説明

ウエハプローバ、および当該ウエハプローバを用いた故障解析方法

【課題】プロービング状態におけるウエハの反りを可及的に抑え、かつ十分な観測視野が得ることが可能なウエハプローバ、及び当該ウエハプローバを用いた故障解析方法を提供する。
【解決手段】ウエハ1に対して固浸レンズ23を用いた裏面解析を行うためのウエハプローバ10であって、
ウエハ1を支持する表面に設けられた凹部11aと、この凹部11aの底面11a2の一部を貫通する開口部11bとを有するウエハステージ11と、
凹部11aにx−y方向に移動可能に収容され、ウエハ1を支持し、開口部11bよりも小さい観測口12aを有する、可動プレート12と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハプローバ、より詳しくは固浸レンズを用いてウエハを裏面解析するために用いられるウエハプローバ、及び当該ウエハプローバを用いた故障解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、システムLSI等の半導体装置の多層化に伴って、半導体装置における配線層の数が増加している。それにより、半導体装置の配線層側(表面側)から故障解析を行うことが困難になっている。故障箇所及びその影響を受けて誤動作している箇所から放出される微弱な光を観測するエミッション顕微鏡(Emission Microscopy)を用いたエミッション解析(発光解析)と呼ばれる故障解析方法が知られている。このエミッション解析を用いて配線層の数が多い半導体装置の故障解析を行う場合、故障箇所等からの発光が配線によって遮断されてしまうため、半導体装置の表面側から発光を観測することは極めて困難である。また、光を利用した他の故障解析方法、例えばOBIC(Optical Beam Induced Current)法及びOBIRCH(Optical Beam Induced Resistance CHange)についても、半導体装置の外部から照射するレーザ光が配線により遮られて半導体装置の所望の部位に到達しないため、実施することが困難である。
【0003】
そこで、半導体装置の裏面(半導体基板側)からの故障解析、いわゆる裏面解析を行う必要性が増している。この裏面解析によりエミッション解析を行う場合、半導体基板側から発光を観測するため、配線層を介さずに発光を観測することができる。
【0004】
半導体プロセスの微細化により、高解像度の故障解析が求められている。高解像度観測技術の一つとして、固浸レンズ(Solid Immersion Lens。以下、SILともいう。)を用いた手法が知られている。この手法では、SILを対物レンズと組み合わせた光学系(以下、SILシステムという。)を用いる。SILを用いて裏面解析を行う場合、SILを半導体基板の裏面に密着させ、SILの半球断面の中心が観測位置にくるようにする。これにより、開口数(NA:Numerical Aperture)が向上し、高解像度の観測が可能となる。
【0005】
このSILを用いた裏面解析をダイシング前のウエハに対して行う場合、SILをウエハの裏面に密着させるためにはウエハを載置するウエハステージに開口部を設ける必要がある。十分な観測視野を確保しようとすると。この開口部は解析対象のチップに対して大きいものとならざるを得ない。このように広い開口部を設けると、ウエハステージがウエハを支持する力が弱まってしまう。そのため、チップの電極パッドの上にプローブ針を接触させた状態(以下、プロービング状態ともいう)にすると、プローブ針の針圧によってウエハは開口部において落ち込むようにして反ってしまう。その結果、プローブ針が所定の電極パッドから外れ、故障解析を安定して行うことができなくなる虞がある。また、最悪の場合にはウエハが割れてしまう虞もある。
【0006】
この課題を解決する手段として、ウエハを裏面から支える支持治具が開示されている(特許文献1)。この支持治具1はウエハ2を裏面から支えることで、プローブの針圧が加わった状態でもウエハ2の破損を防ぐというものである。また、従来の装置に設けられていた石英ガラス製のステージ101を不要とすることで、このステージの厚みによる分解能と測定感度の低下を防いでいる。この手法の問題点として、解析対象のチップに対して十分な観測視野を確保しようとすると、支持治具1の接触部11を半導体装置21よりも大きくする必要がある。このため、例えば大規模な半導体装置の場合、多数のプローブ針をチップに落とすために針圧が大きくなり、ウエハの反りを十分に抑えられないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−324457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プロービング状態におけるウエハの反りを可及的に抑え、かつ十分な観測視野が得ることが可能なウエハプローバ、及び当該ウエハプローバを用いた故障解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ウエハに対して裏面解析を行うためのウエハプローバであって、厚さ方向に対向する表面と裏面を有し、前記ウエハを支持する前記表面に設けられた凹部と、前記凹部に前記凹部を厚さ方向に貫通する状態に形成された第1の貫通孔とを有する、ウエハステージと、前記第1の貫通孔よりも小さく前記第1の貫通孔に連通し、厚さ方向に貫通する状態に形成された、第2の貫通孔を有し、前記ウエハステージの前記凹部内にx−y方向に移動可能に収容された、可動プレートと、を備えるウエハプローバが提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に記載のウエハプローバを用いる故障解析方法であって、前記ウエハの裏面が前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上面に接するように、前記ウエハを前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上に載置し、固浸レンズを先端に有するSILシステムと前記可動プレートを連動して移動させることにより、前記固浸レンズを前記チップにおける観測位置の直下に位置させ、前記ウエハステージの上方に配置され、プローブ針が固定されたプローブカードを降下させることにより、前記チップ上の所定の電極パッドに前記プローブ針を接触させ、前記SILシステムを上昇させることにより、前記ウエハの裏面に前記固浸レンズを密着させる、故障解析方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プロービング状態におけるウエハの反りを可及的に抑え、かつ十分な観測視野が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る故障解析装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る故障解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る故障解析方法を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く、本発明の第1の実施形態に係る故障解析方法を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く、本発明の第1の実施形態に係る故障解析方法を説明するための断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る可動プレートの詳細な構成を説明するための図である。図6(a)はウエハステージと可動プレートの平面図である。図6(b)は図6(a)のA−A線に沿う断面図である。図6(c)は図6(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る故障解析装置の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る故障解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る故障解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】第4の実施形態に係るウエハステージ及び可動プレートの詳細な構成を説明するための図である。図10(a)はウエハステージと可動プレートの平面図である。図10(b)は図10(a)のA−A線に沿う断面図である。図10(c)は図10(a)のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の各実施形態において述べるように、本発明は、ウエハを対象とするSILを用いた裏面解析において、プロービング状態におけるウエハの反りを可及的に抑えるとともに、十分な観測視野を確保することが可能なウエハプローバ、及びそれを用いた故障解析方法を提供するものである。
【0014】
以下、本発明に係る4つの実施形態について図面を参照しながら説明する。第1の実施形態では、ウエハプローバとこれを用いた故障解析方法を説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態に係るウエハプローバにイマージョンオイルを追加したウエハプローバ及びこれを用いた故障解析方法を説明する。第3の実施形態では、ウエハへの支持力をさらに高める故障解析方法を説明する。第4の実施形態では、第1の実施形態と異なる構成を有するウエハプローバを説明する。
【0015】
なお、同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る故障解析装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係るウエハプローバ10とSILシステム20を備える故障解析装置の断面図を示している。
【0017】
図1からわかるように、ウエハプローバ10は、ウエハステージ11と、可動プレート12と、プローブカード13と、プローブカード13に固定されたプローブ針14とを備える。
【0018】
ウエハステージ11は、ウエハ1を支持する表面に設けられた凹部11aと、開口部11bとを有する。凹部11aは、ウエハステージ11上にウエハ1を載置でき、かつ、後述の可動プレート12が十分広い範囲を移動できる程度の大きさのものとして形成されている。また、図1からわかるように、凹部11aの底面11a2の一部を貫通する開口部11bが設けられている。この開口部11bは、後述のSIL23がウエハ1の裏面1aに密着できるようにSILシステム20を通すことができ、かつ十分な観測視野が得られる程度の大きさのものとして形成されている。
【0019】
可動プレート12は、観測口12aを有し、凹部11aの底面11a2の上に配置されている。この可動プレート12は、可動プレート駆動機構(図示せず)により、ウエハステージ11の上面と平行な方向(以下、x−y方向ともいう。)に移動可能に凹部11a内に収容されている。図1からわかるように、観測口12aはウエハステージ11の開口部11bに連通している。
【0020】
この可動プレート12の厚さは凹部11aの側面11a1の高さに等しいため、ウエハステージ11の上面と可動プレート12の上面は同じ高さとなっている。これにより、ウエハ1の裏面1aが可動プレート12の上面及びウエハステージ11の上面と同時に接するように、ウエハ1をウエハステージ11上に載置することができる。このため、ウエハ1は、図1からわかるように、ウエハステージ11だけでなく可動プレート12によっても支持される。
【0021】
可動プレート12の観測口12aは、ウエハステージ11の開口部11bよりも小さい貫通孔として形成されている。プロービング状態におけるウエハ1の反りをより抑えるために、観測口12aの大きさは解析対象のチップ2よりも小さくしてもよい。好ましくは、観測口12aの大きさはレンズホルダ21の先端部分21aの径に若干のマージンを加えたものとする。換言すれば、観測口12aは、レンズホルダ21の先端部分21aに沿った形状に加工されていることが好ましい。
【0022】
なお、観測口12aと開口部11bは、図1に示すようにテーパ状に形成することが好ましい。このようにすることで、可動プレート12の上面の面積及びウエハステージ11の底面11a2の面積をさらに大きくし、ウエハ1を支持する力を向上させることができる。
【0023】
ウエハステージ11の上方には、プローブカード13が配置される。このプローブカード13には複数のプローブ針14,14,・・・が固定されている。
【0024】
SILシステム20は、ウエハプローバ10の下方に配置されており、レンズホルダ21と、対物レンズ22と、SIL(固浸レンズ)23とを備える。このSILシステム20は、SILシステム駆動部(図示せず)により、ウエハステージ11の上面と平行な方向(x−y方向)及びそれと垂直な方向(以下、z方向ともいう。)に移動させることが可能である。なお、SILシステム20として、パッケージを対象にした裏面解析に用いられるSILシステムをそのまま用いることができる。
【0025】
図1からわかるように、レンズホルダ21の先端部分21aは、SIL23とそれより径の大きな対物レンズ22を収容するため、好ましくはテーパ状に形成される。先端部分21aをテーパ形状とすることで、可動プレート12の上面の面積を可及的に広くし、その結果、プロービング状態におけるウエハ1の反りを抑えることができる。
【0026】
なお、このSIL23は、例えば半球状のシリコンレンズである。SIL23の形状に関しては、半球型の他にワイエルストラス球と呼ばれる超半球型が一般的である。SIL23の材質に関しては、半導体基板と同じ材料、若しくは半導体基板の屈折率と近い屈折率を持つ材料が用いられる。これは、SIL23とウエハ1の界面での屈折を回避することで開口数を維持するためである。
【0027】
レンズホルダ21は、その先端にSIL23を保持する。図1からわかるように、半球断面23aがウエハ1の方を向くように保持する。レンズホルダ21はその内部に対物レンズ22を保持する。
【0028】
ここで、図2のフローチャートに沿って、第1の実施形態に係る故障解析装置による裏面解析の手順を説明する。
【0029】
(1)まず、解析対象のチップ2が作り込まれたウエハ1を、裏面1aが図1中下側に向くように(即ち、裏面1aがウエハステージ11及び可動プレート12の上面と接触するように)、ウエハステージ11及び可動プレート12の上に載置し、その後、真空チャックなどの手段によってウエハ1をウエハステージ11に固定する(ステップS11)。なお、ウエハ1を固定する前に、プローブカード13を降下させたときにプローブ針14がチップ2の所定の電極パッドに接触するようにウエハ1の位置を微調整しておく。
【0030】
(2)次に、図3からわかるように、SILシステム20と可動プレート12を連動してx−y方向に移動させることにより、SIL23をチップ2の観測位置の直下に位置させる(ステップS12)。
【0031】
(3)次に、図4からわかるように、プローブカード13を降下させることにより、チップ2上の所定の電極パッドにプローブ針14を接触させる(ステップS13)。この際、ウエハ1にはプローブ針14の針圧が加わるものの、ウエハ1はウエハステージ11だけでなく可動プレート12によっても支持されているため、ウエハ1の反りを抑えることができる。
【0032】
(4)次に、図5からわかるように、SILシステム20を上昇させることにより、ウエハ1の裏面1aにSIL23を密着させる(ステップS14)。
【0033】
(5)次に、観測を行なう(ステップS15)。即ち、プローブ針14を介してチップ2内の電子回路へテストパターン信号を印加することによりチップ2の故障を再現させ、故障再現状態におけるチップ2からの発光をSILシステム20により観測する。
【0034】
(6)観測を終えた後、チップ2の他の位置で観測するか否かを判断する(ステップS16)。他の位置で観測する場合、SILシステム20を降下させてSIL23をウエハ1から外すとともに、プローブカード13を上昇させてプロービングを解除する(ステップS17)。そして、ステップS12に戻る。一方、他の位置で観測しない場合は観測を終了する。なお、或るチップ2について観測が終了した後、ウエハ1に作製された他のチップを観測する場合には、プローブカード13を降下させたときにプローブ針14がそのチップの所定の電極パッドに接触するようにウエハ1をずらしてから、上記の方法と同様にして観測を行う。
【0035】
次に、図6を用いて、可動プレート12の構成例について説明する。図6(a)は、ウエハステージ11と可動プレート12の平面図を示している。図6(b)は、図6(a)中のA−A線に沿う断面図である。図6(c)は、図6(a)中のB−B線に沿う断面図である。
【0036】
可動プレート12は、x軸可動プレート12Xとy軸可動プレート12Yを有する。図6(a)乃至図6(c)からわかるように、x軸可動プレート12Xはy軸可動プレート12Yを収容するための収容孔12bを有する。このx軸可動プレート12Xには、x軸方向にネジ穴12X1が設けられており、ネジが切られたモータシャフト17xがこのネジ穴12X1に螺入されている。このモータシャフト17xを回転させるモータ16xは、ウエハステージ11に固定されている。このモータ16xは、x軸可動プレート12Xの移動量に応じてモータシャフト17xを回転させる。
【0037】
y軸可動プレート12Yは、図6(a)乃至図6(c)からわかるように、x軸可動プレート12Xに設けられた収容孔12bに嵌め込まれるようにして配置されている。このy軸可動プレート12Yには、y軸方向にネジ穴12Y1が設けられており、ネジが切られたモータシャフト17yがこのネジ穴12Y1に螺入されている。このモータシャフト17yを回転させるモータ16yは、x軸可動プレート12Xに固定されている。このモータ16yは、y軸可動プレート12Yの移動量に応じてモータシャフト17yを回転させる。
【0038】
上記のような可動プレート12を構成することにより、観測口12aを水平面内の所望の位置に移動させることができる。
【0039】
以上説明したように本実施形態に係るウエハプローバ10は、ウエハステージ11の凹部11aに配置された、x−y方向に移動可能な可動プレート12を有する。別の見方をすれば、固定部(ウエハステージ11)と可動部(可動プレート12)に分けたものとしてウエハステージを構成していると捉えることもできる。この可動プレート12に設けられたSIL23を通すための観測口12aは、ウエハステージ11の開口部11bに比べて狭く形成されている。このため、プロービング状態において観測口12aでのウエハ1の反りを抑えることができる。その結果、ウエハの破損を防止するとともに、プローブ針が解析対象のチップの電極パッドから外れずに安定した故障解析を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、ウエハの反りを抑えるとともに、可動プレート12を設けることで、観測口12aを観測位置に応じて自由に移動させることができる。これにより、解析対象のチップの全領域を観測可能な観測視野を確保することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る故障解析装置について説明する。第2の実施形態と第1の実施形態の相違点の一つは、可動プレート12の上面にイマージョンオイル(光学オイル)が塗布されていることである。これにより、可動プレート12がx−y方向に移動する際に生じる、可動プレート12とウエハ1間の摩擦が軽減される。このため、プロービングした状態のまま可動プレート12をx−y方向に移動することができる。
【0042】
図7は、第2の実施形態に係るウエハプローバ10AとSILシステム20を備える故障解析装置の断面図を示している。この図7からわかるように、ウエハプローバ10Aの可動プレート12の上面にはイマージョンオイル15が塗布されている。このイマージョンオイル15が可動プレート12とウエハ1の間に介在することにより、稼動プレート12が移動する際に発生するウエハ1と可動プレート12間の摩擦が軽減される。
【0043】
次に、図8のフローチャートに沿って、第2の実施形態に係る故障解析装置による裏面解析の手順を説明する。
【0044】
(1)まず、第1の実施形態のステップS11と同様にして、ウエハステージ11上にウエハ1を固定する(ステップS21)。
【0045】
(2)次に、プローブカード13を降下させることにより、チップ2上の所定の電極パッドにプローブ針14を接触させる(ステップS22)。
【0046】
(3)次に、SILシステム20と可動プレート12を連動してx−y方向に移動させることにより、SIL23をチップ2の観測位置の直下に位置させる(ステップS23)。このとき、可動プレート12の上面にイマージョンオイル15が塗布されているため、プロービングした状態のまま可動プレート12を移動させることができる。
【0047】
(4)次に、SILシステム20を上昇させることにより、ウエハ1の裏面1aにSIL23を密着させる(ステップS24)。
【0048】
(5)次に、第1の実施形態のステップS15と同様にして、観測を行なう(ステップS25)。
【0049】
(6)観測を終えた後、チップ2の他の位置で観測するか否かを判断する(ステップS26)。他の位置で観測する場合、SILシステム20を下降させてSIL23をウエハ1から外し(ステップS27)、その後、ステップS23に戻る。一方、他の位置で観測しない場合は観測を終了する。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態では、可動プレート12の上面にイマージョンオイル15が塗布されている。このため、可動プレート12がx−y方向に移動する際に生じる、可動プレート12とウエハの裏面1a間の摩擦が軽減され、それにより、プロービング状態のままで可動プレート12を動かし観測位置を変更することが可能となる。その結果、観測位置を変える際にプローブカード13を昇降させる必要がなくなり、故障解析の効率を向上させることができる。それとともに、プロービングの繰り返しに伴う電極パッドの劣化を防止することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る故障解析方法について説明する。第3の実施形態と第1の実施形態の相違点の一つは、チップ上の所定の電極パッドにプローブ針を接触させる(プロービングする)前にSILシステムを上昇させてSILをウエハに密着させることで、ウエハステージ及び可動プレートだけでなく、SILによってもウエハを支持する点である。その結果、ウエハはより大きな荷重に耐えることが可能となる。その結果、より多くのプローブ針をチップに接触させることができる。
【0052】
以下、図9のフローチャートに沿って、第3の実施形態に係る故障解析装置による裏面解析の手順を説明する。
【0053】
(1)まず、第1の実施形態で説明したステップS11と同様にして、ウエハステージ11上にウエハ1を固定する(ステップS31)。
【0054】
(2)次に、SILシステム20と可動プレート12を連動してx−y方向に移動させることにより、SIL23をチップ2の観測位置の直下に位置させる(ステップS32)。
【0055】
(3)次に、SILシステム20を上昇させ、ウエハ1の裏面1aにSIL23を密着させる(ステップS33)。
【0056】
(4)次に、第1の実施形態のステップS13と同様にして、プローブカード13を降下させ、チップ2上の所定の電極パッドにプローブ針14を接触させる(ステップS34)。
【0057】
(5)次に、第1の実施形態のステップS15と同様にして、観測を行なう(ステップS35)。
【0058】
(6)観測を終えた後、他の位置で観測するか否かを判断する(ステップS36)。他の位置で観測する場合、プローブカード13を上昇させてプロービングを解除した後(ステップS37)、SILシステム20を下降させてSIL23をウエハ1から外す(ステップS38)。その後、ステップS32に戻る。一方、他の位置で観測しない場合は観測を終了する。
【0059】
以上、説明したように、本実施形態では、プロービングする前にSILシステム20を上昇させてSIL23をウエハ1に密着させる。これにより、本実施形態によれば、ウエハステージ11と可動プレート12だけでなく、SIL23によってもウエハ1は支持される。このため、プロービング状態におけるウエハ1の反りをさらに抑えることができる。その結果、よりプローブ針の数が多い場合、即ちプロービングの荷重がより大きい場合であっても、プロービング状態を維持し安定した故障解析を可能とするとともに、ウエハの破損を防止することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るウエハステージと可動プレートについて説明する。第4の実施形態と第1の実施形態の相違点の一つは、可動プレートは凹部に収容されるのではなく、ウエハステージを貫通するように設けられた収容孔に収容される点である。詳細は後述するが、可動プレートのシャフト部がウエハステージの収容孔の側面に設けられたシャフト穴と勘合することで、可動プレートはウエハステージに移動可能に保持される。
【0061】
以下、図10を用いてより詳細に説明する。図10(a)は、本実施形態に係るウエハステージ31と可動プレート32の平面図を示している。図10(b)は、図10(a)中のA−A線に沿う断面図である。図10(c)は、図10(a)中のB−B線に沿う断面図である。
【0062】
ウエハステージ31は可動プレート32を収容するための収容孔31bを有する。また、図10(b)からわかるように、収容孔31bの側面にはx軸方向に延びるシャフト穴31aが設けられている。
【0063】
可動プレート32は、x軸方向(図10(a)における水平方向)に移動可能なx軸可動プレート32Xと、y軸方向(図10(a)における垂直方向)に移動可能なy軸可動プレート32Yとを含む。
【0064】
x軸可動プレート32Xは、本体部32XAとシャフト部32XBを有する。図10(a)乃至図10(c)からわかるように、この本体部32XAは、y軸可動プレート32Yを収容するための収容孔32bを有する。シャフト部32XBはウエハステージ31に設けられたシャフト穴31aに勘合し、x軸可動プレート32Xはx軸方向に移動可能なものとして保持される。シャフト部32XBにはネジ穴32X1が設けられており、ネジが切られたモータシャフト37xがこのネジ穴32X1に螺入されている。このモータシャフト37xを回転させるモータ36xがウエハステージ31に固定されている。このモータ36xは、所望の移動量に応じてモータシャフト37xを回転させる。これにより、x軸可動プレート32Xはx軸方向に移動する。
【0065】
y軸可動プレート32Yは、本体部32YAとシャフト部32YBを有する。図10(a)乃至図10(c)からわかるように、この本体部32YAのほぼ中央には、この本体部32YAを貫通する観測口33が設けられている。シャフト部32YBはx軸可動プレート32Xの本体部32XAに設けられたシャフト穴32aに勘合し、y軸可動プレート32Yはy軸方向に移動可能なものとして保持される。シャフト部32YBにはネジ穴32Y1が設けられており、ネジが切られたモータシャフト37yがこのネジ穴32Y1に螺入されている。このモータシャフト37yを回転させるモータ36yはx軸可動プレート32Xに固定されている。このモータ36yは、所望の移動量に応じてモータシャフト37yを回転させる。これにより、y軸稼働プレート32Yはy軸方向に移動する。
【0066】
可動プレート32(32X+32Y)の上面とウエハステージ31の上面は、同じ高さであり、面一になっている。このため、ウエハステージ31の上に載置・固定されたウエハは、ウエハステージ31だけではなく、可動プレート32によっても支持される。
【0067】
図10(b)及び図10(c)からわかるように、観測口33は、可動プレート32の上面(ウエハの載置面)に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ状に形成されている。これにより、可動プレート32の上面の面積を可及的に大きくし、ウエハ1の支持力が高められる。その結果、プロービング状態におけるウエハ1の反りを抑えることができる。
【0068】
上記のような可動プレート32を構成することにより、観測口33を水平面内の所望の位置に移動させることができる。
【0069】
なお、本実施形態に係るウエハステージ31及び可動プレート32を用いて、第1乃至第3の実施形態において説明した故障解析方法を行うことができる。
【0070】
以上、本発明に係る4つの実施形態について説明した。本発明はエミッション解析の場合に限らず、他の光を用いる裏面解析方法にも適用可能である。例えば、OBIC法、OBIRCH法、動的レーザ刺激法(DLS:Dynamic Laser Stimulation)及び静的レーザ刺激法(SLS:Static Laser Stimulation)といった、レーザを照射してデバイスの特性変化を観測する裏面解析方法に対しても適用することができる。この場合、レーザは対物レンズ22とSIL23を通ってウエハ裏面の所定の位置に照射される。
【0071】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0072】
特許請求の範囲に記載された発明の他、上述した実施形態から、以下の付記された発明が導かれる。
【0073】
(付記1)
ウエハに対して裏面解析を行うためのウエハプローバであって、
厚さ方向に対向する表面と裏面を有し、前記ウエハを支持する前記表面に設けられた凹部と、前記凹部に前記凹部を厚さ方向に貫通する状態に形成された第1の貫通孔とを有する、ウエハステージと、
前記第1の貫通孔よりも小さく前記第1の貫通孔に連通し、厚さ方向に貫通する状態に形成された、第2の貫通孔を有し、前記ウエハステージの前記凹部内にx−y方向に移動可能に収容された、可動プレートと、
を備え、
前記第2の貫通孔は、固浸レンズを備えたレンズホルダの先端部分に沿った形状を有することを特徴とするウエハプローバ。
【0074】
(付記2)
前記第2の貫通孔は、前記可動プレートの上面に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ状に形成されていることを特徴とする付記1に記載のウエハプローバ。
【0075】
(付記3)
前記可動プレートは、
前記ウエハステージの前記凹部内に収容され、前記ウエハステージに固定された第1のモータによってx軸方向に移動可能なx軸可動プレートと、
前記x軸可動プレートに設けられた収容孔に収容され、前記第2の貫通孔を有し、前記x軸可動プレートに固定された第2のモータによってy軸方向に移動可能なy軸可動プレートと、
を有することを特徴とする付記1又は2に記載のウエハプローバ。
【0076】
(付記4)
ウエハに対して裏面解析を行うためのウエハプローバであって、
厚さ方向に貫通する第1の収容孔と、前記第1の収容孔の側面からx軸方向に延びる第1のシャフト穴とを有し、前記ウエハを支持する、ウエハステージと、
前記第1の収容孔に収容され、前記ウエハを支持する、可動プレートと、
を備え、
前記可動プレートは、
前記第1のシャフト穴に勘合する第1のシャフト部と、側面からy軸方向に延びる第2のシャフト穴が設けられた第2の収容孔を有する第1の本体部とを有し、前記第1の収容孔にx軸方向に移動可能に収容された、x軸可動プレートと、
前記第2のシャフト穴に勘合する第2のシャフト部と、貫通孔が設けられた第2の本体部とを有し、前記第2の収容孔にy軸方向に移動可能に収容された、y軸可動プレートと、を有し、
前記x軸可動プレートは前記ウエハステージに固定された第1のモータによって駆動され、前記y軸可動プレートは前記x軸可動プレートに固定された第2のモータによって駆動されることを特徴とするウエハプローバ。
【符号の説明】
【0077】
1 ウエハ
1a 裏面
2 チップ
10,10A ウエハプローバ
11 ウエハステージ
11a 凹部
11a1 側面
11a2 底面
11b 開口部
11b1 側面
12 可動プレート
12a 観測口
12a1 側面
12b 収容孔
12X x軸可動プレート
12Y y軸可動プレート
12X1,12Y1 ネジ穴
13 プローブカード
14 プローブ針
15 イマージョンオイル
16x,16y モータ
17x,17y モータシャフト
20 SILシステム
21 レンズホルダ
21a 先端部分
22 対物レンズ
23 SIL(固浸レンズ)
23a 半球断面
31 ウエハステージ
31a,32a シャフト穴
31b,32b 収容孔
32X x軸可動プレート
32Y y軸可動プレート
32XA,32YA 本体部
32XB,32YB シャフト部
32X1,32Y1 ネジ穴
33 観測口
36x,36y モータ
37x,37y モータシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに対して裏面解析を行うためのウエハプローバであって、
厚さ方向に対向する表面と裏面を有し、前記ウエハを支持する前記表面に設けられた凹部と、前記凹部に前記凹部を厚さ方向に貫通する状態に形成された第1の貫通孔とを有する、ウエハステージと、
前記第1の貫通孔よりも小さく前記第1の貫通孔に連通し、厚さ方向に貫通する状態に形成された、第2の貫通孔を有し、前記ウエハステージの前記凹部内にx−y方向に移動可能に収容された、可動プレートと、
を備えることを特徴とするウエハプローバ。
【請求項2】
ウエハに対して裏面解析を行うためのウエハプローバであって、
厚さ方向に貫通する第1の収容孔と、前記第1の収容孔の側面からx軸方向に延びる第1のシャフト穴とを有し、前記ウエハを支持する、ウエハステージと、
前記第1の収容孔に収容され、前記ウエハを支持する、可動プレートと、
を備え、
前記可動プレートは、
前記第1のシャフト穴に勘合する第1のシャフト部と、側面からy軸方向に延びる第2のシャフト穴が設けられた第2の収容孔を有する第1の本体部とを有し、前記第1の収容孔にx軸方向に移動可能に収容された、x軸可動プレートと、
前記第2のシャフト穴に勘合する第2のシャフト部と、貫通孔が設けられた第2の本体部とを有し、前記第2の収容孔にy軸方向に移動可能に収容された、y軸可動プレートと、を備える、
ことを特徴とするウエハプローバ。
【請求項3】
前記可動プレートの上面にイマージョンオイルが塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハプローバ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のウエハプローバを用いる故障解析方法であって、
前記ウエハの裏面が前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上面に接するように、前記ウエハを前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上に載置し、
固浸レンズを先端に有するSILシステムと前記可動プレートを連動して移動させることにより、前記固浸レンズを前記チップにおける観測位置の直下に位置させ、
前記ウエハステージの上方に配置され、プローブ針が固定されたプローブカードを降下させることにより、前記チップ上の所定の電極パッドに前記プローブ針を接触させ、
前記SILシステムを上昇させることにより、前記ウエハの裏面に前記固浸レンズを密着させる、
ことを特徴とする故障解析方法。
【請求項5】
請求項3に記載のウエハプローバを用いる故障解析方法であって、
前記ウエハの裏面が前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上面に接するように、前記ウエハを前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上に載置し、
前記ウエハステージの上方に配置され、プローブ針が固定されたプローブカードを降下させることにより、前記チップ上の所定の電極パッドに前記プローブ針を接触させ、
前記プローブ針が前記所定の電極パッドに接触した状態で、固浸レンズを先端に有するSILシステムと前記可動プレートを連動して移動させることにより、前記固浸レンズを前記チップにおける観測位置の直下に位置させ、
前記SILシステムを上昇させることにより、前記ウエハの裏面に前記固浸レンズを密着させる、
ことを特徴とする故障解析方法。
【請求項6】
請求項1又は2のいずれかに記載のウエハプローバを用いる故障解析方法であって、
前記ウエハの裏面が前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上面に接するように、前記ウエハを前記ウエハステージ及び前記可動プレートの上に載置し、
固浸レンズを先端に有するSILシステムと前記可動プレートを連動して移動させることにより、前記固浸レンズを前記チップにおける観測位置の直下に位置させ、
その後、前記SILシステムを上昇させることにより、前記ウエハの裏面に前記固浸レンズを密着させ、
前記固浸レンズが前記ウエハの裏面に密着した状態において、プローブ針が固定されたプローブカードを降下させることにより、前記チップ上の所定の電極パッドに前記プローブ針を接触させる、
ことを特徴とする故障解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−108734(P2011−108734A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259894(P2009−259894)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】