説明

エラストマー成形体の製造方法及び電子写真装置用ブレード部材

【課題】エラストマー原料を投入し硬化後、薄膜状の成形体であっても、ちぎれなどを生じさせず、成形型から容易に、剥離、脱型することができるエラストマー成形体の製造方法や、これを用いた電子写真装置用ブレード部材を提供する。
【解決手段】複数の面を有する成形型に、エラストマー原料を供給して成形体を製造するエラストマー成形体の製造形方法において、複数の各面に異なる離型処理を施した成形型を用いる。成形型が遠心成形型であって、円筒内周面と、該円筒内周面の端部に設けられる底面若しくは縁周面を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー成形体の製造方法や、この方法を用いて製造された電子写真装置用ブレード部材に関する。より詳しくは、薄く均一な厚さを有するエラストマー成形体を製造するのに好適なエラストマー成形体の製造方法や電子写真装置用ブレード部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置の画像形成装置においては、均一に帯電した感光体を露光して得られた静電潜像に、現像剤であるトナーを付着させ、それを紙等の転写材に転写して画像を形成している。画像形成装置には、感光体へのトナー供給量を一定とするため現像ローラー上に一定膜厚のトナー薄膜を形成する現像ブレードや、感光体の静電潜像上のトナーを記録材へ転写後、残留するトナーを感光体表面から除去するクリーニングブレード等のブレードが設けられている。このようなブレードは、弾性体で成形されたブレード部材を有し、ブレード部材を接合する金属製等の硬質の支持体を介して電子写真装置に設置される。ブレード部材は、10μm程度の現像剤を現像ローラー上に均一に形成したり、感光体上から除去する機能を有することから、当接圧のバラツキを生じさせる厚さの不均一は、形成する画像に致命的な欠陥を生じさせることになる。このため、ブレード部材には高精度で均一な厚さを有することが要求される。
【0003】
このようなブレード部材の製造方法としては、エラストマー原料を遠心成形によりシート状とし、裁断する方法が、一般的方法の一つとして挙げられる。遠心成形によりシートを得る方法は、ドラム状の遠心成形型に、可塑性エラストマー原料を投入し、遠心力により成形型の内周面に均一な厚さを有する薄肉シートを成形する方法であり、得られたシートは各種部材へ適用が可能である。
【0004】
しかし、遠心成形によるエラストマー部材の成形にはいくつかの欠点がある。
【0005】
まず第一に、エラストマー原料として熱硬化型ポリウレタンのような接着性を有する材料を選択した場合、遠心成形後成形型からの成形体の剥離・脱型が非常に困難であることである。脱型を容易にするために、一般には遠心成形型の内周面に溶剤で希釈したシリコーンオイル系やフッ素系の離型剤を塗布して使用される。しかし、離型剤のオイル成分が過剰のときには成型品に移行してしまい、これが成形品において曇りを発生する場合がある。さらにはオイル成分の移行は成形体において接着性を低下させるという悪影響を及ぼすこともある。また、離型剤塗布量のバラツキによって、成形体において成形型からの離脱性が変動する。離脱性が悪い場合には取り出し時にちぎれが生じ生産数の減少のみならず、改めて型の清掃を行う等生産効率が低下する。離型剤と離型手法に関しては関与する要因が多い上に学術的な知見も少なく、これらの離型剤の種類の選定、希釈率、塗布量、塗布頻度、清掃頻度等の最適化は経験に頼るしかないのが現状である。
【0006】
第二としては、一定の厚さを確保することが容易ではないことが挙げられる。遠心成形は薄肉の円筒寸法を得る場合や薄くて大面積の均一なシート状の製品を作製する場合に有効であるが、常に均一な厚さ寸法を得るには装置の厳密な精度管理が必要になる。遠心成形型は回転する円筒状の成形型を備え、所望の厚さとなるような量の材料を投入し、回転の遠心力で材料を円筒内周面に薄膜に形成し加熱・硬化して成形体を得ているが、その内周面の振れがそのまま成形体に反映され、その厚さにバラツキが生じてしまう。更に、内周面に傷等が入った場合はそれが製品にそのまま転写されるという問題もある。つまり、遠心成形型にはその回転軸の水平精度、円筒内周面の精度、内周面の円滑さが高く要求され、常に機械的精度を高く維持することが求められ、管理に手間がかかるという課題である。
【0007】
第三としては電子写真分野に関するニーズである。最近の電子写真分野の技術進歩により、現像剤量規制ブレードにおいて、現像ローラーと接触する表面に特定の表面粗さを有することがより高機能化を図ることができることが明らかにされている。特定の表面粗さが付与された現像剤量規制ブレードにより現像ローラー上に形成する現像剤の量が均一にコントロールされ、濃度ムラのない高画質な画像を得ることができる。遠心成形型により得られるシートは、このような表面粗さを有するものとして得られるものではなく、これをそのまま現像剤量規制ブレードへ適用することは困難である。
【0008】
上記第一の問題点に対して、原料を投入する成形型内周面に液状シリコーンゴムなど熱硬化性材料を流し込み、これを硬化させてシリコーン層を設け、原料の投入の際に液状の離型剤を用いることを回避する方法が報告されている(特許文献1)。
【0009】
第二の問題点に対して、遠心成形型内に液状材料を投入して硬化させ、遠心成形型内に層を設け、層を改めて設けることによって遠心成形機内にある振れを吸収して均一な薄膜の成型品を得ることが報告されている(特許文献2)。
【0010】
第三の問題点について、現像剤量規制ブレードに対して現像剤担持体と当接する部分の表面にある一定の粗し処理を行うことにより良好な画像を得られることが明らかにされている(特許文献3)。更に、ひとつひとつの部材毎に研磨などによる表面粗し処理を行うのは膨大な手間がかかるので、遠心成形で一度に表面に粗し処理を施す手法が提案されている。例えば、遠心成形型の内周面に設けた離型層に粗し処理を施し、成形体を遠心成形型から剥離、脱型するのを容易にすると同時に成形体表面に離型層の粗し表面を効率よく転写し、簡便に高機能化した電子写真用部材を得る方法である(特許文献4)。
【0011】
以上のように遠心成形型を用いたエラストマーの成形方法が報告されているが、成形体の剥離、脱型をより容易にし、成形型からの取り出し時における成形体のちぎれなどを抑制できるさらなる成形方法の改良が要請されている。
【特許文献1】特開2000−172068
【特許文献2】特開2000−158555
【特許文献3】特開2004−012542
【特許文献4】特開2004−025846
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、エラストマー原料を投入し硬化後、薄膜状の成形体であっても、ちぎれなどを生じさせず、成形型から容易に、離脱、脱型することができるエラストマー成形体の製造方法や、これを用いた電子写真装置用ブレード部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは成形型を用いたエラストマー成形体の製造方法について鋭意研究を行った。図5の部分概略構成図に示すように、遠心成形型10は面10a上に離型層11を有し、面10b上には離型処理が施されていない従来の成形型(特許文献1、3、4)を用いて、離型層11上に薄膜状のエラストマー成形体13を成形した。そして、硬化後成形型10から薄膜状のエラストマー成形体13を剥離、脱型しようとしたところ、図6に示すように、離型層11間においては容易に剥離できたが、面10bに癒着が生じる。このような場合、厚さ0.5mm〜2.0mm程度の成形体の場合、完全に剥離不能となることはないものの、成形型10からエラストマー成形体を脱型することは困難であり、脱型不良となる。具体的には、薄膜状の成形体13を無理に剥離しようとすると成形体13に変形が生じる、エラストマーが伸びきった状態で剥離すると外れた瞬間に発生するゴムの収縮により成形体が折れ曲がり接着する、最悪の場合ちぎれが発生することが分かった。しかしながら、成形型の面10bに、面10aとは異なる離型処理を施すことにより、これらの脱型不良の発生を抑制することができることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、複数の面を有する成形型に、エラストマー原料を供給して成形体を製造するエラストマー成形体の製造形方法において、複数の各面に異なる離型処理を施した成形型を用いることを特徴とするエラストマー成形体の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、上記エラストマー成形体の製造方法を用いて作製されたことを特徴とする電子写真装置用ブレード部材に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエラストマー成形体の製造方法は、エラストマー原料を投入し硬化後、薄膜状の成形体であっても、ちぎれなどを生じさせず、成形型から容易に、離脱、脱型することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のエラストマー成形体の製造方法は、複数の面を有する成形型に、エラストマー原料を供給して成形体を製造するエラストマー成形体の製造形方法において、複数の各面に異なる離型処理を施した成形型を用いることを特徴とする。
【0018】
本発明のエラストマーの製造方法に用いる成形型としては、複数の面を有するものである。複数の面としては、平面、曲面いずれの面であってもよい。複数の面を有する成形型としては、交角を有して配置される少なくとも2面を有するものであればよい。具体的形状としては、円筒形状、直方体形状、立方体形状などを挙げることができるが、円筒形状であることが遠心成形を行い、薄膜状の成形体を得る場合としては、好ましい。
【0019】
このような複数の面には、複数の各面に異なる離型処理が施される。成形型としてドラム状の遠心成形型を用いた場合の一例を挙げて説明する。かかる遠心成形型は、図1の概略斜視図、図2の要部の構成図に示すように、異なる離型処理を施された複数の面として、円筒内周面1aとこの円筒内周面の両端部に略垂直に設けられる1対の縁周面1bとを有する。円筒内周面1aとこの円筒内周面の両端部に略垂直に設けられる縁周面1bに異なる離型処理を施す。ここで1対の縁周面に対しては同一の離型処理が施されていてもよい。また、円筒内周面の両端部に略垂直に設けられる縁周面は、何れか一方に設けられるものであっても、又は縁周面に替えて円筒の底面全体に亘って設けることもできる。
【0020】
円筒内周面に施す離型処理としては、シリコーンオイル系離型剤(例えば信越化学工業社製 商品名KS707)の塗布や、シリコーン樹脂の焼き付けタイプの離型層(例えば信越化学工業社製 商品名SEPA−COAT)を設けることを挙げることができる。また、円筒内周面に施す離型処理としては、シリコーンゴム等からなる離型層を設ける処理を挙げることができる。シリコーンオイル系離型剤による処理の場合、離型剤の成形体への移行や塗布作業のバラツキを受けやすく、シリコーン樹脂の焼き付けによる処理の場合、その加工処理に手間がかかる。また、電子写真装置の現像剤量規制ブレードとして用いる場合には、遠心成形後、更に成形体の表面粗し加工処理を施す必要がある。シリコーンゴム等の離型層を設ける離型処理の場合は、成形体への離型剤の移行がなく、成形毎の離型処理を不要とし、離型層表面に粗し加工を施すことにより、成形と同時に表面粗さの転写を行うことができ、生産効率の向上を図ることができるため、好ましい。
【0021】
上記離型層となるシリコーンゴム層としては、噴霧、刷毛塗り等の塗工成形によってもよいが、遠心成形可能な液状未硬化物で成形可能なものが好ましい。遠心成形により円筒内周面に成形した場合、成形型の中心軸に振れが生じている場合でも、シリコーンゴム層がその振れを吸収し相殺するような厚さに成形される。このため、シリコーンゴム層上に遠心成形される成形体としては、均一な厚さで得られる。このような液状未硬化物のシリコーンゴムとしては、湿気硬化型液状シリコーンゴム、二液硬化型液状シリコーンを挙げることができる。短時間で離型層を作成可能な点から二液付加熱硬化型液状シリコーンとして、具体的には、例えば、KE−1204A/B(信越化学工業社製)等が好ましい。また、ニ液硬化型液状シリコーン等の遠心成形可能な液状未硬化物によるシリコーンゴム層が好ましいもう一つの理由としては、傷が生じた成形型も再生して使用可能とできる点にある。上記オイル系離型剤やシリコーン樹脂の焼き付け離型層の場合は、例えば、0.1mmの傷が生じた成形型は使用できないが、二液硬化型液状シリコーンゴム層上に、更に二液付加熱硬化型液状シリコーンゴム層を積層することにより使用可能である。積層するシリコーンゴム層の厚さとしては、例えば0.5mm厚さとすることができる。
【0022】
シリコーンゴム層を遠心成形するには、液状シリコーンゴム原料を成形型に投入して、成形型を回転し円筒内周面上に薄膜を形成し、加熱硬化させる方法によることができる。シリコーンゴム層の厚さは、例えば、0.5〜10mmを挙げることができる。シリコーンゴム層が0.5mm以上であれば、成形型の振れの修正、成形型の傷処理を容易に行うことができ、10mm以下であれば成形体への熱伝導が低下するのを抑制することができる。
【0023】
また、シリコーンゴム層は表面に粗し処理を施すことが、電子写真装置の現像剤規制ブレード部材用成形体を作製する場合は好ましい。シリコーンゴム層の表面粗さは、成形体表面に転写され、成形体表面はシリコーンゴム層表面粗さが反映されるので、現像剤量規制ブレード表面粗さに設定しておくことが好ましい。シリコーンゴム層の表面粗さRzjisとしては、具体的に、2〜20μmを挙げることができる。表面粗さが2μm以上であれば濃度ムラの発生を抑制でき、20μm以下であれば現像剤のすり抜けを抑制することができる。このような表面粗さを有するはシリコーンゴム層を成形するには、液状シリコーンゴム中に混合させる固体潤滑剤の種類や粒子径で調整することができる。
【0024】
ここで表面粗さの値は、十点粗さ平均(Rz)として、測定機としてSE3500(小阪研究所(株)製)を用い、JISB0601に準じた測定方法による値を採用することができる。
【0025】
上記円筒内周面の両端部に略垂直に設けられる縁周面若しくは底面に施す離型処理としては、上記円筒内周面と異なる離型処理であればいずれであってもよいが、円筒内周面の離型処理に比較して離型効果が低いものであってもよい。縁周面若しくは底面に施す離型処理に用いる材質としては、円筒内周面と比較して広範囲な材料を適用することができるが、アルキルシロキサンやポリフッ化エチレン等を好ましく挙げることができる。縁周面若しくは底面に施す離型処理としては、シリコーンオイル系離型剤塗布、シリコーン樹脂の焼き付け離型層、シリコーンゴムの離型層の成形、フッ素化合物による成形型表面の処理、離型用テープの接着等を挙げることができる。具体的には、シリコーン樹脂系の焼き付けタイプとして、例えばSEPA−COAT(信越化学工業社製)を縁周面若しくは底面に塗布する。次に、150℃で1時間焼成して離型層を成形することができる。また、縁周面若しくは底面に施す離型処理としては、液状シリコーンゴムを用いた処理であってもよく、未硬化の液状シリコーンゴムをスプレー噴霧、刷毛塗り、シリンジ滴下等の塗工成形により離型層を成形してもよい。また、離型用テープの接着としては、シリコーン系テープ(ニッパ株式会社製 シリコーンテープNo.100)や、ポリフッ化エチレン系テープ(日東電工製 ニトフロン粘着テープ)を貼着する方法を挙げることができる。離型用テープは簡便にかつ充分に機能を発揮でき、作成が非常に簡便である上に、汚れが発生したり破損した場合、張替作業が金属表面処理に比べ遥かに容易な点から、好ましい。
【0026】
上記縁周面若しくは底面に施す離型処理は、円筒内周面に施す離型処理に接触しない範囲の必要最小範囲に施すことができるが、円筒内周面に施す離型処理に先んじて行い、円筒内周面に施す離型層の下層となる範囲に設けることもできる。縁周面若しくは底面に施す離型処理は、その処理としての離型剤、離型層、離型テープ等が上記円筒内周面の離型層等と固着可能であることから、円筒内周面の離型処理に先行させると、複数面に対する離型処理を容易に行うことができる。具体的には、縁周面若しくは底面に施す離型処理が、離型層を成形する場合、図2に示すように、縁周面1b上に離型層2を成形型の円筒内周面1aに達するように設け、その後、円筒内周面1aに離型層1を設けることができる。また、縁周面若しくは底面に施す離型処理が、成形型の表面処理の場合、図3に示すように、フッ素化合物により成形型の全表面処理4を行い、その後、円筒内周面1aに離型層1を設けることができる。また、縁周面若しくは底面に施す離型処理が、離型用テープの接着の場合、図4に示すように、離型テープ5を縁周面1bと円筒内周面1aの端部まで設け、その後、離型テープ5が設けられた周縁部を含め円筒内周面1a上に離型層1を設けることができる。このように離型テープ5を縁周面1bと円筒内周面1aの端部まで設けることにより、離型層1を張替える場合、離型テープ5を剥離することにより、離型層を容易に剥離することができ、張替えを容易に行うことができる。
【0027】
上記成形型を用いる本発明のエラストマーの製造方法に適用可能な成形方法としては、成形体の形状を有する成形型内に流動性を持たせた材料を注入して硬化する型内成形や、遠心成形、射出成形、押出成形等、材料を負荷して成形する方法を挙げることができる。
【0028】
本発明のエラストマー成形体の製造方法において、使用するエラストマー原料としては特に限定されるものではなく、いずれのものであってもよい。エラストマー原料として、熱硬化したとき成形型への接着性が高いポリウレタンエラストマー成形体は電子写真装置のブレード部材として多用されることからも、ポリウレタンエラストマー成形体用プレポリマーを含むものを好適なものとして挙げることができる。かかるプレポリマーとして、具体的に、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるポリウレタンプレポリマー等を挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、2以上のイソシアネート基を有するものであればよく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)等を挙げることができる。これらの化合物は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記プレポリマーに用いるポリオールとしては、2以上のOH基を有するものであればよいが、ブチレンアジペートポリエステルポリオール、ヘキシレンアジペートポリエステルポリオールや、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価のアルコール等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、プレポリマーの他上記エラストマー原料として、ウレタン化触媒を含んでいてもよい。ウレタン化触媒としては、具体的には、ジメチルエタノールアミンなどのアミノアルコール、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどの第三級アミンや、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−ブタンジアミンなどのテトラアルキルジアミン、トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系や、ジブチル錫ジラウレート等の金属触媒などを例示することができる。
【0031】
上記ウレタン化触媒の配合量は、例えば、エラストマー原料中10〜500ppmとすることができる。ウレタン化触媒の配合量が10ppm以上であれば、反応を促進させることができ未反応のイソシアネートの残量の減少を図ることができる。また、500ppm以下であれば、成形型への注入前に反応の進行を抑制し高粘度になるのを防止して均一な遠心成形を行うことができる。
【0032】
上記エラストマー原料中には、必要に応じて顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、加硫促進剤、潤滑剤、導電剤等の添加剤を配合することができる。
【0033】
本発明の電子写真装置用ブレード部材は、本発明のエラストマー成形体の製造方法を使用して作製されたものである。例えば、上記エラストマー成形体の製造方法により得られた薄膜円筒状のポリウレタン成形体から、ブレード部材を切り出して、クリーニングブレードや現像剤規制ブレードのブレード部材とすることができる。このブレード部材は、鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛メッキクロメート皮膜鋼板、クロムフリー鋼板や、6−ナイロン、6,6−ナイロン等の支持部材と接合し、支持部材を介して、電子写真技術を応用した電子写真装置に設置可能となっている。
【実施例】
【0034】
次に本発明について実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[エラストマー原料の調製]
エラストマー原料としては、MDI−ポリブチレンアジペート系プレポリマー(コロネート4387:日本ポリウレタン工業社製、イソシアネート価6.2質量%)を用いた。更に、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンを70:30で混合し、TEDA(トリエチレンジアミン)を1000ppm加えたものを硬化剤とした。
【0036】
ポリウレタンプレポリマーが完全に溶解しきって透明になるまで、およそ8時間80℃の電気炉で予熱し、ここに硬化剤をイソシアネート基に対する水酸基のモル比が0.95になるように混合してエラストマー原料を得た。
【0037】
[成形体の成形]
[実施例1]
径400mm、幅250mmの遠心成形金型を用いた。テフロンテープ(日東電工社製ニトフロン粘着テープ)を、図2に示す離型層2と同様に、縁周面に一回り貼り付けた。次いで、二液熱付加硬化型シリコーンゴム(信越化学工業社製 KE1204A/B)を二液混合して3時間の真空脱泡後、130℃に加熱し、800rpm回転させた遠心成形金型に、厚さ1mm相当量を投入した。130℃、800rpmで2時間、液状シリコーン層の硬化を行い、円筒内周面に離型層を作製した。
【0038】
上記エラストマー原料を、成形体の厚さが1mm相当になるように投入した。投入後、遠心成形金型を回転速度を800rpm、130℃に維持し、45分間熱硬化を行った。
【0039】
[剥離性評価]
得られた薄膜円筒状のポリウレンエラストマ−成形体について、遠心成形金型から脱型するときの剥離しやすさについて、脱型する際の成形物に剥離力が不足することにより起こる以下の1〜4の不良の発生回数につき、以下のように評価を行った。評価は成形体の成形を50回繰り返し行い、50回中に発生する不良回数を評価基準とした。結果を表1に示す。
1.成形体にちぎれが生じ端部が型内に残る。
2.成形体を取り出す際に力がかかり、成形体の形状が変形する。
3.成形体の端部が固着し裂け目が生じる。
4.完全に脱型できない。
◎:2以下
○:5以下
×:5以上。
【0040】
[実施例2]
実施例1の離型層(図2中の符号2)に示すように貼り付けたテフロンテープ替えて、図4に示す離型テープ5と同様に、遠心成形金型の円筒内周面に掛かるように縁周面に一回り貼り付けた。その他は、実施例1と同様に、成形体の成形を行い、遠心成形金型から脱型するときの剥離性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
実施例1の離型層(図2中の符号2)に示すように貼り付けたテフロンテープ替えて、シリコーンレジン系焼き付けタイプの離型剤(信越化学工業社製 SEPA−COAT)を噴霧し、遠心成形金型の円筒内周面と縁周面全面に離型層を成形した。その後、実施例1と同様に円筒円周面上に離型層を作製した。実施例1と同様に、成形体の成形を行い、遠心成形金型から脱型するときの剥離性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例4]
実施例2と同様にして遠心成形金型の円筒内周面に掛かるように縁周面に離型テープを設け、シリコーンゴムを円筒内周面に投入した。シリコーンゴムが硬化する前に、同じシリコーンゴムを炭化水素系溶剤(エクソン化学社製 アクトレル)で5倍に希釈した後、固体潤滑微粒子(東レ・ダウコーニング社製 トレフィルR−902A)をシリコーンと同量加えて分散した後、シリコーン表面に噴霧し、表面粗さRzjis8μmの離型層を作製した。実施例1と同様に、成形体の成形を行い、遠心成形金型から脱型するときの剥離性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
遠心成形金型の縁周面に離型テ−プを設けないこと以外は、実施例1と同様に円筒円周面上に離型層を作製した。実施例1と同様に、成形体の成形を行い、遠心成形金型から脱型するときの剥離性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
130℃に加熱し100rpmに回転した遠心成形金型にシリコーンオイル系離型剤(信越化学工業製 KS707)を投入し、シリコーンオイル系離型剤を円筒内周面に塗布した。実施例1と同様に、成形体の成形を行い、遠心成形金型から脱型するときの剥離性について評価を行った。シリコーンオイル系離型剤の塗布は成形体の成形毎に行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1と比較例1から、縁周面に離型処理を施すことにより成形体の脱型時の不良低減を図ることができ、成形体の剥離性が著しく改善されることが分かる。実施例3から、縁周面の離型処理は離型テープ、シロキサン樹脂を焼き付けた離型層等を設けることにより剥離性の向上を促すことが分かる。
【0047】
また、比較例2から円筒内周面のみにシリコーン系離型剤を塗布した結果、不良の発生率は比較例1とほぼ同等となり、縁周面の離型処理が成形体の離型性に大きく寄与していることが分かる。
【0048】
以上のように、複数の面を有する成形型の各々の面に異なる離型処理を施すことにより、脱型を容易にするのみでなく、表面粗さの成形、離型処理の再生、成形型の利用性などの点においても好ましく、生産効率を向上させ得ることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のエラストマー成形体の製造方法に用いる遠心成形型の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明のエラストマー成形体の製造方法に用いる遠心成形型の一例の要部の概略構成図である。
【図3】本発明のエラストマー成形体の製造方法に用いる遠心成形型の一例の要部の概略構成図である。
【図4】本発明のエラストマー成形体の製造方法に用いる遠心成形型の一例の要部の概略構成図である。
【図5】従来の遠心成形型を示す概略構成図である。
【図6】従来の遠心成形型を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1、2 離型層
1a 円筒内周面
1b 縁周面
3 成形体
4 フッ素化合物による処理
5 離型テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面を有する成形型に、エラストマー原料を供給して成形体を製造するエラストマー成形体の製造形方法において、複数の各面に異なる離型処理を施した成形型を用いることを特徴とするエラストマー成形体の製造方法。
【請求項2】
成形型が遠心成形型であって、円筒内周面と、該円筒内周面の端部に設けられる底面若しくは縁周面を有することを特徴とする請求項1記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項3】
遠心成形金型の円筒内周面が、シリコーンゴムを含有する材料で成形された離型層を有することを特徴とする請求項2記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項4】
離型層が、液状シリコーンゴムを供給し遠心成形されたことを特徴とする請求項3記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項5】
液状シリコーンゴムが、二液硬化型シリコーンゴムであることを特徴とする請求項4記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項6】
離型層が、表面粗さRzjisとして2μmから20μmの範囲であることを特徴とする請求項3から5のいずれか記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項7】
遠心成形金型の底面若しくは縁周面が、アルキルシロキサンまたはポリフッ化エチレンを有する材料で成形された離型層を有することを特徴とする請求項2から6のいずれか記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項8】
離型層が、シリコーン系テープまたはポリフッ化エチレン系テープを含むことを特徴とする請求項7記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項9】
エラストマー原料が、ポリウレタンエラストマー成形体用のプレポリマーを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項10】
エラストマー成形体が電子写真装置用ブレード部材であることを特徴とする請求項1から9のいずれか記載のエラストマー成形体の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか記載のエラストマー成形体の製造方法を用いて作製されたことを特徴とする電子写真装置用ブレード部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−94022(P2008−94022A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279949(P2006−279949)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】