説明

ウレタン発泡シートの製造方法

【課題】厚みが薄い場合においても低密度且つ高発泡倍率で柔らかいウレタン発泡シートを、厚み精度よく製造することが可能なウレタン発泡シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】分子末端にNCO基を有するウレタンプレポリマーを含有する組成物を基材上に塗布してシート状の塗膜2を形成すること、前記塗膜に穴あき離型性基材1を接触させること、前記穴あき離型基材1が接触した状態で前記塗膜2を水蒸気に晒すことにより、前記塗膜2を発泡及び硬化させることを含むウレタン発泡シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、ビデオ機器、パソコンなど各種OA機器、薄型テレビ等において、衝撃吸収、防塵、遮光などを目的としたシール材として好適に用いられる軟質のウレタン発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やOA機器は小型・薄型化が求められ、そのため液晶用ガラス基板は例えば0.5mm以下の厚みになり、それに伴い液晶表示画面の周辺を低応力で固定するシール材は、薄くかつ低応力でもずれないで固定でき、更に長期間の復元性(つまり低い圧縮永久歪)に優れることが求められる。しかも防塵性、遮光性が求められるためシール材はセルが微細である必要がある。このような用途に適用されるシール材としては軟質乃至半硬質のウレタン発泡体を薄くスライスした製品が使われてきたが、比較的薄い厚さにおいて高度な厚み精度を要求されてくるに従いニーズに対応できなくなってきた。このようなニーズに対応するため以下のような技術が検討されている。
【0003】
特許文献1及び2には、良好なシール性と低比誘電率とを達成するために、所定範囲の密度を有するポリウレタン系シール部材において圧縮荷重値を特定範囲とする技術や(特許文献1を参照)、所定温度における硬度を特定範囲とする技術が開示されている(特許文献2を参照)。
【0004】
しかしながら、これら技術においてシール材は、メカニカルフロス法という、ウレタン原料に空気や窒素を機械的に混合し泡立った液体を薄く塗布し硬化させる方法を用いて製造されている。この技術は、機械的に泡立たせるために特殊な主原料、整泡剤を使い、更に機械的に泡立たせてから薄く塗布するまでゲル化や増粘しない様に特殊な遅延触媒を用いるなど特殊な製法になっている。予め泡立ったウレタン原液を塗布するため少ない塗布量の製品が出来ることは事実であるが、この混合されたウレタン原液は短時間で増粘するため、連続塗工中に増粘により塗工厚みの変化が生じやすい。そのため、製品の厚みが薄くなればなるほど、触媒量を低減せざるを得ず、実際に得られる製品としては発泡倍率の低い製品すなわち、密度の高いものになってしまい、硬い製品になる傾向がある。
【0005】
更に、薄い発泡シートを製造する技術として以下の技術が開示されている。
すなわち、例えば特許文献3には、発泡ポリウレタンエラストマーシートの製造方法として、末端にイソシアナート基を有するプレポリマーと2−ピロリドンを混合して、該混合物をシート状に形成した後、該シート状混合物に水蒸気を接触させ、発泡及び硬化させる方法が開示されている。この方法ではプレポリマーを含む非反応性一液性原液であるため薄塗りに適したコンマコーターなどが適用できる可能性があり、結果的に薄い発泡体を製造できる可能性があるが、本発明者が実施例の再現を行ったところ、実際に得られたシートは発泡倍率の低いもので、圧縮応力も高く、製品表面の外観も悪いものであった。
【0006】
また、特許文献4には、ポリウレタン発泡体シートの製造法として、加熱溶融させた分子末端にイソシアナート基を有するホットメルトウレタンプレポリマーと活性水素原子含有基を少なくとも2個有する化合物とを混合させて得られた液状混合物を基材上にシート状に塗布し、得られたシート状物の前記液状混合物に水蒸気を接触させて前記液状混合物を水発泡させる方法が開示されている。この方法は、分子量を高めた常温個体のウレタンプレポリマーを溶融して水蒸気に接触させる事で、発泡時の泡の安定性を高めたものであるが、逆に発泡倍率が低くなり結果的に圧縮応力が高くなってしまう欠点がある。また、ホットメルト状原料を混合し塗布する際に使用される装置は高温度で作動させるもので高価な装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−227392号公報
【特許文献2】特開2006−124578号公報
【特許文献3】特開平11−246695号公報
【特許文献4】特開2004−216880号公報
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法において、ウレタン塗膜に穴あき離型性基材が接触している状態の一形態を示す概略断面図。
【図2】本発明の製造方法において、ウレタン塗膜に穴あき離型性基材が接触している状態の他の形態を示す概略断面図。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑み、厚みが薄い場合においても低密度且つ高発泡倍率で柔らかいウレタン発泡シートを、厚み精度よく製造することが可能なウレタン発泡シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、更に、セルが細かく且つ復元性に優れ、外観も良好なウレタン発泡体シートを製造することが可能なウレタン発泡シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば、以下の通りである。
〔1〕 分子末端にNCO基を有するウレタンプレポリマーを含有する組成物を基材上に塗布してシート状の塗膜を形成すること、前記塗膜に穴あき離型性基材を接触させること、前記穴あき離型基材が接触した状態で前記塗膜を水蒸気に晒すことにより、前記塗膜を発泡及び硬化させることを含むウレタン発泡シートの製造方法。
【0012】
〔2〕 前記穴あき離型性基材が有する穴の直径が0.01〜2.0mmの範囲である〔1〕に記載の方法。
【0013】
〔3〕 前記穴あき離型性基材が、オレフィン系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、シリコーン系樹脂フィルム及び離型処理されたポリエステルフィルムから選択される樹脂フィルムに穴を形成したもの、織物、又はネット状物のいずれかである〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
【0014】
〔4〕 前記ウレタンプレポリマーが、官能基数が2を超えるポリオールとイソシアネートとの反応により得られたプレポリマーである〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
【0015】
〔5〕 前記ポリオールの官能基数が2.2〜3.0であり、且つ水酸基価が84〜168である〔4〕に記載の方法。
【0016】
〔6〕 前記ポリイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートである〔4〕又は〔5〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、厚みが薄い場合においても低密度且つ高発泡倍率で柔らかいウレタン発泡シートを提供することが可能となった。また、本発明により得られるウレタン発泡シートは、セルが細かく且つ復元性にも優れ、更に外観も良好であるため、防塵性、遮光性、復元耐久性等が求められるシール材として様々な用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について以下に詳細に説明する。
本発明のウレタン発泡シートの製造方法は、分子末端にNCO基を有するウレタンプレポリマーを含有する組成物を基材上に塗布してシート状の塗膜を形成すること、前記塗膜に穴あき離型性基材を接触させること、及び、前記穴あき離型性基材が接触した状態で前記塗膜を水蒸気に晒すことにより発泡及び硬化させることを含む。
本発明の方法においては、ウレタンプレポリマーを含有する組成物(以下において、「ウレタン原液」ともいう。)の発泡及び硬化が、シート状に成形された状態で水蒸気に晒されることにより進行するが、その際、穴あき離型性基材を介して水蒸気に晒されることを特徴とする。
【0019】
本発明で用いる穴あき離型性基材には、単に水蒸気を透過させる程度の透湿性を有する基材は含まれず、所定の穴を有することを必要とする。所定の穴を有さず単に透湿性を有する離型性基材を用いた場合は、シートの幅方向及び厚さ方向の中心部まで透湿しにくいため生産性高く発泡及び硬化が不十分となり、所望とするウレタン発泡体は得られない。
【0020】
穴あき離型性基材は、所定の穴を有する離型性基材(離型処理を施した基材を含む)であればよく、所定の穴は基材の構造に起因するものであってもよいし、穴を有しない基材に所定の穴を形成したものであってもよい。例えば、穴あき樹脂フィルム、繊維織物、ネット状物などが挙げられる。
【0021】
該樹脂フィルムとしては、例えば、離型性素材であるオレフィン系樹脂フィルム(ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン等)、フッ素系樹脂フィルム、及びシリコーン系樹脂フィルムや、シリコーン樹脂等により離型処理を施されたポリエステルフィルムなどが挙げられ、本発明においてはこれらに所定の穴を形成したものが好適に用いられる。離型性樹脂フィルムは、例えば離型性を有する紙に比べて以下の点で好ましい。すなわち、離型紙が湿度に晒されると、膨張・収縮を起こし、製品がカールしたり剥れたりする欠点があるのに対し、離型性樹脂フィルムは吸湿しても寸法に変化が起きないため、紙の欠点が解消できる。
【0022】
織物としては、ポリプロピレンやポリエチレン、フッ素樹脂などの離型性素材を用いて形成された織物や、ポリエステルやナイロン繊維などの非離型素材を用いて形成された織物にシリコーン樹脂など離型剤を含浸したものなどが挙げられ、所定の穴を有するこれらの織物が好適に用いられる。
ネット状物としては、例えば、オレフィン系樹脂フィルム又は無機フィラーを配合したオレフィン系樹脂フィルムを延伸してネット状にしたもの、それらフィルムに傷をつけた後延伸する事でネット状にしたものが好適に用いられる。
【0023】
穴の大きさは、適宜決定することができる。一態様において、直径0.01〜2.0mmの範囲であり、更に好ましくは直径0.05〜0.5mmの範囲である。穴がこの大きさであっても離型基材に対するウレタン原液の濡れ性が悪いため、ウレタン原液は穴から漏れることはない。
また、隣り合う穴と穴の端部距離(ピッチ)も適宜決定することができる。一態様において、均一な発泡性の観点から、ピッチは1.4mm以下であることが好ましく、更に好ましくは1.2mm以下である。下限値は特に限定されるものではないが、例えば、0.01mm以上とする。ピッチが1.4mmより大きいと穴と穴の間(穴の空いていないところ)に空隙の生じた発泡製品が得られる場合がある。
【0024】
また、穴の配列も適宜設定することが出来るが、例えば千鳥格子のようにピッチが等間隔のものが穴と穴の間(穴の空いていないところ)に空隙が生じにくく好ましい。
【0025】
上述したように、本発明は、ウレタン原液からなるシート状塗膜(以下において、「ウレタン塗膜」ともいう)に穴あき離型性基材を接触させた状態で水蒸気に晒すことを特徴とする。ここで、ウレタン塗膜に穴あき離型性基材を接触させるとは、一形態において、図1に示すように、連続的に形成されたウレタン塗膜2に、連続的に形成されたシート状の穴あき離型性基材1を積層することを意味する。このように、ウレタン塗膜を水蒸気に直接晒さずに、穴あき離型性基材を介して水蒸気に晒すことにより、塗膜スキン部におけるセルの消泡が抑制される結果、発泡性が高く低密度で柔らかいポリウレタン発泡シートが得られる。また、本発明において水蒸気に晒された際のウレタン塗膜の発泡及び硬化は、穴あき離型性基材を用いないで水蒸気に晒した場合と比較してほぼ同じ速さで進行する。
【0026】
本発明においてウレタン塗膜の水蒸気への曝露は、例えば、図1に示されたウレタン塗膜を含む積層体を、水蒸気を含む恒温高湿槽又は過熱水蒸気槽に通すことにより行うことができる。例えば、温度40〜120℃、湿度30〜95%に設定されたそれら槽の中を1〜5分通過させる。その後、80〜120℃にて乾燥工程及び後キュアーを行ってもよい。
【0027】
ウレタン塗膜の発泡及び硬化後において穴あき離型性基材は容易に剥離することができる。穴あき離型性基材を剥離した後のウレタン発泡シートは、その表面に自己スキンが生成している。このため液晶パネル材など被シール面との摩擦係数が上昇し滑りにくくなり、低応力でシールしてもずれることが生じにくい。
【0028】
また、ウレタン塗膜に穴あき離型性基材を接触させる他の形態としては、例えば図2に概略的に示されたベルトプレス5に、ウレタン塗膜が形成された連続基体を通す形態が挙げられる。すなわち、ベルトプレス5において、水蒸気を放出する機能(図示せず)を具備するベルトロール6、6´に穴あき離型性基材7が巻回されている。連続基材10上にウレタン塗膜9が積層された積層体8を、水蒸気が放出されているベルトプレス5にX方向に通すことにより、ウレタン塗膜に穴あき離型性基材を接触させた状態でウレタン塗膜が水蒸気に晒される。
【0029】
本発明において塗膜形成に用いられるウレタン原液は、分子末端にNCO基を有するウレタンプレポリマーを含有してなる。このウレタン原液においては、含有するウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリオールは予めポリイソシアナートと反応しており、また発泡剤である水も含有されていない。すなわち、このウレタン原液はこのままでは非反応性であり、所謂一液性ウレタン原液である。したがって、増粘することなく厚み精度の良い連続塗工が可能である。
分子末端にNCO基(以下において、「末端NCO基」ともいう)を有するウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアナートとの反応により得られる。
本発明で用い得るポリオールとしては、例えば、水酸基価が30〜200のポリオキシアルキレン系、ポリエステル系、ダイマー酸エステル系、ポリカプロラクトン系などが挙げられる。また、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、ひまし油系などの特殊ポリオールも強度向上の目的や、耐水性向上の目的で使用し得る。これらのポリオールの官能基数は、プレポリマーの合成のし易さと得られる発泡ウレタンの物理特性から2を超えることが好ましく、2を超え且つ3.5未満であることが更に好ましい。特に、水酸基価84〜168で、官能基数2.2〜3.0のポリオールから得られたプレポリマーは末端NCO%が高く好ましい。更に当該プレポリマーは、水蒸気に接触して発泡させた時に消泡しにくいため発泡倍率が高く、また低反発フォームとなるため、圧縮時において低応力で、圧縮永久歪とベタツキの低さから好ましく使用できる。更に、これらポリオールを用いたウレタン発泡シール材は無処理のポリエステルフィルムと接着しやすいため、基材であるポリエステルフィルムと一体のウレタン発泡シール材を得るのに好ましい。
【0030】
ここで、本発明における官能基数は一分子内の水酸基の数であるが、ポリオールを混合した場合の官能基数は、それぞれのポリオールのモル分率に官能基数を掛けて合計した値である。
ポリオールとしてはポリオキシアルキレン系が、分子量分布が狭く官能基数の分布も狭いので、これを用いることで末端NCO基のプレポリマーの合成が容易であり好ましい。具体的には、例えば、水、アルコール類、アミン類等を開始剤にプロピレンオキサイドやエチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどを付加重合したものである。アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アニリンなど挙げられる。更に、プロピレンオキサイドと無水フタル酸との交互共重合体なども挙げられる。また、ビニル重合体含有のポリオキシアルキレン系ポリオールも挙げられる。
【0031】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2−メチル1.3プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのグリコールや、トリオールとアジピン酸、セバシン酸、フタル酸などのジカルボン酸との縮合反応により得られるものが挙げられる。ダイマー酸系ポリオールとはジカルボン酸としてダイマー酸を用いたポリエステル系ポリオールである。また、カプロラクトン系ポリオールとはカプロラクトンをグリコールやトリオールに付加したポリエステル系ポリオールのことである。
【0032】
本発明で用い得るポリイソシアナートとしては、ポリウレタンフォーム製造のために用いられる公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアナート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)などが挙げられ、更にこれらのカルボジイミド変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、2量体変性体、3両体変性体なども使用し得る。末端NCO基のプレポリマーの合成のし易さと、得られる発泡ウレタンの物性面から、TDI及びMDIが好ましい。特に、MDIは発泡硬化スピードが速く、従って触媒添加量が少なくてすみ、更に、製品表面のベタツキの無さから最も好ましい。
【0033】
末端NCO基のプレポリマーの合成法は、通常の方法で行なう。ポリオールのOH当量に対するポリイソシアナートのNCO当量比、NCO当量/OH当量=1.8〜3.0が好ましい。1.8以下ではプレポリマーの粘度が高くなり、空気中の水分によりゲル化しやすくなる。3.0を超えると水蒸気発泡により得られる発泡ウレタンの製品中に割れが生じたり圧縮永久歪が悪化する。2.0〜2.6が最も好ましい。発泡シール材の硬さを上げる為プレポリマーの合成にはポリオールに水を0.5%程度添加する事も出来る。プレポリマーは常温で液状である事が、原料の混合のしやすさや、比較的低温で放置できるので配合できる触媒の量も自由度が高く(高温では触媒の種類と量が限定される)塗工装置の温調を低く出来るなどが好ましい点が多い。プレポリマーのNCO%は3〜11%程度が発泡倍率を高く出来、柔らかい発泡シール材を提供できるので好ましい。
【0034】
本発明では、ウレタン原液の調製において、ウレタンフォームの製造に通常用いられている整泡剤を使用することができる。これらを用いると発泡体の泡が微細かつ連続気泡になり、少ない塗布量で厚みの厚い製品が得られるので使用することが好ましい。整泡剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンを単独で、あるいはポリジメチルシロキサンとポリエーテルのブロックコーポリマー、グラフトコーポリマーなどのシリコーン化合物が好ましく使用し得る。また、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物のようなフッ素系化合物も使用し得る。
【0035】
本発明では、ウレタン原液の調製において、ウレタンフォームの製造に通常用いられる触媒を用いることができる。アミン系触媒や金属系触媒を使用すると泡を微細化することができ、少ない塗布量で厚みの厚い製品が得られ、且つ発泡硬化時間も短縮できるメリットがある。アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン(TEDA)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMC)、N−メチルジシクロヘキシルアミン(MDC)、ジメチルアミノエチルモルフォリン(XDM)を好ましく使用し得る。特にDMC、MDC、XDMがプレポリマーに配合しても増粘しにくいので好ましい。金属系触媒としては、スタナスオクテート(SO)、ジブチルチンジラウレート(DBT)、ジオクチルチンジラウレート(DOT)などの錫系触媒や、イソプロピルチタネートや、ビスマス系が例示でき、これらは、プレポリマーに添加しても増粘が少ないので、長時間の薄物連続塗工が可能で、反応速度が速く且つ、得られる水蒸気発泡製品の物性が優秀で、製品表面のベタツキも抑えるのに効果がある。これら触媒は、末端NCO基のプレポリマーに配合しても、長時間乾燥状態であれば、高温度、例えば60〜80℃に加熱しても増粘しないため、長時間の連続塗工が可能であり、触媒量を多く配合できるので生産スピードも高められる。
【0036】
ウレタン原液の基材上への塗布方法としては、公知の方法により行うことができるが、膜厚が薄い塗膜を得るためには、コンマコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ダイスコーターなどの塗布装置を用いて、離型紙や離型フィルム、樹脂フィルム、紙などの基材上に塗布することが好ましい。これらコーターによると塗布量として、例えば30g/m〜300g/m程度の薄い塗膜形成が可能である。このように薄く形成されたウレタン塗膜は水蒸気に晒されて発泡硬化する。
【0037】
ウレタン塗膜が形成される基材としては、例えばシリコーンにより離型処理されたポリエステルフィルムを用いてもよいし、無処理又は易接着処理されたポリエステルフィルムやオレフィンフィルムを用いてフィルム一体のウレタン発泡シール材を得てもよい。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において「部」は質量部を示す。
【0039】
<ウレタンプレポリマーの合成>
ポリプロピレントリオール〔T1500〕(官能基数:3、OH価:112、商品名:MN1500;三井化学社製)50部、ポリプロピレングリコール〔D1000〕 (官能基数2、OH価 112、商品名:Diol1000;三井化学社製)50部と、トルエンジイソシアナート〔T80〕(三井化学社製)37.66部とを混合し(NCO/OH当量比=2.2)、80℃で3時間加熱反応させ、NCO%が7.3%の末端NCO基のプレポリマー〔TD1250T〕を合成した。
【0040】
同様の方法で、表1に示す他のプレポリマーを合成した。
なお、表1に示すプレポリマーの品番において、先頭のT又はDは使用したポリオールを示し、それぞれポリプロピレントリオール及びジオールを表す。中間の数字はポリオールの分子量を表す。末端のTとMは使用したポリイソシアナートを示し、それぞれT80、MDI(ジフェニルメタンジイソシアナート)を表す。
また、polyolAMにおける末端のMはMDIを表す。polyolAについては表1の注記に記載した。
【表1】

【0041】
<離型性基材>
各実施例において使用した離型性基材を表2に示す。
【表2】

【0042】
(実施例1)
プレポリマー〔TD1250T〕100部、整泡剤SF2938F(東レ・ダウコーニング社製)1.0部、トリエチレンジアミンのトリクレジルホスフェートの10%溶液(COと略す)を0.3部、オクタン酸第一スズ(SOと略す)0.1部を配合したウレタン原液を60℃に温調し、200μm厚みのバーコーターを用い、75μmの離型剤処理されたポリエステルフィルム上に塗布した。その上から穴あき離型性基材Aを被せてウレタン塗膜シートを製造した。これを70℃、湿度90%の恒温高湿槽に5分間投入し、ウレタン塗膜を発泡・硬化させた。その後、離型性基材を剥がしウレタン発泡シール材を得た。このシール材を更に100℃で10分乾燥した。得られたウレタン発泡シール材の物性の評価結果を表3に示した。
【0043】
(実施例2〜実施例11、実施例14)
プレポリマーの種類、整泡剤の種類と添加部数、離型性基材を表3に記載のものに変えた以外は実施例1と同様な方法でウレタン発泡シール材を作製した。物性の評価結果を同表に示した。
【0044】
(実施例12)、(実施例13)
実施例12、13は離型処理したポリエステルフィルムの代わりに、離型処理していないpetフィルムを用いてフィルム一体のウレタン発泡シートを作製した。物性の評価結果を表3に示した。
【0045】
(比較例1)
実施例1の穴あき透湿離型基材Aの代わりに、25μm厚みのポリメチルペンテンフィルムB(商品名:TPXフィルム)を用いた以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。物性の評価結果を表3に示した。
【0046】
TPXフィルムは透湿性が高いことで知られているが、穴あきフィルムに比べるとはるかに発泡・硬化スピードが遅く、シート中心部は透湿せず発泡硬化しなかった。
【0047】
(比較例2)〜 (比較例5)
比較例2〜5は、穴あき離型基材を使用しないこと以外は、それぞれ実施例1〜4と同様の条件でシートを作製した。物性の評価結果を表3に示した。
【0048】
(比較例6)
特開平11−246695号公報に記載の発明の追試である。2−ピロリドンを配合後水蒸気に暴露したが、5分経っても硬化せず、10分暴露し硬化させた。
【0049】
〔物性の測定方法及び評価方法〕
〔1〕塗布量
ウレタン発泡シートの10cm角の質量と面積より求めた。(単位:g/m
〔2〕フォーム厚み
ウレタン発泡シートの厚み(単位:mm)
〔3〕密度
ウレタン発泡シートの10cm角の質量を面積と厚みで除して求めた。
【0050】
(単位:g/cm
〔4〕発泡倍率
÷Vより求めた。
【0051】
ここで、Vは未硬化ウレタン原液の密度、Vは発泡体の密度である。
【0052】
〔5〕セル数
発泡体表面を50倍の顕微鏡で観察し、3.3mmあたりのセルの数を数える。
【0053】
(単位:個/3.3mm)
〔6〕50%圧縮応力(Hs)
30mm×30mmの発泡薄物製品を圧縮速度1mm/分で圧縮し、
厚みの50%の応力を測定する。(単位:Mpa)
〔7〕50%圧縮永久歪(set)
10mm×10mmのウレタン発泡シートを、set試験前の厚みの50%に圧縮固定し、70℃のオーブン中に22時間放置する。その後開放し、解放後30分の厚みを測定し下記式で算出する。
【0054】
圧縮永久歪=(試験前厚み−試験後厚み)÷試験前厚み×100 (単位:%)
〔8〕外観
自己スキンが存在しツヤがあるものを「優」、自己スキンが無くツヤがないものを「劣」として評価した。また空隙がなく、且つスキン部の消泡がないものを「均一」と評価した。
【表3−1】

【0055】
【表3−2】

【0056】
【表3−3】

【符号の説明】
【0057】
1・・・穴あき離型基材
2・・・ウレタン塗膜
3・・・基材
4・・・穴
5・・・ベルトプレス
6、6´・・・ベルトロール
7・・・穴あき離型部材
8・・・積層体
9・・・ウレタン塗膜
10・・・基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端にNCO基を有するウレタンプレポリマーを含有する組成物を基材上に塗布してシート状の塗膜を形成すること、前記塗膜に穴あき離型性基材を接触させること、前記穴あき離型基材が接触した状態で前記塗膜を水蒸気に晒すことにより、前記塗膜を発泡及び硬化させることを含むウレタン発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記穴あき離型性基材が有する穴の直径が0.01〜2.0mmの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記穴あき離型性基材が、オレフィン系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、シリコーン系樹脂フィルム及び離型処理されたポリエステルフィルムから選択される樹脂フィルムに穴を形成したもの、織物、又はネット状物のいずれかである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウレタンプレポリマーが、官能基数が2を超えるポリオールとイソシアネートとの反応により得られたプレポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオールの官能基数が2.2〜3.0であり、且つ水酸基価が84〜168である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートである請求項4又は5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−135910(P2012−135910A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288856(P2010−288856)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】