説明

エポキシ樹脂成形材料の製造方法及び製造装置並びに樹脂封止型半導体装置

【課題】高信頼性の半導体パッケージを製造できるエポキシ樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を、均一に混合して複合材料粉末とする混合機2と、複合材料粉末を溶融混練してシート状の混練シートとする、二段以上の二軸の加熱ロール機を有する多段加熱ロール機3と、混練シートを冷却、固化させて固形シートとする冷却機4と、固形シートを粉砕して、粉末状のエポキシ樹脂成形材料とする粉砕機5と、を有するエポキシ樹脂成形材料の製造装置1及びこれを用いたエポキシ樹脂成形材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用のエポキシ樹脂成形材料の製造方法及び製造装置並びに樹脂封止型半導体装置に係り、特に、高信頼性の樹脂封止型半導体装置に好適である金属異物を低減したエポキシ樹脂成形材料の製造方法及び製造装置並びに該成形材料を用いた樹脂封止型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体デバイスの封止方法としては、現在は、エポキシ樹脂成形材料を低圧トランスファー成形する方法が、低コスト、かつ大量生産に適したやり方として広く採用されている。
【0003】
ここで使用するエポキシ樹脂成形材料は、出発原材料として、半導体デバイスを封止したパッケージに高度の長期信頼性を与えるため、また、硬化速度を速めて製造時の生産性を向上させるため固形のエポキシ樹脂主剤と、固形のフェノール樹脂硬化剤を主成分として用いられる。さらに、硬化したエポキシ樹脂成形材料の熱膨張係数を半導体素子の値に近づけるため、エポキシ樹脂成形材料には多量の無機フィラーが充填されている。
【0004】
このエポキシ樹脂成形材料の製造方法としては、上記の固形のエポキシ樹脂主剤と固形のフェノール樹脂硬化剤、無機フィラーに加えて、カップリング剤、硬化触媒、顔料、滑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、防食剤、等の原材料を添加しエポキシ樹脂組成物とし、ヘンシェルミキサー等の混合装置にて分散混合した後、二軸の加熱ロール装置や、二軸の加熱押出し装置を用いて溶融混練した後、冷却・粉砕して粒状の成形材料とするのが通例である。また、加熱ロール装置としては、現在、主流となっている金属混入が多い堰送り方式のロール上混練装置(例えば、特許文献1参照)も知られている。
【0005】
そして、このように得られた粒状の成形材料を、そのまま圧縮成形機や射出成形機にて半導体素子をパッケージ成形するか、粒状の成形材料を、さらに打錠機によりタブレット化して、該タブレットを用いて移送成形機にて半導体素子を封止成形して、樹脂封止型半導体装置を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−310686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法では、最近の半導体素子やパッケージ設計の変化について行けず、エポキシ樹脂成形材料中に存在する金属異物によるショート不良やリーク不良の多発という大きな問題が生じてきている。その原因は、パッケージの小型化・薄型化、素子の微細化に伴い、素子上に設置される外部接続用のパッドの間隔が急激に狭くなってきていて、それに伴い、外部接続用のワイヤー間距離が極めて狭くなってきていることにある。
【0008】
すなわち、従来、数百μmあったパッドピッチが、最近では100μmを切るまでになってきており、ワイヤー接続を用いないパッケージにおいても、パッケージ内部の正負端子間距離が短くなることで、これまで問題にならなかった小さな金属異物でも、故障を発生させるようになってきている。半導体パッケージを製造する側からは、現在、少なくとも45μm以上の導電性異物が無いように、との要望が強い。
【0009】
製造されたエポキシ樹脂成形材料中に存在する金属異物は、原材料に入っていた金属異物と、製造工程で入る金属異物によるものである。特に、上記した従来製法では、二軸の加熱ロール装置や加熱押出し装置を用いて、常温では固形の混練成分を加熱溶融するため、この混練温度では、まだ、樹脂が高粘度であり、かつ、大量の無機フィラーを含んでいるため、混練装置において、装置の構成金属表面と混練成分に含まれる無機フィラー、例えば、アルミナ、窒化珪素、結晶性シリカ、溶融シリカ、等の研磨剤類似のフィラーとが接触磨耗し、製造した半導体封止用エポキシ樹脂成形材料中の金属濃度が高くなり、かつ切削された大きな金属片が混入するという問題が生じて、上記のように重大な問題となっている。
【0010】
安全性を要求される自動車用や航空機用のデバイスについては、この導電性異物の混入の問題に起因して、重大な事故が発生する可能性が高い。なお、半導体パッケージの製造者によるバーンインと云われる加速チェックテストが行われているが、完全に不良品を除くまでには、至っていない。
【0011】
加えて、二軸の加熱ロール装置や加熱押出し装置においては、混練樹脂の滞留や、温度コントロールの困難さから、構成成分の偏在や硬化物類似の成分、すなわち、アセトン不溶分の発生という不具合が発生し、製造時の成形性の低下や、デバイスの信頼性の低下が起こる。
【0012】
本発明は、上記問題点を解消し、高信頼性の半導体パッケージを製造できるエポキシ樹脂成形材料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記問題点を解消するために鋭意検討した結果、エポキシ樹脂成形材料の製造において、溶融混練を所定の手法により行うことで改善されることを見出し、本発明を完成したものである。
【0014】
すなわち、本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造方法は、常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を、混合機で均一に混合して複合材料粉末とする工程と、前記複合材料粉末を二段以上の多段加熱ロール機を用い溶融混練して、シート状の混練シートとする工程と、前記混練シートを冷却、固化させて固形シートとする工程と、前記固形シートを粉砕して、粉末状のエポキシ樹脂成形材料とする工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造装置は、常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を、均一に混合して複合材料粉末とする混合機と、前記複合材料粉末を溶融混練してシート状の混練シートとする、二段以上の二軸の加熱ロール機を有する多段加熱ロール機と、前記混練シートを冷却、固化させて固形シートとする冷却機と、前記固形シートを粉砕して、粉末状のエポキシ樹脂成形材料とする粉砕機と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の樹脂封止型半導体装置は、本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造方法において製造されたエポキシ樹脂成形材料を用いて、半導体素子が封止されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造方法及び製造装置によれば、金属異物の混入が少なく、原材料成分が均一に混練され、かつ、アセトン不溶分が少ない、エポキシ樹脂成形材料を得ることができる。このような特性を有するエポキシ樹脂成形材料は、微細配線化されている高信頼性の半導体デバイスのパッケージ封止に好適である。
【0018】
また、本発明の樹脂封止型半導体装置は、上記の通り、本発明の製造方法により得られたエポキシ樹脂成形材料を用いて封止しているため、微細配線化されている半導体素子において、ショート不良やリーク不良の生じにくい高信頼性の半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造方法の概略構成を示した図である。
【図2】図1における多段加熱ロール部分を説明する(a)側面図及び(b)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示したように、本発明の一実施形態であるエポキシ樹脂成形材料の製造装置1は、原材料となる粉末及び液体を混合する混合機2と、混合手段により得られた混合粉末を溶融混練して混練シートを得る多段加熱ロール機3と、得られた混練シートを冷却、固化させて固形シートとする冷却機4と、固形シートを粉砕して複合樹脂粉末を得る粉砕機5と、を有するものである。
【0022】
ここで混合機2は、エポキシ樹脂成形材料の原材料となる原材料粉末及び原材料液体を均一に混合し、複合材料粉末とすることができるものであり、例えば、ヘンシェルミキサー等の混合機が挙げられる。ここで、混合された複合材料粉末は、次の多段加熱ロール機3上へ供給するようになっている。
【0023】
多段加熱ロール機3は、従来用いられていた二軸加熱ロールと同様の構成を有する加熱ロール機を2つ以上用い、複合材料粉末を加熱溶融しながらシート状へと成形を行うものである。
【0024】
本発明では、このような加熱ロール機を2以上の多段に設け、一つの加熱ロール機で処理されシート状にされた複合材料粉末を、さらに次段の加熱ロール機で順次処理することで十分に溶融混練し、複合材料粉末が均一に混合されたシート状の成形材料を得るようになっている。
【0025】
例えば、図2には多段加熱ロール3が三段に設けられた装置の加熱ロール部分を説明するものである。ここで、多段加熱ロール3は、加熱ロール31〜33からなり、加熱ロール31で溶融混練処理されたシート状の混練物とし、得られたシート状の混練物を加熱ロール32で再度溶融混練処理を行いシート状の混練物とし、さらにこのシート状の混練物を加熱ロール33で再度溶融混練処理を行い混練シートとするものである。
【0026】
このとき、加熱ロール機31〜33は、50〜150℃の温度で複合材料粉末を加熱溶融しながら、混練し、複合材料粉末を均一に混合させたシート状の混練シートとすることができる。このように均一に混合させることによりアセトン不溶分も低減することができる。
【0027】
シート状の混練物及び混練シートは、加熱ロール31〜33に貼り付いた状態で出てくるが、加熱ロール31〜33からシート状の混練物及び混練シートを引き剥がすため、それぞれかきとり手段34〜36が設けられている。このかきとり手段34〜36は、加熱ロールの回転表面の近傍に設けられており、板状のヘラである。通常時は、加熱ロールの混練を妨げないようにロール表面から離れているが、かきとり時には、その板状体を水平軸に対して可動させ、かきとり手段の一端を加熱ロール表面に押しつけるようにすることができるようになっている。このとき接触する一端は刃状にして、加熱ロールに貼り付いている混練シートを効率的に引き剥がすことができるようにすることが好ましい。また、このかきとり手段の加熱ロールに接触する部分は、非導電性の素材、例えば、ゴム、プラスチック、セラミック等により形成することが好ましい。
【0028】
このようにロール表面に貼り付いて回転してくる混練シートを加熱ロールから引き剥がし、次の加熱ロール機又は次工程の冷却機4へ移すことができるようになっている。このとき、かきとり手段34〜36による引き剥がしは、加熱ロール機の軸方向に沿った所定のロール表面部分において、全面で一度に行われるものである。
【0029】
なお、本発明で用いる多段加熱ロール機3は、二段ロール以上の連続ロールシステムであるが、三段連続ロールであることが好ましい。三段連続ロールの構成とすることで、樹脂材料の混練時間、混練度、流動性等が好ましいものとなる。ちなみに、四段ロールでは、混練時間が長くなって、流動性が低下することが懸念される。
【0030】
また、各段のロールにおいては、処理されるべき複合材料粉末又はシート状の混練物をロール上部から全面に投入するが、なるべくロール中央に複合材料粉末又はシート状の混練物を寄せて処理できるように寄せ板を設けることが好ましい。
【0031】
冷却機4は、多段加熱ロール機3で得られた混練シートを冷却、固化して固形シートとすることができるものである。例えば、ベルトコンベア等の回転表面を冷却し、この冷却した回転表面と混練シートを接触させることで、冷却、固化させることができるようになっている。混練シートと接触するベルトコンベアの素材は、ステンレス等であることが好ましい。
【0032】
粉砕機5は、冷却機4で得られた固形シートを粉末状に粉砕してエポキシ樹脂成形材料とすることができるものである。例えば、ボールミル、カッターミル等の粉砕機を挙げることができる。このとき得られる粉末状のエポキシ樹脂成形材料は、その平均粒径が0.1〜2mmであることが好ましい。
【0033】
このような構成としたことで、本発明の成形材料の製造装置は、製造装置を構成する金属表面とエポキシ樹脂成形材料組成物中の無機フィラー成分が強く擦れあわないように、すなわち、バッチ方式のロールを数段組み合わせてせん断力を受けないようにすることができ、エポキシ樹脂成形材料中に外部からの金属異物の混入を防止することができる。また、多段階での加熱ロールによる混練とすることで得られるエポキシ樹脂成形材料の成分の偏りを無くすことができ、かつ、連続生産による効率性をも確保することができる。
【0034】
次に、本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造方法について、図1のエポキシ樹脂成形材料の製造装置1を用いた場合を例に説明する。
【0035】
まず、本発明で用いる樹脂成形材料としては、常温で固形のエポキシ樹脂及び常温で固形のフェノール樹脂を主成分とする成形材料であれば、その種類を問わない。その他の原材料については、半導体封止用の成形材料として用いることができる公知の材料であればよく、同じく、その種類は問わない。すなわち、固形の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料であれば、その構成成分を特に限定しないものである。なお、ここで用いる原材料としては、上記した固形のエポキシ樹脂及び固形のフェノール樹脂の他に、硬化促進剤、無機充填材を必須の構成材料として含むものである。
【0036】
ここで用いるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられ、通常、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料に使用される常温で固形のエポキシ樹脂を用いればよい。これらは単独でも併用しても差し支えない。なお、液状のエポキシ樹脂では、半導体用エポキシ樹脂成形材料に要求される高温での体積抵抗率の要求数値を満たすことができず、かつ、即硬化性も付与し難い。
【0037】
また、本発明に用いる硬化剤としてのフェノール樹脂は、エポキシ樹脂を硬化させる常温で固形のものであれば特に限定されずに用いる。
【0038】
本発明に用いるフェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられ、通常、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料に使用される固形のフェノール樹脂を用いればよい。これらは単独でも併用しても差し支えない。エポキシ樹脂の場合と同様に、液状のフェノール樹脂では、半導体用エポキシ樹脂成形材料に要求される高温での体積抵抗率の要求数値を満たすことができず、かつ、即硬化性も付与し難い。
【0039】
これらの配合量としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比(エポキシ基数/フェノール性水酸基数)としては0.7〜1.4が好ましい。
【0040】
また、硬化剤成分に加えて、成形材料の硬化を促進させて半導体装置の製造を効率良く行うことができることから、硬化促進剤を添加することが好ましい。
【0041】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。例えば1,8−ジアザビシクロ(5.4.1)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられ、また、潜在性を有する尿素系触媒や包接触媒を用いてもよい。これらは単独でも混合しても差し支えない。
【0042】
本発明に用いる無機充填材としては、一般に、封止材料に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、繊維状シリカ、ガラス繊維、低膨張無機素材等が挙げられ、これらは単独でも併用しても差し支えない。
【0043】
無機充填材の配合量は、成形性と耐半田性のバランスから、全エポキシ樹脂組成物中75〜93質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは80〜91質量%である。75質量%未満だと、吸水率の上昇に伴い耐半田性が低下し、93質量%を越えると、ワイヤースイープ及びパッドシフト等の成形性の問題が生じ好ましくない。
【0044】
また、本発明においては、上記した成分の他、必要に応じて、カップリング剤や、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン等の難燃剤、リン系やリン・窒素系の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、イオン捕捉剤等を配合することができる。
【0045】
まず、上記した必須成分と、さらに、その他の成分を含めた原材料粉末と原材料液体を、ヘンシェルミキサー等の混合機2で混合して複合材料粉末とする第一の工程を行う。次いで、得られた複合材料粉末を、多段加熱ロール機3で溶融混練しながらシート状に加工し混練シートを得る第二の工程を行う。
【0046】
この第二の工程において、まず、複合材料粉末が、加熱ロール機31の上に供給される。すると、複合材料粉末は加熱ロール機31の二軸のロール間に送り込まれて、剪断、混練作用を受ける。十分に混練されたところで、かきとり手段34をロール表面に接触させて、ロール表面に貼りついている混練シートを引き剥がし、次の加熱ロール機32上に供給する。
【0047】
同様に、加熱ロール機32に供給された混練シートは、再度加熱ロール機32の二軸のロール間に送り込まれて、剪断、混練作用を受け、適当なところでかきとり手段35によりロール表面に貼りついている混練シートを引き剥がし、次の加熱ロール機33上に供給する。
【0048】
さらに、加熱ロール機33に供給された混練シートは、再度加熱ロール機33の二軸のロール間に送り込まれて、剪断、混練作用を受け、適当なところでかきとり手段36によりロール表面に貼りついている混練シートを引き剥がし、次の冷却機4上に供給する。
【0049】
ここで、多段加熱ロール機3の温度は、例えば、図1のように三段のものを用いる場合には、第一の加熱ロール機31を70〜120℃、第二の加熱ロール機32を70〜120℃、第三の加熱ロール機33を50〜100℃とすることが好ましく、このとき、前段の加熱ロール機より後段の加熱ロール機の温度を徐々に下げることが好ましい。
【0050】
このように多段の加熱ロールを用いることにより、各段における混練時間を短縮でき、混練品とロールが摺って削れる時間が短縮されるため、金属異物の混入を減らすことができる。また、ロール機のかきとり板を非導電性の素材にすることによる効果もある。さらに、多段の加熱ロールとすることで、従来行っていた同一温度条件下での混練から、複数の温度条件による混練が可能となり、製造樹脂特性に合った加熱条件で段階的に混練することができ、過混練を制限できることでアセトン不溶分を低減できる。
【0051】
続いて、得られた混練シートを、冷却機4にて冷却して固化させ、固形シートを得る第三の工程を行う。
【0052】
第二の工程で得られた混練シートを、15〜25℃に冷却し、固化させて固形シートとするものであるが、このとき、冷却機4としてベルトコンベアを用い、この回転表面を10〜20℃に冷却しておき、これに混練シートを接触させることで固化させ、固形シートを得る。
【0053】
さらに、固形シートを、粉砕機で粉砕して複合樹脂粉末を得る第四の工程を行う。
【0054】
このようにして得られた複合樹脂粉末は、粒状のエポキシ樹脂成形材料のことであり、その平均粒径が0.1〜2mmとなるように形成することが好ましく、0.5〜10mmとすることがより好ましい。このとき、得られた粒状の成形材料を上記範囲の粒子にするために、又は、上記範囲よりもさらに細かくするために、ボールミルやセラミック製粉砕機等により粉砕してもよい。ここで、本明細書における平均粒径は、篩による測定で求めたものである。
【0055】
上記のように、本発明のエポキシ樹脂成形材料の製造方法は、第一工程〜第四工程から構成されるエポキシ樹脂成形材料の連続製造方法である。ちなみに、第二の工程である加熱混練において、通常の一段の二軸加熱ロールを多段加熱ロール機に変えた以外は、通常の半導体用エポキシ樹脂成形材料の製造プロセスを採用することができるものである。なお、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、粉末状のまま出荷される場合を除き、打錠装置で所定の大きさのタブレットに加工されて出荷される。
【0056】
このようにして得られた粉末状又は粒子状の成形材料は、従来と同様、圧縮成形機又は射出成形機によりパッケージ成形を行うか、粒子状の成形材料を、さらに打錠機によりタブレット化して、該タブレットを用いて移送成形機にて封止成形を行って、半導体素子を封止すればよい。なお、本発明のエポキシ樹脂成形材料による半導体素子の封止に際しては、最近になって導入が図られている半導体素子の圧縮成形方法を好適に用いることができる。
【0057】
本発明の樹脂封止型半導体装置は、上記のように得られたエポキシ樹脂成形材料を用いて、粉、板、タブレット形状の形で、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で半導体素子を封止して得られるものである。
【0058】
このとき、用いる半導体素子として、半導体素子のワイヤー間のピッチが100μm以下、例えば、25〜50μmであっても、短絡不良やリーク不良の発生を有効に抑制することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
図1に記載した三段ロールからなる多段加熱ロール機を用い、以下の操作によりエポキシ樹脂成形材料を得た。
【0061】
まず、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:YX4000) 6.0重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104) 4.0重量部、球状溶融シリカ(平均粒径 21μm) 90重量部、をベース成分とし、これに、トリフェニルホスフィン 0.2重量部、エポキシシランカップリング剤 0.2重量部、カーボンブラック 0.3重量部、カルナバワックス 0.4重量部、をヘンシェルミキサーにより均一混合して複合材料粉末を得た。
【0062】
得られた複合材料粉末を、まず、第一の二軸ロール装置で、樹脂温度が95〜105℃になる条件で、全面投入し、せん断力を加えながら溶融混合し、原材料の投入1分後に全面かき取り装置でかき取り、次に、樹脂温度が85〜95℃になるように条件設定された第二の二軸ロール装置に移し、再度1分間混練した。続いて、再度全面かき取りを行い、樹脂温度が75〜85℃になるように条件設定された第三の二軸ロール装置に移送し、さらに、1分間の混練を行った。混練された樹脂シートをかき取り、シート状の混練シートを得た。
【0063】
得られた混練シートを冷却装置に送り、冷却、固化して固化シート(C)とした後、これをカッターミルにより粉砕して、粉末状のエポキシ樹脂成形材料(EMC−1)とした。
【0064】
[実施例2]
実施例1において、第三の二軸ロール装置を使わず、第一の二軸ロール装置での混練条件を、樹脂温度95〜105℃で1分間、第二の二軸ロール装置での混練条件を、樹脂温度80〜90℃で2分間、とし、実施例1と同様に粉末状のエポキシ樹脂成形材料(EMC−2)を得た。
【0065】
[実施例3]
実施例1において、多段加熱ロール機を4つの二軸ロールから構成したエポキシ樹脂成形材料の製造装置を使用した。このとき、第一の二軸ロール装置での混練条件を、樹脂温度95〜105℃で1分間、第二の二軸ロール装置での混練条件を、樹脂温度85〜95℃で40秒間とし、第三の二軸ロール装置での混練条件を、樹脂温度75〜85℃で40秒間とし、さらに、第四の二軸ロール装置での混練条件を、樹脂温度75〜85℃で40秒間とした。このように、実施例1と同様に粉末状のエポキシ樹脂成形材料(EMC−3)を得た。
【0066】
[比較例1]
実施例1と同一の組成を用い、一段ロールにて、樹脂温度が95〜105℃になる条件で、せん断力を加えながら溶融混合し、原材料の投入2分半後にかき取り装置でかき取り、冷却装置にて冷却の後、これを粉砕して、エポキシ樹脂成形材料(EMC−4)とした。
【0067】
[比較例2]
溶融混練機として比較例1におけるバッチ式ロールから、ロール上に送り刃を有する連続ロールを用いて、連続ロールの条件以外は、比較例1と同様にして、エポキシ樹脂成形材料を製造し、エポキシ樹脂成形材料(EMC−5)を得た。なお、送り刃の状況は、特開平10−310686号公報の図1〜3に倣った。なお、ロールからの取り出し温度が、85℃〜95℃になるように調整した。投入から取り出しまでの時間は、約2分と堆定している。
【0068】
〔試験例〕
実施例1〜3、比較例1〜2で得られたエポキシ樹脂成形材料について、スパイラルフロー、含有する金属量、最大金属異物量、アセトン不溶分、混練の均一性について試験を行い、また半導体素子を各エポキシ樹脂成形材料で封止したときの、長期信頼性評価試験を行い、その結果を表1にまとめて示した。
【0069】
【表1】

【0070】
1)スパイラルフロー(cm):EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度 175℃、注入圧力 6.9MPa、硬化時間 2分で測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、大きい数値を示す方が良好な流動性を示す。
2)金属量(ppm):電磁式金属測定器にて、エポキシ樹脂成形材料中の金属含有量を測定した。
3)最大金属異物量(個):エポキシ樹脂成形材料を300グラム、アセトンに溶解し、強力磁石で磁性体の捕集を行い、顕微鏡にて45μm以上の金属の観察を行った。
【0071】
4)アセトン不溶分(ppm):樹脂300gをアセトンに溶解させ、金網にてろ過し、不溶分を取り出す。残留物を薬包紙に落とし、これを秤量し、もとの樹脂の重量300gで除することでアセトン不溶分(ppm)を計算した。
5)混練の均一性:175℃の熱板に、樹脂5gを円錐状に撒き、600gの鉄板を乗せ、3分間放置する。その後、硬化物の長径、短径を測定し、「長径/短径」を計算することで、樹脂が均一に広がったかを混練の均一性として数値化した。
6)長期信頼性評価:アルミ配線を有する2mm角のテスト素子を、ボールミル粉砕後のエポキシ樹脂成形材料からなるタブレットを用いて樹脂封止したものを12素子作成し、TCT(−55℃〜120℃)500サイクル、PCT(2.5気圧、127℃)1000時間までのテストを行った。いずれも不良が生じなかったものを○、いずれかに生じたものを×とした。
【符号の説明】
【0072】
1…エポキシ樹脂成形材料の製造装置、2…混合機、3…多段加熱ロール機、4…冷却機、5…粉砕機、6…原料ホッパー、31…第一の二軸ロール機、32…第二の二軸ロール機、33…第三の二軸ロール機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を、混合機で均一に混合して複合材料粉末とする工程と、
前記複合材料粉末を二段以上の多段加熱ロール機を用い溶融混練して、シート状の混練シートとする工程と、
前記混練シートを冷却、固化させて固形シートとする工程と、
前記固形シートを粉砕して、粉末状のエポキシ樹脂成形材料とする工程と、
を有することを特徴とするエポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項2】
前記多段加熱ロール機において、前段の加熱ロール機よりも後段の加熱ロール機の温度を下げながら樹脂を溶融混練することを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記多段加熱ロール機による溶融混練において、各段において処理する材料をロールの全面に投入、全面でのかきとりを連続して行うことを特徴とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項4】
前記多段加熱ロール機の各段におけるロールからかきとられるシート形状のエポキシ樹脂混練物が、自然落下で、次段のロール又は次工程の冷却機に送られることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のエポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項5】
前記粉末状のエポキシ樹脂成形材料中に含まれる最大金属異物の粒径が45μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。
【請求項6】
常温で固形のエポキシ樹脂、常温で固形のフェノール樹脂、硬化促進剤及び無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を、均一に混合して複合材料粉末とする混合機と、
前記複合材料粉末を溶融混練してシート状の混練シートとする、二段以上の二軸の加熱ロール機を有する多段加熱ロール機と、
前記混練シートを冷却、固化させて固形シートとする冷却機と、
前記固形シートを粉砕して、粉末状のエポキシ樹脂成形材料とする粉砕機と、
を有することを特徴とするエポキシ樹脂成形材料の製造装置。
【請求項7】
前記多段加熱ロール機は、混練物をロール全面でかきとりすることができるかきとり手段を有することを特徴とする請求項6記載のエポキシ樹脂成形材料の製造装置。
【請求項8】
前記加熱ロール機が有するかきとり手段のロール表面との接触部分が、非導電性の素材からなることを特徴とする請求項7記載のエポキシ樹脂成形材料の製造装置。
【請求項9】
前記加熱ロール機には、前記複合材料粉末又は混練物をロール中央に寄せる寄せ板が設けられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載のエポキシ樹脂成形材料の製造装置。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のエポキシ樹脂成形材料の製造方法において製造されたエポキシ樹脂成形材料を用いて、半導体素子が封止されたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35468(P2012−35468A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176228(P2010−176228)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】