説明

インゴットブロックの自動クランプ方法

【課題】円筒状サファイアインゴットブロックの外周面を円筒研削加工する際、研削屑の発生量を減少させたい。
【解決手段】 オートローダー機器13でワークをクランプ装置7a,7bに自動クランプさせる際、一旦ワークをクランプさせた後、クランプされたワークの外周面高さを高さ測定機器HSで測定し、最大高さ(H)と最小高さ(H)の差の半分の値(H−H)/2だけワークのC軸心位置を移動させる再クランプを行った後にカップホイール型砥石10gを用いてワークのインフィード円筒研削加工を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートローダー(自動搬入機器)のハンド爪を用いてインゴットブロックを把持した後、主軸台と心押台よりなるクランプ装置へインゴットブロックを搬入し、ついで、インゴットブロックのC軸両端を支架する際のインゴットブロックの自動クランプ方法に関する。クランプ装置に正しく支架されたインゴットブロックは、回転するカップホイール型砥石とインゴットブロックの相対的な左右方向の移動により表面を0.5〜8mm厚み研削加工により面取りされ、表面が平滑なインゴットブロックとされる。
【背景技術】
【0002】
DRAM、SOI基板、太陽発電基板等の単結晶シリコン基板、LED基板用のサファイア基板、GaAs基板等の素材の円柱状インゴットブロックは、チョクラルスキー法(CZ法)により育成した単結晶シリコンインゴット、またはベルニューイ法で育成した化合物半導体インゴットの結晶方向をX線解析装置で測定し、必要により円柱状ロッドを作成し、この円柱状インゴットを主軸台と心押台よりなるクランプ装置に支架した状態でインゴットの結晶方向をX線解析装置で測定し、円柱状インゴットのC軸方向に直角な結晶方向にダイソウや内周刃やワイヤーソー等のスライシング装置で250mm、500mm、1,000mmの長さに切断され、円柱状インゴットブロックの面取り加工メーカーあるいは半導体基板製造メーカーに供給されている。円柱状インゴットブロックの直径は、2インチ、4インチ、6インチ、8インチ、12インチのものが市場より入手できる。
【0003】
円柱状インゴットブロックは、インゴットブロックのワイヤーカットソウによる厚み200〜900μmの厚みにスライス加工する際のインゴットブロック外周縁の割れや欠け等を防止するために外周部に面取り加工が施される。面取り加工方法としては、エッチング方法、CMP研磨方法、カップホイール型砥石を用いる円筒研削方法が実施されている。
【0004】
特開2009−233819号公報(特許文献1)は、上記X線解析装置で結晶方向を検出した単結晶シリコンインゴットに結晶方向をマーク付けし、このマーク付けした単結晶シリコンインゴットブロックを、
主軸台と心押台よりなるクランプ装置、前記単結晶シリコンインゴットブロックの回転軸(C軸)方向(左右方向)に移動可能な円筒研削砥石と、前記単結晶インゴットブロックにオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行う砥石と、結晶線を基準にしてマークを付された前記単結晶インゴットの側面の画像を取り込むカメラと、前記取り込んだ画像を処理するコントローラーから成り、前記マークの位置を認識して記憶する画像処理手段と、前記単結晶インゴットの結晶方位をX線回折測定するためのX線回折装置とを具備した単結晶インゴットの円筒研削装置の前記クランプ装置で挟持し、
前記画像処理手段により前記予め付されたマークの位置を記憶し、前記クランプ装置により前記インゴットを軸周りに回転させながら前記円筒研削ホイールを前記インゴットの回転軸方向に移動させて前記インゴットの側面を円筒研削した後、
前記X線回折装置により前記インゴットの結晶方位をX線回折測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行う単結晶インゴットブロクの円筒研削装置を提案する。
【0005】
円柱状インゴットブロックは、インゴットブロックのワイヤーカットソウによる厚み200〜900μmの厚みにスライス加工する際のインゴットブロック外周縁の割れや欠け等を防止するために外周部に面取り加工が施される。面取り加工方法としては、エッチン
グ方法、CMP研磨方法、カップホイール型砥石を用いる円筒研削方法が実施されている。
【0006】
表面が平滑に面取り加工された円柱状インゴットブロックは、その用途が太陽光発電板であるときは、主軸台と心押台よりなるクランプ装置に円柱状インゴットブロックのC軸両端を支架し、回転するカップホイール型砥石とインゴットブロックの相対的な左右方向の移動により表面を0.5〜8mm厚み研削加工により面取りされ、表面が平滑なインゴットブロックとされる。
【0007】
本願特許出願人は、特願2010−251483号明細書(特許文献2)にて、
a)機枠(ベース)上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル
b)このワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構、
c)前記クランプ機構に支架されたワーク(角柱状インゴット)を載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブルを正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、
e)前後移動可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた第一研削ステージ、
f)前記第一研削ステージの右横側に平行に設けた、前後移動可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた第二研削ステージ、
g)上記第二研削ステージの右横側であって前記ワークテーブルの前側に位置するハウジング材にワークを前記クランプ機構への移出入を可能とする開口部を備えるロードポート、
および、
h)上記ロードポートに対向する前記ワークテーブルの後側に、砥石車を有する砥石軸をワークテーブルの左右方向に平行であって、この砥石軸をその軸芯が前後方向に移動可能にツールテーブル上に設けたRコーナー部研削ステージ、
を設けたことを特徴とする面取り加工装置を提案した。
【0008】
特開2009−55039号公報(特許文献3)は、又、円柱状シリコンブロックをバンドソウで面取りして角柱状シリコンブロックとした後、砥粒径が80〜60μmのカップホイール型砥石で側平面を粗研削加工し、ついで、砥粒径が3〜40μmのカップホイール型砥石で側平面を仕上げ研削加工し、さらに表面をエッチング処理したのち、スライシング加工して角状ウエハを製造する方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−233819号公報
【特許文献2】特願2010−251483号明細書(非公開)
【特許文献3】特開2009−55039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
麻生首相のアース・グリーン・インダストリー政策およびオバマ大統領のグリーン・ニューデイル政策の一環から太陽光発電板、LED基板が注目され、円柱状シリコンブロックやサファイア円柱状インゴットブロックの供給不足が問題視され、2010年後半にお
いて研削屑の出が少ない面取り加工装置の出現が半導体基板業界より望まれている。
【0011】
特許文献1記載の円筒研削装置を利用する半導体基板メーカーは、円柱状インゴットブロックの面取り加工代(t)を0.5〜1.5mmと少なく面取り加工プログラムに設定し、この加工プログラムをコントローラー(数値制御装置)のメモリー部に記憶させ、加工業者が前記円柱状インゴットブロックのC軸両端をクランプ装置に挟持させたのち、円柱状インゴットブロックの面取り加工作業者は金槌で円柱状インゴットブロックを叩いてクランプ装置のワーク支持軸に対する円柱状インゴットブロックのC軸位置を研削砥石の研削砥石開始位置高さに合わせてから、研削砥石による円柱状インゴットブロックの面取り加工を開始している。
【0012】
この円柱状インゴットブロックのクランプ装置への挟持(支架)位置の補正方法は、再生に利用される研削屑の発生量が減量される利点がある。しかし、金槌で円柱状インゴットブロックを叩く手作業で挟持位置が補正されるので、研削面取り加工された円柱状インゴットブロックの中には、C軸補正位置が正確ではなく、外周寸法が不足の円柱状インゴットブロックが見出され、これがロス基板発生原因となるので、再生加工品として廻されるので基板生産率低下の原因となっている。例えば、サファイア基板においては、ワイヤーカット法により円柱状インゴットブロックをスライス加工した厚み0.2〜1.0mmのサファイア基板のオリフラ直角に対する結晶配位方向角度が0.5度を越えるとサファイア基板としては不良品扱いとなるからである。
【0013】
本発明者等は、前記特許文献2記載のインゴットブロックの面取り加工装置で使用されるオートローダー機器およびクランプ装置を利用し、インゴットブロック(ワーク)のクランプ装置への自動クランププログラムを変更してワークをオートローダー機器のロボット爪で把持し、クランプ装置に搬入して支架させ、支架させたワークの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を測定し、この2点の外周位置高さの差(H−H)の1/2量だけインゴットブロックのC軸位置の前記クランプ装置の支持軸への挟持位置を補正することにより不良率を低減させることができると想定し、本発明に到った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1は、オートローダー機器のロボット爪で直径がRmm、研削取り代(t)設定がtmm厚みの円筒状インゴットブロック(ワーク)の中央部を把持し、
前記ロボット爪に把持されたワークをクランプ装置を構成する主軸台と心押台の間へ搬入し、
前記心押台を前進させて前記ワークの長手方向(C軸方向)の両端を前記クランプ装置で支架させた後、オートローダー機器のロボット爪をワークより遠ざけ、クランプ装置に支架させたワークの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を高さ測定機器を用いて前記ワークを主軸台でC軸周りに360度回転させながら測定し、
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値と最小値の差(H−H)の1/2量を算出し、
次いで、前記ワークの中央を前記オートローダー機器のロボット爪で把持した後、クランプ装置の心押台を後退させてワークの挟持を開放し、
前記オートローダー機器のロボット爪に把持されたワークを前記の算出された(H−H)の1/2量だけインゴットブロックのC軸位置を移動させる前記クランプ装置の支持軸(C軸)への補正を行った後、前記心押台を前進させて前記クランプ装置に支架させるとともに、ロボット爪をワークより遠ざけ、
支架させた前記ワークの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を高さ測定機器により前記ワークを主軸台でC軸周りに360度回転させながら測定し、
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)が共に(R/2−t)mm以上であればワークのクランプ装置への
自動クランプ終了の信号を発信し、次工程のカップホイール型砥石による円筒状インゴットブロックの面取り研削加工を開始する、
前記測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)の少なくとも1点の外周位置高さの値が(R/2−t)mm未満であればワークのクランプ装置への自動クランプ不良の信号を発信し、前記オートローダー機器のロボット爪でワークの中央部を把持した後、前記心押台を後退させてワークの支架を開放し、次いでロボット爪を移動させてワークをクランプ装置外へ搬送する、
ことを特徴とするインゴットブロックの自動クランプ方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオートローダー機器を利用する円筒状インゴットブロックの自動クランプ方法は、研削取り代(t)が小さいインゴットブロックであってもクランプ装置上で、インゴットブロックの砥石による面取り加工の可能性有無を評価できるので、不良インゴットブロックに研削加工の機会を与えない。また、研削取り代(t)が小さいので、面取り加工屑の発生量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は特許文献2に記載の面取り加工装置を正面左側斜め約15度の角度から見た斜視図である。
【図2】図2は特許文献2に記載の面取り加工装置の平面面である。
【図3】図3は特許文献2に記載の面取り加工装置の右側面である。
【図4】図4は特許文献2に記載の面取り加工装置にインゴットブロックをクランプ装置へクランプする状態を示す平面図で、オートローダー機器が省略されている。
【図5】図5はインゴットブロックをクランプ装置へ自動クランプするステップ図である。
【図6】図6はインゴットブロックをクランプ装置へ自動クランプするフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
オートローダー機器13とクランプ装置7を説明するため、図1、図2、図3および図4に示される特許文献2記載の面取り加工装置1について説明する。この面取り加工装置1は、機枠(ベース)2に左右方向に延びて敷設された一対の案内レール3,3上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル4を設けてある。このワークテーブル4の左右往復移動は、サーボモータ5による回転駆動をボールネジ6が受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台(図示されていない)が左方向または右方向に前進することにより、この固定台表面にワークテーブル4の裏面が固定されているワークテーブル4が左方向または右方向に前進する。ワークテーブル4の左方向または右方向の前進は、サーボモータ5の回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0018】
このワークテーブル4上に左右に分離して搭載された主軸台7aと心押台7bの一対よりなるクランプ機構7が搭載されている。よって、ワークテーブル4の左方向または右方向の移動に付随してこのクランプ機構7も左方向または右方向に移動し、クランプ機構7の主軸台センター支持軸7aと心押台センター支持軸7bにより支架(挟持)されて宙吊り状態となったワーク(円柱状または角柱状インゴットブロック)wがRコーナー部研削ステージ9、第一研削ステージ10、第二研削ステージ11、またはロードポート8位置へと移動することが可能となっている。
【0019】
クランプ装置7は特許文献1で示されるように公知のチャック機構であり、円筒研削盤でよく使用されている。主軸台7aは主軸台センター支持軸7aをサーボモータ7aで回転させることによりワークwを360度あるいは90度回転させる機能を有する。心
押台7bは空気シリンダー7e駆動でガイドレール上を左右に移動できる移動台7b上に設けられ、ワークをクランプ機構7で支架したのち、レバーを押し下げることにより固定し、ワークテーブル4の移動により心押台7bを搭載する移動台7bが移動するのを防ぐ。
【0020】
前記Rコーナー部研削ステージ9、第一研削ステージ10、第二研削ステージ11、およびロードポート8の位置関係は、前記ワークテーブル4を正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、第一研削ステージ10、第二研削ステージ11、ロードポート8を設け、このロードポート8の背面にRコーナー部研削ステージ9が設けられる。Rコーナー部研削ステージ9、第一研削ステージ10および第二研削ステージ11は密閉カバー12で覆われている。また、ロードポート8は片手横スライド扉12aにより閉じられる。密閉カバー12で覆われた各研削ステージ9,10,11の空間には排気ダクト13が接続され、この空間内に浮遊するミストや研削屑を外部へ排出する。
【0021】
第一研削ステージ10は、サーボモータ10m,10mの回転駆動により前後移動可能なツールテーブル10t,10t上に設けられた砥石軸の一対10a,10aに軸承されたカップホイール型砥石またはリング状砥石の一対10g,10gをその研削砥石面10g,10gが相対向するようにワークテーブル4を挟んでワークテーブル4前後に対称にかつ砥石軸芯10,10が同一線上となる位置に設け、これら砥石軸10a,10aはサーボモータ10,10の回転駆動により回転される構造となっている。
【0022】
サーボモータ10m,10mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進または後退することにより、この固定台表面にツールテーブル10t,10tの裏面が固定されているツールテーブル10t,10tが前進移動または後退移動する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ10m,10mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0023】
第二研削ステージ11は、サーボモータ11m,11mの回転駆動により前後移動可能なツールテーブル11t,11t上に設けられた砥石軸の一対11a,11aに軸承されたカップホイール型砥石またはリング状砥石の一対11g,11gをその研削砥石面11g,11gが相対向するようにワークテーブル4を挟んでワークテーブル4前後に対称にかつ砥石軸芯11,11が同一線上となる位置に設け、これら砥石軸11a,11aはサーボモータ11,11の回転駆動により回転される構造となっている。
【0024】
サーボモータ11m,11mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボール
ネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進移動または後退移動することにより、この固定台表面にツールテーブル11t,11tの裏面が固定されているツールテーブル11t,11tが前進または後退する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ11m,11mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0025】
第二研削ステージ11は、前記第一研削ステージ10の右横側に平行に設けられる。即ち、両ステージ10,11の砥石軸芯10,11が平行である。
【0026】
なお、前記第一研削ステージ10で使用する砥石および前記第二研削ステージ11で使用する砥石は、左右の砥石のいずれが粗研削砥石であっても精密仕上げ研削砥石であってもよい。図では、第一研削ステージ10で使用する砥石が粗研削砥石10gであり、第二研削ステージ11で使用する砥石は精密仕上げ研削砥石11gを用いた例を示す。
【0027】
研削砥石10g,10g,11g,11gのカップホイール型砥石直径は、一辺が150mmの正方形状の太陽電池用シリコン基板用インゴットブロックを目的とするときは、240〜60mmであり、カップ砥石片の幅は3〜10mm、リング状砥石幅は5〜15mmであるのがシリコンインゴットの研削焼け防止の観点から好ましい。砥石の中心点から砥石幅外周の距離(半径)は、粗研削砥石の1個または2個と精密仕上げ研削砥石の2個は同一半径であるのが、インゴット面取り仕上げ面の平均粗さRaが良好なものとなる。また、一対の粗研削砥石10g,10gのカップホイール型砥石直径は同じであっても一方の直径が他方の直径よりも5〜20mm短くても良い。ワークが2〜6インチのサファイア基板用円柱状インゴットブロックであるときは、研削砥石10g,10g,11g,11gのカップホイール型砥石直径は、100〜240mmである。
【0028】
研削砥石10g,11gの砥粒は、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒が好ましく、結合剤(ボンド)はメタルボンド、ビトリファイドボンド、エポキシレジンボンドがよい。例えば、カップホイール型粗研削砥石10gは、例えば特開平9−38866号公報、特開2000―94342号公報や特開2004−167617号公報等に開示される有底筒状砥石台金の下部環状輪に砥石刃の多数を研削液が散逸する隙間間隔で環状に配置したカップホイール型砥石で、台金の内側に供給された研削液が前記隙間から散逸する構造のものが好ましい。このカップホイール型砥石10gの環状砥石刃の直径は、角柱状シリコンインゴットの一辺の長さの1.2〜1.5倍の直径であることが好ましい。前記カップホイール型粗研削砥石の環状砥石刃は、砥番100〜280番のダイヤモンドレジンボンド砥石、またはダイヤモンドビトリファイドボンド砥石が好ましい。また、カップホイール型精密仕上げ研削砥石11gの環状砥石刃は、砥番300〜1,200番のダイヤモンドレジンボンド砥石、ダイヤモンドビトリファイドボンド砥石、またはダイヤモンドメタルボンド砥石が好ましい。また、後述する砥石車9gとしては砥番300〜1,200番のダイヤモンド砥石車が好ましい。
【0029】
研削液としては、純水、コロイダルシリカ水分散液、セリア水分散液、SC−1液、SC−2液、あるいは、純水とこれら前記の水分散液または研削液を併用する。なお、研削液としては、環境を考慮した水処理の面から純水のみを利用するのが好ましい。
【0030】
ロードポート8は、第二研削ステージ11の右横側であってワークテーブル4の前側に位置するハウジング材にワークwを前記クランプ装置7への移出入を可能とする開口部を設けることにより形成される。
【0031】
Rコーナー部研削ステージ9は、上記ロードポート8に対向する前記ワークテーブル4の後側に、砥石車9wを有する砥石軸9aをワークテーブル4の左右方向に平行であって、この砥石軸9aの軸芯9を前後方向に移動可能にツールテーブル9t上に設けた構造を採る。
【0032】
砥石軸9aの回転駆動はサーボモータ9の回転駆動により行われ、ツールテーブル9tの前進後退は、サーボモータ9mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進または後退することにより、この固定台表面にツールテーブル9tの裏面が固定されているツールテーブル9tが案内レール9r,9r上を前進移動または後退移動する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ9mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0033】
図1において符号20は制御装置を、符号21は操作盤を示す。また、図2において、符号9cは研削液供給管を示す。
【0034】
図1、図2および図3に示すように、円柱状インゴットブロック(ワーク)の面取り加工装置1は、前記ワークテーブル4の前側であって前記ロードポート8と前記第二研削ステージ10との空間部にオートローダー(ワークローディング/アンローディング装置)13およびインゴットブロク3本を貯えるワークストッカー14を機枠2上に並設している。符号15は、脚立車を備えた運搬台車16のテーブル上に載置された予備のワークストッカーである。
【0035】
ワークストッカー14,15は、インゴットブロック(ワーク)3本w,w,wを45度傾斜して収納できる断面が逆2等辺三角形状のV字棚段を備え、機枠から突き出した位置決めピン16上に載置されている。
【0036】
前記オートローダー機器(ワークローディング/アンローディング装置)13は、ワークストッカー14V字棚段に保管されているインゴットブロック(ワーク)w1本を1対の爪13a,13bで挟持し、両爪を上昇させることによりワークを吊り上げ、ついで、後退、右方向への移動、下降してロードポート8前に位置させ、さらに後退させることによりこのロードポート8からワークをクランプ装置7の主軸台7aと心押台7b間へと搬送する。ワークの一端を主軸台7aのセンター支持軸7a1に当接させた後、心押台7bを空気シリンダー7eで右方向に移動させてセンター支持軸7b1に他端を当接させワークを45度V傾斜させかつ4面を宙吊り状態に支架する。ついで、前記爪13a,13bを離間させてワークの把持を開放し、ついで、両爪13a,13bを支持する固定台13fを上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪13a,13bを待機位置へと戻る。
【0037】
また、前記クランプ装置7に宙吊り状態に支架されている面取り加工および洗浄・風乾されたワークを両爪13a,13bで把持し、ついで、両爪13a,13bを支持する固定台13fを上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪13a,13bをワークストッカー14,15の空棚上方へ移動したのち、下降させてワークを前記空棚に載置下後、両爪13a,13bを離間してワークを開放したのち、前記待機位置へと両爪13a,13bを戻す。
【0038】
両爪13a,13bを支持する固定台13fの前後方向の移動は、サーボモータ13mにより回転駆動されたボールネジ13kに裏面を螺合させた固定台13fの滑走面13sをコラム13c側面に設けられた案内レール13g上を滑走させることにより行われる。両爪13a,13bを支持する固定台13fの上下方向の移動は、エアーシリンダー13pにより行われる。両爪13a,13bの離間は、図3の円内に示されるマイクロウイークエアシリンダ13eを用いて両爪13a,13bを離間させる。両爪13a,13bの僅かな昇降の微調整は、マイクロウイークエアシリンダ13lを用いて行う。両爪13a,13bの僅かな前後移動の微調整は、マイクロウイークエアシリンダ13を用いて行う。
【0039】
上記インゴットブロックの面取り加工装置1に設置されたワークストッカー14,15に保管された円柱状インゴットブロックwをオートローダー機器13のロボット爪13a,13bを用い、クランプ装置7の支持軸7a,7bに自動挟持(支架)する工程は次ぎのように行われる。
【0040】
オートローダー機器13のロボット爪13a,13bで直径がRmm、研削取り代(t)設定がtmm厚みの円筒状インゴットブロック(ワーク)の中央部を把持する。S01
【0041】
前記ロボット爪に把持されたワークを主軸台7aの支持軸7aと心押台7bの支持軸7b間へ搬入し、前記心押台7bを前進させて前記ワークwの長手方向(C軸方向)の両端を前記クランプ装置7の支持軸7a,7bで支架させる。なお、支持軸7a,7bの両軸芯を結ぶ線をクランプ装置7のC軸心と呼ぶ。S02
【0042】
オートローダー機器13のロボット爪13a,13bをワークwより遠ざける。S03
【0043】
クランプ装置7に支架させたワークwの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を高さ測定機器HS(例えば、東京精密株式会社のタッチプローブセンサΣD(商品名)、ニコン株式会社のレザー型変位センサー機器、または、特許文献1に示されるCCDカメラを備えた画像撮像装置)を用いて前記ワークを主軸台でC軸周りに360度回転させながら測定する。S04
【0044】
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の差(H−H)の1/2量を数値制御装置の演算部で算出する。S05
【0045】
また、クランプ装置7のC軸心とカップホイール型砥石10gの研削開始点位置間の距離(R/2−t)と前記最小値(H)の大小を数値制御装置の比較部で比較し、(R/2−t−H)の値が正となる方向であって、クランプ装置7のC軸心と高さ測定機器HSを含む平面上でワークのC軸心を移動させる方向を決める。S06
【0046】
前記ワークwの中央を前記オートローダー機器13のロボット爪13a,13bで把持した後、クランプ装置7の心押台7bを後退させてワークの挟持を開放する。S07
【0047】
前記オートローダー機器のロボット爪に把持されたワークを前記の算出された(H−H)の1/2量だけインゴットブロックのC軸位置を移動させる前記クランプ装置の支持軸心(C軸)への補正を行う。S08
【0048】
前記心押台7bを前進させて前記クランプ装置7の支持軸7a,7bに支架させる。S09
【0049】
ロボット爪13a,13bをワークwより遠ざける。S10
【0050】
支架させた前記ワークwの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を前記高さ測定機器HSを用いて前記ワークwを主軸台7aのサーボモータでC軸周りに360度回転させながら測定する。S11
【0051】
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)が共に(R/2−t)mm以上であればワークのクランプ装置7への自動クランプ終了の信号を発信しS12a、次工程のカップホイール型砥石による円筒状インゴットブロックのインフィード面取り研削加工を開始する。S13
【0052】
前記測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)の少なくとも1点の外周位置高さの値が(R/2−t)mm未満であればワークのクランプ装置への自動クランプ不良の信号を発信しS12b、前記オートローダー機器13のロボット爪13a,13bでワークwの中央部を把持した後、前記心押台7bを後退させてワークのクランプ装置7による支架を開放し、次いでロボット爪13a,13bをワークストッカー14へ移動させる(ワークをクランプ装置7外へ搬送する)。S14
【0053】
上記S13工程のカップホイール型砥石10gによる円筒状インゴットブロックの面取り研削加工は、インゴットブロックを宙吊りに支架したクランプ機構7を左右方向に1〜15mm/分速度で移動させながら、かつ、主軸台のセンター支持軸7aを10〜300rpmの回転速度で回転させながら800〜3,000rpmの回転速度で回転しているカップホイール型砥石の一対10g,10gの砥石軸をクランプ装置7のC軸心側へ前進させてカップホイール型砥石10g,10gの刃先位置がクランプ装置7のC軸心から(R/2−t)の距離(研削開始点位置)までインフィードして研削加工を開始し、研削液を5〜100cc/分の量研削作業点に供給させながら前記カップホイール型砥石の一対10g,10gにより移動するインゴットブロック外周面厚みをtmmの取り代量除去するインフィード円筒研削加工である。
【0054】
面取り加工される円柱状インゴットブロック(ワーク)w市販品の素材としては、直径が8〜12インチの単結晶シリコンインゴットブロック、直径が2〜6インチのサファイアインゴットブロック、GaAsインゴットブロック等が挙げられる。ワーク長さは100〜1,000mmである。
【0055】
カップホイール型砥石10g,11gによる円柱状インゴットブロック(ワーク)wの研削取り代(t)はシリコンインゴットブロックの場合は0.5〜6mm、サファイアインゴットブロック、GaAsインゴットブロックの場合は0.5〜1.0mmである。
【0056】
本願発明のインゴットブロックの自動クランプ方法は、特許文献2記載の一対のカップホイール型研削砥石10g,10gを用いて円筒研削する円筒研削装置に利用できるし、特許文献1記載の1個の円筒研削砥石で円柱状インゴットブロックを円筒研削する円筒研削装置にも採用できる。
【0057】
上述のS12b工程で自動クランプ不良と判定された円柱状インゴットブロックwは、円筒研削加工が行われずに回収されるので、研削量(t)を前記設定研削量(t)よりも大きい値とした円筒研削材料として再使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のオートローダー機器13を利用する円筒状インゴットブロックwの自動クランプ方法は、研削取り代(t)が小さいインゴットブロックであってもクランプ装置7上で、インゴットブロックの研削砥石による面取り加工の可能性有無を評価できるので、不良インゴットブロックに研削加工の機会を与えない。また、研削取り代(t)が小さいので、面取り加工屑の発生量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 面取り加工装置
w 円柱状インゴットブロック
7 クランプ機構
7a 主軸台
7b 心押台
8 ロードポート
10 第一研削ステージ
11 第二研削ステージ
13 オートローダー機器
14 ワークストッカー
HS 高さ測定機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートローダー機器のロボット爪で直径がRmm、研削取り代(t)設定がtmm厚みの円筒状インゴットブロックの中央部を把持し、
クランプ装置を構成する主軸台と心押台の間へ前記ロボット爪に把持された円筒状インゴットブロックを搬入し、
前記心押台を前進させて前記円筒状インゴットブロックの長手方向(C軸方向)の両端を前記クランプ装置で支架させた後、オートローダー機器のロボット爪を前記円筒状インゴットブロックより遠ざけ、クランプ装置に支架させた前記円筒状インゴットブロックの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を高さ測定機器により前記円筒状インゴットブロックを主軸台でC軸周りに360度回転させながら測定し、
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値と最小値の差(H−H)の1/2量を算出し、
次いで、前記円筒状インゴットブロックの中央を前記オートローダー機器のロボット爪で把持した後、クランプ装置の心押台を後退させて前記円筒状インゴットブロックの挟持を開放し、
前記オートローダー機器のロボット爪に把持された前記円筒状インゴットブロックを前記の算出された(H−H)の1/2量だけ円筒状インゴットブロックのC軸位置を前記クランプ装置の支持軸(C軸)に対する移動を行う補正を行った後、前記心押台を前進させて前記クランプ装置に支架させるとともに、ロボット爪を前記円筒状インゴットブロックより遠ざけ、
支架させた前記円筒状インゴットブロックの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を高さ測定機器を用いて前記ワークを主軸台でC軸周りに360度回転させながら測定し、
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)が共に(R/2−t)mm以上であれば前記円筒状インゴットブロックのクランプ装置への自動クランプ終了の信号を発信し、次工程のカップホイール型砥石による円筒状インゴットブロックの面取り研削加工を開始する、
前記測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)の少なくとも1点の外周位置高さの値が(R/2−t)mm未満であれば前記円筒状インゴットブロックのクランプ装置への自動クランプ不良の信号を発信し、前記オートローダー機器のロボット爪で前記円筒状インゴットブロックの中央部を把持した後、前記心押台を後退させて前記円筒状インゴットブロックの支架を開放し、次いでロボット爪を移動させて前記円筒状インゴットブロックを前記クランプ装置外へ搬送する、
ことを特徴とするインゴットブロックの自動クランプ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10158(P2013−10158A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143738(P2011−143738)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】