説明

エンジンの回転部の密封装置

【課題】密封性能が高く、円筒形スリーブの製作が容易で、円筒形スリーブの固定作業が簡単になる、エンジンの回転部の密封装置を提供する。
【解決手段】エンジンの回転部1に円筒形スリーブ2を嵌め、円筒形スリーブ2の外周面に、エンジンに固定したオイルシール3を接当させたエンジンの回転部の密封装置において、円筒形スリーブ2として円筒形鋼材を用い、円筒形鋼材の外周面に表面硬化処理層を形成し、エンジンの回転部1への円筒形スリーブ2の固定が、室温での圧入による締まり嵌めを行なうエンジンの回転部の密封装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転部の密封装置に関し、詳しくは、密封性能が高く、円筒形スリーブの製作が容易で、円筒形スリーブの固定作業が簡単になる、エンジンの回転部の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの回転部の密封装置として、エンジンの回転部に円筒形スリーブを嵌め、この円筒形スリーブの外周面に、エンジンに固定したオイルシールを接当させたものがある(特許文献1参照)。
この種の密封装置によれば、簡単な構造でエンジンの回転部の周囲からのエンジンオイルの漏れを防止できる利点がある。
しかし、この従来技術では、一般に円筒形スリーブとして、円筒形鉄鋳物の外周面に硬質クロムメッキ処理したものを用い、エンジンの回転部への円筒形スリーブの固定作業が焼き嵌めで行なわれているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−83078号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 密封性能が低い。
円筒形スリーブは厚さ2〜3mm程度、内径100mm程度の薄肉円筒成型品が主流であるが、鉄鋳物ではこのような薄肉円筒成型品を高い寸法精度で得ることが困難であるため、密封性能が低い。
【0005】
《問題》 円筒形スリーブの製作が困難である。
円筒形スリーブは薄肉円筒成型品であるため、鉄鋳物では鋳造時に湯が回りにくい。また、鉄鋳物は表面に凹凸があるため、メッキ処理前に高精度の表面研磨を行う必要があるが、薄肉円筒成型品は研磨時のチャッキングで変形しやすい等の問題がある。これらの理由により、円筒形スリーブの製作が困難である。
【0006】
《問題》 円筒形スリーブの固定作業が繁雑である。
エンジンの回転部への円筒形スリーブの固定作業が焼き嵌めで行なわれているため、固定作業時に円筒形スリーブの温度管理が必要となり、円筒形スリーブの固定作業が繁雑である。
【0007】
本発明の課題は、密封性能が高く、円筒形スリーブの製作が容易で、円筒形スリーブの固定作業が簡単になる、エンジンの回転部の密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1〜4に例示するように、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌め、この円筒形スリーブ(2)の外周面に、エンジンに固定したオイルシール(3)を接当させたエンジンの回転部の密封装置において、
円筒形スリーブ(2)として円筒形鋼材を用い、円筒形鋼材の外周面に表面硬化処理層を形成し、
エンジンの回転部(1)への円筒形スリーブ(2)の固定が、室温での圧入による締まり嵌めで行われている、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【発明の効果】
【0009】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 密封性能が高い。
鋼材では、管材の拡管処理、プレス加工で得た椀形材の端壁部の切り落とし処理等により、薄肉円筒成型品を高い寸法精度で得ることができるため、密封性能が高い。
【0010】
《効果》 円筒形スリーブの製作が容易である。
円筒形スリーブ(2)として円筒形鋼材を用い、円筒形鋼材の外周面に表面硬化処理層を形成するので、凹凸のある鉄鋳物の表面にメッキ処理を施す場合のような高精度の表面研磨は必要なく、円筒形スリーブ(2)の製作が容易である。
【0011】
《効果》 円筒形スリーブの固定作業が簡単になる。
エンジンの回転部(1)への円筒形スリーブ(2)の固定が、室温での圧入による締まり嵌めで行われているので、円筒形スリーブ(2)の取り付け時に焼き嵌めのような温度管理が不要で、円筒形スリーブ(2)の固定作業が簡単になる。
【0012】
《効果》 円筒形スリーブの外周の硬度低下が抑制される。
エンジンの回転部(1)への円筒形スリーブ(2)の固定が、室温での圧入による締まり嵌めで行われているので、焼き嵌め時の焼きなましによる円筒形鋼材の軟化が生じることがなく、円筒形鋼材の外周面に形成された表面効果処理層の硬度低下も生じない。このため、円筒形スリーブ(2)の外周の硬度低下が抑制される。
【0013】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 円筒形スリーブの交換が不要になる。
表面硬化処理層が窒化処理層であるため、円筒形スリーブ(2)の耐摩耗性が優れ、エンジンの耐用年数を越える耐久性を得ることができ、円筒形スリーブ(2)の交換が不要になる。
【0014】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 円筒形スリーブの潤滑性が高い。
窒化処理層がその最表面に浸硫処理層を備えているため、円筒形スリーブ(2)の潤滑性が高い。
【0015】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの回転部に円筒形スリーブを適正な姿勢で固定することができる。
図1、2、4に例示するように、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌める際に、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)の緩み嵌め部(5)との緩み嵌めで、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)とを芯合わせした後に、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との締まり嵌めで、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を固定することができるようにしたので、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を適正な姿勢で固定することができる。
【0016】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの回転部への円筒形スリーブの固定作業時に締まり嵌め部に塵埃が噛み込む不具合を抑制することができる。
図2に例示するように、緩み嵌め部(5)は締まり嵌め部(4)の端縁部(6)から円筒形スリーブ(2)の端部(7)に向けて次第に径が広がる拡開形状にしたので、締まり嵌め部(4)付近でのエンジンの回転部(1)の外周面と緩み嵌め部(5)の内周面との間の隙間を小さくして、エンジンの回転部(1)への円筒形スリーブ(2)の固定作業時に締まり嵌め部(4)に塵埃が噛み込む不具合を抑制することができる。
【0017】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの回転部に円筒形スリーブを適正な姿勢で固定することができる。
図3に例示するように、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌める際に、エンジンの回転部(1)のスリーブ嵌め込みガイド面(8)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との緩み嵌めで、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)とを芯合わせした後に、エンジンの回転部(1)のスリーブ圧入面(9)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との締まり嵌めで、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を固定することができるようにしたので、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を適正な姿勢で固定することができる。
【0018】
《効果》 円筒形スリーブ内に溜まった塵埃がエンジン運転中に円筒形スリーブから抜け出し、オイルシールに噛み込む不具合を防止することができる。
図3に例示するように、円筒形スリーブ(2)の内周面に緩み嵌め部を設けることなく締まり嵌め部(4)を設けので、エンジン運転中に円筒形スリーブ(2)内に塵埃が溜まる不具合を防止することができ、円筒形スリーブ(2)内に溜まった塵埃がエンジン運転中に円筒形スリーブ(2)から抜け出し、オイルシール(3)に噛み込む不具合を防止することができる。
【0019】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 円筒形スリーブの嵌め込み作業が簡単になる。
図1〜4に例示するように、エンジンの回転部(10)に円筒形スリーブ(2)を嵌め込む場合には、円筒形スリーブ(2)の両端部(7)(7)のどちらから円筒形スリーブ(2)を嵌め込んだ場合でも、エンジンの回転部(1)への嵌め込みガイド用の面取り部(11)で嵌め込みがガイドされるとともに、円筒形スリーブ(2)の外周面にオイルシール(3)を嵌め込む場合に、エンジンの外寄りに位置するオイルシール損傷防止用のアール(10)でオイルシール(3)の損傷を防止することができるようにしたので、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を両端部(7)(7)のどちらから嵌め込んでも、円筒形スリーブ(2)の組み間違いが起こらず、円筒形スリーブ(2)の嵌め込み作業が簡単になる。
【0020】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 オイルシールへの塵埃の噛み込みを防止することができる。
図1〜4に例示するように、エンジンの外側に位置するオイルシール(3)の端部をエンジンの外側(21)から防塵壁(20)で覆ったので、オイルシール(3)への塵埃の噛み込みを防止することができる。
【0021】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 防塵壁を安価に取り付けることができる。
図1〜3に例示するように、防塵壁(20)をケース取付ボルト(15)でベアリングケース(14)と共に、ベアリングケースカバー(16)に共締めで取り付けたので、防塵壁(20)を取り付けるための専用部品が不要となり、防塵壁(20)を安価に取り付けることができる。
【0022】
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明は、請求項8に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 防塵壁を安価に形成することができる。
図4に例示するように、防塵壁(20)をベアリングケースカバー(16)の肉壁から一体成型で膨出させたので、防塵壁(20)を安価に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの回転部の密封装置を説明する図で、図1(A)は縦断側面図、図1(B)は図1(A)のB矢視部の拡大図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るエンジンの回転部の密封装置を説明する図で、図2(A)は縦断側面図、図2(B)は図2(A)のB矢視部の拡大図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るエンジンの回転部の密封装置を説明する図で、図3(A)は縦断側面図、図3(B)は図3(A)のB矢視部の拡大図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るエンジンの回転部の密封装置を説明する図で、図4(A)は縦断側面図、図4(B)は図4(A)のB矢視部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図4は本発明の第1〜第4実施形態に係るエンジンの回転部の密封装置を説明する図であり、各実施形態では、ディーゼルエンジンのクランク軸の密封装置について説明する。
【0025】
第1実施形態の構成は、次の通りである。
図1に示すように、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌め、この円筒形スリーブ(2)の外周面に、エンジンに固定したオイルシール(3)を接当させている。
円筒形スリーブ(2)として円筒形鋼材を用い、円筒形鋼材の外周面に表面硬化処理層を形成している。
エンジンの回転部(1)への円筒形スリーブ(2)の固定が、室温での圧入による締まり嵌めで行われている。
エンジンの回転部(1)はクランク軸(12)である。
オイルシール(3)は円環型のゴムで、ベアリングケースカバー(16)に内嵌して取り付けている。
クランクケース(23)の外側で、クランク軸(12)の後端部にフライホイール(22)を取り付けている。
【0026】
表面硬化処理層は窒化処理層である。
窒化処理層はその最表面に浸硫処理層を備えている。
窒化処理層は、円筒形スリーブ(2)の外周面に形成されるとともに、内周面にも形成されている。
円筒形スリーブ(3)の表面に窒化処理層を形成するには、次のようにする。
アルミニウム、クロム、モリブデン等の窒化物形成元素を含む鋼を、アンモニアまたは窒素を含んだ雰囲気中に暴露し、オーステナイト化温度以下の温度域で過熱することにより、鋼の表面近傍(1mm以下)に窒素を浸透させて硬化させる。
浸硫処理層は、ガス浸硫窒化等により、窒化化合物層の上に形成される数ミクロンの硫化物層である。
【0027】
図1に示すように、円筒形スリーブ(2)の内周面に締まり嵌め部(4)と緩み嵌め部(5)とを設けることにより、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌める際に、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)の緩み嵌め部(5)との緩み嵌めで、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)とを芯合わせした後に、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との締まり嵌めで、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を固定することができるようにしている。
緩み嵌め部(5)の内径は締まり嵌め部(4)の内径よりも0.1mm大きくしている。
【0028】
図1に示すように、円筒形スリーブ(2)の外周面の両端縁部にオイルシール損傷防止用のアール(10)(10)を形成し、円筒形スリーブ(2)の内周面の両端縁部にエンジンの回転部(1)への嵌め込みガイド用の面取り部(11)(11)を形成している。
円筒形スリーブ(2)の軸長方向を前後方向として、円筒形スリーブ(2)を前後対称形状としている。
エンジンの回転部(10)に円筒形スリーブ(2)を嵌め込む場合には、円筒形スリーブ(2)の前後両端部(7)(7)のどちらから円筒形スリーブ(2)を嵌め込んだ場合でも、エンジンの回転部(1)への嵌め込みガイド用の面取り部(11)で嵌め込みがガイドされるとともに、円筒形スリーブ(2)の外周面にオイルシール(3)を嵌め込む場合に、エンジンの外寄りに位置するオイルシール損傷防止用のアール(10)でオイルシール(3)の損傷を防止することができるようにしている。
【0029】
図1に示すように、エンジンの外側に位置するオイルシール(3)の端部をエンジンの外側(21)から防塵壁(20)で覆っている。
エンジンの回転部(1)がクランク軸(12)であり、クランク軸(12)のジャーナル部(13)にベアリングケース(14)を外嵌させ、このベアリングケース(14)をケース取付ボルト(15)でベアリングケースカバー(16)に取り付け、クランクケース壁(17)にベアリングケース嵌入孔(18)をあけ、このベアリングケース挿入孔(18)にベアリングケース(14)を嵌入させ、ベアリングケースカバー(16)をカバー取付ボルト(19)でクランクケース壁(17)に取り付けるに当たり、次のようにしている。
防塵壁(20)をケース取付ボルト(15)でベアリングケース(14)と共に、ベアリングケースカバー(16)に共締めで取り付けている。
防塵壁(20)は、オイルシール(3)の後端部の全周を覆っている。
ベアリングケース(14)には、クランク軸(12)を軸受けするラジアル軸受(24)とスラスト軸受(25)とを取り付けている。これらの軸受(24)(25)はいずれもプレーンベアリングである。
【0030】
第2実施形態の構成は、次の通りである。
図2に示すように、緩み嵌め部(5)は締まり嵌め部(4)の端縁部(6)から円筒形スリーブ(2)の端部(7)に向けて次第に径が広がる拡開形状にしている。
他の構成は、第1実施形態と同じにしてある。
図2中、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付しておく。
【0031】
第3実施形態の構成は、次の通りである。
図3に示すように、円筒形スリーブ(2)の内周面に緩み嵌め部を設けることなく締まり嵌め部(4)を設けている。
エンジンの回転部(1)の外周面にスリーブ嵌め込みガイド面(8)を設け、このスリーブ嵌め込みガイド面(8)をエンジンの回転部(1)のスリーブ圧入面(9)よりも小径にしている。
これにより、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌める際に、エンジンの回転部(1)のスリーブ嵌め込みガイド面(8)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との緩み嵌めで、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)とを芯合わせした後に、エンジンの回転部(1)のスリーブ圧入面(9)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との締まり嵌めで、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を固定することができるようにしている。
他の構成は、第1実施形態と同じにしてある。
図3中、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付しておく。
【0032】
第4実施形態の構成は、次の通りである。
防塵壁(20)をベアリングケースカバー(16)の肉壁から一体成型で膨出させている。
他の構成は、第1実施形態と同じにしてある。
図4中、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付しておく。
この第4実施形態は、第1実施形態のうち、ベアリングケースカバー(16)とは別部品であった防塵壁(20)をベアリングケースカバー(16)と一体成型したものであるが、第2実施形態や第3実施形態の防塵壁(20)をベアリングケースカバー(16)と一体成型してもよい。
【符号の説明】
【0033】
(1) エンジンの回転部
(2) 円筒形スリーブ
(3) オイルシール
(4) 締まり嵌め部
(5) 緩み嵌め部
(6) 締まり嵌め部の端縁部
(7) 円筒形スリーブの端部
(8) スリーブ嵌め込みガイド面
(9) スリーブ圧入面
(10) アール
(11) 面取り部
(12) クランク軸
(13) ジャーナル部
(14) ベアリングケース
(15) ケース取付ボルト
(16) ベアリングケースカバー
(17) クランクケース壁
(18) ベアリングケース嵌入孔
(19) カバー取付ボルト
(20) 防塵壁
(21) オイルシールの端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌め、この円筒形スリーブ(2)の外周面に、エンジンに固定したオイルシール(3)を接当させたエンジンの回転部の密封装置において、
円筒形スリーブ(2)として円筒形鋼材を用い、円筒形鋼材の外周面に表面硬化処理層を形成し、
エンジンの回転部(1)への円筒形スリーブ(2)の固定が、室温での圧入による締まり嵌めで行われている、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンの回転部の密封装置において、
表面硬化処理層が窒化処理層である、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項3】
請求項2に記載したエンジンの回転部の密封装置において、
窒化処理層がその最表面に浸硫処理層を備えている、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの回転部の密封装置において、
円筒形スリーブ(2)の内周面に締まり嵌め部(4)と緩み嵌め部(5)とを設けることにより、
エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌める際に、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)の緩み嵌め部(5)との緩み嵌めで、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)とを芯合わせした後に、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との締まり嵌めで、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を固定することができるようにした、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載したエンジンの回転部の密封装置において、
緩み嵌め部(5)は締まり嵌め部(4)の端縁部(6)から円筒形スリーブ(2)の端部(7)に向けて次第に径が広がる拡開形状にした、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの回転部の密封装置において、
円筒形スリーブ(2)の内周面に緩み嵌め部を設けることなく締まり嵌め部(4)を設け、
エンジンの回転部(1)の外周面にスリーブ嵌め込みガイド面(8)を設け、このスリーブ嵌め込みガイド面(8)をエンジンの回転部(1)のスリーブ圧入面(9)よりも小径にすることにより、
エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を嵌める際に、エンジンの回転部(1)のスリーブ嵌め込みガイド面(8)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との緩み嵌めで、エンジンの回転部(1)と円筒形スリーブ(2)とを芯合わせした後に、エンジンの回転部(1)のスリーブ圧入面(9)と円筒形スリーブ(2)の締まり嵌め部(4)との締まり嵌めで、エンジンの回転部(1)に円筒形スリーブ(2)を固定することができるようにした、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載したエンジンの回転部の密封装置において、
円筒形スリーブ(2)の外周面の両端縁部にオイルシール損傷防止用のアール(10)(10)を形成し、円筒形スリーブ(2)の内周面の両端縁部にエンジンの回転部(1)への嵌め込みガイド用の面取り部(11)(11)を形成し、
円筒形スリーブ(2)の軸長方向を前後方向として、円筒形スリーブ(2)を前後対称形状とし、
エンジンの回転部(10)に円筒形スリーブ(2)を嵌め込む場合には、円筒形スリーブ(2)の両端部(7)(7)のどちらから円筒形スリーブ(2)を嵌め込んだ場合でも、エンジンの回転部(1)への嵌め込みガイド用の面取り部(11)で嵌め込みがガイドされるとともに、円筒形スリーブ(2)の外周面にオイルシール(3)を嵌め込む場合に、エンジンの外寄りに位置するオイルシール損傷防止用のアール(10)でオイルシール(3)の損傷を防止することができるようにした、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載したエンジンの回転部の密封装置において、
エンジンの外側に位置するオイルシール(3)の端部をエンジンの外側(21)から防塵壁(20)で覆った、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項9】
請求項8に記載したエンジンの回転部の密封装置において、
エンジンの回転部(1)がクランク軸(12)であり、クランク軸(12)のジャーナル部(13)にベアリングケース(14)を外嵌させ、このベアリングケース(14)をケース取付ボルト(15)でベアリングケースカバー(16)に取り付け、クランクケース壁(17)にベアリングケース嵌入孔(18)をあけ、このベアリングケース挿入孔(18)にベアリングケース(14)を嵌入させ、ベアリングケースカバー(16)をカバー取付ボルト(19)でクランクケース壁(17)に取り付けるに当たり、
防塵壁(20)をケース取付ボルト(15)でベアリングケース(14)と共に、ベアリングケースカバー(16)に共締めで取り付けた、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。
【請求項10】
請求項8に記載したエンジンの回転部の密封装置において、
エンジンの回転部(1)がクランク軸(12)であり、クランク軸(12)のジャーナル部(13)にベアリングケース(14)を外嵌させ、このベアリングケース(14)をケース取付ボルト(15)でベアリングケースカバー(16)に取り付け、クランクケース壁(17)にベアリングケース嵌入孔(18)をあけ、このベアリングケース挿入孔(18)にベアリングケース(14)を嵌入させ、ベアリングケースカバー(16)をカバー取付ボルト(19)でクランクケース壁(17)に取り付けるに当たり、
防塵壁(20)をベアリングケースカバー(16)の肉壁から一体成型で膨出させた、ことを特徴とするエンジンの回転部の密封装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67652(P2012−67652A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212246(P2010−212246)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】