説明

インプリントモールドの製造方法

【課題】寸法及び断面形状の変動を低減し、処理能力の低下を抑制することが可能なインプリントモールドの製造方法を提供する。
【解決手段】設計パターンデータに含まれる複数の図形のそれぞれを、寸法が寸法基準値以下の第1図形と寸法基準値より大きな第2図形とに分類し、第1及び第2図形のそれぞれから第1及び第2描画パターンデータを生成する工程と、第1描画パターンデータを用いて基板に第1図形を転写する工程と、第2描画パターンデータを用いて基板に第2図形を転写する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントモールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリントリソグラフィでは、インプリントモールドを押し付けてインプリントモールド表面のパターン領域の凹凸パターンを被転写物に転写する。例えば、角速度センサ等のマイクロ電気機械システム(MEMS)装置では、寸法が数十nmと数mmのように大きく異なる図形が同一レイヤ内に混在することがある。このような図形を含む設計パターンが、電子ビーム等を用いるリソグラフィや、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング等によりインプリントモールド用の基板に転写される。
【0003】
例えば、電子ビーム等を用いたレジストパターン形成においては、近接効果の影響が懸念される。また、露光されたレジストの現像において、現像時間が図形の寸法に依存する。一般に、幅が小さな図形ほど早く現像され、寸法変動が大きくなる。そのため、設計パターンの図形をレジストに忠実に描画することができない。その結果、エッチング加工により形成されたインプリントモールドのパターンの寸法変動が生じてしまう。
【0004】
また、描画されたレジストパターンをマスクとして、RIE等により基板を加工する際に、開口幅が大きな図形と小さな図形とではエッチング深さやエッチング加工断面形状が変動する。また、エッチング深さは、パターン密度にも依存する。更に、レジストの描画において、微細な図形に合わせて高解像度の露光条件を用いると、混在する大面積の図形に対する描画時間が増大し描画装置の処理能力が低下してしまう。
【0005】
インプリントモールドのエッチング深さを制御するために、基板として積層構造体を用いるものがある(例えば、特許文献1参照。)。パターンを転写する上層に対するエッチング条件ではエッチングされない材料が下層に用いられる。この場合、エッチング深さは上層の厚さで実質的に規定される。しかし、レジストパターンの寸法変動や、エッチング加工断面形状の変動を抑制することはできない。
【特許文献1】特許第3821069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、寸法及び断面形状の変動を低減し、処理能力の低下を抑制することが可能なインプリントモールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様によれば、(イ)設計パターンデータに含まれる複数の図形のそれぞれを、寸法が寸法基準値以下の第1図形と寸法基準値より大きな第2図形とに分類し、第1及び第2図形のそれぞれから第1及び第2描画パターンデータを生成する工程と、(ロ)第1描画パターンデータを用いて基板に第1図形を転写する工程と、(ハ)第2描画パターンデータを用いて基板に第2図形を転写する工程とを含むインプリントモールドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、寸法及び断面形状の変動を低減し、処理能力の低下を抑制することが可能なインプリントモールドの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造システムは、図1に示すように、データ生成ユニット70、入力装置84、出力装置85、外部記憶装置86、工程管理ユニット90、及び製造部92等を備える。データ生成ユニット70は、入力部72、分類部74、分割部76、生成部78、出力部80、及び内部メモリ82等を備えている。外部記憶装置86は、設計情報ファイル88等を備える。製造部92は、複数の描画装置94a、94b、・・・、現像装置96、エッチング装置98等を備える。
【0011】
データ生成ユニット70は、基板に転写される複数の図形を含む設計パターンデータを取得する。取得した複数の図形のそれぞれを、寸法が寸法基準値以下の第1図形と寸法基準値より大きな第2図形とに分類する。分類した第1及び第2図形のそれぞれから第1及び第2描画パターンデータを生成する。
【0012】
データ生成ユニット70は、通常のコンピュータシステムの中央処理装置(CPU)の一部として構成すればよい。入力部72、分類部74、分割部76、生成部78、及び出力部80は、それぞれ専用のハードウェアで構成しても良く、通常のコンピュータシステムのCPUを用いて、ソフトウェアで実質的に等価な機能を有していても構わない。
データ生成ユニット70に接続された外部記憶装置86の設計情報ファイル88は、複数の図形の仕様及び複数の図形のレイアウト等を含むインプリントモールドの設計仕様情報を格納している。また、外部記憶装置86は、データ生成ユニット70で実行される各処理のプログラム命令を記憶している。プログラム命令は必要に応じてデータ生成ユニット70に読み込まれ、演算処理が実行される。外部記憶装置86は、それぞれ、半導体ROM、半導体RAM等の半導体メモリ装置、磁気ディスク装置、磁気ドラム装置、磁気テープ装置などの補助記憶装置で構成してもよく、コンピュータのCPUの主記憶装置で構成しても構わない。
【0013】
工程管理ユニット90は、製造部92で実施されるインプリントモールドの製造工程を管理する。また、工程管理ユニット90には、製造部92の各製造装置の装置仕様や製造条件、パターンデータ描画の寸法基準値や面積基準値等が保管されている。例えば、基板に転写されるパターンデータに対して、寸法基準値に基いて、描画装置94a、94b、・・・の中から描画可能な描画装置が指定される。
【0014】
本発明の実施の形態に係るインプリントモールドは、図2に示すように、基板10表面にパターン領域11を有する。パターン領域11には、ラインアンドスペース(L/S)、ドット、ピラー、及びホール等のパターンが配置される。パターン形状は、基板10表面に対して凹型でも凸型でもよい。また、パターンのピッチやアスペクト比(溝深さと開口幅の比の値)は限定されず任意である。本発明の実施の形態では、図3及び図4に示すように、基板10表面に対して凹型の第1パターン12、第2パターン14等の複数のパターンが配置される。第1パターン12の寸法(幅)Wbは、第2パターン14の寸法(幅)Waに比べて小さい。
【0015】
光インプリントリソグラフィの場合、基板10として、例えば厚さが6mm〜7mm程度の石英ガラス、耐熱ガラス、フッ化カルシウム(CaF)、及びフッ化マグネシウム(MgF)等の透明材料や、これら透明材料の積層構造が用いられる。熱インプリントリソグラフィの場合、基板10として、炭化シリコン(SiC)、Si、SiC/Si、酸化シリコン(SiO)/Si、及び窒化シリコン(Si)/Si等が用いられる。また、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)等の金属基板であってもよい。
【0016】
データ生成ユニット70の入力部72は、設計情報ファイルに格納されているインプリントモールドの設計パターンデータを取得する。設計パターンデータには、例えば、図2に示した第1及び第2パターン12、14等に対応して、基板10に転写される複数の図形が含まれる。
【0017】
分類部74は、取得した複数の図形のそれぞれを、予め定められた寸法基準値に基いて分類する。例えば、寸法基準値を100nmとする。図5に示すように、幅Wbが100nm以下の第1パターン12に対応する第1図形2を第1図形群に分類する。図6に示すように、幅Waが100nmより大きな第2パターン14に対応する第2図形4を第2図形群に分類する。
【0018】
分割部76は、第2図形群に分類された図形の中に、一部が寸法基準値以下の幅となる領域を有する対象図形が有るか検索する。対象図形があれば、寸法基準値以下の幅を有する第1分割図形と寸法基準値より大きな幅を有する第2分割図形に対象図形を分割する。図7に示すように、幅Wbが寸法基準値以下の小面積パターン領域3aと、幅Waが寸法基準値より大きな大面積パターン領域3bからなる図形3が第2図形群に分類される。図8に示すように、図形3から小面積パターン領域3aに対応する第1分割図形2aが分割される。図9に示すように、図形3から大面積パターン領域3bに対応する第2分割図形4aが分割される。第1及び第2分割図形2a、4aのそれぞれは、第1及び第2図形群に分類される。
【0019】
生成部78は、第1及び第2図形群のそれぞれから基板に転写するための第1及び第2描画パターンデータを生成する。出力部80は、生成された第1及び第2描画パターンデータを工程管理ユニット90に伝送する。
【0020】
内部メモリ82は、入力部72で取得された設計パターンデータ、分類部74で分類された図形、分割部76で分割された分割図形、生成部78で生成された描画パターンデータ等を格納する。また、データ生成ユニット70の内部メモリ82又は外部記憶装置86は、データ生成ユニット70におけるパターン処理において、処理途中のデータを一時的に保存する。
【0021】
入力装置84は、キーボード、マウス等の機器を指す。入力装置84から入力操作が行われると対応するキー情報がデータ生成ユニット70に伝達される。出力装置85は、モニタなどの画面を指し、ブラウン管、液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)パネル、エレクトロルミネセンス(EL)パネル等が使用可能である。出力装置85は、データ生成ユニット70により処理されるパターン処理領域や得られるレイアウト等を表示する。
【0022】
製造部92の描画装置94a、94b、・・・は、データ生成ユニット70で生成された描画パターンデータを、工程管理ユニット90を介して取得して基板10上のレジスト膜にパターンを描画する。描画装置94a、94b、・・・として、例えば、スポット電子ビーム描画装置、可変成形電子ビーム描画装置等の荷電粒子ビーム描画装置、レーザビーム描画装置等の光学描画装置、あるいはX線描画装置等の性能が異なる描画装置が含まれていてよい。
【0023】
スポット電子ビーム描画装置、可変成形電子ビーム描画装置、及びレーザビーム描画装置のそれぞれの最小描画線幅は、約20nm以下〜約100nm、約100nm以下〜約2500nm、及び約300nm以上である。しかし、レーザビーム描画装置の処理能力を1とすると、可変成形電子ビーム描画装置及びスポット電子ビーム描画装置は、それぞれ約0.1以下及び0.001以下となる。
【0024】
上記のように、スポット電子ビーム描画装置を用いれば、幅が約20nm以下の図形を描画することが可能であるが、大面積の図形の描画処理に長時間を要する。したがって、大面積の図形の描画には、可変成形電子ビーム描画装置又はレーザビーム描画装置を用いることが望ましい。一方、可変成形電子ビーム描画装置やレーザビーム描画装置では、約100nm以下の微細な図形を設計寸法通りに描画することは困難である。
【0025】
本発明の実施の形態では、寸法基準値として、製品仕様に合わせて、例えば300nm、あるいは100nm、あるいは20nm等の寸法値を定める。寸法基準値以下の第1図形からなる第1描画パターンデータをスポット電子ビーム描画装置で、寸法基準値より大きな第2図形からなる第2描画パターンデータを可変成形電子ビーム描画装置又はレーザビーム描画装置で描画する。例えば、寸法基準値を100nmとすれば、約100nm以下の微細な図形の描画ができ、かつ、描画の処理能力(スループット)の低下を抑制することが可能となる。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法を、図10に示したフローチャート、及び図11〜図14を用いて説明する。なお、ここでは、図1に示した製造部92には、スポット電子ビームを用いる描画装置94a、及び可変成形電子ビームを用いる描画装置94bが備えられているものとする。また、図5及び図6に示した第1及び第2図形2、4を用いて説明する。分割の対象図形として図7に示した図形3を用いて説明する。
【0027】
(イ)ステップS200で、図1に示したデータ生成ユニット70の入力部72により設計情報ファイル88に格納された設計パターンデータが取得される。設計パターンデータには、基板に転写される複数の図形が含まれる。
【0028】
(ロ)ステップS201で、入力部72により、工程管理ユニット90から寸法基準値が取得される。寸法基準値として、例えば、100nmが用いられる。
【0029】
(ハ)ステップS202で、図1に示した分類部74により、複数の図形のそれぞれが寸法基準値以下の第1図形2からなる第1図形群と寸法基準値より大きな第2図形4からなる第2図形群とに分類される。
【0030】
(ニ)ステップS203で、図1に示した分割部76により、第2図形群に分類された図形の中に、一部が寸法基準値以下の幅となる領域を有する図形3が有るか検索される。
【0031】
(ホ)図形3があれば、ステップS204で、分割部76により、寸法基準値以下の幅を有する第1分割図形2aと寸法基準値より大きな幅を有する第2分割図形4aに図形3が分割される。第1及び第2分割図形2a、4aは、分類部74により、それぞれ第1及び第2図形群に分類される。
【0032】
(ヘ)ステップS205で、図1に示した生成部78により、第1及び第2図形群のそれぞれから第1及び第2描画パターンデータが生成される。
【0033】
(ト)ステップS206で、図1に示した出力部80により、生成された第1及び第2描画パターンデータが工程管理ユニット90に伝送される。
【0034】
(チ)ステップS207で、図1に示した工程管理ユニット90により、第1描画パターンデータが図1に示した描画装置94aに、第2描画パターンデータが図1に示した描画装置94bに伝送される。
【0035】
(リ)図11に示すように、基板10の表面に電子ビーム用のレジスト膜50が塗布される。基板10には、例えば、厚さが約6.35mmの石英基板等が用いられる。描画装置94aにより、第1描画パターンデータを用いて、レジスト膜50が露光される。
【0036】
(ヌ)図12に示すように、図1に示した現像装置96により、レジスト膜50が現像されて、第1図形2に対応する第1レジストパターン52が描画される。引き続き、描画装置94bにより、第2描画パターンデータを用いて、第1レジストパターン52が形成されたレジスト膜50が露光される。
【0037】
(ル)図13に示すように、現像装置96により、レジスト膜50が現像されて、第2図形4に対応する第2レジストパターン56が描画される。
【0038】
(ヲ)図14に示すように、図1に示したエッチング装置98により、レジスト膜50をマスクとして、ドライエッチング等により第1及び第2レジストパターン52、56に対応する第1及び第2パターン12、14が基板10に形成される。その後、レジスト膜50が除去される。このようにして、インプリントモールドが製造される。
【0039】
本発明の実施の形態では、高解像度が要求される寸法基準値以下の第1図形2からなる第1描画パターンデータが、スポット電子ビームを用いる描画装置94aで露光される。寸法基準値より大きな第2図形からなる第2描画パターンデータは、高処理能力を有する可変成形電子ビームを用いる描画装置94bで露光される。その結果、処理能力の低下を抑制して、設計パターンデータに忠実な第1及び第2レジストパターン52、56を描画することができる。
【0040】
なお、上記の説明では、第1レジストパターン52を現像した後に、第2描画パターンデータの露光が行われている。しかし、第1レジストパターン52の現像前に第2描画パターンデータを露光してもよい。
【0041】
例えば、図15に示すように、描画装置94aにより、基板10表面に塗布されたレジスト膜50に第1描画パターンデータを用いて露光して第1潜像51aを形成する。引き続き、図16に示すように、描画装置94bにより、レジスト膜50に第2描画パターンデータを用いて露光して第2潜像51bを形成する。その後、図17に示すように、現像装置96により、レジスト膜50が現像され、第1及び第2潜像51a、51bに対応して第1及び第2レジストパターン52、56を描画することができる。
【0042】
また、レジスト膜50のエッチング耐性を補強するために、ハードマスクを用いてもよい。例えば、図18に示すように、基板10の表面にレジスト膜50を用いて第1及び第2図形2、4にそれぞれ対応する開口部53、57を有するハードマスク40を形成する。ハードマスク40として、アルミニウム(Al),チタン(Ti)、タンタル(Ta)、及びクロム(Cr)等の金属、モリブデンシリサイド(MoSi)、及びタンタルシリサイド(TaSi)等の金属シリサイド等が用いられる。また、ハードマスク40として、金属やSi等の酸化物、窒化物、炭化物等を用いてもよい。
【0043】
(変形例)
本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法は、基板のドライエッチング方法に関する。本発明の実施の形態において説明したように、寸法基準値を用いて分類された第1及び第2図形2、4のそれぞれを、異なる描画装置94a、94bにより描画することにより、設計仕様を満足する寸法の第1及び第2レジストパターン52、56を形成することができる。このように形成したレジストパターンをマスクとして、RIE等のドライエッチングを行なうと、レジストパターンの開口面積により基板に形成したパターンのエッチング深さや断面形状が変動する場合がある。
【0044】
例えば、図19及び図20に示すように、六フッ化イオウ(SF6)を用いるRIEにより、Si基板等の基板10に距離Wyで隣接した第1及び第2パターン112、114を形成した。ここで、第1パターン112の幅Wxbは、約1μm又は約5μmである。第1及び第2パターン112の深さDxb、Dxaは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
【0045】
図21は、第2パターン114の幅Wxaを約1μmから約1130μmの範囲で変化させた場合の第1及び第2パターンの深さDxb、Dxaの変動を示す図である。距離Wyは約1μmである。図21に示すように、第2パターン114の深さDxaは、幅Wxaとともに増加し、約1mm以上でほぼ一定となる。一方、第1パターン112の深さDxbは幅Wxaとともに減少する傾向にある。また、幅Wxbが約1μmの第1パターンに比べ、約5μmの第1パターンの方が深さDxbは約2倍大きい。
【0046】
図22は、距離Wyを約1μmから約1000μmの範囲で変化させた場合の第1及び第2パターンの深さDxb、Dxaの変動を示す図である。第2パターン114の幅Wxaは約1130μmに固定している。図22に示すように、第1パターン112の深さDxbは距離Wyと共に増加し、距離Wyが約100μm以上ではほぼ一定となる。また、幅Wxbが約1μmの第1パターンに比べ、約5μmの第1パターンの方が深さDxbは約2倍大きい。
【0047】
また、図23及び図24に示すように、四フッ化炭素(CF4)を用いるRIEにより、石英基板等の基板10にライン部118を挟んで開口部116を配列したL/Sパターンを形成した。ライン幅Wlと開口幅Wsの比は略1:1である。開口部116の深さDsはAFMにより測定した。また、ライン部118の表面に対する開口部116の側面の傾斜角θは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した。
【0048】
図25は、CF4を用いるRIEにより石英基板をエッチングした際、開口幅Wsを変化させた場合の深さDsの変動を示す図である。図25から、開口幅Wsが約400nm以下に減少すると深さDsが減少することが判る。また、開口幅Wsが約400nm以上では、深さDsはほぼ一定値となる。
【0049】
図26は、CF4を用いるRIEにより石英基板をエッチングした際、開口幅Wsを変化させた場合の傾斜角θの変動を示す図である。図26から、開口幅Wsの増加と共に傾斜角θは増加し、約500nm以上で約90°となることが判る。
【0050】
このように、RIEによりエッチングして形成したパターンの深さ及び側面の傾斜角が、パターンの寸法に依存し、かつ、隣接するパターン間の距離にも依存することがわかる。エッチング条件を調整することにより、製造誤差の範囲内でパターン寸法に対するエッチング深さ及び傾斜角の依存性を抑制することは可能である。
【0051】
例えば、図27に示すように、レジスト膜50に約100nm以下の小開口面積の第1レジストパターン152と約100nmより大きな大開口面積の第2レジストパターン156を介して基板10をRIE等によりエッチングする。
【0052】
小開口面積のパターンに対する最適エッチング条件を用いてRIEを行うと、図28に示すように、第1レジストパターン152に対応する第1パターン22が所望の深さ及び断面形状で形成される。しかし、第2レジストパターン156に対応する第2パターン24aにおいては、露出した基板10表面が粗化されるだけでエッチングはほとんど進行しない。
【0053】
逆に、大開口面積のパターンに対する最適エッチング条件を用いてRIEを行うと、図29に示すように、第2レジストパターン156に対応する第2パターン24が所望の深さ及び断面形状で形成される。しかし、第1レジストパターン152に対応する第1パターン22aにおいては、露出した基板10表面が粗化されるだけでエッチングはほとんど進行しない。あるいは、図30に示すように、エッチングは進行するが、第1レジストパターン152近傍のレジスト膜50の界面に幅Wuのアンダーカットが生じる場合もある。このような場合、断面形状は設計仕様とは大きく異なり、得られる深さDdも第2パターン24の深さDaに比べて小さくなる。
【0054】
上記のように、レジスト膜50をマスクとしてRIE等のドライエッチングによりパターンを形成する場合、所望の深さ及び断面形状を得るエッチング条件はレジストパターンの開口面積により異なる。実施の形態の変形例では、実施の形態と同様に、設計パターンデータに含まれる複数の図形を、寸法基準値以下の第1図形と寸法基準値より大きな第2図形に分類する。
【0055】
まず、基板に塗布したレジスト膜に第1図形を描画して形成した第1レジストパターンを用いて、ドライエッチングにより第1パターンを基板に形成する。次に、新たに基板に塗布したレジスト膜に第2図形を描画して形成した第2レジストパターンを用いて、ドライエッチングにより第2パターンを基板に形成する。第1及び第2パターンそれぞれのエッチングにおいて、レジストパターンの開口面積に合わせて異なるエッチング条件を用いることができる。したがって、第1及び第2パターンそれぞれのエッチング深さ及び断面形状を製造誤差の範囲内で制御することが可能である。
【0056】
次に、本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法を、図31〜図36を用いて説明する。なお、図1に示した製造部92には、スポット電子ビームを用いる描画装置94a、及び可変成形電子ビームを用いる描画装置94bが備えられている。寸法基準値として、例えば、100nmが用いられる。また、図5及び図6に示した第1及び第2図形2、4を用いた第1及び第2描画パターンデータの生成方法は、実施の形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0057】
(イ)まず、データ生成ユニット70で生成された第1及び第2パターンデータが、工程管理ユニット90により、描画装置94a、94bにそれぞれ伝送される。
【0058】
(ロ)図31に示すように、基板10の表面に電子ビーム用のレジスト膜(第1レジスト膜)50が塗布される。基板10には、例えば、厚さが約6.35mmの石英基板等が用いられる。描画装置94aにより、第1描画パターンデータを用いて、レジスト膜50が露光される。
【0059】
(ハ)図32に示すように、現像装置96により、レジスト膜50が現像されて、第1図形2に対応する第1レジストパターン52が描画される。
【0060】
(ニ)図33に示すように、エッチング装置98により、レジスト膜50をマスクとして、RIE等のドライエッチングにより第1レジストパターン52に対応する第1パターン12が基板10に形成される。ドライエッチングでは、寸法基準値である100nm以下の開口面積のパターンに対する最適なエッチング条件が用いられる。
【0061】
(ホ)図34に示すように、第1パターン12が形成された基板10の表面に電子ビーム用のレジスト膜(第2レジスト膜)54が塗布される。描画装置94bにより、第2描画パターンデータを用いて、レジスト膜54が露光される。
【0062】
(ヘ)図35に示すように、現像装置96により、レジスト膜54が現像されて、第2図形4に対応する第2レジストパターン56が描画される。
【0063】
(ト)図36に示すように、エッチング装置98により、レジスト膜54をマスクとして、RIE等のドライエッチングにより第2レジストパターン56に対応する第2パターン14が基板10に形成される。ドライエッチングでは、寸法基準値である100nmより大きな開口面積のパターンに対する最適なエッチング条件が用いられる。その後、レジスト膜54が除去される。このようにして、インプリントモールドが製造される。
【0064】
本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法においては、寸法基準値に基いて分類した第1及び第2図形のそれぞれから第1及び第2描画パターンデータを生成する。第1及び第2描画パターンデータそれぞれは、性能の異なる描画装置94a、94bにより露光される。したがって、描画工程の処理能力の低下を抑制して、設計パターンデータに忠実な第1及び第2レジストパターン52、56を描画することができる。また、第1及び第2パターン12、14は、それぞれ単独のドライエッチングにより形成される。したがって、それぞれのドライエッチングにおいて、第1及び第2レジストパターン52、56の開口面積に基いた最適エッチング条件を適用することができる。その結果、第1及び第2パターン12、14の寸法及び断面形状の変動を低減することが可能となる。
【0065】
なお、第1及び第2パターン12、14エッチング深さの制御は、予め取得したエッチング速度のデータに基いて、時間制御で行えばよい。また、第2図形に寸法が約5μm以上のパターンが含まれる場合、第2パターン14のドライエッチング中に紫外光の干渉を用いたその場(in situ)測定によりエッチング深さを制御することが可能である。
【0066】
また、第2パターン14の断面形状を制御するため、第2図形4を更に分割してもよい。例えば、図37に示すように、第2図形4を、寸法基準値の幅Weで第2図形4の外周を含む第1分割図形4bと、第1分割図形4bの内側の第2分割図形4cに分割する。第2分割図形4cが寸法基準値より大きい場合、図38に示すように、第1分割図形4bを第1図形2と共に第1図形群に分類する。また、図39に示すように、第2分割図形4cを第2図形群に分類する。
【0067】
第2分割図形4bは、第1描画パターンデータに含まれ、第1パターン12と共にドライエッチングにより形成される。第2分割図形4cは、第2描画パターンデータに含まれ、第2分割図形4bとは別にドライエッチングにより形成される。したがって、第1及び第2分割図形4b、4cに対応して形成される第2パターン14の側面を、第1パターン12と実質的に同じ傾斜角とすることができる。したがって、第1及び第2パターン12、14の断面形状の相違をより小さく抑制することが可能となる。
【0068】
また、図40に示すように、第1図形の中の複数の対象図形6a、6b、6cが幅Wcを有し、寸法基準値以下の間隔Wdで配列されている場合がある。このような場合、パターン密度が約30%を超えるとローディング効果等により形成されるパターンのエッチング深さの変動が大きくなる。
【0069】
例えば、密度基準値を30%とする。対象図形6a、6b、6cが密度基準値以上のパターン密度で配列されている場合、図41及び図42に示すように、密度基準値以下となるように対象図形6a、6b、6cを第3分割図形(6a、6c)と第4分割図形6bに分割する。第3分割図形(6a、6c)を第1図形群に、第4分割図形6bを第3図形群に分類する。第3図形から第3描画パターンデータを生成する。第3描画パターンデータを用いて基板10に第3図形を転写する。ここで、第3図形の転写工程は、第1及び第2図形の転写工程とは独立して実施する。第3及び第4分割図形(6a、6c)、6bのパターン密度は、それぞれ密度基準値以下であるので、エッチング深さの変動を抑制することができる。
【0070】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0071】
本発明の実施の形態においては、寸法基準値を用いて第1及び第2図形2、4に分類している。しかし、複数の寸法基準値を設定して3以上の図形に分類してもよい。例えば、寸法基準値として、20nmと300nmを設定する。寸法が20nm以下の図形を第1図形、20nmより大きく300nm以下の図形を第2図形、及び300nmより大きい図形を第3図形とする。第1〜第3図形のそれぞれに対して、スポット電子ビーム、可変成形電子ビーム、及びレーザビームを用いて描画すれば、処理能力を更に向上させることが可能となる。により描画する。
【0072】
また、本発明の実施の形態の説明では省略したが、第1及び第2描画パターンデータの露光に際して、アライメントマークが設けられる。例えば、アライメントマークを、図2に示したパターン領域11の外側の基板10表面に設けることができる。あるいは、第1描画パターンデータにアライメントマーク用のパターンを付与してもよい。
【0073】
このように、本発明はここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造システムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの一例を示す平面概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドのパターンの一例を示す平面概略図である。
【図4】図3に示したインプリントモールドのA−A断面を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る図形の分類の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る図形の分類の他の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る図形の分割の説明に用いる図形の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る分割図形の分類の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る分割図形の分類の他の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示すフローチャ−トである。
【図11】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その1)である。
【図12】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その2)である。
【図13】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その3)である。
【図14】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その4)である。
【図15】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の他の例を示す断面図(その1)である。
【図16】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の他の例を示す断面図(その2)である。
【図17】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の他の例を示す断面図(その3)である。
【図18】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造に用いるハードマスクの一例を示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態の変形例の説明に用いるパターンの一例を示す平面図である。
【図20】図19に示したパターンのB−B断面を示す概略図である。
【図21】パターン幅とエッチング深さの関係を示す図である。
【図22】パターン間の距離とエッチング深さの関係を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態の変形例の説明に用いるL/Sパターンの一例を示す平面図である。
【図24】図19に示したパターンのC−C断面を示す概略図である。
【図25】開口幅とエッチング深さの関係を示す図である。
【図26】開口幅と傾斜角の関係を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態の変形例のエッチングの説明に用いる基板の一例を示す断面図である。
【図28】本発明の実施の形態の変形例のエッチングの結果の一例を示す断面図である。
【図29】本発明の実施の形態の変形例のエッチングの他の結果の一例を示す断面図である。
【図30】本発明の実施の形態の変形例のエッチングの他の結果の他の例を示す断面図である。
【図31】本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その1)である。
【図32】本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その2)である。
【図33】本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その3)である。
【図34】本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その4)である。
【図35】本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その5)である。
【図36】本発明の実施の形態の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を示す断面図(その6)である。
【図37】本発明の実施の形態の変形例に係る図形の分割の一例を示す図である。
【図38】本発明の実施の形態の変形例に係る分割図形の分類の一例を示す図である。
【図39】本発明の実施の形態の変形例に係る分割図形の分類の一例を示す図である。
【図40】本発明の実施の形態の変形例に係る図形の分割の他の例を示す図である。
【図41】本発明の実施の形態の変形例に係る分割図形の分類の他の例を示す図である。
【図42】本発明の実施の形態の変形例に係る分割図形の分類の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
2…第1図形
4…第2図形
10…基板
11…パターン領域
12…第1パターン
14…第2パターン
50…レジスト膜(第1レジスト膜)
52…第1レジストパターン
54…レジスト膜(第2レジスト膜)
56…第2レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計パターンデータに含まれる前記複数の図形のそれぞれを、寸法が寸法基準値以下の第1図形と前記寸法基準値より大きな第2図形とに分類し、前記第1及び第2図形のそれぞれから第1及び第2描画パターンデータを生成する工程と、
前記第1描画パターンデータを用いて基板に前記第1図形を転写する工程と、
前記第2描画パターンデータを用いて前記基板に前記第2図形を転写する工程
とを含むことを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【請求項2】
前記第1図形を転写する工程が、
前記基板上に塗布された第1レジスト膜に前記第1描画パターンデータを用いて第1レジストパターンを描画するステップ、前記第1レジストパターンをマスクとして前記基板の一部を除去するステップとを含み、
前記第2図形を転写する工程が、
前記基板上に塗布された第2レジスト膜に前記第2描画パターンデータを用いて第2レジストパターンを描画するステップ、前記第2レジストパターンをマスクとして前記基板の一部を除去するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項3】
前記第1レジストパターンが、スポット電子ビーム描画装置を用いて描画されることを特徴とする請求項2に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項4】
前記第2レジストパターンが、前記スポット電子ビーム描画装置よりも最小描画線幅の大きな描画装置を用いて描画されることを特徴とする請求項3に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2描画パターンデータを生成する工程において、前記寸法基準値の幅で前記第2図形の外周を含む第1分割図形と前記第1分割図形の内側の第2分割図形とに分割するステップ、前記第2分割図形の寸法が前記寸法基準値より大きい場合、前記第1分割図形を第1図形、前記第2分割図形を第2図形に分類するステップを更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項6】
前記第1図形の中の複数の対象図形が前記寸法基準値以下の間隔で、かつ密度基準値以上のパターン密度で配列されている場合、それぞれが前記密度基準値以下となるように前記複数の対象図形を第3分割図形と第4分割図形に分割するステップ、前記第3分割図形を前記第1図形、前記第4分割図形を第3図形に分類するステップとを含み、前記第3図形から第3描画パターンデータを生成する工程と、
前記第3描画パターンデータを用いて前記基板に前記第3図形を転写する工程
とを更に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2008−265028(P2008−265028A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107415(P2007−107415)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】