説明

エンドレスベルト、エンドレスベルトの製造方法および画像形成装置

【課題】電気抵抗が高いことに起因する、エンドレスベルト表面の紙粉による汚染およびサンプルトナー画像形成時の水玉模様の発生を防止すると同時に、電気抵抗が低いことに起因する、転写材の吸着不良および小サイズの厚紙での画像不良の発生を抑制するエンドレスベルト、およびその製造方法の提供することにある。
【解決手段】エンドレスベルトの特定の部分に、特定の範囲の面積および特定の範囲の電気抵抗を有する低抵抗領域を設ける。特定の領域に低抵抗領域を有するエンドレスベルトは、熱可塑性樹脂と導電性フィラーを含有するフィルム状部材の所定の領域を、他の領域とは異なる温度で加熱処理することにより、または抵抗の異なる複数のフィルム状部材を加熱して一体化することによって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いられる転写搬送ベルト、中間転写ベルト等のエンドレスベルトおよびエンドレスベルトを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラー画像形成装置には、転写搬送ベルト(像担持体上のトナー像を、紙等の記録材に転写し、かつ該記録用紙を搬送するために用いるベルト)や、中間転写ベルト(感光体上に形成されたトナー画像を、中間転写ベルト上に転写して、その後中間転写ベルト上のトナー像を記録用紙に転写して画像を得るために用いるベルト)が用いられている。そして、これらのベルトを用いたフルカラー画像形成装置は、2つのタイプに大別される。
【0003】
一つは、図1や図2のように、画像形成に必要な数の感光体を配置し(図1、図2では4つの感光体を有している例である)、各々異なる色の現像剤(トナー)で現像した画像を、転写搬送ベルトまたは中間転写ベルトによって順次転写して行く、いわゆるタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
もう一つは、図3のように、一つの感光体と中間転写ベルトを用いるものであり、中間転写ベルトがこの場合は4回転した後に、転写用紙Pにトナー画像を一括して転写する、いわゆるマルチパス型のフルカラー画像形成装置である。
【0004】
このようなフルカラー画像形成装置において高品質画像を形成する上で重要な課題は、1)例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色成分画像を、転写材上に位置ズレ(以下、単に「色ずれ」という)させることなく形成すること、2)イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色の画像濃度が使用環境、耐久枚数に拠らず一定で、同一画像を出力した際の色再現性に優れること、である。
【0005】
このような課題に対して、フルカラー画像形成装置は、その色ずれの調整や色調を調整するため、色ずれやトナー濃度等を検知する光学センサを有し、そのセンサから得られた情報をもとに画像形成部における画像形成条件へフィードバックを行うことにより色ずれや色調を調整している。
【0006】
色ずれの調整方法の例としては、各画像形成部で形成された各色毎のサンプルトナー画像をエンドレスベルト上に転写し、あるカラーのトナー像を基準にして(例えば、イエローのサンプルトナー像の位置を基準にして)、他色のサンプルトナー像の位置ずれ量を光学センサ(レジスト検知センサ)で検出し、検出された色ずれ量に合わせてスキャナー内の折り返しミラーを位置調節し、感光ドラム上に書き込むレーザーの位置を調整させたり、各色毎の画像書き出しタイミングを変更させたりして各カラーのトナー像の色ずれを補正するようになっている。
【0007】
また、トナー濃度の調整方法の例としては、各画像形成部で形成された各色毎の濃度が違うサンプルトナー画像(ハーフトーン画像やベタ画像)をエンドレスベルト上に転写し、エンドレスベルト上のサンプルトナー像を光学センサ(濃度検知センサ)で読み取り、各色の現像バイアスや露光量を調整して濃度を調整している。
【0008】
レジスト検知センサや濃度検知センサとして使用される光学センサとしては、大別して乱反射方式と正反射方式があるが、エンドレスベルトの色(厳密にはセンサから発せられる光の吸収波長)に拠らず各色のサンプルトナー画像を検知できることから、図4に示されるような正反射方式の濃度センサが一般的に使用される。
【0009】
このように、高品位なフルカラー画像の条件である色ずれと色調の変化を抑制するために、画像形成装置側で上記のような制御を行ってはいるものの、エンドレスベルト上のサンプルトナー画像を光学センサで検出していることから、サンプルトナー像の形成状態は勿論のこと、サンプルトナー画像が転写されるエンドレスベルトの表面状態、具体的にはエンドレスベルト表面の光(赤外光の場合が多い)の反射率(グロス)が、上記の各制御へ与える影響は非常に大きい。すなわち、エンドレスベルト表面に均一なサンプルトナー画像を形成することができると同時に、エンドレスベルト表面のグロスが高く、耐久による変化が小さいエンドレスベルトが信頼性の高い色ずれ制御や濃度制御を行う上で必要である。エンドレスベルト表面のグロスが低下すると、サンプルトナー画像とエンドレスベルト表面とのグロスの差が小さくなり、正確な色ずれ、色調の調整が出来なくなってしまう。
【0010】
ここで、エンドレスベルト表面のグロスが低下する大きな要因として、エンドレスベルト表面への紙粉の付着がある。エンドレスベルト表面への紙粉が付着する原因はさまざまなものが考えられるが、エンドレスベルト表面の電気特性も大きな原因の一つである。エンドレスベルト表面の電気抵抗が高いと、静電気により紙粉が付着してしまい、大量に通紙していくうちにエンドレスベルト表面に紙粉が蓄積し、エンドレスベルト表面のグロスが低下してしまう。
【0011】
すなわち、エンドレスベルト表面への紙粉の付着を防止する手段のひとつとして、エンドレスベルトの電気抵抗を低くする手段が挙げられる。しかし、低抵抗エンドレスベルトを画像形成装置における転写搬送ベルトとして使用した場合、転写搬送ベルトへの転写材の吸着が不十分となり、極端な色ずれが発生する場合がある。また、低抵抗なエンドレスベルトを画像形成装置における中間転写ベルトとして使用した場合には、葉書や封筒などの小サイズの厚紙に二次転写(中間転写ベルトから転写材への転写)する際、転写電流の殆どが転写材以外の部分に流れ込むことから、極端な転写不良が発生する場合があった。
【0012】
一方、近年のフルカラー画像形成装置では、プリント速度の向上がめざましく、高速化に有利なタンデム型エンジンを採用する装置が増加している。その中でも、図1のように転写搬送ベルトを用い、感光体を含む画像形成ユニットを、垂直あるいは斜めに並べて配置し、記録用紙を下方から上方に搬送する画像形成装置が、既に市販されており、装置本体の設置スペースを小さくできることから注目されている。この「省スペース」という特性を、更に際立たせるためには、従来の画像形成装置で用いられていた吸着ローラ8(通常は、転写搬送ベルト61を挟む形で張架ローラに対向する位置に設けられるローラで、このローラと転写搬送ベルトとの間に記録用紙を挟み込み、バイアスを印加して転写材を搬送ベルトに吸着させるようになっているものが多い。図1にはこのタイプが示されている)を省略して、更なる省スペース化と低コスト化を達成することが考えられる。
【0013】
これを実現するためには、従来以上に、転写搬送ベルトの吸着力が必要となる。特に、高温かつ高湿環境で水分を含んだ記録用紙を転写搬送ベルトに吸着させるためには、非常に高い吸着力が必要になる。吸着力の向上は、転写搬送ベルトの抵抗値を高くすれば容易に実現できる。ところが、ベルトの抵抗を高くすると、繰り返し画像出力時における、色調や色ずれの調整の安定性が失われるという問題がある。電気抵抗の高いエンドレスベルトを使用した場合に色調や色ずれの調整の安定性が失われる理由は、以下のように考えられる。
【0014】
図1のようなフルカラー画像形成装置においては先述の通り、色ずれの調整や色調を調整するために、画像形成に先立って、転写搬送ベルト上に、例えば図5(イ)に示されるようなサンプルトナー画像を形成し、このサンプルトナー画像を光学センサを用いて読み取り、そのセンサから得られた情報をもとに画像形成部における画像形成条件へフィードバックを行うことにより色ずれや色調を調整している。
【0015】
しかし転写搬送ベルトの電気抵抗が高い場合、転写搬送ベルト上へサンプルトナー画像を転写して形成する際、感光体と転写搬送ベルトとの間に異常放電が生じ、均一であったはずのサンプルトナー画像に、図5(ロ)の31に示されるような水玉状の模様(以後、水玉模様と称する)が現れてしまう。水玉模様が発生すると、サンプルトナー画像の濃度や形状(サンプルトナー画像のエッジ部で水玉模様が発生した場合)が変化し、正確なトナー量情報や位置情報が検知できなくなる。さらに、転写搬送ベルトの電気抵抗が高い場合には別の問題点として、ベルトに流れ込んだ電荷が除電されにくくなり、ベルト上の電位が非常に高くなる。すると、ベルト表面に紙粉が付着し、エンドレスベルト表面の反射率(グロス)が低下する。エンドレスベルト表面のグロスが低下することにより、正確なサンプルトナー画像情報を読み取ることができなくなり、適正なフィードバック量とは異なる制御量を与えてしまい、正確な色調の調整や色ずれの調整が困難となる。
【0016】
つまり高い吸着力を得る為には、電気抵抗は高い必要があり、水玉模様の発生と紙粉の付着を抑制するためには電気抵抗は低い必要があり、これまでのエンドレスベルトでは両者を十分には満足できていなかった。
【0017】
このような要求特性に対して、例えばベルト表面の帯電特性と被記録媒体の帯電特性が逆極性になるように調節することにより、安定した記録媒体の吸着効果が得られるという提案がなされている(特許文献1参照)。
【0018】
しかし、このベルト部材を図1の画像形成装置から吸着ローラ25を取り除いた画像形成装置の転写搬送ベルトとして使用した場合、特に高温高湿環境において転写材の転写搬送ベルトへの吸着と繰り返し画像出力時の画像の安定性を両立することは出来なかった。また、被記録媒体とベルト表面が逆極性になっていることから、ベルト表面への紙粉の付着が著しく、通紙枚数が進むにつれてエンドレスベルト表面のグロスの低下が大きく、正確な色調や色ずれの補正が不可能であった。
【0019】
一方、エンドレスベルトへの転写材の吸着と繰り返し画像出力時の画像の安定性を両立させるためには、後述のように相対的に電気抵抗が低い領域を有するエンドレスベルトを用いることにより達成できる。これに関連して、高抵抗領域と低抵抗領域を有するエンドレスベルトが提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載のベルトは、ベルト両端部の電気抵抗が中央部の電気抵抗よりも2桁以上高く、この高抵抗領域がベルト端部から10〜50mmの領域の画像形成装置における非画像領域であることにより、画像の均一性と、エンドレスベルトと感光体との間でのリークの防止とを達成している。しかしながら、特許文献2に記載のエンドレスベルトは、低抵抗領域が高抵抗領域よりも大きな面積を占めており、このベルト部材を図1の画像形成装置のように、転写媒体を斜め上方あるいは垂直上方に搬送する画像形成装置の、特に吸着ローラ25を取り除いた画像形成装置の転写搬送ベルトとして使用した場合、高温高湿環境において転写媒体の転写搬送ベルトへの吸着と繰り返し画像出力時の画像の安定性を両立することは困難であった。
【0020】
【特許文献1】特開2000-344376号公報
【特許文献2】特開2001-066906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って本発明の目的は、電気抵抗が高いことに起因する(1)エンドレスベルト表面の紙粉による汚染および(2)サンプルトナー画像形成時の水玉模様の発生を防止すると同時に、電気抵抗が低いことに起因する(3)転写材の吸着不良および(4)小サイズの厚紙での画像不良が発生しないエンドレスベルト、エンドレスベルトの製造方法および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
すなわち本発明は、画像形成装置に用いられるエンドレスベルトであって、該エンドレスベルトが部分的に低い電気抵抗領域を有し、該低抵抗領域の大きさが10mm四方以上でかつエンドレスベルト面積の30%以下であり、該低抵抗領域の電気抵抗Rlが5×10Ω以上1×10Ω以下であり、該低抵抗領域がエンドレスベルト両端部からエンドレスベルト軸方向長さの10%の領域を除く部分に有する、ことを特徴とするエンドレスベルトである。
【0023】
また、本発明は、電気抵抗が部分的に低い領域を有するエンドレスベルトの製造方法であって、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含有するフィルム状部材を加熱処理することを含み、該加熱処理が、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向において加熱処理温度を変えることによって行われることを特徴とするエンドレスベルトの製造方法である。
【0024】
さらに、本発明は、電気抵抗が部分的に低い領域を有するエンドレスベルトの製造方法であって、膨張可能な円筒状内型と該円筒状内型よりも膨張量が小さい円筒状外型との間に、熱可塑性樹脂を主成分とする複数の電気抵抗の異なるフィルム状部材を、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向において電気抵抗が異なるように配置し、該複数のフィルム状部材を加熱処理することにより一体化する、ことを特徴とするエンドレスベルトの製造方法である。
【0025】
またさらに、本発明は、電気抵抗が部分的に低い領域を有するエンドレスベルトの製造方法であって、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含有するエンドレスベルトの表面の一部分にコロナ放電処理、プラズマ処理および電子線照射処理の何れかの表面処理を行うことを特徴とするエンドレスベルトの製造方法である。
【0026】
また、本発明は、エンドレスベルトを有する画像形成装置であって、エンドレスベルト上に形成される画像制御パターンを検知する光学センサを有し、該エンドレスベルトにおける画像制御パターンが形成される部分の電気抵抗が、他の部分の電気抵抗よりも低いことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のエンドレスベルトによれば、電気抵抗が高いことに起因する、エンドレスベルト表面の紙粉による汚染およびサンプルトナー画像形成時の水玉模様の発生を防止することができると同時に、電気抵抗が低いことに起因する、転写材の吸着不良および小サイズの厚紙での画像不良の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明者等は、前記問題点を解決すべく検討した結果、エンドレスベルトに、相対的に電気抵抗の低い低電気抵抗領域を設け、該低電気抵抗領域の幅を特定の範囲にすることにより前記問題を解決できることを見出した。
【0029】
すなわち本発明のエンドレスベルトは、画像形成装置に用いられるエンドレスベルトであり、該エンドレスベルトが部分的に低い電気抵抗領域を有し、該低抵抗領域の大きさが10mm四方以上でかつエンドレスベルト面積の30%以下であり、該低抵抗領域の電気抵抗Rlが5×10Ω以上1×10Ω以下であり、該低抵抗領域がエンドレスベルト両端部からエンドレスベルト軸方向長さの10%の領域を除く部分に存在するエンドレスベルトである。
【0030】
上記のようにエンドレスベルトにおける低抵抗領域は、少なくとも10mm四方の大きさを有する必要がある。低抵抗領域が10mm四方未満では、画像形成装置に搭載して使用した際、安定した色ずれ、色調の調整が困難となる。つまり、画像形成装置のレジスト検知センサや濃度検知センサなどの光学センサは、直径数mmのスポット径でサンプルトナー画像を検知しており、低抵抗領域が10mm四方未満では良好なサンプルトナー画像形成とその検知が困難となる。
【0031】
一方、低抵抗領域の大きさは、エンドレスベルト面積に対して30%以下である必要がある。低抵抗領域の大きさがエンドレスベルトの面積の30%を超える場合には、転写搬送ベルトの場合において転写材の吸着力が不十分となり、中間転写ベルトの場合において小サイズの厚紙への転写時の画像不良や、転写バイアスの画像形成部間干渉による画像不良が発生する。
【0032】
本発明においてエンドレスベルト面積とは、エンドレスベルトの内周長とエンドレスベルトの幅の積を指す。
【0033】
また、低抵抗領域の電気抵抗は5×10Ω以上1×10Ω以下である必要がある。低抵抗領域の電気抵抗が5×10Ω未満の場合には、転写材の吸着不良、低抵抗領域に相当する部分での画像ムラの発生や、小サイズの厚紙での画像不良などの不具合が発生する。一方、低抵抗領域の電気抵抗が1×10Ωを超える場合には、エンドレスベルト表面の紙粉による汚染やサンプルトナー画像形成時の水玉模様の発生といった不具合が発生する。
【0034】
また、低抵抗領域はエンドレスベルト両端部からエンドレスベルト軸方向長さの10%の領域を除く部分に存在する必要がある(以下、エンドレスベルト両端部からエンドレスベルト軸方向長さの10%の領域を、端部領域と呼ぶ)。すなわち図9に示すように、エンドレスベルト端部から低抵抗領域までの距離であるA及びBがエンドレスベルト軸方向長さの10%以上である必要があり、低抵抗領域の一部でもこの端部領域に存在してはならない。低抵抗領域がエンドレスベルトの端部領域に存在する場合は、良好なサンプルトナー画像形成とその検知が困難となる。
【0035】
本発明において、エンドレスベルト電気抵抗の低抵抗領域とは、以下の方法で測定したエンドレスベルトの電気抵抗の高抵抗領域Rhと比較して、3/4以下の電気抵抗を有する部分のことを指す。
【0036】
<エンドレスベルトの電気抵抗測定方法>
(1)エンドレスベルト6を図6に示すように、幅約10mmに切断する。
すなわち、エンドレスベルトの内周長を10で除した値の小数点部分を切り捨てた数に、エンドレスベルト6を均等に切断する(例えば、内周長399mmのエンドレスベルトの場合399/10=39.9であるので、エンドレスベルトを39分割し、エンドレスベルト片の幅を10.23mmとする)。
【0037】
(2)切断したエンドレスベルト片64を図7に示す抵抗測定装置により電気抵抗を測定する。図7において、給電駆動ローラ24はJIS A硬度60度、直径30mm、幅9.5mmのゴムローラである。また、給電駆動ローラ24の電気抵抗は測定するエンドレスベルト片64に対して十分に低い(2桁以上低い)ものを使用する。電極ローラ23はアルミニウム製、直径30mmであり、給電駆動ローラ24と電極ローラ23は3Nの力で当接されている。給電駆動ローラ24は、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向にエンドレスベルト片64を10mm/sec.の一定速度で駆動し、給電駆動ローラ24には高圧電源HV(TReK社製MODEL610C)から、接地された電極ローラ23との間に+5μAの定電流が流れるように電圧を印加する。印加された電圧を高圧電源HV(TReK社製MODEL610C)の電圧出力モニター端子から出力された信号をレコーダーRec(横河電機社製オシログラフィックレコーダーORM1200)に記録する。ここでレコーダーRecのサンプリングレートを100Hzとして、エンドレスベルト片64の長さ分(エンドレスベルトの幅に相当する)のデータを記録する。100Hzで記録された印加電圧データと測定電流5μAから計算することにより、エンドレスベルト片64の0.1mmピッチ(10mm/sec.の移動速度で100Hzのサンプリングレートで測定している)の電気抵抗Rを求め、エンドレスベルト片64の電気抵抗分布を測定する。
【0038】
(3)その後、0.1mmピッチの電気抵抗Rに関して、図8に示すように1データ毎にずらして50データ(エンドレスベルトの幅方向5mmに相当するデータ)の移動平均(相加平均)をエンドレスベルト1本分全てのエンドレスベルト片で取り、その移動平均データの最大値をRhとする。
【0039】
(4)図9に示すように、移動平均データの最大値Rhに対して3/4以下の電気抵抗Rを有する部分をエンドレスベルト片における低抵抗領域とし、このデータ数から低抵抗領域幅を求める。
すなわち、低抵抗領域幅(mm)=データ数×0.1(mm)である。
【0040】
(5)エンドレスベルト1本分の全エンドレスベルト片の電気抵抗Rの相加平均値をエンドレスベルトの電気抵抗Raveとし、全エンドレスベルト片における低抵抗領域の電気抵抗Rの相加平均値を低抵抗領域の電気抵抗Rlとする。
【0041】
エンドレスベルトの電気抵抗測定に際し、電気抵抗測定サンプルおよび電気抵抗測定装置は23℃/55%RHの環境に24時間以上放置したものを使用し、電気抵抗測定環境も23℃/55%RHとする。
【0042】
本発明において低抵抗領域の大きさが10mm四方以上とは、上記の方法でエンドレスベルトの電気抵抗を測定した結果、1枚以上のエンドレスベルト片において連続した10mm幅以上の低抵抗領域が測定された場合を指し、複数のエンドレスベルト片で10mm幅未満の低抵抗領域が測定された場合は含まれない。
【0043】
また、本発明において低抵抗領域の大きさがエンドレスベルト面積の30%以下とは、以下のことを指す。
(イ)エンドレスベルト片における低抵抗領域幅とエンドレスベルト片の幅の積を、エンドレスベルト片の低抵抗領域面積とする。
(ロ)エンドレスベルト1本分に相当する全てのエンドレスベルト片に関して低抵抗領域面積を計算し、その和をエンドレスベルトの低抵抗領域面積とする。
(ハ)上記のようにして求めたエンドレスベルトの低抵抗領域面積が、エンドレスベルトの内周長とエンドレスベルトの幅の積であるエンドレスベルト面積の30%以下。
【0044】
例えば内周長400mm、幅250mmのエンドレスベルトの場合、エンドレスベルト面積は400mm×250mm=100000mm2である。また、全てのエンドレスベルト片40枚(周長400mm/10mm=40枚)で幅20mmの低抵抗領域が測定された場合、低抵抗領域の面積は(エンドレスベルト片幅10mm)×(エンドレスベルト片枚数40枚)×(低抵抗領域幅20mm)=8000mm2。このエンドレスベルトの低抵抗領域の大きさは、エンドレスベルト面積の(8000mm2/100000mm2)×100=8%である。
また、低抵抗領域はエンドレスベルト上の複数箇所に有していても構わないが、前述のとおり低抵抗領域面積の和はエンドレスベルト面積の30%以下である必要がある。
【0045】
ここで、前記低抵抗領域は、エンドレスベルト幅方向における少なくとも一部分に全周に亘って存在することが、短時間でサンプルトナー像を多数形成できることから画像制御のために要する時間を短縮できると同時に、光学センサの数を少なくすることができることから好ましい。低抵抗領域が全周に亘って存在するとは、前記の方法でエンドレスベルト片の電気抵抗を測定した結果、エンドレスベルト1本分に相当する全てのエンドレスベルト片において、エンドレスベルト幅方向における略同一箇所に低抵抗領域が存在することを指す。
【0046】
本発明のエンドレスベルトは、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーを含有していることが好ましい。すなわち、導電性フィラーを含有することにより電気抵抗を調整していることから電気抵抗の環境(温湿度)による変動が小さく、高温高湿環境における転写材の吸着、低温低湿環境における水玉模様、紙粉付着の防止に効果がある。
【0047】
本発明のエンドレスベルトに使用できる熱可塑性樹脂としては特に制約はないが、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリアリレート等の芳香族ポリエステル樹脂、シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート等の脂環族ポリエステル樹脂、ポリサルホンやポリエーテルサルホン及びポリフェニレンサルファイド等の硫黄含有樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレン−四フッ化エチレン共重合体等のフッ素含有樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等やこれらの各種変性樹脂や共重合体を使用することができるが上記材料に限定されるものではない。また、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。これらの熱可塑性樹脂の中でもポリフッ化ビニリデン樹脂が、吸湿性が非常に低く、機械特性、成形加工性および難燃性に優れることから好ましい。
【0048】
一方、本発明に使用できる導電性フィラーとしては、公知の導電性フィラーを用いることができ、複数種を混合して用いても良いが、少ない添加量で電気特性を広い範囲でコントロールできることから、導電性カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0049】
また、添加剤として本発明の目的の達成を阻害しな範囲でその他の成分を添加することができる。具体的には、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、離型剤、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、成形助剤、帯電防止剤などを例示することができる。これらを2種以上組み合わせることも可能である。
【0050】
熱可塑性樹脂中に導電性フィラーやその他添加剤を分散する方法としては公知の混練、分散方法を使用できるが、高い分散能力と生産性を有することから2軸押出機による分散が好ましい。
【0051】
本発明のエンドレスベルトやフィルム状部材の成形方法としては、公知の成形方法を使用できるが、製造コストを非常に低く抑えることができることから、押し出し成形(インフレーション成形、押し出しブロー成形を含む)が好ましい。特に、インフレーション成形は成形速度が非常に速く、膜厚均一性に優れたチューブ状フィルムを大量に安価に製造することが可能であることから好ましい。
【0052】
以下に本発明に用いられる中間転写ベルトの製造方法の一態様であるインフレーション成形に関して図10を用いて説明する。但し、それにより本発明が何ら制限を受けるものではない。
【0053】
まず、成型用樹脂、導電剤、添加剤等を所望の処方に基づき、予め予備混合後、混練分散をせしめた成型用原料を押し出し機400に具備したホッパー401に投入する。押し出し機400においては、成型用原料が後工程でのエンドレスベルト成型が可能となる溶融粘度となり、又、原料相互が均一分散するように、設定温度、及び押し出し機のスクリュー構成が選択される。成型用原料は押し出し機400中で溶融混練され、溶融体となり、環状ダイス402に入る。環状ダイス402は気体導入路403が配設されており、気体導入路403より気体が環状ダイス402の中央に吹き込まれることにより、ダイス402を通過した溶融体は径方向に拡大膨張し、筒状フィルム408となる。このとき気体導入路403から吹き込まれる気体としては、空気、窒素、2酸化炭素、アルゴン等を選択することができる。膨張した成型体は不図示のブロワに接続された外部冷却リング404から吹き出される冷却エアーにより冷却されつつ上方向に引き上げられる。通常インフレーション装置では安定板405でチューブを左右から押しつぶして、シート状に折り畳み、ピンチローラー406で内部のエアーが抜けないように挟持して一定速度で引き取る方法がとられる。ついで、引き取られたフィルムをカット装置407で切断し、所望の大きさのチューブフィルムを得る。このような成形方法をとることから、得られるチューブ状フィルムはチューブ状フィルムの周長の半分の大きさに畳まれた状態で得られ、その周長の半分の大きさのことを一般的に折径と呼ぶ。
【0054】
また、エンドレスベルトのベース層と、該ベース層上の少なくとも一部分にベース層とは電気抵抗が異なる層を形成することにより、軸方向における低抵抗領域を有するエンドレスベルトを得ることができ、比較的簡便に低抵抗領域を形成できることが好ましい。ベース層上に電気抵抗の異なる層を形成する手段としては、バインダー樹脂中に導電性フィラー等の導電性材料を分散した塗料をベース層上に塗布する方法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。このベース層とは電気抵抗が違う層の厚みは、50μm未満、更には20μm未満が好ましい。
【0055】
次に、本発明者等は、軸方向における低抵抗領域を有するエンドレスベルトの製造方法に関して検討した結果、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーを含有するフィルム状部材を加熱処理することによりエンドレスベルトを製造する場合、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向に加熱処理温度を変えることにより、軸方向における低抵抗領域を形成することが可能なことを見出した。
【0056】
熱可塑性樹脂等のバインダー樹脂中に導電性フィラーを分散する場合、分散が十分進行していない分散初期には電気抵抗が低く、分散が進行していくに従って電気抵抗は上昇していくのが一般的である。このことは、導電性フィラーの導電性の発現には、導電性粒子同士の凝集が大きな影響を与えていることを示唆している。一方、バインダー樹脂が溶融状態で、かつバインダー樹脂および導電性フィラーにせん断等の外力が働かない場合は、バインダー樹脂中の導電性フィラーは凝集し、そのような状態を経た熱可塑性樹脂組成物には電気抵抗の低下が観測される。すなわち本発明者等はこのような現象を利用し、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向に加熱処理温度を変化させることにより、軸方向における低抵抗領域を形成することが可能なことを見出した。
【0057】
ここで、エンドレスベルトの低抵抗領域に相当する部分は、他の部分よりも加熱処理温度を高くする必要がある。すなわち低抵抗領域に相当する部分は、バインダー成分として使用している熱可塑性樹脂成分の軟化温度以上で加熱処理する必要があり、溶融温度以上で加熱処理することが好ましい。
【0058】
フィルム状部材を加熱処理する方法に特に制限はないが、効率的にエンドレスベルトを製造できると同時にエンドレスベルト軸方向に相当する方向に容易に加熱温度を変化させることが可能なことから、加熱処理方法としては以下のような方法が好ましい。すなわち、特開2002−301764号公報に記載されている方法や、図11、図12に示すような方法である。以下に図11、図12を用いて詳細に加熱処理方法の一例を示す。
【0059】
図11はチューブ状フィルム部材の加熱処理に用いる円筒状内型301を説明する図である。
【0060】
図11において、
(1)は、アルミニウム製円筒体の外周面に、厚さ0.5mm程度の熱収縮性PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被せる工程を示し、
(2)は、PFAチューブを220℃で加熱収縮させたあと、端部をアルミニウム製円筒体の内側に巻き込みPFA固定部材で固定する工程を示す。
アルミニウム製円筒状体の内側には、先端に逆止弁を有する気体給排気口を設けてある。
【0061】
図12は図11の円筒状内型301を用いたチューブ状フィルム部材の加熱処理方法を説明するものである。図12の(i)から(iv)の各工程を詳しく説明する。
(i)円筒状内型301の外周面にチューブ状フィルム部材220を嵌合する。
(ii)チューブ状フィルム部材220を嵌合した円筒状内型301の気体給排気口にチューブ状フィルム部材の折り目が伸びる程度の低圧(例えば0.2MPa)の気体を導入し、円筒状内型301表面にチューブ状フィルム部材220を保持させる。
(iii)外周にチューブ状フィルム部材220が嵌合された円筒状内型301のさらに外周に、チューブ状フィルム部材の外周長よりも若干大きな内周長を有し、内周面に転写面を有する円筒状外型302を嵌合する。
(iv)円筒状外型302を嵌合した状態で、円筒状内型301の気体給排気口にチューブ状フィルム部材220の外表面と円筒状外型302の内周面が密着する程度の圧力(例えば0.5MPa)の気体を導入する。この状態で加熱し、冷却後に気体給排気口からPFAチューブ内の気体を抜くことにより、チューブ状フィルム部材220の加熱処理を行うことができる。
【0062】
上記のような加熱処理を行う際の加熱方法としては、図13に示すように円筒状部材200(円筒状内型と円筒状外型の間にフィルム状部材を挟んだもの)を回転架台202上で回転させながら、円筒状外型のさらに外側および/または円筒状内型の内側(不図示)に設置した、ハロゲンヒータや遠赤外線ヒータ等の加熱手段201により加熱処理を行うことができる。
【0063】
ここで、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向に加熱温度を変化させる方法としては、上記加熱手段に出力分布を持たせる方法や、円筒状外型外表面および/または円筒状内型内表面の熱吸収率を部分的に変化させる方法等があるが、加熱温度を容易に細かく制御できることから、円筒状外型外表面および/または円筒状内型内表面の熱吸収率を部分的に変化させる方法が好ましい。具体的には、円筒状外型外表面および/または円筒状内型内表面に、加熱処理時に高温にしたい部分には赤外領域波長の吸収率が高い色(例えばカーボンブラックを分散した黒色)の塗料を塗装し、加熱処理時に比較的低温にしたい部分には赤外領域波長の吸収率が低い色(例えばカーボンブラックと酸化チタンを分散したグレー色)の塗料を塗装することにより、円筒状外型外表面の熱吸収率を部分的に変えることが可能である。ここで、熱吸収率の違う2種類の塗料を用いた場合において、高熱吸収率部分の幅が大きくなればなるほど、高熱吸収率部分と低熱吸収率部分との温度差は大きくなる傾向が見られ、それに対応して高熱吸収率部分に相当するエンドレスベルトの電気抵抗が低下する傾向が見られる。また、高熱吸収率部分の幅が同じ場合、高熱吸収率部分と低熱吸収率部分の熱吸収率の差が大きくなればなるほど、高熱吸収率部分と低熱吸収率部分との温度差は大きくなり、それに対応して高熱吸収率部分に相当するエンドレスベルトの電気抵抗が低下する。
【0064】
また、軸方向における低抵抗領域を形成する別の手段として、次の方法が挙げられる。すなわち、膨張可能な円筒状内型と該円筒状内型よりも膨張量が小さい円筒状外型との間に、熱可塑性樹脂を主成分とする複数の電気抵抗の異なるフィルム状部材を、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向において電気抵抗が異なるように配置し、該複数のフィルム状部材を加熱処理することにより一体化するエンドレスベルトの製造方法である。図14を用いて前記製造方法を説明する。
【0065】
図14において円筒状内型301は先述と同等のものである。以下に図14の(i)から(iv)の各工程を説明する。
(i)円筒状内型301の外周面にベース部チューブ状フィルム部材221及び低抵抗なチューブ状フィルム部材222を嵌合し、各チューブ状フィルム部材間に隙間ができないようにする。
(ii)チューブ状フィルム部材221及び222を嵌合した円筒状内型301の気体給排気口にチューブ状フィルム部材の折り目が伸びる程度の低圧(例えば0.2MPa)の気体を導入し、円筒状内型301表面にチューブ状フィルム部材221, 222を保持させる。
(iii)外周にチューブ状フィルム部材221,222が嵌合された円筒状内型301のさらに外周に、チューブ状フィルム部材の外周長よりも若干大きな内周長を有し、内周面に転写面を有する円筒状外型302を嵌合する。
(iv)円筒状外型302を嵌合した状態で、円筒状内型301の気体給排気口にチューブ状フィルム部材221,222の外表面と円筒状外型302の内周面が密着する程度の圧力(例えば0.5MPa)の気体を導入する。この状態で加熱し、冷却後に気体給排気口からPFAチューブ内の気体を抜くことにより、チューブ状フィルム部材同士を熱溶着することができる。
【0066】
また、エンドレスベルト表面の一部分にコロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理の何れかの表面処理を行うことにより、軸方向における低抵抗領域を形成することもできる。このような処理を行うことにより、物質表面に親水性の官能基が形成され、その結果として表面抵抗が低下するという現象は一般的である。しかし、本発明での抵抗はエンドレスベルトの厚み方向での抵抗であり、前述のような親水性官能基の形成による抵抗低下とは違う現象であると考えられる。このような表面処理を行うことにより低抵抗領域が形成されるはっきりとしたメカニズムは不明であるが、エンドレスベルト表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理のようなエネルギー線照射処理を行うことにより、熱可塑性樹脂中に分散されている導電性フィラーが移動・凝集することにより導電パスが形成され、前記表面処理を行った部分の電気抵抗が低下するものと考えられる。
【0067】
以下、本発明のエンドレスベルトおよび画像形成装置を、図面を用いてさらに詳しく説明する。
【0068】
本発明のエンドレスベルトを、転写搬送ベルトとして用いた画像形成装置の一例を図1を用いて説明する。図1はタンデム方式の画像形成装置であり、転写媒体担持体としての静電吸着ベルト、即ち、転写搬送ベルト61を有し、転写搬送ベルト61は、駆動ローラ11、吸着対向ローラ、テンションローラ等に懸架して設置されている。転写搬送ベルト61は、駆動ローラ11により矢印の方向に回転駆動される。
【0069】
この転写搬送ベルト61の周面に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の画像形成部が配置され、転写搬送ベルト61により転写材Pが各画像形成部に順次搬送される。各画像形成部は、感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)、1次帯電器2、不図示の露光手段3、現像装置4(4Y、4M、4C、4Bk)、感光ドラムクリーナ5を有し、これら感光ドラム1、1次帯電器2、現像装置4、感光ドラムクリーナ5は、プロセスカートリッジとして一体にまとめられ、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。
【0070】
感光ドラム1には、転写搬送ベルト61を介して転写手段である転写ローラ9が当接しており、感光ドラム1上のトナー像の転写材Pへの転写時および転写搬送ベルト61上へのサンプルトナー画像転写時には、転写バイアス電源10より転写ローラ9に転写バイアスが印加される。
【0071】
また、転写搬送ベルト表面近傍に光学センサ14が設置されており、転写搬送ベルト上に形成されたトナー濃度制御や色ずれ制御のためのサンプルトナー画像を読み取っている。この光学センサの情報をもとに各色成分画像の濃度制御、画像の書き出し位置制御(色ずれ制御)、画像の位置精度制御等を行う。
【0072】
色ずれの調整方法の例としては、各画像形成部で形成された各色毎のサンプルトナー画像をエンドレスベルト上に転写し、あるカラーのトナー像を基準にして(例えば、イエローのサンプルトナー像の位置を基準にして)、他色のサンプルトナー像の位置ずれ量を光学センサ(レジスト検知センサ)で検出し、スキャナー内の折り返しミラーを検出された色ずれ量に合わせて位置調節し感光ドラムに書き込むレーザーの位置を調整させたり、各色ごとの画像書き出しタイミングを変更させたりして各カラーのトナー像の色ずれを補正するようになっている。
【0073】
また、トナー濃度の調整方法の例としては、各画像形成部で形成された各色毎のサンプルトナー画像(ハーフトーン画像やベタ画像)をエンドレスベルト上に転写し、エンドレスベルト上のサンプルトナー像を光学センサ(濃度検知センサ)で読み取り、各色の現像バイアスや露光量を調整して濃度を調整している。
【0074】
ここで転写搬送ベルトにおいて、サンプルトナー画像が形成される部分、すなわち画像形成装置に具備された光学センサ読み取り位置に相当する部分は、その他の部分と比較して電気抵抗が相対的に低抵抗とされ、サンプルトナー画像に水玉模様が発生せず、紙粉の付着も防止されている。
【0075】
転写材Pは、不図示の給紙カセットなどからピックアップローラ、給紙ローラによって画像形成部に向けて搬送され、ローラ状の同期回転体であるレジストローラ対に一旦挟持された後、レジストローラ対により、感光ドラム1上での画像形成動作と同期をとって、転写搬送ベルト61の転写材吸着部に供給される。
【0076】
吸着部には、吸着補助手段としての吸着ローラ8が転写搬送ベルト61を介して吸着対向ローラと対向設置されており、吸着ローラ8と対向ローラで転写搬送ベルト61及び転写材Pを挟持するようになっている。吸着バイアス電源(高圧電源)から吸着ローラ8に電圧(吸着バイアス)を印加することにより、転写材Pの転写搬送ベルト61への吸着を補助する。ここで、転写搬送ベルト表面への転写材の吸着を補助する吸着ローラ等の部材を有さないものもある。
【0077】
このようにして転写搬送ベルト61に吸着された転写材Pは、各色成分の画像形成部を順次通過し、各感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が転写ローラ9に印加された電圧(転写バイアス)により、次々に重ね合わせて転写される。その後、転写材Pは、転写搬送ベルト61から分離して定着装置12に送られ、そこで4色のトナー像の定着を行って、転写材P上にフルカラーの永久画像が得られる。転写後に感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)上に残留した転写残りトナーは、感光ドラムクリーナ5によって除去される。
【0078】
また、転写搬送ベルト上に形成されたサンプルトナー画像や画像形成時に転写搬送ベルト上に転写されたトナーは、転写ローラ9に印加された電圧(クリーニングバイアス)により感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)に戻され、さらに感光ドラムクリーナ5によって除去される。ここで、クリーニングバイアスとしては例えば第1、第3の画像形成部(ここではイエロー、シアン画像形成部)では+極性、第2、第4の画像形成部(ここではマゼンタ、ブラック画像形成部)では−極性となるように各画像形成部で極性を入れ替えることにより、効果的に転写搬送ベルト上のトナーを感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)に戻すことができる。
【0079】
以上が本発明のエンドレスベルトを転写搬送ベルトとして用いた画像形成装置の動作概略であるが、本発明の画像形成装置は図1に限定されるものではない。例えば転写搬送ベルトのクリーニング機構としてブレードクリーニング方式やブラシクリーニング方式を採用しても良く、特に図1において転写搬送ベルト表面への転写材の吸着を補助する吸着ローラ8を有さないものが、画像形成装置の小型化、低コスト化を図ることができることから好ましい。
【0080】
次に本発明のエンドレスベルトを、中間転写ベルトとして用いた画像形成装置の一例を図2を用いて説明する。図2はタンデム方式の画像形成装置であり、中間転写ベルト62を有し、中間転写ベルト62は、駆動ローラ11、クリーニング帯電ローラ対向ローラ、テンションローラ等に懸架して設置されている。中間転写ベルト62は、駆動ローラ11により矢印の方向に回転駆動される。
【0081】
この中間転写ベルト62の周面に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の画像形成部が配置され、中間転写ベルト62上に各画像形成部で形成された各色成分トナー画像が順次転写・形成される。各画像形成部は、感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)、1次帯電器2、不図示の露光手段3、現像装置4(4Y、4M、4C、4Bk)、感光ドラムクリーナ5を有し、これら感光ドラム1、1次帯電器2、現像装置4、感光ドラムクリーナ5は、プロセスカートリッジとして一体にまとめられ、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。
【0082】
感光ドラム1には、中間転写ベルト62を介して転写手段である一次転写ローラ91が当接しており、各色成分の画像形成部を順次通過し、各感光ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が一次転写ローラ91に印加された一次転写バイアスにより、次々に重ね合わせて一次転写される。
【0083】
また、中間転写ベルト62表面近傍に光学センサ14が設置されており、中間転写ベルト上に形成されたトナー濃度制御や色ずれ制御のためのサンプルトナー画像を読み取っている。この光学センサの情報をもとに各色成分画像の濃度制御、画像の書き出し位置制御、画像の位置精度制御等を行う。ここで中間転写ベルトの電気抵抗は、サンプルトナー画像が形成される部分は相対的に低抵抗とされ、紙粉の付着を防止できることからサンプルトナー画像を光学センサにより正確に読み取ることが可能となっている。
【0084】
色ずれの調整方法の例としては、各画像形成部で形成された各色毎のサンプルトナー画像を中間転写ベルト上に転写し、あるカラーのトナー像を基準にして(例えば、イエローのサンプルトナー像の位置を基準にして)、他色のサンプルトナー像の位置ずれ量を光学センサ(レジスト検知センサ)で検出し、スキャナー内の折り返しミラーを検出された色ずれ量に合わせて位置調節し感光ドラムに書き込むレーザーの位置を調整させたり、各色ごとの画像書き出しタイミングを変更させたりして各カラーのトナー像の色ずれを補正するようになっている。
【0085】
また、トナー濃度の調整方法の例としては、各画像形成部で形成された各色毎のサンプルトナー画像(ハーフトーン画像やベタ画像)を中間転写ベルト上に転写し、中間転写ベルト上のサンプルトナー像を光学センサ(濃度検知センサ)で読み取り、各色の現像バイアスや露光量を調整して濃度を調整している。
【0086】
転写材Pは、不図示の給紙カセットなどからピックアップローラ、給紙ローラによって二次転写部に向けて搬送され、ローラ状の同期回転体であるレジストローラ対に一旦挟持された後、レジストローラ対により、中間転写ベルト62上への画像形成動作と同期をとって二次転写部へと供給される。
【0087】
中間転写ベルト62上に形成された画像は、二次転写ローラ92にバイアス電源102から供給された二次転写バイアスにより二次転写部に供給された転写材P上に二次転写される。
その後、転写材Pは、中間転写ベルト62から分離して定着装置12に送られ、そこで4色のトナー像の定着を行って、転写材P上にフルカラーの永久画像が得られる。
【0088】
また、中間転写ベルト62上に残留した二次転写残トナーや、中間転写ベルト上に形成された濃度制御パターンの除去方法としては、中間転写体上のトナーをクリーニング帯電ローラ13により帯電し、帯電させた極性とは逆の極性のクリーニングバイアスを一次転写ローラ91に印加することにより、感光ドラム1に中間転写ベルト62上のトナー画像を戻すことによるクリーニング方法を適用することできる。中間転写ベルト62から感光ドラム1に戻されたトナーや、一次転写後に感光ドラム1上に残留した転写残りトナーは、感光ドラムクリーナ5によって除去される。
【0089】
以上が本発明のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして用いた画像形成装置の動作概略であるが、本発明のエンドレスベルトは、図2の画像形成装置以外にも適用可能である。例えば図3に示されるような、1つの感光ドラムと4つの現像装置を有し、感光体上に形成されたカラー画像の各色成分画像を、順次中間転写体上に多重転写した後、紙等の転写媒体に一括して転写する画像形成装置にも適用可能である。また、例えば中間転写ベルトのクリーニング機構としてブレードクリーング方式やブラシクリーニング方式を採用した画像形成装置にも勿論適用可能であり、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
以下実施例をもって本発明を詳細に説明する。
実施例1
<エンドレスベルトの作製>
配合
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー720 アルケマ製) 66.5質量%
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー740 アルケマ製) 20質量%
導電性カーボンブラック(デンカブラック粉状品 電気化学工業製)7.5質量%
ポリエーテルエステルアミド樹脂
(ペレスタットNC6321 三洋化成工業製) 1質量%
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種 堺化学製) 5質量%
【0091】
上記配合を2軸押出機を用いて220〜240℃で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を図10のインフレーション成形装置を用いて、ダイス温度230℃で成形することにより厚さ100μm、折径241mm(周長482mm)、カット長さ265mmのチューブ状フィルムを作製した。
得られたチューブ状フィルムを図11、図12及び図13に示される円筒状部材、加熱処理装置を用いて加熱処理を行った。
【0092】
以下に図12の(i)から(iv)の各工程を説明する。
(i)円筒状内型301(外径151.2mm)の外周面にチューブ状フィルム部材220を嵌合した。
(ii)チューブ状フィルム部材220を嵌合した円筒状内型301の気体給排気口にチューブ状フィルム部材の折り目が伸びる圧力である0.15MPaの圧縮エアーを導入し、円筒状内型301表面にチューブ状フィルム部材220を保持させた。
(iii)外周にチューブ状フィルム部材220が嵌合された円筒状内型301のさらに外周に、内周面に転写面を有する円筒状外型302(内径155mm、厚さ0.5mmのニッケル製)を嵌合した。
(iv)円筒状外型302を嵌合した状態で、円筒状内型301の気体給排気口から0.5MPaの圧力の圧縮エアーを導入した。この状態で図13の加熱処理装置を用いて加熱し、不図示の冷却ファンにより冷却後、気体給排気口からPFAチューブ内の気体を抜くことにより、加熱処理チューブ状フィルムを得た。
【0093】
本実施例では、円筒状外型302として、その外周面に図15に示すように熱吸収率が異なる塗料が表面に塗布され、高熱吸収率部が幅10mmで円筒状外型全周に設けられているものを用いた。また、加熱処理時の円筒状外型302の表面温度は低熱吸収率部が175℃、高熱吸収率部が200℃であった。また、本実施例において、型の回転数は60rpmであり、ヒータとしては、出力配分が長手方向で均一なハロゲンヒータを使用した。加工条件を表1に示す。
【0094】
同様の工程を繰り返し、2本の加熱処理チューブ状フィルムを作製し、80℃でアニール処理することにより、内周長480mm、厚さ100μmのチューブ状フィルムとした。その後、両端をカットすることにより、幅245mmのエンドレスベルトを2本作製した。
【0095】
<エンドレスベルト軸方向の電気抵抗分布の測定>
作製したエンドレスベルトの1本について先述の方法で電気抵抗の測定を行った。すなわち図6に示すように、エンドレスベルトを10mm幅(エンドレスベルト幅を48等分にした幅)に切断してエンドレスベルト片64を作製し、そのエンドレスベルト片の電気抵抗を図7に示される抵抗測定装置を用いて測定した。図7において給電駆動ローラ24はJIS A硬度60度、直径30mm、幅9.5mm、1×10Ωの電気抵抗を有するゴムローラである。この給電駆動ローラ24は電極ローラ23に3Nの力で当接されている。また給電駆動ローラ24はエンドレスベルト片64を矢印の方向に10mm/秒の一定速度で搬送するように不図示のモータにより駆動されている。さらに給電駆動ローラ24には高圧電源HV(TReK社製MODEL610C)から、接地された電極ローラ23との間に+5μAの定電流が流れるように電圧が印加されている。印加された電圧を高圧電源HV(TReK社製MODEL610C)の電圧出力モニター端子から出力された信号をレコーダーRec.(横河電機社製オシログラフィックレコーダーORM1200)に記録した。ここでレコーダーRecのサンプリングレートを100Hzとして、エンドレスベルト片64の長さ分(エンドレスベルトの幅方向に相当する)のデータを記録した。100Hzで記録された印加電圧データと測定電流5μAから計算することにより、エンドレスベルト片64の0.1mmピッチの電気抵抗Rを求め、エンドレスベルト片64の電気抵抗分布を測定した。その後、0.1mmピッチの電気抵抗Rに関して、図8に示すように1データ毎にずらして50データの移動平均(相加平均)を全てのエンドレスベルト片で取り、この移動平均データで最大となるデータをRhとした。このRhに対して3/4以下の電気抵抗Rを有する部分をエンドレスベルトにおける低抵抗領域とし、この低抵抗領域の相加平均値を低抵抗領域の電気抵抗Rlとした。また、エンドレスベルト1本分全ての電気抵抗値Rの相加平均値をエンドレスベルトの電気抵抗Raveとした。
【0096】
図16は本実施例のエンドレスベルトにおける、エンドレスベルト片の電気抵抗測定結果をグラフ化したものである。図16に示すように、エンドレスベルトの幅方向において、電気抵抗の低抵抗領域を有することが確認された。このような低抵抗領域は、本実施例の全てのエンドレスベルト片48枚の、エンドレスベルト幅方向における略同一箇所において確認され、全周に亘って低抵抗領域を有していた。また、この低抵抗領域幅は23.5mmであり、エンドレスベルト製造時におけるチューブ状フィルムの加熱処理工程で、円筒状外型302の高熱吸収率部とその周辺部に相当する部分であった。すなわちエンドレスベルトにおける低抵抗領域の位置は、図9におけるAが171.5mm,Bが50mmの位置であった。測定結果を表2に示す。
【0097】
つぎに、作製したもう1本のエンドレスベルトを、その内周面に、幅4mm、厚み1mmのゴム製の蛇行防止部材を両面テープで貼付し、図1に示される画像形成装置の転写搬送ベルトとして組み込み、各種画像出力試験を行った。ここで、光学センサ14は本発明のエンドレスベルトの低抵抗領域に対向する位置にとりつけ、画像制御用サンプルトナー画像を、エンドレスベルトの低抵抗領域に形成するようにした。また、画像を250枚出力する毎に画像制御用サンプルトナー画像を形成し、画像形成条件へのフィードバック制御を行うようにした。
【0098】
以下に示すようにして、水玉模様、色ずれ及び画像安定性の評価を行った。
【0099】
<水玉模様の評価>
転写搬送ベルトを組み込んだ画像形成装置を、23℃/55%RHの環境に24時間以上放置する。次に、各色について、10mm四方の大きさのトナー像(サンプルトナー画像)を、ベルト上に並べて転写した。なお、4色のサンプルトナー画像の、ベルト上の濃度(ベルト上のトナー載り量)が、0.3±0.1(mg/cm)になるように、現像バイアスを調節した。
もちろん、このときには記録用紙を使用していない。つまり、感光体に形成されたトナー像を直接、転写搬送ベルト上に転写した。
4色のサンプルトナー画像の転写搬送ベルト上への転写を終えた直後に、画像形成装置の電源をOFFにして、転写搬送ベルト上に形成されたサンプルトナー画像の濃度の均一性を目視で確認した結果、サンプルトナー画像形成部の電気抵抗が低いことから水玉画像は発生しなかった。水玉模様の評価基準は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
◎:水玉模様は、まったく発生していない。
○:かすかに水玉模様の発生が認められるが、濃度制御への影響はなく実用上問題なし。
△:凝視しなくても判別できる水玉模様が認められるが、濃度制御への影響は小さく実用上問題なし。
×:水玉模様が、はっきりと認められ、濃度制御への影響が大きく実用不可。
【0100】
<色ずれの評価>
転写搬送ベルトを組み込んだ画像形成装置、および記録用紙(キヤノン社製、カラーレーザーコピア用紙A4サイズ、81.4g/m)を30℃/80%RHの環境に24時間以上放置する。
次に、図17に示すように、記録用紙の中央部に、線幅(線の太さ)100μm、長さ5mmの横線を、4色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)横一列に並べ、これを1行とするとき、該行を用紙の縦方向に2mmずつずらし、合計130行描画した画像を出力した(A4用紙の上下両端部約20mmを空白とし、中央部258mmに画像を出力)。各行において、ブラックの横線を基準として、他の3色の横線が、縦方向にどれだけずれているか、その絶対値を測定した。各行において測定された値の最大値を、そのページ内における色ずれ量(μm)とした。その結果、サンプルトナー画像形成部以外の転写搬送ベルト抵抗が十分に高い値を有していることから、本実施例の転写搬送ベルトは高い紙吸着力を有しており、色ずれは小さく良好であった。
色ずれ量による判定基準は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
200μm以下:◎
200μmより大きく220μm以下:○
220μmより大きく240μm以下:△(実用可)
240μmより大きい:×(実用不可)
ここで、色ずれは転写搬送ベルトの転写材吸着性に依存し、転写搬送ベルトの転写材吸着性に優れるものほど出力される画像の色ずれは小さくなる。本発明においては色ずれ評価結果が△以上のものを実使用可能レベルとした。
【0101】
<連続通紙試験、画像安定性評価>
連続15000枚の通紙耐久試験を行い、耐久試験前後でのエンドレスベルト表面の光沢(グロス)を測定することにより紙粉による汚染性を確認した。グロスの測定は、堀場社製IG−320グロスチェッカーを用いて、サンプルトナー画像形成部に相当する位置の任意の4点のグロスを測定したところ、初期は平均で72.3、通紙試験後は平均で40.5と耐久によるグロスの低下も少なく良好であった。
また、1000枚通紙する毎に写真画像を出力したところ、耐久試験終了時まで色調の変化もなく良好な結果であった。ここで、画像出力にはゼロックス4024の75g/m紙を使用した。
【0102】
画像出力試験結果において、画像品位を以下のように評価した。
○:耐久後の転写搬送ベルト表面のグロス保持率が50%以上で、10000枚耐久を通して画像の色調の変化が殆んどないもの。
△:耐久後の転写搬送ベルト表面のグロス保持率が30%以上50%未満で、10000枚耐久後画像の色調変化が軽微なもの、またはグロス保持率は50%以上あるが、耐久中の画像安定性に若干劣るもの。
×:耐久後の転写搬送ベルト表面のグロス保持率が30%未満で、10000枚耐久後画像の色調の変化が顕著にみられるもの、または耐久中の画像安定性に劣るもの。
ここで、エンドレスベルト表面のグロスは転写搬送ベルト表面の耐紙粉汚染性に依存し、連続通紙試験前後のグロスの変化が小さいものほど耐紙粉汚染性に優れることを示す。また画像安定性は、耐紙粉汚染性と水玉模様に依存し、耐紙粉付着性が高く水玉模様の発生のない転写搬送ベルトほど画像安定性に優れる。また、本発明においては画像安定性評価結果が△以上のものを実使用可能レベルとした。
【0103】
実施例2
実施例1で作製したエンドレスベルトを、図1から吸着ローラ8を取り外した画像形成装置の転写搬送ベルトとして組み込み、各種画像出力試験を行った。ここで、光学センサ14は実施例1と同様に本発明のエンドレスベルトの低抵抗領域に対向する位置にとりつけ、画像制御用サンプルトナー画像を、エンドレスベルトの低抵抗領域に形成するようにした。また実施例1と同様に、画像を250枚出力する毎に画像制御用サンプルトナー画像を形成し、画像形成条件へのフィードバック制御を行うようにし、各種評価を実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0104】
実施例3
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の位置を変更した以外は実施例1と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。
また、このエンドレスベルトを、実施例2と同様に図1から吸着ローラ8を取り外した画像形成装置の転写搬送ベルトとして組み込み、各種評価を行った。ここで、光学センサ14は本発明のエンドレスベルトの低抵抗領域に対向する位置にとりつけ、画像制御用サンプルトナー画像をエンドレスベルトの低抵抗領域に形成するようにした。その結果、低抵抗領域がエンドレスベルトの端部領域に近い部分に存在していたことから、若干サンプルトナー画像の形成・読み取りが不安定となり、その結果色ずれや画像安定性に軽微な影響が見られたが、実使用上全く問題のないレベルであった。結果を表1、表2に示す。
【0105】
実施例4
エンドレスベルトの配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にしてエンドレスベルトを作製し、各種評価を行った。結果を表1、表2に示す。
配合
ポリアミド610樹脂(アミランCM2001 東レ製) 22質量%
ポリアミド12樹脂(グリルアミドL20 エムス昭和電工製) 50質量%
導電性カーボンブラック(デンカブラック粉状 電気化学工業製) 12質量%
ヨウ化銅(1級試薬 キシダ化学製) 0.1質量%
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種 堺化学製) 15.9質量%
【0106】
実施例5
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の幅を25mmとし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例1と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。
また、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0107】
実施例6
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の幅を45mmとし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例1と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。
作製したエンドレスベルトを、実施例2と同様に図1から吸着ローラ8を取り外した画像形成装置の転写搬送ベルトとして組み込み、各種画像出力試験を行った。ここで、光学センサ14は実施例1同様に本発明のエンドレスベルトの低抵抗領域に対向する位置にとりつけ、画像制御用サンプルトナー画像を、エンドレスベルトの低抵抗領域に形成するようにし、各種評価を実施例1と同様に行った。その結果、吸着ローラを有さない画像形成装置であり、低抵抗領域面積がエンドレスベルト面積の29.8%を占めていると同時に低抵抗領域の抵抗値Rlが5.2×10Ωと低いことから、紙の吸着力が弱く、若干色ずれが発生したが実使用上問題のないレベルであった。また、低抵抗領域がエンドレスベルトの端部領域に近い部分に存在していたことから、若干サンプルトナー画像の形成・読み取りが不安定となり、その結果色ずれや画像安定性に若干影響が見られたが、実使用上問題のないレベルであった。結果を表1、表2に示す。
【0108】
実施例7
エンドレスベルトの配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にしてチューブ状フィルムを作成した。
配合
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー720 アルケマ製) 67.5質量%
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー740 アルケマ製) 21質量%
導電性カーボンブラック(デンカブラック粉状品 電気化学工業製) 5.5質量%
ポリエーテルエステルアミド樹脂
(ペレスタットNC6321 三洋化成工業製) 1質量%
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種 堺化学製) 5質量%
【0109】
得られたチューブ状フィルムを、加熱処理に用いる円筒状外型302の低熱吸収率部の熱吸収率を大きくし、高熱吸収率部との差を小さくし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例1と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。また、実施例1と同様に各種評価を行った結果、低抵抗領域幅が10mmと狭いと同時に低抵抗領域の電気抵抗値Rlが9.5×10と高いことからサンプルトナー画像上に若干水玉模様が発生し、画像安定性に影響が確認されたが実使用上問題のないレベルであった。結果を表1、表2に示す。
【0110】
実施例8
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、加熱処理に用いるハロゲンヒータとして、ヒータ長手方向の一部分の出力が高く設定してあるものを使用した以外は実施例1と同様に、低温部が175℃になるように加熱処理を行った。ここで、ハロゲンヒータの高出力部の幅は約20mmであった。
得られた加熱処理チューブ状フィルムから実施例1と同様にしてエンドレスベルトを作製し、各種評価を行った結果、低抵抗領域面積がエンドレスベルト面積の26.5%を占めていることから、若干紙の吸着力が弱く、色ずれが軽微に発生したが実使用上全く問題のないレベルであった。また、低抵抗領域の電気抵抗値Rlが7.2×10と若干高いことからサンプルトナー画像上に極めて軽微に水玉模様が発生したが、画像安定性に影響は見られなかった。結果を表1、表2に示す。
【0111】
実施例9
エンドレスベルトの配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にしてチューブ状フィルムを作成し、幅を15mmに切断して低抵抗領域用チューブ状フィルムを得た。
配合
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー720 アルケマ製) 65質量%
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー740 アルケマ製) 19質量%
導電性カーボンブラック(デンカブラック粉状品 電気化学工業製)10質量%
ポリエーテルエステルアミド樹脂
(ペレスタットNC6321 三洋化成工業製) 1質量%
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種 堺化学製) 5質量%
【0112】
また、実施例1で作製したチューブ状フィルムを、幅175.8mmと54.3mmに切断し、ベース部チューブ状部材を作成した。
得られたベース部チューブ状部材2枚と、低抵抗領域用チューブ状部材を図11、図14及び図13に示される円筒状部材、加熱処理装置を用いて加熱処理を行った。
【0113】
以下に図14の(i)から(iv)の各工程を説明する。
(i)円筒状内型301の外周面に、幅150mmのベース部チューブ状フィルム部材221、幅15mmの低抵抗領域用チューブ状フィルム部材222、幅100mmのベース部チューブ状フィルム部材221の順に、各チューブ状フィルム部材間に隙間ができないように嵌合した。
(ii)ベース部チューブ状フィルム部材221及び低抵抗領域用チューブ状フィルム部材222を嵌合した円筒状内型301の気体給排気口にチューブ状フィルム部材の折り目が伸びる圧力である0.15MPaの圧縮エアーを導入し、円筒状内型301表面にベース部チューブ状フィルム部材221及び低抵抗領域用チューブ状フィルム部材222を保持させた。
(iii)外周にベース部チューブ状フィルム部材221及び低抵抗領域用チューブ状フィルム部材222が嵌合された円筒状内型301のさらに外周に、内周面に転写面を有する円筒状外型302(内径155mm、厚さ0.5mmのニッケル製)を嵌合した。
(iv)円筒状外型302を嵌合した状態で、円筒状内型301の気体給排気口から0.5MPaの圧力の圧縮エアーを導入した。この状態で図13の加熱処理装置を用いて円筒状外型表面温度が180℃になるまで加熱し、不図示の冷却ファンにより冷却後、気体給排気口からPFAチューブ内の気体を抜くことにより、チューブ状フィルム部材同士を熱溶着した。
【0114】
本実施例では、円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、円筒状外型302の表面温度が180℃になるように加熱処理した。また、本実施例において型の回転数は60rpmであり、ヒータとしては、出力配分がヒータ長手方向で均一なハロゲンヒータを使用した。加工条件を表1に示す。
【0115】
同様の工程を繰り返し、2本の加熱処理チューブ状フィルムを作製し、80℃でアニール処理することにより内周長480mm、厚さ100μmのチューブ状フィルムとした。その後、両端をカットすることにより、幅245mmのエンドレスベルトを2本作製し、実施例1と同様の各種評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0116】
実施例10
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、加熱処理温度を175℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理チューブ状フィルムを作製した。
図18に示すようなコロナ処理装置を用い、得られた加熱処理チューブ状フィルムの外周面の全周に亘り、その幅方向の一部分(幅15mm)に強度150KW・h/mのコロナ処理を行った。
同様の工程を繰り返し、2本のコロナ処理した加熱処理チューブ状フィルムを作製し、80℃でアニール処理することにより内周長480mm、厚さ100μmのチューブ状フィルムとした。その後、両端をカットすることにより、幅245mmのエンドレスベルトを2本作製し、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0117】
実施例11
実施例4で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、加熱処理温度を175℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理チューブ状フィルムを作製した。
また、下記配合をビーズミルにより分散することにより、低抵抗領域用塗料作製した。
得られた加熱処理チューブ状フィルムの外周面の全周に亘り、エンドレスベルト幅方向の一部分(幅15mm)に、上記のようにして作製した低抵抗領域用塗料を、乾燥後の厚みが10μmになるようにスプレー塗装し、乾燥後、実施例1同様に両端をカットすることにより、低抵抗層を有する幅245mm、内周長480mm、厚さ100μm(一部120μm)のエンドレスベルトを2本作製し、実施例1と同様にして各種試験を行った。結果を表1、表2に示す。
【0118】
低抵抗領域塗料配合
ポリウレタン樹脂溶液(ニッポラン2302 日本ポリウレタン製)100重量部
導電性カーボンブラック(デンカブラック粉状品 電気化学工業製) 10重量部
メチルイソブチルケトン 300重量部
【0119】
実施例12
実施例7で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部303の形状を図19のようにした以外は実施例7と同様に加熱処理、アニール処理等を行いエンドレスベルトを作製した。実施例1と同様に電気抵抗の測定を行ったところ、1枚のエンドレスベルト片のみがエンドレスベルト幅方向に10mmの低抵抗領域を有していた。
また、作製したもう1本のエンドレスベルトの内周面に、幅4mm、厚み1mmのゴム製の蛇行防止部材を両面テープで貼付し、エンドレスベルト外周面端部(例えば低抵抗領域と同一軸線上)に10mm四方の白色テープ部材を貼付して図1に示される画像形成装置の転写搬送ベルトとして組み込み各種画像出力試験を行った。ここで、画像形成装置には、エンドレスベルト表面に貼付した白色テープ部材を読み取るセンサを設け、低抵抗領域の位置情報を検知することによりエンドレスベルトの低抵抗領域にサンプルトナー画像を形成するように制御した以外は実施例1と同様に各種試験を行った。
【0120】
その結果、低抵抗領域幅が10mm四方と狭いと同時に低抵抗領域の電気抵抗値Rlが1.0×10と高いことからサンプルトナー画像上に若干水玉模様が発生し、画像安定性に影響が確認されたが、実使用上問題のないレベルであった。結果を表1、表2に示す。
また、本実施例においては、画像制御のためのサンプルトナー画像を形成できる領域が狭く、1度にサンプルトナー画像を形成できる数が限られていることから、画像制御を行う為に必要な所定の数のサンプルトナー画像を形成するために必要な時間が長く必要であった。
【0121】
実施例13
配合を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてエンドレスベルトを作製した。加工条件を表1に示す。
配合
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー720 アルケマ製) 65.5質量%
ポリフッ化ビニリデン樹脂(カイナー740 アルケマ製) 19質量%
導電性カーボンブラック(デンカブラック粉状品 電気化学工業製)9.5質量%
ポリエーテルエステルアミド樹脂
(ペレスタットNC6321 三洋化成工業製) 1質量%
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種 堺化学製) 5質量%
【0122】
得られたエンドレスベルトを、図2に示される画像形成装置の中間転写ベルトとして組み込み各種画像出力試験を行った。ここで、光学センサ14は本発明のエンドレスベルトの低抵抗領域に対向する位置にとりつけ、画像制御用サンプルトナー画像を、エンドレスベルトの低抵抗領域に形成するようにした。また、画像を250枚出力する毎に画像制御用サンプルトナー画像を形成し、画像形成条件へのフィードバック制御を行うようにした。
【0123】
<連続通紙試験、画像安定性評価>
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0124】
<葉書通紙試験>
中間転写ベルトを組み込んだ画像形成装置、および官製葉書を15℃/10%RHの環境に24時間以上放置する。
次に、官製葉書上に赤(マゼンタ+イエロー)、緑(シアン+イエロー)、青(マゼンタ+シアン)のベタ画像を出力し、出力されたベタ画像の濃度の均一性を目視で確認した結果、低抵抗領域幅が狭いことから転写不良は発生しなかった。葉書通紙試験の評価基準は以下の通りである。評価結果を表3に示す。
○:画像濃度が均一であり、良好。
△:僅かに転写不良による濃淡ムラがみられるが、実用上問題なし。
×:転写不良による濃淡ムラがはっきりと認められ、実用不可。
ここで、葉書通紙試験結果はエンドレスベルトの低抵抗領域幅に依存し、低抵抗領域幅が小さいものほど転写媒体が存在しない領域への転写電流の流れ込みが小さくなり、良好な結果となる。
【0125】
実施例14
実施例13において、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の幅を40mmとし、低熱吸収率部の熱吸収率を大きくして高熱吸収率部との差を小さくし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例13と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。
また、実施例13と同様に各種評価を行ったところ、低抵抗領域の大きさがエンドレスベルト面積の28.57%を占めていることから、葉書通紙試験において転写電流の非画像領域へ流れ込みに起因する軽微な転写不良が確認されたが、実使用上問題のないレベルであった。また、低抵抗領域がエンドレスベルトの端部領域に近い部分に存在していたことから、若干サンプルトナー画像の形成・読み取りが不安定となり、画像安定性に若干影響が見られたが、実使用上問題のないレベルであった。結果を表1、表3に示す。
【0126】
比較例1
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の幅を50mmとし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例1と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。
また、実施例1と同様に各種評価を行ったところ、低抵抗領域面積がエンドレスベルト面積の33.47%を占めていることから、吸着不良に起因する顕著な色ずれが発生したので連続通紙試験は行わなかった。結果を表1、表2に示す。
【0127】
比較例2
実施例7において、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の幅を8mmとし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例7と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製し、実施例1と同様に各種評価を行ったところ、低抵抗領域幅が8mmと狭く、水玉模様が顕著に発生したので連続通紙試験は行わなかった。結果を表1、表2に示す。
【0128】
比較例3
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の位置を変更した以外は実施例1と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製した。
また、実施例2と同様に図1から吸着ローラ8を取り外した画像形成装置の転写搬送ベルトとして組み込み、各種評価を行った。ここで、光学センサ14は本発明のエンドレスベルトの低抵抗領域に対向する位置にとりつけ、画像制御用サンプルトナー画像をエンドレスベルトの低抵抗領域に形成するようにした。その結果、低抵抗領域がエンドレスベルトの端部領域内に存在していたことから、サンプルトナー画像の形成・読み取りが不安定となり、その結果顕著な色ずれが発生したので連続通紙試験は行わなかった。結果を表1、表2に示す。
【0129】
比較例4
実施例14において、加熱処理に用いる円筒状外型302の高熱吸収率部の幅を50mmとし、円筒状外型302の低熱吸収率部表面温度が175℃になるように加熱処理した以外は実施例14と同様に加熱処理、アニール処理等を行い、エンドレスベルトを作製し、実施例13と同様に各種評価を行ったところ、葉書通紙試験において転写電流の非画像領域へ流れ込みに起因する顕著な転写不良が発生したので連続通紙試験は行わなかった。結果を表1、表3に示す。
【0130】
比較例5
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、加熱処理温度を175℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理チューブ状フィルムを作製した。また、実施例1と同様に各種評価を行ったところ、低抵抗領域を有さないことから水玉模様が顕著に発生したので連続通紙試験は行わなかった。結果を表1、表2に示す。
【0131】
比較例6
実施例1で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、加熱処理温度を200℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理チューブ状フィルムを作製した。また、実施例1と同様に各種評価を行ったところ、吸着不良に起因する顕著な色ずれが発生したので連続通紙試験は行わなかった。結果を表1、表2に示す。
【0132】
比較例7
実施例13で作製したチューブ状フィルムを用い、加熱処理に用いる円筒状外型302の外周面全面に高熱吸収率の塗料を塗布したものを使用し、加熱処理温度を175℃とした以外は実施例13と同様にして加熱処理チューブ状フィルムを作製した。また、実施例13と同様に各種評価を行った結果、低抵抗領域を有さないことから連続通紙試験によりエンドレスベルト表面に紙粉が多量に付着し、顕著なエンドレスベルト表面のグロス低下が見られ、画像安定性に欠ける結果であった。結果を表1、表3に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
【表3】

上記表2および3において、「E+06、E+07およびE+08」はそれぞれ「×10、×10および×10」を表す。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】フルカラー画像形成装置の一例を示す概略図。
【図2】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図。
【図4】正反射方式の光学センサの概略図。
【図5】サンプルトナー画像の水玉模様を説明する概略図。
【図6】エンドレスベルト電気抵抗測定時の切断方法を説明する概略図。
【図7】エンドレスベルト電気抵抗測定装置を説明する概略図。
【図8】電気抵抗測定データの移動平均を説明する図。
【図9】低抵抗領域を説明する図。ただし、図中、「E+07およびE+08」はそれぞれ「×10および×10」を表す。
【図10】インフレーション成形機の概略図。
【図11】本発明のエンドレスベルトを製造する際に使用する円筒状内型を説明する概略図。
【図12】本発明のエンドレスベルトの製造方法を説明する概略図。
【図13】本発明のエンドレスベルトの製造方法で用いる加熱手段の一例を示す概略図。
【図14】本発明のエンドレスベルトの製造方法を説明する概略図
【図15】本発明のエンドレスベルトを製造する際に使用する円筒状外型を説明する概略図。
【図16】本発明のエンドレスベルトの幅方向における電気抵抗分布を示すグラフ。
【図17】色ずれ評価用画像を説明する図。
【図18】コロナ処理装置の概略図。
【図19】本発明のエンドレスベルトを製造する際に使用する円筒状外型を説明する概略図。
【符号の説明】
【0137】
1(1Y,1M,1C,1Bk) 電子写真感光体
2 一次帯電器
3 像露光手段
4(4Y,4M,4C,4Bk) 現像器
5 感光体クリーナー
6 エンドレスベルト
61 転写搬送ベルト
62 中間転写ベルト
63 エドレスベルト片
7 レジストローラ
8 吸着ローラ
9 転写ローラ
91 一次転写ローラ
92 二次転写ローラ
10 転写バイアス電源
101 一次転写バイアス電源
102 二次転写バイアス電源
11 駆動ローラ
12 定着器
13 クリーニングバイアスローラ
14 光学センサ
23 電極ローラ
24 給電駆動ローラ
HV 高圧電源
Rec レコーダー
200 円筒状部材
201 加熱手段(ハロゲンヒータ-)
202 回転架台
220,221,222 チューブ状フィルム部材
301 円筒状内型
302 円筒状外型
303 高熱吸収率部
304 低熱吸収率部
400 押出し機
401 ホッパー
402 環状ダイス
403 気体導入路
404 外部冷却リング
405 安定板
406 ピンチローラー
407 カット装置
30 サンプルトナー画像
31 水玉模様
32 投光部
33 受光部
34 コロナ処理電極
35 コロナ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられるエンドレスベルトであって、該エンドレスベルトが部分的に低い電気抵抗領域を有し、該低抵抗領域の大きさが10mm四方以上でかつエンドレスベルト面積の30%以下であり、該低抵抗領域の電気抵抗Rlが5×10Ω以上1×10Ω以下であり、該低抵抗領域がエンドレスベルト両端部からエンドレスベルト軸方向長さの10%の領域を除く部分に存在することを特徴とするエンドレスベルト。
【請求項2】
前記低抵抗領域が、前記エンドレスベルト幅方向における少なくとも一部分に全周に亘って存在することを特徴とする請求項1に記載のエンドレスベルト。
【請求項3】
前記エンドレスベルトが少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーを含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンドレスベルト。
【請求項4】
前記導電性フィラーが導電性カーボンブラックであることを特徴とする請求項3に記載のエンドレスベルト。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデン樹脂であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエンドレスベルト。
【請求項6】
前記エンドレスベルトが、ベース層と該ベース層上の少なくとも一部分に、ベース層とは電気抵抗が違う層とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のエンドレスベルト。
【請求項7】
前記ベース層とは電気抵抗が違う層の厚みが50μm未満であることを特徴とする請求項6に記載のエンドレスベルト。
【請求項8】
電気抵抗が部分的に低い領域を有するエンドレスベルトの製造方法であって、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含有するフィルム状部材を加熱処理することを含み、該加熱処理が、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向において加熱処理温度を変えることによって行われることを特徴とするエンドレスベルトの製造方法。
【請求項9】
前記加熱処理が、膨張可能な円筒状内型と、該円筒状内型よりも膨張量が小さい円筒状外型との間にフィルム状部材を挟んだ後に加熱する方法によって行われることを特徴とする請求項8に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【請求項10】
前記円筒状外型の外表面および/または前記円筒状内型の内表面の熱吸収率を変化させることにより、加熱処理温度に分布を持たせることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【請求項11】
前記導電性フィラーが導電性カーボンブラックであることを特徴とする請求項8乃至請求項10の何れか1項に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂がポリフッ化ビニリデン樹脂であることを特徴とする請求項8乃至請求項11の何れか1項に記載のエンドレスベルトの製造方法。
【請求項13】
電気抵抗が部分的に低い領域を有するエンドレスベルトの製造方法であって、膨張可能な円筒状内型と該円筒状内型よりも膨張量が小さい円筒状外型との間に、熱可塑性樹脂を主成分とする複数の電気抵抗の異なるフィルム状部材を、エンドレスベルトの軸方向に相当する方向において電気抵抗が異なるように配置し、該複数のフィルム状部材を加熱処理することにより一体化することを特徴とするエンドレスベルトの製造方法。
【請求項14】
電気抵抗が部分的に低い領域を有するエンドレスベルトの製造方法であって、少なくとも熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含有するエンドレスベルトの表面の一部分に、コロナ放電処理、プラズマ処理および電子線照射処理の何れかの表面処理を行うことを特徴とするエンドレスベルトの製造方法。
【請求項15】
エンドレスベルトを有する画像形成装置であって、エンドレスベルト上に形成される画像制御パターンを検知する光学センサを有し、該エンドレスベルトにおける画像制御パターンが形成される部分の電気抵抗が、他の部分の電気抵抗よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
電子写真感光体上にトナー画像を形成し、エンドレスベルトにより吸着搬送された記録媒体上に該トナー画像を転写することにより画像を形成するが、記録媒体のエンドレスベルトへの吸着を補助する吸着ローラを有さないことを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記エンドレスベルトが請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のエンドレスベルであることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−153510(P2007−153510A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349146(P2005−349146)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】