説明

エンジンの潤滑構造

【課題】エンジンの潤滑構造において、二つのオイルポンプのオイル吸込側に接続される一次オイルフィルタを、簡単、かつ、コンパクトにクランクケースに着脱する。
【解決手段】クランク軸方向の両側に分割されたクランクケース1内のトランスミッション室8をオイル貯留部8とし、該オイル貯留部8のオイルを各潤滑箇所に圧送する第1のオイルポンプと、クランク室等に戻るオイルをオイル貯留部8に戻す第2のオイルポンプと、各オイルポンプのオイル吸込側に接続された第1、第2オイルフィルタ44、45と、を備えている。第1のオイルフィルタ44は、左右の一方のクランクケース部材1aから挿入され、第2のオイルフィルタ45は、他方のクランクケース部材1bから挿入され、それぞれオイルフィルタキャップ47,48により閉塞されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの潤滑構造に関し、特に、運転中、クランク室にオイルが溜まらないようドライ状態に保つと共に、クランクケース内のトランスミッション室をオイル貯留部として利用するエンジン、いわゆるセミドライサンプ式エンジンに適した潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライサンプ式エンジンに対し、セミドライサンプ式エンジンは、別置きのオイルタンクを備える必要がないので、オイルタンクの費用及び配置スペースを節約できる。なお、オイルパン式のエンジンもあるが、オイルパン式では、エンジンの下方が突出し、エンジン高が高くなる不都合がある。
【0003】
前記セミドライサンプ式エンジンには、通常、二つのオイルポンプが備えられており、一つは、オイル貯留部からエンジンの各潤滑箇所にオイルを圧送する第1のオイルポンプ、いわゆるフィードポンプであり、他の一つは、各潤滑箇所からクランク室等に戻ったオイルをオイル貯留部へ汲み上げる第2のオイルポンプ、いわゆるスカベンジングポンプである。そして、各オイルポンプには、オイル吸込側に一次オイルフィルタがそれぞれ接続されている。
【0004】
図15は、従来のセミドライサンプ式エンジンにおけるフィードポンプ及びスカベンジングポンプの各一次オイルフィルタの配置構造の一例(特許文献1)を示しており、このエンジンでは、クランクケース300の下面に、クランクケース300とは別部材のオイルパン301が取り付けられており、このオイルパン301内に、フィードポンプ(図示せず)のオイル吸込側に連通するロート形状の一次オイルフィルタ303と、スカベンジングポンプ(図示せず)のオイル吸込側に連通する一次オイルフィルタ304が配置されている。なお、クランクケース300は上下二つ割り構造となっており、下部クランクケース部材の概略のみを示している。
【0005】
各一次オイルフィルタ303,304を交換する場合には、クランクケース300の下部に図示しないボルト等で取り付けられているオイルパン301を取り外した後、オイルパン301内から各一次オイルフィルタ303,304を取り外すと共に、新しい一次オイルフィルタ、又は洗浄後の一次オイルフィルタをそれぞれ取り付けることになる。
【特許文献1】特開2007−9738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンのクランクケースの構造としては、前記図15のように上下に分割される構造の他に、クランク軸方向に左右に分割される構造、すなわち左右方向に分割される構造も有るが、いずれの構造でも、図15のようにクランクケースの下面に別部材のオイルパンを取り付けている場合は、オイルパンをクランクケースから取り外すことにより、両一次オイルフィルタを簡単に交換することができる。しかし、クランクケースの構造の簡素化並びにコンパクト化を図るため、別部材のオイルパンを設けていないセミドライサンプ式エンジンでは、クランクケース自体を上下又は左右に分解しなければならず、各一次オイルフィルタの交換作業に手間がかかり、交換時の作業性が低下する。特に、左右(クランク軸方向)に分割されているクランクケースを備えている場合には、少なくとも一方のクランクケース部材からクランク軸や変速用の各出力軸及び入力軸を取り外さなければ、クランクケースを分解することができず、一次オイルフィルタの交換時の作業性が著しく低下する。
【0007】
(発明の目的)
クランク軸方向に分割されたクランクケースを有するセミドライサンプ式エンジンの潤滑構造において、二つのオイルポンプの各オイル吸込側に接続される各一次オイルフィルタを、クランクケース或いは他の部材を分解することなく、簡単に交換できるエンジンの潤滑構造を提供することである。また、両一次オイルフィルタをコンパクトに配置し、エンジン自体をコンパクト化し、さらに共通化することも目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、クランク軸方向に分割されたクランクケース内に形成されるトランスミッション室をオイル貯留部とし、該オイル貯留部のオイルを各潤滑個所に圧送する第1のオイルポンプと、クランク室に戻るオイルを前記トランスミッション室に戻す第2のオイルポンプと、前記第1のオイルポンプの吸込側に接続される第1のオイルフィルタと、前記第2のオイルポンプの吸込側に接続される第2のオイルフィルタと、を備えたエンジンの潤滑構造において、前記クランクケースを構成するクランク軸方向両側のクランクケース部材には、それぞれオイルフィルタ取付口が形成され、前記第1のオイルフィルタは、一方の前記クランクケース部材の前記オイルフィルタ取付口から前記クランクケースに挿入され、前記第2のオイルフィルタは、他方の前記クランクケース部材の前記オイルフィルタ取付口から前記クランクケースに挿入され、前記各オイルフィルタ取付口はそれぞれオイルフィルタキャップにより閉塞されている。
【0009】
上記構成によると、(1)クランクケースを分解することなく、両一次オイルフィルタの取付け及取外しが行え、一次オイルフィルタの交換及びメンテナンス作業が容易になる。
【0010】
(2)両オイルフィルタを、クランク軸方向の両側、すなわち左右から別々に取り付けるので、両オイルフィルタを相互に接近させて配置しても、オイルフィルタキャップの配置スペースが確保し易く、両オイルフィルタをコンパクトに配置できる。すなわち、オイルフィルタキャップの配置スペースが確保し易く、両オイルフィルタを相互に接近させた状態に、コンパクトに配置できる。
【0011】
(3)各オイルフィルタに連通するオイル通路を、各クランクケース部材にそれぞれ分配できるので、各オイル通路の形成スペースを広く確保することができる。
【0012】
本発明は、前記エンジンの潤滑構造において、好ましくは、前記第1のオイルフィルタと前記第2のオイルフィルタとは、略同一形状に形成される。
【0013】
上記構成によると、第1のオイルフィルタと第2のオイルフィルタとの部品の共通化が図れることにより、組立時には、それらを分別する必要がなくなるので、オイルフィルタの製造、管理、組付け及びメンテナンスに手間がかからず、また、オイルフィルタの製造が画一化でき、コストを低減させることもできる。
【0014】
本発明は、前記エンジンの潤滑構造において、好ましくは、前記両オイルフィルタを略円筒状に形成する。
【0015】
上記構成によると、(1)たとえば平板状のオイルフィルタを取り付ける場合と比べ、オイルフィルタの円筒芯回りの回動位置を考慮することなく、簡単に取り付けることができる。
【0016】
(2)通常、略円筒状のオイルフィルタは、外周からオイルを取り入れ、内周部の長さ方向の先端部から吐出するので、各一次オイルフィルタの長さ方向の先端出口部と、各クランクケース部材に形成されるオイル通路とを、簡単に連通させることができる。
【0017】
本発明は、略円筒状のオイルフィルタを備えたエンジンの潤滑構造において、好ましくは、前記クランクケース内には、前記各オイルフィルタ取付口にそれぞれ連通する略円筒状の第1及び第2のオイルフィルタ保持部が前記クランクケースと一体に形成され、前記第1のオイルフィルタを保持する前記第1のオイルフィルタ保持部には、前記オイル貯留部の下端部に開口する第1の吸込口が形成され、前記第2のオイルフィルタを保持する前記第2のオイルフィルタ保持部には、前記クランク室の下端部に開口する第2の吸込口が形成される。また、前記第1のオイルフィルタ保持部と前記第2のオイルフィルタ保持部とは、それらの長手方向がクランク軸と略平行になるように形成されると共に、前記第1のオイルフィルタ保持部が前記第2のオイルフィルタ保持部よりもオイル貯留部側に位置するように配列される。
【0018】
上記構成によると、ダイカストあるいは低圧鋳造法等の鋳造法により、クランクケースの成形時にオイルフィルタ保持部及び吸込口が簡単に形成でき、また、オイルフィルタの挿入作業も簡単になる。しかも、第1のオイルフィルタ保持部が第2のオイルフィルタ保持部よりもオイル貯留部側に配置されているので、両オイルフィルタ保持部の周壁に吸込口を開口するだけで、各オイルフィルタ保持部を、簡単にオイル貯留部とクランク室とに連通させることができる。
【0019】
本発明は、前記いずれかのエンジンの潤滑構造において、好ましくは、前記第1のオイルポンプと第2のオイルポンプとは、前記クランク軸と略平行な共通のポンプ軸に、クランク軸方向に取り付けられ、両オイルポンプの略下方位置に、前記第1及び第2のオイルフィルタが配置される。
【0020】
上記構成によると、各オイルポンプと各オイルフィルタとの接続(連通)構造を、コンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
要するに本発明によると、二つのオイルポンプのオイル吸込側に接続される各オイルフィルタを、クランク軸方向に分割された各クランクケース部材に分けて取り付けているので、クランクケースを分解することなく、各オイルフィルタの着脱作業が行えると共に、オイルフィルタキャップの配置スペースが確保し易く、コンパクトに配置でき、さらに、各オイルフィルタに連通するオイル通路を、各クランクケース部材にそれぞれ分配し、オイル通路の形成スペースを広く取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[本発明の実施の形態]
図1〜図14は、本発明にかかる潤滑構造を備えた自動二輪車用のセミドライサンプ式V型二気筒エンジンであり、これら図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。なお、説明の都合上、車輌の進行方向を、図1に矢印で示すようにエンジンの前方と規定し、乗車したライダーから見た左右(クランク軸方向)を、エンジンの左右と規定して、以下説明する。
【0023】
(エンジン全体の概略)
図1はエンジンの左側面略図、図2は図1のII-II断面拡大図、図3は図1のIII-III断面拡大図、図4は図1のIV-IV断面拡大図、図5は図1のV-V断面拡大図である。図1において、クランクケース1の前半部の上面には、前傾姿勢の前気筒10と後傾姿勢の後気筒20とがV字状に配置されており、各気筒10,20は、下から順に配置されたシリンダ11,21、シリンダヘッド12、22及びシリンダヘッドヘッドカバー(ロッカーアームカバー)13、23により構成されると共にクランクケース1に締結されており、各シリンダヘッドカバー13、23は、さらに意匠カバー14、24により覆われている。
【0024】
クランクケース1内の前半部はクランク室2となっており、クランク室2には、左右方向に延びるクランク軸4が配置されると共に、該クランク軸4と略平行に前後一対の一次バランサ軸6a,6bが配置されている。クランク軸4は、該実施の形態では矢印R方向に回転する構造となっており、前後のバランサ軸6a,6bは、チェーン伝動機構7を介してクランク軸4に連結され、クランク軸4と反対方向に回転する。
【0025】
クランクケース1内の後半部はトランスミッション室3となっており、該トランスミッション室3には、クランク軸4と略平行に変速用入力軸31と変速用出力軸32とが配置されると共に、図示しないシフトフォーク軸及びチェンジドラム軸等が配置されている。変速用出力軸32の左端部には歯付きの出力プーリ(又はスプロケット)33が設けられ、該出力プーリ33は、図示しない歯付きの二次駆動ベルト(又は駆動チェーン)を介して後車輪の歯付きのプーリ(又はスプロケット)に連動連結し、後車輪を駆動するようになっている。なお、図示しないが、後車輪を駆動する別の機構として、前記出力プーリ33の代わりにベベルギヤを備え、前記二次駆動ベルト(又は駆動チェーン)の代わりにドライブシャフトを備え、シャフトドライブ方式にて、後車輪を駆動する機構を設けることもできる。
【0026】
クランク室2とトランスミッション室3との境の下部には、クランク軸4及び変速用入力軸31より下方位置に、クランク軸4と略平行にポンプ軸36が配置され、該ポンプ軸36には、図4に示すように、潤滑油用の第1及び第2のオイルポンプとして、フィードポンプ41及びスカベンジングポンプ42が設けられると共に、冷却水用の水ポンプ43も設けられている。水ポンプ43はポンプ軸36の左端部に、フィードポンプ41及びスカベンジングポンプ42はポンプ軸36の右端部に配置されている。
【0027】
第1のオイルポンプであるフィードポンプ41及び第2のオイルポンプであるスカベンジングポンプ42の下方位置のクランクケース1の底壁部分には、図1に示すように、フィードポンプ41のオイル吸込側に接続される第1の一次オイルフィルタ44と、スカベンジングポンプ42のオイル吸込側に接続される第2の一次オイルフィルタ45とが配置されている。両一次オイルフィルタ44,45は、第1の一次オイルフィルタ44が第2の一次オイルフィルタ45の後側に位置し、かつ、互いに近接するように前後に並んで配置されている。また、クランクケース1の前端面の下端部には、フィードポンプ41のオイル吐出側に接続される二次オイルフィルタ46が着脱自在に取り付けられている。
【0028】
前後の気筒10,20のシリンダヘッド12,22の上端には、吸排気弁駆動用のカム軸16,26がそれぞれクランク軸4と略平行に配置されており、各カム軸16,26の左右端部に設けられたカムスプロケット17,27は、クランク軸4の左右の端部に設けられたカム駆動スプロケット19,29に、それぞれカムチェーン18,28を介して連動連結している。後で詳しく説明するが、前気筒用のカムスプロケット17、カムチェーン18及びカム駆動スプロケット19は、前気筒10の左側部分に配置され、後気筒用のカムスプロケット27、カムチェーン28及びカム駆動スプロケット29は、後気筒20の右側部分に配置されている。
【0029】
クランクケース1の左側壁には、ジェネレータカバー50が着脱自在に取り付けられており、該ジェネレータカバー50の下部であって、水ポンプ43の前方近傍位置には、オイル補給口52が形成され、該オイル補給口52には、棒状のオイルゲージ53aを有するオイルキャップ53が着脱可能に螺着されている。
【0030】
図2において、クランクケース1は、該実施の形態では、クランク軸方向に二つに分割された構造、すなわち、左右二つ割り構造となっており、左クランクケース部材1aと右クランクケース部材1bとが、クランク軸4と略直角な合わせ面で結合されている。左クランクケース部材1aの左側には、前述のジェネレータカバー50で覆われたジェネレータ室55が形成されており、該ジェネレータ室55内にジェネレータ56が収納されている。右クランクケース部材1bの右側には、クラッチカバー58が着脱自在に取り付けられ、該クラッチカバー58により覆われたクラッチ室59内には、一次駆動チェーン60及び多板摩擦クラッチ61等が収納されている。
【0031】
クランク軸4の左右のジャーナル部4a,4bは、左右のクランクケース部材1a、1bの軸受孔64a、64bにそれぞれ軸受メタル(ジャーナル軸受)62a、62bを介して回転可能に支持されており、左右のジャーナル部4a、4b間に形成された一対のクランクアーム4c及び両クランクアーム4cを連結するクランクピン4dは、クランク室2内に収納されている。クランクピン4dには前後の気筒用のコンロッド38a、38bの下側大端部38a’、38b’が嵌合し、各コンロッド38a、38bはそれぞれ対応する前後の気筒10、20(図1)内にそれぞれ延び、各上側小端部35が対応するピストン39(後気筒用は図示せず)に連結されている。
【0032】
クランク軸4の左端部はジェネレータ室55に突出しており、該左側突出部分には、前記ジェネレータ56のロータ56aと、バランサ駆動用のスプロケット63と、前気筒用の前記カム駆動スプロケット19とが設けられている。前気筒用のカム駆動スプロケット19に巻き掛けられた前記カムチェーン18は、前気筒10の左側部分に形成された前気筒用カムチェーントンネル65を通って前気筒10のロッカーアーム室66に至り、前述のように前気筒用のカム軸16のスプロケット17に巻き掛けられている。
【0033】
クランク軸4の右端部はクラッチ室59内に突出しており、該右側突出部分には、一次駆動用のプライマリスプロケット68と、後気筒用の前記カム駆動スプロケット29とが設けられている。プライマリスプロケット68は前記一次駆動チェーン60を介してクラッチ61の入力ギヤ61aに動力伝達可能に連結している。後気筒用のカム駆動スプロケット29に巻き掛けられたカムチェーン28は、図5に示すように、後気筒20の右側壁部分に形成された後気筒用カムチェーントンネル75を通って後気筒20のロッカーアーム室76に至り、前述のように後気筒用カム軸26のスプロケット27に巻き掛けられている。
【0034】
図3において、トランスミッション室3に配置された変速用入力軸31は、右端部がオイルシール付きの玉軸受70を介して右クランクケース部材1bに回転可能に支持されると共に、クラッチ室59内に突出し、該右側突出部分に前記多板摩擦クラッチ61が装着されている。一方、変速用出力軸32は、左端部がシール付きの玉軸受71を介して左クランクケース部材1aに回転可能に支持されると共に、トランスミッション室外に突出し、該左側突出部分に二次駆動用の前記出力プーリ33が固着されている。変速用入力軸31と変速用出力軸32のトランスミッション室3内の部分には、互いに噛み合う変速用の入力ギヤ群G1と出力ギヤ群G2がそれぞれ装着されている。
【0035】
(クランクケース1のポンプハウジング部80及びオイルフィルタ保持部86,87)
図6は右クランクケース部材1bの左側面図(内部の側面図)、図7は右クランクケース部材1bの内部を左斜め後方から見た斜視図、図8は左クランクケース部材1aの内部を右斜め後方から見た斜視図、図9は右クランクケース部材1bの外部を右斜め前方から見た斜視図、図10は左クランクケース部材1aの外部を左斜め後方から見た斜視図である。
【0036】
図6において、後バランサ軸6bと変速用入力軸31との前後方向間の下方位置には、フィードポンプ41及びスカベンジングポンプ42の共通のポンプハウジング部80が、右クランクケース部材1bと一体に形成されている。該ポンプハウジング部80の下方位置には、スカベンジング42のオイル吸込側に接続される前記第2の一次オイルフィルタ45を収納保持するための略円筒状の第2のオイルフィルタ保持部87が、クランクケース1の底壁と一体に形成され、該第2のオイルフィルタ保持部87の後側には、フィードポンプ41のオイル吸込側に接続される前記第1の一次オイルフィルタ44を保持するための略円筒状の第1のオイルフィルタ保持部86が、クランクケース1の底壁と一体に形成されている。両オイルフィルタ保持部86,87は、クランク軸4と略平行に延びるように形成されると共に、前後に近接した状態で並んで配置されており、第2のオイルフィルタ保持部87の後壁の一部と、第1のオイルフィルタ保持部86の前壁の一部とは、共用化されている。
【0037】
(クランクケース1のクランク室2、トランスミッション室3及び気液分離室9)
図6において、クランク室2とトランスミッション室3との前後方向間には、第1の隔壁91と第2の隔壁92とがクランクケース1と一体に形成されており、これら隔壁91,92により、クランク室2とトランスミッション室3とを前後に隔離すると共に、トランスミッション室3の前端部に、クランク室2及びトランスミッション室3から隔離された気液分離室9を形成している。第1の隔壁91は、後気筒用のボアの後端から後バランサ軸6bの前上端部近傍に向けて下方に延び、後バランサ軸6bの後側を円弧状に迂回して後バランサ軸6bの下端部(ポンプハウジング部80の前上方位置)に至り、さらに前下方に延び、下方に折れ曲がると共にL字状に後方に折れ曲がり、第2のオイルフィルタ保持部87の前上端部につながっている。
【0038】
第2の隔壁92は、クランクケース1の上端壁から、後バランサ軸6bと変速用入力軸31との間を略垂直に、かつ、直線状に下方に延び、ポンプハウジング部80の略後下端部まで至り、ポンプハウジング部80の下部の外周に沿って湾曲状に前上方に延び、前記第1の隔壁91の後バランサ軸6bの下端部近傍位置につながっている。第2の隔壁92の上端部には、気液分離室9の上端部とトランスミッション室3の上端部とを連通するオーバーフロー式のオイル排出口92aが形成されている。すなわち、このオイル排出口92aは、クランクケース1の上端壁の下面と、第2の隔壁92の上端凹部との間に形成されており、クランク軸4の軸芯及び変速用入力軸31の軸芯よりも高く位置している。第1の隔壁91が後バランサ軸6bの外周に沿って後方に円弧状に張り出していることから、気液分離室9を側方から見た形状は、上下方向の中間部が括れた「ひょうたん形状」あるいは「鼓形状」となっている。これにより、第1の隔壁91の第2の隔壁92との交点Y1から上方の括れ部分(最も括れた部分)9aに対応する点Y2に至るまでの第1の隔壁91の形状は、常に後上がりの勾配を有し、上方に行くに従い第1の隔壁92に近づく円弧状となり、反対に、上記括れ部分9aに対応する点Y2から上方の第1の隔壁91の形状は、オイル排出口92aに略対応する高さに至るまで、常に前上がりの勾配を有し、上方に行くに従い第1の隔壁92から遠ざかる円弧状となっている。また、スカベンジングポンプ42及びフィードポンプ41は、気液分離室9の下端部に位置している。
【0039】
トランスミッション室3の下端部は、セミドライサンプ式の潤滑のために、潤滑用のオイルを貯留するためのオイル貯留部8となっており、該オイル貯留部8の前端部は、両オイルフィルタ保持部86,87と気液分離室9との上下方向間に区間を経て、ポンプハウジング部80の前方部分まで延長されている。すなわち、ポンプハウジング部80の前方位置に広がる延長部8aが形成されており、この延長部8aは、後述するリリーフバルブ99から排出されるオイルのリリーフ経路として利用される。オイル貯留部8にはオイルが貯留されており、該オイルのレベルは、エンジン運転中において、たとえばL程度に維持されている。
【0040】
(クランクケース1内のオイル通路及びオイル補給口等の構造)
右クランクケース部材1bの壁内には、ポンプハウジング部80の後端部に形成されたフィードポンプ41のポンプ吸込口41cから下方に延びて第1のオイルフィルタ保持部86の右端出口部に至るフィードポンプ吸込側のオイル通路101と、ポンプハウジング部80の前端部に形成されたフィードポンプ41の吐出口41dから下方に延びるフィードポンプ吐出側のオイル通路102と、が形成されており、フィードポンプ吐出側の油路102の途中には、オイル貯留部8の延長部8a内に開口するリリーフバルブ取付部104が形成され、該リリーフバルブ取付部104にリリーフバルブ99が取り付けられている。
【0041】
図8において、前記オイル貯留部8の延長部8aの上端部の左側面には、左クランクケース部材1aを左右に貫通するオイル補給路103が形成されており、該オイル補給路103は、図10に示すようにジェネレータ室55の後下端部内を左方に延び、図1で説明したジェネレータカバー50のオイル補給口52に連通している。すなわち、オイル補給口52からオイルを補給することにより、図10のオイル補給路103を介し、図8のオイル貯留部8の延長部8aに、直接、オイルを供給できるようになっている。また、図1のオイルキャップ53に設けられているオイルゲージ53aは、図10のオイル補給路103を通過し、図8に示すようにオイル貯留部8の延長部8a内に至っており、これにより、オイル貯留部8内のオイルレベルを点検できるようになっている。
【0042】
(オイル回収部5の構造)
図6において、クランク室2内の下端部は、前側の仕切り壁95と後側の仕切り壁96とによりクランク軸収納部から仕切られることにより、オイル回収部5として形成されており、該オイル回収部5は、クランクケース1の前端壁から第2のオイルフィルタ保持部87の前端部に亘っている。前側の仕切り壁95は、前バランサ軸6aの下端部近傍位置から後方に延び、クランク軸4の前端に略対応する前後方向位置付近で途切れている。後側の仕切り壁96は、オイル貯留部8の延長部8aの前上端位置から、クランク軸4のクランクアーム部分の回転軌跡に略沿うように湾曲状に前方に延び、前側の仕切り壁95の後端に対し、一定の隙間を置いた後下方位置まで至っている。すなわち、前仕切り壁95の後端と、後仕切り壁96の前端との間で、前下方に向いて開口するオイル回収口97を形成している。言い換えると、該オイル回収口97は、クランク軸4の矢印R方向への回転により後側の仕切り壁96上を前方に流れるオイルの流れに対向するように開口している。
【0043】
右クランクケース部材1bには、オイル回収部5の前端部と後端部にそれぞれ開口する筒状のオイル管接続部111,112が形成されており、後側のオイル管接続部112は、第2のオイルフィルタ保持部87の前方近傍に配置され、前記フィードポンプ吐出側のオイル通路102の下端部に連通している。前側のオイル管接続部111は、右クランクケース部材1bの壁内を通るオイル通路(図示せず)を介して、図7に示す二次オイルフィルタ46のフィルタ前(ろ過前)の通路に連通している。また、前側のオイル管接続部111の後上方位置には、めねじ孔を有するオイル管固定用のボス部116が形成されている。
【0044】
オイル回収部5内には、前後のオイル管接続部111,112間をオイル流通可能に接続するオイル管115が配置されている。オイル管115は、オイル回収部5内を前後方向に延び、前後端部には、オイル管115の長さ方向と略直角な接続筒部115a、115bが形成されている。後端の接続筒部115bは、前記後側のオイル管接続部112に嵌合接続され、前端の接続筒部115aは、前記前側のオイル管接続部111に嵌合接続されると共に、ボルト118により、前記ボス部116に固定されている。
【0045】
オイル回収部5の後上端部の右側面、すなわちオイル貯留部8の延長部8aの前方近傍位置の右側面には、右クランクケース部材1bを左右に貫通するオイル孔120が形成され、該オイル孔120は右クランクケース部材1bを通り、図9に示すように、クラッチ室59の前下端部に連通している。すなわち、クラッチ室59に戻るオイルを、オイル孔120を通してオイル回収部5に回収するようになっている。
【0046】
図8において、オイル回収部5の前上端部と後上端部の左側面には、左クランクケース部材1aを貫通するオイル孔121,122が形成され、各オイル孔121,122は左クランクケース部材1aを通り、図10(及び図13)に示すように、ジェネレータ室55の前下端部と後下端部とにそれぞれ連通している。すなわち、ジェネレータ室55に戻るオイルを、オイル孔121,122を通してオイル回収部5に回収するようになっている。
【0047】
(オイルポンプ41,42の構造)
図4において、右クランクケース部材1bに一体に形成されたオイルポンプ用の共通ポンプハウジング部80内には、左から順にスカベンジングポンプ42用の内外ロータ42a、42b、共通のポンプボディ81、フィードポンプ41用の内外ロータ41a、41bが内装されており、ポンプハウジング部80の右端は、ポンプカバー84により閉塞されている。すなわち、共通のポンプボディ81を挟んで、左側に容量の大きなスカベンジングポンプ42が配置され、右側にスカベンジングポンプ42よりも容量の小さなフィードポンプ41が配置されている。いずれのオイルポンプ41,42も、前記内外一対のロータ41a,41b、42a、42bを噛み合い状態で回転可能に収納してなるトロコイド型ポンプであり、各内側ロータ41a,42aが前述の共通のポンプ軸36に連結されている。ポンプ軸36の右端部はポンプカバー84から右方のクラッチ室59内に突出しており、右方突出部分に固着されたポンプ用入力ギヤ82は、後バランサ軸6bに固着されたギヤ83に噛み合い、後バランサ軸6bから動力が伝達され、後バランサ軸6bと逆方向に回転するようになっている。
【0048】
スカベンジングポンプ42は、潤滑に使用後のオイルを、気液分離室9を介してオイル貯留室8に戻すオイルポンプ(第2のオイルポンプ)であり、前述のように、気液分離室9の下端部に位置している。ポンプハウジング部80の左端壁に形成されたスカベンジングポンプ用のポンプ吸込口42cには、クランクケース1内を左方に延びるオイル通路131が連通し、該オイル通路131の左端部には、左クランクケース部材1a内を下方に延びるオイル通路132が連通し、該オイル通路132の下端部は、第2のオイルフィルタ保持部87の左端のオイルフィルタ出口部128に連通している。ポンプハウジング部80の左端壁に形成されたスカベンジングポンプ用のポンプ吐出口42dは、気液分離室9の下端部に開口している。したがって、上記ポンプ吐出口42dは、気液分離室9のオイル入口と兼用されている。このオイル入口(ポンプ吐出口)42dの開口面積に対し、図6に示す気液分離室9の上端に形成されたオイル排出口92aの開口面積は、大きく形成されている。
【0049】
フィードポンプ41は、オイル貯留部8内のオイルをエンジンの各潤滑箇所に圧送するオイルポンプ(第1のオイルポンプ)であり、ポンプボディ81に前記ポンプ吸込口41cとポンプ吐出口41dとが形成されている。フィードポンプ41のオイル吸込口41cは、図6で説明したように、右クランクケース部材1bの壁内に形成された縦向きのオイル通路101を介して第1の一次オイルフィルタ44に連通し、オイル吐出口41bは、オイル通路102を介してオイル回収部5の後側のオイル管接続部112に連通している。
【0050】
オイル通路102の途中に形成されたリリーフバルブ取付部104には、オイル貯留部8の延長部8a内に位置するリリーフバルブ99が取り付けられており、リリーフバルブ99から逃がされる余剰オイルを、オイル貯留部8に直接、戻すようになっている。
【0051】
(一次オイルフィルタ44,45の取付構造)
図11は、図1のXI-XI断面拡大図であり、両一次オイルフィルタ44,45の構造及びその取付構造を詳細に示している。略円筒状に形成されている両オイルフィルタ保持部86,87は、右クランクケース部材1bの略右端部から左クランクケース部材1aの略左端部に亘って形成されている。後側に位置するフィードポンプ用の第1のオイルフィルタ保持部86は、左クランクケース部材1aの左端面にオイルフィルタ取付口123が開口すると共に該オイルフィルタ取付口123の近傍の内周面にめねじ部125が形成され、右クランクケース部材1bの右端部にオイルフィルタ出口部127が形成され、両クランクケース部材1a、1bの合わせ面を含む左右幅の中央部分に、後方のオイル貯留部8に向いて開口するスリット状のオイル吸込口86aが形成されている。第1のオイルフィルタ保持部86の右端部に形成されたオイルフィルタ出口部127は、右クランクケース部材1bに形成された前記フィードポンプ吸込側のオイル通路101の下端部に連通している。
【0052】
略円筒状の第1の一次オイルフィルタ44は、右端がオイル出口として開口し、左端が閉塞され、外周円筒面がろ過面となっており、右端開口部には、弾性材製の環状グロメット107が装着されている。第1のオイルフィルタ保持部86のオイルフィルタ取付口123を閉塞するためのオイルフィルタキャップ47は、外向きフランジ部47cを有する有底筒状に形成されると共に、右端部の外周面におねじ部47aが形成され、左端壁には工具係合用の六角形状の係合部47bが形成されている。さらに、フランジ部47cの右端面に形成された環状溝内には、Oリング73が装着されている。
【0053】
第1の一次オイルフィルタ44は、オイルフィルタ取付口123を経て第1のオイルフィルタ保持部86内に挿入されると共に、外周に、環状のばね受けリング109とコイルばね105が順に嵌合されており、オイルフィルタキャップ47を左端オイルフィルタ取付口123から第1のオイルフィルタ保持部86に挿入し、めねじ部125に螺合することにより、オイルフィルタキャップ47の右端でコイルばね105を圧縮し、ばね受け109を介して、グロメット107を第1のオイルフィルタ保持部86の右端環状段面に圧接している。すなわち、グロメット107により、第1の一次オイルフィルタ44の右端開口部の周縁部をシールすると共に、オイルフィルタキャップ47により一次オイルフィルタ44を固定し、さらに、Oリング73によりオイルフィルタ取付口123の周囲をシールしている。
【0054】
第1のオイルフィルタ保持部86の前側に位置するスカベンジングポンプ用の第2のオイルフィルタ保持部87は、右クランクケース部材1bの右端面にオイルフィルタ取付口124が開口すると共に該オイルフィルタ取付口124の近傍の内周面にめねじ部126が形成され、左クランクケース部材1aの左端部にオイルフィルタ出口部128が形成され、両クランクケース部材1a、1bの合わせ面を含む左右幅の中央部分に、前方のオイル回収部5に向けて開口するスリット状のオイル吸込口87aが形成されている。
【0055】
略円筒状の第2の一次オイルフィルタ45及び有底筒状のオイルフィルタキャップ48は、前記第1の一次オイルフィルタ44及びオイルフィルタキャップ47と同じ構造となっており、左右逆にして第2のオイルフィルタ保持部87内に装着されている。すなわち、略円筒状の第2の一次オイルフィルタ45は、左端がオイル出口として開口し、右端が閉塞され、外周円筒面がろ過面となっており、左端開口部には、弾性材製の環状グロメット108が装着されている。第2のオイルフィルタ保持部87のオイルフィルタ取付口124を閉塞するためのオイルフィルタキャップ48は、外向きフランジ部48cを有する有底筒状に形成されると共に、左端部の外周面におねじ部48aが形成されており、また、右端壁には工具係合用の六角形状の係合部48bが形成されている。さらに、外向きのフランジ部分48cの左端面に形成された環状溝内には、Oリング74が装着されている。
【0056】
第2の一次オイルフィルタ45の取付構造も第1の一次オイルフィルタ44と同様である。すなわち、第2の一次オイルフィルタ45は、右端オイルフィルタ取付口124から第2のオイルフィルタ保持部87内に挿入されると共に、その外周に、環状のばね受け110とコイルばね106が順に嵌合されており、オイルフィルタキャップ48を右端オイルフィルタ取付口124から挿入し、めねじ部126に螺合することにより、オイルフィルタキャップ48の左端でコイルばね106を圧縮し、ばね受け110を介してグロメット108を第2のオイルフィルタ保持部87の左端環状段面に圧接する。すなわち、グロメット108により、第2の一次オイルフィルタ45の左端開口部の周縁部をシールすると共に、オイルフィルタキャップ48により一次オイルフィルタ45を固定し、さらに、Oリング74によりオイルフィルタ取付口124の周囲をシールしている。
【0057】
(二次オイルフィルタ46以降のオイル供給経路及び各潤滑箇所の構造)
図9において、二次オイルフィルタ46のオイルろ過後のオイル出口は、右クランクケース部材1bの壁内に形成されたメインオイル通路(メインギャラリ)141に連通し、該メインオイル通路141は後方に延び、後端部が、上方に延びる縦向きのメインオイル通路142に連通している。該縦向きのメインオイル通路142は右クランクケース部材1bの軸受孔64bに至っている。
【0058】
縦向きのメインオイル通路142の途中には、クランク軸4と略平行に左方に延びるオイル通路143と、トランスミッション用のオイル取出部144が連通している。トランスミッション用のオイル取出部144には、トランスミッション用のオイル管145が接続されており、該オイル管145は、クラッチ室59内を後上方に延びると共に、クラッチ室59の上壁近傍を後方に延び、変速用入力軸31のオイル入口部146と、変速用出力軸32のオイル入口部147と、にそれぞれ接続している。クランク軸4の下方を左方に延びる前記オイル通路143は、図7に示すように、クランク室2の右クランクケース部材1bの後仕切り壁96の下面を経て、図8に示す左クランクケース部材1aの後仕切り壁96の下面に至り、図10に示すように、左クランクケース部材1aの壁内に形成された縦向きのオイル通路148に連通している。この縦向きのオイル通路148は左クランクケース部材1aの軸受孔64aに至っている。
【0059】
(クランク軸4周りの潤滑箇所)
図2において、クランク軸4の左右のジャーナル部4a、4bを支持する左右のクランクケース部材1a、1bの軸受孔64a、64bの内周面には、それぞれ環状オイル通路57a、57bが形成されており、各環状オイル通路57a、57bは、前述の各クランクケース部材1a、1b内に形成された縦向きのオイル通路142,148(図9及び図10)にそれぞれ連通している。
【0060】
左側の環状オイル通路57aからオイルが供給される主たる潤滑箇所は、左側の軸受メタル62aと左ジャーナル部4aとの嵌合部分、ジェネレータ56のステータ部、前気筒のカム軸16等である。左側の軸受メタル62aと左ジャーナル部4aとの嵌合部分には左側の軸受メタル62aに形成された径方向のオイル孔67aを介してオイルが供給される。前気筒用のカム軸16には、前気筒10の左側部に形成されたオイル通路152を介して、前気筒用カム軸16の上方に配置されたオイル室154に一旦オイルが供給され、該オイル室154からカム軸16にオイルが滴下供給される。ジェネレータ56のステータ部には、クランク軸4内を左方に延びるオイル通路157を介してノズル部158にオイルが供給され、該ノズル部158からジェネレータ56のステータ部に向けてオイルが噴射される。
【0061】
右側の環状オイル通路57bからオイルが供給される主たる潤滑箇所は、右側の軸受メタル62bと右ジャーナル部4bとの嵌合部分、クランクピン4dとコンロッド38a、38bの大端部との嵌合部分、プライマリスプロケット68、前気筒用のピストン39の内部及び図5に示す後気筒用のカム軸26等である。図2に戻り、右側の軸受メタル62bと右ジャーナル部4bとの嵌合部分には、右側の軸受メタル62bに形成された径方向のオイル孔67bを介してオイルが供給される。クランクピン4dとコンロッド38a、38bの大端部との嵌合部分には、クランク軸4内に形成されたオイル通路160を介してオイルが供給される。前気筒10のピストン39には、右クランクケース部材1b内のオイル通路161を介してオイルジェット162にオイルが供給され、該オイルジェット162から前気筒10のピストン39の内部にオイルが噴射される。図5の後気筒20のカム軸26へは、後気筒20の右側部に形成されたオイル通路163を介して、後気筒用カム軸26の上方に配置されたオイル室164に一旦オイルが供給され、該オイル室164からカム軸26にオイルが滴下供給される。
【0062】
(トランスミッション室3の潤滑箇所)
図3において、変速用入力軸31と変速用出力軸32内にはそれぞれ軸方向に延びるオイル通路171,172が形成されており、各オイル通路171,172は、それぞれ径方向に延びる分岐通路を介して、変速ギヤ群G1,G2の各ギヤの嵌合部分に連通している。変速用入力軸31のオイル通路171は、左端部が左クランクケース部材1aのオイル通路174に連通し、該オイル通路174は右方にL字状に折れ曲がり、両クランクケース部材1a、1bの合わせ面を介して右クランクケース部材1bのオイル通路175に連通している。該オイル通路175の右端部は、前記変速用入力軸用のオイル入口部146に至り、前記オイル管145からオイルが供給されるようになっている。変速用出力軸32用のオイル通路172は、右端部が、右クランクケース部材1bのオイル通路176を介して、前記変速用出力軸用のオイル入口部147に至り、前記オイル管145からオイルが供給されるようになっている。
(前後の気筒10,20の潤滑用オイルの戻り経路)
【0063】
図12は、図1のXII-XII断面図、図13は、エンジンの左側部をクランク軸4と直角な垂直面で切断して示す左側面図である。図13において、前気筒10のロッカーアーム室66からのオイル戻り経路としては、前気筒10の左側に形成されたカムチェーントンネル65が利用され、該カムチェーントンネル65を介してジェネレータ室55に戻される。カムチェーントンネル65内には、カムチェーン18の前側部分をガイドするガイドチェーン34aと、カムチェーン18の後側部分をガイドするチェーンスリッパ(チェーンガイド)34bとが、配置されている。また、ジェネレータ室55内の上端部のカムチェーントンネル65の近傍には、カムチェーン18にテンションを付与するための油圧式チェーンテンショナ30が配設されており、この油圧式カムチェーンテンショナ30に供給されたオイルも、直接あるいはカムチェーントンネル65からジェネレータ室55に戻される。
【0064】
一方、後気筒20のロッカーアーム室76からのオイル戻り経路としては、図12において、後気筒20の右側に形成されたカムチェーントンネル75が利用されると共に、ロッカーアーム室76の左後端近傍位置のシリンダヘッド上端面(ロッカーアーム室の床面)にオイル戻り通路180が形成されており、このオイル戻り通路180が主として利用される。オイル戻り通路180の上端開口部には、後右方に延びるガイド凹部181が形成されており、オイル戻り通路180にオイルを集めやすくなっている。さらに、右側のカムチェーントンネル75の上端開口の左側には、上方に突出するリブ182が、チェーントンネル75に沿って前後方向に延びており、このリブ182により、ロッカーアーム室76の底面に溜まるオイルを、カムチェーントンネル75側ではなく、できるだけ、オイル戻り通路180に集めるようになっている。
【0065】
図13において、後気筒20用の前記オイル戻り通路180は、後気筒20のシリンダヘッド22内からシリンダ21及び左クランクケース部材1aに亘り、後気筒20の左後端部内を、後気筒20のシリンダ中心線と略平行に下方に延びている。該オイル戻し通路180の下端部は、後バランサ軸6bの上方位置で、左クランクケース部材1a内を略L字状に後方に折れ曲がり、後端の出口部180aが、図8に示すように、気液分離室9の上端部に開口し、気液分離室9内にオイルを戻すようになっている。
【0066】
なお、図12の後気筒20のチェーントンネル75に流入するオイルは、図9に示すクラッチ室59の前上端部にオイルを戻すようになっている。
【0067】
(エンジン全体の潤滑オイルの流れ)
(1)図14は、エンジン内のオイル循環を簡単にまとめたブロック図であり、太い実線で示す矢印は、トランスミッション室3のオイル貯留部8からフィードポンプ41を経て各潤滑箇所に至るオイル供給経路であり、細い実線で示す矢印は、クランク室2のオイル回収部5からスカベンジングポンプ42を経てオイル貯留部8に至るオイル回収経路であり、破線で示す矢印は、各潤滑箇所からオイル回収部5又はオイル貯留部8に至るオイル戻り経路である。
【0068】
(2)エンジン運転中における各潤滑箇所へのオイル供給を簡単に説明すると、太い実線の矢印で示すように、フィードポンプ41は、トランスミッション室3のオイル貯留部8から第1の一次オイルフィルタ44及びオイル通路101を介してオイルを吸い込み、オイル通路102及びオイル回収部5内のオイル管115を介して二次オイルフィルタ46にオイルを圧送する。オイル通路102の途中、リリーフバルブ99で調圧された余剰のオイルは、オイル貯留部8(延長部8a)に直接排出される。
【0069】
(3)二次オイルフィルタ46で濾過されたオイルは、オイル通路(メインギャラリ)141等を通り、左右の軸受孔64a、64bの環状オイル通路57a、57bに供給されると共に、トランスミッション用のオイル管145等を通って変速用入力軸31及び変速用出力軸32に供給される。また、変速用入力軸31からはクラッチ61にもオイルが供給される。
【0070】
(3)右側の環状オイル通路57bからは、クランク軸4の右ジャーナル部4bにオイルが供給されると共に、クランクピン4d、プライマリスプロケット68、前気筒用ピストン39の内部(オイルジェット)、後気筒用カムチェーンテンショナ及び後気筒用シリンダヘッド22(ロッカーアーム室76)等にオイルが供給される。一方、左側の環状通路57aからは、クランク軸4の左ジャーナル部4aにオイルが供給されると共に、後気筒用ピストンの内部(オイルジェット)、前気筒用シリンダヘッド12(ロッカーアーム室66)、前気筒用カムチェーンテンショナ30及びジェネレータ室55等にオイルが供給される。
【0071】
(4)変速用入力軸31及び変速用出力軸32のギヤ群G1,G2の潤滑及び冷却に利用されたオイルは、トランスミッション室3のオイル貯留部8に直接落下又は流下する。クラッチ61の潤滑及び冷却に利用されたオイルは、クラッチ室59に落下又は流下し、クラッチ室59からオイル回収部5に排出される。
【0072】
(5)左右のクランク軸ジャーナル部4a、4b、クランクピン4d、前後気筒用のピストン39等の潤滑及び冷却に利用されたオイルは、クランク室2のクランク収納部に落下又は流下し、該クランク収納部からオイル回収部5に排出される。
【0073】
(6)前気筒用シリンダヘッド12及び前気筒用油圧式カムチェーンテンショナ30に供給されたオイルは、前気筒10のカムチェーントンネル65を通り、あるいは直接、ジェネレータ室55に戻される。
【0074】
(7)後気筒用シリンダヘッド22のカム軸26等の潤滑及び冷却に利用されたオイルは、一部が、後気筒用のカムチェーントンネル75を通ってクラッチ室59に戻されるが、大半は、後気筒20内の戻り用オイル通路180を通り、気液分離室9に戻される。後気筒用油圧式カムチェーンテンショナに供給されたオイルは、後気筒用のカムチェーントンネル75を通り、あるいは、直接、クラッチ室59に戻される。
【0075】
(8)各潤滑箇所からクラッチ室59及びジェネレータ室55に戻されたオイルは、それぞれオイル孔120,121,122、等を通して、オイル回収部5に回収される。
【0076】
(9)オイル回収部5に回収されたオイルは、第2の一次オイルフィルタ45を介してスカベンジングポンプ42により吸い込まれ、図4に示す気液分離室9のオイル入口(ポンプ吐出口)42dから気液分離室9の下端部に戻される。気液分離室9内に一時的に貯留されるオイルは、後から続いて流入するオイルにより押し上げられ、括れ部分9aを通り、上端のオイル排出口92aから溢れることにより、トランスミッション室3のオイル貯留部8に戻される。
【0077】
(一次オイルフィルタ44,45の着脱作業)
図6に示すフィードポンプ41のオイル吸込側の第1の一次オイルフィルタ44を取り付ける場合には、図11において、左クランクケース1aの左側面に形成されたオイルフィルタ取付口123から、コイルばね105及び環状ばね受け109と共に第1のオイルフィルタ保持部86内に挿入し、オイルフィルタキャップ47を、左側から第1のオイルフィルタ保持部86に嵌合し、めねじ部125に螺着する。これにより、オイルフィルタキャップ47の右端でコイルばね105を圧縮し、一次オイルフィルタ44の右端開口部をシールすると共に、一次オイルフィルタ44を固定する。また、オイルフィルタキャップ47とオイルフィルタ取付口123の周囲のキャップ取付座との間は、0リング73によりシールされる。
【0078】
一方、図4に示すスカベンジングポンプ42のオイル吸込側の第2の一次オイルフィルタ45を取り付ける場合には、図11において、右側のオイルフィルタ取付口124から、コイルばね106及び環状ばね受け110と共に、第2のオイルフィルタ保持部87内に挿入し、オイルフィルタキャップ48を第2のオイルフィルタ保持部87に嵌合してめねじ部126に螺着することにより、オイルフィルタキャップ48の左端でコイルばね106を圧縮し、一次オイルフィルタ45の左端開口部をシールすると共に、一次オイルフィルタ45を固定する。
【0079】
(各一次オイルフィルタ44,45の作用)
図11において、エンジン運転中、第1の一次オイルフィルタ44は、後向きに開口するスリット状のオイル吸込口86aから、オイル貯留部8内のオイルを吸い込み、外周円筒面を内方に通過させることによりオイルを濾過する。濾過後のオイルは、右端の開口部から右クランクケース部材1b内のオイルフィルタ出口部127を経て、図2のフィードポンプ41に吸い込まれる。
【0080】
図11において、エンジン運転中、第2の一次オイルフィルタ45は、前向きに開口するスリット状の吸込口87aから、オイル回収部5内のオイルを吸い込み、外周円筒面を内方に通過させることによりオイルを濾過する。濾過後のオイルは、左端の開口部から左クランクケース部材1a内のオイルフィルタ出口部128を経て、図2のスカベンジング42に吸い込まれる。
【0081】
(本実施の形態における作用効果)
(1)、図11において、両一次オイルフィルタ44,45を、クランクケース1の左右のオイルフィルタ取付口123,124からそれぞれ装着するようにしているので、左右のクランクケース部材1a1bを分解することなく、両一次オイルフィルタ44,45を簡単にクランクケース1内に取り付けることができる。
【0082】
(2)両一次オイルフィルタ44,45は略同一構造となっているので、両一次オイルフィルタ44,45の取付時に、両一次オイルフィルタ44,45を分別する必要がなく、いずれのオイルフィルタ保持部86,87に装着することも可能となる。これにより、部品の生産及び管理が容易になると共に、オイルフィルタ取付作業において、取付け箇所を間違えるおそれがない。
【0083】
(3)両一次オイルフィルタ44,45を略円筒状に形成し、クランク軸4と略平行に配置すると共に、互いに前後に近接するように配置しているので、クランクケース1の前後方向の寸法をコンパクトにできる。
【0084】
(4)両一次オイルフィルタ44,45を、それぞれクランクケース1の左右から挿入し、左右からそれぞれオイルフィルタキャップ47,48で固定するようにしているので、両オイルフィルタキャップ47,48の配置スペースを確保し易く、一次オイルフィルタ44,45を、できる限り前後に接近させてコンパクトに配置できる。
【0085】
(5)両一次オイルフィルタ44,45を、それぞれクランクケース1の左右から挿入し、第1の一次オイルフィルタ44のオイルフィルタ出口部に連通するオイル通路101を右クランクケース部材1bに形成し、第2の一次オイルフィルタ45のオイルフィルタ出口に連通するオイル通路132等を左クランクケース部材1aに形成しているので、オイル通路101、132等を左右のクランクケース部材1a、1bに分けて設けることができ、オイル通路101,132の形成スペースが広く取れ、鋳造等によるクランクケース1の製造が容易になる。
【0086】
(6)両一次オイルフィルタ44,45を略円筒状に形成しているので、平板状のオイルフィルタを取り付ける場合と比べ、取付姿勢(円筒芯回りの回動状態)に拘わらず、両一次オイルフィルタ44,45を取り付けることができる。
【0087】
(7)略円筒状の一次オイルフィルタ44,45は、外周からオイルを取り入れ、内周部の長さ方向の先端部から吐出する構造であるので、各一次オイルフィルタ44、45の長さ方向の先端のオイル出口部と、各クランクケース部材1a、1bに形成されるオイル通路101,132等とを、簡単に連通させることができる。
【0088】
(8)第1及び第2のオイルフィルタ保持部86、87は略円筒状に形成されているので、オイルフィルタ保持部86,87自体及びその吸込口86a,87aが簡単に形成でき、また、一次オイルフィルタ44,45の挿入作業も簡単である。
【0089】
(9)クランクケース1は、左右のクランクケース部材1a、1bに分割されており、かつ、略円筒状の両オイルフィルタ保持部86,87は、それらの長手方向がクランク軸4と略平行になるように各クランクケース部材1a、1bに形成されているので、左右のクランクケース部材1a、1bを製造する時に、各オイルフィルタ保持部86,87をそれぞれ簡単に成形できる。しかも、第1のオイルフィルタ保持部86が第2のオイルフィルタ保持部87よりもオイル貯留部8側に配置されているので、両オイルフィルタ保持部86,87の周壁に吸込口86a、87aを開口するだけで、各オイルフィルタ保持部86,87を、簡単にオイル貯留部8とオイル回収部5とに連通させることができる。また、上記各吸込口86a,87aを、左右のクランクケース部材1a、1bの合わせ面を含むように、左右幅の中央部に形成しているので、クランクケース1の左右のクランクケース部材1a、1bの成形時に、両吸込口86a,87aを形成することができる。
【0090】
(10)両フィードポンプ41とスカベンジングポンプ42とは、クランク軸4と略平行な共通のポンプ軸36を有すると共に、該クランク軸方向に並設され、両ポンプ41,42の略下方位置に、両一次オイルフィルタ44,45を配置しているので、各ポンプ41,42と各一次オイルフィルタ44,45との連通構造を、コンパクトに構成することができる。
【0091】
[その他の実施の形態]
(1)前記実施の形態では、クランクケースはクランク軸方向に二分割された構造となっているが、3つ以上に分割されるクランクケースとすることも可能である。また、オイルポンプを3個以上備えたエンジンにも適用可能である。
【0092】
(2)各一次オイルフィルタの形状は、略円筒状には限定されず、たとえば、断面多角形状の筒形、あるいは部分円筒状とすることも可能である。また、このような一次オイルフィルタの断面形状等の変化に対応して、左右に分割されたクランクケース部材1a、1bをダイカスト成形する場合には、円筒状の他、部分円筒状、断面が矩形あるいは断面が多角形の筒状に型成形することができる。
【0093】
(3)第1の一次オイルフィルタをクランクケースの右方から差し込み、第2の一次オイルフィルタをクランクケースの左方から差し込む構造とすることもできる。
【0094】
(4)第1及び第2のオイルポンプ、すなわちフィードポンプとスカベンジングポンプとが、別々のポンプ軸を有するエンジンに適用することも可能である。また、オイルポンプは、トロコイド型ポンプには限定されず、ギヤポンプ等、各種形式のオイルポンプを用いることもできる。
【0095】
(5)本発明は、自動二輪車用のエンジンの潤滑構造には限定されず、車輌あるいは船等の各種乗物用のエンジン、又は各種産業用のエンジンの潤滑構造に適用でき、またインライン型のエンジン等、V型エンジン以外の各種エンジンにも適用できる。
【0096】
(6)特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明にかかる潤滑構造を備えたエンジンの左側面略図である。
【図2】図1のII-II断面拡大図である。
【図3】図1のIII-III断面拡大図である。
【図4】図1のIV-IV断面拡大図である。
【図5】図1のV-V断面拡大図である。
【図6】右クランクケース部材の左側面図(内部の側面図)である。
【図7】右クランクケース部材の内部を左斜め後方から見た斜視図である。
【図8】左クランクケース部材の内部を右斜め後方から見た斜視図である。
【図9】右クランクケース部材の外部を右斜め前方から見た斜視図である。
【図10】左クランクケース部材の外部を左斜め後方から見た斜視図である。
【図11】図1のXI-XI断面拡大斜視図である。
【図12】図1のXII-XII断面拡大図である。
【図13】図1のエンジンの左端部の縦側断面拡大図である。
【図14】エンジン内のオイルの流れを示すブロック図である。
【図15】従来例のクランクケース及びオイルパン内の斜視図である。
【符号の説明】
【0098】
1 クランクケース
1a 左クランクケース部材
1b 右クランクケース部材
2 クランク室
3 トランスミッション室
4 クランク軸
5 オイル回収部
8 オイル貯留部
9 気液分離室
36 共通のポンプ軸
41 フィードポンプ(第1のオイルポンプ)
42 スカベンジングポンプ(第2のオイルポンプ)
44 第1の一次オイルフィルタ
45 第2の一次オイルフィルタ
47 オイルフィルタキャップ(第1の一次オイルフィルタ用)
48 オイルフィルタキャップ(第2の一次オイルフィルタ用)
86 第1のオイルフィルタ保持部(第1の一次オイルフィルタ用)
86a オイル吸込口
87 第2のオイルフィルタ保持部(第2の一次オイルフィルタ用)
87a オイル吸込口
123 第1のオイルフィルタ保持部のオイルフィルタ取付口
124 第2のオイルフィルタ保持部のオイルフィルタ取付口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸方向に分割されたクランクケース内に形成されるトランスミッション室をオイル貯留部とし、該オイル貯留部のオイルを各潤滑個所に圧送する第1のオイルポンプと、クランク室に戻るオイルを前記トランスミッション室に戻す第2のオイルポンプと、前記第1のオイルポンプの吸込側に接続される第1のオイルフィルタと、前記第2のオイルポンプの吸込側に接続される第2のオイルフィルタと、を備えたエンジンの潤滑構造において、
前記クランクケースを構成するクランク軸方向両側のクランクケース部材には、それぞれオイルフィルタ取付口が形成され、
前記第1のオイルフィルタは、一方の前記クランクケース部材の前記オイルフィルタ取付口から前記クランクケースに挿入され、
前記第2のオイルフィルタは、他方の前記クランクケース部材の前記オイルフィルタ取付口から前記クランクケースに挿入され、
前記各オイルフィルタ取付口はそれぞれオイルフィルタキャップにより閉塞されていることを特徴とするエンジンの潤滑構造。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの潤滑構造において、
前記第1のオイルフィルタと前記第2のオイルフィルタは、略同一形状に形成されているエンジンの潤滑構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンの潤滑構造において、
前記両オイルフィルタを略円筒状に形成しているエンジンの潤滑構造。
【請求項4】
請求項3記載のエンジンの潤滑構造において、
前記クランクケース内には、前記各オイルフィルタ取付口にそれぞれ連通する略円筒状の第1及び第2のオイルフィルタ保持部が前記クランクケースと一体に形成され、
前記第1のオイルフィルタを保持する前記第1のオイルフィルタ保持部には、前記オイル貯留部の下端部に開口する吸込口が形成され、
前記第2のオイルフィルタを保持する前記第2のオイルフィルタ保持部には、前記クランク室の下端部に開口する吸込口が形成されているエンジンの潤滑構造。
【請求項5】
請求項4記載のエンジンの潤滑構造において、
前記第1のオイルフィルタ保持部と前記第2のオイルフィルタ保持部とは、それらの長手方向がクランク軸と略平行になるように形成されると共に、前記第1のオイルフィルタ保持部が前記第2のオイルフィルタ保持部よりもオイル貯留部側に位置するように配列されているエンジンの潤滑構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジンの潤滑構造において、
前記第1のオイルポンプと第2のオイルポンプとは、前記クランク軸と略平行な共通のポンプ軸に、クランク軸方向に取り付けられ、両オイルポンプの略下方位置に、前記第1及び第2のオイルフィルタが配置されているエンジンの潤滑構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−24914(P2010−24914A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185945(P2008−185945)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】