説明

イミド基含有ジアミン、該イミド基含有ポリイミド前駆体、該前駆体を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型パターンの製造方法及び電子部品

【課題】透明性に優れ、微細なパターン形成能を有し、且つ低誘電率及び高耐熱性を併せ持つポリイミド膜を形成することのできるポジ型感光性樹脂組成物及びポジ型パターンの製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(2)


[式中、Aは、4価の脂環族基、Rは、2価の脂環族基を表し、Rは、芳香族基、脂肪族基及び脂環族基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基を表す。Xは、繰り返し単位のモル比率を表し、0.05〜0.95の範囲である。]
で表されるイミド基含有ポリイミド前駆体、有機溶媒及びジアゾナフトキノン系感光剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミド基含有ジアミン、該イミド基含有ポリイミド前駆体、該前駆体を含有して成るポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型パターンの製造法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は耐熱性と電気特性、機械特性に優れ、また、膜形成が容易、表面を平坦化できる等の利点から、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜等に使用されている。このポリイミド樹脂の特性を利用した感光性を有する耐熱性樹脂組成物としてポリイミドの前駆体であるポリアミド酸に対して、アクリルもしくはメタクリル基を有する三級アミン化合物をイオン結合にて導入したタイプ(特許文献1参照)やアクリルもしくはメタクリル基を有する化合物をエステル結合にて導入したタイプ(特許文献2参照)などが提案されている。
【0003】
これらの感光性樹脂は、露光部を不溶化するネガ型であり、半導体を中心とした電子材料用途の保護膜として利用されている。しかし、このようなネガ型の感光性樹脂はパターン形成時に極性の高い有機溶剤を用いなければならず、産業廃棄物、環境問題の点で好ましくなく、さらにこれらの樹脂は、上記有機溶剤に対する膨潤性が高いため、微細なパターンを形成することができないという問題があった。
【0004】
最近、ポジ型の感光性樹脂組成物として、(a)ポリベンゾオキサゾールにジアゾナフトキノン化合物を添加したものが提案されている(特許文献3参照)。また、水性現像液で現像可能なポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物としては、(b)o−ニトロベンジル基をエステル結合により導入したポリイミド前駆体(特許文献4参照)、(c)カルボキシル基を含むポリアミド酸エステルとo−キノンジアジド化合物を含む組成物(特許文献5参照)、(d)水酸基を含むポリアミド酸エステルとo−キノンジアジド化合物を含む組成物(特許文献6参照)が提案されている。
【0005】
しかし、これらのポジ型感光性樹脂組成物は、フェノールノボラック樹脂とキノンジアジド系感光剤からなる一般的なポジ型レジスト材料と比較すると、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度差が小さいためパターンのコントラストが低く、結果として低感度・低解像度となる問題があった。また、これらの材料は表面保護膜又は層間絶縁膜として膜厚を厚く形成すると露光感度が低くなり、半導体体素子の高密度、高信頼性を達成する上で実用上の問題があった。これらの問題を改良した感光性ポリイミド前駆体組成物が種々提案されている(例えば、特許文献7、8参照)が、いずれも高い露光感度が得られるものの満足できるパターンのコントラストが得られず実用上の問題があった。
【0006】
ポリイミドそのものは、必ずしもアルカリに可溶ではないが、分子内にカルボキシル基を含有し、アルカリに可溶なポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を用いることができれば原理的に可能である。しかしながら、ポリアミド酸は、半導体レジスト用アルカリ現像液として用いられるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して溶解度が高すぎるために、溶解抑制剤の添加効果が不十分であり、多くの場合鮮明なパターン形成が困難である。これは、ポリアミド酸中のカルボキシル基がイオン解離しやすい(pKa値が低い)ことによる。このため、ポリアミド酸の構造になんらかの化学修飾を施し、アルカリ溶液に対する溶解性を制御する必要がある。
【0007】
ところで、近年の半導体素子の更なる高集積化、大型化が進み、封止樹脂パッケージの薄型化、小型化の要求に応えるためLOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装等の方式が採用され、これまで以上に微細加工性、機械特性、耐熱性、電気特性等に優れたポリイミド膜を形成できるポジ型ポリイミド前駆体樹脂が必要とされるようになってきており、これまでそれぞれの性能を同時に満たすようなポジ型ポリイミド前駆体樹脂の開発が強く要望されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭54−145794号公報
【特許文献2】特開昭49−115541号公報
【特許文献3】特開平3−87745号公報
【特許文献4】特開昭60−37550号公報
【特許文献5】特開平4−168441号公報
【特許文献6】特開平3ー11546号公報
【特許文献7】特願平2−237221号公報
【特許文献8】特願平8−354657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、透明性に優れ、微細のパターン形成能を有し、且つ低誘電率及び高耐熱性を併せ持つポリイミド膜を形成することのできるポジ型感光性樹脂組成物及びポジ型パターンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、後述する特定のイミド基含有ポリイミド前駆体を含有するポジ型感光性樹脂組成物と、それを用いるポジ型のパターン製造方法を採用することによって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、以下のイミド基含有ジアミン、該イミド基含有ポリイミド前駆体、該前駆体を含有してなるポジ型ポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型パターンの製造方法及び電子部品を提供するものである。
【0012】
項1 一般式(1)
【化2】

[式中、Rは、芳香族基、脂肪族基及び脂環族基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基を表す。]
で表されるシクロヘキサンテトラカルボキシジイミド構造単位を含むイミド基含有ジアミン。
【0013】
項2 一般式(1)で表されるイミド基含有ジアミンを用いて得られる一般式(2)
【化3】

[式中、Aは、4価の脂環族基、Rは、2価の脂環族基を表し、Rは、一般式(1)と同義である。Xは、繰り返し単位のモル比率を表し、0.05〜0.95の範囲である。]
で表されるイミド基含有ポリイミド前駆体。
【0014】
項3 一般式(2)において、Rが脂環族基及び芳香族基からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項2に記載のイミド基含有ポリイミド前駆体。
【0015】
項4 一般式(2)において、Rが、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)アミン又は2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから2個のアミノ基を除いて得られる2価の有機基である上記項3に記載のイミド基含有ポリイミド前駆体。
【0016】
項5 上記項2〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体及び有機溶媒を含有してなるイミド基含有ポリイミド前駆体ワニス。
【0017】
項6 前記ポリイミド前駆体ワニスをイミド化反応させて得られる一般式(3)
【化3】

[式中、A、R1、及びXは、一般式(2)と同義である。]
で表されるポリイミド。
【0018】
項7 上記項5に記載のイミド基含有ポリイミド前駆体ワニスに、更に、光酸発生剤を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物。
【0019】
項8 前記光酸発生剤がジアゾナフトキノン系感光剤である上記7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0020】
項9 前記ポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥する工程、露光する工程、現像する工程及び加熱処理してポリイミド膜のパターンを形成するイミド化熱処理工程含むことを特徴とするポジ型パターンの製造方法。
【0021】
項10 前記ポリイミド膜が、上記項6に記載のポリイミドである上記項9に記載のポジ型パターンの製造方法。
【0022】
項11 下式(1)に従い算出したポリイミド膜の誘電率(ε)が2.7以下である上記項10に記載のポジ型パターンの製造方法。
ε=1.1×nav(1MHz) (1)
[式中、navは、平均屈折率を表す。尚、平均屈折率は、ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ、波長589nm)で測定し 、これらの屈折率から平均屈折率nav(nav=(2nin+nout)/3)を求めた。]
【0023】
項12 上記項9〜11のいずれかに記載の製造方法により得られるポジ型パターンをポリイミド膜として有してなる電子部品。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アルカリ現像可能で、その硬化膜が透明性に優れ、微細パターン形成能を有し、且つ低誘電率及び高耐熱性を併せ持つポリイミド膜を形成することのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。特に、半導体素子の保護膜、液晶配向膜、集積回路の層間絶縁膜など様々な電子デバイスに利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[イミド基含有ジアミン]
本発明のイミド基含有ジアミンは、一般式(1)
【化2】

[式中、Rは、芳香族基、脂肪族基及び脂環族基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基を表す。]
で表されるシクロヘキサンテトラカルボキシジイミド構造単位を含むことを特徴とする。
【0026】
このようなイミド基含有ジアミンは、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(例えば、特開2003−286222号公報、特開平8−325196号公報、特開平8−325201号公報)と芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン成分とを以下の方法(1)、(2)に従いイミド化することにより容易に製造することができる。尚、本明細書において、Rは、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又は脂環族ジアミンから2個のアミノ基を除いて得られる2価の有機基を指す。
【0027】
(1)ジアミン成分が芳香族ジアミンの場合、予め芳香族ジアミンをN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の極性有機溶媒に室温で溶解させ、この溶液に1/4〜1/2倍モルの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物粉末を徐々に加え、窒素バブリングしながら150〜200℃で30分〜数時間加熱還流することにより容易に目的物を得ることができる。
【0028】
(2)ジアミン成分が脂肪族又は脂環族ジアミンの場合、脂肪族又は脂環族ジアミンをN−メチル−2−ピロリドンやN,N−ジメチルアセトアミド等の極性有機溶媒に室温で、又は必要に応じて加熱して溶解させ、次に、この溶液を150〜200℃に加熱後、この溶液に、同一の溶媒に溶解した1/4〜1/2倍モルの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を滴下して攪拌することにより、塩形成を抑制しながら目的物を得ることができる。
【0029】
これらの反応溶液中に残存する過剰のジアミン成分は、これを溶解し、目的物は溶解しない溶媒で洗浄することにより容易に除去することができ、その後十分乾燥するだけで重合に供することのできるイミド基含有ジアミンが得られる。さらに必要に応じて、再結晶等の精製を行ってもよい。
【0030】
芳香族ジアミンとして、具体的には、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が挙げられ、なかでもフッ素含有ジアミンが好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上併用することもできる。
【0031】
脂肪族ジアミン、脂環族ジアミンとしては、具体的には、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,4]デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種類以上併用することもできる。
【0032】
上記イミド基含有ジアミンの製造に用いられる極性溶媒としては、具体的には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テロラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種類以上混合して用いることもできる。
【0033】
[イミド基含有ポリイミド前駆体]
本発明のイミド基含有ポリイミド前駆体は一般式(2)
【化3】

[式中、Aは、4価の脂環族基、Rは、2価の脂環族基を表し、Rは、一般式(1)と同義である。Xは、繰り返し単位のモル比率を表し、0.05〜0.95の範囲である。]
で表される2種の繰り返し構造単位を有するポリアミド酸である。
【0034】
本明細書において、Aは、脂環族テトラカルボン酸無水物から4個のカルボキシル基を除いて得られる4価の有機基、Rは芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又は脂環族ジアミンから2個のアミノ基を除いて得られる2価の有機基、及びRは、脂環族ジアミンから2個のアミノ基を除いて得られる2価の有機基を指す。
【0035】
一般式(2)で表される構造中のAをもつ酸成分としては、脂環族テトラカルボン酸二無水物であれば特に限定されないが、例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物等、並びに3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸等の核水素化物の脂環族テトラカルボン酸二無水物が挙げられ、特に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらは単独で又は混合して使用することができる。
【0036】
本発明の効果を損なわない範囲で上記脂環族テトラカルボン酸二無水物以外に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等を併用することができる。酸成分としてこれらを単独で又は2種類以上用いてもよい。
【0037】
一般式(2)で表される構造中のRをもつジアミン成分としては、一般式(1)で表されるイミド基含有ジアミンにおけるRと同義であり、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又は脂環族ジアミンが挙げられ、なかでも芳香族ジアミン、脂環族ジアミンが好ましく、特に、露光光線、例えばi線(365nm)の透過率が80〜90%以上と極めて高く、生産性が著しく向上する点で脂環族ジアミンが特に好ましい。具体的には、脂環族ジアミンとして、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)アミン等が挙げられ、芳香族ジアミンとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン等が挙げられる。
【0038】
一般式(2)で表される構造中のRをもつジアミン成分としては、脂環族ジアミンであれば特に限定されないが、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,3−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,4]デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、特に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が好ましい。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0039】
本発明の効果を損なわない範囲で上記脂環族ジアミン以外に、芳香族ジアミン及び/又は脂肪族ジアミンを併用することができる。芳香族ジアミンとしては、具体的には、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上用いることもできる。
【0040】
また、脂肪族ジアミンとしては、具体的には、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等を挙げられる。またこれらを2種類以上用いることもできる。
【0041】
本発明に用いられるポリアミド酸である一般式(2)で表されるイミド基含有ポリイミド前駆体は、その製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法で得ることができる。例えば、不活性ガス雰囲気下、予めイミド基含有ジアミン及び有機基Rをもつジアミンを含有するジアミン成分を極性有機溶媒に溶解し、この溶液にジアミン成分の総量と等モル又はほぼ等モルのA骨格をもつ酸二無水物成分(粉末)を徐々に添加し、室温で1〜24時間攪拌して行う。重合初期に、酸二無水物成分と脂環族ジアミンとの塩が生成するが、それほど強固ではなく、室温で撹拌を続けることにより塩が徐々に溶解し、透明・均一で高分子量のイミド基含有ポリイミド前駆体溶液が得られる。この際、モノマー濃度としては、特に限定されないが作業性と反応効率の点から5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%の範囲である。
【0042】
上記重合反応において、反応温度、反応時間、基質(原料)使用量等の反応条件を選ぶことでイミド基含有ポリイミド前駆体の分子量を適宜、調整することができる。このように重合反応させた後、得られた反応液を、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水等の貧溶剤中で撹拌洗浄し、次いで減圧乾燥することにより、上記一般式(2)で示されるイミド基含有ポリイミド前駆体が得られる。通常は、上記反応液のままのもの、又は必要に応じて上記反応で用いた溶媒と同一の溶媒で希釈した溶液をイミド基含有ポリイミド前駆体ワニスとして用いることが好ましい。
【0043】
また、一般式(2)中のXは、0.05〜0.95であり、更に好ましくは 0.1〜0.90であり、この範囲に調整することにより重合時のゲル化を抑制できる点で好ましい。
このXは、実際の繰り返し数を示すものではなく、モル比率を表すものであり、本発明の樹脂はランダム共重合物もしくはブロック共重合物である。
【0044】
重合に用いられる極性有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホオキシド、γ-ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン-ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テロラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒等の溶媒が使用可能である。またこれらの溶媒は単独で又は2種類以上混合して用いてもよい。
【0045】
こうして得られるイミド基含有ポリイミド前駆体の分子量には、特に制限はないが、一般に、N−メチル−2−ピロリドン溶媒中、濃度0.5g/dl、30℃で測定した固有粘度の値が0.1〜3.0dl/gである。
【0046】
[イミド基含有ポリイミド前駆体ワニス]
本発明に用いられるイミド基含有ポリイミド前駆体ワニスは、上記イミド基含有ポリイミド前駆体に有機溶媒を含有してなることを特徴とする。このイミド基含有ポリイミド前駆体ワニスは、上記イミド基含有ポリイミド前駆体の重合反応終了後、反応液はそのままイミド基含有ポリイミド前駆体ワニスとして用いることができる。更に、必要に応じて、該反応液をメタノール等の貧溶媒中に投入することにより再沈させ、これを精製、濾過、乾燥してイミド基含有ポリイミド前駆体を得、再度有機溶媒に溶解させワニスとすることもできる。このとき使用する有機溶媒としては、重合に用いられた極性有機溶媒が挙げられ、これらの溶剤は単独で又は2種以上混合して用いることができる。また、この場合のポリアミド樹脂の含有量は、1〜50重量%、特に5〜30重量%の範囲とすることが好ましい。
【0047】
上記イミド基含有ポリイミド前駆体ワニスから公知の方法に従って一般式(3)で表されるポリイミドを製造することができる。例えば、イミド化反応の方法としては、(1)前記ワニスを少量の共沸溶剤の存在下で100〜250℃に加熱し、生成水を共沸により系外に留去させる方法、(2)前記ワニスに無水酢酸等の脱水作用のある化合物を用いる方法等が挙げられる
【0048】
上記共沸溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等が例示され、これらは単独で又は混合系として用いることができる。その使用量としては、全溶剤量に対して通常1〜30重量%程度、好ましくは5〜10重量%程度である。
【0049】
反応時間としては、通常0.5〜24時間行うのが好ましい。
【0050】
このようにして得られたポリイミド樹脂溶液から、加熱乾燥や貧溶剤による再沈殿などの公知の方法で溶剤を取り除くことにより、本発明のポリイミド共重合体が得られる。
【0051】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上記イミド基含有ポリイミド前駆体ワニスに、光酸発生剤(特に、ジアゾナフトキノン系感光剤)、必要に応じて他の添加剤を配合して得られる。
【0052】
本発明に用いられる光酸発生剤は、感光剤であり、光により酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、具体的には、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N‐オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルなどが用いられる。このような化合物は必要に応じて2種類以上併用したり、他の増感剤と組合せて使用することができる。
【0053】
なかでも、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等のジアゾナフトキノン系感光剤が好ましく、具体的には、1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する以下の化合物が例示される。
【0054】
【化4】

[式中、Qは水素原子又は以下に示す化合物であり、
【0055】
【化5】

同時に水素原子となることはない。]
【0056】
上記ジアゾナフトキノン系化合物の配合量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、前記イミド基含有ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常1〜100重量部、5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。その配合量が1重量部未満だと露光時の感度が不十分となり、照射量を増やす必要がある。一方、100重量部を越えると感度が大幅に低下するだけでなく、フィルムの機械的強度が著しく低下する。更にイミド化後の膜減り等の問題が発生し好ましくない。
【0057】
上記ポジ型感光性樹脂組成物には、使用目的やその使用用途に応じて、適宜、従来公知の酸化安定剤、末端封止剤、フィラー、シランカップリング剤、光重合開始剤および増感剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない程度で配合してもよい。
【0058】
[ポジ型パターンの製造方法]
本発明の感光性樹脂組成物を用いてポジ型パターンの製造方法は、ポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥する工程、露光する工程、現像する工程及び加熱処理してポリイミド膜のパターンを形成するイミド化熱処理工程を含むことを特徴とする。
【0059】
半導体デバイスに適用する場合を例に説明する。まず、この感光性樹脂組成物をスピンコーターあるいはバーコーターを用いて銅、シリコンあるいはガラス等の基板上に塗布、遮光下40〜100℃で0.1〜3時間温風乾燥して、膜厚1〜5μmの感光性イミド基含有ポリイミド前駆体膜を得る。上記製膜工程は100℃以下、好ましくは80℃以下で行うことが好ましい。この温度を超えるとジアゾナフトキノン系感光剤が熱分解し易くなり好ましくない。
【0060】
上記塗膜中に含まれる残留溶媒を除去するために、80〜100℃で1〜30分間プリベイクしてもよいが、塗膜を1〜5分間水中に浸漬することも効果的である。残留溶媒は現像時の膜の膨潤やパターンの崩れを招く恐れがあり、鮮明なパターンを得るためには十分除去しておくことが好ましい。
【0061】
次に、残留溶媒を除去した塗膜にフォトマスクを介して高圧水銀灯のi線を室温で10秒〜1時間照射する。i線の他にg線、X線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200nm〜500nmの波長のものが好ましい。次に、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%のアルカリ水溶液を用いて室温で10秒〜10分間現像して照射部を溶解除去し、更に純水でリンス洗浄する。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの三級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩などのアルカリ水溶液、および、これに水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。
【0062】
現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が用いられる。これによって、基板上には所望するポジ型パターンが形成される。
【0063】
さらに、この塗膜を、例えば、150〜430℃、好ましくは200〜400、特に250〜350℃で熱処理を行うことによって、ポリイミド前駆体がイミド化され、膜特性に優れたポリイミド膜が形成される。この熱処理条件としては、空気下、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、特に、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0064】
イミド化反応は脱水環化試薬を用いて化学的に行うこともできる。即ちピリジンあるいはトリエチルアミンの如き塩基性触媒を含む無水酢酸中に、基板上に形成されたイミド基含有ポリイミド前駆体膜を室温で1分〜数時間浸漬する方法によってもポリイミド膜を得ることができる。
【0065】
こうして得られた前記ポリイミド膜は、一般式(3)で表される構造を有し、透明性に優れ、且つ低誘電率及び高耐熱性を有しているポリイミドである。
【0066】
特に、下式(1)に従い算出したポリイミド膜の誘電率(ε)が2.7以下ポリイミドが好ましい。
ε=1.1×nav(1MHz) (1)
[式中、navは、平均屈折率を表す。尚、平均屈折率は、ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ、波長589nm)で測定し 、これらの屈折率から平均屈折率nav(nav=(2nin+nout)/3)を求めた。]
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、いずれも従来の感光性樹脂組成物が使用されてきたと同様の分野において利用できる。具体的には、半導体装置や多層配線板などの絶縁膜として電子部品に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板などの電子部品に使用することができ、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜などの形成に使用することができる。本発明の半導体装置は、前記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、これに限定されるものではない。尚、各例における分析値は以下の方法により求めた。
(1)固有粘度:0.5重量%のポリイミド前駆体溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(2)ガラス転移温度:動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークから求めた。
(3)線熱膨張係数:熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
(4)カットオフ波長(透明性):分光光度計により200nmから900nmの可視・紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、透明性が良好であることを意味する。
(5)複屈折:ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
(6)誘電率:ポリイミド膜の平均屈折率[nav=(2nin+nout)/3]に基づいて、次式により1MHzにおける誘電率(ε)を算出した。ε=1.1×nav
(7)赤外吸収スペクトルの測定:JASCO TF/IR−5300を用いて測定した。
【0070】
[実施例1]
(イミド基含有ジアミンの製造)
よく乾燥した攪拌機付三口フラスコ中、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン22mmol(7.045g)をN,N−ジメチルアセトアミド28mlに室温で溶解させ、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物粉末10mmol(2.242g)を攪拌下徐々に添加した。室温で1時間攪拌し、均一な溶液を得た。更に窒素中170℃で3時間還流し、均一な溶液を得た。この反応溶液を2Lの水中に徐々に滴下して沈殿物を濾別し、エタノール水溶液(50容量%)で洗浄後、60℃で12時間真空乾燥して、白色粉末を得た。赤外吸収スペクトル(図1)より目的のイミド基含有ジアミンが得られたことが確認された。
【0071】
(イミド基含有ポリイミド前駆体の重合およびポリイミド膜特性の評価)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)30mmol(6.311g)および実施例1に記載のイミド基含有ジアミン10mmol(8.286g)入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド96mLに溶解した後、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物粉末40mmol(7.845g)を徐々に加えた。室温で48時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定したイミド基含有ポリイミド前駆体の固有粘度は1.05dL/gであった。この重合溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して、膜厚11μmの透明で靭性のあるイミド基含有ポリイミド前駆体膜を得た。カットオフ波長は293nm、高圧水銀灯のi線の波長(365nm)での透過率は90%と、極めて高い透明性が示された。イミド基含有ポリイミド前駆体膜を基板上、真空中250℃で1時間、更に350℃で1時間、段階的に昇温して熱イミド化を行い、膜厚10μmの透明で靭性のあるポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の物性は以下の通りである。平均屈折率から見積もられた誘電率は2.65と極めて低誘電率であった。また熱機械分析により測定された線熱膨張係数は63ppm/Kと高い値であった。これは複屈折値(Δn=0.0066)から判断して、ポリイミド鎖が殆ど面内配向していない事に起因している。動的粘弾性測定から得られたガラス転移点は340℃であった。このように本ポリイミド膜は、低熱膨張特性は示さないが、低誘電率・高ガラス転移温度を満足している。イミド基含有ポリイミド前駆体膜およびポリイミド膜の赤外線吸収スペクトル(透過モード)を図2、図3にそれぞれ示す。
【0072】
(ポジ型パターンの製造方法)
上記イミド基含有ポリイミド前駆体のN,N−ジメチルアセトアミド溶液に、ジアゾナフトキノン系感光剤として2,3,4−トリス(1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−5−スルフォキシ)ベンゾフェノンを、イミド基含有ポリイミド前駆体の実量に対して30重量%になるように添加し、溶解させた。これをシランカップリング剤で表面処理したシリコンウエハ上に塗布し、60℃で2時間、熱風乾燥器中で乾燥させて、膜厚4〜5μmの感光性フィルムを得た。これを80℃で10分間プリベイク後、フォトマスクを介し、落射式高圧水銀ランプのi線を干渉フィルターを通して5分間照射した。照射光強度はおよそ3mW/cmである。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.1重量%水溶液にて25℃で1〜6分間現像を行い、水でリンス後、60℃で数分乾燥した。真空中250℃で1時間、更に350℃で1時間、段階的に昇温して熱イミド化を行い、線幅20μmの鮮明なパターンが得られた。
【0073】
[実施例2]
(イミド基含有ジアミンの製造)
よく乾燥した攪拌機付三口フラスコ中、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)22mmol(4.628g)をN,N−ジメチルアセトアミド15mLに溶解させ、窒素雰囲気中で170℃に加熱した。この溶液に、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物10mmol(2.242g)を含むN,N−ジメチルアセトアミド溶液10mLを徐々に滴下し、2時間攪拌した。滴下直後は白色の塩の生成が見られたが、塩は速やかに溶解し、透明で均一な溶液を得た。反応溶液を2Lの水中に滴下し、沈殿物を濾別し、メタノール水溶液(50容量%)で洗浄を繰り返して、過剰の4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)を除去した。60℃で12時間真空乾燥して、白色粉末を得た。赤外吸収スペクトル(図4)より目的のイミド基含有ジアミンが得られたことが確認された。
【0074】
(イミド基含有ポリイミド前駆体の重合およびポリイミド膜特性の評価)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン) 30mmol(6.311g)および実施例1に記載のイミド基含有ジアミン10mmol(8.286g)を入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解した後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物粉末40mmol(8.967g)を徐々に加えた。室温で72時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定したイミド基含有ポリイミド前駆体の固有粘度は0.396dL/gであった。この重合溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して膜厚15μmの透明なイミド基含有ポリイミド前駆体を得た。カットオフ波長は293nm、高圧水銀灯のi線の波長(365nm)での透過率は91%と、極めて高い透明性が示された。イミド基含有ポリイミド前駆体膜を基板上で真空中250℃で1時間、更に350℃で1時間、段階的に昇温して熱イミド化を行い、膜厚10μmの透明で靭性のあるポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の物性は以下の通りである。平均屈折率から見積もられた誘電率は2.59と極めて低誘電率であった。また熱機械分析により測定された線熱膨張係数は60ppm/Kであった。これは複屈折値(Δn=0.0013)から判断して、ポリイミド鎖が殆ど面内配向していない事に起因している。ガラス転移点は301℃であった。このように本ポリイミド膜は低誘電率・高ガラス転移温度を満足している。
【0075】
(ポジ型パターンの製造方法)
上記イミド基含有ジアミンを用いて、実施例1と同様な方法で、イミド基含有ポリイミド前駆体を重合した。実施例1に記載した方法に従い、感光剤含有ポリアミド酸膜を作製し、露光後、現像を行ったところ、線幅20μmの鮮明なパターンが得られた。
【0076】
[比較例1]
イミド基含有ジアミンを使用せず、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)と1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物より固有粘度1.62dL/gのポリアミド酸を重合した。実施例1に記載した方法に従い、感光剤含有ポリアミド酸膜を作製し、露光後、現像を試みたが、露光部と未露光部との溶解度差が殆ど見られず、膜全体が溶解してパターン形成不能であった。これはこのポリアミド酸のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解度が高すぎたためである。
【0077】
[比較例2]
同様にイミド基含有ジアミンを使用せず、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)と1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用いて得られたポリアミド酸(固有粘度0.40dL/g)も比較例1と同様な理由により、パターン形成不能であった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は実施例1に記載のイミド基含有ジアミンの赤外線吸収スペクトルである。
【図2】図2は実施例1に記載のポリイミド前駆体膜の赤外線吸収スペクトルである。
【図3】図3は実施例1に記載のポリイミド膜の赤外線吸収スペクトルである。
【図4】図4は実施例2に記載のイミド基含有ジアミンの赤外線吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは、芳香族基、脂肪族基及び脂環族基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の有機基を表す。]
で表されるシクロヘキサンテトラカルボキシジイミド構造単位を含むイミド基含有ジアミン。
【請求項2】
一般式(1)で表されるイミド基含有ジアミンを用いて得られる一般式(2)
【化2】

[式中、Aは、4価の脂環族基、Rは、2価の脂環族基を表し、Rは、一般式(1)と同義である。Xは、繰り返し単位のモル比率を表し、0.05〜0.95の範囲である。]
で表されるイミド基含有ポリイミド前駆体。
【請求項3】
一般式(2)において、Rが脂環族基及び芳香族基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のイミド基含有ポリイミド前駆体。
【請求項4】
一般式(2)において、Rが、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)又は2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから2個のアミノ基を除いて得られる2価の有機基である請求項3に記載のイミド基含有ポリイミド前駆体。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体及び有機溶媒を含有してなるイミド基含有ポリイミド前駆体ワニス。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体ワニスをイミド化反応させて得られる一般式(3)
【化3】

[式中、A、R1、及びXは、一般式(2)と同義である。]
で表されるポリイミド。
【請求項7】
請求項5に記載のイミド基含有ポリイミド前駆体ワニスに、更に、光酸発生剤を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
光酸発生剤がジアゾナフトキノン系感光剤である請求項7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥する工程、露光する工程、現像する工程及び加熱処理してポリイミド膜のパターンを形成するイミド化熱処理工程含むことを特徴とするポジ型パターンの製造方法。
【請求項10】
前記ポリイミド膜が、請求項6に記載のポリイミドであるポジ型パターンの製造方法。
【請求項11】
下式(1)に従い算出したポリイミド膜の誘電率(ε)が2.7以下である請求項10に記載のポジ型パターンの製造方法。
ε=1.1×nav(1MHz) (1)
[式中、navは、平均屈折率を表す。尚、平均屈折率は、ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ、波長589nm)で測定し 、これらの屈折率から平均屈折率nav(nav=(2nin+nout)/3)を求めた。]
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法により得られるポジ型パターンをポリイミド膜として有してなる電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−70096(P2006−70096A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252578(P2004−252578)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】