図12に示すようにカートリッジ51のサンプルキャリア52の上部に試料片50を接触させて、デポガス43を供給しながらイオンビーム12を照射し、デポジション膜55によって固定する(S108)。
【0035】
次に、図13(a)及び図13(b)に示すようにイオンビーム12をマスク15の薄膜化用の開口15dで制限し、試料片50の上面にイオンビーム12が投射されるようにカートリッジ傾斜機構52によってカートリッジ51を傾斜させる。ビームモードは高速加工モードとし、開口15dは、高加速のイオンビーム12でダメージを受ける部分、すなわち薄膜状に残す部分Aを厚めに残し、後の工程でダメージ層を除去する取り代が確保されるように、遮光部15daの幅が適当なものを選択する。この加工により試料片50の欠陥部を含む観察対象部分を薄膜化する。但しこのようにイオンビームにより薄膜化加工する場合、図14(a)に示すように、試料片50の薄膜化した部分の厚みは、ガスイオン源11側に対してサンプルキャリア52側が厚くなってしまう。そこで、図14(b)に示すように、例えばマスク15を長方形の開口15bに設定し、試料片50の薄膜部の厚みが一様になるように、薄膜部の両面を片方ずつ加工する。この場合、カートリッジ51のイオンビーム12に対する傾斜角度θをカートリッジ傾斜機構53により設定し、断面が矩形状のイオンビーム12を投射する。そして、イオンビーム12の外縁部で薄膜部の側面の下方に広がった部分を加工する。一方の側面の加工が完了したら、図15に示すように、カートリッジ傾斜機構53を反対側に駆動して傾斜角度θを設定し、同様にして試料片50のもう一方の側面を加工する(S109)。
【0036】
次にイオンビームカラム10のビームモードを低ダメージ加工モードに設定し、図16に示すようにイオンビーム12の断面形状が制限されないようにイオンビーム12から退避させる。また、薄膜化した試料片50の観察面(側面)にイオンビーム12が照射されるように、カートリッジ傾斜機構52によってカートリッジ51を傾斜させる。低ダメージ加工モードのイオンビーム12によって試料片50の観察面が低ダメージで加工され、高速加工ビームモードの加工で発生した試料片50のダメージ層が除去される。一方の観察面の低ダメージ加工モードの加工が終了したら、カートリッジ傾斜機構52によってカートリッジ51を反転させ試料ステージ33を駆動してイオンビーム12に対して試料片50の位置を合わせ、試料片50の反対側の観察面を加工する(S110)。
【0037】
低ダメージの薄膜化が完了したら、試料片50を搭載したカートリッジ51を試料31と一緒に試料ホールダ32ごと試料交換室35に搬出する。すると試料31は、試料搬送ロボット36によって試料ケース38に搬出され、カートリッジ搬送ロボット37によってカートリッジケース39に排出される(S111)。
【0038】
カートリッジケース39に排出されたカートリッジ51は、高分解能な電子顕微鏡(TEM、STEM等)の試料ホールダ54(図7)に接続され、そのまま高分解能な電子顕微鏡のサイドエントリステージに挿入される。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、加工ビームモードに、高速加工モードと低ダメージモードを設けたことで、共通のイオンビームカラム10を用いて試料31又は試料片50の高速加工とダメージ層の除去とを迅速に実行することができる。これにより、摘出した試料片50の欠陥部をダメージ層がない又は少ない薄膜に形成することができるので、TEM、STEM等による鮮明な電子顕微鏡像を得ることができる。したがって、不良発生原因を短時間に解析することができ、歩留りの向上が期待できる。さらに、非Gaのイオン源によるイオンビームを用いているために加工した試料は金属汚染がなく製造プロセスに戻すことができるため廃棄試料を削減することができ、資源を有効活用することができる。
【0040】
イオンビーム12による加工速度は、加工面積に照射されるビーム電荷でほぼ決まる。つまり、加工面積が大きいほど一般の集束イオンビーム(FIB)を走査する場合に比較してプロジェクションイオンビーム(PJIB)を投射する方が短時間で加工することができる。一般に穴加工は数μmとなるため、PJIBに使用するイオンビームの輝度がある一定の値以上になっていれば、PJIBの方が高速加工することが可能となる。これにより、不活性ガスをイオン源としても、従来のガリウムをイオン源とするイオンビームを走査する方法に比べて広い面積を一度に加工できるため加工時間が短くなる。
【0041】
また、不活性ガスをイオン源とするイオンビームはLMISをイオン源とするイオンビームに比較して加工速度が遅く、ダメージ層を除去するのに不活性ガスをイオン源とするイオンビームを用いる場合、同じイオン源のイオンビームを用いて試料31や試料片50を加工すると加工速度が大きく低下してしまう。それに対し、本実施の形態によれば、上記のようにマスク15により断面を成形したイオンビーム(PJIB)を投射することにより、不活性ガスをイオン源とした場合の加工速度の低下を克服し、共通のイオンビームカラム10を用いて不活性ガスをイオン源とする非汚染のイオンビームによる高速加工とダメージ除去加工(低ダメージ加工)を両立することができる。高速加工モード時と低ダメージ加工モード時でイオンビームカラム10が共用化できたことで、両モードのイオンビームのビーム照射位置の精度が向上させることができるとともに、両モードのビーム照射位置の位置合わせの手間を軽減することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、試料片50のダメージ層を除去する場合を例に挙げて説明したが、試料31の加工穴のダメージ層を除去する必要がある場合には、その加工穴の観察面のダメージ層を除去するのにも本実施の形態は適用可能である。
【0043】
また、本実施の形態では、試料片50を薄膜化する場合を例に挙げて説明したが、薄膜に限らずTEMやSTEMでの観察に適した形状に任意に加工することができるように、マスク15やカートリッジ51の構成は適宜設計変更しても構わない。例えば、試料片50を円柱状に加工する場合を次に例示する。
【0044】
図17は試料片回転機構56を設けたカートリッジ51の概観斜視図、図18(a)は試料片回転機構56の平面図、図18(b)はその側面図である。これらの図面に示したように、試料片回転機構56の回転軸は、カートリッジ51の回転軸と垂直である。具体的には、駆動源となるモータ61と、カートリッジ51の回転軸と同じ向きに延在した駆動軸62と、駆動軸62と直交する向きに延在した従動軸63と、駆動軸62、従動軸63に設けた互いに噛合するカサ歯車60,64と、従動軸63に取り付けられたステージ59とを備えている。ステージ59はサンプルキャリア52と同じく試料片50を搭載する部材である。つまり、モータ61を駆動すると、その回転動力が、駆動軸62・カサ歯車60,64・従動軸63を介してステージ59に伝達されてステージ59が回転し、ステージ59上の試料片50が回転する。
【0045】
図19は試料片50の円柱化加工の様子を示す図である。この例では、円柱加工用の開口15eを有するマスク15を用意しておく。開口15eは、四角形に形成されているが、円形等であっても良い。また、開口15eの中央部には、円形の遮光部15eaが線状の支持部15ebにより支持されて配設されている。
【0046】
試料片50の円柱化の際には、まず、観察したい欠陥部がステージ59の回転中心付近にくるように試料片50をステージ59に搭載し、イオンビームカラム10を低ダメージ加工モードに設定する。そして、遮光部15eaをイオンビーム12の光軸上に位置合わせし、開口部15eがビーム径に収まる範囲で集束レンズ14によりイオンビーム12を絞ってイオンビーム12を投射する。これにより、遮光部15eaの影になってイオンビーム12が投射されなかった円形の部分を残し、試料片50は円柱状に加工される。したがって、欠陥部に遮光部15eaの影が投影されるように位置合わせしておけば、欠陥を含む円柱を容易に形成することができる。このとき、支持部15eaの影が投影された箇所が残る可能性があるが、加工中、適当にステージ59を回転させることがそれを抑制することができる。
【0047】
また、円柱部の側面のダメージ層を除去する際には、カートリッジ51を90°程度傾け、図20に示すように円柱形に加工した試料片50の側面に低ダメージ加工モードのイオンビーム12を投射する。その際、側面の全周のダメージ層が除去されるように、試料片回転機構56により円柱形の試料片50を回転させながらイオンビーム12を投射する。側壁のダメージが除去された円柱形の試料片50は、TEMの3次元解析機能で鮮明な復元画像を構成することが可能になる。
【0048】
<第2の実施の形態>
図21は本発明のイオンビーム加工装置の第2の実施の形態の概略図である。図21に示したイオンビーム加工装置が第1の実施の形態のそれと異なる点はSEMカラム20を備えている点である。SEMカラム20は、電子源21、電資源21から電子ビーム22を引き出す引出し電極23、電子ビーム22を集束する集束レンズ24、電子ビーム22を絞るビーム絞り25、電子ビーム22を走査・変更する偏向器26、及び、電子ビーム22をフォーカスする対物レンズ27等の制御要素を有し、これら制御要素はSEM制御部28によって制御される。SEM制御装置28は全体制御措置74により制御される。SEM像を取得する場合、観察点に電子ビームを走査すると、観察点から発生した二次電子又は反射電子が検出器41で検出される。画像生成部75では、SEM制御部28から取り込む電子ビーム走査信号に同期して検出器41の信号を取り込み、SEM像の画像データを生成する。そして、画像生成部75からコンピュータ71に画像データが出力され、表示装置70の画像表示エリア80にSEM像が表示される。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0049】
一般にSEMはTEMやSTEMに比べて分解能は低いが、SIM像に比べて鮮明な観察像が得られる。本実施の形態の場合、SEM20で試料31や試料片50を観察することができるので、試料31や試料片50を試料室30外に搬出することなく、SEM像で容易に観察することができる。また、電子ビーム22とイオンビーム12の照射位置が一致するように構成すれば、加工中のSEM像を取得することもできる。
【0050】
本実施の形態において欠陥をSEM観察する場合、透過式ではないので欠陥部を断面加工して欠陥部を露出させる必要がある。欠陥部を断面加工する場合、欠陥を含む試料片50を試料31から摘出してカートリッジ51に搭載し、イオンビーム12の投射によりカートリッジ51上の試料片50を加工して欠陥部を露出させる方法もあるし、試料片50を摘出することなく、試料ステージ33を傾斜させて試料31内の欠陥部を断面加工する方法もある。その際、試料31又は試料片50のダメージ層を低ダメージ加工モードのイオンビーム12で除去することにより、より鮮明に欠陥部をSEM観察することができる。
【0051】
本実施の形態では、試料片50を摘出してSEM観察する様子を図22(a)に示す。図22(a)では、摘出した試料片50をカートリッジ51に搭載し、観察面を高速加工モードのイオンビーム12で断面加工した後に、低ダメージ加工モードのイオンビーム12でダメージ層を除去した状態を表している。SEM観察の場合、薄膜化する必要はない。加工後、図22(b)に示したように、SEMカラム20側に断面が向くようカートリッジ51を傾斜させ、断面に電子ビーム22を走査してSEM像を観察する。観察の結果、さらに詳細な観察像が必要な場合には、その後、第1の実施の形態と同様にして試料片50を薄膜化し、TEMやSTEMで観察することもできる。
【0052】
<第3の実施の形態>
図23は本発明のイオンビーム加工装置の第2の実施の形態の概略図である。第2の実施の形態では、欠陥を含む試料片50を試料31から摘出してカートリッジ51に搭載し、イオンビーム12の投射によりカートリッジ51上の試料片50を加工して欠陥部を露出させる方法を具体的に例示した。それに対し、本実施の形態は、試料片50を摘出することなく、試料ステージ33を傾斜させて試料31内の欠陥部を断面加工する方法を例示するものである。図23に示したように、試料ステージ33は傾動可能である。イオンビーム加工装置のその他の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0053】
本実施の形態のイオンビーム加工装置は、イオンビーム12の光軸に対して電子ビーム22の光軸が傾斜しているので、図24に示すように試料面がイオンビームカラム10に対向するように試料ステージ33を傾斜させて試料31を断面加工すると、加工中の加工断面をそのままSEMで観察することができる。加工後、図25に示すように試料ステージ33の傾斜を戻し、適宜回転させ観察面に低ダメージ加工モードのイオンビーム12を投射する。このようにしてダメージ層を除去したら、試料ステージ33を適宜回転・傾斜させ、図26に示すように観察面をSEMカラム20の方に向け、断面をSEMで観察する。
【0054】
なお、以上に本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは言うまでもない。例えば、低ダメージ加工モードでも、観察面に形状を合わせた開口を用意しておき、その開口によってPJIBの断面を制限しても良い。また、試料片を摘出する機能は必ずしも必要なく、例えば試料片を摘出せずに試料の欠陥部を断面加工して欠陥部をSEM観察する場合には、プローブ装置やカートリッジ51は省略しても構わない。また、図21や図23のようにSEMカラム20が垂直でイオンビームカラム10が傾斜している場合を例示したが、その逆の構成としても良いし、双方が傾斜した構成としても良い。また、この種のFIB−SEMに本発明を適用する場合、図21や図23のような電子ビーム照射位置とイオンビーム照射位置を同一点にしたものに限らず、電子ビーム照射位置とイオンビーム照射位置との間を試料ステージが移動する構成のFIB−SEMにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のイオンビーム加工装置の第1の実施の形態の概略図である。
【図2】イオンビームのビームモードを示す説明図である。
【図3】イオンビームのビームモードを示す説明図である。
【図4】カートリッジの構造を示す図である。
【図5】試料ホールダの構造を示す図である。
【図6】カートリッジ傾斜機構の構造を示す図である。
【図7】試料ホールダの構造を示す図である。
【図8】本発明による試料作製のフローチャートである。
【図9】コの字加工の状態を示す図である。
【図10】切断加工の状態を示す図である。
【図11】試料片の取り出しの状態を示す図である。
【図12】試料片をカートリッジに搭載した状態を示す図である。
【図13】薄膜化加工の状態を示す図である。
【図14】薄膜化加工の厚みを一定にする技術の説明図である。
【図15】薄膜化加工の厚みを一定にした状態を示す図である。
【図16】低ダメージ薄片化加工の状態を示す図である。
【図17】試料片回転機構を備えたカートリッジを示す図である。
【図18】試料片回転機構の構成を示す図である。
【図19】円柱化加工の状態を示す図である。
【図20】低ダメージ円柱化加工の状態を示す図である。
【図21】本発明のイオンビーム加工装置の第2の実施の形態の概略図である。
【図22】断面観察用のカートリッジの状態を示す図である。
【図23】本発明のイオンビーム加工装置の第2の実施の形態の概略図である。
【図24】試料への穴加工を示す図である。
【図25】低ダメージ穴加工の状態を示す図である。
【図26】穴加工した断面を観察する状態を示す図である。
【図27】ビーム切り替えボタンを表示した表示装置のインターフェース画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 イオンビームカラム
11 ガスイオン源
12 イオンビーム
13 引出し電極
14 集束レンズ
15 マスク
15a〜e 開口
16 偏向器
17 対物レンズ
18 イオンビームカラム制御部
20 SEMカラム
21 電子源
22 電子ビーム
23 引出し電極
24 集束レンズ
25 ビーム絞り
26 偏向器
27 対物レンズ
28 SEM制御部
30 試料室
31 試料
32 試料ホールダ
33 試料ステージ
35 試料交換室
36 試料搬送ロボット
37 カートリッジ搬送ロボット
38 試料ケース
39 カートリッジケース
41 検出器
44 プローブ移動機構
45 プローブ
50 試料片
51 カートリッジ
52 サンプルキャリア
53 カートリッジ傾斜機構
54 試料ホールダ
56 試料片回転機構
70 表示装置
71 コンピュータ
72 キーボード
73 マウス
74 全体制御部
75 画像生成部
80 画像表示エリア
81 ビーム切り換えボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を搭載する試料ホールダと、
ガスイオン源と、
前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームを前記試料ホールダ上の試料に導くイオンビーム光学系と、
イオンビームを通過させてイオンビームの断面を成形する開口を有するマスクと、
前記ガスイオン源に印加する加速電圧及び前記マスクの動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームを前記マスクの開口に通して断面を成形し、断面を成形した高速加工用のイオンビームを投射して試料又は試料片を加工する手順と、
前記高速加工用のイオンビームに比較して前記ガスイオン源に印加する加速電圧を下げ、加工後の試料又は試料片の観察面にイオンビームを投射して観察面のダメージ層を除去する手順と
を実行可能であることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項2】
試料を搭載する試料ホールダと、
ガスイオン源と、
前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームを前記試料ホールダ上の試料に導くイオンビーム光学系と、
イオンビームを通過させてイオンビームの断面を成形する開口を有するマスクと、
前記マスクの開口で断面を成形したイオンビームの投射により試料から分離される試料片を摘出するプローブ装置と、
前記プローブ装置により摘出した試料片を搭載するカートリッジと、
前記マスクの開口で断面を成形したイオンビームの投射により試料又は試料片を加工する高速加工モード、及び高速加工モード時に比較して加速電圧が低いイオンビームを試料又は試料片の観察面に投射してダメージ層を除去する低ダメージ加工モードの各ビーム条件を記憶した記憶部と、
前記ガスイオン源に印加する加速電圧及び前記マスクの動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されたビーム条件を基にビームモードを前記高速加工モードに設定し、前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームを前記マスクの開口に通して断面を成形し、断面を成形したイオンビームを投射して試料又は試料片を加工する手順と、
前記記憶部に記憶されたビーム条件を基にビームモードを前記低ダメージ加工モードに設定し、前記高速加工用のイオンビームに比較して前記ガスイオン源に印加する加速電圧を下げるとともに、前記イオンビームから前記マスクを退避させ、加工後の試料又は試料片の観察面に前記マスクにより制限されないイオンビームを投射して観察面のダメージ層を除去する手順と
を実行可能であることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項3】
試料を搭載する試料ホールダと、
ガスイオン源と、
前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームを前記試料ホールダ上の試料に導くイオンビーム光学系と、
イオンビームを通過させてイオンビームの断面を成形する開口を有するマスクと、
前記マスクの開口で断面を成形したイオンビームの投射により試料又は試料片を加工する高速加工モード、及び高速加工モード時に比較して加速電圧が低いイオンビームを試料又は試料片の観察面に投射してダメージ層を除去する低ダメージ加工モードの各ビーム条件を記憶した記憶部と、
前記高速加工モード及び低ダメージ加工モードを含むビームモードの切り換えを指示する操作手段と、
前記操作手段の操作に基づく指令信号従ってビームモードを切り換え、前記記憶部に記憶されたビーム条件を基に前記ガスイオン源に印加する加速電圧を制御する加速電圧制御部と
を備えたことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項4】
試料を搭載する試料ホールダと、
ガスイオン源と、
前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームを前記試料ホールダ上の試料に導くイオンビーム光学系と、
イオンビームを通過させてイオンビームの断面を成形する開口を有するマスクと、
前記マスクの開口で断面を成形したイオンビームの投射により試料から分離される試料片を摘出するプローブ装置と、
前記プローブ装置により摘出した試料片を搭載するカートリッジと、
前記マスクの開口で断面を成形したイオンビームの投射により試料又は試料片を加工する高速加工モード、及び高速加工モード時に比較して加速電圧が低いイオンビームを試料又は試料片の観察面に投射してダメージ層を除去する低ダメージ加工モードの各ビーム条件を記憶した記憶部と、
前記高速加工モード及び低ダメージ加工モードを含むビームモードの切り換えを指示する操作手段と、
前記操作手段の操作に基づく指令信号に従ってビームモードを切り換え、前記記憶部に記憶されたビーム条件を基に前記ガスイオン源に印加する加速電圧を制御する加速電圧制御部と、
ビームモードが高速加工モードに切り換えられた場合、前記ガスイオン源から引き出されたイオンビームの光軸上に前記開口が位置するように前記マスクを移動させ、ビームモードが低ダメージ加工モードに切り換えられた場合、前記イオンビームから前記マスクを退避させるマスク制御部と
を備えたことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項5】
請求項1のイオンビーム加工装置において、前記マスクは、前記カートリッジに搭載された試料片を薄膜化するための開口を備えていることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項6】
請求項1のイオンビーム加工装置において、前記カートリッジを回転させ、搭載した試料片のイオンビームに対する角度を調整するカートリッジ傾斜機構を備えていることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項7】
請求項1のイオンビーム加工装置において、前記マスクは、前記カートリッジに搭載された試料片を円柱化するための開口を備えていることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項8】
請求項1のイオンビーム加工装置において、前記カートリッジは、試料片を搭載するステージと、前記ステージを回転させる回転機構とを備えていることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項9】
請求項1のイオンビーム加工装置において、SEMカラムをさらに備えていることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項10】
ガスイオン源から引き出されたイオンビームをマスクの開口に通して断面成形し、断面成形したイオンビームを投射して試料又は試料片を加工する手順と、
前記ガスイオン源に印加する加速電圧を下げ、加工後の試料又は試料片の観察面にイオンビームを投射して観察面のダメージ層を除去する手順と
を有することを特徴とする試料加工方法。
【請求項11】
ガスイオン源から引き出されたイオンビームをマスクの開口に通して断面成形し、断面成形したイオンビームを投射して試料又は試料片を加工する手順と、
前記ガスイオン源に印加する加速電圧を下げるとともに、前記イオンビームから前記マスクを退避させ、加工後の試料又は試料片の観察面に前記マスクにより制限されないイオンビームを投射して観察面のダメージ層を除去する手順と
を有することを特徴とする試料加工方法。
【請求項12】
請求項10の試料加工方法において、前記試料又は試料片を加工する手順にて試料片を円柱状に加工し、前記ダメージ層を除去する手順にて円柱状の試料片を回転させながらイオンビームを投射することを特徴とする試料加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−59516(P2009−59516A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224070(P2007−224070)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】