説明

エンコーダ校正装置

【課題】エンコーダにおいて内挿計算によって算出される内挿値に対しても高精度な校正を能率良く行えるようにする。
【解決手段】等速回転モータ(M)に連結された基準エンコーダ(E1)及び被校正エンコーダ(E2)それぞれから出力されるパルス信号(22a、22b)の時間差(δ)を測定する時間差測定回路(12)と、前記時間差に応じて被校正エンコーダの校正を行う演算処理部(18)とを備えるエンコーダ校正装置において、擬似正弦波信号をデジタル化するA/D変換器(24)を備え、演算処理部で擬似正弦波信号の完全な正弦波からの偏差に応じて被校正エンコーダの内挿計算によって算出される内挿値の校正も行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量機に備えられるエンコーダの校正に関し、さらに詳細にはインクリメンタル式エンコーダの校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測量機には、水平角と鉛直角を測定するために、エンコーダが備えられている。エンコーダにはインクリメンタル式とアブソリュート式がある(下記非特許文献1参照)。
【0003】
インクリメンタル式エンコーダとは、図3に示したように、目盛盤1として回転するメインスケール1aと固定されたインデックススケール1bの2枚を有しており、メインスケール1aには等間隔に同じ幅のスリット3aが全周に配置されており、インデックススケール1bには周方向の1箇所にメインスケール1aと同間隔で同幅のスリット3bが配置されているものである。目盛盤1の一方側に光源5を配置し、目盛盤1の他方側に光検出器9を配置し、光源5から出射された光がコリメータレンズ7経て目盛盤1の一方側を照射するようにしてある。
【0004】
メインスケール1aが回転すると、メインスケール1aのスリット3aとインデックススケール1bのスリット3bの相対位置が変化することによって、光源5から出射された光の光検出器9に入射する光量が変化し、光検出器9は略正弦波に近い電気信号を出力する。この略正弦波を矩形波に変換し、さらに矩形波の立上がりと立下りにパルスを発生させ、このパルスの数を数えることによりメインスケール1aが回転した角度を求めることができる。
【0005】
なお、図3には図示していないが、インデックススケール1bに配置されたスリット3bは、メインスケール1aにおけるスリット3aの間隔の1/4だけ互いの位置をずらした2つのスリット群(A相、B相)に分けられているとともに、スリット3bに対応する光検出器9が設けられている。このため、光検出器9からは、A相(0°位相)の略正弦波のA相信号と、B相(90°位相)の略正弦波(余弦波)のB相信号の2つの電気信号が出力される。このA相信号とB相信号の位置から、メインスケール1aが右回りか左回りかが判定できるようになっている。
【0006】
高級な測量機では0.2〜1秒程度の角度分解能が要求されるが、このような狭い間隔で目盛盤1にスリット3aを形成することは困難である。そこで、測量機のエンコーダでは、微小な角度分解能を達成するために、スリットとスリットの間の角度については、内挿計算で求めている。
【0007】
このため、光検出器9から出力されるA相信号とB相信号とをデジタル化して、A相信号値/B相信号値の逆正接値を計算して、スリットの間隔(1ピッチ)をさらに細分化して、各スリット間の内挿値を得ている。この内挿値を求めることにより、0.2〜1秒程度の角度分解能を得ることができる。
【0008】
ところで、製造された各エンコーダは校正する必要がある。そこで、従来のエンコーダの校正装置は、基準エンコーダを基に各エンコーダを校正するため、図4に示したように、基準エンコーダE1の軸に被校正エンコーダE2を取り付け、等速回転モータMに連結して回転させ、両エンコーダE1、E2の出力を比較して校正を行っていた(下記非特許文献2参照)。
【0009】
この校正においては、まず、両エンコーダE1、E2から出力されたA相信号又はB相信号(A相信号だけでもよい)の各信号20a、20b(両者とも略正弦波なので、以下、両者とも擬似正弦波信号と呼ぶ。)が、それぞれ波形変換器10a、10bによりパルス信号22a、22bに変換される。これらのパルス信号22a、22bは、時間間隔測定回路12に送られる。時間間隔測定回路12にはクロックパルス発振器14からクロックパルスも送られてきており、このクロックパルスを数えることによって、擬似正弦波信号20a、20bから変換された各パルス信号22a、22bの発生時刻の時間差δtが測定される。従来のエンコーダ校正装置では、その時間差δtを記憶部16に記憶しておき、この時間差δtを用いて演算処理部(CPU)18でもって被校正エンコーダE2の校正値を算出していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本測量機器工業会、最新測量機器便覧、山海堂、P.59〜63、2003年7月29日
【非特許文献2】益田正、梶谷誠、精密機械工学会誌、「角度検出器の精密自動校正システムの開発」、52−10、P.1732〜1738、1986年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のエンコーダ校正装置では、基準エンコーダE1と被校正エンコーダE2からそれぞれ発生するパルス信号22a、22bの時間差δtを測定するものであるから、目盛盤1の各スリット3間の角度を内挿計算によって算出するエンコーダに対しては、適切な校正ができないという問題があった。
【0012】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、エンコーダにおいて内挿計算によって算出される内挿値に対しても高精度な校正を能率良く行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、基準エンコーダ及び被校正エンコーダそれぞれから出力される擬似正弦波信号をパルス信号に変換する波形変換器と、2つの前記擬似正弦波信号から変換されたパルス信号の時間差を測定する時間差測定回路と、前記時間差に応じて被校正エンコーダの校正を行う演算処理部とを備えるエンコーダ校正装置において、さらに、前記被校正エンコーダから出力された擬似正弦波信号をデジタル化するA/D変換器を備え、前記演算処理部で前記デジタル化した擬似正弦波信号の完全な正弦波からの偏差に応じて前記被校正エンコーダの内挿計算によって算出される内挿値の校正も行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る各発明によれば、従来のエンコーダ校正装置に、さらに被校正エンコーダから出力された擬似正弦波信号をデジタル化するA/D変換器を備え、演算処理部で前記デジタル化した擬似正弦波信号の完全な正弦波からの偏差に応じて被校正エンコーダの内挿計算によって算出される内挿値の校正も行うから、エンコーダにおいて内挿計算によって算出される内挿値に対しても高精度な校正を能率良く行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係るエンコーダ校正装置のブロック図である。
【図2】被校正エンコーダから出力される擬似正弦波を示す図である。
【図3】インクリメンタル式エンコーダを説明する図である。
【図4】従来のエンコーダ校正装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に基づいて、本発明の一実施例について説明する。本実施例のエンコーダ校正装置も、図4に示した従来のものと同じく、基準エンコーダE1と被校正エンコーダE2とを等速回転モータMに連結して回転させ、両エンコーダE1、E2が発生する擬似正弦波20a、20bに応じてパルス信号22a、22bを発生させ、両パルス信号22a、22bの時間差δtを測定することによって、被校正エンコーダE2の校正を行っている。
【0017】
この他に、このエンコーダ校正装置は、被校正エンコーダE2から出力されるA相信号又はB相信号の擬似正弦波信号20bを取り出して、これから目盛盤1のスリット3間の角度を内挿計算によって算出した内挿値の校正もできることである。なお、A相とB相の校正を同時に行うことも可能である。
【0018】
これには、まずA相又はB相の擬似正弦波信号20bをA/D変換器24に入力させる。A/D変換器24には、クロックパルス発振器14から出力されたクロックパルスが分周器26で1/N(Nは正の整数)に分周されて入力されている。A/D変換器24では、この分周されたクロックパルスに応じてA相又はB相の擬似正弦波信号20bをサンプリングし、デジタル化する。このデジタル化された擬似正弦波信号20bは、記憶部16に送られて記憶される。なお。前記Nは、擬似正弦波信号20bのサンプリング周波数に応じて決定される。
【0019】
演算処理部18は、記億部16に記憶された擬似正弦波信号20bのデータに基づいて、最小二乗法を用いて擬似正弦波信号20bを適当な周期関数に再生し、または擬似正弦波信号20bを適当なフーリエ級数を用いて再生し、図2に示したように、基準エンコーダE1から出力された正弦波20aと比較して、再生した擬似正弦波信号20bの完全な正弦波20cからの偏差δpを算出する。この偏差δpが求まれば、被校正エンコーダE2から完全な正弦波20bが出力された場合の位相角が求まるので、目盛盤1のスリット3間の角度を内挿計算によって算出した内挿値の校正を行うことができる。
【0020】
本実施例によれば、擬似正弦波信号20bの完全な正弦波20cからの偏差δpを測定することによって、目盛盤1の各スリットの間の角度を内挿計算によって算出した内挿値の校正も行うから、目盛盤1の各スリットの間の角度を内挿計算によって算出するエンコーダの校正でも高精度に能率良く行うことができる。
【0021】
なお、アブソリュート式エンコーダの校正は、本実施例のエンコーダ校正装置で校正されたインクリメンタル式エンコーダとアブソリュート式エンコーダそれぞれの測定値を比較することによって行うことができる。
【符号の説明】
【0022】
1 目盛盤
3 スリット
10a、10b 波形変換器
12 時間間隔測定回路
18 演算処理部
20a、20b 擬似正弦波信号
20c 完全な正弦波
22a、22b パルス信号
E1 基準エンコーダ
E2 被校正エンコーダ
δt 時間差
δp 偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準エンコーダ及び被校正エンコーダそれぞれから出力される擬似正弦波信号をパルス信号に変換する波形変換器と、前記2つの擬似正弦波信号から変換されたパルス信号の時間差を測定する時間差測定回路と、前記時間差に応じて被校正エンコーダの校正を行う演算処理部とを備えたエンコーダの校正装置において、
さらに、前記被校正エンコーダから出力された擬似正弦波信号をデジタル化するA/D変換器を備え、前記演算処理部で前記デジタル化した擬似正弦波信号の完全な正弦波からの偏差に応じて前記被校正エンコーダの内挿計算によって算出される内挿値の校正も行うことを特徴とするエンコーダ校正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247747(P2011−247747A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121271(P2010−121271)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000148623)株式会社 ソキア・トプコン (114)
【Fターム(参考)】