説明

エンジン制御装置

【課題】より適切にクラッチスイッチのオン固着を検出することができるエンジン制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明によるエンジン制御装置1は、車両のエンジンが始動されたか否かを判定する始動判定手段2aと、始動判定手段2aによりエンジンが始動されたと判定され、かつ、車両のクラッチペダルに設けられたクラッチスイッチ3がオンである場合に、クラッチスイッチ3のオン固着の発生を検出するオン固着検出手段2bを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適宜のタイミングと期間においてアイドルストップを実行することができる車両のエンジンを制御対象とするエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交差点等における車両の一時的な停止に伴って、エンジンを制御するエンジン制御装置においては、車両のエンジンを一時的に停止するアイドルストップを実行して、二酸化炭素等を含む排気ガスの排出量を低減し、車両の燃費性能を高め、車両騒音を低減することが行われている。
【0003】
この場合において、例えば特許文献1に記載されているように、マニュアルトランスミッション車つまりMT車においては、車両が停車状態で、変速機のシフト位置情報がニュートラル位置であり、クラッチペダルが踏み込まれていないことを条件として、エンジンを停止することが行われる。
【0004】
この場合において、クラッチペダルが踏み込まれていないことを検出するにあたってはクラッチスイッチが用いられる。このクラッチスイッチが故障を発生している場合において、エンジンが誤って停止されることを防止するために、上記特許文献1においては、二個のクラッチスイッチその出力の関係が相違する場合に故障であると判定し、自動的にエンジンを停止することを禁止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術においても、クラッチスイッチの故障を検出することはできるが、クラッチスイッチを二個用いることが必須となり装置としての構成の複雑化を招く。これとともに、二個のクラッチスイッチの出力の比較に基づいてオン固着を検出することとなるため、双方のクラッチスイッチがオン固着した場合には、このオン固着を適切に検出することはできない。
【0007】
従って、クラッチスイッチのオン固着によるシステム異常をいち早くユーザに報知して、速やかに修繕を行ってシステムを復帰させることができず、従来技術においてはより適切にオン固着を検出するロジックを提供できていないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、より適切にクラッチスイッチのオン固着を検出することができるエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するため、本発明によるエンジン制御装置は、
車両のエンジンが始動されたか否かを判定する始動判定手段と、前記始動判定手段により前記エンジンが始動されたと判定され、かつ、車両のクラッチペダルに設けられたクラッチスイッチがオンである場合に、前記クラッチスイッチのオン固着の発生を検出するオン固着検出手段を含むことを特徴とする。
【0010】
前記エンジン制御装置によれば、前記エンジンが始動されたタイミングにおいては、通常前記クラッチスイッチはオフであって、このタイミングで前記クラッチスイッチがオンである場合には前記クラッチスイッチにオン固着が発生しているとみなせることを利用して、前記オン固着検出手段が前記クラッチスイッチにおける前記オン固着の発生を検出することができる。
【0011】
これにより、従来技術のように前記クラッチスイッチを二個設けることをなくして、装置としての構造の複雑化を招くことを防止することができる。また、逆に前記クラッチスイッチをアッパ側とロア側に二個設けた場合に、双方ともにオン故障している場合でもこれらのオン故障を正確に検出することができる。
【0012】
ここで前記エンジン制御装置において、
前記始動判定手段が、前記車両のキースイッチが始動位置とされたこと又は前記車両のスタートスイッチがオンとされたことに基づいて、前記エンジンが始動されたか否かを判定することが好ましい。
【0013】
前記エンジン制御装置によれば、比較的取得が容易なパラメータに基づいて、前記エンジンが始動されたか否かを判定することができる。
【0014】
さらに前記エンジン制御装置において、
前記始動判定手段が、前記車両のスタータが駆動されたことに基づいて、前記エンジンが始動されたか否かを判定することが好ましい。
【0015】
前記エンジン制御装置によれば、これも比較的取得が容易なパラメータに基づいて、前記エンジンが実際に始動されたか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より適切にクラッチスイッチのオン固着を検出することができるエンジン制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るエンジン制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るエンジン制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明に係るエンジン制御装置の一実施形態を示すブロック図である。図2は、本発明に係るエンジン制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、エンジン制御装置1は、エンジンECU2(Electronic Control Unit)と、クラッチアッパスイッチ3と、ブレーキストロークセンサ4と、シフト信号センサ5と、キースイッチ6と、警告ランプ7を備えて構成される。エンジンECU2と、それ以外の車載されたECUとは、CAN(Controller Area Network)等の通信規格により相互に接続されている。
【0021】
エンジンECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う始動判定手段2a、オン固着検出手段2b、停止手段2c、再始動手段2dとして機能するものである。
【0022】
エンジンECU2は、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しないエンジンのスロットルバルブ開度、燃料噴射量、空燃比、バルブ開閉タイミング等を制御して主にエンジンの回転数を制御する。
【0023】
クラッチアッパスイッチ3は、図示しないクラッチペダルの運転者側つまりアッパ側に設けられる所謂リミットスイッチであって、クラッチペダルが運転者により踏み込まれておらず、アッパ側一杯に揺動している状況で、クラッチペダルの一部にクラッチアッパスイッチ3が含む可動子が接触され、可動子が押し込まれてオンの状態が選択されるものであって、オンオフいずれかの検出結果をエンジンECU2に出力するものである。
【0024】
ブレーキストロークセンサ4は、図示しないブレーキペダルのストロークを検出して、検出結果をエンジンECU2に出力するものである。シフト信号センサ5は、図示しない変速機ECU内部に備えられて、変速機ECUにより制御される変速機のシフト信号を検出して、検出結果をエンジンECU2に出力するものである。
【0025】
キースイッチ6は所謂イグニッションキースイッチであり、例えば、運転席右側に設けられて、運転者によりスタート、オン(アクセサリ)、オフのいずれかの位置を選択可能なものとし、スタートが選択された場合には、図示しない周知のリレーシーケンスに基づいて図示しないスタータに対して始動信号を出力して始動させ、スタータの始動に伴って図示しないエンジンがクランキングされる。なお、始動信号及びスタータ電流はエンジンECU2にこれも図示しない周知のシーケンスにより入力される。
【0026】
警告ランプ7は、例えば運転席左側に設けられて、エンジンECU2の指令に基づいて点滅灯が選択されるランプである。
【0027】
エンジンECU2の始動判定手段2aは、この始動信号に基づいて、キースイッチ6がスタートの位置に回されて、スタータが始動されたか否かを判定し、スタータ電流に基づいて、スタータ自体が駆動されたか否かを判定する。
【0028】
始動判定手段2aによるこれらの判定の双方が肯定である場合に、エンジンECU2のオン固着検出手段2bは、クラッチアッパスイッチ3の出力がオンであるか否かを判定し、肯定である場合には、本来オフであるべきタイミングでオンであるのでオン固着が発生しているとみなせるので、クラッチアッパスイッチ3のオン固着を検出し、警告ランプ7を点灯する。
【0029】
これとともに、エンジンECU2の停止手段2cは、シフト信号センサ5からのシフト信号と、クラッチアッパスイッチ3の出力信号と、CAN上において例えば図示しないブレーキECUから送信される車速信号に基づいて、シフト信号がニュートラル位置Nで、クラッチアッパスイッチ3の出力信号がオンで、車速信号から車両が停止している状態である場合に、停止指令を出力する。エンジンECU2は、停止手段2cの停止指令に基づいてエンジンを停止する。
【0030】
同様に、エンジンECU2の再始動手段2dは、クラッチアッパスイッチ3の出力信号がオフとなることに基づいて、再始動指令を出力し、エンジンECU2は始動指令に基づいて、図示しないエンジンを図示しないスタータ(ハイブリッド車であればモータジェネレータ)の駆動に基づいて、再始動するものである。なお、始動又は再始動にあたりバッテリの容量が不足する場合には、BBCすなわちバックアップブーストコンバータ等の適宜の手段により昇圧を行ってもよい。
【0031】
以下に以上述べた本実施例1のエンジン制御装置1の本発明に係る制御内容を、フローチャートを用いて説明する。
【0032】
図2のステップS1において、エンジンECU2はキースイッチ6の出力信号と、スタータ電流信号と、クラッチアッパスイッチ3の出力信号を検出し、ステップS2において、エンジンECU2の始動判定手段2aは、キースイッチ6の出力信号に基づいて、キースイッチ6によりスタート位置が選択されてエンジンが始動されたか否かを判定し、肯定であればステップS3にすすみ、否定であればステップS1の手前に戻る。
【0033】
ステップS3において、エンジンECU2の始動判定手段2aは、スタータの電流信号に基づいて、実際にスタータが駆動されたか否かを判定し、肯定であればステップS4にすすみ、否定であればステップS1の手前に戻る。
【0034】
ステップS4において、エンジンECU2のオン固着検出手段2bは、クラッチアッパスイッチ3の出力信号に基づいて、出力信号がオンであるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS5にすすみ、否定である場合には、ENDにすすむ。
【0035】
ステップS5において、エンジンECU2のオン固着検出手段2bは、クラッチアッパスイッチ3にオン固着が発生していることを検出して、警告ランプ7に対して点灯指令を出力して警告ランプ7を点灯し、運転者に対して警告を行う。
【0036】
これらの制御内容により実現される本実施例1のエンジン制御装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例のエンジン制御装置1によれば、キースイッチ6が操作されてエンジンが始動されたタイミングにおいて、通常であってオン固着が発生していない状況においては、クラッチアッパスイッチ3はオフであることを利用して、クラッチアッパスイッチ3単体の出力がオンであるか否かにより、オン固着の発生を検出することができる。
【0037】
すなわち、本実施例においては、エンジンが始動されたタイミングでクラッチアッパスイッチ3がオンである場合には、クラッチアッパスイッチ3にオン固着が発生している場合であるので、エンジンECU2のオン固着検出手段2bがクラッチアッパスイッチ3におけるオン固着の発生を検出している。
【0038】
これにより、例えば上述した特許文献1に記載の従来技術のように二のクラッチスイッチの検出信号に基づいて故障を検出する構成をなくすことができ、エンジン制御装置1としての配線上及びハード上の構造をより簡略化することができる。また、単一のクラッチアッパスイッチ3の出力に基づいて故障を検出することができるので、故障箇所の特定をより容易なものとすることができる。
【0039】
また、本実施例においては、エンジンECU2の始動判定手段2aが、車両のキースイッチ6がスタート位置とされたことに基づいて、エンジンが始動されたか否かを判定するので、従来から用いられている上述したリレーシーケンスにより取得が可能である始動信号に基づいて、エンジンが始動されたか否かを判定することができる。
【0040】
さらに本実施例においては、エンジンECU2の始動判定手段2aが、車両のスタータが駆動されたことに基づいて、エンジンが始動されたか否かを判定しているので、これも従来から用いられているスタータのシーケンスにより容易に取得できるパラメータに基づいて、エンジンが実際に始動されたか否かを判定することができる。
【0041】
また、本実施例においては、クラッチアッパスイッチ3のオン固着によるシステム異常を警告ランプ7の点灯によりいち早く運転者に報知して認知させて、例えばディーラーに立ち寄って速やかに修繕を行ってシステムを復帰させること促すことができる。これにより、アイドルストップを行わない期間をなるべく短くして、アイドルストップの本来の目的である、燃費性能の向上、排気ガスの削減、騒音の低減等をより実現しやすくすることができる。
【0042】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0043】
例えば、上述した実施例ではキースイッチ6を例示したがもちろん、スタートスイッチであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、より適切にクラッチスイッチのオン固着を検出することができるエンジン制御装置を提供するものであって、比較的取得の容易なパラメータと軽微な制御上の変更に基づいて、所望の効果を得ることができるので、乗用車、トラック、バス等の各車両に適用して特に有益なものである。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン制御装置
2 エンジンECU
2a 始動判定手段
2b オン固着検出手段
2c 停止手段
2d 再始動手段
3 クラッチアッパスイッチ
4 ブレーキストロークセンサ
5 シフト信号センサ
6 キースイッチ
7 警告ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンが始動されたか否かを判定する始動判定手段と、前記始動判定手段により前記エンジンが始動されたと判定され、かつ、車両のクラッチペダルに設けられたクラッチスイッチがオンである場合に、前記クラッチスイッチのオン固着の発生を検出するオン固着検出手段を含むことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記始動判定手段が、前記車両のキースイッチが始動位置とされたこと又は前記車両のスタートスイッチがオンとされたことに基づいて、前記エンジンが始動されたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記始動判定手段が、前記車両のスタータが駆動されたことに基づいて、前記エンジンが始動されたか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−106307(P2011−106307A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260292(P2009−260292)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】