説明

エンジンを制御する方法

本発明は、ターボチャージャ(40)により過給されるエンジン(10)を制御する方法に関するものであり、前記方法は、前記ターボチャージャ(40)のコンプレッサの入口におけるガスの温度Tecomp,estを計算するステップと、次いで、昇圧設定圧力値P21consを、前記設定圧力値が、前記コンプレッサの前記入口におけるガスの前記計算温度Tecomp,estに特に依存した状態で決定して、前記エンジン(10)の吸気マニホールド(50)内の昇圧圧力を設定するステップと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御の分野に関する。
【0002】
更に詳細には、本発明は、エンジンの吸気マニホールド内の昇圧圧力を調整するように構成されるエンジン制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の方法の使用は、単一段ターボチャージャまたは多段式ターボチャージャ(群)によって過給されるディーゼルエンジンに特に有利である。
【0004】
原動機付き車両、特にディーゼル式原動機付き車両にはほとんどの場合、エンジン内部の圧力を空気で昇圧させるターボチャージャが装備され、このターボチャージャは、エンジンのシリンダ群に吸入される空気量を多くするように設計される。
【0005】
当該ターボチャージャまたは各ターボチャージャはタービンを含み、このタービンは、エンジンの排気マニホールドの排気口に配置され、排気ガスにより駆動される。
【0006】
更に、当該ターボチャージャは、タービンと同じ軸に取り付けられるコンプレッサを含み、このコンプレッサは、エンジンの吸気マニホールドに流入する空気を確実に圧縮する。
【0007】
この場合、当該ターボチャージャまたは各ターボチャージャは、排気ガスの動力を調整するユニットと連動しており、このユニットは、吸気マニホールド内の圧力を、策定した(developed)昇圧設定圧力値前後に調整するように設計されている。
【0008】
この種の調整ユニットは、例えばターボチャージャが可変容量型である場合のブレード(blade:翼)、またはターボチャージャが固定容量型である場合のタービンの両端部に配置される排気バルブに対応する。
【0009】
前記制御ユニットに対する作用は中央ユニットにより制御され、この中央ユニットは、吸気マニホールド内の昇圧圧力を、特にタービンの入口における昇圧圧力の測定値に応じて、調整することができる。
【0010】
従って、当該中央ユニットは、昇圧圧力を昇圧設定圧力値に調整する役割を担う少なくとも1つのレギュレータを備える。
【0011】
この調整構造の応答時間向上のために、レギュレータの出力を調整ユニットの事前位置決め値(pre−positioning value)に加算して、調整ユニットに、エンジン排気ガスの圧力に作用する制御信号を供給する。
【0012】
従来より、昇圧設定圧力値は、例えばエンジン回転速度及びエンジントルクに応じて、かつターボチャージャブレードに基づいてマッピングされ、例えば、タービン下流圧力、タービン上流圧力、及びコンプレッサに流入する空気の温度のような物理値に応じて補正される。
【0013】
調整ユニットの事前位置決め値もマッピングの形式で、例えば大気圧、及びコンプレッサに流入する空気の温度に応じて補正されるエンジン回転速度及びエンジントルクの形式で提供される。
【0014】
従って、昇圧設定圧力値は調整ユニットの事前位置決めマッピングの値に対応する。事前位置決めについて、ブレード群の位置設定値を含めて開示することとし、これらの位置設定値によって、昇圧設定圧力をエンジンの各作動点に対応して実現することができる。
【0015】
しかしながら、この種の調整構造には、依然として制約がある。
【0016】
具体的には、当該調整構造は、低圧排気ガス再循環通路を備えるエンジンの堅牢性に欠けるという不具合がある。
【0017】
実際、この種のエンジンでは、エンジンから排出される窒素酸化物の量を低減するように設計される排気ガス再循環通路は、排気回路と吸気回路とを連通させることにより構成される。
【0018】
更に詳細には、ターボチャージャを1つだけ設ける場合においては、当該排気ガス再循環通路は、微粒子フィルタの後段の排気回路と、コンプレッサの前段の吸気回路とを、排気ガス再循環バルブにより調整される寸法を有する通路部分を介して連通させることにより構成される。多段式ターボチャージャ(低圧段ターボチャージャ、高圧段ターボチャージャ)を設ける場合においては、当該排気ガス再循環通路は、微粒子フィルタの後段の排気回路と、低圧段ターボチャージャのコンプレッサの前段の吸気回路とを、排気ガス再循環バルブにより調整される寸法を有する通路部分を介して連通させることにより構成される。
【0019】
コンプレッサの上流、または2段式ターボチャージャを設ける場合は低圧段ターボチャージャの上流に排気ガスを戻すことにより、コンプレッサ、または設けるとした場合の低圧コンプレッサに流れ込む温度は、冷気流の温度と低圧排気ガス再循環流の温度との混合気温度となる。
【0020】
排気ガス再循環通路は、コンプレッサ、または設けるとした場合の低圧コンプレッサに流入する冷気の温度が、昇圧設定圧力値及びブレードの事前位置決め値の決定に関与するという点で昇圧制御に影響を与える。
【0021】
コンプレッサ、または設けるとした場合の低圧コンプレッサに流入する冷気の温度は、現時点では、コンプレッサ上流の冷気フローメータ内に設置される温度センサにより測定されている。
【0022】
しかしながら、温度の正しい測定を行なうために均一な温度の混合気をコンプレッサ上流で実現する難しさ、及び排気ガス再循環通路のガスの近傍に接続されるセンサを汚す危険によって、正しい温度測定を行なうことができない。
【0023】
更に、温度センサをコンプレッサの入口で使用すると、新品センサの使用に付随する追加コストに関連する、または新品センサをコンプレッサ上流に設置するための空間が無いことに関連する問題が生じ得る。
【0024】
更に、低圧段ターボチャージャに流入する空気流は、フローメータで測定される空気流と低圧再循環通路を循環する流れとの合計に等しい。しかしながら、2段式ターボチャージャ(低圧段ターボチャージャ及び高圧段ターボチャージャ)の場合、フローメータをHPコンプレッサの入口で使用する、または再循環通路内で使用すると、温度センサを実装する場合の問題と同様の問題が生じる。
【発明の概要】
【0025】
本発明の目的は、吸気マニホールド内の圧力の調整を、従ってエンジンの制御を改善することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、ガス温度センサを、コンプレッサの上流に、または設けるとした場合の低圧コンプレッサの上流に設けなくても済むようにすることにある。
【0027】
多段式ターボチャージャの特殊事例においては、本発明の別の目的は、フローメータを、低圧コンプレッサの上流に設けなくても済むようにすることにもある。
【0028】
この目的のために、本発明によれば、単一のターボチャージャにより過給される、または低圧段ターボチャージャ及び高圧段ターボチャージャにより構成されるアセンブリにより過給されるエンジンを制御する方法が提供され、前記方法は:
・ガスの温度を、前記ターボチャージャのコンプレッサの入口において、または前記低圧段ターボチャージャのコンプレッサの入口において計算し;次に、
・昇圧設定圧力値を、前記設定圧力値が、前記ターボチャージャの前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧段ターボチャージャの前記コンプレッサの前記入口におけるガスの前記計算温度に特に依存した状態で決定して、前記エンジンの吸気マニホールド内の昇圧圧力の調整を行なうことを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、単一のターボチャージャにより過給される、または低圧段ターボチャージャ及び高圧段ターボチャージャにより構成されるアセンブリにより過給されるエンジンを制御して、本発明による方法を実行する装置も提供され、前記装置は、前記ターボチャージャの前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧段ターボチャージャの前記コンプレッサの前記入口における温度の計算に適する計算手段と、前記ターボチャージャの前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧段ターボチャージャの前記コンプレッサの前記入口におけるガスの前記計算温度に依存する昇圧設定圧力値を決定して、前記エンジンの吸気マニホールド内の昇圧圧力の調整を行なう手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の他の態様、目的、及び利点は、非制限的な例として提示され、かつ添付の図面を参照しながら行なわれる本発明の好適な実施形態に関する以下の詳細な説明を一読することにより明らかになるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態による制御システムを備えるエンジンを模式的に示している。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態による制御システムを備えるエンジンを模式的に示している。
【図3】図3は、図1及び図2のエンジンを模式的に示している。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態による制御システムを備えるエンジンを模式的に示している。
【図5】図5は、図4のエンジンを模式的に示している。
【図6】図6は、図1及び図2のエンジンのマニホールド内の昇圧圧力を調整する構造の本発明による実施形態を示している。
【図7】図7は、図3のエンジンのマニホールド内の昇圧圧力を調整する構造の本発明による実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜図5を参照すると、原動機付き車両のディーゼル式内燃エンジン10には冷気が入口20を通って供給され、当該内燃エンジン10は、燃焼ガスを排気管30を介して排出する。
【0033】
エンジン10の冷気の供給を確実に行なう冷気吸入回路は実質的に、エアフィルタ80と、エアフローメータ70と、を備え、これらの部品は、ターボチャージャ40または2段式ターボチャージャ(低圧段ターボチャージャ41及び高圧段ターボチャージャ42)、及び適切な配管を介して、エンジン10の吸気マニホールド50に給気する。
【0034】
排気マニホールド60は、燃焼により発生する排気ガスを回収し、排気ガスを外部に、ターボチャージャ40または設けるとした場合のターボチャージャ41,42、及び微粒子フィルタ90を介して排出し、この微粒子フィルタ90は、パーティクルの量、特に大気中に放出される煤の量を低減するように設計される。
【0035】
ターボチャージャ40,41,または42に注目すると、各ターボチャージャは実質的に、排気ガスにより駆動されるタービン400,410,420と、タービンと同じ軸に取り付けられるコンプレッサ401,411,421と、を備え、かつ、エンジン10のシリンダ群に排気ガス再循環通路130を介して導入される空気の量を増やすために、エアフィルタ80から供給される空気を確実に圧縮する。
【0036】
この低圧型排気ガス再循環通路130では、当該回路は、給気回路の外部にある。当該排気ガス再循環通路は、微粒子フィルタ90の後段の排気回路と、コンプレッサ401の前段の、または設けるとした場合の低圧コンプレッサ411の前段の吸気回路とを、排気ガス再循環バルブ131により調整される寸法を有する通路部分を介して連通させることにより構成される。
【0037】
バルブ131の開度を中央ユニット120で制御することにより、排気ガスを吸気回路に再流入させることができる。
【0038】
一方、排気バルブ31は、排気ガス再循環バルブ131の後段の排気管に設置することにより、排気ガス再循環通路130の側端部における圧力の差を大きくする、従って再循環流量を多くすることができるので、含まれる窒素酸化物の量を低減することができる。
【0039】
更に、クーラ110をコンプレッサ401または設けるとした場合の低圧コンプレッサ411とバルブ131との間に設置して、コンプレッサ401,411の入口における温度を下げることができる。
【0040】
ターボチャージャ401,411は、排気ガスの動力を調整するユニットと連動しており、当該ユニットは、吸気マニホールド50内の圧力を、ほぼ昇圧設定圧力値P21consに調整するように設計される。
【0041】
この種の調整ユニットは、可変容量型の場合のブレード、または固定容量型の場合の排出バルブに対応させることができる。
【0042】
更に、ターボチャージャ40を1つだけ設ける場合、熱交換器100及び吸気シャッターをコンプレッサ42と吸気マニホールド50との間に設置して、コンプレッサ42の出口の空気を冷却することができる。多段式ターボチャージャ41,42の場合、低圧熱交換器101を低圧コンプレッサ411と高圧コンプレッサ421との間に配設することができ、高圧熱交換器102を高圧コンプレッサ421と吸気マニホールド50との間に配設することができる。
【0043】
本発明によれば、中央ユニット120は、圧力測定信号及び温度測定信号を適切なセンサを介して取得する。
【0044】
図1または図5に示すように、有利な点として、当該中央ユニット120は、吸気マニホールド50内の昇圧圧力P21mes及び温度T21mesを取得することができる。
【0045】
当該中央ユニット120はまた、タービンまたは設けるとした場合の低圧タービンの入口及び出口における圧力P3mes及びP4mes、コンプレッサまたは設けるとした場合の低圧コンプレッサの入口及び出口における圧力P1mes及びP20mes、または排気バルブの前段における圧力P5mes及び後段におけるP6mesを受信することができる。
【0046】
当該中央ユニット120はまた、例えばコンプレッサまたは設けるとした場合の低圧コンプレッサの出口における温度T20mes、タービンまたは設けるとした場合の低圧タービンの入口における温度T3mes、及び出口における温度T4mes、及びエアフィルタの出口における温度T10mes、及び排気バルブの前段における温度T5mesを取得することができる。
【0047】
更に、中央ユニット120は、昇圧設定圧力値P21consを決定する手段121と、コンプレッサの入口におけるガスの温度Tecomp,estを計算する手段122と、を備える。ターボチャージャが1つだけの場合、中央ユニット120の手段121によって、ブレードの事前位置決め値Posturbを決定することもできる。
【0048】
測定値だけでなく設定値も、中央ユニット120に収容される制御構造123の入力に供給される。
【0049】
この構造123は、1つのレギュレータを含む、または複数のレギュレータを直列に含む。
【0050】
1つの変形実施形態では、単一のレギュレータによって吸気マニホールド50内の昇圧圧力を昇圧設定圧力値P21consに調整することができる。
【0051】
更に具体的には、この調整構造123は、コンプレッサの入口におけるガスの温度の値Tecomp,estによって変わり、この値は、中央ユニット120において計算される。
【0052】
この構造123について、図4を参照しながら以下に説明する。
【0053】
本発明によれば、コンプレッサの入口におけるガスの温度Tecomp,estは、少なくとも次のステップにより計算される、すなわちコンプレッサの入口におけるガス流量Qecomp,estを計算し、排気ガス再循環システム130のクーラの出口における温度T6を求めることにより計算される。
【0054】
好適には、コンプレッサの入口におけるガス流量Qecomp,estを計算するステップは、エンジンの吸気口におけるガス流量Qmotに基づいて、昇圧通路へのガスの流入時間ttransに基づいて行なわれ、これらの2つの変数は、以下に説明する予備ステップ中にそれぞれ求められている。
【0055】
エンジンの吸気口におけるガス流量Qmotを求めるステップは、例えばセンサから供給される圧力及び温度に関するデータに関連した入力、及び、例えばエンジンの状態を表わす物理値に関連した1つ、または複数の他の入力を含む。
【0056】
以下の項目を入力として列挙することができる:
−昇圧圧力P21mes
−吸気マニホールド内の温度T21mes
−空気定数R;
−エンジン回転速度N;
−エンジン容量Vcyl
−エンジン音出力(volumetric output)η
【0057】
次に、エンジンの吸気口におけるガス流量Qmotを、次の関係式(1)により定義する:

【0058】
エンジン音出力ηの値は、吸入ガスの密度に依存するエンジン回転速度の関数として表わされ、かつ次の関係式(2)により表わされるように、空気定数R及び吸気マニホールド内の温度T21mesの積に対する昇圧圧力P21mesの比として定義される:

【0059】
エンジンがターボチャージャを1つだけ備える場合、昇圧通路へのガスの流入時間ttransを求めるステップは、次の関係式(3)を利用して行なわれる:


ここで、Vsuralはコンプレッサ401の出口とエンジン10の吸気口との間の昇圧通路の容積を定義する。
【0060】
これとは異なり、エンジンが2段式ターボチャージャ41,42を備える場合、昇圧通路へのガスの流入時間ttransを求めるステップは、次の関係式(3’)を利用して行なわれる:


ここで、Vsural,BPは、低圧コンプレッサ411の出口と高圧コンプレッサ421の入口との間の昇圧通路の容積を定義し、Vsural,HPは、高圧コンプレッサの出口とエンジン吸気口との間の昇圧通路の容積を定義し、P20は、高圧コンプレッサの入口における圧力を定義する。
【0061】
圧力P20は、次の回帰関係式により推定される:

20,k=RP20,k−1 (3’’)

ここで、Rは、動的推定器から供給される低圧圧縮比であり、kは、関係式の回帰インデックスである。
【0062】
次に、コンプレッサの、または配設する場合の低圧コンプレッサの入口におけるガス流量Qecomp,estを計算する次のステップは、エンジンの吸気口におけるガス流量Qmotを、昇圧通路へのガスの流入時間ttransによって表わされる微分補正項の値だけ小さくした値として表わされる。
【0063】
ターボチャージャが1つだけの場合、コンプレッサの入口におけるガス流量は従って、次式のように表わされる:

【0064】
多段式エンジンターボチャージャ(低圧段ターボチャージャ、高圧段ターボチャージャ)の場合、低圧コンプレッサ411の入口におけるガス流量は従って、次式のように表わされる:

【0065】
従って、エンジンが複数の多段式ターボチャージャを備える場合、低圧コンプレッサの入口におけるガス流量の推定値を取得するためには圧力P20を推定する必要があるが、この推定値は、コンプレッサが1つだけの場合は必要ではない。
【0066】
最終的に、低圧コンプレッサに流入するガス流量の値が、フローメータを用いることなく得られる。
【0067】
更に、次のステップでは、排気ガス再循環システム130のクーラの出口における温度T6を計算により求める(T6mes)ことができる、または適切な手段により測定する(T6est)ことができる。
【0068】
排気ガス再循環システム130のクーラの出口における温度T6estの計算は:
−排気バルブの前段の温度T5mes
−排気ガス再循環システムのクーラの冷却水の温度Teau,mes
−排気ガス再循環システムのクーラの冷却効率εegr_bp
に関連した入力を含む。
【0069】
クーラの出口における温度T6estは従って、次の関係式(5)に従って定義される:

T6est=T5−εegr_bp(T5−Teau,mes) (5)
【0070】
排気ガス再循環システムのクーラの冷却効率εegr_bpを定義する変数は、複数のパラメータに依存する関数であり、変数Qegrのみに依存することが好都合な関数であり、変数Qegrは、再循環通路を循環する流量であり、この流量は、次の関係式により定義される:

EGR=Qecomp,est−Qair,frais (5’)
【0071】
コンプレッサの入口におけるガス流量Qecomp,est、及び排気ガス再循環システム130のクーラの出口における温度T6を求めた後、次のステップで計算により、これらから以下の関係式(6)で表わされるコンプレッサの入口におけるガスの温度Tecomp,estが導き出される:

【0072】
この温度Tecomp,estも:
−空気の比熱Cpair;
−排気ガスの比熱Cpench;
−推定冷気流量Qair
−エアフィルタの出口における温度T10mes
に関連した入力によって定義される。
【0073】
入口における空気の比熱Cpairは好ましくは、排気ガス再循環システム130のエアフィルタの出口における温度T10mesに基づいて求められることに留意されたい。
【0074】
一方、排気ガスの比熱Cpenchは好ましくは、排気バルブの前段の温度T5mes、及び、燃料の質量流量と空気の質量流量との比と14.8の値を持つ化学量論係数Ksとの積として以下の関係式(7)により定義される変数Ri_echに基づいて求められ:

【0075】
このステップでは、コンプレッサの入口におけるガスの温度値Tecomp,estがこのようにして、温度センサを冷気回路内に設置することなく得られる。
【0076】
従って、この温度値Tecomp,estはエンジンの特性、及び次の値:すなわち、
−エアフィルタの出口における温度T10mes
−測定冷気流量Qair,mes;
−吸気マニホールドの温度T21mes
−昇圧圧力P21mes
−選択された実施形態に従って測定されるクーラの出口における温度T6mesまたは計算されるクーラの出口における温度T6est
を表わす値の測定値または推定値から直接計算される。
【0077】
従って、昇圧圧力を調整するエンジン制御システムは、コンプレッサ、または設けるとした場合の低圧コンプレッサの入口におけるガスの温度Tecomp,estに関連したデータの堅牢性を保持する。
【0078】
実際、コンプレッサ、または設けるとした場合の低圧コンプレッサの入口におけるガスの温度Tecomp,estの計算により、ガス再循環通路の出口における温度、及びエアフィルタ出口の冷気の温度から成るコンプレッサの上流の混合気温度の均一性の低下に関連する測定誤差を無くすことができる。
【0079】
前述のレギュレータを備える中央ユニット120では、昇圧圧力レギュレータ(boost pressure regulator)は、入力として、コンプレッサの入口におけるガスの計算温度Tecomp,estに依存する昇圧設定圧力値P21consと、中央ユニット120によって取得される昇圧圧力の測定値P21mesとの差を受信する。
【0080】
補正によって、昇圧設定圧力値P21consが小さくなってターボチャージャの回転速度を抑制することができるので、速度過剰および高温からターボチャージャを保護することができる。
【0081】
可変容量型ターボチャージャを1つだけ設ける場合、レギュレータの出力をブレードの事前位置決め値Posturbの計算結果に加算して、ブレードの位置設定値を取得する。コンプレッサの入口におけるガスの温度の計算において取得される結果Tecomp,estは、ブレードのこの事前位置決め値Posturbの計算における入力変数としても使用される。事前位置決め値はこのようにして、コンプレッサに流入する冷気の温度に応じて補正される。このようにして、ブレードの位置設定値によって、中央ユニット120の出力から制御信号を供給することが可能になり、この制御信号で、排気ガスの動力を調整するユニットを、更に詳細にはブレードを制御して、吸気マニホールド50内の圧力を、ほぼ昇圧設定圧力値P21consに制御し、当該制御信号がエンジン排気ガスの圧力に作用するようにする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のターボチャージャ(40)により過給される、または低圧段ターボチャージャ(41)及び高圧段ターボチャージャ(42)により構成されるアセンブリにより過給されるエンジン(10)を制御する方法であって:
・ガスの温度Tecomp,estを、前記ターボチャージャ(40)のコンプレッサ(401)の入口において、または前記低圧段ターボチャージャ(41)のコンプレッサ(411)の入口において計算し;次に、
・昇圧設定圧力値P21consを、前記設定圧力値が、前記ターボチャージャ(40)の前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧段ターボチャージャ(41)の前記コンプレッサの前記入口におけるガスの前記計算温度Tecomp,estに特に依存した状態で決定して、前記エンジン(10)の吸気マニホールド(50)内の昇圧圧力の調整を行なうことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧コンプレッサの前記入口におけるガスの前記温度Tecomp,estは次の関係式に従って計算され:


ここで:
−Qecomp,estはコンプレッサの入口におけるガス流量を定義し;
−Cpairは空気の比熱を定義し;
−Cpechは排気ガスの比熱を定義し;
−Qairは冷気流量を定義し;
−T10mesは、エアフィルタの出口における温度を定義し;
−T6は、排気ガス再循環システムのクーラの出口における温度を定義していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記コンプレッサ(401)または前記低圧コンプレッサ(411)の前記入口における前記ガス流量Qecomp,estを計算するサブステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンプレッサの前記入口における前記ガス流量Qecomp,estの計算値は、前記エンジンの吸気口におけるガス流量Qmot、及び前記エンジン(10)の昇圧通路への流入時間ttransに依存することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エンジンがターボチャージャ(40)を1つだけ備える場合に、前記コンプレッサ(401)の前記入口における前記ガス流量は、次の関係式により計算され:


ここで、


及び、


の関係が成り立ち、更に、上式では、
−P21mesは昇圧圧力であり;
−T21mesは吸気マニホールド内の温度であり;
−Rは空気定数であり;
−Nはエンジン回転速度であり;
−Vcylはエンジン容量であり;
−ηはエンジン音出力であり;
−Vsuralは、コンプレッサ(401)の出口とエンジン(10)の吸気口との間の昇圧通路の容積であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジンが低圧段ターボチャージャ(41)及び高圧段ターボチャージャ(42)により構成されるアセンブリを備える場合に、前記低圧段ターボチャージャのコンプレッサ(411)の入口におけるガス流量が次の関係式により計算され:


ここで、


及び


の関係が成り立ち、更に、上式では、
−P21mesは昇圧圧力であり;
−T21mesは吸気マニホールド内の温度であり;
−Rは空気定数であり;
−Nはエンジン回転速度であり;
−Vcylはエンジン容量であり;
−ηはエンジン音出力であり;
−Vsural,BPは、低圧コンプレッサ(411)の出口と高圧コンプレッサ(421)の入口との間の昇圧通路の容積を定義し;
−Vsural,HPは、高圧コンプレッサ(421)の出口とエンジン吸気口(10)との間の昇圧通路の容積を定義し;
−P20は、高圧コンプレッサ(421)の入口における圧力であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記高圧コンプレッサ(421)の前記入口における前記圧力P20は、次の回帰関係式により推定され:

20,k=RP20,k−120,1

ここで、kは回帰インデックスであり、P1は、高圧コンプレッサの入口における圧力の第1推定値であり、Rは、動的推定器から供給される低圧圧縮比であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記排気ガス再循環システム(130)の前記クーラの前記出口における温度T6を計算するサブステップを含むことを特徴とする、請求項2乃至7の一項に記載の方法。
【請求項9】
前記排気ガス再循環システム(130)の前記クーラの前記出口における温度T6の計算値は次の関係式により定義され:

T6=T5−εegr_bp(T5−Teau,mes

ここで:
−T5は、排気バルブの前段の温度を定義し;
−Teau,mesは、排気ガス再循環システムのクーラの冷却水の温度を定義し;
−εegr_bpは、排気ガス再循環システムのクーラの冷却効率を定義していることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記排気ガスの動力を調整するユニットの事前位置決め変数Posturbは、前記変数の値が特に、前記コンプレッサの前記入口におけるガスの計算温度Tecomp,estに依存した状態で決定されることを特徴とする、請求項1乃至9の一項に記載の方法。
【請求項11】
制御信号を供給して、前記排気ガスの動力を調整する前記ユニットを、前記信号の値が前記事前位置決め変数Posturbに依存した状態で制御することを特徴とする、請求項1乃至10の一項に記載の方法。
【請求項12】
単一のターボチャージャ(40)により過給される、または低圧段ターボチャージャ(41)及び高圧段ターボチャージャ(42)により構成されるアセンブリにより過給されるエンジン(10)を制御して、請求項1乃至11の一項に記載の方法を実行する装置であって、前記装置は、前記ターボチャージャ(40)の前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧段ターボチャージャ(41)の前記コンプレッサの前記入口における温度Tecomp,estの計算に適する計算手段と、前記ターボチャージャ(40)の前記コンプレッサの前記入口における、または前記低圧段ターボチャージャ(41)の前記コンプレッサの前記入口におけるガスの前記計算温度Tecomp,estに依存する昇圧設定圧力値P21consを決定して、前記エンジン(10)の吸気マニホールド(50)内の昇圧圧力の調整を行なう手段と、を備えることを特徴とする、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−518990(P2011−518990A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506750(P2011−506750)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050744
【国際公開番号】WO2009/138658
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】