説明

エネルギー入力ビームをコリメートするための方法及び装置

【課題】エネルギー入力ビームをコリメートするための方法及び装置
【解決手段】特に対象物(1)の検査領域(2)を撮像するための照射方法であって、少なくとも1つのエネルギー入力ビーム源(210)によって、複数の個々のエネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を備える少なくとも1つのエネルギー入力ビーム(3)を生成することと、複数の投影方向に沿って、少なくとも1つのエネルギー入力ビーム(3)によって検査領域(2)を照射することとの各工程を備える方法において、このエネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)は、貫通穴を有し、エネルギー入力遮蔽材でできている少なくとも1つのビームマスク(211)によって形成されることを特徴とする方法。さらに、対象物を照射するまたは撮像するための撮像方法および装置が記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年12月30日出願の米国特許仮出願第60/640,426号、2004年12月30日出願の欧州特許出願第04031043.5号、および2005年5月23日出願の欧州特許出願第05011136.8号の利益を主張する。
【0002】
(政府助成の記載)
本発明は、全米科学財団(米国)により与えられた認可番号第DMS−02011669号における政府の助成をもってなされたものである。アメリカ合衆国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、撮像目的のためにエネルギー入力ビームを成形するための方法に関し、特に、少なくとも1つのエネルギー入力ビームによって対象物の検査領域を撮像するための照射方法に関する。さらに、本発明は、この照射方法に基づいて検査領域を撮像するための方法および装置に関し、特に、断層撮像を行うための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
試料の非破壊検査は、材料科学、医学的検査、考古学、建築技術、保安に関する技術などの様々な技術分野において、重要な目的である。例えばコンピュータ断層撮像(CT)によって試料のイメージを得るための1つの手法は、夫々異なる投影方向からX線を対象物平面を透過させて照射し、続いて、夫々異なる方向において測定される減弱データを基に対象物平面を再構成することに基づく。X線源210’によってなされる従来のファンビーム5’による検査領域2’の照射は、図9に概略図で例示されている。ファンビーム5’は、X線源210’の放出特性に従って成形される電磁場の連続分布を有している。検出器310’によって測定される減弱データの全体は、ラドン空間におけるいわゆるラドンデータの点から記述され得る。
【0005】
今日知られている従来の再構成方法の最も関連したものは、反復的再構成に基づく方法、またはいわゆるフィルタ補正逆投影法に基づく方法として総括することができる。反復的再構成方法は、極めて長い演算時間の点において本質的な欠点を有する。他方、フィルタ補正逆投影法は、再構成に含まれる補間工程が、空間周波数の増加と共に増加する傾向さえ有する誤差およびアーチファクトを生じさせるという、一般的な欠点を有する。フィルタ補正逆投影法のさらなる問題は、画像データがそこから再構成されなければならないラドンデータの離散化に関連する。最適なフィルタ補正逆投影による再構成を得るためには、投影される照射線と検出器の検出素子とを正確に一致させることが必要であろう。しかし一般に、実際はそうではない。この理由のため、フィルタ補正逆投影アルゴリズムの手段によるラドンデータの再構成に起因する不確実さまたは平滑作用が生じる。
【0006】
T.Bortfeldらは、投影方向に沿った複数の投影から二次元画像を再構成するための、いわゆるチェビシェフドメインフィルタ補正逆投影(CD−FBP)アルゴリズムを記述した(“Phys.Med.Biol.”,Vol.44,1999,p.1105−1120)。このCD−FBPアルゴリズムによれば、投影は分解として表され、この分解が上記のフィルタ補正逆投影再構成を受ける。投影は、例えばファンビーム形状によって測定され、互いに対して均等な角間隔を有する個別の投影線に従った減弱値が測定される。ファンビームの異なる投影方向で測定される個別の投影線は、画像再構成のために使用される平行な投影を提供するように再分類されることができる。CD−FBPアルゴリズムは、実際には実現されていない。このアルゴリズムは、理想的なファンビーム形状を仮定しており、それが実際には利用できないためである。したがって、T.Bortfeldらのアルゴリズムは、従来のフィルタ補正逆投影と同様の補間工程を必要とする。さらに、CD−FBPアルゴリズムは本質的に離散的であるため、従来の放射線源の連続放射特性への適合性に欠ける。最後に、CD−FBPアルゴリズムは、再構成画像にアーチファクトが発生するという点で、本質的な欠点を有する。
【0007】
上記の欠点は、従来のCT撮像だけでなくラドンデータに関連する全ての利用可能な再構成方法に関係するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の従来の技術の欠点を回避し、かつ特に、改良された撮像のために使用される、対象物を照射するための改良された方法を提供することである。特に、本発明の目的は、使用される画像再構成アルゴリズムに、放射線源をよりよく適合させた照射方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、検査領域をよりよく撮像でき、特にアーチファクトが低減された、改良された撮像装置を提供することである。
【0009】
上記目的は、本願請求項1、14、および26の特徴を備える方法または装置により達成される。本発明の有利な実施形態および適用例は、従属クレームにおいて定義される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の一般的態様によれば、照射方法が提供され、少なくとも1つのエネルギー入力ビームが、複数の個々のエネルギー入力ビーム構成要素を提供するための少なくとも1つのビームマスクによって成形される。このビームマスクは、所定の数のビーム構成要素を提供し、かつこのビーム構成要素の分布を形成する、貫通穴を有するエネルギー入力遮蔽材でできている。このマスク(格子)の遮蔽効果によって形成される個々のエネルギー入力ビーム構成要素は、対象物の検査領域を撮像するための複数の投影ラインに沿って対象物を透過する方向に向けられる。
【0011】
第一次連続放射特性を有するエネルギー入力ビームは、エネルギー入力ビーム源を使用することにより、ファンビームまたはコーンビームとして生成される。続いて、このエネルギー入力ビームは、ビームマスクによって成形される。エネルギー入力ビーム構成要素を形成するためにエネルギー入力ビームを成形することの本質的な利点は、離散的な照射特性が生来的に提供されるという事実によって与えられる。この照射特性を、検査領域を撮像するために使用される画像再構成アルゴリズムに適合させることができる。この適合は、所定のビームマスクを選択し、かつ/またはエネルギー入力ビーム源に対してビームマスクを調整するだけで得られる。ビームマスクは、貫通穴の分布および寸法が固定された所定の形状を有する。さらに、このエネルギー入力(例えば線量)を本質的に低減させることができる。
【0012】
ファンまたはコーンビームは、投影方向が検査領域を横切る少なくとも1つの共通平面の方向に、あるいは、螺旋投影データを得るために、検査領域を横切るさまざまな斜面の方向に、設定されるように調整される。
【0013】
本明細書において用いられる用語「検査領域」(ROI)は、一般に、検査における対象物または検査における対象物の一部を指す。ROIは、二次元または三次元の実体として記述することができる。本明細書において用いられる用語「投影方向」は、一般に、ROIを透過するエネルギー入力の直線的進路を指す。この投影方向は、使用される座標系に対する角度によって定義することができる。ファン、即ちコーンビームを考慮する場合、用語「投影方向」は、ファン、即ちコーンビームの、中心の(即ち、主要な)ビーム構成要素の向きを示す。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、エネルギー入力ビーム源は、対象物に対して移動可能であり、ビームマスクおよびエネルギー入力ビーム源は、互いに接続されている。この場合、ビームマスクはソースマスクと呼ばれる。投影方向は、エネルギー入力ビーム源およびソースマスクを検査領域に対して移動させることによって選択され得る。特に、エネルギー入力ビーム源をビームマスクと共に対象物の周りで回転させることにより、投影方向が連続的に設定される、実施形態が好ましい。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、複数のビームマスクが、ROIに対して所定の位置に設けられる。この場合、ビームマスクはフレームマスクと呼ばれる。このビームマスクは、ROIの周りに分散して配置される。この場合、投影方向は、少なくとも1つのそれぞれのフレームマスクにおいてエネルギー入力ビーム源の少なくとも1つを動作させることによって選択することができる。例えば、複数のエネルギー入力ビーム源を、ビームマスクの分布に従って分散して配置することができる。あるいは、1つのエネルギー入力ビーム源を、それぞれのビームマスクに逐次移動させる。
【0016】
離散的な再構成アルゴリズムに適合させるため、エネルギー入力ビーム構成要素は、等しい角度間隔で形成される。マスクの貫通穴を通過する投影ラインは、等しい弧長間隔で、線源の周りの球面を横切る。これを目的として、ビームマスクは平面の形状または湾曲した形状(例えば円筒状)を有することができる。本発明の特に好ましい実施形態に従って、全て等しい寸法を有する貫通穴を有する平面ビームマスクが使用される、または異なる寸法を有する貫通穴を有する湾曲したビームマスクが使用される場合、特定の投影方向に対して平行なエネルギー入力ビーム構成要素が重なり合うことのない、検査領域の完全な照射が得られる。この場合、画像再構成におけるアーチファクトが低減され得る。あるいは、全て等しい寸法を有する貫通穴を有する平面ビームマスク、または、異なる寸法を有する貫通穴を有する湾曲したビームマスクを使用することができる。
【0017】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、エネルギー入力ビームは、エネルギー入力ビーム構成要素の形成に関してだけでなく、エネルギー入力ビームの外側境界部分に関しても成形される。これを目的として、本発明の撮像方法は、さらに、エネルギー入力ビームのビーム角を設定する工程を備える。本実施形態は、検査される特定の対象物に(おそらくはビームマスクと組み合わせて)ビーム源を適合させる点に関して特に利点を有する。小さな対象物に照射するために、ビーム角を小さくし、全体の照射線量を低減することができる。
【0018】
好ましくは、ビーム角は、絞りまたはシャッタとして働く開口部により設定される。有利には、この開口部は単純な構造を有する。さらに、例えば従来のCT装置のような従来の撮像装置を本発明に適合させるために、当該撮像装置にこの開口部を単に取り付けることができる。この開口部のさらなる利点は、ビーム角を調整するために、2自由度が利用できることから生じる。第1の代替例によれば、ビーム角は、開口部の直径を設定することによって調整される。これにより、検査中の対象物に対し、開口部を柔軟に適合させることが可能となる。第2の代替例によれば、ビーム角は、開口部とビーム源との間の距離を設定することにより、調整される。この距離が減少するにつれ、ビーム角は増加する。両方の代替例を組み合わせることが可能である。
【0019】
本発明の第2の一般的態様によれば、ROIを撮像するための撮像方法が提供され、上記第1の一般的態様に従った方法を使用してROIが照射され、かつ複数の投影方向に対応する複数の投影関数が決定される。それぞれの投影関数は、現在の投影方向に平行であるエネルギー入力ビーム構成要素によって測定される減弱値を備える。これらの測定された減弱値は、画像再構成手順として知られている手順を受ける。
【0020】
測定された減弱値は、投影関数を表す離散的な投影プロファイルを提供し、各離散的な投影プロファイルの投影値は、投影方向が同じである所定のエネルギー入力ビーム構成要素に対応する減弱値を備えている。
【0021】
本発明は、データの取扱に関してさらなる本質的な利点を提供する。ビームマスクでエネルギー入力ビーム構成要素の断面積を調整することにより、減弱値を、検出装置の検出素子の所定のグループによって測定することができる。検出素子のこれらのグループは、全てのビーム構成要素に対して所定の、例えば等しい寸法を有する。これらの所定のグループのみが寸法変更なしに読出される。これにより、処理されるデータ量が低減される。好ましくは、減弱値は、少なくとも1つの1次元の直線の検出器または少なくとも1つの2次元の平面の検出器によって測定される。
【0022】
有利なことに、本発明の撮像方法は、様々な画像再構成手順によって実施することができる。好ましくは、画像再構成手順が、欧州特許出願第04031043.5号に記載されるように使用され、この優先権は、本明細書において主張される。この方法では、画像関数は、複数の所定の投影方向に対応して測定される複数の投影関数を備えるラドンデータから決定される。画像関数は、投影関数の値を乗じた多項式の和として決定される。実際の適用例では、この画像再構成は、互いに対して等しい角度を有する離散的な照射ビーム構成要素に対応する減弱値の測定に基づく。あるいは、この画像再構成手順は、T.Bortfeldら(上記参照)によってさらに詳細に記述されるように、減弱値の分解を備えてもよい。
【0023】
この撮像が、例えばCT、PET、SPECTなどの医用撮像における多くの適用例のような様々な適用例において使用され得ることは、本発明の本質的な利点である。しかし、光断層撮像、工業用テストまたは生物学的研究のための多次元撮像などのようなさらに多くの適用例も考えられる。好ましくは、画像関数は、X線コンピュータ断層撮像(CT)装置、PET撮像装置、SPECT撮像装置、または、中性子ベースの透過検出システムで測定されるラドンデータから決定される。検査中の対象物には、例えば生物学的有機体またはその一部、流体組成物、固形材、工作物、および/または保安理由のために検査されることになる対象物が含まれる。
【0024】
本発明の第3の一般的態様によれば、対象物の検査領域を撮像するための撮像装置が提供され、この撮像装置は、貫通穴を有し、エネルギー入力遮蔽材でできている少なくとも1つのビームマスクを含む。このビームマスクは、個々の離散的なエネルギー入力ビーム構成要素を形成するために適合される。さらに、この撮像装置は、複数の投影方向に対応する投影関数を測定するための測定装置を備える。この測定装置は、投影関数を測定するための少なくとも1つのエネルギー入力ビーム源および少なくとも1つの検出装置を含む。このエネルギー入力ビーム源は、ビームマスクによって成形されることになる少なくとも1つのエネルギー入力ビームを作成するために配置される。さらに、この撮像装置は測定される投影関数に基づいて画像関数を再構成するための再構成回路を含む。
【0025】
好ましくは、ファンビームまたはコーンビーム源を作成ように適合されるエネルギー入力ビーム源は、放射線源キャリア上に移動可能に配置される。放射線源キャリアは、リング形状を有し、エネルギー入力ビーム源が、対象物のまわりの例えば円上または螺旋経路に沿って回転することができるようになっているものが特に好ましい。
【0026】
この検出装置は、複数の所定の投影方向に対応するエネルギー入力の減弱を表す減弱値を検出するための検出素子でできた少なくとも1つの検出器配列を備える。
【0027】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、撮像装置は、ソースマスクとエネルギー入力ビーム源との間の距離を調整するための少なくとも1つの第1の調整装置と、ビーム角開口部の直径および/または開口部とエネルギー入力ビーム源との間の距離を調整するための第2の調整装置とを備える。
【0028】
この少なくとも1つのビームマスクが、エネルギー入力ビーム源と共に移動可能な、特に、ファンまたはコーンビーム源と共に移動可能な1つのソースマスクを備える場合、マスクに対して線源を調整することに関する利点が得られる。好ましくは、このソースマスクは、エネルギー入力ビーム源に対して着脱可能に接続されており、これにより、単にソースマスクを変えるだけで撮像装置を特定の適用例に適合させることができる。
【0029】
エネルギー入力ビーム源のエネルギー分布関数を成形するための複数のフレームマスクがビームマスク(複数可)として提供される場合、投影方向を設定することに関する利点が得られる。好ましくは、このフレームマスクは、共通の放射線源キャリア上に等しい弧長で固定される。例えば、この放射線源キャリアはフレームマスクを含むリング形状の遮蔽体である。有利なことに、エネルギー入力ビーム源は、フレームマスクの位置以外の位置で、リング形状の遮蔽体で遮蔽され得る。したがって、本質的な線量の低減を得ることが可能である。
【0030】
フレームマスクを使用する本発明のさらなる変形例によれば、検出装置は、複数の所定の投影方向に対応するエネルギー入力の減弱を表す減弱値を検出するための複数の固定フレーム検出器を備える。この場合、フレーム検出器は、放射線源キャリア上の所定の位置に固定することができる。好ましくは、フレーム検出器は、フレームマスクに隣接して位置づけられる。
【0031】
本発明の様々な好ましい適用例によれば、測定装置には、X線コンピュータ断層撮像(CT)装置、超音波断層撮像装置、PET撮像装置、光断層撮像装置、ガンマ線撮像装置、SPECT撮像装置、または、中性子ベースの透過検出システムが含まれる。
【0032】
本発明の第4の一般的態様によれば、貫通穴を有し、エネルギー入力遮蔽材でできているビームマスクを備える。エネルギー入力遮蔽材には、例えばタングステン、鉛または銅が含まれる。タングステンは、高度な吸収(遮蔽効果)および高度な機械的安定性の点で好まれる。このビームマスクは、対象物の検査領域を照射するためのエネルギー入力ビーム構成要素を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明のさらなる詳細および利点を、添付の図面に関して以下に記述する。
【0034】
本発明を、コンピュータ断層撮像における適用例に関連して以下に記述する。この場合、本発明による撮像装置は、エネルギー入力ビームがX線ビームである、現在の医用CTシステムの主な構成要素を含む。本発明は、前述した他の適用例と類似した方法で実施することができることを強調しておく。さらに、以下の好ましい実施形態の説明は、主にビームマスクによるエネルギービーム成形の工程に関する。CTまたは他の撮像装置の詳細ならびに本発明を実施するために使用される画像再構成の詳細は、従来の技術からまたは欧州特許出願第04031043.5号により知られているため、記述しない。
【0035】
投影データを収集するために、CTシステムにおいて、離散化された(discretized)ファン、即ちコーンビーム3を、ROI2を有する対象物1を透過するように向けている様子が、図1に概略図で示されている。このCTシステム(完全に例示されていないさらなる構成要素については、図8を参照のこと)は、リング形状の放射線源キャリア(CTリング)を有しており、システム全体が例えば0.3ないし0.5秒以内に完全に1回転し終えることができるように、放射線源210(X線管)および検出装置310が、放射線源キャリア220内を回転する。
【0036】
ビームマスクとしては、放射線源210に着脱可能に固定されているソースマスク211が使用される。このソースマスク211は、放射線源210のエネルギー分布関数を成形するよう適合される。この目的のため、ソースマスク211は、複数の貫通穴を有し、エネルギー入力遮蔽材でできている。貫通穴を夫々通過する離散的な個々のX線ビーム構成要素3.1、3.2、3.3、・・・は、上述の画像再構成方法のために形成されるが、この画像再構成方法は、X線管の形状および検出器の形状の結果生じる全ての可能な線構成要素を、再構成のために必要とするわけではない。
【0037】
ファンビーム3は、様々な投影方向でROI2を透過するように向けられる。投影方向は、撮像条件に関して、所定の数の平行なX線ビーム構成要素が達成されるような方法で調整される。各ファンビーム3は、ファンビーム構成要素3.1、3.2、3.3、・・・の束を表す。各ファンビーム構成要素3.1、3.2、3.3、・・・は、直線のペンシルビームとみなすことができる。1つのファンビームのうちのこれらのペンシルビームは、それぞれ同じ投影方向を有していないが、画像再構成のための離散的な投影プロファイルは、ビーム3の異なる投影方向に属するビーム構成要素を再分類することによって、決定される。その結果、平行なビーム構成要素のグループが得られる。
【0038】
検出装置310は、CTリングの半径に適合させた基準球面に従って成形された複数の検出素子の線形または2次元配列である。あるいは、複数の検出素子を直線(1次元)または平面(2次元)状に配置された検出装置を使用してもよい。検出装置310は、例えば1ないし64列の検出素子(複数列の場合、マルチスライスCTと呼ばれる)、および1列につき約700ないし1000個の検出素子からなる。一般の検出素子は、例えば0.5ないし1.0mmの寸法を有する。各1回の回転で、データは、約1000回読取られる。対象物1(例えば患者)は、連続的に移動している患者テーブルを用いることにより、CTリングの中を移動する。この方法によれば、収集されるデータがスパイラルネット上に位置しているため、いわゆる螺旋状あるいはスパイラルのCTデータセットを集めることができる。
【0039】
本発明に従って使用される様々なソースマスクのさらなる詳細を、図2ないし5に示す。ソースマスク211は、貫通穴213を有し、例えばタングステンでできている遮蔽板212を備える。ソースマスクは、放射線源(例えばX線管)に固定され、特に例えばクリップ要素またはスナップ接続のような着脱可能な固定要素によって、放射線源210の出力窓215のフレーム214に固定される。
【0040】
遮蔽板212は、円筒形状(図2、4)または、平面形状(図3、5)または、撮像装置の幾何学的な条件に適合した他のいかなる適切な形状であってもよい。円筒状遮蔽板212は、CTリングの軸に対して平行な円筒の軸により向きを定められる。遮蔽板212の厚さは、例えば100μmないし5mmである。貫通穴213は、放射線源210から出る投影ラインが所定の位置で検出素子に沿って円を横切るように配置され、特に、これらの投影ラインが等しい弧長間隔で配置され得るように、配置される。撮像条件によっては、貫通穴213は、直線または面積分布を伴って配置される。
【0041】
貫通穴213の数および寸法は、撮像方法の特定の適用例に依存して選択される。CT撮像のためには、例えば、約1mmないし100mmの範囲の領域に、200個の貫通穴213が設けられる。したがって、離散的なファンビーム3は、例えば200個の直線のファンビーム構成要素を備える。放射線および投影の数を増加することによって、より高度な解像度が達成されることが可能であり、すなわちこれは、アーチファクトなしに再構成され得るピクセル数が増加することを意味する。
【0042】
図2および3によれば、貫通穴213の寸法は、全てのビーム構成要素が同じ断面積を有し、すなわち、円筒状マスクの全ての貫通穴が同じ寸法を有する(例えば10ないし200μm)ように選択され、一方で、平面のソースマスクビーム211の中央部分の貫通穴は、平面のソースマスクビーム211の外側境界部分の貫通穴よりも小さくなるように、選択されている。他方、図4および5によれば、貫通穴213の寸法は、ビーム構成要素が検出器領域において異なる断面積を有するように、選択されている。好ましくは、断面積は、例えば100μmないし4mmまでの範囲で選択される。特に、これらの断面積は、ある特定の検出器で得ることができる検出器の解像度に依存して設定される。最大の断面積は、ビーム3の中心部において提供され、一方、最小の断面積は、ビーム3の境界部分で提供される。
【0043】
図6は、ソースマスク211を備える放射線源210とビーム角開口部216とを組み合わせた実施形態を示す概略図である。調整可能なキャリア217は、構成要素211および216のうちの少なくとも1つを保持するために、出力窓215のフレーム214の上に配置されている。一般に、調整可能なキャリア217は、少なくとも1つの調整装置としてとして働く。ビーム角開口部216は、中央の穴を有する遮蔽板でできている。この直径および/またはビーム角開口部216と放射線源210の放射線エミッタ210.1との間の垂直距離は、ファンビーム3のビーム角αを画定するための調整可能なキャリア217で調整することができる。ソースマスク211は、上記に概説したように、ビーム構成要素を画定するために、成形される。ソースマスク211と放射線エミッタ210.1との間の距離は、必要な撮像解像度を得るために変動され得る。調整可能なキャリア217は、手動で、または、例えば圧電駆動装置によって電気的に、操作することができる。
【0044】
上記で例示されるマスクによって生成される離散的なファンビーム3によれば、対応する投影ラインに沿った減弱を検出する検出装置の検出素子からの信号が、放射線源と検出装置との特定の位置においてのみ読出される。読出し位置は、リング形状の放射線源キャリア上にある弧長位置であり、これらの位置は、同じ投影方向を有する平行なファンビーム構成要素を選択する条件を満たしている。
【0045】
検査中の対象物の放射線または粒子被曝を低減するために、検査中の対象物へのエネルギー入力(例えば放射)は、上記の読出し位置のみに向けることが好ましい。すなわち検出素子信号は、放射線源と検出装置との組合せが適切な位置に向いたときにのみ読出される。放射線源が移動する間、この条件は、一定の時間の間および/または放射線源の一定の弧長位置に対して満たされる。読出し条件が満たされない限り、放射線源は、遮断または遮蔽されることが可能である。放射線源を遮蔽することは、放射条件を安定に保つために好ましい。
【0046】
この遮蔽機能は、複数の放射窓223を有し、図7において略図で例示されるリング形状の遮蔽体222によって実現され得る。このリング形状の遮蔽体222は、実際の適用例に対して、特に使用されるマスクに対して、遮蔽体222の幾何学的な特性を適合させるために、放射線源キャリア220に着脱可能に固定することができる。例えば、リング形状の遮蔽体222は、それぞれが6mmの直径を有する201個の放射窓223を備える(CTリングの直径は80cm)。
【0047】
リング形状の遮蔽体222の各放射窓223に、例としてのみ図7に例示されるフレームマスク224が設けられれば、上述のソースマスク211は、省略することができる。実際、線源およびフレームマスク211、224は、同時に設けられる必要はない。フレームマスク224は、図2ないし5に示されるソースマスクとして設計され得る。
【0048】
図8は、撮像装置100の実施形態を略図で例示したものである。撮像装置100は、エネルギー発生器200と検出装置300とを有する測定装置と、この測定装置200、300と接続されている再構成装置400とを備える。さらに、保持装置500が設けられており、これは、例えばCTシステムによって知られているようなキャリアテーブル、または測定装置内に検査中の対象物を配置するため、かつエネルギー発生器200および検出装置300に対して対象物の形状を調整するための他のいかなるキャリアまたは基板保持体であってもよい。先行技術の装置から本質的に知られているように、制御装置、表示装置、その他(図示せず)のようなさらなる構成要素が設けられる。
【0049】
エネルギー発生器200は、例えば放射線源キャリア220(例えばガイドレールまたはガントリ)上に配置されたソースマスクを有し、移動可能なX線管のような、放射線源210を備える。検出装置は、放射線源210に対し対向する関係で放射線源キャリア220上に移動可能に配置される、検出器配列310を備える。この構造によれば、ROIを透過する投影方向(図面の平面に対して平行)は、保持装置500の周りに構成要素210、310の組合せを回転させることによって設定され得る。
【0050】
放射線源キャリア220は、エネルギー発生器200および検出装置300が対象物の周りを回転できるようにする円として例示されている。変形例によれば、放射線源キャリアは、楕円形状または他の形状を有することができる。これは、検査されることになる対象物の形状に対する適合に関する利点を表しえるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によるビーム成形の実施形態の概略図である。
【図2】本発明によるビームマスクを使用した実施形態の概略図である。
【図3】本発明によるビームマスクを使用した実施形態の概略図である。
【図4】本発明によるビームマスクを使用した実施形態の概略図である。
【図5】本発明によるビームマスクを使用した実施形態の概略図である。
【図6】本発明によるビーム角開口部を有するビーム源とソースマスクとの組合せの概略図である。
【図7】検査中の対象物を透過する離散化されたファンビームのさらなる図である。
【図8】本発明による撮像装置の実施形態の概略図である。
【図9】検査領域を透過する従来のファンビームの照射を示す概略図である(先行技術)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に対象物(1)の検査領域(2)を撮像するための照射方法であって、
少なくとも1つのエネルギー入力ビーム源(210)によって、複数の個々のエネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を有する少なくとも1つのエネルギー入力ビーム(3)を発生させる工程と、
複数の投影方向に沿って、前記少なくとも1つのエネルギー入力ビーム(3)によって前記検査領域(2)を照射する工程とを具備する方法において、
前記エネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)は、複数の貫通穴(213)を有し、エネルギー入力遮蔽材でできている少なくとも1つのビームマスク(211)によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ビームマスク(211)は、前記エネルギー入力ビーム源(210)に取り付けられており、
前記複数の投影方向は、前記検査領域(2)に対して前記エネルギー入力ビーム源(210)を前記ビームマスク(211)と共に移動させることによって設定される、請求項1に記載の照射方法。
【請求項3】
複数のビームマスク(211)と前記検査領域(2)とは、互いに固定された位置を有し、かつ
前記複数の投影方向は、前記ビームマスク(211)のそれぞれにおいて前記少なくとも1つのエネルギー入力ビーム源を動作させることによって設定される、請求項1に記載の照射方法。
【請求項4】
前記エネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を形成する工程は、異なる寸法を有する貫通穴(213)を有する平面ビームマスク(211)を介して、または全て等しい寸法を有する貫通穴(213)を有する湾曲したビームマスク(211)を介して、前記エネルギー入力ビームを送出することを備える、前記全ての請求項のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項5】
前記エネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を形成する工程は、全て等しい寸法を有する貫通穴(213)を有する平面ビームマスク(211)を介して、または、異なる寸法を有する貫通穴(213)を有する湾曲したビームマスク(211)を介して、前記エネルギー入力ビームを送出することを備える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項6】
前記ビームマスク(211)と前記エネルギー入力ビーム源(210)との間の距離を調整する工程を更に具備する、前記全ての請求項のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項7】
前記エネルギー入力ビーム(3)のビーム角(α)を設定する工程を更に具備する、前記全ての請求項のいずれか1項に記載の照射方法。
【請求項8】
前記ビーム角(α)は、開口部(216)によって設定される、請求項7に記載の照射方法。
【請求項9】
前記開口部(216)の直径と、前記開口部(216)と前記エネルギー入力ビーム源(210)との間の距離とのの少なくとも一方を調整する工程を更に具備する、請求項8に記載の照射方法。
【請求項10】
対象物(1)の検査領域(2)を撮像するための撮像方法であって、
前記全ての請求項のいずれか1項に記載の方法で前記検査領域(2)を照射する工程と、
各々が現在の投影方向に対して平行であるエネルギー入力ビーム構成要素によって測定される減弱値を有する、複数の投影方向に対応する複数の投影関数を決定する工程と、
複数の前記減弱値に画像再構成手順を受けさせる工程とを具備する方法。
【請求項11】
前記減弱値は、検出装置(300)によって測定され、
この検出装置(300)の検出素子の所定のグループのみが、前記減弱値を得るために読出される、請求項10に記載の撮像方法。
【請求項12】
前記画像再構成手順は、
前記投影関数の値が乗じられる多項式の和として画像関数を決定すること、または、
前記減弱値を分解し、この分解がフィルタ補正逆投影再構成を受けること
を含む、請求項10または11に記載の撮像方法。
【請求項13】
X線コンピュータ断層撮像(CT)装置、
PET撮像装置、
光断層撮像、
SPECT撮像装置、または、
中性子ベースの透過検出システム
において測定されるラドンデータを提供するために、前記減弱値が測定される、請求項10ないし12のいずれか1項に記載の撮像方法。
【請求項14】
対象物(1)の検査領域(2)を撮像するための撮像装置(100)であって、
複数の投影方向に対応する投影関数を測定するための測定装置(200、300)を具備し、この測定装置(200、300)は、複数の個々のエネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を有する少なくとも1つのエネルギー入力ビーム(3)を形成するための少なくとも1つのエネルギー入力ビーム源(200、210)と、検出装置(300)とを含む撮像装置において、
貫通穴(213)を有するエネルギー入力遮蔽材でできており、前記エネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を形成するために適合される少なくとも1つのビームマスク(211)を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
前記ビームマスク(211)は、異なる寸法を有する貫通穴(213)を有する平面ビームマスク(211)、または、全て等しい寸法を有する貫通穴(213)を有する湾曲したソースマスク(211)を備える、請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記ビームマスク(211)は、全て等しい寸法を有する貫通穴(213)を有する平面ビームマスク(211)、または異なる寸法を有する貫通穴(213)を有する湾曲したソースマスク(211)を備える、請求項14に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記ビームマスク(211)と前記エネルギー入力ビーム源(200、210)との間の距離を調整するための第1の調整装置(217)を更に具備する、前記請求項14ないし16のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記エネルギー入力ビーム源(200、210)は、前記対象物(1)に対して移動可能である、前記請求項14ないし17のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記ビームマスクは、前記エネルギー入力ビーム源(210)と共に移動可能であるソースマスク(211)を備える、前記請求項14ないし18のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記ソースマスク(211)は、前記エネルギー入力ビーム源(200、210)に対して着脱可能である、請求項19に記載の撮像装置。
【請求項21】
前記エネルギー入力ビーム源(200、210)のエネルギー分布関数を成形するための複数のフレームマスク(224)を備え、これらフレームマスク(224)は、所定の複数の位置でビーム源キャリヤ(220)に固定されている、前記請求項14ないし18のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項22】
前記フレームマスク(224)の前記複数の位置は、互に等しい弧長だけ間隔をあけられている、請求項21に記載の撮像装置。
【請求項23】
前記ビーム源キャリヤ(220)は、前記フレームマスク(224)を含むリング形状の遮蔽体(222)を備え、このリング形状の遮蔽体(222)は、前記フレームマスク(224)の前記位置以外の位置で前記エネルギー入力ビーム源(200、210)を遮蔽する、請求項21または22に記載の撮像装置。
【請求項24】
前記検出装置(300)は、複数の所定の投影方向に対応するエネルギー入力の減弱を表す、減弱値を検出するための複数のフレームセンサー(320)を備え、これらフレームセンサー(320)は、所定の位置で前記ビーム源キャリヤ(220)に固定されている、前記請求項21ないし23のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項25】
前記測定装置(200、300)は、
X線コンピュータ断層撮像(CT)装置、
超音波断層撮像装置、
PET撮像装置、
光断層撮像、
ガンマ線撮像装置、
SPECT撮像装置、または、
中性子ベースの透過検出システム
を備える、前記請求項14ないし24のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項26】
対象物(1)の検査領域(2)を撮像するためのエネルギー入力ビーム構成要素(3.1、3.2、3.3、・・・)を形成するために適合されている貫通穴(213)を有する、エネルギー入力遮蔽材でできているビームマスク(211)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−526284(P2008−526284A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548730(P2007−548730)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013802
【国際公開番号】WO2006/069709
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(398061245)ヘルムホルツ・ツェントルム・ミュンヒェン・ドイチェス・フォルシュンクスツェントルム・フューア・ゲズントハイト・ウント・ウムベルト(ゲーエムベーハー) (19)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz Zentrum Muenchen Deutsches Forschungszentrum fuer Gesundheit und Umwelt (GmbH)
【出願人】(502418376)ザ ステイト オブ オレゴン, アクティング バイ アンド スルー ザ ステイト ボード オブ ハイヤー エデュケイション オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ オレゴン (5)
【Fターム(参考)】