説明

ウエハ加工用粘着シート、該シートを用いたマーキング方法およびマーキングチップの製造方法

【課題】 半導体ウエハの裏面側、あるいは保護膜付ウエハの保護膜側を粘着シートに貼付し、粘着シート側からレーザー光を照射してウエハ裏面あるいは保護膜にマーキングする際に、ウエハや保護膜の熱分解によって発生するガス状の汚染物質を効率よく除去し、マーキング適性の低下や、半導体装置の汚染を防止しうるウエハ加工用粘着シートを提供すること。
【解決手段】 本発明に係るウエハ加工用粘着シートは、貫通孔を有し、波長532nmおよび1064nmの光透過率が70%以上であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ加工用粘着シートに関し、さらに詳しくは、半導体ウエハに直接、あるいは保護膜を有するウエハの保護膜側にレーザー光を照射して、ウエハ裏面あるいは保護膜に印字処理を施し、印字された半導体チップ(以下、「マーキングチップ」と呼ぶことがある)を得る際に、ウエハを保持するために用いられるウエハ加工用粘着シートに関する。また、本発明は、該ウエハ加工用粘着シートを用いたマーキング方法およびマーキングチップの製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
近年、フェイスダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造法が行われている。この方法では、バンプ等の電極が形成された回路面を有するチップを実装する際に、チップの回路面側をリードフレーム等のチップ搭載部に接合している。したがって、回路が形成されていないチップ裏面側が露出する構造となる。
【0003】
このため、裏面側には、チップを保護するために、硬質の有機膜(以下「保護膜」とよぶ)が形成される場合が多い。保護膜には、当該チップの品番等を表示するため、印字が施される。マーキング法としては、保護膜にレーザー光を照射し、保護膜表面を削り取り、文字等を形成するレーザーマーキング法が一般化している。
【0004】
レーザー光によりマーキングを行う際には、マーキングされる面が平坦でなければレーザー光の焦点が合わず、良好なマーキング性を得られない。しかし、ウエハが薄型化した結果、ウエハが反り、レーザー光源と印字部との距離が一定せずレーザー光の集光が困難になり、マーキング性が低下し、印字を行えないという不具合が発生している。ウエハの反りの原因は、ウエハ自体が薄くなったことに加え、保護膜形成時に膜が収縮し、収縮力によってウエハが変形することなどが考えられている。
【0005】
保護膜が形成されたウエハの反りを矯正するため、特許文献1(特開2006−140348号公報)には、保護膜付ウエハに粘着シートを貼付し、該粘着シートの外周部をリングフレームで固定した上で、レーザー光によりマーキングするプロセスが提案されている。この方法では、保護膜付ウエハの保護膜側を粘着シートに貼付し、粘着シート側からレーザー光を照射してマーキングしている。この方法によれば、ウエハの反りが粘着シートにより矯正されるため、ウエハが平坦に維持され、レーザー光を用いたマーキング性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−140348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の方法では、保護膜付ウエハの保護膜側を粘着シートに貼付し、粘着シート側からレーザー光を照射してマーキングしている。レーザー光は粘着シートを透過し、レーザー光が保護膜表面を削り取ることでマーキングされる。この際、保護膜表面からは保護膜の熱分解物が放出され、その一部がガスとなる。
【0008】
発生したガスは、保護膜と粘着シートとの界面に溜まり、再度固体化してレーザーマーキングされた保護膜表面に汚染物質として残着することがある。このような汚染物質は得られる半導体装置の機能を損なうおそれがある。
【0009】
また、上記のような不具合は、半導体ウエハの裏面側を粘着シートに貼付し、粘着シート側からウエハ裏面に直接レーザー光を照射してマーキングを行う際にも発生し、この場合には、シリコンなどのウエハ材料が昇華してガスとなり、これがウエハに再付着してウエハの性能を損なうことがある。
【0010】
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハの裏面側、あるいは保護膜付ウエハの保護膜側を粘着シートに貼付し、粘着シート側からレーザー光を照射してウエハ裏面あるいは保護膜にマーキングする際に、ウエハや保護膜の熱分解によって発生するガス状の汚染物質を効率よく除去し、マーキング適性の低下や、半導体装置の汚染を防止しうるウエハ加工用粘着シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、下記の要旨を含む。
(1)貫通孔を有し、波長532nmおよび1064nmの光透過率が70%以上であるウエハ加工用粘着シート。
【0012】
(2)貫通孔の開口径が5〜500μmである(1)に記載のウエハ加工用粘着シート。
【0013】
(3)貫通孔の間隔が0.5〜5mmである(1)または(2)に記載のウエハ加工用粘着シート。
【0014】
(4)貫通孔による開口率が0.0001%〜5%である(1)〜(3)の何れかに記載のウエハ加工用粘着シート。
【0015】
(5)リングフレームに張設された(1)〜(4)の何れかに記載のウエハ加工用粘着シートに、表面に回路を有し裏面に保護膜を有する半導体ウエハが、該保護膜を介して剥離可能に貼付された積層状態において、
該ウエハ加工用粘着シート側から波長532nmまたは1064nmのレーザー光を照射し、保護膜にマーキングする、マーキング方法。
【0016】
(6)リングフレームに張設された(1)〜(4)の何れかに記載のウエハ加工用粘着シートに、表面に回路を有する半導体ウエハの裏面側が剥離可能に貼付された積層状態において、
該ウエハ加工用粘着シート側から波長532nmまたは1064nmのレーザー光を照射し、ウエハ裏面にマーキングする、マーキング方法。
【0017】
(7)上記(5)または(6)に記載のマーキング方法にてマーキングした後、
ウエハを回路毎にダイシングする工程を含む、マーキングチップの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、ウエハ加工用粘着シートに貼付された半導体ウエハに対して、該粘着シート越しにレーザー光を照射してマーキングを行う際に発生するガス成分等の汚染物質を、該粘着シートに設けられた貫通孔を通して除去している。したがって、ウエハと粘着シートとの界面にガス成分等が溜まることがなく、汚染物質が除去されるため、得られる半導体装置の汚染も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態であるウエハ加工用粘着シートの概略断面図である。
【図2】マーキング工程を示す概略断面図である。
【発明の実施の形態】
【0020】
以下、本発明に係るウエハ加工用粘着シート、該シートを用いたマーキング方法およびマーキングチップの製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
<ウエハ加工用粘着シート>
本発明に係るウエハ加工用粘着シートは、貫通孔を有し、所定の光透過性を有する。ウエハ加工用粘着シートのその他の構造は特に限定はされず、ウエハのマーキング処理を施す工程においてウエハに密着し、ウエハを平坦に維持できる程度の接着力を有するものであればよい。ウエハ加工用粘着シートは、単層のシート状粘着剤であってもよく、また基材上に粘着剤層が設けられた粘着シートであってもよい。図1には、基材1上に粘着剤層2が設けられたウエハ加工用粘着シート10の概略断面図を示した。
【0022】
本発明に係るウエハ加工用粘着シートは、後述する利用方法のように、ウエハの裏面に直接、または裏面上に形成された保護膜にマーキングを行う際に、ウエハの反りを矯正するマーキング時のウエハ矯正用シートとして用い、またはその前後に行われるダイシングでのウエハの固定を行うためのダイシングシートをも兼ねた、マーキング時のウエハ矯正用およびダイシングシートとして用いることができる。
【0023】
本発明に係るウエハ加工用粘着シート10は、図1に示したように、シートの粘着剤層の露出面から基材の背面までを貫通する多数の貫通孔3が形成されてなることを特徴としている。貫通孔3が形成されていることで、シート10がガス透過性を有する。
【0024】
各貫通孔3の開口径は、粘着剤層の表面側で、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜200μm、特に好ましくは30〜100μmの範囲にある。開口径が小さすぎる場合には、ガスの放出性が低くなり、レーザーマーキング時に発生するガス成分がウエハと粘着シートとの界面に溜まりウエハ汚染物質が残ることがある。また、開口径が大きすぎる場合には、後工程において、ウエハを回路毎にダイシングする際に、熱や切削屑を除去するためにウエハに噴霧される切削水が、ウエハと粘着シート10との界面に浸入し、ウエハ裏面を汚損するおそれがある。
【0025】
また、隣接する貫通孔同士の間隔(ピッチ)は、貫通孔間の平均距離で、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは1〜3mmの範囲にある。ピッチが広すぎると十分なガス放出性が得られないことがあり、またピッチが狭すぎると、開口径が大きい場合に、次に述べる開口率が過度に高くなってしまい、粘着シート10の強度が低下し、使用中などに破損するおそれがある。
【0026】
また、粘着シート10の開口率は、粘着剤層の表面側で、好ましくは0.0001%〜5%、さらに好ましくは0.001〜2.5%、特に好ましくは0.01〜0.5%の範囲にある。開口率が低すぎると十分なガス放出性が得られないことがあり、また開口率が高すぎると切削水によりウエハ裏面が汚損されるおそれがあり、また、粘着シート10の強度が低下し、使用中などに破損するおそれがある。なお、開口率は、粘着シート10の粘着剤層表面における単位面積あたりに存在する貫通孔の総面積から算出される。
【0027】
また、本発明に係るウエハ加工用粘着シートは、波長532nmおよび1064nmの光透過率が70%以上であり、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80〜100%である。レーザーマーキング時には、一般に、波長532nmまたは1064nmのレーザー光が用いられる。本発明のウエハ加工用粘着シートは、レーザーマーキングに用いられるレーザー光の透過性が高いため、粘着シート側からレーザー光を照射しても粘着シートによるレーザー光の減衰が少なく、十分な強度のレーザー光でマーキングを行うことができる。
【0028】
上記のような高い光透過性は、ウエハ加工用粘着シート10の厚みや材質を適宜に選択することで達成でき、たとえば図1に示したような基材1と粘着剤層2とからなる粘着シート10においては、基材1および粘着剤層2の厚みや材質を適宜に選択すればよい。粘着剤層は、適度な再剥離性があればその種類は特定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系などの汎用粘着剤から形成されてもよい。また、マーキング工程の後に、ウエハ加工用粘着シートからマーキングチップが剥離しやすくなるように、粘着剤層は紫外線照射により粘着力が激減する紫外線硬化型粘着剤からなることが好ましい。粘着剤層も単層であっても複層であってもよい。一般に粘着剤層は、厚みが3〜150μm程度であり、より好ましくは、5〜100μmである。このような汎用粘着剤や紫外線硬化型粘着剤の材質の多くは紫外・可視領域の光線の透過性が高く、光線の透過性以外の観点から適宜選択できる。
【0029】
基材1としては、波長532nmおよび1064nmの光に対する粘着シートの光透過率が70%以上であれば特に限定はされないが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等の透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。
【0030】
基材1の厚みは、好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm、特に好ましくは30〜150μmの範囲にある。基材1の厚みが厚すぎる場合には、光透過率が低くなる場合がある。
【0031】
ウエハ加工用粘着シート10は、上記のような基材および粘着剤層からなる粘着シートに貫通孔を形成して得られる。加工対象となる粘着シートは、たとえばダイシングシートとして市販されている各種の粘着シートが用いられうる。しかしながら、市販ダイシングシートにおいては、一般に視認性を向上するため基材に青色顔料が配合されていることが多い。青色に着色された樹脂フィルムは、波長532nmまたは1064nmの光に対する吸収性が高く、マーキング性が損なわれることがある。したがって、市販のダイシングシートを穿孔して本発明のウエハ加工用粘着シートを得る場合には、顔料を実質的に含有しないダイシングシートから選択することが好ましい。
【0032】
貫通孔の穿孔方法は特に限定はされず、たとえば細い針を突き刺して貫通孔を形成してもよいが、レーザー穿孔加工によることが簡便であり好ましい。この場合に使用するレーザーは、基材1および粘着剤層2を熱分解しうる程度の強度および波長を有する必要がある。したがって、たとえば波長10.6μm程度の赤外線レーザーが好ましく用いられる。
【0033】
<粘着シートの利用方法>
次に、本発明のウエハ加工用粘着シートの利用方法について、該シートを用いたマーキング方法およびマーキングチップの製造方法を例にとり図2を参照しながら説明する。
【0034】
本発明のマーキング方法では、表面に回路を有する半導体ウエハ11を準備する。回路面には、バンプと呼ばれる凸状電極が設けられていてもよい。また、回路面とは反対面(裏面)には保護膜12が形成されていてもよい。本発明のマーキング方法では、上記のような半導体ウエハ11の裏面に直接、または保護膜12が形成されている場合には保護膜12に、レーザー光を照射してマーキングを行う。
【0035】
保護膜12の形成方法は特に限定はされず、たとえば半導体ウエハ11の裏面にエポキシ樹脂やエネルギー線硬化性樹脂などの硬化性樹脂を塗工し、これを硬化して保護膜を形成してもよく、またたとえば特許文献1(特開2006−140348号公報)、特開2010−135621号公報、特開2008−248129号公報、特開2008−248128号公報、特開2008−072108号公報、特開2007−261035号公報、特開2004−214288号公報、特開2002−280329等に記載の方法に準じて保護膜を得ることができる。
【0036】
次いで、リングフレーム13に張設されたウエハ加工用粘着シート10に、半導体ウエハ11が剥離可能に貼付された積層状態とする。この積層状態を実現する方法は特に限定はされず、ウエハ加工用粘着シート10の外周部をリングフレーム13に固定した後に、ウエハ加工用粘着シート10の中央部に半導体ウエハ11を貼付してもよく、またウエハ加工用粘着シート10に半導体ウエハ11を貼付した後に、ウエハ加工用粘着シート10の外周部をリングフレーム13に固定してもよい。
【0037】
なお、半導体ウエハ11をウエハ加工用粘着シート10に貼付する際には、裏面に保護膜12を有する半導体ウエハの場合には、保護膜側を粘着シート10に貼付し、保護膜が形成されていない半導体ウエハの場合には、裏面側を直接半導体ウエハ10に貼付する。図2には、保護膜12を有する半導体ウエハ11がウエハ加工用粘着シート10に貼付された状態を示した。
【0038】
本発明のマーキング方法では、このような状態で、ウエハ加工用粘着シート10の下面側に配置されたレーザー光源14からのレーザー光照射によってウエハ11の下面または保護膜12の下面を削り取ることでウエハ裏面または保護膜2に品番等をマーキングする。なお、マーキングは、後にダイシングにより切断分離されることとなる領域ごとに区分されたウエハ11表面の各回路パターンの位置に対応したパターンでウエハ裏面に形成される。マーキングを施すためのレーザー光としては、YAGレーザーなどを用いることができ、YAGレーザーは、通常波長1064nmの赤外線や波長532nmの緑色光として発せられる。
【0039】
元々反りのあるウエハであっても、外周がリングフレームに固定されたウエハ加工用粘着シート10にウエハを保持することでそのような反りは矯正されウエハは平坦に維持される。したがって、レーザー光の焦点は正確に定まり、精度よくマーキングを行える。
【0040】
その後、半導体ウエハ11を回路毎にダイシングしてマーキングされた半導体チップが得られる。ダイシングは、保護膜を有するウエハの場合には、ウエハ11と保護膜12を共に切断するように行われる。その後、各チップはコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、裏面または保護膜に印字されたマーキングチップが得られる。
【0041】
なお、ダイシングを行うタイミングは、特に限定されず、マーキングを行う前後のいずれでもよい。マーキング後にダイシングを行うと、ダイシングによるチップのずれによるマーキングの精度の低下が起こらず好ましい。また、上記した各工程の間にさらに別の工程を行うこともできる。いずれの工程であっても、ウエハは反ることなく平坦に保持されているので、各工程作業、工程間の移動、搬送、収納など全ての操作を効率よく円滑に行うことができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
なお、以下の実施例および比較例において、各種評価は次の方法で行った。
【0044】
<物性評価>
(光透過率)
実施例および比較例で作成した粘着シートを、UV-visスペクトル検査装置(島津製作所製)を用いて532nmおよび1064nmの波長における光透過率を測定した。
【0045】
(ガス抜け性)
レーザーマーキング後に、ウエハと粘着シートとの界面にレーザー照射により発生したガスが滞留しているか否かを目視にて確認した。
【0046】
(水侵入)
ダイシング後、ウエハと粘着シートとの界面において、切削水の侵入の有無を目視にて確認した。
【0047】
(視認性)
チップをピックアップした後、マーキングされた文字をCCDカメラにて、読み取りが可能か否かを確認した。
【0048】
(残渣物確認)
チップをピックアップした後、顕微鏡によりチップおよび保護膜層上での残渣物の有無を確認した。
【0049】
<保護膜付ウエハの作成>
また、実施例および比較例で使用した保護膜付ウエハは以下のように準備した。
(保護膜形成用シート)
Adwill LC2850(25)(リンテック株式会社製)を用いた。
【0050】
(半導体ウエハ)
6インチ未研磨シリコンウエハを研削装置(ディスコ社製、DFG−840)を
用いて#2000で150μm厚とした半導体ウエハを用いた。
(保護膜の形成)
保護膜形成用シートを、半導体ウエハの研磨面に貼付し、半導体ウエハの外周に沿って切断し、シートの外周部を除去した。次いで、保護膜形成層を有するウエハを130℃で二時間加熱し、保護膜形成層を硬化して、保護膜付ウエハを得た。
【0051】
(実施例1)
<粘着シート>
粘着シートとして、ダイシングテープであるAdwill D−676(リンテック株式会社製)を用いた。
【0052】
<粘着シートの穿孔>
炭酸ガス(CO)レーザー加工装置(松下電器製、YB−HCS03T04、波長10.6μm)を用いて、上記で作製した粘着シートの粘着剤層側からレーザーを入射し、粘着剤面において開口径45μm、間隔2mmとなるように貫通孔を形成し、貫通孔を有するウエハ加工用粘着シートを作成した。光透過率の測定結果を表1に示す。
【0053】
<レーザーマーキング>
上記で作成したウエハ加工用粘着シートを、半導体ウエハ(保護膜なし)の研磨面に貼付し、粘着シートの外周部をリングフレームで固定した。次いで、YAGレーザーマーカー(日立建機ファインテック(株)製、LM5000、レーザー波長:532nm)によりウエハ加工用粘着シート側からレーザー光を照射し、縦400μm、横200μmの文字をマーキングした。ガス抜け性の評価結果を表2に示す。
【0054】
<マーキングチップの製造>
ダイシング装置(DISCO社製,DFD-651)を使用して8mm×8mmのチップサイズにダイシングした。水浸入の評価結果を表2に示す。次いで、紫外線照射装置(Adwill RAD−2000m/8、リンテック株式会社製)を用いて、紫外線照射(230mW/cm、190mJ/cm)を行った。次いで、ダイボンダー(キャノンマシナリー社製、BESTEM-D02)を用いてチップをピックアップし、マーキングチップを得た。視認性、残渣物の有無の評価結果を表2に示す。
【0055】
(実施例2)
半導体ウエハ(保護膜なし)に代えて、保護膜付半導体ウエハを用い、ウエハの保護膜側をウエハ加工用粘着シートに貼付し、保護膜にマーキングした他は、実施例1と同様とした。結果を表1および表2に示す。
【0056】
(実施例3)
ウエハ加工用粘着シートに形成する貫通孔の開口径を3μmとした以外は実施例1と同様とした。結果を表1および表2に示す。
【0057】
(実施例4)
ウエハ加工用粘着シートに形成する貫通孔の開口径を600μmとした以外は実施例1と同様とした。結果を表1および表2に示す。
【0058】
(実施例5)
ウエハ加工用粘着シートに形成する貫通孔の間隔を6.0mmとした以外は実施例1と同様とした。結果を表1および表2に示す。
【0059】
(比較例1)
粘着シートを、厚さ100μmの青色顔料含有ポリオレフィン系フィルム上に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル25重量部、アクリル酸ブチル40重量部、酢酸ビニル30重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル3重量部、アクリル酸0.5重量部を共重合してなる重量平均分子量80万の共重合体100重量部に対して、有機多価イソシアナート架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)固形分6.5重量部を添加したアクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ10μm)を設けたものに変更し、ダイシング後に紫外線照射を行わなかった以外は、実施例1と同様とした。結果を表1および表2に示す。
【0060】
(比較例2)
ウエハ加工用粘着シートに貫通孔を設けず、そのまま使用した以外は実施例1と同様とした。結果を表1および表2に示す。
【表1】

【表2】

【符号の説明】
【0061】
10:ウエハ加工用粘着シート
1:基材
2:粘着剤層
3:貫通孔
11:半導体ウエハ
12:保護膜
13:リングフレーム
14:レーザー光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有し、波長532nmおよび1064nmの光透過率が70%以上であるウエハ加工用粘着シート。
【請求項2】
貫通孔の開口径が5〜500μmである請求項1に記載のウエハ加工用粘着シート。
【請求項3】
貫通孔の間隔が0.5〜5mmである請求項1または2に記載のウエハ加工用粘着シート。
【請求項4】
貫通孔による開口率が0.0001%〜5%である請求項1〜3の何れかに記載のウエハ加工用粘着シート。
【請求項5】
リングフレームに張設された請求項1〜4の何れかに記載のウエハ加工用粘着シートに、表面に回路を有し裏面に保護膜を有する半導体ウエハが、該保護膜を介して剥離可能に貼付された積層状態において、
該ウエハ加工用粘着シート側から波長532nmまたは1064nmのレーザー光を照射し、保護膜にマーキングする、マーキング方法。
【請求項6】
リングフレームに張設された請求項1〜4の何れかに記載のウエハ加工用粘着シートに、表面に回路を有する半導体ウエハの裏面側が剥離可能に貼付された積層状態において、
該ウエハ加工用粘着シート側から波長532nmまたは1064nmのレーザー光を照射し、ウエハ裏面にマーキングする、マーキング方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のマーキング方法にてマーキングした後、
ウエハを回路毎にダイシングする工程を含む、マーキングチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−169441(P2012−169441A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28838(P2011−28838)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】