説明

エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】 実質的にハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まずとも、流動性、硬化性等の成形性、難燃性、高温保管特性、耐半田性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)特定量の水酸化アルミニウム、(E)特定量の一般式(1)で示される化合物及び/又は一般式(2)で示される化合物、並びに(F)前記(D)成分及び前記(E)成分を除く無機充填材、とを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
MgAl(OH)2a+3b−2c(CO (1)
(ただし、上記一般式(1)中、0<b/a≦1、0≦c/b<1.5)
MgAlx+1.5y (2)
(ただし、上記一般式(2)中、0<y/x≦1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。とりわけ、実質的にハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まずとも、難燃性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電子部品は、主にエポキシ樹脂組成物で封止されている。これらのエポキシ樹脂組成物中には難燃性を付与するために、通常ハロゲン系難燃剤及び三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物が配合されている。しかしながら、世界的な環境保護の意識の高まりの中、ハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を使用しないで、難燃性を有するエポキシ樹脂組成物の要求が大きくなってきている。
【0003】
また、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含むエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を高温下で保管した場合、これらの難燃剤成分から熱分解したハロゲン化物が遊離し、半導体素子の接合部を腐食し、半導体装置の信頼性を損なうことが知られており、こうした点からも難燃剤としてハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物を使用しなくても難燃グレードがUL−94のV−0を達成できるエポキシ樹脂組成物が要求されている。
このように、半導体装置を高温下(例えば185℃等)に保管した後の半導体素子の接合部(ボンディングパッド部)の耐腐食性のことを高温保管特性といい、この高温保管特性を改善する手法としては、五酸化二アンチモンを使用する方法(例えば、特許文献1参照。)や、酸化アンチモンと有機ホスフィンとを組み合わせる方法(例えば、特許文献2参照。)等が提案され、効果が確認されているが、最近の半導体装置に対する高温保管特性の高い要求レベルに対して、エポキシ樹脂組成物の種類によっては不満足なものもある。
【0004】
これらの要求に対して、種々の難燃剤が検討されている。例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、ホウ素系化合物等が検討されてきた(例えば、特許文献3参照。)が、これらは多量に配合しないと難燃性の効果が発現せず、しかも硬化性を低下させるおそれがある。また半導体装置の表面実装化が一般的になってきている現状では、吸湿した半導体装置が半田処理時に高温にさらされ、気化した水蒸気の爆発的応力により半導体装置にクラックが発生したり或いは半導体素子やリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に剥離が発生することにより、電気的信頼性を大きく損なう不良が生じ、これらの不良の防止、即ち耐半田性の向上が大きな課題となっていた。
【0005】
更に、近年の環境問題に関連して半導体装置の実装時に用いる半田の無鉛化に伴い半田処理温度が、従来より高くなり、要求される耐半田性はより厳しくなってきている。この耐半田性の向上のために、無機充填材を多量に配合することにより、低吸湿化、低熱膨張化、高強度化を図ってきている。このため、エポキシ樹脂としては低粘度型のものや、常温では結晶性であるが融点を越えると極めて低粘性を示す結晶性エポキシ樹脂を使用して、無機充填材の配合量の増加に伴うエポキシ樹脂組成物の成形時の流動性の低下を防止する手法が一般的にとられている(例えば、特許文献4参照。)。結晶性エポキシ樹脂はガラス転移温度が低いため、高温保管特性を向上させる必要がある。これらの状況から、難燃性を維持し、流動性、硬化性等の成形性、高温保管特性、耐半田性に優れ、ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を使用しないエポキシ樹脂組成物が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−146950号公報(第1〜8頁)
【特許文献2】特開昭61−53321号公報(第1〜7頁)
【特許文献3】特開2003−206391号公報(第2〜5頁)
【特許文献4】特開平7−130919号公報(第2〜4項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、実質的にハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まずとも、流動性、硬化性等の成形性、難燃性及び高温保管特性、耐半田性に優れた特性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)水酸化アルミニウム、(E)一般式(1)で示される化合物及び/又は一般式(2)で示される化合物、並びに(F)前記(D)成分及び前記(E)成分を除く無機充填材、とを必須成分とし、前記(D)水酸化アルミニウムの含有量が全エポキシ樹脂組成物に対して0.5〜5重量%であり、前記(E)一般式(1)で示される化合物及び/又は一般式(2)で示される化合物の含有量が全エポキシ樹脂組成物に対して0.01〜1重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
MgAl(OH)2a+3b−2c(CO (1)
(ただし、上記一般式(1)中、0<b/a≦1、0≦c/b<1.5)
MgAlx+1.5y (2)
(ただし、上記一般式(2)中、0<y/x≦1)
[2]全エポキシ樹脂組成物中に含有される臭素原子及びアンチモン原子が、ともに0.01重量%未満である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3]第[1]又は[2]項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うと、実質的にハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まずとも、流動性、硬化性等の成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は難燃性、高温保管特性、耐半田性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)特定量の水酸化アルミニウム、(E)特定量の上記一般式(1)で示される化合物及び/又は上記一般式(2)で示される化合物、並びに(F)前記(D)成分及び前記(E)成分を除く無機充填材、とを必須成分とすることにより、実質的にハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まずとも、流動性、硬化性等の成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び難燃性、高温保管特性、耐半田性に優れる半導体装置が得られるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも併用しても良い。これらの内では、特にビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が好ましい。
【0012】
本発明に用いるフェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂等が挙げられ、これらは単独でも併用しても良い。これらの内では、特にフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が好ましい。
【0013】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであれば良く、一般に半導体封止用材料に用いられているものを使用することができ、特に限定するものではない。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは単独でも併用してもよい。
【0014】
本発明に用いる水酸化アルミニウムは、難燃剤として作用するものであり、一般式(3)で示されるものである。一般式(3)で示される水酸化アルミニウムは、従来から難燃剤として用いられている結晶水が3つの水酸化アルミニウムである。
Al(HO) (3)
本発明に用いる水酸化アルミニウムの平均粒径は、特に限定するものではないが、0.01〜14μmであることが好ましい。平均粒径が下限値を下回ると、流動性が低下し、更に硬化物の抽出時の不純物量が増加するために耐湿信頼性の低下が生じる恐れがある。平均粒径が上限値を越えると、充分な難燃性が得られない恐れがある。本発明での粒径は、レーザー回折法で測定した値を用い、平均粒径は50重量%の累積になった時の粒径である。
水酸化アルミニウムの比表面積としては、0.1〜40m/gであることが好ましく、0.1〜10m/gであることがより好ましい。下限値を下回ると難燃性に劣る傾向にあり、上限値を越えると硬化性、流動性が低下する恐れがあり好ましくない。比表面積は、BET法で窒素ガスを用いて測定したものである。また、粒子の形状は限りなく球状に近いものが流動性の向上に効果があり好ましい。
本発明に用いる水酸化アルミニウムの配合量は、全エポキシ樹脂組成物中に0.5〜5重量%である必要がある。下限値を下回ると難燃性が不足し、上限値を越えると耐半田性、硬化性が低下する恐れがあり好ましくない。
【0015】
本発明に用いられる一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物は、エポキシ樹脂組成物中に含まれるイオン性不純物を捕捉する作用を有する。一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示されるハイドロタルサイト類化合物を焼成して得ることもできる。また、一般式(1)で示される化合物、及び一般式(2)で示される化合物は、結晶水を有していてもよい。これらは単独でも2種類以上併用して用いても差し支えない。
MgAl(OH)2a+3b−2c(CO (1)
(ただし、上記一般式(1)中、0<b/a≦1、0≦c/b<1.5)
MgAlx+1.5y (2)
(ただし、上記一般式(2)中、0<y/x≦1)
一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物は、イオン性不純物を捕捉すると自身の中にイオン性不純物を吸収する構造となり、イオン性不純物を捕捉して不活性化させる。従って、これらを配合したエポキシ樹脂組成物は、イオン性不純物による半導体回路の腐食を抑え、耐湿信頼性、高温保管性の向上が得られる。一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示されるハイドロタルサイト類化合物と比較するとイオン捕捉能が高く、耐湿信頼性や高温保管性の向上には効果が高いが、一方では、その分子構造上、粒子間に隙間がたくさんあるため多湿下では吸湿性が高くなり、耐半田リフロー性を低下させ易いので、配合量には注意を払う必要がある。
【0016】
一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物は、流動性、充填性を考慮すると、最大粒径としては75μm以下が好ましく、平均粒径は0.5〜25μmが好ましい。粒度分布の広いものが、成形時のエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低減するために有効である。
また、一般式(1)で示される化合物と一般式(2)で示される化合物との合計量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.01〜1重量%である必要がある。下限値を下回ると、イオン捕捉効果が小さいので耐湿信頼性や高温保管性を向上する効果が低く、また、難燃性付与という点でも不十分となる可能性がある。上限値を越えるとエポキシ樹脂組成物の硬化性が低下し、また、半導体素子を搭載する基板との密着力の低下、更には、一般式(2)で示される化合物ではエポキシ樹脂組成物の吸湿率が大きくなり耐半田リフロー性が低下する可能性がある。
【0017】
本発明に用いる水酸化アルミニウムは、単独でも難燃性を付与することができるが、十分な難燃性を発現させるには配合量を多くする必要がある。しかし配合量を多くすると、流動性、硬化性等の成形性及び硬化物の強度の低下、吸湿率の増加を引き起こす傾向にあり耐半田性が低下する。これらの特性の低下を防ぐためにも配合量は極力低減する必要がある。また、一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物は、若干の難燃性を付与する効果もあるが、これらの難燃剤としての効果は、従来の難燃剤として使用される水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等には及ばない。
本発明者は、水酸化アルミニウムと一般式(1)で示される化合物及び/又は一般式(2)で示される化合物を併用すると、相乗効果として更に難燃性が向上し、水酸化アルミニウムの配合量を低減できることを見出した。理由は定かではないが、両者を併用することにより、互いの能力を補い合うことで高い難燃性が得られ、結果として水酸化アルミニウムの配合量を少なくしても難燃性を維持し、流動性、硬化性等の成形性の低下、強度の低下、吸湿率の増加等を防ぐことができる。
【0018】
本発明に用いる、無機充填材(前記の水酸化アルミニウム、並びに一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物は除く)としては、一般に半導体封止用材料に用いられているものを使用することができ、特に限定するものではない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、これらは単独でも併用してもよい。平均粒径としては、0.5〜30μm、最大粒径としては75μm以下が好ましい。流動性、硬化性等の成形性と耐半田性のバランスから、前記の水酸化アルミニウム、並びに一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物を含めた無機充填材全体の配合量としては、全エポキシ樹脂組成物中に65〜94重量%含有することが好ましく、より好ましくは75〜92重量%である。下限値以下だと吸湿率の上昇に伴う耐半田性が低下し、上限値を越えると、ワイヤースィープ及びパッドシフト等の成形性の問題が生じる可能性がある。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、臭素原子、アンチモン原子の含有率が、ともに全エポキシ樹脂組成物中に0.01重量%未満であることが好ましく、完全に含まれない方がより好ましい。臭素原子、アンチモン原子のいずれかが0.01重量%以上だと、高温下に放置したときに半導体装置の抵抗値が時間と共に増大し、最終的には半導体素子の金線が断線する不良が発生する可能性がある。また環境保護の観点からも、臭素原子、アンチモン原子のそれぞれの含有率が0.01重量%未満で、極力含有されていないことが望ましい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(F)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤及びシリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤等、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(F)成分及びその他の添加剤等を、ミキサー等を用いて充分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000H、融点105℃、エポキシ当量195) 6.4重量部
フェノール樹脂1:フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、XLC−LL、軟化点75℃、水酸基当量174) 5.55重量部
トリフェニルホスフィン 0.2重量部
水酸化アルミニウムA(住友化学製、CL―303、平均粒径5μm、比表面積1.3m/g) 2.0重量部
Mg0.7Al0.31.15(平均粒径3μm、最大粒径10μm、以下、H1という。) 0.05重量部
球状溶融シリカ(平均粒径20μm) 85.0重量部
γ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン 0.3重量部
カーボンブラック 0.2重量部
カルナバワックス 0.3重量部
をミキサーを用いて常温で混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0024】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
【0025】
硬化性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分で成形した。金型が開いて10秒後のランナーの表面硬度をバコール硬度計#935で測定した。バコール硬度は硬化性の指標であり、数値が大きい方が硬化性が良好である。
【0026】
難燃性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分で、試験片(127mm×12.7mm×3.2mm)を成形し、175℃、8時間で後硬化し、UL−94垂直法に準じて難燃性を判定した。
【0027】
吸湿率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分で、直径50mm、厚さ3mmの円板を成形し、175℃、8時間で後硬化し、85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、重量変化を測定して吸湿率を求めた。単位は%。
【0028】
耐湿信頼性:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、16pSOP(厚さ1.95mm、チップサイズ3.5mm×3.0mm)を成形し、175℃、4時間で後硬化した。封止したテスト用素子のプレッシャークッカー試験(125℃、圧力2.2×105Pa)を行い、回路のオープン不良を測定し、不良発生時間で表した。単位は時間。
【0029】
耐半田性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間120秒で、80pQFP(2mm厚、チップサイズ9.0mm×9.0mm)を成形し、175℃、4時間で後硬化し、85℃、相対湿度85%で168時間加湿処理し、その後260℃の半田槽に10秒間浸漬した。20個のパッケージを顕微鏡で観察し、クラック発生率[(クラック発生率)=(外部クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を求めた。単位は%。また半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率[(剥離率)=(剥離面積)/(半導体素子面積)×100]を求めた。単位は%。
【0030】
高温保管特性:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、16pSOP(厚さ1.95mm、チップサイズ3.5mm×3.5mm)を成形した。得られた16pSOPを175℃で4時間ポストキュアした後、200℃のオーブン中で1000時間熱処理し、処理後に端子間の抵抗値を測定した。抵抗値の平均値が、処理前にくらべ1.0倍以上、1.2倍以下のものを○(合格)、1.2倍を超え10倍以下のものを△、10倍を超えるものを×とした(n=20)。
【0031】
実施例2〜11、比較例1〜7
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1、表2に示す。
実施例1以外で用いた材料の性状を以下に示す。
エポキシ樹脂2:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(軟化点55℃、エポキシ当量196)
フェノール樹脂2:フェノールノボラック樹脂(軟化点81℃、水酸基当量105)
水酸化アルミニウムB:住友化学製、C−3005、平均粒径0.5μm、比表面積7.9m/g
水酸化アルミニウムC:住友化学製、CL−310、平均粒径14μm、比表面積0.9m/g
Mg0.7Al0.3(OH)1.2(CO0.6(平均粒径3μm、最大粒径10μm、以下、H2という。)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:(軟化点62℃、エポキシ当量365、臭素原子含有率48重量%)
三酸化二アンチモン
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によると、実質的にハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まずとも、流動性、硬化性等の成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び難燃性、高温保管特性、耐半田性に優れた半導体装置が得られるので、高温の環境下で使用される半導体装置に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)水酸化アルミニウム、(E)一般式(1)で示される化合物及び/又は一般式(2)で示される化合物、並びに(F)前記(D)成分及び前記(E)成分を除く無機充填材、とを必須成分とし、前記(D)水酸化アルミニウムの含有量が全エポキシ樹脂組成物に対して0.5〜5重量%であり、前記(E)一般式(1)で示される化合物及び/又は一般式(2)で示される化合物の含有量が全エポキシ樹脂組成物に対して0.01〜1重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
MgAl(OH)2a+3b−2c(CO (1)
(ただし、上記一般式(1)中、0<b/a≦1、0≦c/b<1.5)
MgAlx+1.5y (2)
(ただし、上記一般式(2)中、0<y/x≦1)
【請求項2】
全エポキシ樹脂組成物中に含有される臭素原子及びアンチモン原子が、ともに0.01重量%未満である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2006−63136(P2006−63136A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245087(P2004−245087)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】