説明

エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物

【課題】エピハロヒドリンを用いて製造されたエポキシ樹脂であって、全ハロゲン含有量が著しく低減された高純度エポキシ樹脂を提供する。
【解決手段】活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られ、全ハロゲン含有量が80重量ppm以下であるエポキシ樹脂。活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を、昇華法、蒸留法、晶析法、アルカリ洗浄法により精製する。各種絶縁材料や積層板などの電気、電子材料として有用な、ハロゲンの溶出の問題のない高信頼性のエポキシ樹脂硬化物を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ハロゲン含有量が著しく低減されたエポキシ樹脂と、このエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その優れた硬化物性や取り扱いの容易さから、接着、注型、封止、積層、成型、塗装等幅広い分野で使用されている。
【0003】
エポキシ樹脂の製造方法として、エピハロヒドリンを用いるエポキシ樹脂の製造方法は、最も一般的なエポキシ樹脂の製造方法として工業的に広く利用されている。しかし、この方法によって製造されたエポキシ樹脂は、各種の不純物を含んだ多成分の混合物である。それら不純物の大部分はエポキシ樹脂の原料から持ち込まれたり、製造工程で副反応により生成し、樹脂中に残存しているものである。
【0004】
しかし、特に電気及び電子部品等の封止や接着等に用いられるエポキシ樹脂は、含有される不純物が少ないことが望まれている。即ち、エポキシ樹脂中の不純物がその硬化物の電気絶縁性や耐熱性を低下させたり、リード線等を腐食させるなどの悪影響を及ぼすことが知られており、特にハロゲン化合物などのイオン性不純物は最も悪影響を与えるものであるとされ、従来、これをできるだけ排除する努力が続けられてきた。また、焼却処理時のダイオキシン等の有害物質の発生を低減するためにも、低ハロゲン化の要求は厳しくなってきている。
【0005】
イオン性不純物の少ないエポキシ樹脂としては3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルとエピハロヒドリンとの反応で得られるエポキシ樹脂(本明細書においては、「テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂」と称する)が知られている。テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂は、高耐熱性、低溶融粘度、低応力、高接着、低吸湿などの優れた特性によって半導体封止用樹脂として広く用いられているが、その全ハロゲン含有量としては通常1000重量ppm程度である。
【0006】
このため、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂のイオン性不純物を更に低減する試みがなされており、アルカリ洗浄を製造工程中に含むことにより、全ハロゲン含有量を300重量ppm程度としたもの(特許文献1)が開発され、工業的に生産されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−257445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、半導体集積回路の集積度が上がるにつれて、半導体封止用樹脂に求められる純度も益々高まっており、全ハロゲン含有量300重量ppm程度のエポキシ樹脂では要求に対応しきれないのが現状である。
【0009】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、エピハロヒドリンを用いて製造されたエポキシ樹脂であって、全ハロゲン含有量が著しく低減された高純度エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の条件を満たすエポキシ樹脂が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
[1] 活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られ、全ハロゲン含有量が80重量ppm以下であるエポキシ樹脂。
【0012】
[2] 活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を昇華する工程を経て製造された[1]に記載のエポキシ樹脂。
【0013】
[3] 活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を蒸留する工程を経て製造された[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂。
【0014】
[4] 活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を晶析する工程を経て製造された[1]ないし[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【0015】
[5] 活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂をアルカリ洗浄する工程を経て製造された[1]ないし[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【0016】
[6] [1]ないし[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤を含み、下記溶出試験で測定される無機ハロゲン濃度が10重量ppm以下であるエポキシ樹脂組成物。
【0017】
<溶出試験>
エポキシ樹脂組成物の硬化物を20メッシュパスに粉砕して得られた硬化粉に、10重量倍量の精製水を加え、180℃の条件下に20時間放置した後、水中の無機ハロゲン濃度を測定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各種絶縁材料や積層板などの電気、電子材料として信頼性のある高純度のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物が提供される。
全ハロゲン含有量が著しく低減された本発明のエポキシ樹脂によれば、極低ハロゲンかつ電気的性能に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
また、本発明のエポキシ樹脂は、2段法によるエポキシ樹脂製造の原料としても有用であり、極低ハロゲンかつ電気的性能に優れた高分子エポキシ樹脂を与える。
本発明のエポキシ樹脂は、また、半導体封止装置の材料として有用であり、半導体封止分野における封止材料の含有ハロゲン分に起因した電気的信頼性の低さの問題を解決することができる。
本発明のエポキシ樹脂は、また、不飽和基含有ポリカルボン酸類と組み合わせることで、プリント配線板向けソルダーレジスト用又は層間絶縁用として好適に利用することができ、これらの分野において使用されるエポキシ樹脂の含有ハロゲン分に起因した電気的信頼性の低さの問題を解決することができる。
本発明のエポキシ樹脂はまた、ダイボンディング材としても有用であり、この分野において使用されるエポキシ樹脂の含有ハロゲン分に起因した電気的信頼性の低さの問題を解決することができる。
本発明のエポキシ樹脂はまた、多層電気積層板やビルドアップ法等のプリント配線板用の材料としても有用であり、従来のエポキシ樹脂に含有されるハロゲン不純物を原因としたマイグレーションの問題等を解決することができる。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂は更にメタルコア積層板等の接着剤、アンダーフィル材などの電気・電子部品関連、その他、接着フィルム、ディスプレイ部材用の光学フィルム、保護フィルム、シーリングフィルムなどの分野においても有用であり、いずれの分野においても、エポキシ樹脂のハロゲン不純物を原因とする問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ビルドアップ法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
[エポキシ樹脂]
<活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応>
本発明のエポキシ樹脂は、活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂である。
【0024】
本発明に含まれるエポキシ樹脂としては、例えば以下の(1)〜(5)などの、活性水素化合物であるフェノール系化合物、アルコール系化合物、カルボン酸類、アミン化合物、又はチオール類とエピハロヒドリンとの反応により得られたエポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
(1)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールフルオレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ−t−ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テトラ−t−ブチルビフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ジヒドロアントラハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールビフェニレン樹脂、フェノール変性キシレン樹脂などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂の芳香環に水素を添加したタイプのエポキシ樹脂
【0026】
(2)メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、 シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、水添型ビスフェノールA、水添型ビスフェノールF等の各種のアルコール系化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂
【0027】
(3)アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸などの種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂
【0028】
(4)ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミンなどの種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂
【0029】
(5)3−メトキシブチル−3メルカプトプロピオネート、メチルチオグリコシレート、1−ブタンチオール、1,4−ブタンチオール、ベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、1,3,5−トリメルカプトメチルベンゼンなどの種々のチオール類と、エピハロヒドリンなどから製造されるエポキシ樹脂
【0030】
活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応は公知の方法で行えるが、代表的な態様例を、以下に詳述する。
【0031】
まず、活性水素化合物をその活性水素基1モル当り3〜20モルに相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。次いで、その溶液を撹拌しながらこれに活性水素基1モル当り0.9〜2モル量のアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて反応させる。この反応は、常圧下又は減圧下で行わせることができ、反応温度は、通常、常圧下の反応の場合には約30〜105℃であり、減圧下の反応の場合には約30〜80℃である。反応中は、必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離し、水分を除いた油分を反応系に戻す方法によって反応系より脱水する。アルカリ金属水酸化物の添加は、急激な反応を抑えるために、1〜8時間かけて少量ずつを断続的もしくは連続的に添加する。その全反応時間は、通常、1〜10時間程度である。
【0032】
反応終了後、不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去して除くと、目的のエポキシ樹脂が得られる。
【0033】
この反応におけるエピハロヒドリンとしては、通常、エピクロルヒドリン又はエピブロモヒドリンが用いられ、またアルカリ金属水酸化物としては、通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが用いられる。
【0034】
また、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミドなどの第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4,6−(トリスジメチルアミノメチル)フェノールなどの第三級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムイオダイドなどのホスホニウム塩;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
【0035】
さらに、この反応においては、溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ペンタノンなどのケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族類;ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられ、これらは単品で或いは複数種を混合して用いることができる。
【0036】
<全ハロゲン含有量>
本発明のエポキシ樹脂は、上述のような活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られ、全ハロゲン含有量が80重量ppm以下であることを特徴とする。
エポキシ樹脂の全ハロゲン含有量が80重量ppmを超えると、高純度のエポキシ樹脂を提供するという本発明の目的を達成し得ない。エポキシ樹脂の全ハロゲン含有量は低い程好ましく、好ましくは50重量ppm以下、より好ましくは30重量ppm以下である。
【0037】
ただし、活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂として、全ハロゲン含有量の下限は通常1重量ppmである。
【0038】
本発明でいう全ハロゲン含有量とは、前述の活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応工程で副生することが知られる、1,2−ハロヒドリン体と称される下記(式1)で表される化合物、1,3−ハロヒドリン体と称される下記(式2)で表される化合物、及びハロメチル体と称される下記(式3)で表される化合物、更には、未知の副反応により生成した化合物中の有機ハロゲンも含めて、エポキシ樹脂中にあらゆる形態で含まれるハロゲンの合計含有量を意味する。
【0039】
【化1】

【0040】
エポキシ樹脂中の全ハロゲン含有量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
即ち、エピハロヒドリンとしてエピクロルヒドリンを用いて製造されたエポキシ樹脂では、エポキシ樹脂中のハロゲンはエピクロルヒドリンに由来する塩素であることから、全塩素分析計を用いて測定することができる。ただし、後述の実施例では、全塩素分析計と蛍光エックス線分析とで予め作製した検量線に基いて全塩素含有量を求めた。
【0041】
また、エピハロヒドリンとしてエピブロモヒドリンを用いた場合は、エポキシ樹脂中のハロゲンはエピブロモヒドリンに由来する臭素であることから、全ハロゲン分析計を用いて測定することができる。
【0042】
以下において、全ハロゲン含有量80重量ppm以下の本発明のエポキシ樹脂を「低ハロゲンエポキシ樹脂」と称す場合がある。
【0043】
<全ハロゲン含有量の低減>
前述の活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂の全ハロゲン含有量は通常1000〜50000重量ppmあるいはそれ以上であるため、本発明においては、上述の全ハロゲン含有量を達成するために、活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂について、全ハロゲン含有量低減のための処理を施す。この全ハロゲン含有量低減のための処理操作としては、活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂中の全ハロゲン含有量を低減できる方法であれば、一般的な精製法でよく、特に制限はないが、具体的には昇華法、蒸留法、晶析法(本発明においては再結晶と同義である。)、アルカリ洗浄法などが挙げられる。
【0044】
A)昇華法
昇華法は、エポキシ樹脂を真空中で加熱し、昇華した成分を冷却して回収する方法であり、昇華管内の昇華部温度を120から180℃とし、真空度を1.0×10−2から10−5Pa程度、捕集部を常温とすることで、昇華成分として低ハロゲンエポキシ樹脂を回収することが可能である。
【0045】
B)蒸留法
蒸留法は、エポキシ樹脂を蒸留し、高分子化合物、無機化合物等を除去することにより、高純度の低ハロゲンエポキシ樹脂を得る方法である。その具体的な操作に特に指定はないが、蒸留釜を用いたバッチ蒸留、ロータリーエバポレーターなどを用いた連続蒸留、円盤型、流下膜型などの薄膜分子蒸留などがある。
その蒸留条件は、生成したエポキシ樹脂の全ハロゲン含有量が所定の範囲となる条件であり、実際の条件は、反応工程終了時のエポキシ樹脂の品質、除去する不純物の沸点などにより異なるが、通常、温度は120℃〜240℃、好ましくは、140℃〜200℃、滞留時間はバッチ蒸留の場合30分〜5時間、連続蒸留の場合0.5分〜10分、圧力は0.01〜2000Paである。この温度が高すぎたり、圧力が低すぎると、最終製品の純度が低下し、逆に温度が低すぎたり、圧力が高すぎると、収率が低下する。
【0046】
C)晶析法
晶析法は、結晶性エポキシ樹脂を溶剤に溶解させゆっくりと液温を下げることで純粋な結晶を析出させて取り出す方法であり、場合によっては種晶を降温途中で添加することで収率を向上させることが可能である。
晶析法に使用できる溶剤(以下「晶析溶剤」と称す場合がある。)としては、結晶性エポキシ樹脂を溶解するものであれば特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ペンタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族類;ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤類;などが挙げられ、これらは単品で或いは複数種を混合して用いることができる。混合溶剤の組み合わせ例としては、グリコール類とアルコール類、グリコール類とケトン類、グリコール類とグリコールエーテル類、グリコール類とエーテル類、炭化水素類と芳香族類、アルコール類と芳香族アルコール類、アルコール類とケトン類、エーテル類とセロソルブ類、エーテル類とグリコールエーテルアセテート類、エーテル類とフラン類、ケトン類とグリコールエーテル類、ケトン類とエーテル類、ケトン類と非プロトン性極性溶剤類、非プロトン性極性溶剤類とグリコール類、非プロトン性極性溶剤類とアルコール類、非プロトン性極性溶剤類とグリコールエーテル類、非プロトン性極性溶剤類とエーテル類等の組合せが挙げられる。
【0047】
晶析法において、エポキシ樹脂を晶析溶剤に溶解させる際のエポキシ樹脂濃度及びその際の加熱温度、結晶を析出させる際の冷却温度は、高い晶析効率で高純度のエポキシ樹脂が得られるように適宜決定され、晶析に供するエポキシ樹脂の種類や純度、用いる溶剤の種類等によっても異なるが、エポキシ樹脂を晶析溶剤に溶解させる際のエポキシ樹脂濃度としては10〜80重量%、特に20〜60重量%とすることが好ましい。
また、エポキシ樹脂を晶析溶剤に溶解させる際の加熱温度としては、30℃〜180℃、特に50℃〜150℃で、その後、結晶を析出させる際の冷却温度としては、−50℃〜100℃、特に−20℃〜80℃で、エポキシ樹脂を溶解させる際の加熱温度より10〜100℃程度低い温度とすることが、晶析効率、晶析による純度向上効果に優れることから好ましい。
【0048】
このような晶析操作は、大気雰囲気で行ってもよいが、酸化による不純物の生成を抑えるため、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0049】
このような晶析操作は1回に限らず複数回行ってもよく、複数回行う場合は、作業数と晶析による純度向上効果との兼ね合いから、2〜10回程度行うことが好ましい。
【0050】
D)アルカリ洗浄法
アルカリ洗浄法は、まず、エポキシ樹脂を溶剤に溶解させ、得られたエポキシ樹脂溶液にアルカリ(塩基性化合物)を添加して処理した後、水で洗浄し、その後溶剤を除去して精製エポキシ樹脂を得る方法である。
【0051】
アルカリ洗浄法でエポキシ樹脂を溶解させるために用いる溶剤としては、上述の晶析法で用いる晶析溶剤として例示したものの1種又は2種以上が挙げられ、その混合溶剤の例についても同様である。
【0052】
エポキシ樹脂溶液中のエポキシ樹脂の濃度は、10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。
塩基性化合物は固体、水溶液又は有機溶剤で希釈してこのエポキシ樹脂溶液に添加する。エポキシ樹脂溶液に塩基性化合物を添加した後は、約30〜120℃の温度で0.5〜8時間処理する。
塩基性化合物としては通常水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが用いられる。塩基性化合物の使用量としては、エポキシ樹脂中の全ハロゲン含有量に対して0.5〜50モル倍であり、好ましくは1.0〜20.0モル倍である。
【0053】
塩基性化合物による処理後は、速やかに反応停止することが、得られる低ハロゲンエポキシ樹脂の品質安定化のために重要である。反応の停止方法としては、急激に温度を下げる;溶液を不活性溶剤で希釈する;アルカリを酸で中和する;過剰の水を投入する;等の方法が挙げられるが、これらの中では、最も簡易な操作で確実に反応の停止を行えることから、過剰の水を投入する方法が好ましい。
反応停止のための水の量は反応混合液全体に対して、0.1倍量(重量)以上が好ましい。
【0054】
反応停止後は、過剰の塩基性化合物、副生する塩などの水溶性不純物を水洗により除去する。この水洗操作は、水溶性不純物を除去するために一般的に用いられる洗浄操作と同様に行うことができる。水洗時において、水と混合しない溶剤中のエポキシ樹脂の濃度は5〜80重量%程度であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。水洗操作は、上記エポキシ樹脂溶液の全量に対して、0.1〜10倍量(重量)の精製された水を加え、十分に攪拌混合した後、静置して分離させ、水層を取り除くことにより行われる。この際の温度は30〜120℃が一般的である。この操作を2〜10回繰り返すことにより、エポキシ樹脂中のイオン濃度を低下させることができる。この際、過剰の塩基性化合物を中和するために、リン酸、リン酸ナトリウム、シュウ酸、酢酸、炭酸等の弱酸を水洗水中に添加しても良い。
【0055】
上記水洗後、有機層から溶剤を蒸発除去することによって、低ハロゲンエポキシ樹脂を得ることができる。
【0056】
上記(A)〜(D)の各精製法は、いずれか一つの精製法を1回、又は複数回行ってもよく、複数の精製法を組合せて行ってもよい。その場合において、一つの精製法は1回のみ行っても複数回行ってもよい。
【0057】
<エポキシ当量>
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量には特に制限はないが、80〜1000g/eq.程度であることが好ましい。
【0058】
[エポキシ樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述の本発明のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を含有する。
【0059】
<エポキシ樹脂用硬化剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物に必須成分として配合されるエポキシ樹脂用硬化剤には特に制約は無く、一般的なエポキシ樹脂用の硬化剤が使用できる。
【0060】
例えば、多官能フェノール類、アミン類、酸無水物類、不飽和基含有ポリカルボン酸類、チオール類、また、エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤などを用いることができる。
【0061】
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ−t−ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テトラ−t−ブチルビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールビフェニレン樹脂などの種々の多価フェノール類や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類が挙げられる。
【0062】
アミン類の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体などがあり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,5−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素などがある。
【0063】
酸無水物類の例としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物などがある。
【0064】
不飽和基含有ポリカルボン酸類としては、多官能エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応物と多塩基性カルボン酸無水物の反応物などがある。
【0065】
チオール類の例としては、脂肪族ポリチオエーテル型、脂肪族ポリチオエステル型、芳香環含有ポリチオエーテル型などが挙げられる。
【0066】
また、エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール類;1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類;トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩;1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどのジアザビシクロ化合物;それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
さらに、トリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF陰イオン(ここでMは燐、アンチモン及び砒素から選択される)の形の周期表第VIb族元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩等を用いることができる。
【0067】
これらのエポキシ樹脂用硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用されるエポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、エポキシ基と反応する基を持つ化合物の場合は、全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対して、全エポキシ樹脂硬化剤成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.5〜2.0モルとなる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.5モルとなる量である。
エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤の場合は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部である。
【0069】
<エポキシ樹脂用硬化促進剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂用硬化促進剤を含有することができる。エポキシ樹脂用硬化促進剤としては特に制限はなく、一般的なエポキシ樹脂用硬化促進剤が使用できる。
【0070】
例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジシアノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール類;1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類;トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩;1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)−オクタンなどのジアザビシクロ化合物;それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
【0071】
これらのエポキシ樹脂用硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
エポキシ樹脂用硬化促進剤は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部配合することが好ましい。
【0073】
<その他のエポキシ樹脂>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂も配合することができる。その併用できるエポキシ樹脂としては、特に指定は無く、本発明のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂であれば、どのようなエポキシ樹脂でも使用可能である。
【0074】
その混合することができる他のエポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂の説明において、各種のエポキシ樹脂例として挙げた前記(1)〜(5)のエポキシ樹脂であって、本発明のエポキシ樹脂に該当しないものが挙げられ、これらは単品で或いは複数種を混合して用いることができる。
【0075】
併用される他のエポキシ樹脂の使用量は全エポキシ樹脂量に対して、80重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。他のエポキシ樹脂量の併用量が多すぎると本発明のエポキシ樹脂を用いることによる効果が十分発揮されなくなる。
【0076】
<添加剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、他の一般のエポキシ樹脂組成物と同様に、各種添加剤を配合することができる。それら各種添加剤としては、例えば、無機充填材、着色剤、顔料、カップリング剤、難燃剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、反応性希釈剤等が挙げられ、必要に応じて適宜に配合することができる。
【0077】
これらの添加剤のうち、無機充填材としては、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、シリカ、カーボン等が挙げられ、着色剤又は顔料としては、二酸化チタン、モリブデン赤等が挙げられる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などが使用可能である。
また、難燃剤としては、ノンハロゲンタイプのリン系、窒素系、シリコン系難燃剤等を用いることができる。
上記添加剤は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
<無機ハロゲン濃度>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記の溶出試験で測定される無機ハロゲン濃度が10重量ppm以下であることを特徴とする。
【0079】
<溶出試験>
エポキシ樹脂組成物を、当該エポキシ樹脂組成物の硬化条件で硬化させて得られた硬化物を、ミル等を用いて20メッシュパスに粉砕して得られた硬化粉に、10重量倍量の精製水を加え、180℃の条件下に20時間放置した後、水中の無機ハロゲン濃度を測定する。
この無機ハロゲン濃度が10重量ppmを超えると、本発明で目的とする低ハロゲン含有量のエポキシ樹脂組成物を提供し得ない。
【0080】
上記無機ハロゲン濃度は低い程好ましく、5重量ppm以下であることが好ましい。上記無機ハロゲン濃度の下限には特に制限はないが、活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られた本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の上記無機ハロゲン濃度の下限としては通常0.1重量ppm程度である。
【0081】
[用途]
本発明のエポキシ樹脂は、従来にない著しく低い全ハロゲン含有量のものであり、種々の用途に使用することができ、このエポキシ樹脂を主成分として用いた場合、極低ハロゲンかつ電気的性能に優れたエポキシ樹脂組成物を与える。
また、本発明のエポキシ樹脂は、特開2006−36801号公報に記載されているような2段法によるエポキシ樹脂製造の原料としても有用であり、極低ハロゲンかつ電気的性能に優れた高分子エポキシ樹脂を与える。
【0082】
従って、これらのエポキシ樹脂は電気・電子関連部材の分野において有用であり、非常に信頼性の高い材料を提供する。
【0083】
<半導体封止材料>
本発明のエポキシ樹脂は、半導体封止装置の封止材料として有用である。封止を行う半導体チップとしては、例えば集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等、特に限定されることなく、半導体パッケージの形態も特に限定されない。
封止の一般的な方法としては、低圧トランスファー成型法が挙げられるが、射出成型、圧縮成型、注型、ポッティング等で封止することもできる。この分野において、従来は使用されるエポキシ樹脂の含有ハロゲン分に起因した電気的信頼性の低さが問題となっており、本発明の低ハロゲンエポキシ樹脂であれば、この問題を解決することができる。
【0084】
<プリント配線板用ソルダーレジスト・層間絶縁層用材料>
本発明のエポキシ樹脂は、特開2005−202023号公報に記載されているような用途として、不飽和基含有ポリカルボン酸類と組み合わせることで、プリント配線板向けソルダーレジスト用又は層間絶縁用材料として好適に利用できる。
本発明のエポキシ樹脂をプリント配線板向けソルダーレジスト用として使用するには、まず、プリント配線板の表面に本発明のエポキシ樹脂を含むアルカリ現像型感光性樹脂組成物の溶液を塗布するか、あるいはドライフィルムとして張り付けるなどの方法で被膜を形成する。続いて、このようにして得られた被膜の上にネガフィルムをあて、活性光線を照射して露光部を硬化させ、さらに弱アルカリ水溶液を用いて末露光部を溶出する。本発明のエポキシ樹脂を光硬化させるのに適した光としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどの光が挙げられる。その現像液としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属水酸化物の水溶液が挙げられ、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの1〜3重量%水溶液により、微細な画像を精密に現像することができる。アルカリ現像後、耐熱性、耐食性、密着性などを向上させるために加熱処理を行うことが望ましい。その加熱硬化条件としては、80〜200℃で10分〜2時間である。
従来においては、この分野においても使用されるエポキシ樹脂の含有ハロゲン分に起因した電気的信頼性の低さが問題となっており、本発明の低ハロゲンエポキシ樹脂が好適に使用できる。
【0085】
<ダイボンディング材>
本発明のエポキシ樹脂はダイボンディング材としても有用である。
ダイボンディング材とは、半導体パッケージの中で、半導体チップと支持体(基板、リードフレーム、テープなど)の間の接着に使用される材料であるが、従来においては、この分野においても使用されるエポキシ樹脂の含有ハロゲン分に起因した電気的信頼性の低さが問題となっており、本発明の低ハロゲンエポキシ樹脂が好適に使用できる。
【0086】
<プリント配線板用材料>
本発明のエポキシ樹脂は多層電気積層板やビルドアップ法等のプリント配線板用材料としても有用である。
中でもビルドアップ法は、電子部材の小型・軽量化のための優れた工法として期待が高まっている。
【0087】
ビルドアップ法とは、第1図に示すように、ガラスプリプレグを積層した内層回路板(コア基板、1Aは回路を示す。)1上に、厚さ40〜90μmのフィルム(絶縁層)あるいは、フィルム2上に銅箔2A(銅箔厚さ:9〜18μm)を積層形成した銅箔付きフィルム3を積層していく方法であり、一般的に、この積層プレス工程、穴あけ(レーザー又はドリル)工程、デスミア/メッキ工程の2種を経て回路を形成するものである。ビルドアップ法は、得られる積層板が、従来の積層板に比べて同性能のもので、実装面積、重量ともに約1/4になる、小型、軽量化のための優れた工法である。
【0088】
このような電子部材の半導体パッケージ用途では、ビルドアップ層やコア基板にエポキシ樹脂が使用されているが、従来のエポキシ樹脂では、含有するハロゲン不純物を原因としたマイグレーションが問題となっている。また、近年では小型・軽量化の目的から、回路線幅がさらに短縮されると予測されており、エポキシ樹脂に要求されるハロゲン含有量もますます厳しくなることが予想される。従って、この分野で用いるエポキシ樹脂を用いるには、従来成し得なかった低ハロゲン化が必須であり、本発明の低ハロゲンエポキシ樹脂が好適である。
【0089】
<その他>
上記分野に限らず、メタルコア積層板等の接着剤、アンダーフィル材などの電気・電子部品関連では、ハロゲン不純物を原因とする電気的信頼性の低さが課題となっており、これらの用途に関して本発明の低ハロゲンエポキシ樹脂は非常に有用な材料を与える。
その他、接着フィルム、ディスプレイ部材用の光学フィルム、保護フィルム、シーリングフィルムなどの分野においても、本発明のエポキシ樹脂は有効に利用できる。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明のエポキシ樹脂の製造実施例及び製造比較例、さらに本発明のエポキシ樹脂組成物の評価実施例及び比較例を挙げるが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
なお、以下においてエポキシ当量はJIS K 7236:2001記載の方法によって求めた。
エポキシ樹脂の全塩素含有量は、予め全塩素分析計「三菱化学アナリテック社製:TOX2100H」にてエポキシ樹脂試料の全塩素含有量を求め、同じ試料を用いて蛍光エックス線の検量線を作製しておき、実際の全塩素含有量は、蛍光エックス線分析結果とこの検量線に基いて求めた。
また、無機ハロゲンの溶出試験で水中に溶出した無機ハロゲンの濃度は、JIS K 7243−1:2005記載の方法によって求めた。
【0092】
〔エポキシ樹脂の製造〕
<比較例1>
温度計、撹拌装置、及び冷却管を備えた内容量1Lの三口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル121g、エピクロルヒドリン555g、及びイソプロピルアルコール200gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液91gを1時間かけて滴下した。その間、徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリン、及びイソプロピルアルコールを留去して、粗製のエポキシ樹脂を得た。
【0093】
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン250gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液2gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、更に水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的のエポキシ樹脂Aを得た。
このエポキシ樹脂Aの全塩素含有量は1033重量ppm、エポキシ当量は185g/eq.であった。
【0094】
<比較例2>
温度計、撹拌装置、及び冷却管を備えた内容量3Lの三口フラスコに、エポキシ樹脂A100gとメチルイソブチルケトン160gを仕込み、均一に溶解、混合した後、ジメチルスルホキシド22g加えて混合し、60℃まで昇温した。攪拌下で水酸化ナトリウムの15重量%イソプロピルアルコール溶液2.6gを一度に投入した。90分間の反応後、200gの精製水を5分間かけて投入し、反応を停止させた。
ここへメチルイソブチルケトンを150g追加し、均一に混合した後、10分間攪拌した。その後、静置分離させ、水層を除去した。有機層に第一リン酸ナトリウムの0.1重量%水溶液500mlを加え、70℃で10分間攪拌して、中和水洗を行なった。攪拌を止め、静置分離させ、水層を除去した。さらに70℃の温水各500mlで2回水洗して副生塩、過剰の水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコールなどを除去した。次いで、有機層から減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した。最終的に1.3kPa、160℃で30分間保持して揮発分をほぼ完全に除去してエポキシ樹脂Bを得た。
このエポキシ樹脂Bの全塩素含有量は321重量ppm、エポキシ当量は193g/eq.であった。
【0095】
<実施例1>
昇華部、捕集部I、及び捕集部IIからなるガラス製昇華蒸留装置に、エポキシ樹脂Bを100g仕込み、真空度を1.2×10−2Paとして150℃に加熱し、24時間処理した。次いで昇温部を165℃まで昇温し、12時間処理した。捕集部Iの後段(低温側)でエポキシ樹脂Cを回収した。
エポキシ樹脂Cの全塩素含有量は57重量ppm、エポキシ当量は178g/eq.であった。
【0096】
<実施例2>
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル121gを2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン222gに変えたこと以外は、製造比較例1と同様の操作を行い、粗製エポキシ樹脂Dを得た。
昇華部、捕集部I、及び捕集部IIからなるガラス製昇華蒸留装置に粗製エポキシ樹脂Dを100g仕込み、真空度を1.2×10−2Paとして150℃に加熱して24時間処理した。次いで昇温部を165℃まで昇温し、12時間処理した。捕集部Iの後段(低温側)でエポキシ樹脂Dを回収した。
エポキシ樹脂D中の全塩素含有量は54重量ppm、エポキシ当量は172g/eq.であった。
【0097】
<実施例3>
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに予め30℃に加熱した1,4−ブタンジオール108gと四塩化錫3gを仕込み、80℃まで加熱した。温度が85℃以上にならない様に時間をかけてエピクロルヒドリン244gを滴下した。その後、温度を80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。ここへ22重量%水酸化ナトリウム水溶液528gを加えて45℃に加熱して4時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、減圧下加熱して未反応のエピクロルヒドリンと水を除去し、粗製エポキシ樹脂Eを得た。
この粗製エポキシ樹脂Eをオールダショウ蒸留塔(15段)にて蒸留精製し、圧力1300Pa,140〜160℃の留分を主留分としたエポキシ樹脂を得、さらに得られたエポキシ樹脂に対して、上記の蒸留精製と同様の操作を5回繰り返し行って、エポキシ樹脂Eを得た。
このエポキシ樹脂Eの全塩素含有量は49重量ppm、エポキシ当量は102g/eq.であった。
【0098】
<実施例4>
1,4−ブタンジオール108gを1,6−ヘキサンジオール142gに変えたこと以外は、製造実施例3と同様の操作を行い、粗製エポキシ樹脂Fを得た。
この粗製エポキシ樹脂Fをオールダショウ蒸留塔(15段)にて蒸留精製し、圧力1300Pa,140〜160℃の留分を主留分としたエポキシ樹脂を得、さらに得られたエポキシ樹脂に対して、上記の蒸留精製と同様の操作を5回繰り返し行って、エポキシ樹脂Fを得た。
このエポキシ樹脂Fの全塩素含有量は51重量ppm、エポキシ当量は116g/eq.であった。
【0099】
<実施例5>
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル121gをテトラメチルビスフェノールF256gに変えたこと以外は、製造比較例1と同様の操作を行い、粗製エポキシ樹脂Gを得た。
200mlの四つ口ガラスコルベンに粗製エポキシ樹脂Gを40g、メチルイソブチルケトンを60g仕込んで窒素雰囲気下でオイルバスを使用して70℃で加熱溶解した。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のメチルイソブチルケトンでリンスした。得られた結晶30gを再びコルベンに仕込み、新しいメチルイソブチルケトン45gを投入後、70℃に昇温、溶解させた。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のメチルイソブチルケトンでリンスした。得られた結晶20gを三度びコルベンに仕込み、新しいメチルイソブチルケトン30gを投入して昇温したところ内温65℃で溶解した。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のメチルイソブチルケトンでリンスし目的のエポキシ樹脂Gを得た。
このエポキシ樹脂Gの全塩素含有量は49重量ppm、エポキシ当量は185g/eq.であった。
【0100】
<実施例6>
200mlの四つ口ガラスコルベンにエポキシ樹脂Aを20g、イソプロピルアルコールを80g仕込んで窒素雰囲気下でオイルバスを使用して80℃で加熱溶解した。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のイソプロピルアルコールでリンスした。得られた結晶20gを再びコルベンに仕込み、新しいイソプロピルアルコールを65g投入後、80℃に昇温して溶解させた。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。さらに得られた結晶を濾過した後、少量のイソプロピルアルコールでリンスした。得られた結晶17gを三度びコルベンに仕込み、新しいイソプロピルアルコール55gを投入して80℃に加熱し、十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のイソプロピルアルコールでリンスし目的のエポキシ樹脂Hを得た。
このエポキシ樹脂Hの全塩素含有量は62重量ppm、エポキシ当量は177g/eq.であった。
【0101】
<実施例7>
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル121gをビスフェノールA228gに変えたこと以外は、製造比較例1と同様の操作を行い、粗製エポキシ樹脂Iを得た。
200mlの四つ口ガラスコルベンに粗製エポキシ樹脂Iを20g、エタノールを80g仕込んで窒素雰囲気下でオイルバスを使用して80℃で加熱溶解した。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後0℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のエタノールでリンスした。得られた結晶15gを再びコルベンに仕込み、新しいエタノールを60g投入後、80℃に昇温して溶解させた。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後0℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のエタノールでリンスした。得られた結晶12gを三度びコルベンに仕込み、新しいエタノール48gを投入して昇温したところ内温80℃で溶解した。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後0℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のエタノールでリンスし目的のエポキシ樹脂Iを得た。
このエポキシ樹脂Iの全塩素含有量は52重量ppm、エポキシ当量は171g/eq.であった。
【0102】
<実施例8>
200mlの四つ口ガラスコルベンにエポキシ樹脂Dを20g、イソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトンを重量比で70:30に混合したもの(本実施例において、イソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン混合溶剤の混合比は以下同様である。)を80g仕込んで窒素雰囲気下でオイルバスを使用し75℃で加熱溶解した。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン混合溶剤でリンスした。得られた結晶17gを再びコルベンに仕込み、新しいイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン混合溶剤50gを投入後、75℃に昇温して溶解させた。十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。さらに得られた結晶を濾過した後、少量のイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン混合溶剤でリンスした。得られた結晶13gを三度びコルベンに仕込み、新しいイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン混合溶剤を37g投入して75℃に昇温し、十分にエポキシ樹脂が溶解したことを確認した後25℃に冷却した。得られた結晶を濾過した後、少量のイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン混合溶剤でリンスし目的のエポキシ樹脂Jを得た。
このエポキシ樹脂Jの全塩素含有量は44重量ppm、エポキシ当量は168g/eq.であった。
【0103】
<実施例9>
温度計、撹拌装置、及び冷却管を備えた内容量3Lの三口フラスコに、エポキシ樹脂G100gとメチルイソブチルケトン160gを仕込み、均一に溶解、混合させた後、ジメチルスルホキシド22g加えて混合し、60℃まで昇温した。攪拌下で水酸化ナトリウムの15重量%イソプロピルアルコール溶液2.6gを一度に投入した。90分間の反応後、200gの精製水を5分間かけて投入し、反応を停止させた。
ここへメチルイソブチルケトンを150g追加し、均一に混合した後、10分間攪拌した。その後、静置分離させ、水層を除去した。有機層に第一リン酸ナトリウムの0.1重量%水溶液500mlを加え、70℃で10分間攪拌して、中和水洗を行なった。攪拌を止め、静置分離させ、水層を除去した。さらに70℃の温水各500mlで2回水洗して副生塩、過剰の水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコールなどを除去した。次いで、有機層から減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した。
得られたエポキシ樹脂に対して、上記のアルカリ処理及び水洗工程と同様の操作を5回繰り返し実施した。最終的に1.3kPa、160℃で30分間保持して揮発分をほぼ完全に除去してエポキシ樹脂Kを得た。
このエポキシ樹脂Kの全塩素含有量は50重量ppm、エポキシ当量は202g/eq.であった。
【0104】
<実施例10>
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル121gを1,5−ジヒドロキシナフタレン166gに代えたこと以外は、製造比較例1と同様の操作を行い、粗製エポキシ樹脂Lを得た。
温度計、撹拌装置、及び冷却管を備えた内容量3Lの三口フラスコに、得られた粗製エポキシ樹脂L100gとメチルイソブチルケトン160gを仕込み、均一に溶解、混合させた後、ジメチルスルホキシド22g加えて混合し、60℃まで昇温した。攪拌下で水酸化ナトリウムの15重量%イソプロピルアルコール溶液2.6gを一度に投入した。90分間の反応後、200gの精製水を5分間かけて投入し、反応を停止させた。
ここへメチルイソブチルケトンを150g追加し、均一に混合した後、10分間攪拌した。その後、静置分離させ、水層を除去した。有機層に第一リン酸ナトリウムの0.1重量%水溶液500mlを加え、70℃で10分間攪拌して、中和水洗を行なった。攪拌を止め、静置分離させ、水層を除去した。さらに70℃の温水各500mlで2回水洗して副生塩、過剰の水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコールなどを除去した。次いで、有機層から減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した。
得られたエポキシ樹脂に対して、上記のアルカリ処理及び水洗工程と同様の操作を5回繰り返し実施した。最終的に1.3kPa、160℃で30分間保持して揮発分をほぼ完全に除去してエポキシ樹脂Lを得た。
このエポキシ樹脂Lの全塩素含有量は45重量ppm、エポキシ当量は101g/eq.であった。
【0105】
<実施例11>
温度計、撹拌装置、及び冷却管を備えた内容量3Lの三口フラスコに、エポキシ樹脂A100gとメチルイソブチルケトン160gを仕込み、均一に溶解、混合させた後、ジメチルスルホキシド22g加えて混合し、60℃まで昇温した。攪拌下で水酸化ナトリウムの15重量%イソプロピルアルコール溶液2.6gを一度に投入した。90分間の反応後、200gの精製水を5分間かけて投入し、反応を停止させた。
ここへメチルイソブチルケトンを150g追加し、均一に混合した後、10分間攪拌した。その後、静置分離させ、水層を除去した。有機層に第一リン酸ナトリウムの0.1重量%水溶液500mlを加え、70℃で10分間攪拌して、中和水洗を行なった。攪拌を止め、静置分離させ、水層を除去した。さらに70℃の温水各500mlで2回水洗して副生塩、過剰の水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコールなどを除去した。次いで、有機層から減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した。
得られたエポキシ樹脂に対して、上記のアルカリ処理及び水洗工程と同様の操作を5回繰り返し実施した。最終的に1.3kPa、160℃で30分間保持して揮発分をほぼ完全に除去してエポキシ樹脂Mを得た。
このエポキシ樹脂Mの全塩素含有量は40重量ppm、エポキシ当量は205g/eq.であった。
【0106】
<実施例12>
撹拌装置、環流冷却管及び温度計を備えた容量3Lの4つ口フラスコにパラアミノフェノール109g、エピクロルヒドリン1400g、イソプロピルアルコール700gを仕込み、系内を減圧窒素置換し、窒素雰囲気下、攪拌して均一に溶解させた。なお、発熱により昇温したため、60℃になるよう調整した。その後、60℃で3時間攪拌して反応させた。次いで、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液313gを90分かけて滴下し、滴下終了後さらに60℃で30分保持して反応を完了させた。水洗により副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した後、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンとイソプロピルアルコールを留去し、さらに濾過により固形分を除去して、粗製エポキシ樹脂Nを得た。
粗製エポキシ樹脂N200gをメチルイソブチルケトン400gに溶解させ、系内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを加え、65℃の温度で1時間反応させた。その後、反応液に第一リン酸水素ナトリウム水溶液を加えて、過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加温減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去した。得られたエポキシ樹脂を内部コンデンサー型フィルムエバポレーターを用い、0.13kPa、180〜200℃で蒸留した。
得られたエポキシ樹脂Nに対して、上記のアルカリ洗浄及び蒸留の操作を5回繰り返し実施し、エポキシ樹脂Nを得た。
このエポキシ樹脂Nの全塩素含有量は45重量ppm、エポキシ当量は105g/eq.であった。
【0107】
〔エポキシ樹脂組成物の評価〕
<実施例13〜36、比較例3〜6>
エポキシ樹脂として実施例1〜12又は比較例1〜2で製造したエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(群栄化学社製「PSM4261」水酸基当量:103g/eq.)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(東京化成社製、表中「TPP」と略記する。)又は1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン(東京化成社製、表中「DBU」と略記する。)を表1−A,Bの通り配合し、175℃、8時間の条件で完全硬化させることにより各エポキシ樹脂硬化組成物を得た。
次に、これらのエポキシ樹脂硬化組成物をミルによって20メッシュパスに粉砕した。その硬化粉5gに対して50gの精製水(和光純薬工業社製 高速液体クロマトグラフ用蒸留水)を加え、180℃の条件に20時間放置した。この溶出水中の塩素濃度を測定した結果を表1−A,Bに示した。
【0108】
【表1】

【0109】
表1−A,Bより、本発明によれば、各種絶縁材料や積層板などの電気、電子材料として有用な、ハロゲンの溶出の問題のない高信頼性のエポキシ樹脂硬化物を与えることができることが分かる。
【符号の説明】
【0110】
1 内層回路板
1A 回路
2 フィルム
2A 銅箔
3 銅箔付きフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られ、全ハロゲン含有量が80重量ppm以下であるエポキシ樹脂。
【請求項2】
活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を昇華する工程を経て製造された請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を蒸留する工程を経て製造された請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂を晶析する工程を経て製造された請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【請求項5】
活性水素化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ樹脂をアルカリ洗浄する工程を経て製造された請求項1ないし4のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤を含み、下記溶出試験で測定される無機ハロゲン濃度が10重量ppm以下であるエポキシ樹脂組成物。
<溶出試験>
エポキシ樹脂組成物の硬化物を20メッシュパスに粉砕して得られた硬化粉に、10重量倍量の精製水を加え、180℃の条件下に20時間放置した後、水中の無機ハロゲン濃度を測定する。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207932(P2011−207932A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74385(P2010−74385)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】