インフルエンザウイルス感染症の治療方法
対象体のインフルエンザウイルス感染症、又はそれに関連する疾患、障害又は機構を治療するための方法が開示され、これは、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(I)のカテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩、を投与する工程を含み、ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、その未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩、又は、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができ、但し、ここで、R7、R8及びR9のいずれか1つが水素を表す時、-OR1、-OR2とR7、R8及びR9のその他の二つは同時には-OHを表さない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルス感染症の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、それらの開示内容の全体をここに参考文献として合体させる、2006年2月23日出願の米国仮特許出願第60/775,869号及び2006年2月23日出願の米国仮特許出願第60/776,043号の利益を主張するものである。
【0003】
発明の背景
インフルエンザウイルスは、様々な種における一般的な感染源であり、重度の風邪のような症状を引き起こし、呼吸器系障害および/又は致死性肺炎を引き起こす可能性がある。インフルエンザウイルスは、核タンパク質と膜タンパク質との血清型に基づいて、三つのタイプ、すなわち、A、B及びCに分類される。これらのうち、インフルエンザウイルスタイプAとインフルエンザウイルスタイプBが毎年流行する。インフルエンザウイルスタイプAは、そのエンベロープの表面上に、二つの糖タンパク質、すなわち、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)、を有し、従って、前記タンパク質の抗原性に基づき、これに基づくH1N1、H2N2、H3N2等の亜型に分類される。インフルエンザタイプBとインフルエンザタイプCとは、それぞれ1つの亜型しか持たない。
【0004】
インフルエンザタイプAウイルスは、抗原性において大幅な変化を受け、毎年、上述した他のタイプのインフルエンザよりも流行する。インフルエンザタイプAウイルスのための抗ウイルス剤は公知である、が、それらは多くの場合のウイルスの突然変異に対応することが出来ないため、完全に満足のゆくものではない。抗ウイルス剤がウイルスの突然変異に対応することが出来ないおそらく最も大きな理由は、ウイルスの抗原性変異の重大さによるものである。
【0005】
ヒトにおいてインフルエンザの季節的流行を作り出すものを含む全てのタイプAインフルエンザウイルスは、遺伝子的に宿主の防衛を回避する傾向があり、又そのようにうまく構成されている。インフルエンザウイルスには、複製中に生じるエラーを「校正」し修復するメカニズムが欠如している。これらの修正されないエラーの結果として、ウイルスがヒトや動物内で複製する時、ウイルスの遺伝子的組成が変化し、既存の系統が新たな抗原変異体によって置き換えられる。インフルエンザAウイルスの遺伝子的組成におけるこれらの一定、恒久的かつ通常は小さな変化は抗原ドリフトとして知られている。
【0006】
インフルエンザウイルスには頻繁かつ恒久的な抗原変化を受ける傾向があることから、グローバルなインフルエンザ状況を常にモニタリングして、インフルエンザワクチンの組成を毎年調節することが必要となる。
【0007】
インフルエンザウイルスには、公衆の健康に関する懸念が多大であるというもう一つの特徴がある。すなわち、異なる種からの亜型を含む、インフルエンザタイプAウイルスは、遺伝子的材料を交換もしく合併結合変異(リアソート)して合体する能力を有する。この抗原シフトとして知られ合併結合変異的(リアソータントな)プロセスによって、両方の親ウイルスと異なるウイルスの新規な亜型が生まれる。諸集団はこの新規な亜型に対する免疫を持たず、また、既存のワクチンでこれに対する保護を提供することが可能なものが存在しないことから、抗原シフトによってこれまで高いインフルエンザ致死的流行が発生した。これが起こるためには、その新規な亜型が、それによって持続可能な期間に渡って人から人へと容易に伝染することが可能となるヒトインフルエンザウイルスからの遺伝子を有していることが必要である。
【0008】
抗原変化の発生にとって有利な条件は、多くの場合、ヒトが、種々系統のインフルエンザウイルスに感染した他の家畜種の近傍に生活していることに関連していると考えられきた。例えば、ブタは、、トリウイルスとヒト系統を含む哺乳動物ウイルスとの両方の感染を受ける。したがって、ブタは、ヒトウイルスとトリウイルスとからの遺伝子材料のスクランブルするための「混合媒体」として作用し、新規な亜型の発生をもたらす可能性がある。しかしながら、最近、抗原シフトの発生の別の機序の可能性が明らかになった。すなわち、ヒト自身が、新規なインフルエンザ亜型の出現のための混合媒体として作用する可能性があることが示唆されているのである。
【0009】
現在、15種類のトリインフルエンザウイルス亜型が知られている。亜型H5N1がいくつかの理由により特に注目されている。H5N1は急速に変異し、他の動物種に感染したウイルスから遺伝子を獲得する傾向があることが実証された。それがヒトにおいて重度の疾患をもたらす能力を持つものであることが、1997年と2003年とにおける香港での二つのケースにおいて実証された。それ以来、2005年12月14日の時点において、世界保健機関は、研究所によってH5N1トリインフルエンザのヒトの感染の138の事例を確認している。これら138の事例のうち、71が致命的であった。
【0010】
更に、実験室での研究によって、このウイルスからの単離物が高い病原性を有し、ヒトにおいて重度の疾患をもたらしうることが示されている。更に、トリインフルエンザ亜型(H5N1)の感染を生き延びた鳥は、少なくとも10日間そのウイルスを排泄し、それによって生きた家禽類の市場と渡り鳥における更なる蔓延を促進する。鳥における感染の蔓延によって、人間の直接感染の機会が増大する。もしも時間の経過に伴って人間の感染が増加すれば、人間が、もしもヒトとトリインフルエンザ系統とによって同時に感染するならば、人から人へと容易に伝染するために十分なヒトの遺伝子を含む新規な亜型の出現のための混合媒体となりうる可能性が増大する。これによってインフルエンザの大流行が始まるであろう。歴史的に、新規なウイルス亜型が発生して人から人へと容易に伝染するとき、インフルエンザの大流行は、平均で、それぞれの世紀において3〜4回起こるものと予想することができる。インフルエンザ大流行の発生は予測不能である。別のインフルエンザ大流行が不可避であり、おそらくは近い将来起こるという点で大半のインフルエンザ専門家の見解は一致している。
【0011】
インフルエンザワクチンの製造における経験は相当なものではあるが、特に、抗原シフトによって循環するウイルスの変化に適合するためにワクチンの組成が毎年変化することから、新規なウイルス亜型に対する保護を提供することが可能な新しいワクチンを十分な量製造するためにはおそらく少なくとも4ヶ月かかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、インフルエンザウイルス感染の症状の治療のための組成物は多くの場合、それらの感染者に投与されることになる。より新しい系統のインフルエンザウイルスの病原性が更に高いとすれば、インフルエンザウイルス感染症状を治療、又は、軽減することがますます重要となってきている。
【0013】
インフルエンザウイルス感染の症状に対して様々な治療法が存在するが、その多くは、トリ系統を含む新規な亜型に対しては必ずしも有効なものではない。従って、インフルエンザウイルス感染を治療するための新規でより効果的な方法が求められている。本発明はこの必要に答えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明は、カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩、の投与によってインフルエンザウイルス感染を治療する方法に関する。特定の理論によって限定されることをは望まないが、本発明の方法は、宿主におけるインフルエンザウイルスの複製又は増殖の両方を減少させ、更に、インフルエンザウイルス感染に伴う種々の疾患又は障害の発生および/又は重症度を減少させるものと考えられる。
【0015】
本発明の一実施例は、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(I)のカテコールブタン、
【化1】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び- OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、又は、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができ、但し、ここで、R7、R8及びR9のいずれか1つが水素を表す時、-OR1、-OR2とR7、R8及びR9のその他の二つは同時には-OHを表さない。未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を含む。
【0016】
本発明の別実施例は、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(II)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化2】
〔ここで、R14、R15、R1 6及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3、又は、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R18とR19とは、それぞれ独立的に、-H又は低級アルキルを表し。但し、R14、R15、R16及びR17は同時には-OHを表さない。未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を含む。
【0017】
本発明の別実施例は、対象体のトリインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、
【化3】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23が、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、但し、R20、R21、R22及びR23が、同時には-OHを表さない。置換又は未置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を含む。
【0018】
本発明の別実施例は、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、トリ-O-メチルノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、テトラ-O-メチルNDGA、テトラ-グリシニルNDGA、テトラ-ジメチルグリシニルNDGA又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、から成るグループから選択されるカテコールブタンと、そして、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む組成物を、治療的有効量投与する工程を含む。
【0019】
本発明の別実施例は、ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルス感染症を治療する方法を含む。前記方法は、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化4】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ-OCH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を、各投与あたり約10mg/kg〜約375mg/kgの量で、経口的に投与する工程を含む。
【0020】
本発明の別実施例は、インフルエンザウイルス感染による細胞内の炎症誘発性サイトカインの誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記一般式(I)のカテコールブタン、
【化5】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩を表し、或いは、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができる。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を有効量、前記細胞に投与する工程を含む。
【0021】
本発明の別実施例は、インフルエンザウイルス感染による細胞内の炎症誘発性脂質メディエーターの誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記一般式(I)のカテコールブタン
【化6】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩を表し、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができる。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を有効量で前記細胞に投与する工程を含む。
【0022】
本発明の別実施例は、亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞内の腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記マクロファージ細胞に対して、有効量の、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化7】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ、-OCH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、を投与する工程を含む。
【0023】
本発明の別実施例は、亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞内のプロスタグランジンE2(PGE2)の誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記マクロファージ細胞に対して、有効量の、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化8】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ、-OCH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、を投与する工程を含む。
【0024】
本発明の別実施例は、前記一般式(I)のカテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩と、前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩を使用することによって対象体のインフルエンザウイルス感染を治療するための取扱説明書とを含むキットを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のその他の態様、特徴及び利点は、本発明の詳細な説明、その好適実施例及び添付の特許請求の範囲を含む以下の開示から明らかになるであろう。
【0026】
複数の図面の簡単な説明
本発明の上記要約及び以下の詳細な説明は、添付の図面を参照することによってよりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的のため、これら図面において、現時点において好適な実施例が図示されている。但し、本発明は図示の正確な構成及び手段に限定されるものではないと理解されるべきである。
【0027】
これら図面において、図1は、種々の条件下におけるRAW264.7マウスマクロファージによるTNF-αのリポ多糖類(LPS)誘導産生のグラフ表示である。
【0028】
図2は、種々の条件下におけるC3HA繊維芽細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスのグラフ表示である。
【0029】
図3は、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGE2産生のグラフ表示である。
【0030】
図4は、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF2α産生のグラフ表示である。
【0031】
図5は、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF1α産生のグラフ表示である。
【0032】
図6A及び6Bは、抗体アレイ研究からの、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導サイトカイン産生のグラフ表示である。
【0033】
図7は、MDCK細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【0034】
図8は、RAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【0035】
図9は、ウイルス感染の前に、EM-1421によって処理されたRAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【0036】
図10は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生のグラフである。
【0037】
図11は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生に関する投与量応答実験のグラフ表示である。
【0038】
図12は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験のグラフ表示である。
【0039】
図13は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生のグラフ表示である。
【0040】
図14は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する投与量応答実験のグラフ表示である。
【0041】
図15は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験のグラフ表示である。
【0042】
図16は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生のグラフ表示である。
【0043】
図17は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生のグラフ表示である。
【0044】
図18は、抗体アレイ研究からの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導サイトカイン産生のグラフ表示である。
【0045】
好適実施例の詳細説明
本発明者等は、カテコールブタンがインフルエンザウイルス感染の治療に有効であることを発見した。カテコールブタンは、一般式(I)、
【化9】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、又は、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができ、但し、R7、R8及びR9のいずれか1つが水素である場合には、-OR1, -OR2とR7、R8及びR9のその他の二つが同時には-OHを表さない。置換又は未置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を有する。
それらのカテコールブタンを薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせて、種々の投与経路用に調製可能な薬用組成物を作り出すことができる。
【0046】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、一般式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3及びR4は、独立的に低級アルキルであり、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、独立的に、-Hであり、そしてR7、R8及びR9は独立的に、-H、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩であり、但し、前記カテコールブタンはNDGAではない。
【0047】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、一般式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3及びR4は、独立的に低級アルキルであり、R5、R6、R7、R10、R11、R12及びR13は、独立的に、-Hであり、そしてR8及びR9は独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩であり、但し、前記カテコールブタンはNDGAではない。
【0048】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-CH3又は-(C=O)CH2N(CH3)2又はそれらの塩である。
【0049】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、式(I)を有し、ここで、R8及びR9は、独立的に、-OCH3又は-O(C=O)CH2N(CH3)2又はそれらの塩である。
【0050】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2・CH-であり、R8及びR9は、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2又は-O(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-である。
【0051】
本発明の更に別の実施例において、カテコールブタンは式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-H又は-CH3であり、R8及びR9は、独立的に、-OH又は-OCH3であり、但し前記カテコールブタンはNDGAではない。
【0052】
本発明の別の実施例において、前記カテコールブタンは式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、それぞれ、-CH3であり、R8及びR9はそれぞれ-OCH3である。
【0053】
別実施例において、本発明の前記実施例の方法に使用される前記カテコールブタンは、下記の式(II)を有するNDGA誘導体
【化10】
〔ここで、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R18とR19とは、それぞれ独立的に、-H又は-CH3や-CH2CH3等の低級アルキルのようなアルキルを表し、但し、R14、R15、R16及びR17は同時には-OHを表さない。置換又は未置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩である。
【0054】
本発明者等は、少なくとも1つのNDGA誘導体の実質的に純粋な調合物を含有する組成物が、インフルエンザウイルス感染の治療のために有効であるという驚くべき発見をした。この知見は、NDGA誘導体は、本来、他の目的のために投与されていたものであり、インフルエンザ治療は予期せぬ成果であったが為、思いがけなく、そして驚くべきものであった。
【0055】
本発明の実施例に使用される前記NDGA誘導体は、好ましくは、上述した式(II)を有し、ここで、R14、R15、R16及びR17は、-OH、低級アルコキシ、例えば、-OCH3、低級アシルオキシ、例えば、-O(C=O)CH3又は、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、但し、これらはそれぞれ同時には-OHではなく、そしてR18及びR19は、独立的に、-H、又は-CH3や-CH2CH3等の低級アルキル等のアルキルを表している。一実施例において、R18及びR19は、共に、-H、-CH3又は-CH2CH3とすることができる。好ましくは、R14、R15、R16及びR17の1つ又はそれ以上が、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩である場合、前記残基はそのカルボキシ末端において芳香環に結合している。
【0056】
適当な場合に、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む適当な製剤としての本発明のカテコールブタンは、鼻腔内投与;経口投与;吸入投与;皮下投与;経皮投与;静脈内投与;口腔投与;腹腔内投与;眼内投与;眼窩周囲投与;筋肉内投与;移植投与;点滴;中心静脈投与から成るグループから選択される単数又は複数の投与経路によってそのような治療を必要とする単数又は複数の対象体に安全に投与することができる。
【0057】
更に、前記カテコールブタンは、適切な場合には、溶液、懸濁液、半固体又は固体形態で、或いは、上述した単数又は複数の経路を介する投与用の、リポソーム製剤、ナノ粒子製剤、又はミセル製剤として、そのような治療を必要とする単数又は複数の対象体に対して安全に投与することができる。
【0058】
更に、前記リポソーム製剤、ナノ粒子製剤、又はミセル製剤としてのカテコールブタンは、皮下移植によって等、生分解性ポリマー製剤中に埋め込み、安全に投与することができる。
【0059】
本発明の一実施例において、ここでの目的のための投与経路は、非経口投与以外であって、ここで、非経口投与とは静脈、筋肉内、皮下、経皮、腹腔内投与を意味する。
【0060】
本発明は、更に、インフルエンザ治療用のカテコールブタンを含有する薬用組成物を特徴とし、ここで、前記組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、親水性又は疎水性の溶剤、凍結乾燥から得られるもののような粉末剤、エアロゾルの形態で、或いは、水性水溶性組成物、疎水性組成物、リポソーム組成物、ミセル組成物、ポリソルベート80や二元ブロックポリマー等をベースとするもののような、ナノ粒子組成物、ポリマー組成物、シクロデキストラン複合組成物、エマルジョン、又は、“リポコア(lipocores)”と呼ばれる脂肪系ナノ粒子の形態で、上述したような投与用に製剤される。
【0061】
本発明は、更に、インフルエンザ治療用のカテコールブタンを含有する薬用組成物を提供し、ここで、前記組成物は、薬学的に許容可能な担体とともに、経口又は注射可能な送達用に調製され、前記担体は、(a)水溶性有機溶媒、(b)シクロデキストラン(改変シクロデキストランを含む)、(c)イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤、(d)改変セルロース、(e)水不溶性脂質、そして前記担体(a)〜(c)の任意の組み合わせ、から成るグループから選択される可溶化剤と賦形剤との少なくとも一方を含む。
【0062】
本発明の実施例によれば、単数又は複数種の他の物質又は薬剤と組み合わせてカテコールブタンを提供することができる。それは、前記他の物質又は薬剤の投与と同時、投与前、又は投与後に、投与することができる。特定の実施例において、カテコールブタンは、単数又は複数の追加の抗炎症剤と組み合わせて投与することができる。前記追加の抗炎症剤は、(1)セロトニン受容体アンタゴニスト、(2)セロトニン受容体アゴニスト、(3)ヒスタミン受容体アンタゴニスト、(4)ブラジキニン受容体アンタゴニスト、(5)カリクレインインヒビター、(6)ニューロキニン1とニューロキニン2受容体亜型アンタゴニストを含む、タキキニン受容体アンタゴニスト、(7)カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アンタゴニスト、(8)インターロイキン受容体アンタゴニスト、(9)(a)PLA2イソ型インヒビターとPLCγイソ型インヒビターを含むホスホリパーゼインヒビター、(b)シクロオキシゲナーゼインヒビター、及び、(c)リポオキシゲナーゼインヒビターを含む、アラキドン酸代謝物のための合成経路において活性な酵素のインヒビター、(10)エイコサノイドEP-1及びEP-4受容体亜型アンタゴニスト及びトロンボキサン受容体亜型アンタゴニストを含む、プロスタノイド受容体アンタゴニスト、(11)ロイコトリエンB4受容体亜型アンタゴニストとロイコトリエンD4受容体亜型アンタゴニストとを含む、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、(12)mu−オピオイド、δ-オピオイド及びκ-オピオイド受容体亜型アゴニストを含む、オピオイド受容体アゴニスト、(13)P2x受容体アゴニスト及びP2γ受容体アゴニストを含む、プリン受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、(14)アデノシン三リン酸(ATP)感応性カリウムチャンネルオープナー、から成るグループから選択される。
【0063】
別実施例において、カテコールブタンは、一般式(I)の第2のカテコールブタン等の、単数又は複数の他の抗インフルエンザ剤、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、アマンタジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、ザナミビル、及びアルビドール(Arbidol)等と組み合わせて投与することができる。
【0064】
本発明は、更に、本発明の前記薬用組成物の製造方法も特徴とし、この方法は、前記カテコールブタンを実質的に純粋な形態で製造又は提供する工程と、前記組成物を薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせる工程と、そして、前記組成物を、所望の投与形態に適合する態様で製剤する工程とを有する。
【0065】
本発明は、更に、インフルエンザ治療用の、上述した組成物又は製剤を含むキットにも関し、前記組成物は、非限定的に、鼻腔内投与、吸入投与、経口投与、局所投与、静脈内投与、腹腔内投与、及びその他の非経口投与、を含む投与用に製剤される。そして、任意に、更に、そのような投与のための投与装置とそのような投与のための取扱説明書とを含む。
【0066】
定義
ここにおいて特に銘記されない限り、ここに使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本発明は、下記の特定の意味から更によりよく理解可能である。
【0067】
ここに使用される「活性物質」、「化合物」及び「薬剤」という用語は、NDGA誘導体を含む単数又は複数のカテコールブタンと薬学的に許容可能なそれらの塩を意味する。
【0068】
ここに使用されるアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)という用語は、メチレン(又は置換メチレン)ジオキシ又はエチレン(又は置換エチレン)ジオキシを意味する。
【0069】
ここに使用される「緩衝剤」という用語は、Tris、リン酸、イミダゾール、炭酸水素塩などの、当該技術における従来からの任意の緩衝剤を意味する。
【0070】
ここで使用される「担体」という用語は、任意の従来タイプの、非毒性固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、溶媒(vehicle)、賦形剤(excipient)、可溶化剤、カプセル化剤、又は製剤補助剤、を意味し、前記活性薬剤成分以外の前記組成物の全ての成分を含む。前記担体は、湿潤剤やエマルジョン化剤、又はpH緩衝剤等の追加の物質を含むことができる。抗酸化剤、保湿剤、粘度安定剤、その他類似の物質等のその他の材料も必要に応じて添加することができる。
【0071】
ここで使用される「シクロデキストラン」という用語は、未改変シクロデキストランと改変シクロデキストランとを意味し、非限定的に、α-シクロデキストラン、β-シクロデキストラン、γ-シクロデキストラン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストラン(“HP-β-CD”)やスルフォブチルエーテル-β-シクロデキストラン(“SBE-β-CD”)等の、それに対する改変体を含む改変シクロデキストランを含む。シクロデキストランは、通常6(α- シクロデキストラン)、7(β-シクロデキストラン)、そして8(γ-シクロデキストラン)糖、1つの糖に対して最大3つの置換、を有し、従って、0〜24の1次置換が可能である(1次置換は、シクロデキストラン環に直鎖結合されている置換として定義される)。本発明において使用される前記改変又は未改変シクロデキストランは、適当な数と位置の1次置換又はその他の改変を有することができる。
【0072】
ここで使用される「サイトカイン」という用語は、免疫調節及び炎症プロセス中において、免疫応答の強度と持続時間を調節し、細胞間情報伝達を媒介する種々の細胞タイプによって分泌される、数多くのホルモン様、低分子量タンパク質を意味する。サイトカインの具体例は、ケモカイン、インターロイキン、リンフォカイン、腫瘍壊死因子、インターフェロンなど、その他のシグナル分子がある。
【0073】
ここで使用される「ケモカイン」という用語は、7回-膜貫通、Gタンパク質共役受容体のサブセットとの相互作用を通じて、種々のタイプの白血球の細胞輸送を調節する、小さな、大半は塩基性である構造関連分子のグループを意味する。ケモカインは、又、発達、ホメオスタシス、及び免疫系の機能においても基本的な役割を果たし、それらは、中枢神経系の細胞、更に、血管新生やアンジオスタシス(angiostasis)に関連する内皮細胞に対する影響も有する。
【0074】
ここで使用される「インターロイキン」又は「IL」という用語は、リンパ球、単球、マクロファージ、ある種のその他の細胞、によって合成される多機能サイトカイン群を意味する。
【0075】
ここで使用される「リンフォカイン」という用語は、免疫応答を媒介し、活性化したリンパ球によって遊離される一群のサイトカインを意味する。
【0076】
ここで使用される「インターフェロン」という用語は、ウイルス、細菌、寄生虫、腫瘍細胞等の異物による多様な攻撃に応答して脊椎動物細胞によって分泌される糖タンパク質群を意味する。インターフェロンは、例えば、正常及び悪性細胞の増殖を抑制し、細胞間寄生虫の増殖を阻止し、マクロファージ及び顆粒球貧食を促進し、ナチュラルキラー細胞活性を増強し、複数の他の免疫調節機能を有すること、等によって免疫応答を補助し異物に対する抵抗性を付与する。
ここで使用される「腫瘍壊死因子」又は「TNF」は、主として、マクロファージによって分泌されるサイトカインを意味する。TNFは、そのレセプターTNFRSF1A/TNFR1及びTNFRSF1B/TNFBRに結合し、それを通じて作用することができる。このサイトカインは、細胞増殖、分化、アポトーシス、脂質代謝、及び凝集、を含む広範囲の生物過程の調節に関連している。このサイトカインは、自己免疫性疾患、インスリン依存症、及びガンを含む種々の疾患に関連つけられている。インフルエンザウイルス感染によるTNFの産生の増大は、更に、ウイルス感染に関連する、疾患、障害又は症候群の発現にも関連つけられている(前記説明を参照)。
【0077】
ここでのカテコールブタンの式において、-OR1、-OR2又は適切な場合にはその他のR基のいずれかに対する言及において使用される「未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩」とは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリン、チロキシン、3 -メチルヒスチジン、ε-N-メチルリジン、ε-N-N-N-トリメチルリジン、アミノアジピン酸、γ-カロキシグルタミン酸(caroxyglutamic acid)、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、N-メチルアルギニン、N-アセチルリジン、そしてN,N-ジメチル-置換アミノ酸残基、又は薬学的に許容可能なそれらの塩を非限定的に含む、アミノ酸残基又は置換アミノ酸残基、又は、アミノ酸残基の塩又は置換アミノ酸残基の塩、である。
【0078】
ここで使用される「低級アルキル」という用語は、直鎖又は分岐状であることが可能で、任意に単数又は複数の不飽和炭素間結合を有することが可能なC1-C6アルキルを意味する。
【0079】
ここで使用される「低級アシル」という用語は、直鎖又は分岐状であることが可能で、任意に単数又は複数の不飽和炭素間結合を有することが可能なC1-C6アシルを意味する。
【0080】
ここで使用される「NDGA」とはノルジヒドログアヤレチン酸を意味する。
【0081】
ここで使用される「NDGA誘導体」とは、それぞれ式(II)を有する単数又は複数化合物、
【化11】
〔ここで、R14、R15、R16及びR17は、独立的に-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩であるが、但し、そのそれぞれが同時に-OHではなく、R18及びR19は独立的に、-OH又は低級アルキル等のアルキルである。前記用語は、例えば、R14、R15、R16及びR17がそれぞれ-OCH3である、又は、それぞれが-O(C=O)CH3であり;R18及びR19がそれぞれ-H又はそれぞれ低級アルキルである、化合物を含む。本発明の一実施例において、R18及びR19は、それぞれ、-CH3又は-CH2CH3である。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を意味する。
【0082】
ここで使用される「薬学的に許容可能な担体」とは、任意の従来タイプの、非毒性固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、カプセル化剤、又は製剤補助剤、を意味する。「薬学的に許容可能な担体」は、使用される投与量及び濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、製剤の他の成分と適合可能なものである。例えば、本発明のカテコールブタンを含有する製剤用の担体は、好ましくは、酸化剤やそれらに対して有害であることが知られているその他の化合物を含まない。好適な担体は、非限定的に、水、ブドウ糖、グリセロール、生理食塩水、エタノール、緩衝液、ジメチルスルフォキシド、Cremaphor EL、及びそれらの組み合わせ、を含む。前記担体は、更に、可溶化剤、湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤、等の追加の物質を含むことができる。抗酸化剤、保湿剤、粘度安定化剤、その他類似の物質等のその他の材料も必要に応じて添加することができる。
【0083】
ここで使用される薬学的に許容可能なそれらの塩は、(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)、塩酸又は硫酸などの無機酸や、酢酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、等の有機酸と形成される酸添加塩を含む。遊離カルボキシル基と形成される塩は、更に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄等の無機塩や、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、及びヒスチジン等の有機塩からも得ることができる。
【0084】
ここに使用される「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、公衆に容易に入手可能な、当該技術において従来からあるもののような、溶媒、アジュバント、又は希釈剤又はその他の製剤補助剤、を意味する。例えば、薬学的に許容可能な製剤補助剤は、pH調節剤及び緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤等を含む。
【0085】
ここで使用される「対象体」、「宿主」及び「患者」という用語は、本発明の組成物によって治療される動物を互換的に言及し、非限定的に、サル、ヒト、鳥類、猫、馬、げっ歯類、ウシ、ブタ、羊、ヤギ、哺乳類農場動物、哺乳類狩猟用動物(sport animals)、哺乳類ペットを含む。
【0086】
化合物において前記カテコールブタンに対する言及してここに使用される「実質的に純粋」という用語は、本発明のカテコールブタンではない化合物(以後、“非NDGA物質”)を実質的に含まないもののことである。実質的に含まないとは、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、非-NDGA物質を含まないことを意味する。
【0087】
ここで使用される、「治療」、「治療する」などの用語は、所望の薬理的および/又は生理的作用を得ることを意味する。前記作用は、それらの状態や疾患又は症候を完全又は部分的に防止する意味から予防的なものとすることができ、および/又は、状態や疾患および/又はそのような状態又は疾患に帰することが可能な有害作用の部分的又は完全な治癒の意味から治療的なものとすることができる。従って、例えば「治療」とは、哺乳類、特にヒトにおける状態又は疾患の全ての治療であって、(a)そのような状態又は疾患にかかりやすいが、まだそれを有するものとして診断されていない対象体において前記状態、疾患又は症候が発生することを防止すること、(b)その発達を停止させるなど、前記状態、疾患又は症候を阻止すること、そして、(c)例えば、前記状態、疾患又は症候の退縮を引き起こすこと等の前記状態、疾患又は症候の緩和、軽減又は改善を含む。
【0088】
ここで使用される「治療的有効量」又は「有効量」という用語は、対象体の組織系又は、研究者、獣医、医師、その他の臨床医、によって求められている、対象体における所望の生物的又は医療的応答を引き出す有効物質、化合物又は薬剤の量を意味する。前記所望の応答は、治療される対象体における既存のウイルス感染の阻止、予防、緩和、又は軽減を含む。いくつかの実施例において、前記所望の応答は、治療対象体における、ウイルス数の減少、又は、インフルエンザウイルスの複製又は増殖の抑制を含む。
【0089】
当業者は、本発明において使用される活性物質の「治療的有効量」が、様々な要因、例えば、個々の患者、例えば、年齢、体重、食習慣、健康等、治療又は予防されるべきウイルス感染状態の重症度と合併症、活性物質の投与形態、使用される特定の活性物質等に応じて変わる可能性があるということを理解するであろう。対象体に対する活性物質の投与の効果を評価するために標準的な手続きを行うことができ、それによって、当業者が対象体に対して投与されるべき活性物質の有効量を決定することが可能となる。例えば、熱や炎症、ウイルス数等のウイルス感染の症候を、活性物質の投与前、又は投与後に、対象体から測定することができる。更に、調査や動物モデル等の技術を使用してウイルス感染の治療又は予防における有効物質の有効性を評価することも可能である。
【0090】
ある範囲の値が提供される場合、各中間の値、特にその前後関係からそうでないことが明らかでない限り、下限値の単位の10分の一、その範囲の上限値と下限値の間、そしてその表示範囲におけるその他の記載又は中間値が本発明の範囲に含まれる。これらの小さな範囲の上下限値は、それらの小さな範囲にそれぞれ独立に含まれ、それらも本発明の範囲に含まれ、その表示範囲における特に具体的に除外される限界値を受ける。表示範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0091】
特許、特許出願、雑誌記事、を含むここに記載の全ての刊行物は、同様にここに参考文献として合体させるここに挙げられている参考文献を含めてその全体をここに参考文献として合体させる。ここに記載される刊行物は、もっぱら本発明の出願日の前の、その開示内容に関してのみ提供される。ここでの開示において、なにも、本発明が先行発明によるそのような刊行物に先行する権利がないということの自認としては解釈されてはならない。更に、提供される刊行物の日付は、それぞ独立的に確認する必要があるかもしれない実際の公開日とは異なっているかもしれない。
【0092】
尚、ここで、“a”“an”及び“the”といった単数形は、特に銘記されない限り複数形も含む。従って、例えば、「化合物」とは、複数のそのような化合物、を含み、「カテコールブタン」とは、単数又は複数のカテコールブタン及び当業者に知られているそれらの均等物を含む。
【0093】
以下に記載の本発明の実施例は、例示のためのみに提供されるものであって、いかなる点においても本発明を限定するものと解釈されてはならない。
【0094】
カテコールブタンの調製
本発明のカテコールブタンはどのような従来の方法によっても調製可能である。例えば、そのような化合物は、米国特許第5,008,294号(Jordan他、1991年4月16日発行)、米国特許第6,291,524号(Huang他、2001年9月18日発行)、Hw u他著の文献(Hwu, J.R.他、“Antiviral activities of methylated nordihydroguaiarectic acids, 1. Synthesis, structure identification, and inhibition of Tat-regulated HIV transactivation: J. Med, Chem.、第41巻、第16号、:第2994〜3000頁、(1998年))、又は、McDonald他著の文献、(McDonald, R.W.他、“Synthesis and anticancer activity of nordihydroguaiarctive acid (NDGA) and analogues”、Anti-Cancer Drug Des.、第16巻:第261〜270頁(2001年))に記載されているようにして調製することができる。
【0095】
本発明の一実施例において、カテコールブタン、テトラ-O-メチルNDGA、メソ-1, 4-ビス(3,4-ジメトキシフェニル)-2,3-ジメチルブタン、テラメプロコル(terameprocol、EM-1421又はM4N(下記の式に図示)としても知られる、を以下のようにして調製した。反応フラスコ中で、NDGA及び水酸化カリウムを含有するメタノール溶液を調製した。この反応フラスコに硫酸ジメチルを添加し、反応を進行させた。最後に水によって反応を停止させ、生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過によって分離し、真空オーブンで乾燥させた。次に化合物を塩化メチレンとトルエンの溶液中で溶解させ、その後、アルミナカラムを通して精製した。溶媒を回転蒸発によって除去し、固体をイソプロパノール中で再懸濁させ、ろ過によって単離した。ろ過ケーキを真空オーブンで乾燥させた。これによって得られたテトラ-O-メチルNDGA(M4N)を、前記ろ過ケーキをイソプロパノール中で還流させ、結晶物をろ過によって再分離することによって結晶化させた。
【0096】
【化12】
【0097】
本発明のいくつかの実施例において、本発明のいくつかのカテコールブタン、例えば、G4N、メソ-1,4-ビス[3, 4-(ジメチルアミノアセトキシ)フェニル]-(2R, 3S-ジメチルブタン又はテトラ-ジメチルグリシニルNDGA(下記の式に図示)としても知られる、又はそれらの塩酸塩及びアミノ酸置換を有する類似の化合物は、例えば、米国特許第6,417,234号に記載されているように、従来の方法で調製することができる。
【化13】
【0098】
組成物
本発明は、更に、前記カテコールブタンと薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む薬用組成物を含む組成物を提供する。これらの組成物は、前記カテコールブタンの所望の用途に応じて選択される緩衝剤を含むことができ、更に、意図される用途に対して適当なその他の物質も含むことができる。当業者は、意図される用途にとって適切な、当該技術において知られている多様なものから適切な緩衝剤を容易に選択することができる。いくつかの場合において、前記組成物は、当該技術において知られている多様なものから適切な薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。ここで使用されるのに適した薬学的に許容可能な賦形剤には、例えば、Gennaro著の文献(Gennaro, A.、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”、第19版、Lippincott, Willimans, & Wilkins.(1995年);A nsel他著の文献、(Ansel, H. C.他、“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, eds.、第7版、Lippincott, Williams, & Wilkins (1999年)); 及びKibbe著の文献 (Kibbe, A. H.、Handbook of Pharmaceutical Excipeients”第3版、Amer. Pharmaceutical Assoc.)を含む様々な刊行物に記載されている。
【0099】
ここの前記組成物は、潜在的な投与態様に応じて製剤される。従って、もしも前記組成物が例えば鼻腔内投与、又は吸入投与によって投与されることが意図されるものであるならば、前記組成物は、そのような目的のために、当該技術において従来から行われているように、粉末又はエアロゾル形態に加工することができる。経口又は非経口送達等のための、その他の製剤も、従来技術と同様に使用される。
【0100】
ここに記載の投与用組成物は、溶剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は粉末剤を形成することが可能である。
【0101】
経口又は注射送達用の組成物又は製剤は、更に、インフルエンザ治療用のカテコールブタンを含有する薬用組成物を含み、前記組成物は、薬学的に許容可能な担体と共に製剤され、ここで、前記担体は、(a)水溶性有機溶媒、(b)シクロデキストラン(改変シクロデキストランを含む)、(c)イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤、(d)改変セルロース、(e)水不溶性脂質、そして前記担体(a)〜(e)の任意の組み合わせ、から成るグループから選択される可溶化剤と賦形剤との少なくとも一方を含む。
【0102】
前記水溶性有機溶媒、好ましくは、但しそれに限定されるものではないが、ジメチルスルフィド以外であってもよい。水溶性有機溶媒の非限定的具体例は、ポリエチレングリコール(“PEG”)、例えば、PEG300、PEG400又はPEG400モノラウリン酸、プロピレングリコール(“PG”)、ポリビニルピロリドン(“PVP”)、エタノール、ベンジルアルコール、又はジメチルアセタミドを含む。好ましくは、いくつかの実施例の場合、前記水溶性有機溶媒がPGである場合、このPGは、白色ワセリンを含まず、キサンタンゴムxanthan gum(キサンタンガム(xantham gum又はxanthum gum)としても知られる)を含まず、グリセリンとグリシンとの少なくとも一方を含まない。前記水溶性有機溶媒がPEGである場合、ある種の実施例の場合、前記PEGは、アスコルビン酸又はブチル化ヒドロキシトルエン(“BHT”)を含まず、そして、前記PEGがポリエチレングリコール400である場合には、このポリエチレングリコール400はポリエチレングリコール8000を含まないことが好ましい。
【0103】
前記シクロデキストラン又は改変シクロデキストランは、非限定的に、α-シクロデキストラン、β-シクロデキストラン、γ-シクロデキストラン、HP-β-CD又はSBE-β-CDとすることができる。
【0104】
前記イオン性、非イオン性又は両親媒性界面活性剤は、例えば、非限定的に、非イオン性界面活性剤である、ポリエチレンソルビタンモノラウリン酸(ポリソルベートとしても知られる)、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Tween(登録商標)20又はTween(登録商標)80として市販、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(“TPGS”、グリセロールモノラウリン酸(グリセリルモノラウリン酸としても知られる)、エステル化脂肪酸、又は酸化エチレンとひまし油との3.5:1のモル比の反応産物、Cremophor(登録商標)ELとして市販、を含むことができる。好ましくは、ある種の実施例において、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である場合、この非イオン性界面活性剤は、キサンタンゴムを含まない。
【0105】
改変セルロースの非限定的な例は、エチルセルロース(“EC”)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(“HPMC”)、メチルセルロース(“MC”)、又はカルボキシメチルセルロース(“CMC”)を含む。本発明の1の実施例において、カテコールブタンは、使用前に、エタノール中で希釈できる改変セルロース中に溶解することができる。
【0106】
水不溶性脂質は、例えば、ひまし油、ゴマ油、ペパーミント油等の油、又は複数種の油、ミツロウやカルナウバロウ等のロウ、又は複数種のロウ、製造業者の推奨に従って使用されるIntralipid(登録商標)(ファルマシア&アップジョン、現在ではファイザー)等の混合脂肪乳液組成物を含む。例えば、大人の投与量は、2g脂肪/kg体重/日(それぞれ、20mL, 10mL,及び6.7mL/kgのIntralipd(登録商標)10%、20%及び30% )を超えることがないように推奨されている。Intralipd(登録商標)10%は、1,000mL中に、精製大豆油200g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール22g、注射用の水1,000mLを含有していると考えられている。Intralipd(登録商標)20%は、1,000mL中に、精製大豆油200g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール22g、注射用の水1,000mLを含有していると考えられている。pHは、水酸化ナトリウムによって、pH約8に調節される。Intralipd(登録商標)30%は、1,000mL中に、精製大豆油300g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール16.7g、注射用の水1,000mLを含有していると考えられている。pHは、水酸化ナトリウムによって、pH約7.5に調節される。これらのIntralipd製品は、25℃以下の制御された室温で保存され、凍結されるべきではない。注射用製剤のいくつかの実施例の場合、前記油は、ひまし油以外の油であり、経口製剤のいくつかの実施例の場合、ひまし油が、ミツロウとカルナウバロウ無しで含まれる。
【0107】
本発明の一実施例において、前記カテコールブタンは、異なる担体中で溶解、希釈されて、ヒトを含む動物への経口投与用の液体組成物を形成する。例えば、この実施例の一態様において、前記カテコールブタンは、PEG300、PEG400又はPEG400モノラウリン酸(“PEG化合物”)等の水溶性有機溶媒又はPG中に溶解される。別実施例において、ここに記載の前記化合物は、HP-β-CD又はSBE-β-CD等の改変シクロデキストラン中に溶解される。更に別の実施例において、本発明の化合物は、PEG化合物とHP-β-CDとを含む組み合わせ製剤中にて可溶化および/又は希釈される。更に別の実施例において、ここに記載の化合物は、HPMC、CMC又はBE等の改変セルロース中において溶解される。更に別の実施例において、ここに記載の化合物は、HP-β-CDとHPMC又はHP-β-CDとCMC等の、改変シクロデキストランと改変セルロースとの別の組み合わせ製剤中において溶解される。
【0108】
更に別の実施例において、ここに記載の化合物は、イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、TPGS、又はエステル化脂肪酸中において溶解される。例えば、本発明の化合物は、TPGSのみ、又はTween(登録商標)20のみ、又は、TPGSとPEG400又はTween(登録商標)20とPEG400、等の組み合わせ、中に溶解させることができる。
【0109】
更に別の実施例において、本発明の化合物は、ロウ、脂肪乳液、例えば、Intralipid(登録商標)、又は油等の水不溶性脂質中に溶解される。例えば、本発明の化合物は、ペパーミント油のみ、又は、ペパーミント油とTween(登録商標)20及びPEG400、又はペパーミント油とPEG400、又はペパーミント油とTween(登録商標)20、又はペパーミント油とゴマ油との組み合わせ、中にて溶解させることができる。
【0110】
勿論、上述した諸例において、ECを、HPMC又はCMCと置換、又はそれに添加してもよく、PEG300又はPEG400モノラウリン酸を上述した諸例においてPEGと置換、又はそれに添加してもよく、Tween(登録商標)80を上述した諸例において、Tween(登録商標)20と置換、又はそれに添加してもよく、コーン油、オリーブ油、大豆油、ミネラル油、グリセロール、等の他の油を、上記諸例において、ペパーミント油又はゴマ油と置換、又はそれに添加してもよい。
【0111】
更に、加熱を行うことも可能であり、例えば、これらの組成物のいずれかの調製中に、約30℃〜約90℃の温度までの加熱によって、ここに記載の化合物の溶解を達成したり、本発明の化合物の均一に分布した懸濁液を得てもよい。
【0112】
更に別の実施例において、前記カテコールブタンは、なんら担体を伴うことなく、又は担体を使用して、固体として経口投与することができる。一実施例において、ここに記載の前記化合物は、まず、上記諸例と同様、液体担体中にて溶解され、その後、経口組成物として投与用の固体組成物に加工される。例えば、本発明の化合物は、HP-β-CD等の改変シクロデキストラン中に溶解され、組成物は凍結乾燥されて経口投与用に適した粉体が作られる。
【0113】
更に別の実施例において、本発明の化合物は、適当な場合には加熱しながら、TPGS溶液中にて溶解又は懸濁されて、均一に分散した溶液又は懸濁液が得られる。
【0114】
冷却されると、前記組成物は、クリーム状になり経口投与用に適したものとなる。更に別の実施例において、本発明の化合物は、油中にて溶解され、それにミツロウが添加されてロウ状固体製品が作り出される。
【0115】
一般に、前記経口製剤を作るとき、ここに記載の化合物は、より高い安定性を有する組成物を作るために、他の賦形剤が添加される前に、まず、可溶化される。不安定な製剤は望ましくない。不安定な液体製剤は、多くの場合結晶状沈殿物、又は二相性溶液を形成する。不安定な固体製剤は、多くの場合、粒状で塊状の外観であり、時として柔らかすぎる液体を含む。最適な固体製剤は、外観がスムースで均一であり溶解温度範囲が小さい。一般に、製剤中の賦形剤の比率が安定性に影響を与えうる。例えば、ミツロウ等の硬化剤が少なすぎると、製剤は洗練された経口製剤としてはあまりにも柔らかすぎるものとなる。
【0116】
従って、一般に、本発明の液体製剤の場合、使用される賦形剤は、例えばM4N等のここに記載のカテコールブタン化合物の良好な溶媒であるべきである。換言すると、前記賦形剤は、加熱無しでカテコールブタンを溶解可能であるべきである。賦形剤は、更に、安定的な溶液、懸濁液、又は乳液を形成可能であるように、カテコールブタンから独立して、互いに対して適合性を有するものであるべきである。又、一般に、本発明の固体製剤の場合、使用される前記賦形剤は、塊状で不均一な製剤を避けるために、カテコールブタンの良好な溶媒であるべきである。望ましくない、あまりにも柔からすぎる不均一な肌目を回避するために使用される賦形剤は、それらによって、たとえカテコールブタンが無くとも、スムースで均質な固体が形成されるように、互いに対して適合性を有するものであるべきである。
【0117】
治療方法
本発明のカテコールブタンおよび組成物は、インフルエンザウイルス感染に苦しむ対象体に対する治療を提供することが望まれる状況において治療薬として利用される。
【0118】
本発明の方法によって、種々の動物宿主が治療可能であり、それには、ヒト、及びヒト以外の動物、例えば、トリインフルエンザの場合には鳥類、鳥から哺乳動物一般、特にヒトへの種間感染の懸念がある、が含まれる。一般に、そのような宿主は、「哺乳動物(mammals又は、mammalian)」、ここで、これらの用語が、肉食動物(例えば、犬や猫)、げっ歯類(例えば、モルモットやラット)及び、家畜類、ヤギ、馬、羊、ウサギ、ブタ、を含むその他の哺乳動物、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、サル)を含む、哺乳類分類内の生物を記載するのに広く使用されるものである。多くの実施例において、前記宿主はヒトである。ヒトの疾患の治療のためのモデルを提供すること等の、実験調査のために動物モデルが注目される。更に、本発明は、獣医学的治療にも適用可能である。
【0119】
製剤、投与量及び投与経路
上述したように、前記宿主又は対象体に対して有効量の前記活性物質が投与される。典型的には、本発明の組成物は、前記活性物質、すなわち、ここではカテコールブタン、を約1%以下から最大で約99%含有し、任意に、本発明は、前記活性成分を約5%から約90%含有するものとされる。本発明は、更に、前記NDGA誘導体、例えば、M4N、を含む、前記カテコールブタンが、ヒト等の対象体に対して、例えば、ヒト等のその動物の体重に基づいて、約0.1mg/kg以下から約400mg/kgの経口投与量、で投与される組成物を提供する。より具体的には、但し、限定無しの例示として、前記対象体は、好適な投与経路を介して、毎投与当たり約0.01〜約400mg/kg体重、又は、それ以上、例えば、約0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg、10 mg/kg、15mg/kg、25 mg/kg、50 mg/kg、100 mg/kg、150 mg/kg、200 mg/kg、250 mg/kg、300 mg/kg、350 mg/kg、又は400 mg/kgあるいはそれ以上、等の範囲で治療可能である。
【0120】
投与されるべき適当な投与量は、例えば、対象体の一般的健康状態、対象体の年齢、疾患又は状態の状況、対象体の体重、など治療されるべき対象体に応じたものとされる。一般に、子供には約0.1mg〜約500 mgを、大人に約0.1 mg〜約5gを投与することができる。前記有効物質は、単一、或いはより一般的には、複数の用量で投与することかできる。所与の物質に対する好適な投与量は、種々の手段によって当業者によって容易に決定可能である。他の有効な投与量は、投与量反応曲線を形成する通常のトライアルを通じて当業者によって容易に決定可能である。薬剤の量は、勿論、使用されるその特定の薬剤に応じて異なる。
【0121】
投与量と同様、活性物質の投与の頻度も、年齢、体重、疾患状態、健康状態、及び患者の応答性に基づいて治療提供者によって決定されることになるであろう。このように、薬剤は、連続的、断続的、又は一日一回又は複数回、或いは、適当な場合は、従来式決定によって必要に応じて適当なその他の期間、投与することができる。
【0122】
本発明の前記カテコールブタン又は活性物質は、治療的投与のために、種々の製剤に組み込むことが可能である。具体的は、本発明のカテコールブタンは、適当な薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせることによって薬用組成物に製剤され、錠剤、カプセル剤、粉末剤、エアロゾル、リポソーム、ナノ粒子、軟膏、顆粒剤、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、エアロゾルなど、固体、半固体、液体又は気体形態の調製物にすることができる。
【0123】
従って、前記活性物質の投与は、経口、口腔、直腸、鼻腔内、静脈内、皮下、筋肉内、気管内、局所、間質内、経皮等、又は吸入や移植によって達成することが可能である。特に、ナノ粒子、ミセル及びリポソーム製剤は、全身投与でき、これは、非経口、及び鼻腔内投与と同様に、間質内、経口、局所、経皮投与、吸入や移植を通じて、例えば、薬剤標的化、薬剤の生物利用性の促進、薬剤生物活性と安定性の保護、等のために投与することを含む。ここに記載のナノ粒子結合薬剤は、イン・ヴィトロでの長期薬剤滞留を達成するものと期待される。
【0124】
薬剤投与形態において、前記活性物質は、それらの薬学的に許容可能な塩の形態で投与することができ、或いは、単独、又は、他の薬用活性化合物との適当な関連と同様、組み合わせて使用することも可能である。以下の方法及び賦形剤は単に例にすぎず、まったく限定的なものではない。
【0125】
経口投与用として、前記活性物質は、単体で、或いは、適当な担体と組み合わせて、溶液や懸濁液の形態の液体として、又は錠剤、粉末剤、顆粒剤、又はカプセル剤の形態の固体として、使用することができ、従来の添加物、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ等と共に;結合剤、例えば、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン等と共に;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム等と共に;滑沢剤、例えば、タルクやステアリン酸マグネシウム等と共に、そして、所望の場合には、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味料、と使用することができる。
【0126】
溶媒、アジュバント、担体又は希釈剤、等の前記薬学的に許容可能な賦形剤は、従来技術である。適当な溶媒賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、など、及びこれらの組み合わせである。更に、所望の場合には、前記ビヒクルは、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤等の少量の副物質を含むことができる。そのような投与形態を作成する実際の方法は公知であるか、もしくは、当業者にとって明白であろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 第17版、1985年を参照。投与される組成物又は製剤は、いずれの場合にも、治療対象体において望ましい状態を達成するために適切な量の前記物質を含んだものとされる。
【0127】
前記活性物質は、水溶性又は水不溶性溶媒中に溶解、懸濁、又は乳化することによって、注射用製剤に調合することができ、例えば、植物又はそれに類似の油等、例えば、コーン油、ひまし油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル又はプロピレングリコールなどを含み;そして、所望の場合には、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤等の従来からの添加剤と共に、調合することができる。本発明によるカテコールブタンの非経口送達用の適当な治療用製剤は、更に、ここにそれらの内容の全体を参考文献として合体させる、米国仮特許出願第60/647,648号、2005年1月27日出願、及び認ormulations for Injection of Cathecholic Butanes, Including NDGA Compounds, Into Animalsと題する国際出願第PCT/US2006/00287号、2006年1月27日出願、国際公開WO226/081364A2、2006年8月3日公開、に開示されている種々の注射可能担体/賦形剤も含む。
【0128】
前記活性物質は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にも利用可能である。本発明の前記化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧化が許容可能な噴霧剤をも形成することができる。
【0129】
更に、前記活性物質は、乳化塩や水溶性塩等の種々の塩と混合することによって坐剤にもすることができる。本発明の前記化合物は、坐剤を通じて直腸内に投与することができる。前記坐剤は、体温で溶解ずるが、室温ではまだ硬いままである、ココアバター、カーボワックス(carbowax)、ポリエチレングルコール等の溶媒を含むことができる。
【0130】
各単位投与量、例えば、小さじ、大さじ、錠剤、又は坐剤が、単数又は複数の活性物質を含有する前記組成物を所定量含む、シロップ、エリキシル、縣濁剤等の、経口又は直腸内投与用の単位投与形態を提供することができる。同様に、注射又は静脈内投与用の単位投与量形態は、前記活性物質(単数又は複数)を、滅菌水、生理食塩水又はその他の薬学的に許容可能な担体、として組成物中に含むことができる。
【0131】
ここで使用される前記用語「単位投与量形態」は、ヒト及び動物の対象体に対する単位投与量として適当な物理的に分離した単位であって、本発明の化合物の予め決められた量を含有する各単位が、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、又は溶媒との関連において、所望の作用を作り出すため十分量が計算される。本発明の新規な単位投与量形態の仕様は、使用される個々の化合物、達成されるべき作用、宿主内の各化合物に関連する薬物力学に依存する。
【0132】
本発明には、複数又は単位投与量の前記活性物質を備えるキットが含まれる。そのようなキットにおいて、前記NDGA誘導体を含む組成物の複数又は単一用量を含有する容器は、対象の病理状態、この場合には、インフルエンザ及び特にはインフルエンザ亜型H5N1、を治療することにおける薬剤の利用法と主治医(attendant)の利点を記載した取扱説明書を備える情報パッケージ挿入物として構成される。
【0133】
ナノ粒子(NP)の調製
本発明は、NP調製物中のカテコールブタンの製剤を含む。ここでの使用に適した種々多様なNP製剤を、その投与方法に応じて作成することができる。NP製剤は、分子量、コポリマー比、薬剤負荷(drug loading)、微粒子径、多孔性、製剤条件を制御することによって、所望の薬剤放出プロファイルに応じて異なるものとすることができる。NP製剤は、又、その製造プロセスに使用されるポリマー、安定剤、界面活性剤、に応じて異なるものとすることも可能である。異なる賦形剤が、薬剤摂取量、体内での薬剤分布、血清中での薬剤の滞留性、に対して異なる作用を有するものとすることも可能である。当業者は、所望の特性又は特徴、を決定し、従って使用する適当なNP製剤を決定することができるであろう。
【0134】
前記NPのポリマー基質は、生物適合性、生物利用性、物理的強度、処理の容易性の基準を満たさなければならない。この目的のために最もよく知られているポリマーは、生物分解性ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(“PLGA”)である。
【0135】
ここでのNPは、従来式の任意の処理によって製造することができる。一実施例において、前記NPは、例えば、ロックマン(Lockman)他著の文献(Lockman, P.R.他、”Nanoparticle Technology for Drug Delivery Across the Blood-Brain Barrier”、Drug Development Indus. Pharmacy.、第28巻、第1号:第1〜13頁. (2002年))に記載されているようにして製造することができる。製造プロセスのタイプには、例えば、乳化重合、界面重合、脱溶媒和蒸発(desolvation evaporation)及び溶媒析出がある。
【0136】
ここでのNPを製造する乳化重合処理において、その重合処理は、例えば、クロイター(Kreuter)著の文献(Kreuter, J.,“Nanoparticles, In Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, Swarbick, J:; Boylan, J.C. Eds: “Marcel Dekker (New York, 1994年)、第165〜190頁、(1994年))に記載されているように、単一のモノマー単位からポリマー鎖を構築することから成る。重合は、例えば、高エネルギ放射、UV光、又はヒドロキシイオンの使用等によってフリーラジカル又はイオン形成を開始した後に室温で自然に起こる。一旦、重合が完了すると、溶液をろ過し、中和する。ポリマーは、約100〜107のポリマー分子から成るミセルおよび小滴を形成する。この処理において、一般に、界面活性剤と安定化剤は不要である。また、この処理は、水相ではなく有機相で達成することが可能である。
【0137】
ここでのNPは、又、例えば、コウリ(Khouri)他著の文献(Khouri, A.I.他著、“Development of a new process for the manufacture of polyisobutyl-cyanoacrylate nanoparticles,”、Int. J. Pharm., 第28巻:第125頁、(1986年))に記載されているように界面重合処理によって作成することができる。このプロセスにおいて、モノマーを使用して前記ポリマーを形成し、水相と有機相が、均質化、乳化、または高トルク物理的攪拌での微小溶液操作によって混合される時に、重合が起こる。例えば、カテコールブタンを含有するポリアクリルシアノアクリル酸ナノ粒子を、有機相中で親油性カテコールブタンと前記モノマーとを組み合わせ、この組み合わせを油中に溶解させ、この混合物を常時攪拌しながら小さな管を通してゆっくりと水相に添加することによって作成することができる。その後、前記モノマーは、アニオン重合によって、200〜300nmのカプセルを自然に形成する。このプロセスのバリエーションは、例えば、フェッシ(Fessi)他著の文献(Fessi, He.他、“Nanocapsule formation by interfacial deposition following solvent displacement”Int. J. Pharm.,、第55巻:R1-R4(1989年))に、記載されているように前記モノマーと薬剤とを含有する有機相に対して、安息香酸ベンジル、アセトン及びリン脂質の溶媒混合物を添加するものである。これによって、前記薬剤がカプセル化され、それが標的組織に到達するまで劣化に対して保護される製剤が作り出される。
【0138】
NPの製造における油変性及び脱溶媒和処理において、アルブミンやゼラチンなどの高分子を使用することができる。油乳化変性処理において、大きな高分子は、均質化によって有機相に取り込まれる。取り込まれた後、常時攪拌しながら、高分子はゆっくりと水相に注入される。これら二つの不混合相の導入によって形成されるナノ粒子は、その後、アルデヒドでの、又は加熱変性による、クロスリンクによって硬化させることができる。
【0139】
或いは、高分子は、「脱溶媒和」によってNPを形成することができる。この脱溶媒和処理において、高分子は、溶媒中に溶解し、その中で、高分子は、腫大したコイル形態で留まる。次に、腫大した高分子を、例えばpHや電荷等、環境を変化させることによって、或いは、エタノール等の脱溶媒和剤を使用することによって、緊密にコイルするように誘導される。その後、高分子は、アルデヒドへのクロスリンクによって、固定、硬化することができる。前記NDGA化合物は、誘導体がその新たに形成された粒子内に取り込まれるように、クロスリンクの前に前記高分子に吸着又は結合させることができる。
【0140】
固体脂質NPを、高圧均質化によって作成することができる。固体脂質NPは、殺菌しオートクレーブ処理することが可能で、それによって制御された放出を提供する固体基質を有するという利点を有する。
【0141】
本発明は、更に、様々な薬剤負荷の方法を有するNPを含む。前記NPは、その内部に薬剤が均質に分散した固体コロイド状NPとすることができる。前記NPは、薬剤が、例えば、吸着等によってNPの外側に結合した固体NPとすることができる。前記NPは、その内部に薬剤が取り込まれたナノ粒子とすることができる。前記NPは、更に、適当な組織への標的化送達のための細胞表面リガンドと共に薬剤がその内部に均質に分散した固体コロイド状NPとすることができる。
【0142】
前記NPのサイズは、所与の投与態様のためのそれらの有効性に関連するかもしれない。NPは、典型的に、約10nm〜約1000nmであり、任意に、NPは、約30nm〜約800nm、更に、典型的に、60nm〜約270nm、更に典型的に、約80nm〜約260nm、又は約90 nm〜約230nm、又は約100nm〜約195nm、とすることができる。例えば、重合中に使用される溶液のpH、開始トリガー(熱や放射線等)の量、モノマー単位の濃度等の複数の要因がNPのサイズに影響し、これらの全てを、当業者は調節することが可能である。NPのサイズ調節(sizing)は、光拡散を使用する光子相関分光法によって行うことができる。
【0143】
例えば、多糖類NP、又は、アルブミンNP等のここでのNPは、任意に、脂質コーティングによってコーティングしてもよい。例えば、多糖類NPは、ジパルミトイルホスファチジルコリンやコレステロールコーティングを含むもの等、脂質二重層有り又は無しで、リン酸(アニオン性)や第4アンモニウム(カチオン性)リガンドとクロスリンクすることができる。他のポリマー/安定化剤には、非限定的に、大豆油、マルトデキストラン、ポリブチルシアノアクリル酸、ブチルシアノアクリル酸/デキストラン70kDa、ポリソルベート−85、ポリブチルシアノアクリル酸/デキストラン70kDa、ポリソルベート−85、ステアリン酸、ポリ-メチルチメリアクリル酸がある。
【0144】
NPへの吸着等によって、前記カテコールブタンを含有するNP製剤は、インフルエンザの治療のために静脈内投与することができる。これらのNP製剤の細網内皮細胞による望ましくない取り込みを避けるために、NPを、界面活性剤でコーティングしたり、磁気反応材とともに製造することができる。
【0145】
従って、任意に、界面活性剤をNPとの共役状態で使用することができる。例えば、ポリブチルシアノアクリル酸NPを、デキストラン―70,000安定化剤とポリソルベート−80を界面活性剤として共に使用することができる。その他の界面活性剤としては、非限定的に、ポリソルベート−20、40又は60;ポロキサマー188;脂質コーティング−ジパルミトイルホスファチジルコリン;Epikuron200;ポロキサマー388;ポロキサマー908;ポロキサマー407、がある。例えば、ポロキサマー980を界面活性剤として使用して、肝臓、膵臓、及び骨髄のRESへのNPの取り込みを減少させることができる。
【0146】
前記磁気反応材は、前記組成物に組み込んでNPを作成することが可能なマグネタイト(Fe3O4)とすることができる。これらの磁気反応性NPは磁石によって外部から案内することができる。
【0147】
別実施例において、ここでのNPは、ポリ(ラクチド-co-グリコシド(PLGA)やd-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(ビタミンE TPGS又はTPGS)のブレンドを使用してMu及びFengに記載されているように製造することができる(Mu, L及びFeng, S.S.,、“A novel controlled release formulation for the anticancer drug paclitaxel (Taxol(登録商標)) :PLGA nanoparticles containing vitamin TPGS”,J. Control. Rel.、第36巻:第33〜48頁(2003年))。後者は、マトリクス材であることに加えて、乳化剤としても作用可能である。
【0148】
ミセル形成担体の調製
本発明は、ミセル形成担体に製剤されるカテコールブタンを含み、ここで前記ミセルは従来の方法で作られる。そのようなものの例は、例えば、リッギンス(Liggins)著の文献(Liggins, R.T.及びBurt, H.M.,著、“Polyether-polyester diblock copolymers for the preparation of paclitaxel loaded polymeric miscelle formulations”.Adv. Drug Del. Rev.、第54巻:第191〜202頁(2002年)); ツァン(Zhang)他著の文献(Zhang, X他、“Development of amphiphilic diblock copolymers as micellar carriers of taxol”Int. J. Pharm, 第132巻:第195〜206頁(1996年);及びチャーチル(Churchill)の文献(Churchill, J.R.,及びHutchinson, F.G. “Biodegradable amphiphatic copolymers”米国特許第4,745,160号(1998年)、に記載されている。そのような1つの方法において、親水性(ポリエーテル)と疎水性(ポリエステル)セグメントを有する両親媒性ポリマーである、ポリエーテル-ポリエステルブロックコポリマーがミセル形成担体として使用される。
【0149】
別のタイプのミセルは、例えば、トゥザール(Tuzar)著の文献(Tuzar, Z.およびKratochvil, P.,、“Block and graft copolymer miscelles in solution”、Adv. Colloid Interface Sci.、第6巻:第201〜232頁、(1976年);及び、ウィルヘルム(Willhelm)他著の文献(Wilhelm, M.他、“Poly(styrene-ethylene oxide) block copolymer miscelle formation in water: a fluorescence probe study”、Macromolecules 第24巻:第1033〜1040頁(1991年))に記載されているように、それらの両親媒性によって水性媒体中でミセル構造を形成することが知られている、親水性セグメントと疎水性セグメントとの両方を有するAB-型ブロックコポリマーによって形成される。これらのポリマー性ミセルは、ミセル内側コア内に取り込まれた疎水性薬剤の高い含有量にもかかわらず、十分な水安定性を維持することができる。そのサイズの範囲が約<200nmであるこれらのミセルは、非選択性RES除去作用を減少させる点において有効であり、増強された透過性と残留率を示す。
【0150】
更に、例えば、ポリ(D, L-ラクチド)-b-メトキシポリエチレングリコール(MePEG: PDLLA)二元ブロックコポリマーを、MePEG 1900及び5000を使用して作成することができる。その反応は、オクチル酸スズ(0.25%)を触媒として使用して、160℃で3時間進行させる。但し、もしも反応を約6時間で進行させることができるならば、130℃もの低い温度を使用することが可能であり、或いは、反応を約2時間しか進行させることが出来ないのであれば、190℃もの高い温度を使用することができる。
【0151】
一実施例において、N-イソプロピルアクリリアミド(“IPAAm”)(興人、東京、日本)とジメチルアクリルアミド(和光純薬、東京、日本)を使用して、コホリ,エフ(Kohori, F.)他著の文献(1998年)(Kohori, F.他、“Preparation and characterization of thermally Responsive block copolymer micelles comprising poly (N-isopropylacrylamide-b-D, L-lactide.”J. Control. Rel.、第55巻:第87〜98頁(1998年))の方法を使用して、ラジカル重合処理でヒドロキシル−末端ポリ(IPAAm-co-DMAAm)を作成することができる。得られたコポリマーを、冷水に溶解させ、10,000及び20,000分子量カットオフの2つの限外ろ過膜でろ過することができる。前記ポリマー溶液は、まず、20,000分子量カットオフ膜を通してろ過される。次に、そのろ過物を、再び、10,000分子量カットオフ膜を通してろ過する。結果として3つの分子量画分、低分子量、中分子量及び高分子量画分が得られる。次に、ブロックポリマーは、前記中分子量画分のポリ(IPAAm-co-DMAAm)の末端ヒドロキシ基からのD,L-ラクチドの開環重合によって合成することができる。これによって得られるポリ(IPAAm-co-DMAAm)-b-ポリ(D, L-ラクチド)コポリマーは、コホリ,エフ(Kohori, F.)他著の文献(1999年)(Kohori, F.他、“Control of adriamycin cytotoxic activity using thermally responsive polymeric miscelles composed of poly(N-isopropylacrylamide-co-N,N-dimethylacrylamide)-b-poly(D, L-lactide”、Colloids Surfaces B: Biointerfaces、第16巻:第195〜205頁、(1999年)に記載されているように精製することができる。
【0152】
前記カテコールブタンは、ミセルの内側コアに装填することができ、同時に透析法によってミセルが調製される。例えば、カテコールブタンの塩化物を、N, N-ジメチルアセチルアミド(“DMAC”)に溶解させ、トリエチルアミン(“TEA”)を添加することができる。前記ポリ(IPAAm-co-DMAAm)-b-ポリ(D, L-ラクチド)ブロックコポリマーをDMACに溶解でき、蒸留水を添加することができる。カテコールブタンの溶液と前記ブロックコポリマーの溶液を室温で混合し、その後、12,000-14,0000分子量カットオフの透析膜(Spectra/Por(登録商標)2、spectrum Medical Indus., CA, U.S.A.)を使用して25℃で蒸留水に対する透析を行う。カテコールブタンを取り込んだポリ(IPAAm-co-DMAAm)-b-ポリ(D, L-ラクチド)ミセルを、コホリ,エフ(Kohori, F.)他著の文献(1999年)前出、に記載されているように、20nm孔径の微量ろ過膜(ANODISCTM, Whatman International)でのろ過によって精製することができる。
【0153】
カテコールブタンを含有する多小胞体リポソーム(“MVL”)の作成
多小胞体リポソーム(“MVL”)を、例えば、マントリプルガーダ(Mantriprgada)著の文献(Mantriprgada, S.,、“A lipid based depot (DepoFoam(登録商標) technology)for sustained drug delivery,”,ProgLipid Res.、第41巻:第392〜406頁(2002年))に記載されているもののような二重乳化処理等の任意の従来技術によって作成することができる。簡単に説明すると、この二重乳化処理において、単数又は複数の揮発性有機溶媒中に、トリグリセリド等の少なくとも1つの中性脂肪を含有するリン脂質などの両親媒性脂質を溶解させることによってまず油中水乳濁液が作られ、この脂質成分に対して、非混合性第1水性成分と、疎水性カテコールブタン等の疎水性カテコールブタンを添加する。次に、この混合物を、乳化して油中水乳濁液を形成し、その後、これを、第2非混合性水性成分と混合し、その後、物理的混合を行って、前記第2水性成分中に懸濁した溶媒小球を形成し、これによって水中油中水乳濁液を形成する。前記溶媒小球は、その中にカテコールブタンが溶解した複数の水性小滴を含んだものとなる。次に、前記有機溶媒を、一般に、蒸発、減圧、又は、ガスのスチームを懸濁液上又は懸濁液を通して通過させることによって、前記球から取り除く。溶媒が完全に除去されると、前記球は、DepoFoam粒子等のMVLになる。この処理において中性脂肪を省略する場合、MVLの代わりに、従来の多層小胞又は単層小胞が形成される。
【0154】
経口送達用のカテコールブタンの調製
いくつかのカテコールブタンは、G4Nなどのように水溶性、親水性化合物である。本発明は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤中の親水性化合物の製剤と、前記化合物の水溶液形態などの、そのような経口用製剤等の送達を含み、或いは、前記化合物は、凍結乾燥させて粉末剤として送達されたり、錠剤に形成されたり、あるいは、前記化合物はカプセル化することができる。
【0155】
ここでの前記錠剤は、腸溶性コーティングされた錠剤とすることができる。ここでの製剤は、持続性放出および/又は遅延放出又は急速放出のいずれかを含む除放性製剤とすることができる。
【0156】
前記経口用製剤に含まれるカテコールブタンの量は、対象体に対して投与される所望の投与量に応じて調節することができる。そのような調節は当業者の技量の範囲内である。
【0157】
M4N等の、一部のカテコールブタンは、疎水性又は親油性化合物である。前記化合物の水性腸液への溶解の速度又は程度を増進することが可能な薬学的に許容可能な担体を使用することによって、腸における親油性化合物の吸収を改善することができる。例えば、スタッチリック(Stuchlik)著の文献(Stuchlik, M and Zak, S., “Lipid-Based Vehicle for Oral Delivery, Biomed.Papers、第145巻、第2号:第17〜26頁、(2001年))に記載されているもののように、脂質担体は公知である。ここでの製剤は、経口用液体として投与することができ、或いは、種々のタイプのカプセルにカプセル化することができる。
【0158】
本発明は、一実施例において、そのような化合物のトリアシルグリセロールへの溶解によって経口投与用に調製される親油性カテコールブタンを含有する製剤を含み、その後、前記製剤は、経口投与用にカプセル化される。トリアシルグリセロールは、グリセロール分子に結合した長鎖および/又は中鎖の脂肪酸を有する分子である。前記長鎖脂肪酸は、C14〜C24の範囲であり、一般的な脂肪に見られる。前記中鎖脂肪酸は、C6〜C12の範囲であり、ココナッツ油や椰子種子油に見られる。ここでの使用に適したトリアシルグリセロールは、同じグリセロール分子上においてエステル化された短鎖又は中鎖脂肪酸のいずれか又はその両方、の混合物を含有する構造化脂質を含む。
【0159】
本発明の別実施例において、単数又は複数の界面活性剤を、カテコールブタンと脂質担体との混合物に対して、薬剤が油/界面活性剤混合物の細かい小滴中に存在するように、添加することができる。これらの界面活性剤は、胃腸液中での希釈時に、油性製剤を分散させるように作用することができる。
【0160】
本発明は、更に、親水性界面活性剤と油とから成る微小−乳濁液の形態である、カテコールブタンの経口投与用の製剤も含む。前記乳濁液粒子は、可溶化された油と薬剤とを含有する界面活性剤ミセルとすることができる。
【0161】
固体液体ナノ粒子調製物中のカテコールブタンの製剤も経口投与用に適している。固体液体ナノ粒子は、例えば、スタッチリック,エム(Stuchlik, M)及びザック,エス(Zak, S.)の文献(2001年)前出、に記載されているもののような、任意の従来技術によって作成することができる。
【0162】
一実施例において、前記固体液体ナノ粒子は、昇温での融解した脂質の均質化による熱均質化処理によって調製可能である。この処理において、前記固体脂質が融解され、この融解した脂質にカテコールブタンが溶解される。次に、予熱した分散媒体を前記薬物−負荷脂質融解物と混合し、この組み合わせを、均質化剤と混合して粗プレ乳濁液を形成する。次に、前記脂質の溶融温度以上の温度で高圧均質化処理を行って、油/水ナノ乳濁液を作る。このナノ乳濁液を室温にまで冷却して固体脂質ナノ粒子を形成する。
【0163】
本発明の別実施例において、前記固体脂質ナノ粒子は、冷均質化処理によって調製することができる。この処理において、前記脂質は、融解され、カテコールブタンがこの融解した脂質に溶解される。次に、薬剤−負荷脂質を液体窒素又はドライアイス中で固化する。この固体薬剤−脂質を、粉砕機で粉砕して50〜100μmの粒子にする。次に、これら脂質粒子を、低温水性分散溶媒中に分散させ、室温又はそれ以下で均質化されて、固体脂質ナノ粒子にする。
【0164】
本発明は、更に、経口投与用の、リポソーム又はミセル中の親油性カテコールブタンの製剤を含む。これらの製剤は、任意の従来方法で作ることが可能である。ミセルは、通常、疎水性薬剤が単層上の疎水性領域と関連している脂質単層小胞である。リポソームは、通常、リン脂質二層小胞である。親油性カテコールブタンは、通常、これらの小胞の中央に位置する。
【0165】
本発明による経口投与用のカテコールブタンの更に別の適当な製剤は、ここにそれらの全体を参考文献として合体させる、、2005年1月27日出願の米国仮特許出願No. 60/647,495、2006年1月27日出願の国際特許出願、「NDGA化合物を含むカテコールブタン投与用の経口製剤」と題する、代理人整理番号第682714-9WO号に記載されている。
【0166】
鼻腔内投与用カテコールブタンの製剤
本発明は、鼻腔内投与用カテコールブタンの製剤及びその鼻腔内投与を含む。鼻腔内投与は、静脈内投与によって達成可能なものよりも脳内での活性物質の高い濃度を作り出すことが可能である点で有利である。更に、この態様の送達は、薬剤を受ける対象体の肝臓と腸での初回通過代謝の問題を回避するものである。
【0167】
吸収可能な活性物質の量は、部分的には、その薬剤の、粘膜中の溶解性に依存し、ここで、約95%の血清タンパク質の水溶液と、糖タンパク質、脂質、及び電解質からなる組成物である。一般に、ここでの活性物質の親油性が増大するにつれて、CSF中の薬剤濃度も増大する。例えば、(Minn, A.他、“Drug transport into the mammalian brain: the nasal pathway and its specific mebabolic barrier”、J. Drug Target、第10巻:第285〜296頁、(2002年))を参照。
【0168】
前記疎水性カテコールブタンは、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等の薬学的に許容可能な担体中において溶解することが可能である。一実施例において、例えば、カオ(Kao)他の文献(Kao, H.D.他、“Enhancement of the Systemic and CNS Specific Delivery of L-Dopa by the Nasal Administration of its Water Soluble Prodrugs,”、Pharmaceutl. Res.,、第17巻、第8号:第978〜984頁(2000年))に記載されているように、0.05MのpH7.4のリン酸緩衝液を、担体として使用することができる。
【0169】
本発明の薬剤の鼻腔内投与は、薬剤を投与する時の対象体の位置を調節することによって最適化することができる。例えば、最大の作用を得るために、患者の頭部を、直立-90度、背臥位-90度、背臥位-45度、又は背臥位-70度など様々に位置決めすることができる。
【0170】
前記カテコールブタンの組成物の担体は、薬学的に許容可能で、組成物の活性物質と適合可能な任意の材料とすることができる。前記担体が液体の場合、それは鼻液に対して低張又は等張で、かつ、約4.5〜約7.5のpH範囲内のものとすることができる。前記担体が粉体形態である場合、それも許容可能なpH範囲内のものである。
【0171】
前記鼻腔内投与用の担体は、任意に、鼻粘膜を横断して嗅覚神経経路を介して脳内への活性物質の吸収を促進することが可能な親油性物質を含むことができる。そのような親油性物質の具体例は、非限定的に、ガングリオシド、ホスファチジルセリンを含む。ミセル形態等で、単数又は複数種の親油性アジュバントを、前記組成物に含ませることができる。
【0172】
インフルエンザ治療のための対象体への鼻腔内送達用の活性物質の前記薬用組成物は、例えば、米国特許第6,180,603に記載されているように、従来の方法によって調製することができる。例えば、ここの前記組成物は、粉末剤、顆粒剤、溶液、エアロゾル、滴下剤、ナノ粒子、又はリポソームとして調製することができる。前記活性物質に加えて、前記組成物は、適当なアジュバント、緩衝液、保存剤、塩を含むことができる。点鼻薬等の溶液は、抗酸化剤、緩衝剤等を含むことができる。
【0173】
移植による送達
ここでのカテコールブタンは、例えば、カテコールブタンを含有する生分解ポリマーの皮下移植など、外科移植による治療のために対象体に送達することができる。この治療は、外科治療とは別に又は外科治療に追加して、他の従来式治癒法と組み合わせることができる。
【0174】
従って、ここでの前記生分解ポリマーは、宿主組織に対する毒性又は悪影響無く、腸液に溶解する、任意のポリマー又はコポリマーとすることができる。好ましくは、前記ポリマー又はそこから前記ポリマーが合成されるモノマーは、ヒトへの投与が連邦食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって認可されたものである。溶解の速度を制御するべく1つのモノマーの比率を他のものよりも高めるなど、崩壊の力学を制御するために、異なる溶解特性を有する複数のモノマーを含むコポリマーが好適である。
【0175】
一実施例において、前記ポリマーは、フレミング,エイ・ビー(Fleming A.B.)及びザルツマン,ダブリュ・エム(Saltzman, W.M.)著、Pharmacokinetics of the Carmustine Implant, Clin. Pharmacokinet,、第41巻、第6号、第403〜419頁(2002年)及びブレム,エイチ(Brem, H,) 及びガビキアン,ピー(Gabikian, P.)著、“Biodegradable polymer implants to treat brain tumores”,J. Control, Rel.、第74巻:第63〜67頁、(2001年)に記載されているように、1, 3-ビス-(p-カルボキシルフェノキシ)プロパン及びセバシン酸[p(CPP:SA)]である。別実施例において、前記ポリマーは、フー(Fu)他の文献(Fu. J.他、“New Polymeric Carriers for Controlled Drug Delivery Following Inhalation or Injection,”,Biomaterials、第23巻:第442 5〜4433頁(2002年))に記載されているように、ポリエチレングリコール(“PEG”)とセバシン酸とのコポリマーである。
【0176】
ポリマー送達システムは、ここに記載の疎水性カテコールブタンと親水性カテコールブタンとの両方の投与に適用可能である。これらのカテコールブタンは、前記生分解ポリマーと組み合わされて外科移植される。いくつかのポリマー組成物は、静脈内及び吸入治療用にも使用可能である。
【0177】
吸入による投与
ここに記載のカテコールブタンは、吸入を通じて肺に投与することにより、全身および/又は局所に送達される。薬剤の吸入投与は、多大な全身毒性を誘引することなく肺組織に対する高い薬剤濃度を達成する方法として、又、薬物の全身循環を達成する方法として広く受け入れられている。そのような製剤を製造する技術は従来技術である。肺疾患に対する有効性は、このようにして送達される疎水性カテコールブタン又は親水性カテコールブタンのいずれでも見られる。
【0178】
吸入による肺送達のために、ここに記載のカテコールブタンは、乾燥粉末、水溶液、リポソーム、ナノ粒子、又はポリマーに調製され、例えば、エアロゾルとして投与することができる。親水性製剤も、全身投与のために、肺胞表面を通して血液流へと摂取することができる。
【0179】
一実施例において、ここに記載の活性物質を含有するポリマーは、フー,ジェイ(Fu, J.)他著の文献(2002年)前出、に記載されているように製造、使用される。例えば、前記ポリマーは、セバシン酸とポリエチレングリコール(“PEG”)とのポリマー、又は、ポリ(ラクチック-co-グリコール)酸(“PLGA”)のポリマー、又は、ポリエチレンイミン(“PEI”)及びポリ-L-リジン(“PLL”)のポリマーとすることができる。
【0180】
別実施例において、吸入送達用の前記カテコールブタンは、チョイ(Choi)他著の文献(Choi, W. S.他、“Inhalation delivery of proteins from ethanol suspensions”,Proc. Natl. Acad. Sci, placecountry-regionUSA. 第98巻、第20号:第11103〜11107頁(2001年))に記載されているように、噴霧化の前に、生理食塩水又はエタノールに溶解させ、そして投与することができる。
【0181】
別の実施例において、ここに記載の前記物質は、例えば、パットン(Patton)他著の文献(Ppatton, J.S.他、“Inhaled Insulin”,Adv. Drug Deliv. Reve.、第35巻:第235〜247頁(1999年)(2001年)に記載されているように、従来方法で、乾燥送達、調製させる場合にも有効である。
【0182】
本発明は、例えば、ゴンダ,アイ(Gonda, I.)他著、(1998年) “Inhalation delivery systems with compliance and disease management capabilities.”J. Control. Rel, 53: 269-274に記載されているように、SmartMist(登録商標)やAERx(登録商標)等の薬剤投与装置に埋め込まれたマイクロプロセッサを利用するカテコールブタンの投与を含む。
【0183】
本発明の前記カテコールブタン及び組成物は、全てのインフルエンザウイルス感染を治療するために投与される。いくつかの好適実施例において、治療されるインフルエンザ型は、トリインフルエンザ型に基づく。いくつかの好適実施例において、前記カテコールブタン及び組成物は、トリ型インフルエンザに感染したヒト対象体に対して投与される。更に、いくつかの好適実施例において、前記カテコールブタン及び組成物は、ヒトインフルエンザ感染とトリインフルエンザ感染との組み合わせを患うヒトの対象体に投与される。本開示を読了後、当業者は、本発明の製剤の投与によって治療および/又は軽減可能であるかもしれないその他の疾患状態および/又は症候を認識するであろう。
【0184】
いかなる特定のインフルエンザ発症又は症候反応の理論によっても限定されるものではないが、ヒトにおけるインフルエンザウイルス感染は、炎症誘発性サイトカイン調節異常を誘導するものと考えられる。重度のヒトH5N1疾患の臨床的特長は、ウイルス誘導サイトカイン調節異常と適合する。全てのインフルエンザウイルス感染が炎症誘発性サイトカインを誘導するものと考えられるが、H5N11/97ウイルスは、ヒトインフルエンザAウイルス亜型H3N2やN1N1よりも遥かに高い炎症誘発性サイトカインの遺伝子転写を誘導した(Cheung CY、Poon LL、Lau AS,他著“Induction of proinflammatory cytokines in human macrophages by influenza A (H5N1) viruses: a mechanism for the unusual severity of human disease?”Lancet, 2002 360 (9348):第1831〜7頁)。特に誘導されたサイトカインはTNF-α(ここでも図面において“TNF”として記載)と、イン・ヴィトロヒト一次単球誘導マクロファージのインターフェロンベータであった(同上)。
【0185】
インフルエンザウイルス感染は、多くの場合、重度の風邪のような症状を示し、呼吸器系障害および/又は致死的肺炎に導くことが多い。H5N1インフルエンザ亜型に感染した患者は、急性呼吸器困難及び多器官機能障害の症候群によって悪化される一次ウイルス肺炎を患ってきた。これらの患者の一部においてリンパ球減少と血球貧食現象が顕著に見られる。血球貧食現象と急性呼吸器困難及び多重器官機能障害の症候群は、一般にサイトカイン調節異常と関連付けられている。1997年のN5N1-関連死亡の死亡後報告は、炎症性サイトカインIl-6, IFN-γ及びTNF-αの高い濃度の反応性血球貧食症状を報告している。インフルエンザ感染に関連する多くの疾患又は障害があり、それらは非限定的に、喘息、肺炎、インフルエンザ後脳炎、細菌性筋肉炎、心電図変化、気管支炎、結核、癌、リウマチ様関節炎、変形性関節症、強皮症、全身性エリテマトーデス、腎炎、嚢胞性繊維症、悪液質、全身筋力低下、心不全、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症またはギランバレー症候群を含む。
【0186】
ヒトH5N1/97などの2003年のヒトH5N1ウイルスは、イン・ヴィトロでのヒト単球誘導マクロファージによる炎症誘発性サイトカインの過剰ポピュレーションを誘導したことが示された。TNF-αは、ヒトウイルスに類似の遺伝子型を有する家禽類からのH5N1ウイルスによって一次ヒトマクロファージにおいて高度に誘導される(Guan, Y, Poon LL, Cheung CY,他著、“H5N1 influenza: a protean pandemic threat”“Proc Natl Acad Sci USA, 2004 101(21) 8156-61)。従って、マクロファージからの高いレベルのTNF-αとその他のサイトカインは、インフルエンザA感染を有する患者の疾患の重度、特に、H5N1「トリインフルエンザ」の患者における異常な臨床的状態と疾患重度、に関連していると考えられる。全身性炎症反応、多器官機能障害、急性呼吸困難症候群、反応性haemophagocytosis、リンパ球減少が重度のN5N1疾患の患者の顕著な特徴であった。
【0187】
TNF-αは、そのアポトーシスを誘導する能力で良く知られている。アポトーシス誘導活性は、又、インフルエンザ発病にも寄与する。というのは、アポトーシスが効率的なインフルエンザウイルス複製に必須であるからである。ヒト及びトリインフルエンザウイルスの両方の効率的な複製が、TNFスーパーファミリメンバTRAIL及びFasLの上方調節と関連つけられている(Wurzer WJ, Ehrhardt C, Pleschka S,他著、“NF-kappaB-dependent induction of tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) and Fas/FasL is crucial for efficient influenze virus propagation”J. Biol Chem, 2004年、第279巻、第30号:第30931〜1頁).
【0188】
ここでも、特定の理論によって限定されるものではないが、インフルエンザウイルスゲノムRNAに応答する炎症誘発性サイトカインの産生の増加は、免疫系のサイトカインの膜上のToll様受容体によってシグナリングされることが示唆され、そのように考えられる(Diebold SS.、Kaisho T.、Hemmi H.他著、“Innate antiviral responses by means of TLR-7-mediated recognition of single-stranded RNA” Science, 2004 303(5663): 1529-31)。リポ多糖類(“LPS”、バクテリアエンドトキシンによるマクロファージの刺激は、更に、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-10などの炎症誘発性サイトカインや、プロスタグランジンや、ロイコトリエンや血小板活性化因子等の炎症誘発性脂質メディエーターの産生ももたらす。LPSに応答するサイトカイン産生は、インフルエンザウイルス応答に類似して、Toll様受容体経路を介して作用するものであることが示されている(Takeda K, Kaisho T、及び Akira S.著、“Toll-like receptors,”Annu Rev Immunol,、2003年、第21巻:第335〜76頁)。
【0189】
例えば、M4NやG4N等の一般式(I)、(II)及び(III)のカテコールブタン、そして、本発明によるカテコールブタンの単数又は複数を含む組成物は、マウス単球誘導マクロファージにおけるLPS又はウイルス感染に応答する、TNF-αとその他の炎症誘発性サイトカイン、及び、プロスタグランジンE2及びその他炎症誘発性脂質メディエーター、の産生を抑制する。マウス単球誘導マクロファージ細胞ライン(RAW264.7)は、一次ヒトマクロファージに匹敵して、LPSに応答するTNF-α産生を高度に誘導し、従って、TNF系におけるヒト薬剤作用を予想するための適当なモデルとなる。
【実施例】
【0190】
以下、本発明を、添付の非限定的に具体例を参照しながらより詳細に説明する。
【0191】
実施例1
M4Nが、TNF-α誘導を抑制する能力を測定するために、LPS-刺激RAW264.7マクロファージによるTNF-αの産生に対する一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4Nを投与することの作用を調べた。この実施例に類似の方法を、何れかのLPS-刺激マクロファージ細胞における何れかの炎症誘発性サイトカインの産生に対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために使用することができる。
【0192】
図1に図示され、以下に説明するように、M4Nは、RAW264.7マクロファージにおけるLPS-誘導TNF-αの過剰発現を抑制し、その最大抑制は、誘導の10時間後における57%である。
【0193】
LPSによるTNF-α誘導を抑制するM4Nの能力を測定するために使用される方法に関してより具体的には、1.5 x 105のマクロファージを、未処理(対照)のまま、又は、LPS(1μg/l)、M4N(25μM)又はその両方の化合物で指示の時間培養した。RAW 264.7細胞は、マウス単球マクロファージである。使用された前記LPSは、Salmonella minnesota R595由来であり、List Biological Laboratories, Inc. (Campbell, CA)から入手可能である。次に、培養上清中のTNF-αのレベルを、標準曲線からの内挿によるマウスTNF-α特異的イムノアッセイを使用して測定した。全ての測定は、二回ずつ行われ、かつ、各ケースにおいて、エラーバーは、シンボルサイズよりも小さかった。
【0194】
RAW 264.7マクロファージをATCCから購入し、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加したダルベッコの改変イーグル培地中で培養し、8%二酸化炭素中で、37℃にて維持した。FBSはAtlanta Biologicals (Atlanta, GA)から購入され、その他すべての培地成分は、Sigma Aldrich (St. Lous, MO)から購入された。TNF産生のために、細胞を、トリプシン処理によって収集し、遠心分離し、計数し、1.5 x 105の細胞を、24ウェル組織培養プレートに置き、一晩培養した。次に、これらの細胞を、25μM M4Nの不在/存在下で1マイクログラム/ミリリットルのリポ多糖類(LPS)で、図1に示す時間刺激した。LPSを組織培養培地に溶解させ、ウェルへの添加の前に超音波分解した。M4N保存溶液をDMSO中で調製し、その後、ウェルへの添加の前に、培養培地で希釈した。その結果得られた上清を収集し、8,0000rpmで2分間遠心分離して細胞と残滓とを除去し、-20℃で保存した。培養上清中のTNF-αのレベルを、R&D Systems Inc. (Minneapolis, MN)から購入したQuantikineマウスTNF-α/TNFSFIAイムノアッセイを使用して測定した。このアッセイは、サンドイッチ式捕獲ELISAである。ウェルは、マウスTNF-αに対して特異的な親和性精製ポリクローナル抗体でプレコーティングしたものを供した。上清を前記ウェルに添加し、インキュベートし、存在するTNF-αを固定された抗体によって捕捉した。洗浄後、酵素結合抗-TNF-α抗体を添加し、第2のインキュベーション工程を行った。ウェルを再度洗浄し、基質溶液を添加した。基質の開裂によって、青色の溶液が作り出され、これは、その後、停止溶液の添加によって黄色に変化する。次に、BMG POLARstar galaxyマイクロプレートリーダーを使用して色強度を測定した。標準曲線を作るために組み換えマウスTNF-αの標準溶液が製造業者によって提供され、培養上清中のTNF-αのレベルをその標準曲線からの内挿によって測定した。図1中の全ての点を、2連ずつで行い、平均値を定量化のために使用した。
【0195】
M4NによるTNF-α産生の抑制は、LPSではなく、ホルボールミリスチルアセテート(PMA)やA23187(カルシウムイオノフォア)での誘導後には、RAW 264.7マクロファージ中に観察されなかった。PMAとA23187は、細胞表面受容体と大半のシグナル伝達プロセスとは独立して、非特異的に作用するものであると考えられる。従って、特定の理論によって限定されるものではないが、M4NのTNF-αのLPS-誘導産生を抑制する能力は、TNF-αの合成と遊離に関与する下流側プロセスにではなく、TNF応答の上流側シグナリングと活性化段階とから由来するものであるかもしれない。従って、H5N1感染の治療に対するM4N処理の有用な作用は、TNF-α産生における潜在的に有害な非特異的減少を引き起こすことなく、観察することができる。
【0196】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、LPS刺激に対する応答のTNF-αの過剰産生を抑制することが可能であることを示しており、前記化合物と関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体を、インフルエンザ感染時のTNF-αレベルの増大によって媒介される疾患又は障害を治療するための使用可能である、ということを示している。
【0197】
実施例2
M4NがTNF-α誘導アポトーシスを抑制する能力を測定するために、マウス繊維芽細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスに対する、一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4N、を投与することの作用を調べた。この実施例に類似の方法を、何れかの細胞タイプにおけるTNF-α誘導アポトーシスに対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために使用することができる。
【0198】
インフルエンザ感染はTNF-αの産生を誘導し、TNF-αは、そのアポトーシス誘導能力で良く知られている。インフルエンザは、効率的な複製のためアポトーシスを必要とし、TNF-α誘導アポトーシスを阻止することによってインフルエンザの複製と疾患を減少させることができる。
【0199】
図2に図示され、以下に説明するように、M4Nは、シクロヘキシミドによってTNFに対して感受性にされた細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスを強力に抑制する。C3HAマウス繊維芽細胞を、ヒト組換えTNF-α(20ng/ml)、シクロヘキシミド(CHI)(10μg/ml)、又はこれらの両方と、NDGA(25μM)又はM4N(50μM)の不在/存在下でインキュベートした。すべての化合物は同時に添加され、処理は6時間であった。ローダミン123を最後の30分間中に添加し、BMG POLARstar galaxy蛍光光度計を使用して蛍光を測定した。
【0200】
より具体的には、C3HA 細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加したダルベッコの改変イーグル培地中で培養し、8%二酸化炭素中で37℃にて維持した。CH3A細胞ラインはC3Hマウスから発達させた3T3様マウス繊維芽細胞ラインである。胎児ウシ血清はAtlanta Biologicals (Atlanta, GA)から購入され、その他すべての培地成分は、シグマ・アルドリッチ(St. Lous, MO)から購入した。アポトーシスアッセイのために、細胞を、トリプシン処理によって収集し、遠心分離し、計数し、1.5 x 104の細胞を、培養培地中に平底96ウェルマイクロタイタープレートに置いた。ノルジヒドログアヤレチン酸(25μM)又はM4N(50μM)の不在/存在下で、TNF(20ng/ml)、CHI(10μg/ミリリットル)、又はこれらの両方への添加の前に、細胞を少なくとも6時間固着させた。ヒト組み換えTNF-αはPeprotech (Rocky Hill, NJ)から購入し、CHIはEMD Bioscience Inc. (San Diego, CA)から購入した。両方を培養培地中に溶解させた。NDG Aも、培養培地に溶解させ、他方、M4N保存溶液はDMSO中で調製し、その後、ウェルへの添加の前に培養培地中で希釈した。全ての化合物は、200マイクロリットルの総量で同時に添加され、6時間インキュベートされた。インキュベーション時間の最後の30分間中に、50μLのローダミン123を、2μg/ミリリットルの最終濃度にて各ウェルに添加した。ローダミン123は、Molecular Probes Inc. (Eugene, OR)から購入され、培養培地中で希釈された。ローダミン123は、エネルギーを与えられたミトコンドリアによって捕捉され、生きた健康な細胞は強力なミトコンドリア蛍光を示す。これに対して、アポトーシス細胞は、多くの場合、ミトコンドリア透過性変化を受け、そしてミトコンドリアはその膜能力を失うことから、アポトーシスを受けている細胞はその蛍光が減少する。その結果、ローダミン123蛍光は、アポトーシス細胞において劇的に減少する。それぞれ492及び538ナノメートルに設定された励起及び発光波長で、BMG POLARstar galaxyマイクロプレートリーダーを使用して蛍光強度を測定した。全ての点を、三重に行い、百分率細胞死亡率を下記の式から計算した。
【0201】
(数1)
[(対照-実験)/対照]x 100
【0202】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスを抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体を、効率的な複製のためにアポトーシスを必要とする宿主細胞におけるインフルエンザ複製を減少させるために使用することが可能である、ということを示している。
【0203】
実施例3
M4Nの、インフルエンザウイルス感染に応答したプロスタグランジンの過剰産生を抑制する能力を測定するために、LPS-誘導 RAW264.7マクロファージによる、プロスタグランジンE2(“PGE2”)、プロスタグランジンF1α(“PGF1α”)及びプロスタグランジンF2α(“PGF2α”)の産生に対する一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4N、の投与の作用を調べた。この例のものに類似の方法は、何れかのLPS-刺激マクロファージ細胞における任意の炎症誘発性脂質メディエーターの産生に対する任意の一般式(I)カテコールブタンの作用を測定するために使用することが可能である。
【0204】
プロスタグランジンは、事実上全ての組織と器官に見られる、自己分泌及び傍分泌脂質メディエーターである。それらは、細胞において、ガンマ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、等の必須脂肪酸から合成される。それらは、内皮細胞、子宮細胞、及び肥満細胞等に加えて、例えば、凝集又は解離を引き起こす血小板、収縮又は拡張を引き起こす血管平滑筋細胞、痛みを引き起こす脊髄ニューロン等、種々の細胞に作用する。プロスタグランジンは、非限定的に、筋肉収縮を含む種々多様な作用を有し、炎症を媒介する。その他の作用には、カルシウム移動、ホルモン調節、細胞成長制御がある。
【0205】
プロスタグランジンE2は、シクロオキシゲナーゼ(COX-1及びCOX-2)の作用を介して脂肪酸から誘導される、プロスタグランジンH2(PGH2)、に対するプロスタグランジンEシンターゼの作用から生成される。PGE2は、インフルエンザ感染の過程中に誘導される。ヒトインフルエンザウイルス亜型H3N2での感染は、気管支上皮細胞におけるPGE2遊離を増大させる(Mizumura K、Hoshimoto S、Ma ruoka S他、“Role of mitogen-activated protein kinases in influenza virus induction of prostagladin E2 from arachidonic acid in brochial epithelial cells.”Clin Exp Allergy,、2003年、第33巻、第9号:第1244〜51頁)。
【0206】
PGF2αは、PGH2、PGE2又はPGD2を含む3つの異なる基質からの3つの経路によって作られる。PGF2αは、平滑筋収縮を引き起こし、その作用は、喘息と分娩と関連つけられている。
【0207】
PGI2としても知られる、プロスタサイクリンは、多くの細胞タイプによって広く発現されるPGIシンターゼの作用によってPGH2から生成される。プロスタサイクリンは、強力な血管拡張物質であり、炎症や分娩等の様々な生物反応において重要な平滑筋弛緩物質である。しかし、プロスタサイクリンは不安定で、通常、PGF1α(6-keto-PGF1α)として知られるプロスタサイクリンの安定的な誘導体を測定することによって、信頼性の高い測定値が得られる。
【0208】
図3に図示され、以下に説明されるように、M4Nは、LPS-誘導PGF2産生に対して強力な抑制作用を有する。図3において、M4N(25μM)は、RAW264.7マクロファージにおけるPGE2のLPS誘導産生の強力な抑制を示した。これらマクロファージは、表示された時間、LPS(1μg/ml)のみ、又は、25μMのM4Nとの組み合わせで処理された。次に、上清をプロスタグランジンE2イムノアッセイ(R&D Systems, Minneapolis MN)を使用してPGE2についてアッセイした。図示のデータは各時点における2〜4の測定の平均+/-SEMである。抑制のレベルは、それぞれ、6時間、10時間及び16時間の時点で、72、64及び80%であった。M4Nの抑制作用は、16時間全体を通じて培地において持続した。
【0209】
図4に図示し、以下に説明するように、M4Nは、LPS-誘導PGF2α産生に対して強力な抑制作用を有する。図4において、LPS(1μg/ml)での16時間の刺激後、RAW264.7マクロファージ上清から、15ng/mlのPGF2αが検出された。RAW264.7マクロファージを、LPS(1μg/ml)とM4N(26μM)とで同時に処理した時は、PGF2αの産生は抑制された。二つの実験からのM4N(25μM)による平均%抑制は、82%であった。RAW264.7マクロファージ培養上清中のPGF2αのレベルは、PGF2αELISA キット(Assay Designs, Ann Arbor, MI)を使用するELISAによって測定された。図示のデータは、二つの独立した実験からの平均+/-SEMである。
【0210】
図5に図示され、以下に説明するように、M4Nは、LPS-誘導PGF1α産生に対してある程度の抑制作用を有する。図5において、LPS(1μg/ml)での16時間の刺激後、RAW264.7マクロファージ上清から、5〜6ng/mlのPGF1αが検出された。RAW264.7マクロファージを、LPS(1μg/ml)とM4N(25μM)とで16時間同時に処理した時は、PGF1αの産生は抑制された。二つの実験からのM4N(25μM)による平均%抑制は、41%であった。RAW264.7マクロファージ培養上清中のPGF1αのレベルは、PGF1αELISA キット(R&D Systems, Minneapolis MN)を使用するELISAによって測定された。図示のデータは、二つの独立した実験からの平均+/-SEMである。
【0211】
図5に図示されている、PGF1αの産生の比較的穏やかな抑制(PG12/プロスタサイクリンのインジケーター)がなんらかの実験誤差によるものでないことを確かめるために、これらのRAW264.7マクロファージ培養上清中のPGE2の産生の抑制も測定した。図3の結果と一致して、これらの上清中においてPGE2の90%以上の抑制が検出され、これはPGF1αの産生に対する観察された中程度な抑制が、細胞、LPS及びM4N、に関連する実験誤差による可能性が低いものであったことを示唆している。
【0212】
EM-1421とも呼ばれるM4Nは、プロスタグランジンとロイコトリエンの産生に対して強力な抑止作用を及ぼすので、それは、脂質メディエーターに依存する傾向があり、インフルエンザ感染によって引き起こされる、肺の炎症状態、例えば、喘息、の治療に適している。PGIシンターゼは、PGE及びPGFシンターゼと異なり、EM-1421の存在下でのPGF1αの相当量の産生を占めるEM-1421に対して比較的耐性を有することができる。
【0213】
PGE2の産生に対するM4Nの作用を測定するために使用した方法について更に詳述すると、RAW264.7マクロファージを、購入し実施例1に記載した手順に従って培養、維持した。細胞におけるプロスタグランジンE2産生は、トリプシン処理による細胞の収集、遠心分離によって達成した。細胞を計数し、1.5 x 105の細胞を、24ウェル組織培養用プレートに置き、一晩培養した。次に、これらの細胞を、25μM M4Nの不在/存在下で1マイクログラム/ミリリットルのリポ多糖類(LPS)で、図5に示す回数刺激した。LPSを組織培養培地に溶解させ、ウェルへの添加の前に超音波分解した。M4N保存溶液をDMSO中で調製し、その後、ウェルへの添加の前に、培養培地で希釈した。その結果得られた上清を収集し、8,000rpmで2分間遠心分離して細胞と残滓とを除去し、-20℃で保存した。培養上清中のプロスタグランジンE2のレベルを、R&D Systems Inc.から購入したプロスタグランジンE2イムノアッセイを使用して測定した。このアッセイは、競合式ELISAである。上清中に存在するプロスタグランジンE2は、マウスモノクローナル抗プロスタグランジンE2抗体に対する結合のために、一定量のアルカリホスファターゼ標識化プロスタグランジンE2と競合する。その結果得られる複合体は、マイクロタイターウェルに供給結合されたヤギ抗−マウス抗体によって結合される。洗浄後、結合した酵素の量を定量化するために発色基質を添加する。色強度を、BMG POLARstar galaxyマイクロプレートリーダーを使用して405ナノメートルで測定した。プロスタグランジンE2の標準溶液が、製造業者によって提供され、培養上清中のプロスタグランジンE2のレベルをその標準曲線からの内挿によって測定した。全て点を、2重で行い、平均値を定量化のために使用した。
【0214】
類似の方法を使用して、PG1α及びPGF2αの産生に対するM4Nの作用を測定した。
【0215】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、LPS刺激に応答するプロスタグランジンの過剰産生を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体が、インフルエンザ感染時のプロスタグランジンのレベル増大によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0216】
実施例4
LPS刺激によるサイトカインの誘導、及び、M4Nのその誘導を抑制する能力を測定するために、一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4NのRAW264.7マクロファージによる一群のサイトカインの産生に対する投与作用を調べた。
【0217】
この研究において、抗体(“Ab”)アッセイ技術を使用した。図6に図示し、以下に説明するように、M4Nは、複数種のサイトカインのLPS-誘導産生に対する抑制作用を有する。サイトカイン産生のレベルは比較的低かったけれども、LPSの刺激、又は、EM-1421の処理無しで(図6Aにおいて「対照」のパネル)、RAW264.7マクロファージから上清中に多くのサイトカインが検出された。一般に、このパターンのサイトカイン産生は、Em-1421の25μMの最終濃度での処理(図6A中の「EM-1421」のパネル)後に維持されたが、但し、いくつかのサイトカインの産生は減少し(KC、BLC、IL-4、IL-9、MIP-1α、MIP-1γ及びIL-12p40p70)、そして、2つのサイトカインの産生は増加した(IL-1αとMIG)。これは、EM-1421が安全であるという臨床知見を強化するものである。
【0218】
LPSは、RANTES、IL-1α、IL-2、TIMP-1、TIMP-2、TNF-α、IL-6、MCP-1、sTNFR1、sTNFRII、IL-12p40、MIP-1α、及びG-CSFを含む、多くのサイトカイン(図6B中の「LPS」のパネル)の大幅な増加(>20%)を引き起こした。いくつかのケースにおいて、これらの増加は、EM-1421によって部分的又は完全に相殺された(図6B中の“LPS+EM-1421”のパネル)。高レベルに産生されたサイトカインの内、EM-1421は、IL-1αのLPS-誘導産生を約20%、TNF-αを約24%、MCP-1を約33%、sTNFRIを約63%、sTNFRIIを約20%抑制した。低レベルで産生されたサイトカインのうち、EM-1421は、I-TACのLPS-誘導産生を約100%、IL-2を約100%、TIMP-1を約30%、TIMP-2を約100%、BLCを約100%、そしてIL-3を約100%抑制した。しかしながら、これらのサイトカインは低レベルで産生されたので、これらの観察の有意性を予測することは困難である。興味深いことに、EM-1421は、RANTES、IL-6、IL-12p70、MIP1-α、及びG-CSFのLPS-誘導産生は抑制せず、IL-12p40p70のLPS-誘導産生は約43%増加させた。
【0219】
サイトカインの産生に対するM4Nの作用の測定に使用した方法について更に詳述すると、この方法において「マウス炎症アレイ-1」(RayBiotech, Inc., Allanta, GA)を使用した。RAW264.7マクロファージを購入し、培養し、EM-1421(25μM)で処理したLPS(1μg/ml)で刺激し、実施例1に記載の手順に従って収集した。LPS(1μg/ml)の刺激有り又は無しおよびEM-1421(25μM)の処理有り又は無し、のRAW264.7マクロファージの培養上清中のサイトカインを、製造業者の指示に従って、前記マウス炎症アレイ-1を使用して測定した。簡単に説明すると、培養上清を、ニトロセルロースAbアレイと、約2時間、インキュベートし、洗浄し、第2のAb溶液に対して露出させ、ECL溶液で現像し、X-線フィルムに対して露出させた。アレイオートラジオグラフを走査した。Photoshop (Adobe)を使用して、それぞれのアレイ位置について平均画素強度を分析、測定した。2連のスポットの平均値が図6Aと6Bにプロットされている。陽性対照スポットは各アレイにおいて約100単位であり、2連スポットのすべてにおいて、SEMは10%以下であり、2連スポットの大半において、SEMは1%以下であった。
【0220】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、IPS刺激に応答するTNF-αに加えて、いくつかの他のサイトカインの過剰産生を抑制することが出来ることを示し、前記化合物及び関連カテコールブタンそしてNDGA誘導体を、インフルエンザ感染時のサイトカインのレベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0221】
実施例5
一般式(I)のカテコールブタン、すなわちM4Nの投与の、MDCK細胞及びRAW264.7マクロファージからのインフルエンザ株A/WS/33の産生に対する作用を、M4Nのこれらの細胞においてインフルエンザウイルスの成長を抑制する能力を測定するために調べた。この例に類似の方法は、任意のタイプの細胞における任意の株のインフルエンザウイルスの成長又は複製に対する一般式(I)の任意のカテコールブタンの作用を測定するために使用可能である。
【0222】
A/WS/33は、American Type Culture Collection(アメリカ培養細胞系統保存機関:ATCC)(Manassas, VA)から市販されているインフルエンザAウイルスの株である。それは、インフルエンザの患者から単離された。A/WS/33の推奨されている宿主は、ニワトリ胎児、フェレット、及びマウスを含む。
【0223】
MDCK細胞は、外観が正常な成体メスのコーカー・スパニエルの腎臓に由来する上皮様細胞である。それらは、インフルエンザAウイルスを含む、種々のタイプのウイルスの成長を支持することが示されている。MDCK細胞を使用して、高力価の系統A/WS/33を作成し、そして、定量アッセイのため、前記実験からの培養上清中の感染性ウイルスの量を測定した。25μMが毒性作用無しでMDCK細胞において使用可能なEM-1421の最高濃度であることがわかった。A/WS/332の複製をモニタするために、非限定的に、細胞改変性(TCID50)、プラーク、イムノフォーカス(immunofocus)、及び免疫蛍光、を含む様々な定量アッセイが確率された。
【0224】
パネルAとBが同じデータを示すが、それぞれ直線及びlog y軸のものである図7に図示されているように、25μMの濃度のEM-1421は、MDCK細胞中におけるA/WS/33複製を約75%抑制した。種々のウイルスの力価における大きな差を可視化するために通常用いられる対数プロットは、EM-1421の抑制作用が1 log単位以下であったことを示している。
【0225】
パネルAとBが同じデータを示すが、それぞれ直線及びlogy軸のものである図8に図示されているように、テストされた濃度(3μM, 6μM, 12μM及び 25μM)でのEM-1421は、RAW264.7マクロファージにおけるA/WS/33複製を抑制しなかった。その代わりに、EM-1421は、RAW264.7マクロファージからのA/WS/33の産生を促進した。ここでも、しかしながら、この作用は比較的中程度、すなわち、1logの増加以下であった(図8B)。RAW264.7細胞をEM-1421で前処理することによって、A/WS/33の成長は更に促進された。図9のパネルA及びBに図示されているように、その促進作用は、EM-1421の濃度が25μMにおいて特に顕著であり、そこで1 logの増加が36時間の時点で測定された。
【0226】
EM-1421は、MDCK細胞ではインフルエンザ系統A/WS/33の成長を抑制したが、RAW246.7マクロファージでは増殖を増大させた。これら両方のケースにおいて、これらの作用は比較的中程度、すなわち、ウイルス力価において約1logの変化であった。EM-1421のインフルエンザウイルス複製に対する作用を完全に決定するためには追加のウイルス及び細胞タイプが必要であろう。更に、これらの作用がウイルス負荷に大きく影響するものであるか否かを決定するためにはイン・ヴィヴォでの実験が必要であろう。
【0227】
MDCK細胞又はRAW264.7マクロファージからのA/WS/33の産生に対するM4Nの作用を測定するために使用された方法について更に詳述すると、MDCK細胞又はRAW264.7マクロファージをA/WS/33と、それぞれ複数の感染(MOI)0.001又は0.002でインキュベートした。薬剤の添加無しの対照を除き、EM-1421は、インフルエンザ感染の開始後、30分で所望の濃度で前記細胞に添加され、実験期間を通じて維持された。培養上清を所望の時点で収集した。
【0228】
次に、MDCKベースのイムノフォーカスアッセイを使用して、これらの上清中の感染性ウイルスを定量化した。MDCK細胞(5 x 105/ウェル)を24ウェルプレートに置き、ウイルス増殖培地:DME培地ベース(#10-013-CV, MediaTech, Hendon VA)、添加、10%胎児ウシ血清(Atlanta Biologicals, Atlanta GA)、25mM HEPES 緩衝液(#25-060-CL, Mediatech), 1:100抗菌/抗真菌溶液(#A5955-Sigma-Aldrich, St. Lous Mo)、1.8μg/mlのウシ血清アルブミン(#A7906 Sigma-Aldrich)及び2mg/ml トリプシン(#3740, Worthington, Lakewood NJ)を含むウイルス成長培地中で一晩培養した。次に、前記細胞を胎児ウシ血清無しの同じ培地中で洗浄した。その後、ウイルス含有上清の連続希釈物を30分間添加し、その後、0.6%トラガントガム(#104792,MP Biomedicals Inc. Solon OH)を含むウイルス成長培地をオーバーレイした。インキュベーションの24時間及び48時間後、前記オーバーレイを、吸引し、細胞をPBSで濯ぎ、50: 50アセトン/メタノールで固定した。その後、細胞を、フォーカス検出のために、抗HA抗体で染色した。
【0229】
EM-1421で前処理されたRA264.7マクロファージからのA/WS/33の産生に対するM4Nの作用を測定するために、RAW264.7マクロファージを、まず、所望の濃度のEM-1421で2時間インキュベートした。次に、前記細胞を、0.002のMOIにて、A/WS/33で接種した。実験期間全体を通じて、細胞培地中にはEM-1421が存在し維持された。培養上清を所望の時点で収集した。次に、上述したMDCKベースイムノフォーカスアッセイを使用してこれらの上清中の感染性ウイルスを定量化した。
【0230】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、一部の宿主細胞中のインフルエンザウイルスの複製を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体を宿主におけるインフルエンザウイルスの複製又は成長を抑制するために使用することが可能であることを示している。
【0231】
実施例6
一般式(I)のカテコールブタン、すなわちM4Nの投与の、インフルエンザ系統A/WS/33で感染したRAW264.7マクロファージによるTNF-αの産生に対する作用を、M4Nがインフルエンザ感染によるTNF-αの誘導を抑制する能力を測定するために調べた。この例に類似の方法は、何れかのインフルエンザウイルスに感染したマクロファージ細胞における何れかの炎症誘発性サイトカインの産生に対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために使用することができる。
【0232】
この研究では、二つのモデルシステム、低多重度感染モデルと高多重度感染モデル、を使用した。低多重度感染モデルでは、RAW264.7マクロファージの感染を、非常に低い用量のインフルエンザ(MOI=0.002)から初め、その後、培養を通じて次の24-48時間、これを拡張させた。このモデルは、自然な感染中においてイン・ヴィヴォに見られる状態に近似することを試みるものである。但し、このモデルにおいて、感染は、2μg/mlのトリプシンを含む無血清感染培地で行わなければならない。RAW264.7細胞を、それら成長培地(10%FCSを含むDME)から前記無血清感染培地に切り替えた時、その感染培地自身がマクロファージを刺激し、サイトカインと脂質メディエーター産生のバックグランドレベルを上げる。トリプシンを感染培地に含ませた理由は、インフルエンザが細胞から細胞へと広がるためには(イン・ヴィヴォ又はイン・ヴィトロで)、それは細胞外プロテアーゼによって作用されなければならないからである。
【0233】
前記高MOIモデルでは、感染を、事実上全ての細胞が急速かつ同時に感染されるような高い投与量のインフルエンザ(MOI=5)から開始した。これらの感染の8時間後において高いヘマグルチニン染色が観察された。これらの感染は、サイトカインと脂質メディエータのバックグランドレベルを低く維持する正常な培養培地中で行われた。しかしながら、これらの条件下において、感染性ビリオンは産生されなかった。高い初期投与量のインフルエンザでのビリオン産生の欠如は、このモデルがイン・ヴィヴォのインフルエンザ感染に近似するものではないということを意味する。
【0234】
従って、インフルエンザとEM-1421のRAW264.7の代謝に対する作用のより完全な見識を得るために、低MOIモデルと高MOIモデルとの両方を使用した。
【0235】
図10〜12は、低MOIアッセイモデルからの結果を図示している。図10において、RAW264.7細胞をそれらの成長培地から前記無血清感染培地にスイッチしたとき、細胞は約750pg/mlのTNF-α(「培地」のバー)を産生したが、これは細胞が成長培地に留まる時に通常測定される100pg/mlよりも高い。EM-1421(25μM)のみで、この値を約67%低減し、これは、明らかに、培地における前記変換に関連する「ストレス」又は「活性化」シグナルを相殺するものである(“EM-1421”のバー)。すでに報告されているように、インフルエンザの感染は、TNF-αのレベルの増加をもたらすものであることが判った(“Flu”バー)。通常、TNF-αのレベルにおける約80〜85%の増加がこの研究でのインフルエンザ(系統A/WS/33)の感染後に測定された。EM-1421(25μM)は、TNF-αの産生におけるこのインフルエンザ誘導増大を完全に阻止した(“Flu/EM-1421”バー)。
【0236】
図11は、異なる濃度のEM-1421の用量応答実験の結果を図示している。EM-1421は、前記培地のみ、又は、培地と0.1μMもの低い最終濃度のインフルエンザのいずれかによるTNF-αの産生の増加を抑制した。EM-1421の濃度の増加によって抑制が増加した。
【0237】
図12は、経時変化実験の結果を図示している。細胞を、インフルエンザ株A/WS/33の接種有り又は無しで、及び、EM-1421での処理有り又は無し(“EM-1421”)でインキュベートした。培養上清中のTNF-αの量を、図に示されている時点で測定した。EM-1421の抑制作用は、TNF-αの誘導直後に現れ、TNF-αの誘導は24時間の期間を通じて抑制された状態に維持されたことがわかった。
【0238】
図13〜15は、高MOIアッセイモデルからの結果を図示している。RAW264.7細胞は、ウイルス感染とEM-1421処理がない場合、約100pg/mlのTNF-αを産生した(“培地”バー)。EM-1421(25μM)のみで、この値を約35%低減した(“EM-1421”バー)。ここでも、インフルエンザの感染によって、約135%として図示されているように、TNF-αのレベルが増加する(“Flu”バー)ことがわかった。EM-1421(25μg)は、ここでも、TNF-αの産生におけるこのインフルエンザ誘導増加を完全に阻止した(“Flu/EM-1421”バー)。図14は、用量応答実験の結果を図示している。最終濃度、約10μM及び25μMのEM-1421は、インフルエンザ感染によるTNF-αの産生増加を、それぞれ、約34%、60%、抑制した。図15は、経時変化実験の結果を図示している。EM-1421の抑制作用は、TNF-αの誘導直後に現れ、TNF-αの誘導は、12時間と24時間において、それぞれ、51%と55%抑制された。
【0239】
上に示したように、M4Nは、低MOIモデルと高MOIモデルとの両方において、RAW264.7マクロファージにおけるインフルエンザ誘導TNF-α過剰発現を強力に抑制する。従って、M4Nが、インフルエンザウイルス、特に、H5N1インフルエンザ亜型、に感染したヒトマクロファージにおけるTNF-α応答を同様に抑制する可能性は高い。TNF-αは、高悪性のインフルエンザH5N1亜型での感染の結果生じる肺におけるしばしば致死性の免疫応答において、キーとなる役割をもつ1つである。従って、EM-1421は、肺炎や悪性インフルエンザ感染に関連する致死性を劇的に低減し、サイトカイン調節異常を制御することによってヒトにおけるH5N1疾患の重度を軽減することができる。経時変化実験は、EM-1421が感染の初期においてTNF-αの誘導を抑制することを示し、これは、EM-1421がおそらく、TFN-αの分解を引き起こすのではなく、TNF-αの合成および/又は遊離を抑制するように作用するものである、ということを示唆している。
【0240】
使用した前記低MOIモデルについて更に詳述すると、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME(#D5648, Sigma Aldrich, St. Louis, MO)中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、ウイルス増殖培地(2μg/mlのトリプシン、2.5%HEPES緩衝液、及び0.2%BSAを含むDME)中で、0. 002のMOIにて、接種ウイルス(系統A/WS/33)に200μlと置き換え、ウイルスに30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってTNF-αをアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において実行された2連の感染での2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイされた。
【0241】
使用された前記高MOIモデルにおいて、1.5 x 105RAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME培地中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME培地中に5のMOIにて、接種ウイルス(株A/WS/33)200μlと置き換え、30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってTNF-αをアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において実行された2連の感染での2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイされた。
【0242】
用量応答実験において、EM-1421は、培地の用量を1mlに増加させたとき、最終濃度0.1、1、10、又は25μMで培地に添加された。
【0243】
経時変化実験において、インフルエンザウイルスによる細胞培地の接種の4, 13又は24時間後、培養上清を収集し、ELISAによってNTF-αをアッセイした。
【0244】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンがインフルエンザウイルス感染に応答するTNF-αの過剰産生を抑制するとことができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタンそしてNDGA誘導体がインフルエンザ感染時のTNF-αレベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0245】
実施例7
一般式(I)のカテコールブタン、すなわちM4N、の投与の、インフルエンザ系統A/WS/33に感染したRAW264.7マクロファージによるPGE2の産生に対する作用を、M4Nのインフルエンザ感染によるPGE2の誘導を抑制する能力を測定するために調べた。この例のものに類似の方法は、何れかのインフルエンザウイルスに感染したマクロファージ細胞中の何れかの炎症誘発性脂質メディエーターの産生に対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために利用することができる。
【0246】
図16及び17に図示され、以下に説明するように、M4Nは、RAW264.7マクロファージにおけるインフルエンザ誘導PGE2過剰発現を抑制する。従って、M4Nは、恐らく、インフルエンザウイルス、特に、H5N1インフルエンザ亜型、に感染したヒトマクロファージにおけるTNF-α応答も同様に抑制するであろう。更に、M4Nは、サイトカイン調節異常を制御することによってヒトにおけるH5N1疾患の重度を軽減するように作用するかもしれない。
【0247】
インフルエンザ感染中におけるPGE2の産生はあまり研究されていない。ここでも、この研究において低MOIモデルと高MOIモデルとの両方を使用した。
【0248】
図16は、低MOIアッセイモデルからの結果を図示している。RAW264.7細胞がその増殖培地から前記無血清培地に切り替えられた時、細胞は約1ng/mlのPGE2を産生した(“培地”バー)。EM-1421(25μM)のみによって、この値が強力に減少した(“EM-1421”バー)。インフルエンザの感染は、約30%のPGE2レベルの増加を再現可能にもたらした(“Flu”バー)。EM-1421(25μM)は、ここでも、PGE2の産生におけるインフルエンザ誘導増加を強力に抑制する(“Flu/EM-1421”バー)。
【0249】
図17は、高MOIアッセイモデルからの結果を図示している。RAW264.7細胞は、ウイルス感染及びEM-1421処理の無い場合は非常に低いレベルのPGE2(約75pg/ml)を産生した(“培地”バー)。EM-1421(25μM)のみで、PGE2のレベルは約2倍に増加した(“EM-1421”バー)。しかし、PGE2は「培地」と“EM-1421”ウェルにおいて低レベルで産生されたので、これらの観察の有意性を予測することは困難である。インフルエンザの感染によって、約1,300%から約1,100pg/mlとして図示されているように、PGE2のレベルは劇的に増大した(“Flu”バー)。EM-1421(25μM)によって、PGE2の産生におけるこのインフルエンザ誘導増加は、32%低減した(“Flu/EM-1421”バー)。
【0250】
脂質メディエーターがインフルエンザ誘導肺炎において果たす役割はまだよく特徴つけられていない。この研究において得られた結果は、新しい情報を開示した。前記低MOIモデル(図6)において、前記無血清感染培地によって、高いレベルのバックグランドPGE2産生が起こり、インフルエンザウイルスでの感染によって、PGE2のレベルにおける追加の小さな再現可能な増加が起こった。そしてEM-1421は、前記培地及びインフルエンザ感染の両方によるPGE2の産生の増加を完全に抑制した。低MOIモデルからの結果は、EM-1421によるPGE2のLPS-誘導産生の観察された強力な抑制と一致している。これに対して、前記高MOIモデル(図17)は、インフルエンザ感染によるPGE2の強力な誘導(低バックグランド)を示したが、EM-1421によるこの誘導の中程度の抑制しか示さなかった。これら低MOIモデルシステムと高MOIモデルシステムとから観察されるこれらの異なる結果を説明するためには更なる実験を行う必要がある。
【0251】
使用した前記低MOIモデルについて更に詳述すると、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これをウイルス増殖培地(2μg/mlのトリプシン、2.5%HEPES緩衝液、及び0.2%BSAを含むDME)中に、0.002のMOIで、接種ウイルス200μlと置き換え、ウイルスに30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってPGE2についてアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において2連で感染させた2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイした。
【0252】
使用された前記高MOIモデルにおいて、1.5 x 105RAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを10%FCSを含むDME培地中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME培地中に、5のMOIで、接種ウイルス(系統A/WS/33)200μlと置き換え、30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってPGE2をアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において2回の正副の感染させた2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイした。
【0253】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンがインフルエンザウイルス感染に応答するPGE2の過剰産生を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタンそしてNDGA誘導体がインフルエンザ感染時のPGE2レベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0254】
実施例8
TNF-αに加えて、サイトカインのインフルエンザ誘導産生及びM4Nのそのような誘導産生を抑制する能力を測定するために、一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4NのRAW264.7マクロファージによるサイトカインの産生に対する投与作用を調べた。
【0255】
この研究において、抗体(“Ab”)アッセイ技術を使用した。図18に図示されているように、前記アレイ上の40のサイトカイン、ケモカイン、レセプター、プロテアーゼのうち、8つがこの実験で検出された。ここでも、低MOI条件下では、RAW264.7細胞を成長培地からトリプシンを含む前記無血清感染培地に切り替えることによって、TNF-αの持続的なレベルの生産、高いレベルのケモカインMIP-1γの産生が誘導された。Flu感染によって、TNF-αとMIP1γのレベルの強力な増加と、sTNFRIIとケモカインMCP-1のレベルの中程度の増加が起こった。Flu感染は、更に、前記培地対照サンプル中には検出されなかったサイトカインG-CSFの産生も誘導した。EM-1421(25μM)はこれらの作用の多くを抑制した。TNF-αとMIF-1γの培地誘導産生はEM-1421によって完全に阻止され、TNF-αのFu-誘導産生も同様であった。MIF-1γのFu-誘導産生は、約60%阻止され、G-CSFの産生は完全に阻止された。これに対して、EM-1421はsTNF RIIやMCP-1のFu-誘導産生は抑制しなかった。
【0256】
サイトカインインターフェロン-β(INF-β)とIL-6に関してELISAアッセイを行った。INF-βは、アレイ上には含まれず、インフルエンザAでの感染はこのサイトカインを誘導することができる。しかし、低(A)及び高(B)MOI条件の両方において、ウイルスの接種の24時間後の感染細胞の培養上清から有意量のINF-βは検出されなかった(データ図示せず)。インフルエンザAがインターフェロンβを誘導する能力は高度に系統依存性であり(Hayman,他、2006年、Virology,、第347巻:第52頁)、明らかに系統A/WS/33は非誘導物質である。EM-1421は、又、IFN-βの産生を誘導しなかった。
【0257】
IL-6の誘導はいくつかの系統のインフルエンザについては報告されているが、上述したアレイ分析からはIL-6誘導は検出されず、これは系統A/WS/33もこのサイトカインの非誘導物質であるということを示唆している。低(A)又は高(B)MOIのいずれのELISAアッセイからも系統A/WS/33での感染後に有意レベルのIL-6は検出されず、これは、アレイ分析の結果を確認するものであった。低MOI条件下でのEM-1421での処理後に、低レベルのIL-6が検出された。しかしながら、IL-6のレベルは極めて低い(10pg/ml)ものであったため、この観察の有意性を予測することは困難である。
【0258】
TNF-αに加えて、われわれが行ったアレイ分析は、EM-1421は、更に、MIP1γとG-CSFのインフルエンザ誘導産生を阻止することも明らかにした。CCL9としても知られるMIP1γは、その活性が肺における炎症を含む多くの細胞プロセスに関連つけられているケモカインである(Rosenblum-Lichtenstein他著、2006年、Am. J. Resp. Cell. Mol. Biol.、第35巻:第415頁)。G-CSFは、好中球の産生を調節するために重要であり、この遺伝子が欠如したマウスは、肺への好中球浸透のレベルの低減を示す(Gregory他著、2006年、Blood, epub. まだ印刷されず)。これら両方の分子のEM-1421による抑制は、EM-1421が肺におけるインフルエンザ関連炎症を防止するということの更なる裏づけを提供するものである。これらの実験に使用されたインフルエンザA/WS/33系統は、IFN-β、IL-6及びRANTESを含むこれまでインフルエンザ感染に伴うものとして報告されているいくつかのサイトカイン及びケモカインを誘導しなかった。インフルエンザA系統は、サイトカイン及びケモカインを誘導するそれらの能力において互いに大きく異なる。TNF-αに加えて、数多くのサイトカインとケモカインを誘導することが報告されている、A/PR/8/34等の他のインフルエンザ株での実験が現在進行中である(Wareing他著、2004年、J. Leukoc. Biol.、第76巻:第886頁)。
【0259】
サイトカインの産生に対するM4Nの作用を測定するために使用された方法について更に詳述すると、この方法において「マウス炎症性アレイ-1」(RayBiotech, Inc., Atlanta, GA)が使用された。RAW264.7マクロファージを購入、培養し、LPS(1μg/ml)で刺激し、EM-1421(25μM)で処理し、実施例1に記載した手順に従って収集した。培地(2mg/mlのトリプシン、2.5%HEPES緩衝液、0.2%BSAを含むDEM)、0.002 MOI A/WS/33インフルエンザA、25μM EM-1421、又は、インフルエンザとEM-1421の両方、とのインキュベーションの24時間後、RAW264.7マクロファージ培養(1.5 x 105細胞/ウェル)から上清を収集した。前記上清中のサイトカインを、製造業者の指示に従って前記マウス炎症性アレイ-1を使用して測定した。簡単に説明すると、培養上清を、ニトロセルロースAbアレイと、約2時間、インキュベートし、洗浄し、第2のAb溶液に対して露出させ、ECL溶液で現像し、X-線フィルムに対して露出させた。アレイオートラジオグラフを走査した。Photoshop (Adobe)を使用して、それぞれのアレイ位置について平均画素強度を分析、測定した。8つの検出された産物について2連のスポットの平均値をプロットしている。検出されなかったアレイ上の他の32の産物は図示されていない。陽性対照スポットは各アレイにおいて約100〜110単位であり、2連のスポット間においてSEMは10%以下であった。Lymph=リンホタクチン。
【0260】
RAW264.7マクロファージによるIFN-βとIL-6産生を検出するために使用したELISA法について更に詳述すると、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。低MOIアッセイ条件下では、培地を除去し、これをウィルス増殖培地(2μg/mlのトリプシン、2.5%のHEPES緩衝液、及び0.2%のBSAを含むDME)中に、0.002のMOIで、接種ウイルス(系統A/WS/33)200μlと置き換え、ウイルスに30分間吸収させた。高MOIアッセイ条件下では、培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME中の接種ウイルス(系統A/WS/33)の200μlと置き換え、30分間吸収させた。使用した高MOIアッセイモデルでは、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME中で、5のMOIで、接種ウイルス(系統A/WS/33)の200μlと置き換え、30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量を1mlに増加させた時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってIFN-βとIL-6についてアッセイした。図示のデータは、1実験当たり実行した2連の感染をもつ、独立した実験の平均を示す。図示されていない場合、SEMはシンボルサイズよりも小さかった。ELSAポイントは2連でアッセイされた。
【0261】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンがインフルエンザウイルス感染に応答するTNF-αに加えて、いくつかの他のサイトカインの過剰産生を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタンそしてNDGA誘導体がインフルエンザ感染時のこれらサイトカインのレベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0262】
ここに提供された例は、一般式(I)のカテコールブタンが、インフルエンザウイルス感染によって誘導される、炎症誘発性ケモカイン、例えば、TNF-α等、の過剰産生、及び、炎症誘発性脂質メディエーター、例えば、PGE2等、の過剰産生を抑制することができること、そして、一般式(I)のカテコールブタンは、更に、TNF-α媒介アポトーシス、従って、宿主細胞におけるインフルエンザウイルスの複製、を低減することもできることを示している。これらの結果は、これらカテコールブタンが、インフルエンザウイルス感染症及びそれに関連する疾患と障害の治療に有用であるということを示している。
【0263】
尚、当業者は、その広い発明概念から逸脱することなく、上述した実施例に対して変更を行うことが可能であると理解するであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施例に限定されるものではなく、添付の請求項に定義された本発明の要旨及び範囲に含まれる改造を含むことが意図されているものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】種々の条件下におけるRAW264.7マウスマクロファージによるTNF-αのリポ多糖類(LPS)誘導産生を示すグラフ。
【図2】種々の条件下におけるC3HA繊維芽細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスを示すグラフ。
【図3】種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGE2産生を示すグラフ。
【図4】種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF2α産生を示すグラフ。
【図5】種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF1α産生を示すグラフ。
【図6A】抗体アレイ研究からの、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導サイトカイン産生を示すグラフ。
【図6B】抗体アレイ研究からの、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導サイトカイン産生を示すグラフ。
【図7】MDCK細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【図8】RAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【図9】ウイルス感染の前に、EM-1421によって処理されたRAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【図10】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生を示すグラフ。
【図11】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生に関する投与量応答実験を示すグラフ。
【図12】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験を示すグラフ。
【図13】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生を示すグラフ。
【図14】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する投与量応答実験を示すグラフ。
【図15】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験を示すグラフ。
【図16】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生を示すグラフ。
【図17】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生を示すグラフ。
【図18】抗体アレイ研究からの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導サイトカイン産生を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルス感染症の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、それらの開示内容の全体をここに参考文献として合体させる、2006年2月23日出願の米国仮特許出願第60/775,869号及び2006年2月23日出願の米国仮特許出願第60/776,043号の利益を主張するものである。
【0003】
発明の背景
インフルエンザウイルスは、様々な種における一般的な感染源であり、重度の風邪のような症状を引き起こし、呼吸器系障害および/又は致死性肺炎を引き起こす可能性がある。インフルエンザウイルスは、核タンパク質と膜タンパク質との血清型に基づいて、三つのタイプ、すなわち、A、B及びCに分類される。これらのうち、インフルエンザウイルスタイプAとインフルエンザウイルスタイプBが毎年流行する。インフルエンザウイルスタイプAは、そのエンベロープの表面上に、二つの糖タンパク質、すなわち、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)、を有し、従って、前記タンパク質の抗原性に基づき、これに基づくH1N1、H2N2、H3N2等の亜型に分類される。インフルエンザタイプBとインフルエンザタイプCとは、それぞれ1つの亜型しか持たない。
【0004】
インフルエンザタイプAウイルスは、抗原性において大幅な変化を受け、毎年、上述した他のタイプのインフルエンザよりも流行する。インフルエンザタイプAウイルスのための抗ウイルス剤は公知である、が、それらは多くの場合のウイルスの突然変異に対応することが出来ないため、完全に満足のゆくものではない。抗ウイルス剤がウイルスの突然変異に対応することが出来ないおそらく最も大きな理由は、ウイルスの抗原性変異の重大さによるものである。
【0005】
ヒトにおいてインフルエンザの季節的流行を作り出すものを含む全てのタイプAインフルエンザウイルスは、遺伝子的に宿主の防衛を回避する傾向があり、又そのようにうまく構成されている。インフルエンザウイルスには、複製中に生じるエラーを「校正」し修復するメカニズムが欠如している。これらの修正されないエラーの結果として、ウイルスがヒトや動物内で複製する時、ウイルスの遺伝子的組成が変化し、既存の系統が新たな抗原変異体によって置き換えられる。インフルエンザAウイルスの遺伝子的組成におけるこれらの一定、恒久的かつ通常は小さな変化は抗原ドリフトとして知られている。
【0006】
インフルエンザウイルスには頻繁かつ恒久的な抗原変化を受ける傾向があることから、グローバルなインフルエンザ状況を常にモニタリングして、インフルエンザワクチンの組成を毎年調節することが必要となる。
【0007】
インフルエンザウイルスには、公衆の健康に関する懸念が多大であるというもう一つの特徴がある。すなわち、異なる種からの亜型を含む、インフルエンザタイプAウイルスは、遺伝子的材料を交換もしく合併結合変異(リアソート)して合体する能力を有する。この抗原シフトとして知られ合併結合変異的(リアソータントな)プロセスによって、両方の親ウイルスと異なるウイルスの新規な亜型が生まれる。諸集団はこの新規な亜型に対する免疫を持たず、また、既存のワクチンでこれに対する保護を提供することが可能なものが存在しないことから、抗原シフトによってこれまで高いインフルエンザ致死的流行が発生した。これが起こるためには、その新規な亜型が、それによって持続可能な期間に渡って人から人へと容易に伝染することが可能となるヒトインフルエンザウイルスからの遺伝子を有していることが必要である。
【0008】
抗原変化の発生にとって有利な条件は、多くの場合、ヒトが、種々系統のインフルエンザウイルスに感染した他の家畜種の近傍に生活していることに関連していると考えられきた。例えば、ブタは、、トリウイルスとヒト系統を含む哺乳動物ウイルスとの両方の感染を受ける。したがって、ブタは、ヒトウイルスとトリウイルスとからの遺伝子材料のスクランブルするための「混合媒体」として作用し、新規な亜型の発生をもたらす可能性がある。しかしながら、最近、抗原シフトの発生の別の機序の可能性が明らかになった。すなわち、ヒト自身が、新規なインフルエンザ亜型の出現のための混合媒体として作用する可能性があることが示唆されているのである。
【0009】
現在、15種類のトリインフルエンザウイルス亜型が知られている。亜型H5N1がいくつかの理由により特に注目されている。H5N1は急速に変異し、他の動物種に感染したウイルスから遺伝子を獲得する傾向があることが実証された。それがヒトにおいて重度の疾患をもたらす能力を持つものであることが、1997年と2003年とにおける香港での二つのケースにおいて実証された。それ以来、2005年12月14日の時点において、世界保健機関は、研究所によってH5N1トリインフルエンザのヒトの感染の138の事例を確認している。これら138の事例のうち、71が致命的であった。
【0010】
更に、実験室での研究によって、このウイルスからの単離物が高い病原性を有し、ヒトにおいて重度の疾患をもたらしうることが示されている。更に、トリインフルエンザ亜型(H5N1)の感染を生き延びた鳥は、少なくとも10日間そのウイルスを排泄し、それによって生きた家禽類の市場と渡り鳥における更なる蔓延を促進する。鳥における感染の蔓延によって、人間の直接感染の機会が増大する。もしも時間の経過に伴って人間の感染が増加すれば、人間が、もしもヒトとトリインフルエンザ系統とによって同時に感染するならば、人から人へと容易に伝染するために十分なヒトの遺伝子を含む新規な亜型の出現のための混合媒体となりうる可能性が増大する。これによってインフルエンザの大流行が始まるであろう。歴史的に、新規なウイルス亜型が発生して人から人へと容易に伝染するとき、インフルエンザの大流行は、平均で、それぞれの世紀において3〜4回起こるものと予想することができる。インフルエンザ大流行の発生は予測不能である。別のインフルエンザ大流行が不可避であり、おそらくは近い将来起こるという点で大半のインフルエンザ専門家の見解は一致している。
【0011】
インフルエンザワクチンの製造における経験は相当なものではあるが、特に、抗原シフトによって循環するウイルスの変化に適合するためにワクチンの組成が毎年変化することから、新規なウイルス亜型に対する保護を提供することが可能な新しいワクチンを十分な量製造するためにはおそらく少なくとも4ヶ月かかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、インフルエンザウイルス感染の症状の治療のための組成物は多くの場合、それらの感染者に投与されることになる。より新しい系統のインフルエンザウイルスの病原性が更に高いとすれば、インフルエンザウイルス感染症状を治療、又は、軽減することがますます重要となってきている。
【0013】
インフルエンザウイルス感染の症状に対して様々な治療法が存在するが、その多くは、トリ系統を含む新規な亜型に対しては必ずしも有効なものではない。従って、インフルエンザウイルス感染を治療するための新規でより効果的な方法が求められている。本発明はこの必要に答えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明は、カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩、の投与によってインフルエンザウイルス感染を治療する方法に関する。特定の理論によって限定されることをは望まないが、本発明の方法は、宿主におけるインフルエンザウイルスの複製又は増殖の両方を減少させ、更に、インフルエンザウイルス感染に伴う種々の疾患又は障害の発生および/又は重症度を減少させるものと考えられる。
【0015】
本発明の一実施例は、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(I)のカテコールブタン、
【化1】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び- OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、又は、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができ、但し、ここで、R7、R8及びR9のいずれか1つが水素を表す時、-OR1、-OR2とR7、R8及びR9のその他の二つは同時には-OHを表さない。未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を含む。
【0016】
本発明の別実施例は、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(II)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化2】
〔ここで、R14、R15、R1 6及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3、又は、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R18とR19とは、それぞれ独立的に、-H又は低級アルキルを表し。但し、R14、R15、R16及びR17は同時には-OHを表さない。未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を含む。
【0017】
本発明の別実施例は、対象体のトリインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、治療的有効量の、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、
【化3】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23が、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、但し、R20、R21、R22及びR23が、同時には-OHを表さない。置換又は未置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を含む。
【0018】
本発明の別実施例は、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療する方法を含む。この方法は、前記対象体に対して、トリ-O-メチルノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、テトラ-O-メチルNDGA、テトラ-グリシニルNDGA、テトラ-ジメチルグリシニルNDGA又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、から成るグループから選択されるカテコールブタンと、そして、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む組成物を、治療的有効量投与する工程を含む。
【0019】
本発明の別実施例は、ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルス感染症を治療する方法を含む。前記方法は、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化4】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ-OCH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を、各投与あたり約10mg/kg〜約375mg/kgの量で、経口的に投与する工程を含む。
【0020】
本発明の別実施例は、インフルエンザウイルス感染による細胞内の炎症誘発性サイトカインの誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記一般式(I)のカテコールブタン、
【化5】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩を表し、或いは、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができる。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を有効量、前記細胞に投与する工程を含む。
【0021】
本発明の別実施例は、インフルエンザウイルス感染による細胞内の炎症誘発性脂質メディエーターの誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記一般式(I)のカテコールブタン
【化6】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩を表し、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができる。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を有効量で前記細胞に投与する工程を含む。
【0022】
本発明の別実施例は、亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞内の腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記マクロファージ細胞に対して、有効量の、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化7】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ、-OCH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、を投与する工程を含む。
【0023】
本発明の別実施例は、亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞内のプロスタグランジンE2(PGE2)の誘導を抑制する方法を含む。前記方法は、前記マクロファージ細胞に対して、有効量の、一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化8】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ、-OCH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、を投与する工程を含む。
【0024】
本発明の別実施例は、前記一般式(I)のカテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩と、前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩を使用することによって対象体のインフルエンザウイルス感染を治療するための取扱説明書とを含むキットを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のその他の態様、特徴及び利点は、本発明の詳細な説明、その好適実施例及び添付の特許請求の範囲を含む以下の開示から明らかになるであろう。
【0026】
複数の図面の簡単な説明
本発明の上記要約及び以下の詳細な説明は、添付の図面を参照することによってよりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的のため、これら図面において、現時点において好適な実施例が図示されている。但し、本発明は図示の正確な構成及び手段に限定されるものではないと理解されるべきである。
【0027】
これら図面において、図1は、種々の条件下におけるRAW264.7マウスマクロファージによるTNF-αのリポ多糖類(LPS)誘導産生のグラフ表示である。
【0028】
図2は、種々の条件下におけるC3HA繊維芽細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスのグラフ表示である。
【0029】
図3は、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGE2産生のグラフ表示である。
【0030】
図4は、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF2α産生のグラフ表示である。
【0031】
図5は、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF1α産生のグラフ表示である。
【0032】
図6A及び6Bは、抗体アレイ研究からの、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導サイトカイン産生のグラフ表示である。
【0033】
図7は、MDCK細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【0034】
図8は、RAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【0035】
図9は、ウイルス感染の前に、EM-1421によって処理されたRAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【0036】
図10は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生のグラフである。
【0037】
図11は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生に関する投与量応答実験のグラフ表示である。
【0038】
図12は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験のグラフ表示である。
【0039】
図13は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生のグラフ表示である。
【0040】
図14は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する投与量応答実験のグラフ表示である。
【0041】
図15は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験のグラフ表示である。
【0042】
図16は、低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生のグラフ表示である。
【0043】
図17は、高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生のグラフ表示である。
【0044】
図18は、抗体アレイ研究からの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導サイトカイン産生のグラフ表示である。
【0045】
好適実施例の詳細説明
本発明者等は、カテコールブタンがインフルエンザウイルス感染の治療に有効であることを発見した。カテコールブタンは、一般式(I)、
【化9】
〔ここで、R1及びR2は、それぞれ独立的に、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを表し、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩を表し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に、水素又は低級アルキルを表し、そしてR7、R8及びR9は、それぞれ独立的に、水素、-OH、低級アルコキシ、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、又は、任意の隣接する二つの基はアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)とすることができ、但し、R7、R8及びR9のいずれか1つが水素である場合には、-OR1, -OR2とR7、R8及びR9のその他の二つが同時には-OHを表さない。置換又は未置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を有する。
それらのカテコールブタンを薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせて、種々の投与経路用に調製可能な薬用組成物を作り出すことができる。
【0046】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、一般式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3及びR4は、独立的に低級アルキルであり、R5、R6、R10、R11、R12及びR13は、独立的に、-Hであり、そしてR7、R8及びR9は独立的に、-H、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩であり、但し、前記カテコールブタンはNDGAではない。
【0047】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、一般式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、或いは、-OR1及び-OR2は、それぞれ独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R3及びR4は、独立的に低級アルキルであり、R5、R6、R7、R10、R11、R12及びR13は、独立的に、-Hであり、そしてR8及びR9は独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩であり、但し、前記カテコールブタンはNDGAではない。
【0048】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-CH3又は-(C=O)CH2N(CH3)2又はそれらの塩である。
【0049】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、式(I)を有し、ここで、R8及びR9は、独立的に、-OCH3又は-O(C=O)CH2N(CH3)2又はそれらの塩である。
【0050】
本発明の別実施例において、前記カテコールブタンは、式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2・CH-であり、R8及びR9は、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2又は-O(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-である。
【0051】
本発明の更に別の実施例において、カテコールブタンは式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、独立的に、-H又は-CH3であり、R8及びR9は、独立的に、-OH又は-OCH3であり、但し前記カテコールブタンはNDGAではない。
【0052】
本発明の別の実施例において、前記カテコールブタンは式(I)を有し、ここで、R1及びR2は、それぞれ、-CH3であり、R8及びR9はそれぞれ-OCH3である。
【0053】
別実施例において、本発明の前記実施例の方法に使用される前記カテコールブタンは、下記の式(II)を有するNDGA誘導体
【化10】
〔ここで、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R18とR19とは、それぞれ独立的に、-H又は-CH3や-CH2CH3等の低級アルキルのようなアルキルを表し、但し、R14、R15、R16及びR17は同時には-OHを表さない。置換又は未置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、好ましくは、それらのカルボキシ末端において芳香環に結合している。〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩である。
【0054】
本発明者等は、少なくとも1つのNDGA誘導体の実質的に純粋な調合物を含有する組成物が、インフルエンザウイルス感染の治療のために有効であるという驚くべき発見をした。この知見は、NDGA誘導体は、本来、他の目的のために投与されていたものであり、インフルエンザ治療は予期せぬ成果であったが為、思いがけなく、そして驚くべきものであった。
【0055】
本発明の実施例に使用される前記NDGA誘導体は、好ましくは、上述した式(II)を有し、ここで、R14、R15、R16及びR17は、-OH、低級アルコキシ、例えば、-OCH3、低級アシルオキシ、例えば、-O(C=O)CH3又は、未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、但し、これらはそれぞれ同時には-OHではなく、そしてR18及びR19は、独立的に、-H、又は-CH3や-CH2CH3等の低級アルキル等のアルキルを表している。一実施例において、R18及びR19は、共に、-H、-CH3又は-CH2CH3とすることができる。好ましくは、R14、R15、R16及びR17の1つ又はそれ以上が、未置換又は置換アミノ酸残基或いはそれらの塩である場合、前記残基はそのカルボキシ末端において芳香環に結合している。
【0056】
適当な場合に、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む適当な製剤としての本発明のカテコールブタンは、鼻腔内投与;経口投与;吸入投与;皮下投与;経皮投与;静脈内投与;口腔投与;腹腔内投与;眼内投与;眼窩周囲投与;筋肉内投与;移植投与;点滴;中心静脈投与から成るグループから選択される単数又は複数の投与経路によってそのような治療を必要とする単数又は複数の対象体に安全に投与することができる。
【0057】
更に、前記カテコールブタンは、適切な場合には、溶液、懸濁液、半固体又は固体形態で、或いは、上述した単数又は複数の経路を介する投与用の、リポソーム製剤、ナノ粒子製剤、又はミセル製剤として、そのような治療を必要とする単数又は複数の対象体に対して安全に投与することができる。
【0058】
更に、前記リポソーム製剤、ナノ粒子製剤、又はミセル製剤としてのカテコールブタンは、皮下移植によって等、生分解性ポリマー製剤中に埋め込み、安全に投与することができる。
【0059】
本発明の一実施例において、ここでの目的のための投与経路は、非経口投与以外であって、ここで、非経口投与とは静脈、筋肉内、皮下、経皮、腹腔内投与を意味する。
【0060】
本発明は、更に、インフルエンザ治療用のカテコールブタンを含有する薬用組成物を特徴とし、ここで、前記組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、親水性又は疎水性の溶剤、凍結乾燥から得られるもののような粉末剤、エアロゾルの形態で、或いは、水性水溶性組成物、疎水性組成物、リポソーム組成物、ミセル組成物、ポリソルベート80や二元ブロックポリマー等をベースとするもののような、ナノ粒子組成物、ポリマー組成物、シクロデキストラン複合組成物、エマルジョン、又は、“リポコア(lipocores)”と呼ばれる脂肪系ナノ粒子の形態で、上述したような投与用に製剤される。
【0061】
本発明は、更に、インフルエンザ治療用のカテコールブタンを含有する薬用組成物を提供し、ここで、前記組成物は、薬学的に許容可能な担体とともに、経口又は注射可能な送達用に調製され、前記担体は、(a)水溶性有機溶媒、(b)シクロデキストラン(改変シクロデキストランを含む)、(c)イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤、(d)改変セルロース、(e)水不溶性脂質、そして前記担体(a)〜(c)の任意の組み合わせ、から成るグループから選択される可溶化剤と賦形剤との少なくとも一方を含む。
【0062】
本発明の実施例によれば、単数又は複数種の他の物質又は薬剤と組み合わせてカテコールブタンを提供することができる。それは、前記他の物質又は薬剤の投与と同時、投与前、又は投与後に、投与することができる。特定の実施例において、カテコールブタンは、単数又は複数の追加の抗炎症剤と組み合わせて投与することができる。前記追加の抗炎症剤は、(1)セロトニン受容体アンタゴニスト、(2)セロトニン受容体アゴニスト、(3)ヒスタミン受容体アンタゴニスト、(4)ブラジキニン受容体アンタゴニスト、(5)カリクレインインヒビター、(6)ニューロキニン1とニューロキニン2受容体亜型アンタゴニストを含む、タキキニン受容体アンタゴニスト、(7)カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アンタゴニスト、(8)インターロイキン受容体アンタゴニスト、(9)(a)PLA2イソ型インヒビターとPLCγイソ型インヒビターを含むホスホリパーゼインヒビター、(b)シクロオキシゲナーゼインヒビター、及び、(c)リポオキシゲナーゼインヒビターを含む、アラキドン酸代謝物のための合成経路において活性な酵素のインヒビター、(10)エイコサノイドEP-1及びEP-4受容体亜型アンタゴニスト及びトロンボキサン受容体亜型アンタゴニストを含む、プロスタノイド受容体アンタゴニスト、(11)ロイコトリエンB4受容体亜型アンタゴニストとロイコトリエンD4受容体亜型アンタゴニストとを含む、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、(12)mu−オピオイド、δ-オピオイド及びκ-オピオイド受容体亜型アゴニストを含む、オピオイド受容体アゴニスト、(13)P2x受容体アゴニスト及びP2γ受容体アゴニストを含む、プリン受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、(14)アデノシン三リン酸(ATP)感応性カリウムチャンネルオープナー、から成るグループから選択される。
【0063】
別実施例において、カテコールブタンは、一般式(I)の第2のカテコールブタン等の、単数又は複数の他の抗インフルエンザ剤、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、アマンタジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、ザナミビル、及びアルビドール(Arbidol)等と組み合わせて投与することができる。
【0064】
本発明は、更に、本発明の前記薬用組成物の製造方法も特徴とし、この方法は、前記カテコールブタンを実質的に純粋な形態で製造又は提供する工程と、前記組成物を薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせる工程と、そして、前記組成物を、所望の投与形態に適合する態様で製剤する工程とを有する。
【0065】
本発明は、更に、インフルエンザ治療用の、上述した組成物又は製剤を含むキットにも関し、前記組成物は、非限定的に、鼻腔内投与、吸入投与、経口投与、局所投与、静脈内投与、腹腔内投与、及びその他の非経口投与、を含む投与用に製剤される。そして、任意に、更に、そのような投与のための投与装置とそのような投与のための取扱説明書とを含む。
【0066】
定義
ここにおいて特に銘記されない限り、ここに使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本発明は、下記の特定の意味から更によりよく理解可能である。
【0067】
ここに使用される「活性物質」、「化合物」及び「薬剤」という用語は、NDGA誘導体を含む単数又は複数のカテコールブタンと薬学的に許容可能なそれらの塩を意味する。
【0068】
ここに使用されるアルキエンジオキシ(alkyene dioxy)という用語は、メチレン(又は置換メチレン)ジオキシ又はエチレン(又は置換エチレン)ジオキシを意味する。
【0069】
ここに使用される「緩衝剤」という用語は、Tris、リン酸、イミダゾール、炭酸水素塩などの、当該技術における従来からの任意の緩衝剤を意味する。
【0070】
ここで使用される「担体」という用語は、任意の従来タイプの、非毒性固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、溶媒(vehicle)、賦形剤(excipient)、可溶化剤、カプセル化剤、又は製剤補助剤、を意味し、前記活性薬剤成分以外の前記組成物の全ての成分を含む。前記担体は、湿潤剤やエマルジョン化剤、又はpH緩衝剤等の追加の物質を含むことができる。抗酸化剤、保湿剤、粘度安定剤、その他類似の物質等のその他の材料も必要に応じて添加することができる。
【0071】
ここで使用される「シクロデキストラン」という用語は、未改変シクロデキストランと改変シクロデキストランとを意味し、非限定的に、α-シクロデキストラン、β-シクロデキストラン、γ-シクロデキストラン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストラン(“HP-β-CD”)やスルフォブチルエーテル-β-シクロデキストラン(“SBE-β-CD”)等の、それに対する改変体を含む改変シクロデキストランを含む。シクロデキストランは、通常6(α- シクロデキストラン)、7(β-シクロデキストラン)、そして8(γ-シクロデキストラン)糖、1つの糖に対して最大3つの置換、を有し、従って、0〜24の1次置換が可能である(1次置換は、シクロデキストラン環に直鎖結合されている置換として定義される)。本発明において使用される前記改変又は未改変シクロデキストランは、適当な数と位置の1次置換又はその他の改変を有することができる。
【0072】
ここで使用される「サイトカイン」という用語は、免疫調節及び炎症プロセス中において、免疫応答の強度と持続時間を調節し、細胞間情報伝達を媒介する種々の細胞タイプによって分泌される、数多くのホルモン様、低分子量タンパク質を意味する。サイトカインの具体例は、ケモカイン、インターロイキン、リンフォカイン、腫瘍壊死因子、インターフェロンなど、その他のシグナル分子がある。
【0073】
ここで使用される「ケモカイン」という用語は、7回-膜貫通、Gタンパク質共役受容体のサブセットとの相互作用を通じて、種々のタイプの白血球の細胞輸送を調節する、小さな、大半は塩基性である構造関連分子のグループを意味する。ケモカインは、又、発達、ホメオスタシス、及び免疫系の機能においても基本的な役割を果たし、それらは、中枢神経系の細胞、更に、血管新生やアンジオスタシス(angiostasis)に関連する内皮細胞に対する影響も有する。
【0074】
ここで使用される「インターロイキン」又は「IL」という用語は、リンパ球、単球、マクロファージ、ある種のその他の細胞、によって合成される多機能サイトカイン群を意味する。
【0075】
ここで使用される「リンフォカイン」という用語は、免疫応答を媒介し、活性化したリンパ球によって遊離される一群のサイトカインを意味する。
【0076】
ここで使用される「インターフェロン」という用語は、ウイルス、細菌、寄生虫、腫瘍細胞等の異物による多様な攻撃に応答して脊椎動物細胞によって分泌される糖タンパク質群を意味する。インターフェロンは、例えば、正常及び悪性細胞の増殖を抑制し、細胞間寄生虫の増殖を阻止し、マクロファージ及び顆粒球貧食を促進し、ナチュラルキラー細胞活性を増強し、複数の他の免疫調節機能を有すること、等によって免疫応答を補助し異物に対する抵抗性を付与する。
ここで使用される「腫瘍壊死因子」又は「TNF」は、主として、マクロファージによって分泌されるサイトカインを意味する。TNFは、そのレセプターTNFRSF1A/TNFR1及びTNFRSF1B/TNFBRに結合し、それを通じて作用することができる。このサイトカインは、細胞増殖、分化、アポトーシス、脂質代謝、及び凝集、を含む広範囲の生物過程の調節に関連している。このサイトカインは、自己免疫性疾患、インスリン依存症、及びガンを含む種々の疾患に関連つけられている。インフルエンザウイルス感染によるTNFの産生の増大は、更に、ウイルス感染に関連する、疾患、障害又は症候群の発現にも関連つけられている(前記説明を参照)。
【0077】
ここでのカテコールブタンの式において、-OR1、-OR2又は適切な場合にはその他のR基のいずれかに対する言及において使用される「未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩」とは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリン、チロキシン、3 -メチルヒスチジン、ε-N-メチルリジン、ε-N-N-N-トリメチルリジン、アミノアジピン酸、γ-カロキシグルタミン酸(caroxyglutamic acid)、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、N-メチルアルギニン、N-アセチルリジン、そしてN,N-ジメチル-置換アミノ酸残基、又は薬学的に許容可能なそれらの塩を非限定的に含む、アミノ酸残基又は置換アミノ酸残基、又は、アミノ酸残基の塩又は置換アミノ酸残基の塩、である。
【0078】
ここで使用される「低級アルキル」という用語は、直鎖又は分岐状であることが可能で、任意に単数又は複数の不飽和炭素間結合を有することが可能なC1-C6アルキルを意味する。
【0079】
ここで使用される「低級アシル」という用語は、直鎖又は分岐状であることが可能で、任意に単数又は複数の不飽和炭素間結合を有することが可能なC1-C6アシルを意味する。
【0080】
ここで使用される「NDGA」とはノルジヒドログアヤレチン酸を意味する。
【0081】
ここで使用される「NDGA誘導体」とは、それぞれ式(II)を有する単数又は複数化合物、
【化11】
〔ここで、R14、R15、R16及びR17は、独立的に-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩であるが、但し、そのそれぞれが同時に-OHではなく、R18及びR19は独立的に、-OH又は低級アルキル等のアルキルである。前記用語は、例えば、R14、R15、R16及びR17がそれぞれ-OCH3である、又は、それぞれが-O(C=O)CH3であり;R18及びR19がそれぞれ-H又はそれぞれ低級アルキルである、化合物を含む。本発明の一実施例において、R18及びR19は、それぞれ、-CH3又は-CH2CH3である。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を意味する。
【0082】
ここで使用される「薬学的に許容可能な担体」とは、任意の従来タイプの、非毒性固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、カプセル化剤、又は製剤補助剤、を意味する。「薬学的に許容可能な担体」は、使用される投与量及び濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、製剤の他の成分と適合可能なものである。例えば、本発明のカテコールブタンを含有する製剤用の担体は、好ましくは、酸化剤やそれらに対して有害であることが知られているその他の化合物を含まない。好適な担体は、非限定的に、水、ブドウ糖、グリセロール、生理食塩水、エタノール、緩衝液、ジメチルスルフォキシド、Cremaphor EL、及びそれらの組み合わせ、を含む。前記担体は、更に、可溶化剤、湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤、等の追加の物質を含むことができる。抗酸化剤、保湿剤、粘度安定化剤、その他類似の物質等のその他の材料も必要に応じて添加することができる。
【0083】
ここで使用される薬学的に許容可能なそれらの塩は、(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)、塩酸又は硫酸などの無機酸や、酢酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、等の有機酸と形成される酸添加塩を含む。遊離カルボキシル基と形成される塩は、更に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄等の無機塩や、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、及びヒスチジン等の有機塩からも得ることができる。
【0084】
ここに使用される「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、公衆に容易に入手可能な、当該技術において従来からあるもののような、溶媒、アジュバント、又は希釈剤又はその他の製剤補助剤、を意味する。例えば、薬学的に許容可能な製剤補助剤は、pH調節剤及び緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤等を含む。
【0085】
ここで使用される「対象体」、「宿主」及び「患者」という用語は、本発明の組成物によって治療される動物を互換的に言及し、非限定的に、サル、ヒト、鳥類、猫、馬、げっ歯類、ウシ、ブタ、羊、ヤギ、哺乳類農場動物、哺乳類狩猟用動物(sport animals)、哺乳類ペットを含む。
【0086】
化合物において前記カテコールブタンに対する言及してここに使用される「実質的に純粋」という用語は、本発明のカテコールブタンではない化合物(以後、“非NDGA物質”)を実質的に含まないもののことである。実質的に含まないとは、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、非-NDGA物質を含まないことを意味する。
【0087】
ここで使用される、「治療」、「治療する」などの用語は、所望の薬理的および/又は生理的作用を得ることを意味する。前記作用は、それらの状態や疾患又は症候を完全又は部分的に防止する意味から予防的なものとすることができ、および/又は、状態や疾患および/又はそのような状態又は疾患に帰することが可能な有害作用の部分的又は完全な治癒の意味から治療的なものとすることができる。従って、例えば「治療」とは、哺乳類、特にヒトにおける状態又は疾患の全ての治療であって、(a)そのような状態又は疾患にかかりやすいが、まだそれを有するものとして診断されていない対象体において前記状態、疾患又は症候が発生することを防止すること、(b)その発達を停止させるなど、前記状態、疾患又は症候を阻止すること、そして、(c)例えば、前記状態、疾患又は症候の退縮を引き起こすこと等の前記状態、疾患又は症候の緩和、軽減又は改善を含む。
【0088】
ここで使用される「治療的有効量」又は「有効量」という用語は、対象体の組織系又は、研究者、獣医、医師、その他の臨床医、によって求められている、対象体における所望の生物的又は医療的応答を引き出す有効物質、化合物又は薬剤の量を意味する。前記所望の応答は、治療される対象体における既存のウイルス感染の阻止、予防、緩和、又は軽減を含む。いくつかの実施例において、前記所望の応答は、治療対象体における、ウイルス数の減少、又は、インフルエンザウイルスの複製又は増殖の抑制を含む。
【0089】
当業者は、本発明において使用される活性物質の「治療的有効量」が、様々な要因、例えば、個々の患者、例えば、年齢、体重、食習慣、健康等、治療又は予防されるべきウイルス感染状態の重症度と合併症、活性物質の投与形態、使用される特定の活性物質等に応じて変わる可能性があるということを理解するであろう。対象体に対する活性物質の投与の効果を評価するために標準的な手続きを行うことができ、それによって、当業者が対象体に対して投与されるべき活性物質の有効量を決定することが可能となる。例えば、熱や炎症、ウイルス数等のウイルス感染の症候を、活性物質の投与前、又は投与後に、対象体から測定することができる。更に、調査や動物モデル等の技術を使用してウイルス感染の治療又は予防における有効物質の有効性を評価することも可能である。
【0090】
ある範囲の値が提供される場合、各中間の値、特にその前後関係からそうでないことが明らかでない限り、下限値の単位の10分の一、その範囲の上限値と下限値の間、そしてその表示範囲におけるその他の記載又は中間値が本発明の範囲に含まれる。これらの小さな範囲の上下限値は、それらの小さな範囲にそれぞれ独立に含まれ、それらも本発明の範囲に含まれ、その表示範囲における特に具体的に除外される限界値を受ける。表示範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0091】
特許、特許出願、雑誌記事、を含むここに記載の全ての刊行物は、同様にここに参考文献として合体させるここに挙げられている参考文献を含めてその全体をここに参考文献として合体させる。ここに記載される刊行物は、もっぱら本発明の出願日の前の、その開示内容に関してのみ提供される。ここでの開示において、なにも、本発明が先行発明によるそのような刊行物に先行する権利がないということの自認としては解釈されてはならない。更に、提供される刊行物の日付は、それぞ独立的に確認する必要があるかもしれない実際の公開日とは異なっているかもしれない。
【0092】
尚、ここで、“a”“an”及び“the”といった単数形は、特に銘記されない限り複数形も含む。従って、例えば、「化合物」とは、複数のそのような化合物、を含み、「カテコールブタン」とは、単数又は複数のカテコールブタン及び当業者に知られているそれらの均等物を含む。
【0093】
以下に記載の本発明の実施例は、例示のためのみに提供されるものであって、いかなる点においても本発明を限定するものと解釈されてはならない。
【0094】
カテコールブタンの調製
本発明のカテコールブタンはどのような従来の方法によっても調製可能である。例えば、そのような化合物は、米国特許第5,008,294号(Jordan他、1991年4月16日発行)、米国特許第6,291,524号(Huang他、2001年9月18日発行)、Hw u他著の文献(Hwu, J.R.他、“Antiviral activities of methylated nordihydroguaiarectic acids, 1. Synthesis, structure identification, and inhibition of Tat-regulated HIV transactivation: J. Med, Chem.、第41巻、第16号、:第2994〜3000頁、(1998年))、又は、McDonald他著の文献、(McDonald, R.W.他、“Synthesis and anticancer activity of nordihydroguaiarctive acid (NDGA) and analogues”、Anti-Cancer Drug Des.、第16巻:第261〜270頁(2001年))に記載されているようにして調製することができる。
【0095】
本発明の一実施例において、カテコールブタン、テトラ-O-メチルNDGA、メソ-1, 4-ビス(3,4-ジメトキシフェニル)-2,3-ジメチルブタン、テラメプロコル(terameprocol、EM-1421又はM4N(下記の式に図示)としても知られる、を以下のようにして調製した。反応フラスコ中で、NDGA及び水酸化カリウムを含有するメタノール溶液を調製した。この反応フラスコに硫酸ジメチルを添加し、反応を進行させた。最後に水によって反応を停止させ、生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過によって分離し、真空オーブンで乾燥させた。次に化合物を塩化メチレンとトルエンの溶液中で溶解させ、その後、アルミナカラムを通して精製した。溶媒を回転蒸発によって除去し、固体をイソプロパノール中で再懸濁させ、ろ過によって単離した。ろ過ケーキを真空オーブンで乾燥させた。これによって得られたテトラ-O-メチルNDGA(M4N)を、前記ろ過ケーキをイソプロパノール中で還流させ、結晶物をろ過によって再分離することによって結晶化させた。
【0096】
【化12】
【0097】
本発明のいくつかの実施例において、本発明のいくつかのカテコールブタン、例えば、G4N、メソ-1,4-ビス[3, 4-(ジメチルアミノアセトキシ)フェニル]-(2R, 3S-ジメチルブタン又はテトラ-ジメチルグリシニルNDGA(下記の式に図示)としても知られる、又はそれらの塩酸塩及びアミノ酸置換を有する類似の化合物は、例えば、米国特許第6,417,234号に記載されているように、従来の方法で調製することができる。
【化13】
【0098】
組成物
本発明は、更に、前記カテコールブタンと薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む薬用組成物を含む組成物を提供する。これらの組成物は、前記カテコールブタンの所望の用途に応じて選択される緩衝剤を含むことができ、更に、意図される用途に対して適当なその他の物質も含むことができる。当業者は、意図される用途にとって適切な、当該技術において知られている多様なものから適切な緩衝剤を容易に選択することができる。いくつかの場合において、前記組成物は、当該技術において知られている多様なものから適切な薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。ここで使用されるのに適した薬学的に許容可能な賦形剤には、例えば、Gennaro著の文献(Gennaro, A.、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”、第19版、Lippincott, Willimans, & Wilkins.(1995年);A nsel他著の文献、(Ansel, H. C.他、“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, eds.、第7版、Lippincott, Williams, & Wilkins (1999年)); 及びKibbe著の文献 (Kibbe, A. H.、Handbook of Pharmaceutical Excipeients”第3版、Amer. Pharmaceutical Assoc.)を含む様々な刊行物に記載されている。
【0099】
ここの前記組成物は、潜在的な投与態様に応じて製剤される。従って、もしも前記組成物が例えば鼻腔内投与、又は吸入投与によって投与されることが意図されるものであるならば、前記組成物は、そのような目的のために、当該技術において従来から行われているように、粉末又はエアロゾル形態に加工することができる。経口又は非経口送達等のための、その他の製剤も、従来技術と同様に使用される。
【0100】
ここに記載の投与用組成物は、溶剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は粉末剤を形成することが可能である。
【0101】
経口又は注射送達用の組成物又は製剤は、更に、インフルエンザ治療用のカテコールブタンを含有する薬用組成物を含み、前記組成物は、薬学的に許容可能な担体と共に製剤され、ここで、前記担体は、(a)水溶性有機溶媒、(b)シクロデキストラン(改変シクロデキストランを含む)、(c)イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤、(d)改変セルロース、(e)水不溶性脂質、そして前記担体(a)〜(e)の任意の組み合わせ、から成るグループから選択される可溶化剤と賦形剤との少なくとも一方を含む。
【0102】
前記水溶性有機溶媒、好ましくは、但しそれに限定されるものではないが、ジメチルスルフィド以外であってもよい。水溶性有機溶媒の非限定的具体例は、ポリエチレングリコール(“PEG”)、例えば、PEG300、PEG400又はPEG400モノラウリン酸、プロピレングリコール(“PG”)、ポリビニルピロリドン(“PVP”)、エタノール、ベンジルアルコール、又はジメチルアセタミドを含む。好ましくは、いくつかの実施例の場合、前記水溶性有機溶媒がPGである場合、このPGは、白色ワセリンを含まず、キサンタンゴムxanthan gum(キサンタンガム(xantham gum又はxanthum gum)としても知られる)を含まず、グリセリンとグリシンとの少なくとも一方を含まない。前記水溶性有機溶媒がPEGである場合、ある種の実施例の場合、前記PEGは、アスコルビン酸又はブチル化ヒドロキシトルエン(“BHT”)を含まず、そして、前記PEGがポリエチレングリコール400である場合には、このポリエチレングリコール400はポリエチレングリコール8000を含まないことが好ましい。
【0103】
前記シクロデキストラン又は改変シクロデキストランは、非限定的に、α-シクロデキストラン、β-シクロデキストラン、γ-シクロデキストラン、HP-β-CD又はSBE-β-CDとすることができる。
【0104】
前記イオン性、非イオン性又は両親媒性界面活性剤は、例えば、非限定的に、非イオン性界面活性剤である、ポリエチレンソルビタンモノラウリン酸(ポリソルベートとしても知られる)、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Tween(登録商標)20又はTween(登録商標)80として市販、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(“TPGS”、グリセロールモノラウリン酸(グリセリルモノラウリン酸としても知られる)、エステル化脂肪酸、又は酸化エチレンとひまし油との3.5:1のモル比の反応産物、Cremophor(登録商標)ELとして市販、を含むことができる。好ましくは、ある種の実施例において、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である場合、この非イオン性界面活性剤は、キサンタンゴムを含まない。
【0105】
改変セルロースの非限定的な例は、エチルセルロース(“EC”)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(“HPMC”)、メチルセルロース(“MC”)、又はカルボキシメチルセルロース(“CMC”)を含む。本発明の1の実施例において、カテコールブタンは、使用前に、エタノール中で希釈できる改変セルロース中に溶解することができる。
【0106】
水不溶性脂質は、例えば、ひまし油、ゴマ油、ペパーミント油等の油、又は複数種の油、ミツロウやカルナウバロウ等のロウ、又は複数種のロウ、製造業者の推奨に従って使用されるIntralipid(登録商標)(ファルマシア&アップジョン、現在ではファイザー)等の混合脂肪乳液組成物を含む。例えば、大人の投与量は、2g脂肪/kg体重/日(それぞれ、20mL, 10mL,及び6.7mL/kgのIntralipd(登録商標)10%、20%及び30% )を超えることがないように推奨されている。Intralipd(登録商標)10%は、1,000mL中に、精製大豆油200g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール22g、注射用の水1,000mLを含有していると考えられている。Intralipd(登録商標)20%は、1,000mL中に、精製大豆油200g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール22g、注射用の水1,000mLを含有していると考えられている。pHは、水酸化ナトリウムによって、pH約8に調節される。Intralipd(登録商標)30%は、1,000mL中に、精製大豆油300g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール16.7g、注射用の水1,000mLを含有していると考えられている。pHは、水酸化ナトリウムによって、pH約7.5に調節される。これらのIntralipd製品は、25℃以下の制御された室温で保存され、凍結されるべきではない。注射用製剤のいくつかの実施例の場合、前記油は、ひまし油以外の油であり、経口製剤のいくつかの実施例の場合、ひまし油が、ミツロウとカルナウバロウ無しで含まれる。
【0107】
本発明の一実施例において、前記カテコールブタンは、異なる担体中で溶解、希釈されて、ヒトを含む動物への経口投与用の液体組成物を形成する。例えば、この実施例の一態様において、前記カテコールブタンは、PEG300、PEG400又はPEG400モノラウリン酸(“PEG化合物”)等の水溶性有機溶媒又はPG中に溶解される。別実施例において、ここに記載の前記化合物は、HP-β-CD又はSBE-β-CD等の改変シクロデキストラン中に溶解される。更に別の実施例において、本発明の化合物は、PEG化合物とHP-β-CDとを含む組み合わせ製剤中にて可溶化および/又は希釈される。更に別の実施例において、ここに記載の化合物は、HPMC、CMC又はBE等の改変セルロース中において溶解される。更に別の実施例において、ここに記載の化合物は、HP-β-CDとHPMC又はHP-β-CDとCMC等の、改変シクロデキストランと改変セルロースとの別の組み合わせ製剤中において溶解される。
【0108】
更に別の実施例において、ここに記載の化合物は、イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、TPGS、又はエステル化脂肪酸中において溶解される。例えば、本発明の化合物は、TPGSのみ、又はTween(登録商標)20のみ、又は、TPGSとPEG400又はTween(登録商標)20とPEG400、等の組み合わせ、中に溶解させることができる。
【0109】
更に別の実施例において、本発明の化合物は、ロウ、脂肪乳液、例えば、Intralipid(登録商標)、又は油等の水不溶性脂質中に溶解される。例えば、本発明の化合物は、ペパーミント油のみ、又は、ペパーミント油とTween(登録商標)20及びPEG400、又はペパーミント油とPEG400、又はペパーミント油とTween(登録商標)20、又はペパーミント油とゴマ油との組み合わせ、中にて溶解させることができる。
【0110】
勿論、上述した諸例において、ECを、HPMC又はCMCと置換、又はそれに添加してもよく、PEG300又はPEG400モノラウリン酸を上述した諸例においてPEGと置換、又はそれに添加してもよく、Tween(登録商標)80を上述した諸例において、Tween(登録商標)20と置換、又はそれに添加してもよく、コーン油、オリーブ油、大豆油、ミネラル油、グリセロール、等の他の油を、上記諸例において、ペパーミント油又はゴマ油と置換、又はそれに添加してもよい。
【0111】
更に、加熱を行うことも可能であり、例えば、これらの組成物のいずれかの調製中に、約30℃〜約90℃の温度までの加熱によって、ここに記載の化合物の溶解を達成したり、本発明の化合物の均一に分布した懸濁液を得てもよい。
【0112】
更に別の実施例において、前記カテコールブタンは、なんら担体を伴うことなく、又は担体を使用して、固体として経口投与することができる。一実施例において、ここに記載の前記化合物は、まず、上記諸例と同様、液体担体中にて溶解され、その後、経口組成物として投与用の固体組成物に加工される。例えば、本発明の化合物は、HP-β-CD等の改変シクロデキストラン中に溶解され、組成物は凍結乾燥されて経口投与用に適した粉体が作られる。
【0113】
更に別の実施例において、本発明の化合物は、適当な場合には加熱しながら、TPGS溶液中にて溶解又は懸濁されて、均一に分散した溶液又は懸濁液が得られる。
【0114】
冷却されると、前記組成物は、クリーム状になり経口投与用に適したものとなる。更に別の実施例において、本発明の化合物は、油中にて溶解され、それにミツロウが添加されてロウ状固体製品が作り出される。
【0115】
一般に、前記経口製剤を作るとき、ここに記載の化合物は、より高い安定性を有する組成物を作るために、他の賦形剤が添加される前に、まず、可溶化される。不安定な製剤は望ましくない。不安定な液体製剤は、多くの場合結晶状沈殿物、又は二相性溶液を形成する。不安定な固体製剤は、多くの場合、粒状で塊状の外観であり、時として柔らかすぎる液体を含む。最適な固体製剤は、外観がスムースで均一であり溶解温度範囲が小さい。一般に、製剤中の賦形剤の比率が安定性に影響を与えうる。例えば、ミツロウ等の硬化剤が少なすぎると、製剤は洗練された経口製剤としてはあまりにも柔らかすぎるものとなる。
【0116】
従って、一般に、本発明の液体製剤の場合、使用される賦形剤は、例えばM4N等のここに記載のカテコールブタン化合物の良好な溶媒であるべきである。換言すると、前記賦形剤は、加熱無しでカテコールブタンを溶解可能であるべきである。賦形剤は、更に、安定的な溶液、懸濁液、又は乳液を形成可能であるように、カテコールブタンから独立して、互いに対して適合性を有するものであるべきである。又、一般に、本発明の固体製剤の場合、使用される前記賦形剤は、塊状で不均一な製剤を避けるために、カテコールブタンの良好な溶媒であるべきである。望ましくない、あまりにも柔からすぎる不均一な肌目を回避するために使用される賦形剤は、それらによって、たとえカテコールブタンが無くとも、スムースで均質な固体が形成されるように、互いに対して適合性を有するものであるべきである。
【0117】
治療方法
本発明のカテコールブタンおよび組成物は、インフルエンザウイルス感染に苦しむ対象体に対する治療を提供することが望まれる状況において治療薬として利用される。
【0118】
本発明の方法によって、種々の動物宿主が治療可能であり、それには、ヒト、及びヒト以外の動物、例えば、トリインフルエンザの場合には鳥類、鳥から哺乳動物一般、特にヒトへの種間感染の懸念がある、が含まれる。一般に、そのような宿主は、「哺乳動物(mammals又は、mammalian)」、ここで、これらの用語が、肉食動物(例えば、犬や猫)、げっ歯類(例えば、モルモットやラット)及び、家畜類、ヤギ、馬、羊、ウサギ、ブタ、を含むその他の哺乳動物、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、サル)を含む、哺乳類分類内の生物を記載するのに広く使用されるものである。多くの実施例において、前記宿主はヒトである。ヒトの疾患の治療のためのモデルを提供すること等の、実験調査のために動物モデルが注目される。更に、本発明は、獣医学的治療にも適用可能である。
【0119】
製剤、投与量及び投与経路
上述したように、前記宿主又は対象体に対して有効量の前記活性物質が投与される。典型的には、本発明の組成物は、前記活性物質、すなわち、ここではカテコールブタン、を約1%以下から最大で約99%含有し、任意に、本発明は、前記活性成分を約5%から約90%含有するものとされる。本発明は、更に、前記NDGA誘導体、例えば、M4N、を含む、前記カテコールブタンが、ヒト等の対象体に対して、例えば、ヒト等のその動物の体重に基づいて、約0.1mg/kg以下から約400mg/kgの経口投与量、で投与される組成物を提供する。より具体的には、但し、限定無しの例示として、前記対象体は、好適な投与経路を介して、毎投与当たり約0.01〜約400mg/kg体重、又は、それ以上、例えば、約0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg、10 mg/kg、15mg/kg、25 mg/kg、50 mg/kg、100 mg/kg、150 mg/kg、200 mg/kg、250 mg/kg、300 mg/kg、350 mg/kg、又は400 mg/kgあるいはそれ以上、等の範囲で治療可能である。
【0120】
投与されるべき適当な投与量は、例えば、対象体の一般的健康状態、対象体の年齢、疾患又は状態の状況、対象体の体重、など治療されるべき対象体に応じたものとされる。一般に、子供には約0.1mg〜約500 mgを、大人に約0.1 mg〜約5gを投与することができる。前記有効物質は、単一、或いはより一般的には、複数の用量で投与することかできる。所与の物質に対する好適な投与量は、種々の手段によって当業者によって容易に決定可能である。他の有効な投与量は、投与量反応曲線を形成する通常のトライアルを通じて当業者によって容易に決定可能である。薬剤の量は、勿論、使用されるその特定の薬剤に応じて異なる。
【0121】
投与量と同様、活性物質の投与の頻度も、年齢、体重、疾患状態、健康状態、及び患者の応答性に基づいて治療提供者によって決定されることになるであろう。このように、薬剤は、連続的、断続的、又は一日一回又は複数回、或いは、適当な場合は、従来式決定によって必要に応じて適当なその他の期間、投与することができる。
【0122】
本発明の前記カテコールブタン又は活性物質は、治療的投与のために、種々の製剤に組み込むことが可能である。具体的は、本発明のカテコールブタンは、適当な薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせることによって薬用組成物に製剤され、錠剤、カプセル剤、粉末剤、エアロゾル、リポソーム、ナノ粒子、軟膏、顆粒剤、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、エアロゾルなど、固体、半固体、液体又は気体形態の調製物にすることができる。
【0123】
従って、前記活性物質の投与は、経口、口腔、直腸、鼻腔内、静脈内、皮下、筋肉内、気管内、局所、間質内、経皮等、又は吸入や移植によって達成することが可能である。特に、ナノ粒子、ミセル及びリポソーム製剤は、全身投与でき、これは、非経口、及び鼻腔内投与と同様に、間質内、経口、局所、経皮投与、吸入や移植を通じて、例えば、薬剤標的化、薬剤の生物利用性の促進、薬剤生物活性と安定性の保護、等のために投与することを含む。ここに記載のナノ粒子結合薬剤は、イン・ヴィトロでの長期薬剤滞留を達成するものと期待される。
【0124】
薬剤投与形態において、前記活性物質は、それらの薬学的に許容可能な塩の形態で投与することができ、或いは、単独、又は、他の薬用活性化合物との適当な関連と同様、組み合わせて使用することも可能である。以下の方法及び賦形剤は単に例にすぎず、まったく限定的なものではない。
【0125】
経口投与用として、前記活性物質は、単体で、或いは、適当な担体と組み合わせて、溶液や懸濁液の形態の液体として、又は錠剤、粉末剤、顆粒剤、又はカプセル剤の形態の固体として、使用することができ、従来の添加物、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ等と共に;結合剤、例えば、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン等と共に;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム等と共に;滑沢剤、例えば、タルクやステアリン酸マグネシウム等と共に、そして、所望の場合には、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味料、と使用することができる。
【0126】
溶媒、アジュバント、担体又は希釈剤、等の前記薬学的に許容可能な賦形剤は、従来技術である。適当な溶媒賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、など、及びこれらの組み合わせである。更に、所望の場合には、前記ビヒクルは、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤等の少量の副物質を含むことができる。そのような投与形態を作成する実際の方法は公知であるか、もしくは、当業者にとって明白であろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 第17版、1985年を参照。投与される組成物又は製剤は、いずれの場合にも、治療対象体において望ましい状態を達成するために適切な量の前記物質を含んだものとされる。
【0127】
前記活性物質は、水溶性又は水不溶性溶媒中に溶解、懸濁、又は乳化することによって、注射用製剤に調合することができ、例えば、植物又はそれに類似の油等、例えば、コーン油、ひまし油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル又はプロピレングリコールなどを含み;そして、所望の場合には、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤等の従来からの添加剤と共に、調合することができる。本発明によるカテコールブタンの非経口送達用の適当な治療用製剤は、更に、ここにそれらの内容の全体を参考文献として合体させる、米国仮特許出願第60/647,648号、2005年1月27日出願、及び認ormulations for Injection of Cathecholic Butanes, Including NDGA Compounds, Into Animalsと題する国際出願第PCT/US2006/00287号、2006年1月27日出願、国際公開WO226/081364A2、2006年8月3日公開、に開示されている種々の注射可能担体/賦形剤も含む。
【0128】
前記活性物質は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にも利用可能である。本発明の前記化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧化が許容可能な噴霧剤をも形成することができる。
【0129】
更に、前記活性物質は、乳化塩や水溶性塩等の種々の塩と混合することによって坐剤にもすることができる。本発明の前記化合物は、坐剤を通じて直腸内に投与することができる。前記坐剤は、体温で溶解ずるが、室温ではまだ硬いままである、ココアバター、カーボワックス(carbowax)、ポリエチレングルコール等の溶媒を含むことができる。
【0130】
各単位投与量、例えば、小さじ、大さじ、錠剤、又は坐剤が、単数又は複数の活性物質を含有する前記組成物を所定量含む、シロップ、エリキシル、縣濁剤等の、経口又は直腸内投与用の単位投与形態を提供することができる。同様に、注射又は静脈内投与用の単位投与量形態は、前記活性物質(単数又は複数)を、滅菌水、生理食塩水又はその他の薬学的に許容可能な担体、として組成物中に含むことができる。
【0131】
ここで使用される前記用語「単位投与量形態」は、ヒト及び動物の対象体に対する単位投与量として適当な物理的に分離した単位であって、本発明の化合物の予め決められた量を含有する各単位が、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、又は溶媒との関連において、所望の作用を作り出すため十分量が計算される。本発明の新規な単位投与量形態の仕様は、使用される個々の化合物、達成されるべき作用、宿主内の各化合物に関連する薬物力学に依存する。
【0132】
本発明には、複数又は単位投与量の前記活性物質を備えるキットが含まれる。そのようなキットにおいて、前記NDGA誘導体を含む組成物の複数又は単一用量を含有する容器は、対象の病理状態、この場合には、インフルエンザ及び特にはインフルエンザ亜型H5N1、を治療することにおける薬剤の利用法と主治医(attendant)の利点を記載した取扱説明書を備える情報パッケージ挿入物として構成される。
【0133】
ナノ粒子(NP)の調製
本発明は、NP調製物中のカテコールブタンの製剤を含む。ここでの使用に適した種々多様なNP製剤を、その投与方法に応じて作成することができる。NP製剤は、分子量、コポリマー比、薬剤負荷(drug loading)、微粒子径、多孔性、製剤条件を制御することによって、所望の薬剤放出プロファイルに応じて異なるものとすることができる。NP製剤は、又、その製造プロセスに使用されるポリマー、安定剤、界面活性剤、に応じて異なるものとすることも可能である。異なる賦形剤が、薬剤摂取量、体内での薬剤分布、血清中での薬剤の滞留性、に対して異なる作用を有するものとすることも可能である。当業者は、所望の特性又は特徴、を決定し、従って使用する適当なNP製剤を決定することができるであろう。
【0134】
前記NPのポリマー基質は、生物適合性、生物利用性、物理的強度、処理の容易性の基準を満たさなければならない。この目的のために最もよく知られているポリマーは、生物分解性ポリ(ラクチド-コ-グリコリド(“PLGA”)である。
【0135】
ここでのNPは、従来式の任意の処理によって製造することができる。一実施例において、前記NPは、例えば、ロックマン(Lockman)他著の文献(Lockman, P.R.他、”Nanoparticle Technology for Drug Delivery Across the Blood-Brain Barrier”、Drug Development Indus. Pharmacy.、第28巻、第1号:第1〜13頁. (2002年))に記載されているようにして製造することができる。製造プロセスのタイプには、例えば、乳化重合、界面重合、脱溶媒和蒸発(desolvation evaporation)及び溶媒析出がある。
【0136】
ここでのNPを製造する乳化重合処理において、その重合処理は、例えば、クロイター(Kreuter)著の文献(Kreuter, J.,“Nanoparticles, In Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, Swarbick, J:; Boylan, J.C. Eds: “Marcel Dekker (New York, 1994年)、第165〜190頁、(1994年))に記載されているように、単一のモノマー単位からポリマー鎖を構築することから成る。重合は、例えば、高エネルギ放射、UV光、又はヒドロキシイオンの使用等によってフリーラジカル又はイオン形成を開始した後に室温で自然に起こる。一旦、重合が完了すると、溶液をろ過し、中和する。ポリマーは、約100〜107のポリマー分子から成るミセルおよび小滴を形成する。この処理において、一般に、界面活性剤と安定化剤は不要である。また、この処理は、水相ではなく有機相で達成することが可能である。
【0137】
ここでのNPは、又、例えば、コウリ(Khouri)他著の文献(Khouri, A.I.他著、“Development of a new process for the manufacture of polyisobutyl-cyanoacrylate nanoparticles,”、Int. J. Pharm., 第28巻:第125頁、(1986年))に記載されているように界面重合処理によって作成することができる。このプロセスにおいて、モノマーを使用して前記ポリマーを形成し、水相と有機相が、均質化、乳化、または高トルク物理的攪拌での微小溶液操作によって混合される時に、重合が起こる。例えば、カテコールブタンを含有するポリアクリルシアノアクリル酸ナノ粒子を、有機相中で親油性カテコールブタンと前記モノマーとを組み合わせ、この組み合わせを油中に溶解させ、この混合物を常時攪拌しながら小さな管を通してゆっくりと水相に添加することによって作成することができる。その後、前記モノマーは、アニオン重合によって、200〜300nmのカプセルを自然に形成する。このプロセスのバリエーションは、例えば、フェッシ(Fessi)他著の文献(Fessi, He.他、“Nanocapsule formation by interfacial deposition following solvent displacement”Int. J. Pharm.,、第55巻:R1-R4(1989年))に、記載されているように前記モノマーと薬剤とを含有する有機相に対して、安息香酸ベンジル、アセトン及びリン脂質の溶媒混合物を添加するものである。これによって、前記薬剤がカプセル化され、それが標的組織に到達するまで劣化に対して保護される製剤が作り出される。
【0138】
NPの製造における油変性及び脱溶媒和処理において、アルブミンやゼラチンなどの高分子を使用することができる。油乳化変性処理において、大きな高分子は、均質化によって有機相に取り込まれる。取り込まれた後、常時攪拌しながら、高分子はゆっくりと水相に注入される。これら二つの不混合相の導入によって形成されるナノ粒子は、その後、アルデヒドでの、又は加熱変性による、クロスリンクによって硬化させることができる。
【0139】
或いは、高分子は、「脱溶媒和」によってNPを形成することができる。この脱溶媒和処理において、高分子は、溶媒中に溶解し、その中で、高分子は、腫大したコイル形態で留まる。次に、腫大した高分子を、例えばpHや電荷等、環境を変化させることによって、或いは、エタノール等の脱溶媒和剤を使用することによって、緊密にコイルするように誘導される。その後、高分子は、アルデヒドへのクロスリンクによって、固定、硬化することができる。前記NDGA化合物は、誘導体がその新たに形成された粒子内に取り込まれるように、クロスリンクの前に前記高分子に吸着又は結合させることができる。
【0140】
固体脂質NPを、高圧均質化によって作成することができる。固体脂質NPは、殺菌しオートクレーブ処理することが可能で、それによって制御された放出を提供する固体基質を有するという利点を有する。
【0141】
本発明は、更に、様々な薬剤負荷の方法を有するNPを含む。前記NPは、その内部に薬剤が均質に分散した固体コロイド状NPとすることができる。前記NPは、薬剤が、例えば、吸着等によってNPの外側に結合した固体NPとすることができる。前記NPは、その内部に薬剤が取り込まれたナノ粒子とすることができる。前記NPは、更に、適当な組織への標的化送達のための細胞表面リガンドと共に薬剤がその内部に均質に分散した固体コロイド状NPとすることができる。
【0142】
前記NPのサイズは、所与の投与態様のためのそれらの有効性に関連するかもしれない。NPは、典型的に、約10nm〜約1000nmであり、任意に、NPは、約30nm〜約800nm、更に、典型的に、60nm〜約270nm、更に典型的に、約80nm〜約260nm、又は約90 nm〜約230nm、又は約100nm〜約195nm、とすることができる。例えば、重合中に使用される溶液のpH、開始トリガー(熱や放射線等)の量、モノマー単位の濃度等の複数の要因がNPのサイズに影響し、これらの全てを、当業者は調節することが可能である。NPのサイズ調節(sizing)は、光拡散を使用する光子相関分光法によって行うことができる。
【0143】
例えば、多糖類NP、又は、アルブミンNP等のここでのNPは、任意に、脂質コーティングによってコーティングしてもよい。例えば、多糖類NPは、ジパルミトイルホスファチジルコリンやコレステロールコーティングを含むもの等、脂質二重層有り又は無しで、リン酸(アニオン性)や第4アンモニウム(カチオン性)リガンドとクロスリンクすることができる。他のポリマー/安定化剤には、非限定的に、大豆油、マルトデキストラン、ポリブチルシアノアクリル酸、ブチルシアノアクリル酸/デキストラン70kDa、ポリソルベート−85、ポリブチルシアノアクリル酸/デキストラン70kDa、ポリソルベート−85、ステアリン酸、ポリ-メチルチメリアクリル酸がある。
【0144】
NPへの吸着等によって、前記カテコールブタンを含有するNP製剤は、インフルエンザの治療のために静脈内投与することができる。これらのNP製剤の細網内皮細胞による望ましくない取り込みを避けるために、NPを、界面活性剤でコーティングしたり、磁気反応材とともに製造することができる。
【0145】
従って、任意に、界面活性剤をNPとの共役状態で使用することができる。例えば、ポリブチルシアノアクリル酸NPを、デキストラン―70,000安定化剤とポリソルベート−80を界面活性剤として共に使用することができる。その他の界面活性剤としては、非限定的に、ポリソルベート−20、40又は60;ポロキサマー188;脂質コーティング−ジパルミトイルホスファチジルコリン;Epikuron200;ポロキサマー388;ポロキサマー908;ポロキサマー407、がある。例えば、ポロキサマー980を界面活性剤として使用して、肝臓、膵臓、及び骨髄のRESへのNPの取り込みを減少させることができる。
【0146】
前記磁気反応材は、前記組成物に組み込んでNPを作成することが可能なマグネタイト(Fe3O4)とすることができる。これらの磁気反応性NPは磁石によって外部から案内することができる。
【0147】
別実施例において、ここでのNPは、ポリ(ラクチド-co-グリコシド(PLGA)やd-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(ビタミンE TPGS又はTPGS)のブレンドを使用してMu及びFengに記載されているように製造することができる(Mu, L及びFeng, S.S.,、“A novel controlled release formulation for the anticancer drug paclitaxel (Taxol(登録商標)) :PLGA nanoparticles containing vitamin TPGS”,J. Control. Rel.、第36巻:第33〜48頁(2003年))。後者は、マトリクス材であることに加えて、乳化剤としても作用可能である。
【0148】
ミセル形成担体の調製
本発明は、ミセル形成担体に製剤されるカテコールブタンを含み、ここで前記ミセルは従来の方法で作られる。そのようなものの例は、例えば、リッギンス(Liggins)著の文献(Liggins, R.T.及びBurt, H.M.,著、“Polyether-polyester diblock copolymers for the preparation of paclitaxel loaded polymeric miscelle formulations”.Adv. Drug Del. Rev.、第54巻:第191〜202頁(2002年)); ツァン(Zhang)他著の文献(Zhang, X他、“Development of amphiphilic diblock copolymers as micellar carriers of taxol”Int. J. Pharm, 第132巻:第195〜206頁(1996年);及びチャーチル(Churchill)の文献(Churchill, J.R.,及びHutchinson, F.G. “Biodegradable amphiphatic copolymers”米国特許第4,745,160号(1998年)、に記載されている。そのような1つの方法において、親水性(ポリエーテル)と疎水性(ポリエステル)セグメントを有する両親媒性ポリマーである、ポリエーテル-ポリエステルブロックコポリマーがミセル形成担体として使用される。
【0149】
別のタイプのミセルは、例えば、トゥザール(Tuzar)著の文献(Tuzar, Z.およびKratochvil, P.,、“Block and graft copolymer miscelles in solution”、Adv. Colloid Interface Sci.、第6巻:第201〜232頁、(1976年);及び、ウィルヘルム(Willhelm)他著の文献(Wilhelm, M.他、“Poly(styrene-ethylene oxide) block copolymer miscelle formation in water: a fluorescence probe study”、Macromolecules 第24巻:第1033〜1040頁(1991年))に記載されているように、それらの両親媒性によって水性媒体中でミセル構造を形成することが知られている、親水性セグメントと疎水性セグメントとの両方を有するAB-型ブロックコポリマーによって形成される。これらのポリマー性ミセルは、ミセル内側コア内に取り込まれた疎水性薬剤の高い含有量にもかかわらず、十分な水安定性を維持することができる。そのサイズの範囲が約<200nmであるこれらのミセルは、非選択性RES除去作用を減少させる点において有効であり、増強された透過性と残留率を示す。
【0150】
更に、例えば、ポリ(D, L-ラクチド)-b-メトキシポリエチレングリコール(MePEG: PDLLA)二元ブロックコポリマーを、MePEG 1900及び5000を使用して作成することができる。その反応は、オクチル酸スズ(0.25%)を触媒として使用して、160℃で3時間進行させる。但し、もしも反応を約6時間で進行させることができるならば、130℃もの低い温度を使用することが可能であり、或いは、反応を約2時間しか進行させることが出来ないのであれば、190℃もの高い温度を使用することができる。
【0151】
一実施例において、N-イソプロピルアクリリアミド(“IPAAm”)(興人、東京、日本)とジメチルアクリルアミド(和光純薬、東京、日本)を使用して、コホリ,エフ(Kohori, F.)他著の文献(1998年)(Kohori, F.他、“Preparation and characterization of thermally Responsive block copolymer micelles comprising poly (N-isopropylacrylamide-b-D, L-lactide.”J. Control. Rel.、第55巻:第87〜98頁(1998年))の方法を使用して、ラジカル重合処理でヒドロキシル−末端ポリ(IPAAm-co-DMAAm)を作成することができる。得られたコポリマーを、冷水に溶解させ、10,000及び20,000分子量カットオフの2つの限外ろ過膜でろ過することができる。前記ポリマー溶液は、まず、20,000分子量カットオフ膜を通してろ過される。次に、そのろ過物を、再び、10,000分子量カットオフ膜を通してろ過する。結果として3つの分子量画分、低分子量、中分子量及び高分子量画分が得られる。次に、ブロックポリマーは、前記中分子量画分のポリ(IPAAm-co-DMAAm)の末端ヒドロキシ基からのD,L-ラクチドの開環重合によって合成することができる。これによって得られるポリ(IPAAm-co-DMAAm)-b-ポリ(D, L-ラクチド)コポリマーは、コホリ,エフ(Kohori, F.)他著の文献(1999年)(Kohori, F.他、“Control of adriamycin cytotoxic activity using thermally responsive polymeric miscelles composed of poly(N-isopropylacrylamide-co-N,N-dimethylacrylamide)-b-poly(D, L-lactide”、Colloids Surfaces B: Biointerfaces、第16巻:第195〜205頁、(1999年)に記載されているように精製することができる。
【0152】
前記カテコールブタンは、ミセルの内側コアに装填することができ、同時に透析法によってミセルが調製される。例えば、カテコールブタンの塩化物を、N, N-ジメチルアセチルアミド(“DMAC”)に溶解させ、トリエチルアミン(“TEA”)を添加することができる。前記ポリ(IPAAm-co-DMAAm)-b-ポリ(D, L-ラクチド)ブロックコポリマーをDMACに溶解でき、蒸留水を添加することができる。カテコールブタンの溶液と前記ブロックコポリマーの溶液を室温で混合し、その後、12,000-14,0000分子量カットオフの透析膜(Spectra/Por(登録商標)2、spectrum Medical Indus., CA, U.S.A.)を使用して25℃で蒸留水に対する透析を行う。カテコールブタンを取り込んだポリ(IPAAm-co-DMAAm)-b-ポリ(D, L-ラクチド)ミセルを、コホリ,エフ(Kohori, F.)他著の文献(1999年)前出、に記載されているように、20nm孔径の微量ろ過膜(ANODISCTM, Whatman International)でのろ過によって精製することができる。
【0153】
カテコールブタンを含有する多小胞体リポソーム(“MVL”)の作成
多小胞体リポソーム(“MVL”)を、例えば、マントリプルガーダ(Mantriprgada)著の文献(Mantriprgada, S.,、“A lipid based depot (DepoFoam(登録商標) technology)for sustained drug delivery,”,ProgLipid Res.、第41巻:第392〜406頁(2002年))に記載されているもののような二重乳化処理等の任意の従来技術によって作成することができる。簡単に説明すると、この二重乳化処理において、単数又は複数の揮発性有機溶媒中に、トリグリセリド等の少なくとも1つの中性脂肪を含有するリン脂質などの両親媒性脂質を溶解させることによってまず油中水乳濁液が作られ、この脂質成分に対して、非混合性第1水性成分と、疎水性カテコールブタン等の疎水性カテコールブタンを添加する。次に、この混合物を、乳化して油中水乳濁液を形成し、その後、これを、第2非混合性水性成分と混合し、その後、物理的混合を行って、前記第2水性成分中に懸濁した溶媒小球を形成し、これによって水中油中水乳濁液を形成する。前記溶媒小球は、その中にカテコールブタンが溶解した複数の水性小滴を含んだものとなる。次に、前記有機溶媒を、一般に、蒸発、減圧、又は、ガスのスチームを懸濁液上又は懸濁液を通して通過させることによって、前記球から取り除く。溶媒が完全に除去されると、前記球は、DepoFoam粒子等のMVLになる。この処理において中性脂肪を省略する場合、MVLの代わりに、従来の多層小胞又は単層小胞が形成される。
【0154】
経口送達用のカテコールブタンの調製
いくつかのカテコールブタンは、G4Nなどのように水溶性、親水性化合物である。本発明は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤中の親水性化合物の製剤と、前記化合物の水溶液形態などの、そのような経口用製剤等の送達を含み、或いは、前記化合物は、凍結乾燥させて粉末剤として送達されたり、錠剤に形成されたり、あるいは、前記化合物はカプセル化することができる。
【0155】
ここでの前記錠剤は、腸溶性コーティングされた錠剤とすることができる。ここでの製剤は、持続性放出および/又は遅延放出又は急速放出のいずれかを含む除放性製剤とすることができる。
【0156】
前記経口用製剤に含まれるカテコールブタンの量は、対象体に対して投与される所望の投与量に応じて調節することができる。そのような調節は当業者の技量の範囲内である。
【0157】
M4N等の、一部のカテコールブタンは、疎水性又は親油性化合物である。前記化合物の水性腸液への溶解の速度又は程度を増進することが可能な薬学的に許容可能な担体を使用することによって、腸における親油性化合物の吸収を改善することができる。例えば、スタッチリック(Stuchlik)著の文献(Stuchlik, M and Zak, S., “Lipid-Based Vehicle for Oral Delivery, Biomed.Papers、第145巻、第2号:第17〜26頁、(2001年))に記載されているもののように、脂質担体は公知である。ここでの製剤は、経口用液体として投与することができ、或いは、種々のタイプのカプセルにカプセル化することができる。
【0158】
本発明は、一実施例において、そのような化合物のトリアシルグリセロールへの溶解によって経口投与用に調製される親油性カテコールブタンを含有する製剤を含み、その後、前記製剤は、経口投与用にカプセル化される。トリアシルグリセロールは、グリセロール分子に結合した長鎖および/又は中鎖の脂肪酸を有する分子である。前記長鎖脂肪酸は、C14〜C24の範囲であり、一般的な脂肪に見られる。前記中鎖脂肪酸は、C6〜C12の範囲であり、ココナッツ油や椰子種子油に見られる。ここでの使用に適したトリアシルグリセロールは、同じグリセロール分子上においてエステル化された短鎖又は中鎖脂肪酸のいずれか又はその両方、の混合物を含有する構造化脂質を含む。
【0159】
本発明の別実施例において、単数又は複数の界面活性剤を、カテコールブタンと脂質担体との混合物に対して、薬剤が油/界面活性剤混合物の細かい小滴中に存在するように、添加することができる。これらの界面活性剤は、胃腸液中での希釈時に、油性製剤を分散させるように作用することができる。
【0160】
本発明は、更に、親水性界面活性剤と油とから成る微小−乳濁液の形態である、カテコールブタンの経口投与用の製剤も含む。前記乳濁液粒子は、可溶化された油と薬剤とを含有する界面活性剤ミセルとすることができる。
【0161】
固体液体ナノ粒子調製物中のカテコールブタンの製剤も経口投与用に適している。固体液体ナノ粒子は、例えば、スタッチリック,エム(Stuchlik, M)及びザック,エス(Zak, S.)の文献(2001年)前出、に記載されているもののような、任意の従来技術によって作成することができる。
【0162】
一実施例において、前記固体液体ナノ粒子は、昇温での融解した脂質の均質化による熱均質化処理によって調製可能である。この処理において、前記固体脂質が融解され、この融解した脂質にカテコールブタンが溶解される。次に、予熱した分散媒体を前記薬物−負荷脂質融解物と混合し、この組み合わせを、均質化剤と混合して粗プレ乳濁液を形成する。次に、前記脂質の溶融温度以上の温度で高圧均質化処理を行って、油/水ナノ乳濁液を作る。このナノ乳濁液を室温にまで冷却して固体脂質ナノ粒子を形成する。
【0163】
本発明の別実施例において、前記固体脂質ナノ粒子は、冷均質化処理によって調製することができる。この処理において、前記脂質は、融解され、カテコールブタンがこの融解した脂質に溶解される。次に、薬剤−負荷脂質を液体窒素又はドライアイス中で固化する。この固体薬剤−脂質を、粉砕機で粉砕して50〜100μmの粒子にする。次に、これら脂質粒子を、低温水性分散溶媒中に分散させ、室温又はそれ以下で均質化されて、固体脂質ナノ粒子にする。
【0164】
本発明は、更に、経口投与用の、リポソーム又はミセル中の親油性カテコールブタンの製剤を含む。これらの製剤は、任意の従来方法で作ることが可能である。ミセルは、通常、疎水性薬剤が単層上の疎水性領域と関連している脂質単層小胞である。リポソームは、通常、リン脂質二層小胞である。親油性カテコールブタンは、通常、これらの小胞の中央に位置する。
【0165】
本発明による経口投与用のカテコールブタンの更に別の適当な製剤は、ここにそれらの全体を参考文献として合体させる、、2005年1月27日出願の米国仮特許出願No. 60/647,495、2006年1月27日出願の国際特許出願、「NDGA化合物を含むカテコールブタン投与用の経口製剤」と題する、代理人整理番号第682714-9WO号に記載されている。
【0166】
鼻腔内投与用カテコールブタンの製剤
本発明は、鼻腔内投与用カテコールブタンの製剤及びその鼻腔内投与を含む。鼻腔内投与は、静脈内投与によって達成可能なものよりも脳内での活性物質の高い濃度を作り出すことが可能である点で有利である。更に、この態様の送達は、薬剤を受ける対象体の肝臓と腸での初回通過代謝の問題を回避するものである。
【0167】
吸収可能な活性物質の量は、部分的には、その薬剤の、粘膜中の溶解性に依存し、ここで、約95%の血清タンパク質の水溶液と、糖タンパク質、脂質、及び電解質からなる組成物である。一般に、ここでの活性物質の親油性が増大するにつれて、CSF中の薬剤濃度も増大する。例えば、(Minn, A.他、“Drug transport into the mammalian brain: the nasal pathway and its specific mebabolic barrier”、J. Drug Target、第10巻:第285〜296頁、(2002年))を参照。
【0168】
前記疎水性カテコールブタンは、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等の薬学的に許容可能な担体中において溶解することが可能である。一実施例において、例えば、カオ(Kao)他の文献(Kao, H.D.他、“Enhancement of the Systemic and CNS Specific Delivery of L-Dopa by the Nasal Administration of its Water Soluble Prodrugs,”、Pharmaceutl. Res.,、第17巻、第8号:第978〜984頁(2000年))に記載されているように、0.05MのpH7.4のリン酸緩衝液を、担体として使用することができる。
【0169】
本発明の薬剤の鼻腔内投与は、薬剤を投与する時の対象体の位置を調節することによって最適化することができる。例えば、最大の作用を得るために、患者の頭部を、直立-90度、背臥位-90度、背臥位-45度、又は背臥位-70度など様々に位置決めすることができる。
【0170】
前記カテコールブタンの組成物の担体は、薬学的に許容可能で、組成物の活性物質と適合可能な任意の材料とすることができる。前記担体が液体の場合、それは鼻液に対して低張又は等張で、かつ、約4.5〜約7.5のpH範囲内のものとすることができる。前記担体が粉体形態である場合、それも許容可能なpH範囲内のものである。
【0171】
前記鼻腔内投与用の担体は、任意に、鼻粘膜を横断して嗅覚神経経路を介して脳内への活性物質の吸収を促進することが可能な親油性物質を含むことができる。そのような親油性物質の具体例は、非限定的に、ガングリオシド、ホスファチジルセリンを含む。ミセル形態等で、単数又は複数種の親油性アジュバントを、前記組成物に含ませることができる。
【0172】
インフルエンザ治療のための対象体への鼻腔内送達用の活性物質の前記薬用組成物は、例えば、米国特許第6,180,603に記載されているように、従来の方法によって調製することができる。例えば、ここの前記組成物は、粉末剤、顆粒剤、溶液、エアロゾル、滴下剤、ナノ粒子、又はリポソームとして調製することができる。前記活性物質に加えて、前記組成物は、適当なアジュバント、緩衝液、保存剤、塩を含むことができる。点鼻薬等の溶液は、抗酸化剤、緩衝剤等を含むことができる。
【0173】
移植による送達
ここでのカテコールブタンは、例えば、カテコールブタンを含有する生分解ポリマーの皮下移植など、外科移植による治療のために対象体に送達することができる。この治療は、外科治療とは別に又は外科治療に追加して、他の従来式治癒法と組み合わせることができる。
【0174】
従って、ここでの前記生分解ポリマーは、宿主組織に対する毒性又は悪影響無く、腸液に溶解する、任意のポリマー又はコポリマーとすることができる。好ましくは、前記ポリマー又はそこから前記ポリマーが合成されるモノマーは、ヒトへの投与が連邦食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって認可されたものである。溶解の速度を制御するべく1つのモノマーの比率を他のものよりも高めるなど、崩壊の力学を制御するために、異なる溶解特性を有する複数のモノマーを含むコポリマーが好適である。
【0175】
一実施例において、前記ポリマーは、フレミング,エイ・ビー(Fleming A.B.)及びザルツマン,ダブリュ・エム(Saltzman, W.M.)著、Pharmacokinetics of the Carmustine Implant, Clin. Pharmacokinet,、第41巻、第6号、第403〜419頁(2002年)及びブレム,エイチ(Brem, H,) 及びガビキアン,ピー(Gabikian, P.)著、“Biodegradable polymer implants to treat brain tumores”,J. Control, Rel.、第74巻:第63〜67頁、(2001年)に記載されているように、1, 3-ビス-(p-カルボキシルフェノキシ)プロパン及びセバシン酸[p(CPP:SA)]である。別実施例において、前記ポリマーは、フー(Fu)他の文献(Fu. J.他、“New Polymeric Carriers for Controlled Drug Delivery Following Inhalation or Injection,”,Biomaterials、第23巻:第442 5〜4433頁(2002年))に記載されているように、ポリエチレングリコール(“PEG”)とセバシン酸とのコポリマーである。
【0176】
ポリマー送達システムは、ここに記載の疎水性カテコールブタンと親水性カテコールブタンとの両方の投与に適用可能である。これらのカテコールブタンは、前記生分解ポリマーと組み合わされて外科移植される。いくつかのポリマー組成物は、静脈内及び吸入治療用にも使用可能である。
【0177】
吸入による投与
ここに記載のカテコールブタンは、吸入を通じて肺に投与することにより、全身および/又は局所に送達される。薬剤の吸入投与は、多大な全身毒性を誘引することなく肺組織に対する高い薬剤濃度を達成する方法として、又、薬物の全身循環を達成する方法として広く受け入れられている。そのような製剤を製造する技術は従来技術である。肺疾患に対する有効性は、このようにして送達される疎水性カテコールブタン又は親水性カテコールブタンのいずれでも見られる。
【0178】
吸入による肺送達のために、ここに記載のカテコールブタンは、乾燥粉末、水溶液、リポソーム、ナノ粒子、又はポリマーに調製され、例えば、エアロゾルとして投与することができる。親水性製剤も、全身投与のために、肺胞表面を通して血液流へと摂取することができる。
【0179】
一実施例において、ここに記載の活性物質を含有するポリマーは、フー,ジェイ(Fu, J.)他著の文献(2002年)前出、に記載されているように製造、使用される。例えば、前記ポリマーは、セバシン酸とポリエチレングリコール(“PEG”)とのポリマー、又は、ポリ(ラクチック-co-グリコール)酸(“PLGA”)のポリマー、又は、ポリエチレンイミン(“PEI”)及びポリ-L-リジン(“PLL”)のポリマーとすることができる。
【0180】
別実施例において、吸入送達用の前記カテコールブタンは、チョイ(Choi)他著の文献(Choi, W. S.他、“Inhalation delivery of proteins from ethanol suspensions”,Proc. Natl. Acad. Sci, placecountry-regionUSA. 第98巻、第20号:第11103〜11107頁(2001年))に記載されているように、噴霧化の前に、生理食塩水又はエタノールに溶解させ、そして投与することができる。
【0181】
別の実施例において、ここに記載の前記物質は、例えば、パットン(Patton)他著の文献(Ppatton, J.S.他、“Inhaled Insulin”,Adv. Drug Deliv. Reve.、第35巻:第235〜247頁(1999年)(2001年)に記載されているように、従来方法で、乾燥送達、調製させる場合にも有効である。
【0182】
本発明は、例えば、ゴンダ,アイ(Gonda, I.)他著、(1998年) “Inhalation delivery systems with compliance and disease management capabilities.”J. Control. Rel, 53: 269-274に記載されているように、SmartMist(登録商標)やAERx(登録商標)等の薬剤投与装置に埋め込まれたマイクロプロセッサを利用するカテコールブタンの投与を含む。
【0183】
本発明の前記カテコールブタン及び組成物は、全てのインフルエンザウイルス感染を治療するために投与される。いくつかの好適実施例において、治療されるインフルエンザ型は、トリインフルエンザ型に基づく。いくつかの好適実施例において、前記カテコールブタン及び組成物は、トリ型インフルエンザに感染したヒト対象体に対して投与される。更に、いくつかの好適実施例において、前記カテコールブタン及び組成物は、ヒトインフルエンザ感染とトリインフルエンザ感染との組み合わせを患うヒトの対象体に投与される。本開示を読了後、当業者は、本発明の製剤の投与によって治療および/又は軽減可能であるかもしれないその他の疾患状態および/又は症候を認識するであろう。
【0184】
いかなる特定のインフルエンザ発症又は症候反応の理論によっても限定されるものではないが、ヒトにおけるインフルエンザウイルス感染は、炎症誘発性サイトカイン調節異常を誘導するものと考えられる。重度のヒトH5N1疾患の臨床的特長は、ウイルス誘導サイトカイン調節異常と適合する。全てのインフルエンザウイルス感染が炎症誘発性サイトカインを誘導するものと考えられるが、H5N11/97ウイルスは、ヒトインフルエンザAウイルス亜型H3N2やN1N1よりも遥かに高い炎症誘発性サイトカインの遺伝子転写を誘導した(Cheung CY、Poon LL、Lau AS,他著“Induction of proinflammatory cytokines in human macrophages by influenza A (H5N1) viruses: a mechanism for the unusual severity of human disease?”Lancet, 2002 360 (9348):第1831〜7頁)。特に誘導されたサイトカインはTNF-α(ここでも図面において“TNF”として記載)と、イン・ヴィトロヒト一次単球誘導マクロファージのインターフェロンベータであった(同上)。
【0185】
インフルエンザウイルス感染は、多くの場合、重度の風邪のような症状を示し、呼吸器系障害および/又は致死的肺炎に導くことが多い。H5N1インフルエンザ亜型に感染した患者は、急性呼吸器困難及び多器官機能障害の症候群によって悪化される一次ウイルス肺炎を患ってきた。これらの患者の一部においてリンパ球減少と血球貧食現象が顕著に見られる。血球貧食現象と急性呼吸器困難及び多重器官機能障害の症候群は、一般にサイトカイン調節異常と関連付けられている。1997年のN5N1-関連死亡の死亡後報告は、炎症性サイトカインIl-6, IFN-γ及びTNF-αの高い濃度の反応性血球貧食症状を報告している。インフルエンザ感染に関連する多くの疾患又は障害があり、それらは非限定的に、喘息、肺炎、インフルエンザ後脳炎、細菌性筋肉炎、心電図変化、気管支炎、結核、癌、リウマチ様関節炎、変形性関節症、強皮症、全身性エリテマトーデス、腎炎、嚢胞性繊維症、悪液質、全身筋力低下、心不全、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症またはギランバレー症候群を含む。
【0186】
ヒトH5N1/97などの2003年のヒトH5N1ウイルスは、イン・ヴィトロでのヒト単球誘導マクロファージによる炎症誘発性サイトカインの過剰ポピュレーションを誘導したことが示された。TNF-αは、ヒトウイルスに類似の遺伝子型を有する家禽類からのH5N1ウイルスによって一次ヒトマクロファージにおいて高度に誘導される(Guan, Y, Poon LL, Cheung CY,他著、“H5N1 influenza: a protean pandemic threat”“Proc Natl Acad Sci USA, 2004 101(21) 8156-61)。従って、マクロファージからの高いレベルのTNF-αとその他のサイトカインは、インフルエンザA感染を有する患者の疾患の重度、特に、H5N1「トリインフルエンザ」の患者における異常な臨床的状態と疾患重度、に関連していると考えられる。全身性炎症反応、多器官機能障害、急性呼吸困難症候群、反応性haemophagocytosis、リンパ球減少が重度のN5N1疾患の患者の顕著な特徴であった。
【0187】
TNF-αは、そのアポトーシスを誘導する能力で良く知られている。アポトーシス誘導活性は、又、インフルエンザ発病にも寄与する。というのは、アポトーシスが効率的なインフルエンザウイルス複製に必須であるからである。ヒト及びトリインフルエンザウイルスの両方の効率的な複製が、TNFスーパーファミリメンバTRAIL及びFasLの上方調節と関連つけられている(Wurzer WJ, Ehrhardt C, Pleschka S,他著、“NF-kappaB-dependent induction of tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) and Fas/FasL is crucial for efficient influenze virus propagation”J. Biol Chem, 2004年、第279巻、第30号:第30931〜1頁).
【0188】
ここでも、特定の理論によって限定されるものではないが、インフルエンザウイルスゲノムRNAに応答する炎症誘発性サイトカインの産生の増加は、免疫系のサイトカインの膜上のToll様受容体によってシグナリングされることが示唆され、そのように考えられる(Diebold SS.、Kaisho T.、Hemmi H.他著、“Innate antiviral responses by means of TLR-7-mediated recognition of single-stranded RNA” Science, 2004 303(5663): 1529-31)。リポ多糖類(“LPS”、バクテリアエンドトキシンによるマクロファージの刺激は、更に、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-10などの炎症誘発性サイトカインや、プロスタグランジンや、ロイコトリエンや血小板活性化因子等の炎症誘発性脂質メディエーターの産生ももたらす。LPSに応答するサイトカイン産生は、インフルエンザウイルス応答に類似して、Toll様受容体経路を介して作用するものであることが示されている(Takeda K, Kaisho T、及び Akira S.著、“Toll-like receptors,”Annu Rev Immunol,、2003年、第21巻:第335〜76頁)。
【0189】
例えば、M4NやG4N等の一般式(I)、(II)及び(III)のカテコールブタン、そして、本発明によるカテコールブタンの単数又は複数を含む組成物は、マウス単球誘導マクロファージにおけるLPS又はウイルス感染に応答する、TNF-αとその他の炎症誘発性サイトカイン、及び、プロスタグランジンE2及びその他炎症誘発性脂質メディエーター、の産生を抑制する。マウス単球誘導マクロファージ細胞ライン(RAW264.7)は、一次ヒトマクロファージに匹敵して、LPSに応答するTNF-α産生を高度に誘導し、従って、TNF系におけるヒト薬剤作用を予想するための適当なモデルとなる。
【実施例】
【0190】
以下、本発明を、添付の非限定的に具体例を参照しながらより詳細に説明する。
【0191】
実施例1
M4Nが、TNF-α誘導を抑制する能力を測定するために、LPS-刺激RAW264.7マクロファージによるTNF-αの産生に対する一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4Nを投与することの作用を調べた。この実施例に類似の方法を、何れかのLPS-刺激マクロファージ細胞における何れかの炎症誘発性サイトカインの産生に対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために使用することができる。
【0192】
図1に図示され、以下に説明するように、M4Nは、RAW264.7マクロファージにおけるLPS-誘導TNF-αの過剰発現を抑制し、その最大抑制は、誘導の10時間後における57%である。
【0193】
LPSによるTNF-α誘導を抑制するM4Nの能力を測定するために使用される方法に関してより具体的には、1.5 x 105のマクロファージを、未処理(対照)のまま、又は、LPS(1μg/l)、M4N(25μM)又はその両方の化合物で指示の時間培養した。RAW 264.7細胞は、マウス単球マクロファージである。使用された前記LPSは、Salmonella minnesota R595由来であり、List Biological Laboratories, Inc. (Campbell, CA)から入手可能である。次に、培養上清中のTNF-αのレベルを、標準曲線からの内挿によるマウスTNF-α特異的イムノアッセイを使用して測定した。全ての測定は、二回ずつ行われ、かつ、各ケースにおいて、エラーバーは、シンボルサイズよりも小さかった。
【0194】
RAW 264.7マクロファージをATCCから購入し、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加したダルベッコの改変イーグル培地中で培養し、8%二酸化炭素中で、37℃にて維持した。FBSはAtlanta Biologicals (Atlanta, GA)から購入され、その他すべての培地成分は、Sigma Aldrich (St. Lous, MO)から購入された。TNF産生のために、細胞を、トリプシン処理によって収集し、遠心分離し、計数し、1.5 x 105の細胞を、24ウェル組織培養プレートに置き、一晩培養した。次に、これらの細胞を、25μM M4Nの不在/存在下で1マイクログラム/ミリリットルのリポ多糖類(LPS)で、図1に示す時間刺激した。LPSを組織培養培地に溶解させ、ウェルへの添加の前に超音波分解した。M4N保存溶液をDMSO中で調製し、その後、ウェルへの添加の前に、培養培地で希釈した。その結果得られた上清を収集し、8,0000rpmで2分間遠心分離して細胞と残滓とを除去し、-20℃で保存した。培養上清中のTNF-αのレベルを、R&D Systems Inc. (Minneapolis, MN)から購入したQuantikineマウスTNF-α/TNFSFIAイムノアッセイを使用して測定した。このアッセイは、サンドイッチ式捕獲ELISAである。ウェルは、マウスTNF-αに対して特異的な親和性精製ポリクローナル抗体でプレコーティングしたものを供した。上清を前記ウェルに添加し、インキュベートし、存在するTNF-αを固定された抗体によって捕捉した。洗浄後、酵素結合抗-TNF-α抗体を添加し、第2のインキュベーション工程を行った。ウェルを再度洗浄し、基質溶液を添加した。基質の開裂によって、青色の溶液が作り出され、これは、その後、停止溶液の添加によって黄色に変化する。次に、BMG POLARstar galaxyマイクロプレートリーダーを使用して色強度を測定した。標準曲線を作るために組み換えマウスTNF-αの標準溶液が製造業者によって提供され、培養上清中のTNF-αのレベルをその標準曲線からの内挿によって測定した。図1中の全ての点を、2連ずつで行い、平均値を定量化のために使用した。
【0195】
M4NによるTNF-α産生の抑制は、LPSではなく、ホルボールミリスチルアセテート(PMA)やA23187(カルシウムイオノフォア)での誘導後には、RAW 264.7マクロファージ中に観察されなかった。PMAとA23187は、細胞表面受容体と大半のシグナル伝達プロセスとは独立して、非特異的に作用するものであると考えられる。従って、特定の理論によって限定されるものではないが、M4NのTNF-αのLPS-誘導産生を抑制する能力は、TNF-αの合成と遊離に関与する下流側プロセスにではなく、TNF応答の上流側シグナリングと活性化段階とから由来するものであるかもしれない。従って、H5N1感染の治療に対するM4N処理の有用な作用は、TNF-α産生における潜在的に有害な非特異的減少を引き起こすことなく、観察することができる。
【0196】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、LPS刺激に対する応答のTNF-αの過剰産生を抑制することが可能であることを示しており、前記化合物と関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体を、インフルエンザ感染時のTNF-αレベルの増大によって媒介される疾患又は障害を治療するための使用可能である、ということを示している。
【0197】
実施例2
M4NがTNF-α誘導アポトーシスを抑制する能力を測定するために、マウス繊維芽細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスに対する、一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4N、を投与することの作用を調べた。この実施例に類似の方法を、何れかの細胞タイプにおけるTNF-α誘導アポトーシスに対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために使用することができる。
【0198】
インフルエンザ感染はTNF-αの産生を誘導し、TNF-αは、そのアポトーシス誘導能力で良く知られている。インフルエンザは、効率的な複製のためアポトーシスを必要とし、TNF-α誘導アポトーシスを阻止することによってインフルエンザの複製と疾患を減少させることができる。
【0199】
図2に図示され、以下に説明するように、M4Nは、シクロヘキシミドによってTNFに対して感受性にされた細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスを強力に抑制する。C3HAマウス繊維芽細胞を、ヒト組換えTNF-α(20ng/ml)、シクロヘキシミド(CHI)(10μg/ml)、又はこれらの両方と、NDGA(25μM)又はM4N(50μM)の不在/存在下でインキュベートした。すべての化合物は同時に添加され、処理は6時間であった。ローダミン123を最後の30分間中に添加し、BMG POLARstar galaxy蛍光光度計を使用して蛍光を測定した。
【0200】
より具体的には、C3HA 細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加したダルベッコの改変イーグル培地中で培養し、8%二酸化炭素中で37℃にて維持した。CH3A細胞ラインはC3Hマウスから発達させた3T3様マウス繊維芽細胞ラインである。胎児ウシ血清はAtlanta Biologicals (Atlanta, GA)から購入され、その他すべての培地成分は、シグマ・アルドリッチ(St. Lous, MO)から購入した。アポトーシスアッセイのために、細胞を、トリプシン処理によって収集し、遠心分離し、計数し、1.5 x 104の細胞を、培養培地中に平底96ウェルマイクロタイタープレートに置いた。ノルジヒドログアヤレチン酸(25μM)又はM4N(50μM)の不在/存在下で、TNF(20ng/ml)、CHI(10μg/ミリリットル)、又はこれらの両方への添加の前に、細胞を少なくとも6時間固着させた。ヒト組み換えTNF-αはPeprotech (Rocky Hill, NJ)から購入し、CHIはEMD Bioscience Inc. (San Diego, CA)から購入した。両方を培養培地中に溶解させた。NDG Aも、培養培地に溶解させ、他方、M4N保存溶液はDMSO中で調製し、その後、ウェルへの添加の前に培養培地中で希釈した。全ての化合物は、200マイクロリットルの総量で同時に添加され、6時間インキュベートされた。インキュベーション時間の最後の30分間中に、50μLのローダミン123を、2μg/ミリリットルの最終濃度にて各ウェルに添加した。ローダミン123は、Molecular Probes Inc. (Eugene, OR)から購入され、培養培地中で希釈された。ローダミン123は、エネルギーを与えられたミトコンドリアによって捕捉され、生きた健康な細胞は強力なミトコンドリア蛍光を示す。これに対して、アポトーシス細胞は、多くの場合、ミトコンドリア透過性変化を受け、そしてミトコンドリアはその膜能力を失うことから、アポトーシスを受けている細胞はその蛍光が減少する。その結果、ローダミン123蛍光は、アポトーシス細胞において劇的に減少する。それぞれ492及び538ナノメートルに設定された励起及び発光波長で、BMG POLARstar galaxyマイクロプレートリーダーを使用して蛍光強度を測定した。全ての点を、三重に行い、百分率細胞死亡率を下記の式から計算した。
【0201】
(数1)
[(対照-実験)/対照]x 100
【0202】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスを抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体を、効率的な複製のためにアポトーシスを必要とする宿主細胞におけるインフルエンザ複製を減少させるために使用することが可能である、ということを示している。
【0203】
実施例3
M4Nの、インフルエンザウイルス感染に応答したプロスタグランジンの過剰産生を抑制する能力を測定するために、LPS-誘導 RAW264.7マクロファージによる、プロスタグランジンE2(“PGE2”)、プロスタグランジンF1α(“PGF1α”)及びプロスタグランジンF2α(“PGF2α”)の産生に対する一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4N、の投与の作用を調べた。この例のものに類似の方法は、何れかのLPS-刺激マクロファージ細胞における任意の炎症誘発性脂質メディエーターの産生に対する任意の一般式(I)カテコールブタンの作用を測定するために使用することが可能である。
【0204】
プロスタグランジンは、事実上全ての組織と器官に見られる、自己分泌及び傍分泌脂質メディエーターである。それらは、細胞において、ガンマ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、等の必須脂肪酸から合成される。それらは、内皮細胞、子宮細胞、及び肥満細胞等に加えて、例えば、凝集又は解離を引き起こす血小板、収縮又は拡張を引き起こす血管平滑筋細胞、痛みを引き起こす脊髄ニューロン等、種々の細胞に作用する。プロスタグランジンは、非限定的に、筋肉収縮を含む種々多様な作用を有し、炎症を媒介する。その他の作用には、カルシウム移動、ホルモン調節、細胞成長制御がある。
【0205】
プロスタグランジンE2は、シクロオキシゲナーゼ(COX-1及びCOX-2)の作用を介して脂肪酸から誘導される、プロスタグランジンH2(PGH2)、に対するプロスタグランジンEシンターゼの作用から生成される。PGE2は、インフルエンザ感染の過程中に誘導される。ヒトインフルエンザウイルス亜型H3N2での感染は、気管支上皮細胞におけるPGE2遊離を増大させる(Mizumura K、Hoshimoto S、Ma ruoka S他、“Role of mitogen-activated protein kinases in influenza virus induction of prostagladin E2 from arachidonic acid in brochial epithelial cells.”Clin Exp Allergy,、2003年、第33巻、第9号:第1244〜51頁)。
【0206】
PGF2αは、PGH2、PGE2又はPGD2を含む3つの異なる基質からの3つの経路によって作られる。PGF2αは、平滑筋収縮を引き起こし、その作用は、喘息と分娩と関連つけられている。
【0207】
PGI2としても知られる、プロスタサイクリンは、多くの細胞タイプによって広く発現されるPGIシンターゼの作用によってPGH2から生成される。プロスタサイクリンは、強力な血管拡張物質であり、炎症や分娩等の様々な生物反応において重要な平滑筋弛緩物質である。しかし、プロスタサイクリンは不安定で、通常、PGF1α(6-keto-PGF1α)として知られるプロスタサイクリンの安定的な誘導体を測定することによって、信頼性の高い測定値が得られる。
【0208】
図3に図示され、以下に説明されるように、M4Nは、LPS-誘導PGF2産生に対して強力な抑制作用を有する。図3において、M4N(25μM)は、RAW264.7マクロファージにおけるPGE2のLPS誘導産生の強力な抑制を示した。これらマクロファージは、表示された時間、LPS(1μg/ml)のみ、又は、25μMのM4Nとの組み合わせで処理された。次に、上清をプロスタグランジンE2イムノアッセイ(R&D Systems, Minneapolis MN)を使用してPGE2についてアッセイした。図示のデータは各時点における2〜4の測定の平均+/-SEMである。抑制のレベルは、それぞれ、6時間、10時間及び16時間の時点で、72、64及び80%であった。M4Nの抑制作用は、16時間全体を通じて培地において持続した。
【0209】
図4に図示し、以下に説明するように、M4Nは、LPS-誘導PGF2α産生に対して強力な抑制作用を有する。図4において、LPS(1μg/ml)での16時間の刺激後、RAW264.7マクロファージ上清から、15ng/mlのPGF2αが検出された。RAW264.7マクロファージを、LPS(1μg/ml)とM4N(26μM)とで同時に処理した時は、PGF2αの産生は抑制された。二つの実験からのM4N(25μM)による平均%抑制は、82%であった。RAW264.7マクロファージ培養上清中のPGF2αのレベルは、PGF2αELISA キット(Assay Designs, Ann Arbor, MI)を使用するELISAによって測定された。図示のデータは、二つの独立した実験からの平均+/-SEMである。
【0210】
図5に図示され、以下に説明するように、M4Nは、LPS-誘導PGF1α産生に対してある程度の抑制作用を有する。図5において、LPS(1μg/ml)での16時間の刺激後、RAW264.7マクロファージ上清から、5〜6ng/mlのPGF1αが検出された。RAW264.7マクロファージを、LPS(1μg/ml)とM4N(25μM)とで16時間同時に処理した時は、PGF1αの産生は抑制された。二つの実験からのM4N(25μM)による平均%抑制は、41%であった。RAW264.7マクロファージ培養上清中のPGF1αのレベルは、PGF1αELISA キット(R&D Systems, Minneapolis MN)を使用するELISAによって測定された。図示のデータは、二つの独立した実験からの平均+/-SEMである。
【0211】
図5に図示されている、PGF1αの産生の比較的穏やかな抑制(PG12/プロスタサイクリンのインジケーター)がなんらかの実験誤差によるものでないことを確かめるために、これらのRAW264.7マクロファージ培養上清中のPGE2の産生の抑制も測定した。図3の結果と一致して、これらの上清中においてPGE2の90%以上の抑制が検出され、これはPGF1αの産生に対する観察された中程度な抑制が、細胞、LPS及びM4N、に関連する実験誤差による可能性が低いものであったことを示唆している。
【0212】
EM-1421とも呼ばれるM4Nは、プロスタグランジンとロイコトリエンの産生に対して強力な抑止作用を及ぼすので、それは、脂質メディエーターに依存する傾向があり、インフルエンザ感染によって引き起こされる、肺の炎症状態、例えば、喘息、の治療に適している。PGIシンターゼは、PGE及びPGFシンターゼと異なり、EM-1421の存在下でのPGF1αの相当量の産生を占めるEM-1421に対して比較的耐性を有することができる。
【0213】
PGE2の産生に対するM4Nの作用を測定するために使用した方法について更に詳述すると、RAW264.7マクロファージを、購入し実施例1に記載した手順に従って培養、維持した。細胞におけるプロスタグランジンE2産生は、トリプシン処理による細胞の収集、遠心分離によって達成した。細胞を計数し、1.5 x 105の細胞を、24ウェル組織培養用プレートに置き、一晩培養した。次に、これらの細胞を、25μM M4Nの不在/存在下で1マイクログラム/ミリリットルのリポ多糖類(LPS)で、図5に示す回数刺激した。LPSを組織培養培地に溶解させ、ウェルへの添加の前に超音波分解した。M4N保存溶液をDMSO中で調製し、その後、ウェルへの添加の前に、培養培地で希釈した。その結果得られた上清を収集し、8,000rpmで2分間遠心分離して細胞と残滓とを除去し、-20℃で保存した。培養上清中のプロスタグランジンE2のレベルを、R&D Systems Inc.から購入したプロスタグランジンE2イムノアッセイを使用して測定した。このアッセイは、競合式ELISAである。上清中に存在するプロスタグランジンE2は、マウスモノクローナル抗プロスタグランジンE2抗体に対する結合のために、一定量のアルカリホスファターゼ標識化プロスタグランジンE2と競合する。その結果得られる複合体は、マイクロタイターウェルに供給結合されたヤギ抗−マウス抗体によって結合される。洗浄後、結合した酵素の量を定量化するために発色基質を添加する。色強度を、BMG POLARstar galaxyマイクロプレートリーダーを使用して405ナノメートルで測定した。プロスタグランジンE2の標準溶液が、製造業者によって提供され、培養上清中のプロスタグランジンE2のレベルをその標準曲線からの内挿によって測定した。全て点を、2重で行い、平均値を定量化のために使用した。
【0214】
類似の方法を使用して、PG1α及びPGF2αの産生に対するM4Nの作用を測定した。
【0215】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、LPS刺激に応答するプロスタグランジンの過剰産生を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体が、インフルエンザ感染時のプロスタグランジンのレベル増大によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0216】
実施例4
LPS刺激によるサイトカインの誘導、及び、M4Nのその誘導を抑制する能力を測定するために、一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4NのRAW264.7マクロファージによる一群のサイトカインの産生に対する投与作用を調べた。
【0217】
この研究において、抗体(“Ab”)アッセイ技術を使用した。図6に図示し、以下に説明するように、M4Nは、複数種のサイトカインのLPS-誘導産生に対する抑制作用を有する。サイトカイン産生のレベルは比較的低かったけれども、LPSの刺激、又は、EM-1421の処理無しで(図6Aにおいて「対照」のパネル)、RAW264.7マクロファージから上清中に多くのサイトカインが検出された。一般に、このパターンのサイトカイン産生は、Em-1421の25μMの最終濃度での処理(図6A中の「EM-1421」のパネル)後に維持されたが、但し、いくつかのサイトカインの産生は減少し(KC、BLC、IL-4、IL-9、MIP-1α、MIP-1γ及びIL-12p40p70)、そして、2つのサイトカインの産生は増加した(IL-1αとMIG)。これは、EM-1421が安全であるという臨床知見を強化するものである。
【0218】
LPSは、RANTES、IL-1α、IL-2、TIMP-1、TIMP-2、TNF-α、IL-6、MCP-1、sTNFR1、sTNFRII、IL-12p40、MIP-1α、及びG-CSFを含む、多くのサイトカイン(図6B中の「LPS」のパネル)の大幅な増加(>20%)を引き起こした。いくつかのケースにおいて、これらの増加は、EM-1421によって部分的又は完全に相殺された(図6B中の“LPS+EM-1421”のパネル)。高レベルに産生されたサイトカインの内、EM-1421は、IL-1αのLPS-誘導産生を約20%、TNF-αを約24%、MCP-1を約33%、sTNFRIを約63%、sTNFRIIを約20%抑制した。低レベルで産生されたサイトカインのうち、EM-1421は、I-TACのLPS-誘導産生を約100%、IL-2を約100%、TIMP-1を約30%、TIMP-2を約100%、BLCを約100%、そしてIL-3を約100%抑制した。しかしながら、これらのサイトカインは低レベルで産生されたので、これらの観察の有意性を予測することは困難である。興味深いことに、EM-1421は、RANTES、IL-6、IL-12p70、MIP1-α、及びG-CSFのLPS-誘導産生は抑制せず、IL-12p40p70のLPS-誘導産生は約43%増加させた。
【0219】
サイトカインの産生に対するM4Nの作用の測定に使用した方法について更に詳述すると、この方法において「マウス炎症アレイ-1」(RayBiotech, Inc., Allanta, GA)を使用した。RAW264.7マクロファージを購入し、培養し、EM-1421(25μM)で処理したLPS(1μg/ml)で刺激し、実施例1に記載の手順に従って収集した。LPS(1μg/ml)の刺激有り又は無しおよびEM-1421(25μM)の処理有り又は無し、のRAW264.7マクロファージの培養上清中のサイトカインを、製造業者の指示に従って、前記マウス炎症アレイ-1を使用して測定した。簡単に説明すると、培養上清を、ニトロセルロースAbアレイと、約2時間、インキュベートし、洗浄し、第2のAb溶液に対して露出させ、ECL溶液で現像し、X-線フィルムに対して露出させた。アレイオートラジオグラフを走査した。Photoshop (Adobe)を使用して、それぞれのアレイ位置について平均画素強度を分析、測定した。2連のスポットの平均値が図6Aと6Bにプロットされている。陽性対照スポットは各アレイにおいて約100単位であり、2連スポットのすべてにおいて、SEMは10%以下であり、2連スポットの大半において、SEMは1%以下であった。
【0220】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、IPS刺激に応答するTNF-αに加えて、いくつかの他のサイトカインの過剰産生を抑制することが出来ることを示し、前記化合物及び関連カテコールブタンそしてNDGA誘導体を、インフルエンザ感染時のサイトカインのレベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0221】
実施例5
一般式(I)のカテコールブタン、すなわちM4Nの投与の、MDCK細胞及びRAW264.7マクロファージからのインフルエンザ株A/WS/33の産生に対する作用を、M4Nのこれらの細胞においてインフルエンザウイルスの成長を抑制する能力を測定するために調べた。この例に類似の方法は、任意のタイプの細胞における任意の株のインフルエンザウイルスの成長又は複製に対する一般式(I)の任意のカテコールブタンの作用を測定するために使用可能である。
【0222】
A/WS/33は、American Type Culture Collection(アメリカ培養細胞系統保存機関:ATCC)(Manassas, VA)から市販されているインフルエンザAウイルスの株である。それは、インフルエンザの患者から単離された。A/WS/33の推奨されている宿主は、ニワトリ胎児、フェレット、及びマウスを含む。
【0223】
MDCK細胞は、外観が正常な成体メスのコーカー・スパニエルの腎臓に由来する上皮様細胞である。それらは、インフルエンザAウイルスを含む、種々のタイプのウイルスの成長を支持することが示されている。MDCK細胞を使用して、高力価の系統A/WS/33を作成し、そして、定量アッセイのため、前記実験からの培養上清中の感染性ウイルスの量を測定した。25μMが毒性作用無しでMDCK細胞において使用可能なEM-1421の最高濃度であることがわかった。A/WS/332の複製をモニタするために、非限定的に、細胞改変性(TCID50)、プラーク、イムノフォーカス(immunofocus)、及び免疫蛍光、を含む様々な定量アッセイが確率された。
【0224】
パネルAとBが同じデータを示すが、それぞれ直線及びlog y軸のものである図7に図示されているように、25μMの濃度のEM-1421は、MDCK細胞中におけるA/WS/33複製を約75%抑制した。種々のウイルスの力価における大きな差を可視化するために通常用いられる対数プロットは、EM-1421の抑制作用が1 log単位以下であったことを示している。
【0225】
パネルAとBが同じデータを示すが、それぞれ直線及びlogy軸のものである図8に図示されているように、テストされた濃度(3μM, 6μM, 12μM及び 25μM)でのEM-1421は、RAW264.7マクロファージにおけるA/WS/33複製を抑制しなかった。その代わりに、EM-1421は、RAW264.7マクロファージからのA/WS/33の産生を促進した。ここでも、しかしながら、この作用は比較的中程度、すなわち、1logの増加以下であった(図8B)。RAW264.7細胞をEM-1421で前処理することによって、A/WS/33の成長は更に促進された。図9のパネルA及びBに図示されているように、その促進作用は、EM-1421の濃度が25μMにおいて特に顕著であり、そこで1 logの増加が36時間の時点で測定された。
【0226】
EM-1421は、MDCK細胞ではインフルエンザ系統A/WS/33の成長を抑制したが、RAW246.7マクロファージでは増殖を増大させた。これら両方のケースにおいて、これらの作用は比較的中程度、すなわち、ウイルス力価において約1logの変化であった。EM-1421のインフルエンザウイルス複製に対する作用を完全に決定するためには追加のウイルス及び細胞タイプが必要であろう。更に、これらの作用がウイルス負荷に大きく影響するものであるか否かを決定するためにはイン・ヴィヴォでの実験が必要であろう。
【0227】
MDCK細胞又はRAW264.7マクロファージからのA/WS/33の産生に対するM4Nの作用を測定するために使用された方法について更に詳述すると、MDCK細胞又はRAW264.7マクロファージをA/WS/33と、それぞれ複数の感染(MOI)0.001又は0.002でインキュベートした。薬剤の添加無しの対照を除き、EM-1421は、インフルエンザ感染の開始後、30分で所望の濃度で前記細胞に添加され、実験期間を通じて維持された。培養上清を所望の時点で収集した。
【0228】
次に、MDCKベースのイムノフォーカスアッセイを使用して、これらの上清中の感染性ウイルスを定量化した。MDCK細胞(5 x 105/ウェル)を24ウェルプレートに置き、ウイルス増殖培地:DME培地ベース(#10-013-CV, MediaTech, Hendon VA)、添加、10%胎児ウシ血清(Atlanta Biologicals, Atlanta GA)、25mM HEPES 緩衝液(#25-060-CL, Mediatech), 1:100抗菌/抗真菌溶液(#A5955-Sigma-Aldrich, St. Lous Mo)、1.8μg/mlのウシ血清アルブミン(#A7906 Sigma-Aldrich)及び2mg/ml トリプシン(#3740, Worthington, Lakewood NJ)を含むウイルス成長培地中で一晩培養した。次に、前記細胞を胎児ウシ血清無しの同じ培地中で洗浄した。その後、ウイルス含有上清の連続希釈物を30分間添加し、その後、0.6%トラガントガム(#104792,MP Biomedicals Inc. Solon OH)を含むウイルス成長培地をオーバーレイした。インキュベーションの24時間及び48時間後、前記オーバーレイを、吸引し、細胞をPBSで濯ぎ、50: 50アセトン/メタノールで固定した。その後、細胞を、フォーカス検出のために、抗HA抗体で染色した。
【0229】
EM-1421で前処理されたRA264.7マクロファージからのA/WS/33の産生に対するM4Nの作用を測定するために、RAW264.7マクロファージを、まず、所望の濃度のEM-1421で2時間インキュベートした。次に、前記細胞を、0.002のMOIにて、A/WS/33で接種した。実験期間全体を通じて、細胞培地中にはEM-1421が存在し維持された。培養上清を所望の時点で収集した。次に、上述したMDCKベースイムノフォーカスアッセイを使用してこれらの上清中の感染性ウイルスを定量化した。
【0230】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンが、一部の宿主細胞中のインフルエンザウイルスの複製を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタン及びNDGA誘導体を宿主におけるインフルエンザウイルスの複製又は成長を抑制するために使用することが可能であることを示している。
【0231】
実施例6
一般式(I)のカテコールブタン、すなわちM4Nの投与の、インフルエンザ系統A/WS/33で感染したRAW264.7マクロファージによるTNF-αの産生に対する作用を、M4Nがインフルエンザ感染によるTNF-αの誘導を抑制する能力を測定するために調べた。この例に類似の方法は、何れかのインフルエンザウイルスに感染したマクロファージ細胞における何れかの炎症誘発性サイトカインの産生に対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために使用することができる。
【0232】
この研究では、二つのモデルシステム、低多重度感染モデルと高多重度感染モデル、を使用した。低多重度感染モデルでは、RAW264.7マクロファージの感染を、非常に低い用量のインフルエンザ(MOI=0.002)から初め、その後、培養を通じて次の24-48時間、これを拡張させた。このモデルは、自然な感染中においてイン・ヴィヴォに見られる状態に近似することを試みるものである。但し、このモデルにおいて、感染は、2μg/mlのトリプシンを含む無血清感染培地で行わなければならない。RAW264.7細胞を、それら成長培地(10%FCSを含むDME)から前記無血清感染培地に切り替えた時、その感染培地自身がマクロファージを刺激し、サイトカインと脂質メディエーター産生のバックグランドレベルを上げる。トリプシンを感染培地に含ませた理由は、インフルエンザが細胞から細胞へと広がるためには(イン・ヴィヴォ又はイン・ヴィトロで)、それは細胞外プロテアーゼによって作用されなければならないからである。
【0233】
前記高MOIモデルでは、感染を、事実上全ての細胞が急速かつ同時に感染されるような高い投与量のインフルエンザ(MOI=5)から開始した。これらの感染の8時間後において高いヘマグルチニン染色が観察された。これらの感染は、サイトカインと脂質メディエータのバックグランドレベルを低く維持する正常な培養培地中で行われた。しかしながら、これらの条件下において、感染性ビリオンは産生されなかった。高い初期投与量のインフルエンザでのビリオン産生の欠如は、このモデルがイン・ヴィヴォのインフルエンザ感染に近似するものではないということを意味する。
【0234】
従って、インフルエンザとEM-1421のRAW264.7の代謝に対する作用のより完全な見識を得るために、低MOIモデルと高MOIモデルとの両方を使用した。
【0235】
図10〜12は、低MOIアッセイモデルからの結果を図示している。図10において、RAW264.7細胞をそれらの成長培地から前記無血清感染培地にスイッチしたとき、細胞は約750pg/mlのTNF-α(「培地」のバー)を産生したが、これは細胞が成長培地に留まる時に通常測定される100pg/mlよりも高い。EM-1421(25μM)のみで、この値を約67%低減し、これは、明らかに、培地における前記変換に関連する「ストレス」又は「活性化」シグナルを相殺するものである(“EM-1421”のバー)。すでに報告されているように、インフルエンザの感染は、TNF-αのレベルの増加をもたらすものであることが判った(“Flu”バー)。通常、TNF-αのレベルにおける約80〜85%の増加がこの研究でのインフルエンザ(系統A/WS/33)の感染後に測定された。EM-1421(25μM)は、TNF-αの産生におけるこのインフルエンザ誘導増大を完全に阻止した(“Flu/EM-1421”バー)。
【0236】
図11は、異なる濃度のEM-1421の用量応答実験の結果を図示している。EM-1421は、前記培地のみ、又は、培地と0.1μMもの低い最終濃度のインフルエンザのいずれかによるTNF-αの産生の増加を抑制した。EM-1421の濃度の増加によって抑制が増加した。
【0237】
図12は、経時変化実験の結果を図示している。細胞を、インフルエンザ株A/WS/33の接種有り又は無しで、及び、EM-1421での処理有り又は無し(“EM-1421”)でインキュベートした。培養上清中のTNF-αの量を、図に示されている時点で測定した。EM-1421の抑制作用は、TNF-αの誘導直後に現れ、TNF-αの誘導は24時間の期間を通じて抑制された状態に維持されたことがわかった。
【0238】
図13〜15は、高MOIアッセイモデルからの結果を図示している。RAW264.7細胞は、ウイルス感染とEM-1421処理がない場合、約100pg/mlのTNF-αを産生した(“培地”バー)。EM-1421(25μM)のみで、この値を約35%低減した(“EM-1421”バー)。ここでも、インフルエンザの感染によって、約135%として図示されているように、TNF-αのレベルが増加する(“Flu”バー)ことがわかった。EM-1421(25μg)は、ここでも、TNF-αの産生におけるこのインフルエンザ誘導増加を完全に阻止した(“Flu/EM-1421”バー)。図14は、用量応答実験の結果を図示している。最終濃度、約10μM及び25μMのEM-1421は、インフルエンザ感染によるTNF-αの産生増加を、それぞれ、約34%、60%、抑制した。図15は、経時変化実験の結果を図示している。EM-1421の抑制作用は、TNF-αの誘導直後に現れ、TNF-αの誘導は、12時間と24時間において、それぞれ、51%と55%抑制された。
【0239】
上に示したように、M4Nは、低MOIモデルと高MOIモデルとの両方において、RAW264.7マクロファージにおけるインフルエンザ誘導TNF-α過剰発現を強力に抑制する。従って、M4Nが、インフルエンザウイルス、特に、H5N1インフルエンザ亜型、に感染したヒトマクロファージにおけるTNF-α応答を同様に抑制する可能性は高い。TNF-αは、高悪性のインフルエンザH5N1亜型での感染の結果生じる肺におけるしばしば致死性の免疫応答において、キーとなる役割をもつ1つである。従って、EM-1421は、肺炎や悪性インフルエンザ感染に関連する致死性を劇的に低減し、サイトカイン調節異常を制御することによってヒトにおけるH5N1疾患の重度を軽減することができる。経時変化実験は、EM-1421が感染の初期においてTNF-αの誘導を抑制することを示し、これは、EM-1421がおそらく、TFN-αの分解を引き起こすのではなく、TNF-αの合成および/又は遊離を抑制するように作用するものである、ということを示唆している。
【0240】
使用した前記低MOIモデルについて更に詳述すると、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME(#D5648, Sigma Aldrich, St. Louis, MO)中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、ウイルス増殖培地(2μg/mlのトリプシン、2.5%HEPES緩衝液、及び0.2%BSAを含むDME)中で、0. 002のMOIにて、接種ウイルス(系統A/WS/33)に200μlと置き換え、ウイルスに30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってTNF-αをアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において実行された2連の感染での2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイされた。
【0241】
使用された前記高MOIモデルにおいて、1.5 x 105RAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME培地中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME培地中に5のMOIにて、接種ウイルス(株A/WS/33)200μlと置き換え、30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってTNF-αをアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において実行された2連の感染での2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイされた。
【0242】
用量応答実験において、EM-1421は、培地の用量を1mlに増加させたとき、最終濃度0.1、1、10、又は25μMで培地に添加された。
【0243】
経時変化実験において、インフルエンザウイルスによる細胞培地の接種の4, 13又は24時間後、培養上清を収集し、ELISAによってNTF-αをアッセイした。
【0244】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンがインフルエンザウイルス感染に応答するTNF-αの過剰産生を抑制するとことができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタンそしてNDGA誘導体がインフルエンザ感染時のTNF-αレベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0245】
実施例7
一般式(I)のカテコールブタン、すなわちM4N、の投与の、インフルエンザ系統A/WS/33に感染したRAW264.7マクロファージによるPGE2の産生に対する作用を、M4Nのインフルエンザ感染によるPGE2の誘導を抑制する能力を測定するために調べた。この例のものに類似の方法は、何れかのインフルエンザウイルスに感染したマクロファージ細胞中の何れかの炎症誘発性脂質メディエーターの産生に対する一般式(I)の何れかのカテコールブタンの作用を測定するために利用することができる。
【0246】
図16及び17に図示され、以下に説明するように、M4Nは、RAW264.7マクロファージにおけるインフルエンザ誘導PGE2過剰発現を抑制する。従って、M4Nは、恐らく、インフルエンザウイルス、特に、H5N1インフルエンザ亜型、に感染したヒトマクロファージにおけるTNF-α応答も同様に抑制するであろう。更に、M4Nは、サイトカイン調節異常を制御することによってヒトにおけるH5N1疾患の重度を軽減するように作用するかもしれない。
【0247】
インフルエンザ感染中におけるPGE2の産生はあまり研究されていない。ここでも、この研究において低MOIモデルと高MOIモデルとの両方を使用した。
【0248】
図16は、低MOIアッセイモデルからの結果を図示している。RAW264.7細胞がその増殖培地から前記無血清培地に切り替えられた時、細胞は約1ng/mlのPGE2を産生した(“培地”バー)。EM-1421(25μM)のみによって、この値が強力に減少した(“EM-1421”バー)。インフルエンザの感染は、約30%のPGE2レベルの増加を再現可能にもたらした(“Flu”バー)。EM-1421(25μM)は、ここでも、PGE2の産生におけるインフルエンザ誘導増加を強力に抑制する(“Flu/EM-1421”バー)。
【0249】
図17は、高MOIアッセイモデルからの結果を図示している。RAW264.7細胞は、ウイルス感染及びEM-1421処理の無い場合は非常に低いレベルのPGE2(約75pg/ml)を産生した(“培地”バー)。EM-1421(25μM)のみで、PGE2のレベルは約2倍に増加した(“EM-1421”バー)。しかし、PGE2は「培地」と“EM-1421”ウェルにおいて低レベルで産生されたので、これらの観察の有意性を予測することは困難である。インフルエンザの感染によって、約1,300%から約1,100pg/mlとして図示されているように、PGE2のレベルは劇的に増大した(“Flu”バー)。EM-1421(25μM)によって、PGE2の産生におけるこのインフルエンザ誘導増加は、32%低減した(“Flu/EM-1421”バー)。
【0250】
脂質メディエーターがインフルエンザ誘導肺炎において果たす役割はまだよく特徴つけられていない。この研究において得られた結果は、新しい情報を開示した。前記低MOIモデル(図6)において、前記無血清感染培地によって、高いレベルのバックグランドPGE2産生が起こり、インフルエンザウイルスでの感染によって、PGE2のレベルにおける追加の小さな再現可能な増加が起こった。そしてEM-1421は、前記培地及びインフルエンザ感染の両方によるPGE2の産生の増加を完全に抑制した。低MOIモデルからの結果は、EM-1421によるPGE2のLPS-誘導産生の観察された強力な抑制と一致している。これに対して、前記高MOIモデル(図17)は、インフルエンザ感染によるPGE2の強力な誘導(低バックグランド)を示したが、EM-1421によるこの誘導の中程度の抑制しか示さなかった。これら低MOIモデルシステムと高MOIモデルシステムとから観察されるこれらの異なる結果を説明するためには更なる実験を行う必要がある。
【0251】
使用した前記低MOIモデルについて更に詳述すると、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これをウイルス増殖培地(2μg/mlのトリプシン、2.5%HEPES緩衝液、及び0.2%BSAを含むDME)中に、0.002のMOIで、接種ウイルス200μlと置き換え、ウイルスに30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってPGE2についてアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において2連で感染させた2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイした。
【0252】
使用された前記高MOIモデルにおいて、1.5 x 105RAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを10%FCSを含むDME培地中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME培地中に、5のMOIで、接種ウイルス(系統A/WS/33)200μlと置き換え、30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量が1mlに増加された時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってPGE2をアッセイした。図示のデータは、それぞれの実験において2回の正副の感染させた2つの独立した実験の平均+/-SEMである。全てのELSAポイントは2連でアッセイした。
【0253】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンがインフルエンザウイルス感染に応答するPGE2の過剰産生を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタンそしてNDGA誘導体がインフルエンザ感染時のPGE2レベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0254】
実施例8
TNF-αに加えて、サイトカインのインフルエンザ誘導産生及びM4Nのそのような誘導産生を抑制する能力を測定するために、一般式(I)のカテコールブタン、すなわち、M4NのRAW264.7マクロファージによるサイトカインの産生に対する投与作用を調べた。
【0255】
この研究において、抗体(“Ab”)アッセイ技術を使用した。図18に図示されているように、前記アレイ上の40のサイトカイン、ケモカイン、レセプター、プロテアーゼのうち、8つがこの実験で検出された。ここでも、低MOI条件下では、RAW264.7細胞を成長培地からトリプシンを含む前記無血清感染培地に切り替えることによって、TNF-αの持続的なレベルの生産、高いレベルのケモカインMIP-1γの産生が誘導された。Flu感染によって、TNF-αとMIP1γのレベルの強力な増加と、sTNFRIIとケモカインMCP-1のレベルの中程度の増加が起こった。Flu感染は、更に、前記培地対照サンプル中には検出されなかったサイトカインG-CSFの産生も誘導した。EM-1421(25μM)はこれらの作用の多くを抑制した。TNF-αとMIF-1γの培地誘導産生はEM-1421によって完全に阻止され、TNF-αのFu-誘導産生も同様であった。MIF-1γのFu-誘導産生は、約60%阻止され、G-CSFの産生は完全に阻止された。これに対して、EM-1421はsTNF RIIやMCP-1のFu-誘導産生は抑制しなかった。
【0256】
サイトカインインターフェロン-β(INF-β)とIL-6に関してELISAアッセイを行った。INF-βは、アレイ上には含まれず、インフルエンザAでの感染はこのサイトカインを誘導することができる。しかし、低(A)及び高(B)MOI条件の両方において、ウイルスの接種の24時間後の感染細胞の培養上清から有意量のINF-βは検出されなかった(データ図示せず)。インフルエンザAがインターフェロンβを誘導する能力は高度に系統依存性であり(Hayman,他、2006年、Virology,、第347巻:第52頁)、明らかに系統A/WS/33は非誘導物質である。EM-1421は、又、IFN-βの産生を誘導しなかった。
【0257】
IL-6の誘導はいくつかの系統のインフルエンザについては報告されているが、上述したアレイ分析からはIL-6誘導は検出されず、これは系統A/WS/33もこのサイトカインの非誘導物質であるということを示唆している。低(A)又は高(B)MOIのいずれのELISAアッセイからも系統A/WS/33での感染後に有意レベルのIL-6は検出されず、これは、アレイ分析の結果を確認するものであった。低MOI条件下でのEM-1421での処理後に、低レベルのIL-6が検出された。しかしながら、IL-6のレベルは極めて低い(10pg/ml)ものであったため、この観察の有意性を予測することは困難である。
【0258】
TNF-αに加えて、われわれが行ったアレイ分析は、EM-1421は、更に、MIP1γとG-CSFのインフルエンザ誘導産生を阻止することも明らかにした。CCL9としても知られるMIP1γは、その活性が肺における炎症を含む多くの細胞プロセスに関連つけられているケモカインである(Rosenblum-Lichtenstein他著、2006年、Am. J. Resp. Cell. Mol. Biol.、第35巻:第415頁)。G-CSFは、好中球の産生を調節するために重要であり、この遺伝子が欠如したマウスは、肺への好中球浸透のレベルの低減を示す(Gregory他著、2006年、Blood, epub. まだ印刷されず)。これら両方の分子のEM-1421による抑制は、EM-1421が肺におけるインフルエンザ関連炎症を防止するということの更なる裏づけを提供するものである。これらの実験に使用されたインフルエンザA/WS/33系統は、IFN-β、IL-6及びRANTESを含むこれまでインフルエンザ感染に伴うものとして報告されているいくつかのサイトカイン及びケモカインを誘導しなかった。インフルエンザA系統は、サイトカイン及びケモカインを誘導するそれらの能力において互いに大きく異なる。TNF-αに加えて、数多くのサイトカインとケモカインを誘導することが報告されている、A/PR/8/34等の他のインフルエンザ株での実験が現在進行中である(Wareing他著、2004年、J. Leukoc. Biol.、第76巻:第886頁)。
【0259】
サイトカインの産生に対するM4Nの作用を測定するために使用された方法について更に詳述すると、この方法において「マウス炎症性アレイ-1」(RayBiotech, Inc., Atlanta, GA)が使用された。RAW264.7マクロファージを購入、培養し、LPS(1μg/ml)で刺激し、EM-1421(25μM)で処理し、実施例1に記載した手順に従って収集した。培地(2mg/mlのトリプシン、2.5%HEPES緩衝液、0.2%BSAを含むDEM)、0.002 MOI A/WS/33インフルエンザA、25μM EM-1421、又は、インフルエンザとEM-1421の両方、とのインキュベーションの24時間後、RAW264.7マクロファージ培養(1.5 x 105細胞/ウェル)から上清を収集した。前記上清中のサイトカインを、製造業者の指示に従って前記マウス炎症性アレイ-1を使用して測定した。簡単に説明すると、培養上清を、ニトロセルロースAbアレイと、約2時間、インキュベートし、洗浄し、第2のAb溶液に対して露出させ、ECL溶液で現像し、X-線フィルムに対して露出させた。アレイオートラジオグラフを走査した。Photoshop (Adobe)を使用して、それぞれのアレイ位置について平均画素強度を分析、測定した。8つの検出された産物について2連のスポットの平均値をプロットしている。検出されなかったアレイ上の他の32の産物は図示されていない。陽性対照スポットは各アレイにおいて約100〜110単位であり、2連のスポット間においてSEMは10%以下であった。Lymph=リンホタクチン。
【0260】
RAW264.7マクロファージによるIFN-βとIL-6産生を検出するために使用したELISA法について更に詳述すると、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。低MOIアッセイ条件下では、培地を除去し、これをウィルス増殖培地(2μg/mlのトリプシン、2.5%のHEPES緩衝液、及び0.2%のBSAを含むDME)中に、0.002のMOIで、接種ウイルス(系統A/WS/33)200μlと置き換え、ウイルスに30分間吸収させた。高MOIアッセイ条件下では、培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME中の接種ウイルス(系統A/WS/33)の200μlと置き換え、30分間吸収させた。使用した高MOIアッセイモデルでは、1.5 x 105のRAW264.7マクロファージ細胞/ウェルを、10%FCSを含むDME中にて一晩24ウェルプレートにプレーティングした。培地を除去し、これを、10%FCSを含むDME中で、5のMOIで、接種ウイルス(系統A/WS/33)の200μlと置き換え、30分間吸収させた。次に、培地の量を1mlに増加させた。量を1mlに増加させた時、EM-1421を、25μMの最終濃度で添加した。ウイルスとEM-1421を含まないウェル(“培地”)、又はEM-1421のみを含むウェル(“EM-1421”)を、「模擬感染」として処理し、感染ウェルであるがウイルスを含まないものが受けたものと同じ操作をした。約24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、ELISAによってIFN-βとIL-6についてアッセイした。図示のデータは、1実験当たり実行した2連の感染をもつ、独立した実験の平均を示す。図示されていない場合、SEMはシンボルサイズよりも小さかった。ELSAポイントは2連でアッセイされた。
【0261】
この例からの結果は、一般式(I)のカテコールブタンがインフルエンザウイルス感染に応答するTNF-αに加えて、いくつかの他のサイトカインの過剰産生を抑制することができることを示し、前記化合物及び関連のカテコールブタンそしてNDGA誘導体がインフルエンザ感染時のこれらサイトカインのレベルの増加によって媒介される疾患又は障害を治療するために使用可能であることを示している。
【0262】
ここに提供された例は、一般式(I)のカテコールブタンが、インフルエンザウイルス感染によって誘導される、炎症誘発性ケモカイン、例えば、TNF-α等、の過剰産生、及び、炎症誘発性脂質メディエーター、例えば、PGE2等、の過剰産生を抑制することができること、そして、一般式(I)のカテコールブタンは、更に、TNF-α媒介アポトーシス、従って、宿主細胞におけるインフルエンザウイルスの複製、を低減することもできることを示している。これらの結果は、これらカテコールブタンが、インフルエンザウイルス感染症及びそれに関連する疾患と障害の治療に有用であるということを示している。
【0263】
尚、当業者は、その広い発明概念から逸脱することなく、上述した実施例に対して変更を行うことが可能であると理解するであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施例に限定されるものではなく、添付の請求項に定義された本発明の要旨及び範囲に含まれる改造を含むことが意図されているものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】種々の条件下におけるRAW264.7マウスマクロファージによるTNF-αのリポ多糖類(LPS)誘導産生を示すグラフ。
【図2】種々の条件下におけるC3HA繊維芽細胞におけるTNF-α誘導アポトーシスを示すグラフ。
【図3】種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGE2産生を示すグラフ。
【図4】種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF2α産生を示すグラフ。
【図5】種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導PGF1α産生を示すグラフ。
【図6A】抗体アレイ研究からの、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導サイトカイン産生を示すグラフ。
【図6B】抗体アレイ研究からの、種々の条件下におけるRAW264.7マクロファージによるリポ多糖類誘導サイトカイン産生を示すグラフ。
【図7】MDCK細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【図8】RAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【図9】ウイルス感染の前に、EM-1421によって処理されたRAW264.7マクロファージ細胞中のインフルエンザウイルスA/WS/33の複製に対するEM-1421の作用のグラフ表示を含み、ここで、パネルA及びBは、それぞれリニア及びlog-y軸の、同じデータを示している。
【図10】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生を示すグラフ。
【図11】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージ細胞によるTNF-α産生に関する投与量応答実験を示すグラフ。
【図12】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験を示すグラフ。
【図13】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、ウイルス感染および/又はEM-1421による処理時の、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生を示すグラフ。
【図14】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する投与量応答実験を示すグラフ。
【図15】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、RAW264.7マウスマクロファージによるTNF-α産生に関する経時変化実験を示すグラフ。
【図16】低効率(low multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生を示すグラフ。
【図17】高効率(high multiplicity)感染(MOI)モデルシステムからの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導PGE2産生を示すグラフ。
【図18】抗体アレイ研究からの、種々の条件下での、RAW264.7マウスマクロファージによるウイルス感染誘導サイトカイン産生を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるインフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、
治療的有効量の一般式(I)のカテコールブタン、
【化1】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよく;但し、R7、R8、及びR9の1つが水素を示すとき、-OR1、-OR2及びR7、R8、及びR9及の他の2つは、同時に-OHを示さない。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を対象体に投与する工程を有する方法。
【請求項2】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口又は静脈内に投与される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩、及び薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む組成物中で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、(a)水溶性有機溶媒;(b)シクロデキストラン、又は改変シクロデキストラン;(c)イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤;(d)改変セルロース;又は、(e)水不溶性脂質;又は(a)〜(e)のいずれかの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、脂質基剤製剤、リポソーム製剤、ナノ粒子製剤、ミセル製剤、水溶性製剤、生分解性ポリマー、水性製剤、疎水性製剤、脂質基剤賦形剤、ポリマー製剤、シクロデキストラン、改変シクロデキストラン、持続性遊離製剤、界面活性剤、食事性脂肪、又は食事性油の、少なくとも1つ、又は、その混合物を含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子製剤が、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)、ポリビニルアルコール、コハク酸d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000、及びポリ(ラクチド−co−グリコリド)−モノメトキシ−ポリ(ポリエチレングリコール)の、少なくとも1つ、又は、その混合物からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リポソーム製剤が、ホスファチジルコリン、コレステロール、PEG−DPPE、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG−DPPE、及び、1−2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン1−2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)ナトリウム塩、コレステロール、トリオレイン、及びトリカプリリンを含む製剤の、少なくとも1つ又は、それを含む混合物からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、コーン油、ヒマシ油、ピーナッツ油、又はジメチルスルホキシドの、少なくとも1つ又はその混合物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー製剤が、1、3−bis(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、セバシン酸、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)及び、ポリ(ラクチド−co−グリコライド)からなる群から選択される1つの成分を含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、前記カテコールブタン又は前記薬学的に許容可能なそれらの塩の、高局所的濃度及び一定期間に渡る持続放出の少なくとも1つ又はその組み合わせを許容する請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、粉末剤、エアロゾル、クリーム、軟膏剤、ゲル剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、カプレット剤(caplet)、顆粒剤、シロップ、溶剤、洗口剤、エリキシル剤、乳剤、坐剤、縣濁剤、噴霧剤、ドロップ剤からなる群から選択される形態である請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記カテコールブタンが、生理食塩水、ジメチルスルホキシド、又はエタノールに、投与の前に、溶解される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、第2の抗インフルエンザ薬、抗炎症剤、抗感染薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第2の薬剤と組み合わせて投与される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗炎症剤が、コルチコステロイド及び非ステロイド系抗炎症剤からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗感染薬が、抗生剤、アルコール、及びポビドンからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の抗インフルエンザ薬が、一般式(I)の第2のカテコールブタン、又は薬学的に許容可能なそれらの塩、アマンタジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン
、ザナミビル、及びアルビドール(Arbidol)からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の抗インフルエンザ薬が、カテコールブタン、又は薬学的に許容可能なそれらの塩の投与に先立って、実質的に同時に、又は、投与の後に投与される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R10、R11、R12及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R7、R8及びR9が、独立的に、-H、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R7、R10、R11、R12、及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R8及びR9が、独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3又は-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、それらの薬学的に許容可能な塩である請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記R8及びR9は、独立的に、-OCH3、又は、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2-Cl-であり、そしてR8及びR9が、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-O(C=O)CH2N+H(CH3)2-Cl-である請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記R1及びR2が、独立的に、-H又は-CH3であり、そして、R8及びR9は、独立的に、-OH又は-OCH3であり、但し、前記カテコールブタンはNDGAではない請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記R1及びR2は、独立的に、-CH3であり、そして、R8及びR9は、独立的に-OCH3である請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重 からなる群から選択される量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記インフルエンザウイルス感染の治療が、対象体におけるインフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害を、阻害、予防、寛解、又は軽減することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、全身性炎症反応症候群、多臓器機能不全、急性呼吸促迫症候群、反応性血球貪食
、及びリンパ球減少症からなる群から選択される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、喘息、肺炎、インフルエンザ後脳炎、細菌性筋肉炎、心電図変化、気管支炎、結核、癌、関節リューマチ、変形性関節症、強皮症、全身性エリテマトーデス、嚢胞性線維症、悪液質、全身性の筋力低下障害、心不全, パーキンソン病, 筋萎縮性側索硬化症、又は、ギラン・バレー症候群である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記インフルエンザウイルス感染の治療が、対象体におけるインフルエンザウイルスの増殖を、抑制、阻止、又は低減することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項34】
対象体におけるインフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、
治療的有効量の一般式(II)のノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、
【化2】
〔ここで、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いはその薬学的に許容可能な塩を表し、R18とR19とは、それぞれ独立的に、-H又は低アルキルを表し、但し、R14、R15、R16及びR17は同時には-OHを表さない。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を前記対象体に投与する工程を含む方法。
【請求項35】
前記R14、R15、R16、及びR17が、夫々、-OCH3を示す請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記R14、R15、R16、及びR17が、夫々、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、ここで、前記未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なその塩は、未置換又は置換グリシニル酸残基又はその薬学的に許容可能な塩を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
R18及びR19は、夫々独立的に、-CH3、又は、-CH2CH3を表す請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側
投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲
投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口又は静脈内に投与される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重 からなる群から選択される量で投与される請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項34に記載の方法。
【請求項45】
対象体においてトリインフルエンザウイルス感染を治療する方法であって、
前記対象体に、治療的有効量の一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、
【化3】
〔ここで、R20、R21、R22、及びR23が、夫々独立して、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3、又は未置換又は置換アミノ酸残基を示し、ただし、R20、R21、R22、及びR23が、同時に-OHではない。〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を有する方法。
【請求項46】
前記R20、R21、R22、及びR23が、夫々、-OCH3を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記R20、R21、R22及びR23が、夫々、未置換又は置換アミノ酸残基、或いは、薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、前記未置換又は置換アミノ酸残基が、そのカルボキシ末端において芳香環に結合されている請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、未置換又は置換グリシニル酸残基又はその薬学的に許容可能な塩を含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口、又は静脈内に投与される請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項45に記載の方法。
【請求項55】
対象体におけるインフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、
トリ-O-メチルノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、テトラ-O-メチルNDGA、テトラ−グリシニルNDGA、テトラ−ジメチルグリシニルNDGA、又は薬学的に許容可能なそれらの塩からなる群から選択されるカテコールブタン、及び薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、治療的有効量の組成物を、前記対象体に投与する工程を含む方法。
【請求項56】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口、又は静脈内に投与される請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、油を含む請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、クレモホールEL、エタノール、及び生理食塩水を含む請求項55に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物が、毎投与当たり、少なくとも約7mgのトリ-O-メチルNDGA、又は、テトラ-O-メチル NDGAを含む請求項55に記載の方法。
【請求項65】
ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルス感染症を治療する方法であって、
一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化4】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ-O CH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を、各投与あたり約0.01mg/kg〜約400mg/kg体重で、治療的有効量をヒト対象体に経口で投与する工程を含む方法。
【請求項66】
前記亜型H5N1インフルエンザウイルス感染の治療が、ヒト対象体におけるH5N1インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害を、阻害、予防、寛解、又は軽減することを含む請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、全身性炎症反応症候群、多臓器機能不全、急性呼吸促迫症候群、反応性血球貪食、及びリンパ球減少症からなる群から選択される請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ヒト対象体における亜型H5 N1インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、喘息、肺炎、インフルエンザ後脳炎、細菌性筋肉炎、心電図変化、気管支炎、結核、癌、関節リューマチ、変形性関節症、強皮症、全身性エリテマトーデス、嚢胞性線維症、悪液質、全身性の筋力低下障害、心不全, パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、又は、ギラン・バレー症候群である請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記亜型H5N1インフルエンザウイルス感染の治療が、ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルスの増殖を、抑制、阻止、又は低減することを含む請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記インフルエンザウイルスによる細胞における炎症促進性サイトカインの誘導を阻害する方法であって、
治療的有効量の一般式(I)のカテコールブタン
【化5】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよい。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を細胞に投与する工程を含む方法。
【請求項71】
前記炎症促進性のサイトカインが、ケモカイン、インターロイキン(IL)、リンホカイン、腫瘍壊死因子(TNF)、及びインターフェロン(IFN)からなる群から選択される請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記炎症誘発性サイトカインが、TNF-α、マクロファージ感染性増強タンパク質l縺iMIP-l縺j、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、IL-1α、走化性タンパク質1(MCP-1)、インターフェロン-誘導T細胞アルファ促進因子(I-TAC)、IL-2、メタロプロテアーゼ-1の組織インヒビター(TIMP-1)、TIMP-2、Bリンパ球促進因子(BLC)、IL-3、制御活性化正常T-細胞発現、及び分泌ケモカイン(RANTES)からなる群から選択される請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記炎症促進性サイトカインが、TNF-αである請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記細胞が、マクロファージ細胞である請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記マクロファージ細胞が、ヒトマクロファージ細胞である請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項70に記載の方法。
【請求項77】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R10、R11、R12及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R7、R8及びR9が、独立的に、-H、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項70に記載の方法。
【請求項79】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R7、R10、R11、R12及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R8及びR9が、独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸が、C末端で芳香環に結合してある、請求項70に記載の方法。
【請求項80】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、又は-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、又は、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-、及び、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-O(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-である 請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OH、又は-OCH3である請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3である請求項79に記載の方法。
【請求項85】
インフルエンザウイルス感染による細胞における炎症促進性の脂質メディエーターの誘導を低減する方法であって、
有効量の一般式(I)のカテコールブタン、
【化6】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよい。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を細胞に投与する工程を有する方法。
【請求項86】
前記炎症促進性の脂質メディエーターが、プロスタグランジン又はロイコトリエンである請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記プロスタグランジンが、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF1α(PGF1α)、プロスタグランジンF2α(PGF2α)、プロスタグランジンH2(PGH2)、及びプロスタサイクリンからなる群から選択される請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記プロスタグランジンが、PGE2である請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞が、マイクロファージ細胞である請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記マクロファージ細胞が、ヒトマクロファージ細胞である請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R10、R11、Rl2及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R7、R8及びR9が、独立的に、-H、−OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R7、R10、R11、Rl2及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R8及びR9が、独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、又は-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、又は、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-、及び、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-O(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-である 請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OH、又は-OCH3である請求項94記載の方法。
【請求項99】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3である請求項94に記載の方法。
【請求項100】
亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞における腫瘍壊死因子−α(TNF-α)の誘導を阻害する方法であって、
有効量の一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体
【化7】
〔ここで、R20、R21、R22、R23が、夫々、-OCH3を示す〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩を、マクロファージ細胞に投与する工程を有する方法。
【請求項101】
亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞におけるプロスタグランジンE2(PGE2)の誘導を阻害する方法であって、
有効量の一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体
【化8】
〔ここで、R20、R21、R22、R23が、夫々、-OCH3を示す〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩を、マクロファージ細胞に投与する工程を有する方法。
【請求項102】
一般式(I)のカテコールブタン、
【化9】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよく;但し、R7、R8、及びR9の1つが水素を示すとき、-O R1、-OR2及びR7、R8、及びR9及の他の2つは、同時に-OHを示さない。〕、
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、
そして、対象体におけるインフルエンザ感染を、カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩を使用して治療するための取り扱い説明書を含むキット。
【請求項103】
化学式(II)に示すノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を含む請求項102に記載のキットであって、
【化10】
〔ここで、前記R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いはその薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R18とR19とが、それぞれ独立的に、-H又は低アルキルを表し、但し、R14、R15、R16及びR17が、同時には-OHを表さない。〕、
そして、前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体又は薬学的に許容可能なそれらの塩を使用することによって、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療するための取り扱い指示書、とを含むキット。
【請求項104】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体が、一般式(III)のNDGA誘導体、
【化11】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ-OCH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、但し、R20、R21、R22及びR23は、同時には-OHではない。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を含む、請求項103に記載のキット。
【請求項105】
前記R20、R21、R22及びR23が、夫々、-OCH3を表し、前記取扱説明書が、ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルス感染の治療用である、請求項104に記載のキット。
【請求項106】
カテコールブタン、又は薬学的に許容可能なそれらの塩を対象体に投与するための装置を含む請求項102に記載のキット。
【請求項1】
対象におけるインフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、
治療的有効量の一般式(I)のカテコールブタン、
【化1】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよく;但し、R7、R8、及びR9の1つが水素を示すとき、-OR1、-OR2及びR7、R8、及びR9及の他の2つは、同時に-OHを示さない。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を対象体に投与する工程を有する方法。
【請求項2】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口又は静脈内に投与される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩、及び薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む組成物中で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、(a)水溶性有機溶媒;(b)シクロデキストラン、又は改変シクロデキストラン;(c)イオン性、非イオン性、又は両親媒性界面活性剤;(d)改変セルロース;又は、(e)水不溶性脂質;又は(a)〜(e)のいずれかの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、脂質基剤製剤、リポソーム製剤、ナノ粒子製剤、ミセル製剤、水溶性製剤、生分解性ポリマー、水性製剤、疎水性製剤、脂質基剤賦形剤、ポリマー製剤、シクロデキストラン、改変シクロデキストラン、持続性遊離製剤、界面活性剤、食事性脂肪、又は食事性油の、少なくとも1つ、又は、その混合物を含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子製剤が、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)、ポリビニルアルコール、コハク酸d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000、及びポリ(ラクチド−co−グリコリド)−モノメトキシ−ポリ(ポリエチレングリコール)の、少なくとも1つ、又は、その混合物からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リポソーム製剤が、ホスファチジルコリン、コレステロール、PEG−DPPE、ジステアロイルホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG−DPPE、及び、1−2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン1−2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)ナトリウム塩、コレステロール、トリオレイン、及びトリカプリリンを含む製剤の、少なくとも1つ又は、それを含む混合物からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、コーン油、ヒマシ油、ピーナッツ油、又はジメチルスルホキシドの、少なくとも1つ又はその混合物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー製剤が、1、3−bis(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、セバシン酸、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)及び、ポリ(ラクチド−co−グリコライド)からなる群から選択される1つの成分を含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、前記カテコールブタン又は前記薬学的に許容可能なそれらの塩の、高局所的濃度及び一定期間に渡る持続放出の少なくとも1つ又はその組み合わせを許容する請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、粉末剤、エアロゾル、クリーム、軟膏剤、ゲル剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、カプレット剤(caplet)、顆粒剤、シロップ、溶剤、洗口剤、エリキシル剤、乳剤、坐剤、縣濁剤、噴霧剤、ドロップ剤からなる群から選択される形態である請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記カテコールブタンが、生理食塩水、ジメチルスルホキシド、又はエタノールに、投与の前に、溶解される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、第2の抗インフルエンザ薬、抗炎症剤、抗感染薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第2の薬剤と組み合わせて投与される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗炎症剤が、コルチコステロイド及び非ステロイド系抗炎症剤からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗感染薬が、抗生剤、アルコール、及びポビドンからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の抗インフルエンザ薬が、一般式(I)の第2のカテコールブタン、又は薬学的に許容可能なそれらの塩、アマンタジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン
、ザナミビル、及びアルビドール(Arbidol)からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の抗インフルエンザ薬が、カテコールブタン、又は薬学的に許容可能なそれらの塩の投与に先立って、実質的に同時に、又は、投与の後に投与される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R10、R11、R12及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R7、R8及びR9が、独立的に、-H、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R7、R10、R11、R12、及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R8及びR9が、独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3又は-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、それらの薬学的に許容可能な塩である請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記R8及びR9は、独立的に、-OCH3、又は、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2-Cl-であり、そしてR8及びR9が、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-O(C=O)CH2N+H(CH3)2-Cl-である請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記R1及びR2が、独立的に、-H又は-CH3であり、そして、R8及びR9は、独立的に、-OH又は-OCH3であり、但し、前記カテコールブタンはNDGAではない請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記R1及びR2は、独立的に、-CH3であり、そして、R8及びR9は、独立的に-OCH3である請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重 からなる群から選択される量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記インフルエンザウイルス感染の治療が、対象体におけるインフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害を、阻害、予防、寛解、又は軽減することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、全身性炎症反応症候群、多臓器機能不全、急性呼吸促迫症候群、反応性血球貪食
、及びリンパ球減少症からなる群から選択される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、喘息、肺炎、インフルエンザ後脳炎、細菌性筋肉炎、心電図変化、気管支炎、結核、癌、関節リューマチ、変形性関節症、強皮症、全身性エリテマトーデス、嚢胞性線維症、悪液質、全身性の筋力低下障害、心不全, パーキンソン病, 筋萎縮性側索硬化症、又は、ギラン・バレー症候群である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記インフルエンザウイルス感染の治療が、対象体におけるインフルエンザウイルスの増殖を、抑制、阻止、又は低減することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項34】
対象体におけるインフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、
治療的有効量の一般式(II)のノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、
【化2】
〔ここで、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いはその薬学的に許容可能な塩を表し、R18とR19とは、それぞれ独立的に、-H又は低アルキルを表し、但し、R14、R15、R16及びR17は同時には-OHを表さない。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を前記対象体に投与する工程を含む方法。
【請求項35】
前記R14、R15、R16、及びR17が、夫々、-OCH3を示す請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記R14、R15、R16、及びR17が、夫々、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、ここで、前記未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なその塩は、未置換又は置換グリシニル酸残基又はその薬学的に許容可能な塩を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
R18及びR19は、夫々独立的に、-CH3、又は、-CH2CH3を表す請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側
投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲
投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、又は薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口又は静脈内に投与される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重 からなる群から選択される量で投与される請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項34に記載の方法。
【請求項45】
対象体においてトリインフルエンザウイルス感染を治療する方法であって、
前記対象体に、治療的有効量の一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、
【化3】
〔ここで、R20、R21、R22、及びR23が、夫々独立して、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3、又は未置換又は置換アミノ酸残基を示し、ただし、R20、R21、R22、及びR23が、同時に-OHではない。〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩を投与する工程を有する方法。
【請求項46】
前記R20、R21、R22、及びR23が、夫々、-OCH3を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記R20、R21、R22及びR23が、夫々、未置換又は置換アミノ酸残基、或いは、薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、前記未置換又は置換アミノ酸残基が、そのカルボキシ末端において芳香環に結合されている請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩は、未置換又は置換グリシニル酸残基又はその薬学的に許容可能な塩を含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口、又は静脈内に投与される請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項45に記載の方法。
【請求項55】
対象体におけるインフルエンザウイルス感染を治療するための方法であって、
トリ-O-メチルノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、テトラ-O-メチルNDGA、テトラ−グリシニルNDGA、テトラ−ジメチルグリシニルNDGA、又は薬学的に許容可能なそれらの塩からなる群から選択されるカテコールブタン、及び薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、治療的有効量の組成物を、前記対象体に投与する工程を含む方法。
【請求項56】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、鼻腔内投与、経口投与、吸入投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与、頬側投与、腹腔内投与、眼内投与、眼窩周囲投与、筋肉内投与、移植投与、点滴、及び中心静脈投与からなる群から選択される1又は2以上の投与経路によって投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、経口、又は静脈内に投与される請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記カテコールブタン、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩が、対象体に、投与量当たり 約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約2.5、約5.0、約10、約15、約25、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、及び約400 mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記対象体が、ヒト対象体である請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、油を含む請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記薬学的に許容可能な担体又は賦形剤が、クレモホールEL、エタノール、及び生理食塩水を含む請求項55に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物が、毎投与当たり、少なくとも約7mgのトリ-O-メチルNDGA、又は、テトラ-O-メチル NDGAを含む請求項55に記載の方法。
【請求項65】
ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルス感染症を治療する方法であって、
一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体、
【化4】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ-O CH3を表す。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を、各投与あたり約0.01mg/kg〜約400mg/kg体重で、治療的有効量をヒト対象体に経口で投与する工程を含む方法。
【請求項66】
前記亜型H5N1インフルエンザウイルス感染の治療が、ヒト対象体におけるH5N1インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害を、阻害、予防、寛解、又は軽減することを含む請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、全身性炎症反応症候群、多臓器機能不全、急性呼吸促迫症候群、反応性血球貪食、及びリンパ球減少症からなる群から選択される請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ヒト対象体における亜型H5 N1インフルエンザウイルスに関連する疾患又は障害が、喘息、肺炎、インフルエンザ後脳炎、細菌性筋肉炎、心電図変化、気管支炎、結核、癌、関節リューマチ、変形性関節症、強皮症、全身性エリテマトーデス、嚢胞性線維症、悪液質、全身性の筋力低下障害、心不全, パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、又は、ギラン・バレー症候群である請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記亜型H5N1インフルエンザウイルス感染の治療が、ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルスの増殖を、抑制、阻止、又は低減することを含む請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記インフルエンザウイルスによる細胞における炎症促進性サイトカインの誘導を阻害する方法であって、
治療的有効量の一般式(I)のカテコールブタン
【化5】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよい。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を細胞に投与する工程を含む方法。
【請求項71】
前記炎症促進性のサイトカインが、ケモカイン、インターロイキン(IL)、リンホカイン、腫瘍壊死因子(TNF)、及びインターフェロン(IFN)からなる群から選択される請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記炎症誘発性サイトカインが、TNF-α、マクロファージ感染性増強タンパク質l縺iMIP-l縺j、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、IL-1α、走化性タンパク質1(MCP-1)、インターフェロン-誘導T細胞アルファ促進因子(I-TAC)、IL-2、メタロプロテアーゼ-1の組織インヒビター(TIMP-1)、TIMP-2、Bリンパ球促進因子(BLC)、IL-3、制御活性化正常T-細胞発現、及び分泌ケモカイン(RANTES)からなる群から選択される請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記炎症促進性サイトカインが、TNF-αである請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記細胞が、マクロファージ細胞である請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記マクロファージ細胞が、ヒトマクロファージ細胞である請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項70に記載の方法。
【請求項77】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R10、R11、R12及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R7、R8及びR9が、独立的に、-H、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項70に記載の方法。
【請求項79】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R7、R10、R11、R12及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R8及びR9が、独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸が、C末端で芳香環に結合してある、請求項70に記載の方法。
【請求項80】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、又は-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、又は、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-、及び、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-O(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-である 請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OH、又は-OCH3である請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3である請求項79に記載の方法。
【請求項85】
インフルエンザウイルス感染による細胞における炎症促進性の脂質メディエーターの誘導を低減する方法であって、
有効量の一般式(I)のカテコールブタン、
【化6】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよい。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を細胞に投与する工程を有する方法。
【請求項86】
前記炎症促進性の脂質メディエーターが、プロスタグランジン又はロイコトリエンである請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記プロスタグランジンが、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF1α(PGF1α)、プロスタグランジンF2α(PGF2α)、プロスタグランジンH2(PGH2)、及びプロスタサイクリンからなる群から選択される請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記プロスタグランジンが、PGE2である請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞が、マイクロファージ細胞である請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記マクロファージ細胞が、ヒトマクロファージ細胞である請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記インフルエンザウイルス感染が、トリインフルエンザウイルスによって引き起こされる請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記トリインフルエンザウイルスが、インフルエンザウイルス亜型H5N1である請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R10、R11、Rl2及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R7、R8及びR9が、独立的に、-H、−OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、低級アルキル、低級アシルであり、又は、-OR1及び-OR2が、夫々独立的に、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を示し;R3、R4が、独立的に、低級アルキルであり;R5、R6、R7、R10、R11、Rl2及びR13が、独立的に-Hであり;そして、R8及びR9が、独立的に、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、又は、未置換又は置換アミノ酸残基、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩であり;ここで、未置換又は置換アミノ酸残基が、カルボキシ末端で芳香環に結合してある、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、又は-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、又は、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は薬学的に許容可能なそれらの塩である請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3、-(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-、及び、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3、-O(C=O)CH2N(CH3)2、又は、-O(C=O)CH2N+H(CH3)2・Cl-である 請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記R1及びR2が、独立的に、-H、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OH、又は-OCH3である請求項94記載の方法。
【請求項99】
前記R1及びR2が、独立的に、-CH3であり、そして、前記R8及びR9が、独立的に、-OCH3である請求項94に記載の方法。
【請求項100】
亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞における腫瘍壊死因子−α(TNF-α)の誘導を阻害する方法であって、
有効量の一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体
【化7】
〔ここで、R20、R21、R22、R23が、夫々、-OCH3を示す〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩を、マクロファージ細胞に投与する工程を有する方法。
【請求項101】
亜型H5N1インフルエンザウイルス感染によるマクロファージ細胞におけるプロスタグランジンE2(PGE2)の誘導を阻害する方法であって、
有効量の一般式(III)のノルジヒドログアヤレチン酸誘導体
【化8】
〔ここで、R20、R21、R22、R23が、夫々、-OCH3を示す〕
又は薬学的に許容可能なそれらの塩を、マクロファージ細胞に投与する工程を有する方法。
【請求項102】
一般式(I)のカテコールブタン、
【化9】
〔ここで、R1及びR2が、夫々独立して、水素、低級アルキル、低級アシル、アルキレンを示す、又は-OR1及び-OR2が、夫々独立して、未置換又は置換アミノ酸残基又は薬学的に許容可能なそれらの塩を示し、R3、R4、R5、R6、R10、R11、R12、及びR13が、夫々独立して、水素、又は低級アルキルを示し、R7、R8、及びR9が、夫々独立して、水素、-OH、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、未置換又は置換アミノ酸残基又はそれらの塩を示し、任意の2つの隣接する基がジオキシアルキン(alkyene dioxy)であってよく;但し、R7、R8、及びR9の1つが水素を示すとき、-O R1、-OR2及びR7、R8、及びR9及の他の2つは、同時に-OHを示さない。〕、
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩、
そして、対象体におけるインフルエンザ感染を、カテコールブタン又は薬学的に許容可能なそれらの塩を使用して治療するための取り扱い説明書を含むキット。
【請求項103】
化学式(II)に示すノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体、又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を含む請求項102に記載のキットであって、
【化10】
〔ここで、前記R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立的に、-OH、-OCH3、-O(C=O)CH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いはその薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、R18とR19とが、それぞれ独立的に、-H又は低アルキルを表し、但し、R14、R15、R16及びR17が、同時には-OHを表さない。〕、
そして、前記ノルジヒドログアヤレチン酸誘導体又は薬学的に許容可能なそれらの塩を使用することによって、対象体のインフルエンザウイルス感染を治療するための取り扱い指示書、とを含むキット。
【請求項104】
前記ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)誘導体が、一般式(III)のNDGA誘導体、
【化11】
〔ここで、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ-OCH3又は未置換又は置換アミノ酸残基或いは薬学的に許容可能なそれらの塩を表し、但し、R20、R21、R22及びR23は、同時には-OHではない。〕
又は、薬学的に許容可能なそれらの塩を含む、請求項103に記載のキット。
【請求項105】
前記R20、R21、R22及びR23が、夫々、-OCH3を表し、前記取扱説明書が、ヒト対象体における亜型H5N1インフルエンザウイルス感染の治療用である、請求項104に記載のキット。
【請求項106】
カテコールブタン、又は薬学的に許容可能なそれらの塩を対象体に投与するための装置を含む請求項102に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−528294(P2009−528294A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556562(P2008−556562)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/062730
【国際公開番号】WO2007/101111
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(505431064)エリモス・ファーマスーティカルズ・エルエルシー (6)
【住所又は居所原語表記】930 MAIN CAMPUS DRIVE, SUITE 100, RALEIGH, NORTH CAROLINA 27606, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(508255403)ノース・カロライナ・ステイト・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/062730
【国際公開番号】WO2007/101111
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(505431064)エリモス・ファーマスーティカルズ・エルエルシー (6)
【住所又は居所原語表記】930 MAIN CAMPUS DRIVE, SUITE 100, RALEIGH, NORTH CAROLINA 27606, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(508255403)ノース・カロライナ・ステイト・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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