説明

イカリイン加水分解物を含有する化粧料用組成物

本発明は、イカリイン加水分解物を含有する化粧料用組成物に関し、より具体的には、イカリイン加水分解物であるイカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIを含有する化粧料に関し、上記イカリイン加水分解物は、(a)植物から水または有機溶媒を利用してイカリインを含有する植物抽出物を収得する段階と、(b)上記収得された植物抽出物を酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解する段階とを含む方法によって製造されることができる。本発明による化粧料用組成物は、抗酸化、抗老化、美白またはしわ改善用に適用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イカリイン(icariin)加水分解物を含有する化粧料用組成物に関し、より具体的には、イカリイン加水分解物であるイカリチン(icaritin)、イカリシドI(icariside I)及びイカリシドII(icariside II)を含有する化粧料に関し、上記イカリイン加水分解物は、(a)植物から水または有機溶媒を利用してイカリインを含有する植物抽出物を収得する段階と、(b)上記収得された植物抽出物を酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解する段階とを含む方法によって製造することができる。
【背景技術】
【0002】
エピメディウム(Epimedium)属植物類は、メギ科に属し、中国薬典には、E.brevicornum、E.sagittatum及びE.koreanumの3種が記録されている。エピメディウム属植物の成分は、フラボノイド(flavonoid)、アルカロイド(alkaloid)及びリグナン(lignan)などが主成分として報告されている。特に、三枝九葉草(Epimedium koreanum Nakai)の地上部を乾かした生薬は、淫羊かくであって、漢方及び民間で強精、全身不随や健忘症の治療剤及び神経性強壮剤の目的に使われている。
【0003】
体内酵素系、還元代謝、化学薬品、公害物質及び光化学反応などの各種物理的、化学的及び環境的要因などによって生成される活性酸素は、細胞構成成分である脂質、タンパク質、糖及びDNAなどに対して非選択的、非可逆的な破壊作用をすることで、細胞老化または癌を含めた各種疾病を起こすものと知られている。また、これらの活性酸素による脂質過酸化の結果として生成される脂質過酸化物を含めたさまざまな体内過酸化物も細胞に対する酸化的破壊を起こして各種機能障害を引き起こすことで、さまざまな疾病の原因になる。
【0004】
したがって、このような自由ラジカルを消去することができる化合物(free radical scavengers)または過酸化物生成抑制物質のような抗酸化剤がこれらの酸化物に起因する老化及び各種疾患の抑制または治療剤として期待される。
【0005】
天然抗酸化剤を開発するために多くの天然物由来の原料が研究されて来たが、大部分の天然物由来の原料は、単純抽出物の形態で使われて来ており、その抽出物の示す効能が正確にどんな物質によるものであるかが明らかにされず、経験と口伝によって化粧料などに使われていることが現況である。
【0006】
一方、皮膚の老化は、その要因によって大きく2つに分けることができる。それらのうち1つである自然的な老化(Intrinsic aging)は、皮膚の構造と生理的な機能が年を取りながら継続的な減退を起こすものであり、他の1つである外的老化(Extrinsic aging)は、太陽光線など累積された外部ストレスによって発生するものである。特に太陽光の紫外線(ultraviolet rays;UV)は、よく知られた老化原因の1つであって、長期間紫外線に露出された皮膚は、角質層が厚くなり、皮膚の主要構成要素であるコラーゲンとエラスチンが変成され、皮膚の弾力性を失って行くようになる。このようなコラーゲンとエラスチンは、さまざまな要因によって調節され、コラゲナーゼ(collagenase)とエラスターゼ(elastase)のような基質メタロプロテアーゼ(matrix metallo protease)の発現によって生成されたコラーゲンとエラスチンが分解され、結果として、皮膚内のコラーゲン含量が減少する現象が現われるようになる。
【0007】
このような弾力減少の原因になるコラーゲン及びエラスチンの減少を抑制しようとする目的でさまざまな物質が開発されて使用されているが、それらのうちレチノールとレチノイン酸などのレチノイドなどが弾力改善効果を示し(Dermatologytherapy, 1998, 16, 357〜364)、レグミノサ種子(Leguminosae Seeds)から得られたタンパク質分画も弾力増大効果を示すのに応用されている(米国特許第5,322,839号)。
【0008】
しかし、これらのレチノイドは、少量だけを皮膚に適用しても、刺激が現われるという短所を有し、大部分の天然物由来の原料は、単純抽出物の形態で使用されてきており、その抽出物の示す効能が正確にどんな物質によるものであるかが明らかにされていないので、その抽出物の活性を持続的に維持、制御しにくいことが現況である。
【0009】
一方、人間の皮膚色を決定するには、さまざまな要因が関与するが、それらのうちメラニン色素を作るメラノサイト(melanocyte)の活動性、血管の分布、皮膚の厚さ及びカロチノイドやビリルビンなどの人体内外の色素含有有無などの要因が重要である。
【0010】
これらのうち、特に最も重要な要因は、人体内のメラノサイトでチロシナーゼなどのいろいろな酵素が作用して生成されるメラニンという黒色色素である。このメラニン色素の形成には、遺伝的要因、ホルモン分泌、ストレスなどと関連した生理的要因及び紫外線の照射などのような環境的要因などが影響を及ぼす。
【0011】
身体皮膚のメラニン細胞で生成されるメラニン色素は、黒い色素とタンパク質の複合体形態を有するフェノール系高分子物質であって、太陽から照射される紫外線を遮断し、真皮以下の皮膚器官を保護すると共に、皮膚生体内に生じた自由ラジカルなどを抑制するなど皮膚内タンパク質と遺伝子を保護する有用な役目を担当する。
【0012】
このように皮膚内・外部のストレス的刺激によって生じたメラニンは、ストレスが消えても、皮膚角質化を通じて外部に排出される前までは消えない安定した物質である。しかし、メラニンが必要以上に多く生ずる場合、染みやそばかす、斑点などのような過色素沈着症を誘発し、美容上、良くない結果をもたらすようになる。
【0013】
また、レジャー人口の増加に伴って、外部で活動することを楽しむ人々が多くなり、紫外線によるメラニン色素沈着を抑制しようとする要求が増えるようになった。
【0014】
このような要求に応じて、従来、アスコルビン酸、コージ酸、アルブチン、ハイドロキノン、グルタチオンまたはこれらの誘導体、またはチロシナーゼ阻害活性を有する物質を化粧料や医薬品に配合して使用してきたが、これらの不十分な美白効果、皮膚に対する安全性問題、化粧料に配合時に現われる剤型安定性の問題などによってその使用が制限されている。
【特許文献1】米国特許第5,322,839号
【非特許文献1】Dermatologytherapy, 1998, 16, 357〜364
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これより、本発明者らは、上記問題点を解決し、さらに優れた抗酸化剤、抗老化剤、美白剤原料を探し出すための研究の一環として、様々な天然物を検索した結果、エピメディウム属植物抽出物のフラボノイド成分であるイカリインが優れた効能を示すことを知見し、ひいては、イカリインから酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解して生成されたイカリイン加水分解物が抗酸化、抗老化及び美白剤として効果がさらに優れていることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の目的は、イカリイン加水分解物を有効成分として含有する化粧料組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、エピメディウム属植物由来のイカリインから酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用した分解反応を通じて上記化粧料組成物に有効成分として含有されるイカリイン加水分解物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表されるイカリイン加水分解物を含有する化粧料用組成物を提供する:
【化1】

上記で、R1は、OHまたはラムノピラノースであり、R2は、OHまたはグルコピラノースである。但し、R1とR2は、同時にラムノピラノースとグルコピラノースではない。
【0019】
本発明において、上記組成物は、抗酸化用、抗老化用、美白用またはしわ改善用化粧料組成物であることができる。
【0020】
本発明による化粧料組成物に含有されるイカリイン加水分解物は、(a)植物から水または有機溶媒を利用してイカリインを含有する植物抽出物を収得する段階と、(b)上記収得された植物抽出物を酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解する段階とを含む方法によって製造することができる。
【0021】
上記(a)段階の植物抽出物は、エピメディウム属から由来されたものであり、上記有機溶媒は、エタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテート及びクロロホルムよりなる群から選択された1つ以上の有機溶媒、またはこれら有機溶媒と水との混合溶媒を使用することができ、好ましくは、80%エタノールを使用することができる。
【0022】
また、上記(b)段階で使用する酸は、塩酸、硫酸及び硝酸よりなる群から選択された1つ以上の酸、またはこれら酸とエタノール、メタノール及びブタノールよりなる群から選択された1つ以上のアルコールとの混合溶媒を使用することができる。この時、使用することができる酸の濃度は、0.1〜2Nであり、混合溶媒のアルコール含量は、10〜50%であり、反応温度は、50〜100℃であり、反応時間は、0.5〜8時間である。
【0023】
上記(b)段階で使用する塩基は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムよりなる群から選択された1つ以上の塩基、またはこれら塩基とエタノール、メタノール及びブタノールよりなる群から選択された1つ以上のアルコールとの混合溶媒を使用することができる。この時、使用することができる塩基の濃度は、0.1〜2Nであり、混合溶媒のアルコール含量は、10〜50%であり、反応温度は、50〜100℃であり、反応時間は、0.5〜24時間である。
【0024】
上記(b)段階で使用する酵素または上記酵素を生産する微生物は、糖結合を分解する酵素または上記糖結合を分解する酵素を生産する微生物を使用することができ、上記酵素は、イカリインから糖部分を除去し、イカリイン加水分解物を分離する。
【0025】
上記酵素として、グルコシダーゼ(glucosidase)、アラビノシダーゼ(arabinosidase)、ラムノシダーゼ(rhamnosidase)、キシロシダーゼ(Xylosidase)、セルラーゼ(cellulase)、ヘスペリジナーゼ(hesperidinase)、ナリギナーゼ(naringinase)、グルクロニダーゼ(glucuronidase)、ペクチナーゼ(pectinase)、ガラクトシダーゼ(galactosidase)及びアミログルコシダーゼ(amyloglucosidase)よりなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0026】
また、上記酵素を生産する微生物は、アスペルギルス(aspergillus)属、バチルス(bacillus)属、ペニシリウム(penicillium)属、リゾプス(rhizopus)属、リゾムコール(rhizomucor)属、タラロマイセス(talaromyces)属、ビフィドバクテリウム(bifidobacterium)属、モルティエレラ(mortierella)属、クリプトコッカス(cryptococcus)属及びミクロバクテリウム(microbacterium)属よりなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0027】
本発明によるイカリイン及びイカリイン加水分解物であるイカリチン、イカリシドI及びIIは、下記の構造式を有する:
【化2】

【0028】
以下、本発明においてイカリイン加水分解物を製造する過程をさらに詳しく説明する。
【0029】
上記(a)段階で、植物から水または有機溶媒を利用してイカリインを含有する植物抽出物を収得する方法は、次の通りである。すなわち、植物に約1乃至6倍、好ましくは、約3倍の水またはエタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテート及びクロロホルムよりなる群から選択された1つ以上の有機溶媒、またはこれら有機溶媒と水との混合溶媒を入れ、常温で1乃至5回撹拌しながら抽出して脱脂させた後、脱脂された植物に約1乃至8倍、好ましくは約4倍の水または有機溶媒を入れ、1乃至5回還流抽出した後、10乃至20℃で1乃至3日間沈積させる。
【0030】
上記沈積物を濾過と遠心分離を通じて残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、エーテルなどを利用して色素を除去した後、水層をブタノールなどを使用して1乃至5回抽出した後、収得した有機溶媒層を減圧濃縮してブタノールなどの抽出物を得て、これを少量のメタノールなどに溶解した後、大量のエチルアセテートなどを追加して生成された沈殿物を乾燥させて、イカリインを収得することができる。
【0031】
上記(b)段階で、上記収得されたイカリインを酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解し、イカリイン加水分解物を製造する。
【0032】
この際、酸を利用する場合、植物抽出物に0.1〜2N濃度、好ましくは、1N濃度の酸、または酸及びアルコールの混合溶媒(好ましくは、50%エタノール混合溶媒)を加えた後、50乃至100℃、好ましくは、80℃水浴で1乃至48時間、好ましくは、8時間加熱還流させて加水分解し、反応液を収得することができる。
【0033】
塩基を利用する場合、植物抽出物を溶解した後、0.1〜2N濃度、好ましくは、1N濃度の塩基、または塩基及びアルコールの混合溶媒(好ましくは、50%ブタノール混合溶媒)を加えて、50乃至100℃、好ましくは、100℃水浴で1乃至48時間、好ましくは、8時間加熱還流させて加水分解し、反応液を収得することができる。
【0034】
酵素を利用する場合、植物抽出物を5乃至20倍、好ましくは、約10倍の酸性緩衝溶液に溶解させた後、酵素を添加して約37℃水浴で約40乃至55時間、好ましくは、約48時間撹拌しながら、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認し、基質が完全に消失されれば、熱水(80〜100℃)中で5乃至15分間加熱して加水分解反応を終了させ、反応液を収得することができる。
【0035】
上記酵素を生産する微生物を利用する場合、植物抽出物を5乃至10倍、好ましくは約10倍のイオン水に溶解させた後、約121℃で30分間滅菌して約30℃に冷却した後、あらかじめ培養された微生物を液体量に対して5〜10%に接種し、30℃で2乃至5日、好ましくは5日間培養させた後、薄層クロマトグラフィーで基質の消去率を確認し、基質が完全に消失されれば、加水分解反応を終了させ、培養液を5,000乃至10,000rpmで遠心分離して回収した沈殿物を蒸溜水で3回洗浄した後、遠心分離して沈殿物として反応液を収得することができる。
【0036】
上記のように、酸、塩基、酵素、または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解した後、収得した反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にアルコールを加えて1乃至5回撹拌させた後、沈澱された塩を濾過を通じて除去し、濾過された濾液を減圧濃縮して粗生成物を収得し、収得された粗生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離し、イカリイン加水分解物を収得することができる。
【0037】
本発明によって製造されたイカリイン加水分解物は、DPPH及びROS生成を抑制させることによって、抗酸化効能に優れており、また、コラーゲン生合成を促進させ、コラゲナーゼ発現を抑制させることによって、抗老化効能に優れており、更には、メラニン生成を抑制させ、紫外線によって生成された色素沈着を改善させることによって、美白効能に優れている。
【0038】
したがって、本発明では、上記イカリイン加水分解物を有効成分として含有する抗酸化用化粧料組成物を提供することができる。
【0039】
また、本発明では、上記イカリイン加水分解物を有効成分として含有する抗老化用化粧料組成物を提供することができる。
【0040】
また、本発明では、上記イカリイン加水分解物を有効成分として含有する皮膚美白用化粧料組成物を提供する。
【0041】
また、本発明では、上記イカリイン加水分解物を有効成分として含有する皮膚しわ改善用外用剤組成物を提供することができる。
【0042】
上記化粧料用組成物は、化粧料組成物または薬学組成物に剤型化されることができ、組成物内で上記イカリイン加水分解物の含量は、組成物の全体重量に対して0.0001〜10重量%の量で含有させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであって、これらの実施例によって本発明の権利範囲が限定されるのではない。
【0044】
[実施例1]イカリインの製造及び同定
<イカリインの製造>
三枝九葉草の乾燥した葉2kgにヘキサン6Lを入れ、常温で3回撹拌抽出して脱脂させた後、脱脂された緑茶葉1kgに80%メタノール4Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間沈積させた。次に、濾過布濾過と遠心分離を通じて残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、エーテル1Lで5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500mLで3回抽出した。得られたすべての1−ブタノール層を減圧濃縮して1−ブタノール抽出物を得て、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加し、生成された沈殿物を乾燥することによって、イカリインを含有する三枝九葉草抽出物80gを収得した。
【0045】
<イカリインの同定>
上記実施例1で収得した抽出物20gをシリカゲルコラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g充填)で精製した。この時、展開溶媒としては、クロロホルムとメタノールを使用し、クロロホルムとメタノールの比を10:1から2:1まで濃度勾配を高めて分画を収得し、これらの分画からイカリイン2.3gを収得した。上記収得した生成物を同定した結果(Varian Gemini 2000 300MHz, Varian社)、下記のような特性を示した。
【0046】
<イカリインの物理化学的性状>
性状:淡い微黄色の微細結晶
陽性(Positive)FAB−MS:677[M+H]
1H NMR:(DMSO−d6)δ:0.81(3H,d,J=6Hz,Rham−6),1.61 & 1.69(6H,br s,Me−11),ca 3.1−3.3(m),3.33(1H,br d−like,ca 5),ca 3.4−3.6(m),ca 3.7−3.76(1H,m),3.86(3H,s,OMe−4'),4.01(1H,br,H2''),5.00(1H,d,7.5,H1'''),5.19(1H,br t,7,H10),5.30(1H,d,J=1.5Hz,H1''),6.64(1H,s,H6),7.12(2H,d,9,H3',5'),7.89(2H,d,9,H2',6'),12.53(1H,s,OH−5).
13C−NMR:(DMSO−d6)δ:153.0,135.7,178.3,160.5,98.2,161.4,108.4,157.3,105.6,122.2,130.5,114.1,160.5,114.1,130.5,21.1,122.3,131.1,25.4,17.5,102.0,70.4,70.6,69.7,70.1,17.9,100.6,73.4,76.7,71.2,76.7,60.7,55.5
酸加水分解物:イカリチン、グルコース、ラムノ−ス
【0047】
[実施例2]イカリチン、イカリシドI及びIIの製造及び同定
<酸加水分解方法によるイカリチン、イカリシドI及びIIの製造>
上記実施例1で収得した抽出物20gに20倍(v/w)の1N HCl−50%メタノール溶液(v/v)を加え、80℃水浴で8時間加熱還流させて、イカリインに結合された糖を加水分解させた。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200mL)を加えて撹拌させた後(3回)、沈澱した塩を濾過を通じて除去した。濾過された濾液を減圧濃縮して粗生成物を収得した後、収得された粗生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離し、イカリチン0.9g、イカリシドI 0.7g及びイカリシドII 0.5gをそれぞれ収得した。
【0048】
<塩基加水分解方法によるイカリチン、イカリシドI及びIIの製造>
上記実施例1で収得した抽出物20gを乾燥ピリジン(500mL)に溶解し、これにナトリウムメトキシド(sodium methoxide)(powder、10g)を加え、水浴で8時間加熱還流させて、イカリインに結合された糖を加水分解させた。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200mL)を加えて撹拌させた後(3回)、沈澱した塩を濾過を通じて除去した。濾過された濾液を減圧濃縮して粗生成物を収得し、収得された粗生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=8:1〜4:1)で分離し、イカリチン0.6g、イカリシドI 0.7g及びイカリシドII 0.8gをそれぞれ収得した。
【0049】
<酵素分解方法によるイカリチン、イカリシドI及びIIの製造>
上記実施例1で収得した抽出物20gを100mLの0.1M酢酸緩衝溶液(pH4.5)に溶解させ、これに酵素2.5g(ヘスペリジナーゼ0.5g、ナリギナーゼ0.5g、セルラーゼ0.5g、β−グルクロニダーゼ0.2g、β−ガラクトシダーゼ0.5g、アミログルコシダーゼ0.3g;Sigma社製造)を添加し、37℃水浴上で48時間撹拌させながら、薄層クロマトグラフィーで周期的に確認し、イカリインが完全に消失したところで、熱水(80〜100℃)中で10分間加熱して反応を終了させた。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200mL)を加えて撹拌させた後(3回)、沈殿物を濾過を通じてとり除いた後、濾過された濾液を減圧濃縮して粗生成物を収得した。収得した粗生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離し、イカリチン1.1g、イカリシドI 1.2g及びイカリシドII 0.9gをそれぞれ収得した。
【0050】
<微生物を利用したイカリチン、イカリシドI及びIIの製造>
上記実施例1で収得した抽出物20gを100mLのイオン水に溶解させ、121℃で30分間滅菌して30℃に冷却した後、あらかじめ培養されたアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)KCCM 11885を液体量に対して5〜10%に接種して30℃で5日間培養させた後、薄層クロマトグラフィーでイカリインの消去率を確認し、完全に消失したところで、反応を終了させた。培養液を5,000乃至10,000rpmで遠心分離して回収した沈殿物を蒸溜水で3回洗浄した後、遠心分離して沈殿物として反応液を得た。上記沈殿物にエタノール(200mL)を加えて撹拌させた後(3回)、沈殿物を濾過を通じて除去した。濾過された濾液を減圧濃縮して粗生成物を収得し、上記収得した粗生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=8:1〜4:1)で分離し、イカリチン0.8g、イカリシドI 0.7g及びイカリシドII 0.8gをそれぞれ収得した。
【0051】
<イカリシドIの同定>
上記酵素分解法で収得した抽出物20gをシリカゲルコラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g充填)で精製した。この時、展開溶媒としては、クロロホルムとメタノールを使用し、クロロホルムとメタノールの比を10:1から2:1まで濃度勾配を高めて分画を収得し、これらの分画からイカリシドI 1.8gを収得した。上記収得した生成物を同定した結果(Varian Gemini 2000 300MHz、Varian社)、下記のような特性を示した。
【0052】
<イカリシドIの物理化学的性状>
性状:淡い微黄色の微細結晶
陽性FAB−MS:531[M+H]
1H NMR:(DMSO−d6)δ:1.70,1.83(ea.3H,s,Me−4'',5''),2.90(2H,H1''),3.87(3H,s,OMe),3.83−5.40(m,sugar protons),6.64(1H,s,H6),7.16(2H,d,9,H3',5'),8.23(2H,d,9,H2',6')
13C−NMR:(DMSO−d6)δ:146.9,136.2,176.5,160.1,97.5,160.6,108.1152.7,104.5,123.4,129.3,114.1,158.5,114.1,129.3,21.5,122.3,131.1,25.4,17.9,100.5,73.4,76.7,69.7,77.2,60.7,55.4
酸加水分解物:イカリチン、グルコース
【0053】
<イカリシドIIの同定>
上記酵素分解法で収得した抽出物20gをシリカゲルコラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g充填)で精製した。この時、展開溶媒としては、クロロホルムとメタノールを使用し、クロロホルムとメタノールの比を10:1から2:1まで濃度勾配を高めて分画を収得し、これらの分画からイカリシドII 1.5gを収得した。上記収得した生成物を同定した結果(Varian Gemini 2000 300MHz、Varian社)、下記のような特性を示した。
【0054】
<イカリシドIIの物理化学的性状>
性状:淡い微黄色の微細結晶
陽性FAB−MS:515[M+H]
1H NMR:(DMSO−d6)δ:0.79(3H,d,6,Me−5''),1.63 & 1.68(6H,br s,Me−11),3.03(1H,qd,6,9.5,H5''),3.14(1H,dd,9,9.5,H4''),ca3.4(2H−9,overlaping with the signals of H2O),3.47(1H,br,H3''),3.85(3H,s,OMe−4'),3.98(1H,br,H2''),5.15(1H,br t,7,H10),5.26(1H,d,1.5,H1''),6.31(1H,s,H6),7.12(2H,d,9,H3',5'),7.86(2H,d,9,H2',6'),12.52(1H,s,OH−5)
13C−NMR:(DMSO−d6)δ:156.2,133.8,177.1,103.6,158.1,97.8,160.9,105.4,153.8,21.0,121.7,130.3,17.6,25.2,121.8,129.7,113.5,160.5,55.2,101.4,69.7,70.0,70.2,70.8,17.3
酸加水分解物:イカリチン、ラムノ−ス
【0055】
<イカリチンの同定>
上記酵素分解法で収得した抽出物20gをシリカゲルコラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g充填)で精製した。この時、展開溶媒としては、クロロホルムとメタノールを使用し、クロロホルムとメタノールの比を10:1から2:1まで濃度勾配を高めて分画を収得し、これらの分画からイカリチン2.4gを収得した。上記収得した生成物を同定した結果(Varian Gemini 2000 300MHz、Varian社)、下記のような特性を示した。
【0056】
<イカリチンの物理化学的性状>
性状:淡い微黄色の微細結晶
陽性FAB−MS:369[M+H]
1H NMR:(DMSO−d6,300MHz)δ:3.82(3H,s, OMe),1.62(3H,s,Me−5''),1.75(3H,s,Me−4''),5.14(1H,t,6,H2''),3.24(2H,d,6,H1''),7.08(2H,d,8.7,H3',5'),8.10(2H,d,8.7,H2',6'),6.27(1H,s,H6)
【0057】
[試験例1]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIの抗酸化効果試験(DPPH test)
有機ラジカルであるDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)の還元によって(抗酸化剤は酸化される)発生する吸光度の変化を通じて抗酸化能を評価する方法を使用した。下記例によってDPPHの酸化が抑制され、吸光度が対照群に比べて減少する程度を測定し、対照群の吸光度に比べて50%以下の吸光度を示す濃度を有効抗酸化濃度として評価した。
【0058】
100μM(in エタノール)DPPH溶液190μLと上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンと対照試料をそれぞれ10μL入れて反応液を作り、37℃で30分間反応させた後、540nmで吸光度を測定した。対照試料としては、広く使用している合成抗酸化剤トロロックス(Trolox)を使用した。
各物質のDPPH分析結果を下記表1に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、本発明によるイカリチン、イカリシドI及びIIがイカリインよりさらに良い活性を示し、トロロックスよりも抗酸化効能に優れていることが分かった。
【0061】
[試験例2]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIの蛍光物質を利用した活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)生成抑制能試験
試験に使用した細胞株は、人間角質形成細胞HaCaT細胞株(Human keratinocytes HaCaT cell line)であって、蛍光測定用96孔ブラックプレートに各孔当たり2.0×104個に分株し、ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されたDMEM(Dulbeccos Modification of Eagles Medium、FBS10%)培地を使用して37℃、5%CO2条件で1日間培養した後、試験試料を処理した。下記表2に示されている試料処理に使用された培地としてペニシリン/ストレプトマイシンが添加された無血清DMEM(FBS free)を使用し、37℃、5%CO2条件で1日間培養した。
【0062】
試験試料を入れて24時間培養した後、HCSS(HEPES−bufferedcontrol salt solution)で洗浄して残っている培地を除去し、HCSSに20μMで用意したDCFH−DA(2',7'-dichlorodihydro-fluorescein diacetate, Molecular Probes, Inc)を100μL加え、37℃、5%CO2条件で20分間培養し、HCSSで洗浄した。その後、試料濃度別に処理されたHCSSを100μL加えた後、初期にROSに酸化されたDCF(dichlorofluorescein)の蛍光度を蛍光プレートリーダー(Ex=485nm、Em=530nm)で蛍光強度を測定した。その後、UVB(30mJ/cm2)を照射し、処理直後及び処理3時間後の蛍光度を蛍光プレートリーダー(Ex=485nm、Em=530nm)で蛍光強度を測定した。
比較試料としてはトロロックスを使用した。
各試験物質のROS生成抑制能実験結果は、下記表2に示した。
【0063】
【表2】

【0064】
表2から明らかなように、イカリチン、イカリシドI及びIIがイカリインよりさらに良い活性を示し、トロロックスよりもROS生成抑制能がさらに優れていることが分かる。
【0065】
[試験例3]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIのコラーゲン生合成促進効果の測定
上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンのコラーゲン生合成促進効果をトコフェロール及びEGCGと比較して測定した。
【0066】
まず、人間繊維芽細胞(fibroblast)(PromoCell, Germany)を24孔(well)に1孔当たり105個ずつ播種し(seeding)し、90%程度成長するまで培養した。これを24時間無血清DMEM培地で培養した後、無血清培地に溶解された上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチン、並びにトコフェロール及びEGCGをそれぞれ10-4モル濃度で処理し、24時間CO2培養器で培養した。これらの上澄液を採取し、プロコーラゲン型(I)ELISAキット(proc/;ollagen type(I))を利用してプロコーラゲン(procollagen)の増減可否を調べた。その結果を表3に示す。ここで、合成能は、無処理群を100にして対比したものである。
【0067】
【表3】

【0068】
その結果、上記表3から明らかなように、イカリチン、イカリシドI及びIIがイカリインよりさらに良いコラーゲン生合成増加効果を示し、陽性対照群に比べてさらに良い効能を示すことを確認することができた。
【0069】
[試験例4]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIのコラゲナーゼ発現抑制効能測定
上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンから得た物質のコラゲナーゼ発現抑制効能(生成阻害能)をトコフェロール及びEGCGと比較して下記のように測定した。
【0070】
まず、2.5%の牛胎児血清が含有されたDMEM培地が入っている96孔平板培養器(96-well microtiter plate)に人間の纎維雅細胞を5,000細胞/孔になるように入れ、90%程度成長するまで培養した。その後、無血清DMEM培地で24時間培養した後、試験物質として無血清DMEM培地に溶解された上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチン、並びにトコフェロール及びEGCG(陽性対照群)を10-4モル濃度で24時間処理した後、細胞培養液を採取した。
【0071】
その後、採取した細胞培養液を商業的に利用可能なコラゲナーゼ測定器具(米国アマシャムパマシャ社)を利用してコラゲナーゼ生成程度を測定した。
【0072】
まず、1次コラゲナーゼ抗体が均一に塗布された96−孔平板(96-well plate)に配位された細胞培養液を入れ、3時間抗原−抗体反応を恒温槽で実施した。3時間後、発色団が結合された2次コラーゲン抗体を96−孔平板に入れ、さらに15分間反応させた。15分後、発色誘発物質を入れ、室温で15分間発色を誘発させ、さらに1M硫酸を入れ、反応(発色)を中止させれば、反応液の色は、黄色を呈し、反応進行の程度によって黄色の程度が異なって現われた。
【0073】
黄色を呈する96−孔平板の吸光度を吸光計を利用して405nmで測定し、下記数式1によってコラゲナーゼの発現程度を計算した。この時、上記試験物質を処理しない群の採取された細胞培養液の反応吸光度を対照群の吸光度にした。
[数式1]
コラゲナーゼ発現程度(%)=A/B×100
A:上記試験物質処理細胞群の吸光度
B:対照群の吸光度
【0074】
一方、上記人間の繊維芽細胞で上記試験物質のコラゲナーゼ発現抑制効能を測定した結果をコラゲナーゼ発現程度で下記表4に示す。これは、無処理群のコラゲナーゼ発現程度を100にして対比したものである。
【0075】
【表4】

【0076】
その結果、上記表4から明らかなように、イカリチン、イカリシドI及びIIがイカリインよりコラゲナーゼ発現を効果的に抑制することを確認することができた。
【0077】
[試験例5]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIのエラスターゼ発現抑制効能測定
上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンのエラスターゼ発現抑制効能(生成阻害能)をトコフェロール及びEGCGと比較して下記のように測定した。
【0078】
まず、試験は、2.5%の牛胎児血清が含有されたDMEM培地が入っている96孔平板培養器に人間の繊維芽細胞を5,000細胞/孔になるように入れ、90%程度成長するまで培養した。その後、無血清培地で24時間培養し、試験物質として無血清培地に溶解された上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチン、並びにトコフェロール及びEGCG(陽性対照群)を10-4モル濃度で24時間処理した後、細胞培養液を採取した。
【0079】
その後、採取した細胞培養液を商業的に利用可能なエラスターゼ測定器具(米国アマシャムパマシャ社)を利用してエラスターゼ生成程度を測定した。
【0080】
まず、1次エラスターゼ抗体が均一に塗布された96−孔平板に配位された細胞培養液を入れ、3時間抗原−抗体反応を恒温槽で実施した。3時間後、発色団が結合された2次エラスチン抗体を96−孔平板に入れ、さらに15分間反応させた。15分後、発色誘発物質を入れ、室温で15分間発色を誘発させ、さらに1M硫酸を入れ、反応(発色)を中止させれば、反応液の色は、黄色を呈し、反応進行の程度によって黄色の程度が異なって現われた。
【0081】
黄色を呈する96−孔平板の吸光度を吸光計を利用して405nmで測定し、下記数式2によってエラスターゼの発現程度を計算した。この時、上記試験物質を処理しない群の採取された細胞培養液の反応吸光度を対照群の吸光度にした。
[数式2]
エラスターゼ発現程度(%)=A/B×100
A:上記試験物質処理細胞群の吸光度
B:対照群の吸光度
【0082】
一方、上記人間の繊維芽細胞で上記試験物質のエラスターゼ発現抑制効能を測定した結果を下記表5に示す。これは、無処理群の発現程度を100にして対比したものである。
【0083】
【表5】

【0084】
その結果、上記表5から明らかなように、イカリチン、イカリシドI及びIIがイカリインよりエラスターゼ発現を効果的に抑制することを確認することができた。
【0085】
[試験例6]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIのメラニン生成抑制効果測定
上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンのメラニン生成抑制効果を調べるためにねずみの色素細胞を利用して測定した。
【0086】
まず、C57BL/6マウス由来のねずみの色素細胞(Mel−Ab cell)(Dooley, T. P. et al, Skin pharmacol, 7, pp188-200)を、DMEMに10%牛胎盤血清、100nM2−O−テトラデカノイル ホルボール(tetradecanoylphorbol)−13−アセテート、及び1nMコレラ毒素(cholera toxin)を添加した培地で37℃、5%CO2の条件で培養した。培養されたMel−Ab細胞を0.25%トリプシン−EDTAで取り外し、24−ウェルプレートにて105細胞/ウェルの濃度で細胞を培養した。2日目から3日連続して10ppmの各試験物質でハイドロキノン、上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンを加えて培養した。この時、上記ハイドロキノンは、陽性対照群として使用した。次に、培養液を除去し、PBSで洗浄した後、1N水酸化ナトリウムで細胞を溶解し、400nmで吸光度を測定した後、下記数式3によってメラニン生成抑制率を計算し、その結果を表6に示した(Dooleyの方法)。
[数式3]
メラニン生成抑制率(%)=100−{(各試験物質の吸光度/対照群の吸光度)x100}
【0087】
【表6】

【0088】
上記表6から明らかなように、本発明によって収得した上記実施例2で同定したイカリチン、イカリシドI及びIIが、実施例1で同定したイカリインより良いメラニン生成抑制率を示すものと確認され、特にイカリチン、イカリシドI及びIIは、ハイドロキノンと類似の程度のメラニン生成抑制率を示すことを確認した。
【0089】
[試験例7]イカリイン、イカリチン、イカリシドI及びイカリシドIIの人体皮膚に対する美白効果試験
上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンの人体皮膚に対する美白効果を調べるために、下記のような実験を行った。
まず、元気な12名の男性を対象にして被検者の上膊部位に直径1.5cmの孔が開いた不透明テープを貼り付けた後、各被検者の最小紅斑量(Minimal Erythema Dose)の1.5〜2倍位の紫外線(UVB)を照射し、皮膚の黒化を誘導した。
【0090】
上記紫外線の照射後、上記実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンの各々1%(溶媒は1,3−ブチレングリコール:エタノール=7:3)、ハイドロキノン1%、溶媒(vehicle)(陰性対照群)1%だけを塗布し、1ヶ所は何も塗布せず、10週間状態変化を観察した。1週単位で皮膚の色を色差計CR2002(日本国、ミノルタ社)で測定した。
【0091】
その後、上記各試験物質の塗布開始時点と塗布完了時点での皮膚色の差異(ΔL*)を下記数式4によって計算し、これを下記表7に示した。一方、美白効果は、試料塗布部位と対照群部位のΔL*の比較として判定するが、ΔL*値が2程度の場合は、沈着された色素の美白化が明らかな場合であり、1.5程度以上なら美白効果があると判定することができる。
[数式4]
ΔL*=塗布完了時点でのL*値−塗布開始時点でのL*値
【0092】
【表7】

【0093】
上記表7から明らかなように、本発明によって収得した実施例1〜2で同定したイカリイン、イカリシドI、イカリシドII及びイカリチンは、ハイドロキノンと類似の程度の皮膚色の明るさ程度を示すことを確認した。これは、上記物質が紫外線によって生成された色素沈着を改善し、皮膚色を明るくするからである。
【0094】
以下、上記組成物の剤型化を製剤例を通じて説明するが、これは、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0095】
[製剤例1]せっけん製造
【0096】
【表8】

【0097】
上記成分に精製水を満たして全量を100にし、上記の配合比によってせっけんを製造した。
【0098】
[製剤例2]ローション製造
【0099】
【表9】

【0100】
上記成分に精製水を満たして全量を100にし、上記の配合比(%)によってローションを製造した。
【0101】
[製剤例3]クリーム製造
【0102】
【表10】

【0103】
上記成分に精製水を満たして全量を100にし、上記の配合比(%)でクリームを製造した。
【0104】
[製剤例4]パック製造
【0105】
【表11】

【0106】
上記成分に精製水を満たして全量を100にし、上記の配合比(%)でパックを製造した。
【0107】
[製剤例5]美容液製造
【0108】
【表12】

【0109】
上記成分に精製水を満たして全量を100にし、上記の配合比(%)で美容液を製造した。
【0110】
[製剤例6]散剤の製造
【0111】
【表13】

【0112】
上記の成分を混合し、気密布に充填し、散剤を製造した。
【0113】
[製剤例7]錠剤の製造
【0114】
【表14】

【0115】
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠し、錠剤を製造した。
【0116】
[製剤例8]カプセル剤の製造
【0117】
【表15】

【0118】
通常のカプセル剤の製造方法によって上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を製造した。
【0119】
[製剤例9]注射剤の製造
【0120】
【表16】

【0121】
通常の注射剤の製造方法によって1アンプル当たり(2mL)上記の成分含量で製造した。
【0122】
[製剤例10]液剤の製造
【0123】
【表17】

【0124】
通常の液剤の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加えた後、上記の成分を混合した後、精製水を加えて全体100mLに調節した後、茶色の瓶に充填し滅菌させて、液剤を製造した。
【0125】
[発明の効果]
以上説明したように、本発明では、エピメディウム属植物抽出物のフラボノイド成分であるイカリインから酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解して生成されたイカリイン加水分解物を含有する化粧料組成物がDPPH及びROS生成抑制効能を有する抗酸化効果とともに、コラーゲン生合成促進効果、エラスターゼ及びコラゲナーゼの発現抑制効果による抗老化効果、メラニン生成を抑制し、紫外線(ultraviolet rays;UV)によって生成された色素沈着を改善する効果による美白効果を示すことができることを確認した。したがって、本発明によるイカリイン加水分解物は、抗酸化、抗老化、美白、しわ改善用化粧料組成物または薬学組成物として非常に有用に使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるイカリイン加水分解物を含有する化粧料用組成物:
【化1】

上記で、R1は、OHまたはラムノピラノースであり、R2は、OHまたはグルコピラノースであるが、R1とR2は同時にラムノピラノースとグルコピラノースではない。
【請求項2】
上記組成物は、抗酸化用であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記組成物は、抗老化用であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記組成物は、美白用であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
上記組成物は、しわ改善用であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
上記イカリイン加水分解物は、次の段階を含む方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載の組成物:
(a)植物から水または有機溶媒を利用してイカリインを含有する植物抽出物を収得する段階;及び
(b)上記収得された植物抽出物を酸、塩基、酵素または上記酵素を生産する微生物を利用して加水分解する段階。
【請求項7】
上記(a)段階の植物抽出物は、エピメディウム属から由来されたものであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
上記(b)段階の酸は、塩酸、硫酸及び窒酸よりなる群から選択された1つ以上の酸、またはこれら酸とエタノール、メタノール及びブタノールよりなる群から選択された1つ以上のアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
上記(b)段階の塩基は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムよりなる群から選択された1つ以上の塩基、またはこれら塩基とエタノール、メタノール及びブタノールよりなる群から選択された1つ以上のアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
上記(b)段階の酵素は、グルコシダーゼ、アラビノシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、セルラーゼ、ヘスペリジナーゼ、ナリギナーゼ、グルクロニダーゼ、ペクチナーゼ、ガラクトシダーゼ及びアミログルコシダーゼよりなる群から選択された1種以上のものであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
上記(b)段階の微生物は、アスペルギルス属、バチルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、リゾムコール属、タラロマイセス属、ビフィドバクテリウム属、モルティエレラ属、クリプトコッカス属及びミクロバクテリウム属よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−517461(P2009−517461A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543174(P2008−543174)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004448
【国際公開番号】WO2007/064085
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】