説明

エレベーターの防犯装置

【課題】商品等を盗難しエレベーターを利用して逃走しようとする犯人の逃走を有効に抑止して犯人の確保を容易にすることが可能であるエレベーターの防犯装置を提供する。
【解決手段】エレベーターの防犯装置において、商品識別情報が記憶された電子タグと、エレベーターの出入口を通過する商品に付された電子タグを検出し、当該検出した電子タグの商品識別情報を読み出す電子タグ検出手段と、前記読み出された商品識別情報に基づいて、前記検出された電子タグが付された商品の精算状態を判別する商品精算状態判別手段と、電子タグ検出手段により検出された電子タグが付された商品の精算状態が、商品精算状態判別手段により未精算であると判別された状態で、乗りかごの戸が全閉した場合に、登録されている呼びをキャンセルした上で乗りかごを所定の階床で戸開待機させる防犯運転を行う制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの防犯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、店舗等における商品等の盗難防止のため、商品等にタグ装置を取り付けるとともに、店舗等の出入口にタグ装置に対応したゲート装置を設置した警告音発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された警告音発生装置においては、利用客が未精算の商品を店外へと持ち出した場合は、タグ装置が商品に付属したままゲート装置を通過することになり、これを検知したタグ装置及びゲート装置の一方又は両方が警告音を発する。
【0003】
また、物品を販売する店舗等においてエレベーターを利用する利用客が、乗りかご内で購入しようとする物品の個別確認を行うことができるエレベーター装置も従来において知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載されたエレベーター装置は、物品に当該物品の個別情報を記憶したICタグを取り付けておき、乗りかご内に設けけられた物品個別情報受信手段によって、各物品のIDタグの個別情報を読み取るものである。そして、読み取った個別情報に基づいて、乗りかご内で電子マネー等を用いて精算処理を行うことができる。
【0004】
また、従来のエレベーターにおける防犯装置としては、乗りかご内にある緊急スイッチを操作すると、復旧スイッチを操作するまで、乗りかご内の非常ベルを鳴らしながら乗りかごが各階に停止しては戸開閉する防犯運転を繰り返すようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−279082号公報
【特許文献2】特開2010−030757号公報
【特許文献3】特公昭51−035011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された従来における警告音発生装置においては、会計処理を済ませていない商品等がゲートを通過して持ち出されても、警告音が鳴るのみである。このため、ゲートがエレベーターの出入口近傍に設けられているような場合、商品等を盗難した犯人がゲートを通過してすぐにエレベーターに乗り込んでしまうと、エレベーターは通常通り運転されるため、犯人の逃走を抑止することができないという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に示された従来におけるエレベーター装置においては、エレベーターの乗りかご内に未精算の商品等が持ち込まれた場合に、単にこの商品等の精算処理を行うものである。従って、仮に悪意をもって未精算の商品等を乗りかご内に持ち込んだ者がいたとしても、エレベーターは通常通り運転されるため、盗難する意図をもって未精算の商品等を乗りかご内に持ち込んだ犯人の逃走を抑止することができないという同様の課題がある。
【0008】
また、特許文献3に示された従来におけるエレベーターの防犯装置においては、エレベーターを防犯運転へと移行させるためには、乗りかご内にある緊急スイッチを操作しなくてはならない。商品等を盗難しエレベーターを利用して逃走しようとした犯人を追う場合には乗りかごの外から追うことになる。このため、犯人に先に乗りかご内に乗り込まれてしまうと、乗りかご内にある緊急スイッチを操作することは難しく、エレベーターを防犯運転に移行させるのは著しく困難になってしまう。従って、犯人の逃走を抑止することができないという課題がある点は、上述した2つの従来技術と同様である。
【0009】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、商品等を盗難しエレベーターを利用して逃走しようとする犯人の逃走を有効に抑止することができ、犯人の確保を容易にすることが可能であるエレベーターの防犯装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るエレベーターの防犯装置においては、個々の商品を識別するための商品識別情報が記憶された電子タグと、エレベーターの出入口を通過する前記商品に付された前記電子タグを検出し、当該検出した前記電子タグの前記商品識別情報を読み出す電子タグ検出手段と、前記電子タグ検出手段により読み出された前記商品識別情報に基づいて、前記電子タグ検出手段により検出された前記電子タグが付された前記商品の精算状態を判別する商品精算状態判別手段と、前記電子タグ検出手段により検出された前記電子タグが付された前記商品の精算状態が、前記商品精算状態判別手段により未精算であると判別された状態で、前記エレベーターの乗りかごの戸が全閉した場合に、登録されている呼びをキャンセルした上で前記乗りかごを所定の階床で戸開待機させる防犯運転を行う制御手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るエレベーターの防犯装置においては、商品等を盗難しエレベーターを利用して逃走しようとする犯人の逃走を有効に抑止することができ、犯人の確保を容易にすることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1及び実施の形態2に係るエレベーターの防犯装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの防犯装置のエレベーターの出入口のドア部分を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの防犯装置の図2の要部を拡大して示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの防犯装置のエレベーターの出入口において電子タグ付商品を検出する様子を概念的に説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの防犯装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るエレベーターの防犯装置の動作の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1から図5は、この発明の実施の形態1に係るものである。まず、図1にエレベーターの防犯装置の全体構成を示す。
この図1において、1は、エレベーターの図示しない昇降路内に昇降自在に配設された乗りかごである。この乗りかご1が停止する(換言すればエレベーターが停止する)各階床には、乗場2がそれぞれ設けられている。これらの乗りかご1及び乗場2には、乗りかご1が各階床の乗場2に停止した際に乗りかご1内と停止階床の乗場2とを行き来するための、エレベーターの出入口が形成されている。
【0015】
図2にこのエレベーターの出入口部を示す。このエレベーターの出入口は、乗りかご1側の出入口と乗場2側の出入口とから構成されている。そして、乗りかご1が各階床の乗場2に停止した際には、乗りかご1側の出入口と乗場2側の出入口とが連通されることにより乗りかご1内と停止階床の乗場2との行き来が可能となる。乗りかご1側の出入口の上方及び左右両側方の三方の周縁には、かご側出入口枠3が設けられている。また、同様に、乗場2側の出入口の上方及び左右両側方の三方の周縁には、乗場側出入口枠4が設けられている。
【0016】
乗りかご1には、乗りかご1側の出入口を開閉する両引き戸からなるかご側ドア5が設けられている。また、同様に、乗場2には、乗場2側の出入口を開閉する両引き戸からなる乗場側ドア6が設けられている。かご側ドア5は、乗りかご1に設けられたドア装置7により、その開閉動作が駆動される。乗りかご1が停止階床に着床すると、かご側ドア5と乗場側ドア6とは図示しないドア係合手段により互いに係合される。そして、ドア装置7によりかご側ドア5が開閉駆動されると、乗場側ドア6はかご側ドア5と一体となって連動して開閉する。
【0017】
かご側出入口枠3の両側方の縦枠における、乗りかご1側の出入口に対向する内縁面には、上下方向にわたってかご側電子タグ検出センサ8が設置されている。また、同じく、乗場側出入口枠4の両側方の縦枠における、乗場2側の出入口に対向する内縁面には、上下方向にわたって乗場側電子タグ検出センサ9が設置されている(図3)。これらの電子タグ検出センサは、電子タグ付商品10の電子タグを検出するものである。
【0018】
店舗の各商品は、予め電子タグが取り付けられて電子タグ付商品10となっている。この電子タグ付商品10の電子タグは、タグ内に記憶された情報を無線通信に読み取ることができるRFID(Radio Frequency IDentification)タグである。そして、この電子タグには、この電子タグが付された個々の商品を識別するための固有の商品識別情報が予め記憶されている。
【0019】
かご側電子タグ検出センサ8及び乗場側電子タグ検出センサ9は、無線通信により、それぞれ乗りかご1側の出入口及び乗場2側の出入口を通過する電子タグ付商品10(の電子タグ)を検出する。図4に、かご側電子タグ検出センサ8及び乗場側電子タグ検出センサ9が、エレベーターの出入口を通過する電子タグ付商品10を検出する様子を示す。
【0020】
この図4は、エレベーターの出入口のうち、かご側出入口枠3によってその周縁が形成された乗りかご1側の出入口を、電子タグ付商品10が通過している状態である。この際、電子タグ付商品10は両側のかご側電子タグ検出センサ8の間に位置しており、かご側電子タグ検出センサ8は、乗りかご1側の出入口に電子タグ付商品10があることを検知する。また、かご側電子タグ検出センサ8は、電子タグ付商品10の存在を検知するとともに、当該電子タグ付商品10の電子タグが有する商品識別情報(検出コード)を読み取る。
【0021】
同様に、エレベーターの出入口のうち、乗場側出入口枠4によってその周縁が形成された乗場2側の出入口を、電子タグ付商品10が通過している状態においては、電子タグ付商品10は両側の乗場側電子タグ検出センサ9の間に位置する。そして、乗場側電子タグ検出センサ9は、乗場2側の出入口に電子タグ付商品10があることを検知する。また、乗場側電子タグ検出センサ9は、電子タグ付商品10の存在を検知するとともに、当該電子タグ付商品10の電子タグが有する商品識別情報を読み取る。
【0022】
従って、電子タグ付商品10が乗場2側から乗りかご1側へと移動した、すなわち、乗りかご1内へと持ち込まれた場合には、まず、乗場側電子タグ検出センサ9により電子タグ付商品10が検出されてその電子タグの商品識別情報が読み取られる。そして、次いで、かご側電子タグ検出センサ8により、先程乗場側電子タグ検出センサ9で検出された電子タグ付商品10と同一の商品識別情報を有する電子タグ付商品10が検出される。
【0023】
また逆に、電子タグ付商品10が乗りかご1側から乗場2側へと移動した、すなわち、乗りかご1内から持ち出された場合には、まず、かご側電子タグ検出センサ8により電子タグ付商品10が検出されてその電子タグの商品識別情報が読み取られる。そして、次いで、乗場側電子タグ検出センサ9により、先程かご側電子タグ検出センサ8で検出された電子タグ付商品10と同一の商品識別情報を有する電子タグ付商品10が検出されることになる。
【0024】
すなわち、かご側電子タグ検出センサ8及び乗場側電子タグ検出センサ9において同一の商品識別情報を有する電子タグ付商品10が検出された順序に基づいて、当該電子タグ付商品10が乗りかご1内に持ち込まれたのか、あるいは、乗りかご1外へと持ち出されたのかを判別することができる。
【0025】
なお、かご側及び乗場側における電子タグの検出順序に基づかなくとも、単に双方のセンサで電子タグが検出されたことをもって、電子タグ付商品が乗りかご内に持ち込まれたのか、あるいは、乗りかご外へと持ち出されたのかを判別することは可能である。すなわち、初期状態は電子タグ付商品10は乗りかご1内にない状態であると考えることができるので、まず、初回に両方の電子タグ検出センサにより電子タグ付商品10が検出された場合には、当該電子タグ付商品10が乗りかご1内に持ち込まれたものと推定できる。そして、両方の電子タグ検出センサにより同一の商品識別情報を持つ電子タグ付商品10が再び検出された場合は、乗りかご1内にあった当該電子タグ付商品10が乗りかご1外へと持ち出されたものと推定することができる。
【0026】
また、同様の考えから、かご側及び乗場側の両方に電子タグ検出センサを設けなくともいずれか一方のみに電子タグ検出センサを設けることにより、電子タグ付商品が乗りかご内に持ち込まれたのか、あるいは、乗りかご外へと持ち出されたのかを判別すること自体は可能である。しかし、かご側及び乗場側の両方に電子タグ検出センサを設け、さらに、これら両センサでの検出順序まで考慮して判別を行うことにより、判別精度をより向上させ、誤判別を防止することができる。
【0027】
再び図1に戻って、乗りかご1の動作や走行を含むエレベーターの運転動作全般は、エレベーター制御装置11によって制御されている。このエレベーター制御装置11は、乗りかご1の動作を制御するかご動作制御手段12を有している。
【0028】
乗りかご1には、かご側ドア5の開閉動作を駆動するドア装置7の動作を制御する戸開閉制御手段13が設けられている。この戸開閉制御手段13は、かご動作制御手段12からの制御指令に従ってドア装置7へと戸開指令及び戸閉指令を出力する。ドア装置7は、この戸開閉制御手段13からの戸開指令・戸閉指令に従って、かご側ドア5(及び乗場側ドア6)を戸開閉させる。
【0029】
乗りかご1には、この乗りかご1にかかる負荷を検出するかご負荷検出手段14が設けられている。このかご負荷検出手段14は、例えば、乗りかご1内に積載された重量を検出する秤装置等から構成されている。このかご負荷検出手段14による検出結果は、エレベーター制御装置11のかご動作制御手段12へと送信される。
【0030】
かご動作制御手段12又はかご負荷検出手段14は、このかご負荷検出手段14の検出結果に基づいて、乗りかご1内の乗客の有無や人数を検出することができる。すなわち、かご負荷検出手段14は、乗りかご1内の乗客を検出する乗客検出手段を構成している。なお、この乗客検出手段としては、ここで用いたかご負荷検出手段14の他に、乗りかご1内の状況を撮影するカメラ等を設け、乗りかご1内の画像から乗客を検出するようにして構成することもできる。
【0031】
また、乗りかご1内には、アナウンス装置15が設置されている。このアナウンス装置15は、乗りかご1に設けられたアナウンス装置制御手段16による制御の下、乗りかご1内にブザー音や音声アナウンスを鳴動するものである。アナウンス装置制御手段16は、かご動作制御手段12からの制御指令に従ってアナウンス装置15へとブザー等の鳴動指令を出力する。アナウンス装置15は、このアナウンス装置制御手段16からの鳴動指令に従ってブザー音等を鳴動する。
【0032】
乗りかご1の実際の走行は、かご走行手段17により駆動される。このかご走行手段17は乗りかご1を昇降路内に吊持する図示しない主索や、この主索が巻き掛けられた図示しない巻上機等から構成されている。かご走行手段17は、かご動作制御手段12からの走行指令に基づいて乗りかご1を走行(昇降)させる。
【0033】
商品データベース18には、各電子タグ付商品10毎すなわち商品識別情報毎に、少なくとも電子タグ付商品10の精算状態を含む電子タグ付商品10に関する各種情報が格納されている。すなわち、この商品データベース18は、電子タグ付商品10を扱う店舗等の精算レジ等に接続されており、随時、各電子タグ付商品10の精算状態が更新される。
【0034】
乗場側電子タグ検出センサ9において検出された電子タグ付商品10の商品識別情報は、一旦、商品データベース18へと送られて、当該検出された商品識別情報の電子タグ付商品10の精算状態が確認される。そして、当該電子タグ付商品10が未精算であった場合には、当該電子タグ付商品10の商品識別情報とともにその旨がかご動作制御手段12へと伝えられる。すなわち、商品データベース18は、電子タグ検出センサにより読み出された商品識別情報に基づいて、検出された電子タグ付商品10の精算状態を判別する商品精算状態判別手段を構成している。
【0035】
この実施の形態にあっては、エレベーターの防犯装置は、図5に示す一連のフローに従って動作する。
まず、ステップS1で、乗場側電子タグ検出センサ9において電子タグ付商品10が検出されたか否かが確認される。乗場側電子タグ検出センサ9において電子タグ付商品10が検出されていない場合には、電子タグ付商品10が検出されるまでこのステップS1が繰り返される。そして、乗場側電子タグ検出センサ9において電子タグ付商品10が検出された場合には、当該電子タグ付商品10の商品識別情報を読み出した上で、次のステップS2へと進む。
【0036】
ステップS2では、かご側電子タグ検出センサ8において、先のステップS1で乗場側電子タグ検出センサ9により検出されたものと同一の商品識別情報の電子タグ付商品10が検出されたか否かが確認される。かご側電子タグ検出センサ8において同一商品識別情報の電子タグ付商品10が検出されない場合には、ステップS1へと戻る。一方、かご側電子タグ検出センサ8において同一商品識別情報の電子タグ付商品10が検出された場合には、次のステップS3へと進む。
【0037】
ステップS3においては、先のステップS1で乗場側電子タグ検出センサ9において電子タグ付商品10が検出された際に読み取られた当該電子タグ付商品10の商品識別情報が、商品データベース18の情報と照合される。そして、当該電子タグ付商品10が未精算であるか否かが確認される。当該電子タグ付商品10が未精算でない(精算済である)場合にはステップS1へと戻る。一方、当該電子タグ付商品10が未精算である場合には、ステップS4へと進む。
【0038】
ステップS4においては、かご動作制御手段12(エレベーター制御装置11)は、未精算の電子タグ付商品10が乗車した(乗りかご1内に持ち込まれた)状態であると判断し、電子タグ付商品乗車が検出された状態となる。そして、続くステップS5において、かご動作制御手段12は、かご側ドア5(及び乗場側ドア6)が全閉状態であるか否かを確認する。戸全閉状態でないことが確認された場合には、ステップS6へと進む。
【0039】
このステップS6では、先のステップS4において電子タグ付商品乗車検出状態となっている商品識別情報と同一の商品識別情報の電子タグ付商品10を、かご側電子タグ検出センサ8が検出したか否かについて確認される。かご側電子タグ検出センサ8が電子タグ付商品乗車検出状態となっている商品識別情報の電子タグ付商品10を検出しない場合には、ステップS5へと戻る。一方、かご側電子タグ検出センサ8が電子タグ付商品乗車検出状態となっている商品識別情報の電子タグ付商品10を検出した場合には、ステップS7へと進む。
【0040】
ステップS7では、先のステップS6でかご側電子タグ検出センサ8により検出されたものと同一の商品識別情報の電子タグ付商品10を、乗場側電子タグ検出センサ9が検出したか否かについて確認される。乗場側電子タグ検出センサ9が同一商品識別情報の電子タグ付商品10を検出しない場合には、ステップS5へと戻る。一方、乗場側電子タグ検出センサ9が同一商品識別情報の電子タグ付商品10を検出した場合には、ステップS8へと進む。
【0041】
ステップS8においては、かご動作制御手段12は、先のステップS4において電子タグ付商品乗車検出状態となっていた未精算の電子タグ付商品10が乗りかご1外へと持ち出されたと判断し、当該電子タグ付商品10に対する電子タグ付商品乗車検出状態を解除する。そして、ステップS1へと戻る。
【0042】
一方、ステップS5において、戸全閉状態であることが確認された場合には、ステップS9へと進む。このステップS9においては、かご動作制御手段12は、戸開閉制御手段13の検出結果に基づいて、他の乗客が乗りかご1内に乗り合わせているか否かについて判断する。ここでいう他の乗客とは、先のステップS4で電子タグ付商品乗車検出状態となっている未精算の電子タグ付商品10を乗りかご1内に持ち込んだ人物以外であると推定される他の乗客のことである。
【0043】
このステップS9で、乗りかご1内に他の乗客は乗り合わせていない、すなわち、乗りかご1内には、電子タグ付商品乗車検出状態となっている未精算の電子タグ付商品10を乗りかご1内に持ち込んだ人物しかいないと判断された場合には、ステップS10へと進む。
【0044】
ステップS10では、エレベーター制御装置11は、現時点で登録されているかご呼び及び乗場呼びの両方を含む全ての呼び登録をキャンセルした上で、予め定めた指定階への呼びを登録する。かご動作制御手段12は、この指定階への呼び登録に従ってかご走行手段17へと指令を出す。かご走行手段17は、この指令に基づいて、乗りかご1の指定階への走行を開始させる。そして、続くステップS11で乗りかご1が指定階に到着するまで待たれ、乗りかご1が指定階に到着するとステップS12に移る。
【0045】
ここで、乗りかご1を走行させる指定階には、例えば、警備員の詰め所等がある階床が予め定められる。
【0046】
ステップS12においては、かご動作制御手段12は、まず、戸開閉制御手段13を介してドア装置7へと戸開指令を出力する。ドア装置7は、この戸開指令に従って、かご側ドア5(及び乗場側ドア6)を戸開させる。そして、戸全開となった後は、当該乗りかご1を走行不可として、現在停止中の階床すなわち指定階において戸開待機させる。また、併せて、かご動作制御手段12は、アナウンス装置制御手段16を介してアナウンス装置15からブザーを鳴動させる。このステップS12の後はステップS14へと至り、一連の動作フローは終了する。
【0047】
一方、ステップS9において、乗りかご1内に他の乗客が乗り合わせている、すなわち、乗りかご1内には、未精算の電子タグ付商品10を乗りかご1内に持ち込んだ人物の他にも乗客がいると判断された場合には、ステップS13へと進む。
【0048】
このステップS13においては、エレベーター制御装置11は、現時点で登録されているかご呼び及び乗場呼びの両方を含む全ての呼び登録をキャンセルする。そして、乗りかご1を現在停止している階床に停めたまま、かご動作制御手段12は、まず、戸開閉制御手段13を介してドア装置7へと戸開指令を出力する。ドア装置7は、この戸開指令に従って、かご側ドア5(及び乗場側ドア6)を戸開させる。そして、戸全開となった後は、当該乗りかご1を走行不可として、現在停止中の階床において戸開待機させる。また、併せて、かご動作制御手段12は、アナウンス装置制御手段16を介してアナウンス装置15からブザーを鳴動させる。このステップS13の後はステップS14へと至り、一連の動作フローは終了する。
【0049】
なお、エレベーター制御装置11(かご動作制御手段12)により制御されるステップS9からS12及びステップS13は、防犯運転を構成している。そして、この防犯運転においては、乗りかご1内にある操作盤への操作は基本的に無効とされる。かご内操作盤には、各階床を行先とするかご呼び登録を行うための行先階ボタンや、戸開・戸閉ボタン等が設置されている。
【0050】
以上のように構成されたエレベーターの防犯装置は、未精算の商品等が乗りかご内に持ち込まれた場合に、乗りかごを警備員の詰め所等のある階床へと強制的に走行させる防犯運転を行うことにより、商品等を盗難しエレベーターを利用して逃走しようとする犯人の逃走を有効に抑止して犯人の確保を容易にすることができる。
【0051】
また、エレベーター出入口の乗りかご側に設けられたかご側出入口枠を通過する電子タグ付商品を検出するかご側電子タグ検出センサと、エレベーター出入口の乗場側に設けられた乗場側出入口枠を通過する電子タグ付商品を検出する乗場側電子タグ検出センサと、を設けて、これらのセンサによる検出順が乗場側、かご側の順であった場合に防犯運転を行うものである。よって、未精算の商品等が乗りかご内に持ち込まれたことをより正確に検出することができる。
【0052】
さらに、一度未精算の商品が電子タグ検出センサにより検出された場合であっても、戸が全閉する前に、乗場側センサ、かご側センサの順で電子タグ付商品が検出された場合には、一旦は乗りかご内に持ち込まれた未精算商品が、乗りかごの外に出されたと判断できるため、防犯運転は行わない。このため、間違って未精算商品を乗りかご内に持ち込んでも、乗りかご外へ出すことで誤って防犯運転となることを防止し、運転効率の低下を防ぐことができる。
【0053】
加えて、乗客検出手段であるかご負荷検出手段の検出結果から未精算商品を乗りかご内に持ち込んだ人物以外の乗客が乗りかご内にいると判断される場合には、防犯運転を、登録されている呼びをキャンセルした上で乗りかごを現在の停止階で戸開待機させるものとすることで、一般客の安全を優先し、一般客への被害を最小限とすることが可能である。
【0054】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を、主に図1及び図6を参照して説明する。図1にエレベーターの防犯装置の全体構成を、図6にエレベーターの防犯装置の通報動作の流れを、それぞれ示す。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成に加えて、未精算の商品等が乗りかご内に持ち込まれた後において、エレベーター(乗りかご)が指定階へと走行を開始した、又は、戸開待機となりアナウンス装置がブザー鳴動を開始した、のいずれかの状況が発生した場合に、その旨を警備員へと通報するようにしたものである。
【0055】
すなわち、図1において示すように、通報手段19がさらに設けられている。この通報手段19は、所定の通報条件が成立すると、エレベーター制御装置11のかご動作制御手段12からの指令に従って、警備員へとその旨の通報を行うものである。この際、通報手段19の通報先は、例えば、警備員の詰め所でもよいし、個々の警備が携帯している無線機でもよい。
なお、他の構成については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
【0056】
この実施の形態におけるエレベーターの防犯装置の通報動作は図6に示す一連のフローのようになる。なお、ここで、この実施の形態2においても、実施の形態1で説明した図5のフローに従った動作は実行されている。従って、未精算商品乗車検出(図5のステップS4)及び未精算商品乗車検出後の指定階への走行(同図ステップS10)や、戸開待機・ブザー鳴動(同図ステップS13)は行われることがある前提である。
【0057】
まず、ステップS21において、かご動作制御手段12(エレベーター制御装置11)は、未精算の電子タグ付商品10が乗車し(乗りかご1内に持ち込まれ)、電子タグ付商品乗車が検出された状態であるか否か、すなわち、図5のステップS4が実行されたか否かを確認する。そして、電子タグ付商品乗車が検出された状態であれば、ステップS22へと進む。
【0058】
ステップS22においては、かご動作制御手段12(エレベーター制御装置11)は、乗りかご1が指定階へと走行を開始したか否か、すなわち、図5のステップS10が実行されたか否かについて確認する。そして、乗りかご1が指定階へと走行を開始した場合には、ステップS24へと移行する。一方、乗りかご1が指定階へと走行を開始していない場合には、ステップS23へと進む。
【0059】
ステップS24においては、かご動作制御手段12(エレベーター制御装置11)は、乗りかご1が停止階で戸開待機して走行不可とされ、かつ、アナウンス装置15がブザー鳴動を開始したか否かについて確認する。
【0060】
なお、戸開待機して走行不可とされブザー鳴動が開始されるのは、図5のフロー中にはステップS12とS13の2つがある。ただし、ステップS12についてはその前にステップS10を経由して指定階へと走行を開始しているはずである。従って、先のステップS22においてYESと判定されてこのステップS23を経由せずにステップS24へと移行しているものと考えられる。よって、このステップS23は、実質的に、図5のステップS13が実行されたか否かを確認するものであると言える。
【0061】
このステップS23において、乗りかご1が停止階で戸開待機して走行不可とされ、かつ、アナウンス装置15がブザー鳴動を開始したことが確認された場合には、ステップS24へと進む。一方、そうでないことが確認された場合には、ステップS21へと戻る。
【0062】
ステップS24においては、通報手段19から警備員への通報が行われる。この際、ステップS22からこのステップに移行してきた場合には、通報内容に乗りかご1が指定階への走行を開始した旨を含めるようにしてもよい。また同様に、ステップS23からこのステップに移行してきた場合には、通報内容に乗りかご1が戸開待機している停止階の階床を含めるようにしてもよい。このようにすることで、通報を受けた警備員は速やかに指定階や停止階に駆けつけることが可能である。このステップS24の後はステップS25に至り一連の動作フローは完了する。
【0063】
以上のように構成されたエレベーターの防犯装置は、実施の形態1の構成において、さらに、防犯運転が開始された場合にその旨を警備員へと通知する通知手段を備えたものである。このため、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、警備員へ状況を知らせることにより、対処を早めることができる。
また、その際、防犯運転により乗りかごが戸開待機する階床も通知することで、さらに迅速な対応をとることが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 乗りかご
2 乗場
3 かご側出入口枠
4 乗場側出入口枠
5 かご側ドア
6 乗場側ドア
7 ドア装置
8 かご側電子タグ検出センサ
9 乗場側電子タグ検出センサ
10 電子タグ付商品
11 エレベーター制御装置
12 かご動作制御手段
13 戸開閉制御手段
14 かご負荷検出手段
15 アナウンス装置
16 アナウンス装置制御手段
17 かご走行手段
18 商品データベース
19 通報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の商品を識別するための商品識別情報が記憶された電子タグと、
エレベーターの出入口を通過する前記商品に付された前記電子タグを検出し、当該検出した前記電子タグの前記商品識別情報を読み出す電子タグ検出手段と、
前記電子タグ検出手段により読み出された前記商品識別情報に基づいて、前記電子タグ検出手段により検出された前記電子タグが付された前記商品の精算状態を判別する商品精算状態判別手段と、
前記電子タグ検出手段により検出された前記電子タグが付された前記商品の精算状態が、前記商品精算状態判別手段により未精算であると判別された状態で、前記エレベーターの乗りかごの戸が全閉した場合に、登録されている呼びをキャンセルした上で前記乗りかごを所定の階床で戸開待機させる防犯運転を行う制御手段と、を備えたことを特徴とするエレベーターの防犯装置。
【請求項2】
前記電子タグ検出手段は、
前記出入口の前記乗りかご側を通過する前記商品に付された前記電子タグを検出し、当該検出した前記電子タグの前記商品識別情報を読み出すかご側電子タグ検出手段と、
前記出入口の乗場側を通過する前記商品に付された前記電子タグを検出し、当該検出した前記電子タグの前記商品識別情報を読み出す乗場側電子タグ検出手段と、からなり、
前記制御手段は、前記乗場側電子タグ検出手段、前記かご側電子タグ検出手段の順で、同一の前記商品識別情報の前記電子タグを検出した場合に、前記防犯運転を行うことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの防犯装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記乗場側電子タグ検出手段、前記かご側電子タグ検出手段の順で、同一の前記商品識別情報の前記電子タグを検出した後、前記乗りかごの戸が全閉する前に、さらに、前記かご側電子タグ検出手段、前記乗場側電子タグ検出手段の順で、前記同一の前記商品識別情報の前記電子タグを検出した場合には、前記防犯運転を行わないことを特徴とする請求項2に記載のエレベーターの防犯装置。
【請求項4】
前記防犯運転は、登録されている呼びをキャンセルした上で前記乗りかごを予め定めた指定階へと走行させ、前記乗りかごを前記指定階で戸開待機させるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエレベーターの防犯装置。
【請求項5】
前記乗りかご内の乗客を検出する乗客検出手段を備え、
前記制御手段は、前記乗客検出手段の検出結果から未精算の前記商品を前記乗りかご内に持ち込んだ人物以外の乗客が前記乗りかご内にいると判断される場合には、前記防犯運転を、登録されている呼びをキャンセルした上で前記乗りかごを現在の停止階で戸開待機させるものとすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のエレベーターの防犯装置。
【請求項6】
前記防犯運転が開始された場合に、その旨を警備員へと通知する通知手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエレベーターの防犯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131588(P2012−131588A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283528(P2010−283528)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】